説明

試料採取されるべき量の値を表示するための少なくとも1つのトラックおよび1つのブラシを備えている手持ち式ピペット

【課題】試料採取されるべき量の値を表示するための少なくとも1つのトラックおよび1つのブラシを備えている手持ち式ピペットを提供する。
【解決手段】この手持ち式ピペットは、インクレメント(84、86)を有する少なくとも1つのトラック(80、82)と、少なくとも1つのブラシとを備えている。また、このピペットは、各トラックから独立していて、各ブラシが所定の数のインクレメントだけ移動した後に各ブラシに接触するように配置されているレジスタ領域(94)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピペット、特に、手持ち式ピペットに関する。
【背景技術】
【0002】
液体を試料採取し、引き続き、この液体を放出する目的でピストンを移動されるための手持ち式ピペットが、特に文献フランス特許第2807558号から知られている。このピペットは、試料採取されるべき液体の量の値を調整するための手段と、この値を表示するための電子スクリーンとを備えている。
調整手段の所定の機械的構成に対応する校正値をピペット制御マイクロプロセッサに記録することによってこのピペットを校正することが可能である。ピペットは、インクレメントを有していて、量調整手段に連結された1つまたはそれ以上のトラック上で移動する1つまたはそれ以上のブラシを備えている。使用者が試料採取されるべき量の調整を変更すると、ブラシがトラックにおけるインクレメント上で移動し、マイクロプロセッサが移動されたインクレメントの数を数え、従って、それにより得られた調整に対応する新しい量の値を表示することができる。
【0003】
それにもかかわらず、1つの欠点は以下の点である。すなわち、ピペットに電流が供給されていないときに(ピペットはオフに切り換えられたか、或いはエネルギ源が使い果たされたときに)使用者が量の調整を変更する場合、ピペットは移動されたインクレメントの総数を失う。ピペットは、これにエネルギが再度供給されると、もはや、得られた量調整に対応する正しい値を表示する位置にない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の1つの目的は、ピペットに電力が供給されていない間に、調整手段が操られても、試料採取されるべき正しい量の値を表示することを可能にすることによって、この欠点を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的で、本発明によれば、インクレメントを有する少なくとも1つのトラックと、
少なくとも1つのブラシと、を備えている手持ち式ピペットであって、
各トラックのためのものであって、所定数のインクレメントだけ移動した後に各ブラシに接触するように配置された独立したレジスタ領域を備えている手持ち式ピペットが提供される。
独立したレジスタ領域は多くの応用を有している。
【0006】
かくして、ピペットが始動されていない間に量調整手段が操られても、正しい量の値を表示する目的で、マイクロプロセッサをリセットすることが可能である。例えば、好適な実施形態では、調整手段が所定の構成、例えば、機械的底当接状態にあることが検出される。次に、ブラシがレジスタ領域と接触するように、量の調整が変更される。マイクロプロセッサは所定の構成を去った後に初めの接触を形成するこの接触を検出する。従って、マイクロプロセッサは再度、調整手段の正確な機械的構成を知る。従って、マイクロプロセッサは、この接触からインクレメントの数を数えることにより、所定の基準値を使用して、調整されたときの量の値をいつでも再度正しく表示することができる。
【0007】
他の応用では、レジスタ領域はマイクロプロセッサによるインクレメントを数えることに関したセキュリティを構成する。これは、好適実施の形態では、マイクロプロセッサが、レジスタ領域とのブラシの2回の接触の間にブラシがトラック上で移動したインクレメントの数を測定するようにすることが可能である。引き続き、マイクロプロセッサは、測定された数を、マイクロプロセッサに先に記憶されていて、インクレメントの実際の数に対応する値と比較する。これらの2つの数が異なれば、これは異常が生じたことを意味する。これは、例えば、インクレメントが少量の汚れを有し、従ってブラシがこのインクレメント上を通過するときにブラシとの電気接触を行なうことができない場合である。このような異常が存在する場合、マイクロプロセッサ自身がレジスタ領域との接触により表示されるべき量の値を補正するための対策を講じることが可能である。
【0008】
本発明によるピペットは、また、下記の特徴うちの少なくともいずれか1つを有することができる。
ピペットは接触領域および各トラックから独立していて、試料採取されるべき量を調整する手段が所定の構成にあることを検出するための手段を備えている。
トラックは数が少なくとも2つであり、インクレメントは、ブラシがこれらのブラシによるトラック上での移動方向に沿った異なる続発におけるトラックと接触するように、配置されている。
【0009】
ブラシは2つのトラックと同時に接触するように配置されている。
ブラシはトラックと非同時に接触するように配置されている。
各ブラシは1つのトラックのみと接触することができるように配置されている。
ピペットは夫々のトラックと関連された少なくとも2つのブラシを備えている。
ピペットは各トラックと関連された少なくとも2つのブラシを備えている。
【0010】
ブラシは永久的に互いに電気的に接続されている。
ピペットは、また、アーストラックを備えており、各ブラシは永久的にアーストラックに電気的に接続されている。
ピペットはトラックまたはブラシ用の少なくとも1つの支持体を備えており、この支持体はピペットの部片に回転可能に固定されていて、この部片上で摺動自在である。
【0011】
また、本発明によれば、少なくとも1つのブラシと、インクレメントを有する少なくとも1つのトラックとを備えている手持ち式ピペットにより試料採取されるべき量の値を定める方法であって、
試料採取されるべき量を調整する手段が所定の構成にあることが検出し、
量の調整を変更し、
各トラックから独立したレジスタ領域とのブラシの接触を検出し、
量の値を所定の基準値によって定める、試料採取されるべき量の値を定める方法が提供される。
【0012】
この値を定める方法は下記の特徴のうちの少なくともいずれか1つを有することができる。
所定の構成は量の値の極値に対応する。
トラックに対するレジスタ領域の位置に関する値がピペットに記録される。
接触以後のブラシが移動した道程の数が測定される。
レジスタ領域とのブラシの次々の接触の数が測定される。
【0013】
また、本発明によれば、手持ち式ピペットを制御する方法であって、
レジスタ領域との少なくとも1つのブラシの2回の接触の間でブラシがトラック上で移動する道程の数を測定し、
測定された数を所定の数と比較する制御方法が提供される。
この制御方法は下記の特徴のうちの少なくともいずれか1つを有することができる。
所定の数を考慮して、試料採取されるべき液体の量の値の表示を要求する。
測定された数が所定の数と異なる場合、警報メッセージを表示する。
トラックの数が少なくとも2つであり、トラックとのブラシの接触の続発を検出し、 検出された続発を所定の続発と比較する。
本発明の他の特徴および利点は、添付図面を参照して非限定的な例として挙げられる好適な実施の形態の下記の説明から現われてくるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1および図2を参照して本発明によるピペットの好適な実施形態を説明する。
このピペットは、本質的に、文献第WO01/76747号、第WO01/76748号、第WO01/76749号、第WO01/76750号、第WO01/76751号、第WO01/76752号、第WO01/76753号、および第FR-2807558号に記載されている種類のものである。従って、本発明に関していて、これらの穿孔文献に記載されていない特徴のみをここに示す。
要するに、ピッペット2は、ボディ4と、作動ノブ8を先端に備えている制御ロッド6と、調節ねじ10と、情報、詳細には、サンプル採取されるべき量の値の表示のための液晶スクリーン12と、表示およびピペットを制御するための電子回路14と、公知なようにしてピペットの底端部20に固定された取外し可能な円錐体の放出を許容するノブ18を備えている装置16とを備えている。ロッド6により、取られるべき液体試料を円錐体に吸入するか、或いはそれを排出するためのピストン21を制御することを可能にしている。
【0015】
ピペットは、手で作動可能であって、モータ付きではない手持ち式ピペットである。ピペットを使用するには、使用者がその手にボディ4を握り、使用者の指、例えば、親指によってボタン8またはボタン18を必要に応じて作動する。
ピペットは、使用者がピペットにより試料採取すべき量の値を調整することができる公知な手段を備えている。この目的で、ねじ10は、ナットを形成し、このナットで螺旋連結を行なうボディの部分50と係合している。ねじはピストン21を支持するロッド6の肩部のための頂ストッパを構成する底端部52を有している。従って、ねじの位置がピストンにより吸入される量の値を定める。使用者は、ノブ8によってねじを操ってロッドをその長さ方向軸線のまわりに回転させる。ロッド6は、これが通るねじ10と同軸であって、ねじ10に固定されており、ねじもまた、それ自身、回転される。また、使用者はボディ4における窓(これは公知であって、ここでは説明しない)を通して接近可能である刻み付きホイールに作用することにより調整を変更することができる。
【0016】
ピペットは、図3に示すように、ねじ10にすべり嵌めされたワッシャの形態のブラシ-ホルダプレート54を備えている。図3において、より容易性のために、ねじは、あたかも中実であるように示されているが、それを通るロッド6を有していることが理解されるべきである。プレート54は、本質的に平らな形状を有していて、ねじの長さ方向軸線に対して垂直な一般平面内で延びている。プレート54は、各々がプレートにおける中央オリフィス60の内縁部から半径方向に突出して延びている2つのラグ58を有している。ねじ10はその外面に切込んでいる2つの溝62を有している。各溝は軸線56と平行に延びている。プレート54は、ラグ58が夫々の溝62に収容されるようにねじ10にすべり嵌めされている。また、プレート54は、軸線56に沿ったその高さが変化することができることなしにピペットに収容されている。この取付けの結果、プレート54は軸線56のまわりにねじ10の移動中に回転可能にねじ10に固定されることになる。この固定は、ねじ61におけるラグ58の収容から生じる。それにもかかわらず、ねじの螺旋移動中、プレート54は、試料採取すべき量の調整が変更される場合、ねじがプレート54に対して摺動可能に移動する(およびその逆)ように、ピペットのボディにおいて同じ高さのままである。
【0017】
ピペットは、また、この場合には印刷回路の形態で配置されたコーダー64を備えている。かくして、コーダーは図5に詳細に示されるトラックを有する支持体を備えている。コーダーは平らな形状を有しており、これもまた軸線56に対して垂直な平面内で延びている。コーダーはプレート54の向かい側に配置されている。コーダーは、円形のボディと、このボディの外縁部から半径方向に延びている突出部67とを有している。コーダーはねじ10にスリップ嵌めされながら、ピペットのボディ4にしっかり固定されている。
【0018】
プレート54はブラシを支持しており、これらのブラシは、この場合、数が6つであって、対をなして配置されている。かくして、一対のブラシ68と、一対のブラシ70と、一対のブラシ72とが見える。ブラシすべては、ここでは、互いに平行である。各対のブラシは、2つのブラシを個別化するために端領域が長さ方向に分割されているトングにより構成されている。これらの3つのトングは同じ基部74に固定されている。基部およびトングよりなる組立体は金属シートを切り取って成形することにより単一の部片に形成されている。このシートは3つのオリフィス76を有しており、これらのオリフィス76により、プレートの1つの面から突出するように延びていて、オリフィス76を通るようになっている3つのスタッド78によって基部74をプレート54に固定して適所に設定することができる。
【0019】
図5を参照して、コーダー64の構成を以下に説明する。コーダーは、2つの円形のトラック80、82すなわちトラックAおよびトラックBを備えている。これらのトラックの各々は、互いに同じであって、各トラックにおいて互いから一様に間隔を隔てられた複数のインクレメント84、86を有している。かくして、トラックAは、本例では、トラックとちょうど同じように、24個のインクレメント84を有している。トラックAにおいて、インクレメント84は円弧における電気的リンク84により外縁部のところで連結された矩形体により形成されている。同じことがトラックBすなわちトラック82にも当てはまり、インクレメント86はそれらの内縁部のところでリンク90によって互いに連結されている。トラックAは、その端部が連続していないように開放された円形の一般形状を有している。同じことがトラックBにも当てはまる。
【0020】
軸線56に関して、トラック80の2つの次々のインクレメント84を分離する角度の測定値はトラック82における2つの次々のインクレメント84を分離する角度の測定値に等しい。それにもかかわらず、2つのトラックにおけるインクレメントは一方のトラックと他方のトラックでは一致していない。本例では、インクレメントは軸線56のまわりのトラックの角方向移動に関して部分的な角方向の重なり状態にある。
また、コ−ダーは、端部が連続するように閉鎖円形の一般形状を有するアーストラック92を備えている。最後に、コ−ダーは、トラックA、Bの各々が及ぶ角度と比較して小さい全角度にわたって延びているレジスタ領域または旋回ピップ領域94を備えている。この場合、レジスタ領域94は、90°未満、ここでは、5°と10°との間にある角度の部分にわたって延びている。本例では、レジスタ領域94はトラックA80の各インクレメント84を形成する矩形体と同じ形状および同じ寸法を有する矩形体により形成されている。また、このレジスタ領域は、このトラックの端部にそれぞれ最も近い2つのインクレメントから等距離にあって、これらの端部と並んでいる。
【0021】
トラックA80、トラックB82、アーストラック92およびレジスタ領域94は、各々、夫々の導体によりコーダーの突出部67において延びている出力端子に接続されている。
本例では、2つのブラシ68はトラックA上で移動し、その結果、このトラックにおけるインクレメント84と単独で接触するようになっている。同じことが2つのブラシ70およびインクレメント86を有するトラックBにも当てはまる。他方、2つのブラシ72は、少なくとも1つの例では、アーストラック92と永久的に接触している。しかも、トラックAのブラシ68は、1旋回あたり一回、レジスタ領域94と接触する。6つのブラシが同じ金属部片から製造されており、これらのブラシは互いにおよび特にアーストラックと直接または間接的に永久的に電気的接触している。
【0022】
従って、ねじの移動中、ブラシ68、70がアーストラックの出力部を、時には、単独でトラックA80の出力部と接触させ、時には、単独でトラックB82の出力と接触させ、最後に時には、トラックA80の出力部およびトラックB82の出力と同時接続させることは理解されるであろう。ピペットにおいて、異なる電圧が、一方では、トラックA80の出力とアーストラックの出力部との間、他方では、トラックB82の出力とアーストラックの出力部との間に印加されることを知って、その結果、種々の出力信号がブラシによるインクレメント上の移動に応じてマイクロプロセッサに送信される。
【0023】
0および1として表されるこれらの信号は図6に示されている。底線はトラックB82のインクレメントにより発信された信号に対応しており、中間線はトラックA80のインクレメントにより発信された信号に対応している。従って、これらの信号が1つのトラックから他のトラックまでずれていることを知って、マイクロプロセッサは、「00」、「01」、「11」、「10」によりそれぞれ表される4つの電圧状態を識別する。これらの符号の各々において、第1数字はトラックBの状態を表しており、第2数字はトラックAの状態を表している。これらの種々の状態はブラシが移動した道程を構成する。
【0024】
トラックA、Bのインクレメントの部分的な角方向重なりに関して、ブラシが図6に矢印100で示される第1方向におけるコーダー上で移動するときにマイクロプロセッサにより受信される信号の続発は序列00、01、11、10よりなる。他方、ブラシが反対方向にコーダー上で移動するとき、この続発は序列10、11、01、00よりなり、先の序列は存在しない。従って、この続発は、ブラシの始点がどうであれ、先の続発と異なっている。従って、マイクロプロセッサは、いずれの時点でも、コーダー上のブラシの回転方向を検出すべき位置にある。従って、マイクロプロセッサは、試料採取されるべき量を増やす目的で、或いは反対に減らす目的で量調整手段が操られることを認識することができる(より簡単には、マイクロプロセッサは、例えば、回転方向を推定するために、続発における2つの次々の要素の順序、例えば、10、11または11、10を実際に検出することができる)。
【0025】
また、マイクロプロセッサはブラシが移動した道程の数を数える。従って、各道程がピペット採取すべき量部分に対応することを知って、マイクロプロセッサは調整手段の新しい位置に応じてスクリーンにより表示される量の値を連続的に変更することができる。例として、ピペットが1000ミクロメータの全容量を有しており、量を調整する手段が1旋回あたり100個の道程を備えており、1つの道程が1ミクロメータに対応することが考えられる。電圧状態(「00」、「01」、「10」、「11」)の各変化は、示されたトラックにより99個の道程を識別することを可能にするように、1つの道程に対応する。しかも、ブラシ68は、1旋回あたり一回、図示のように、レジスタ領域と接触する。
【0026】
従って、ブラシをコーダー上で1旋回より多く移動させるために、調整手段が操られると、マイクロプロセッサは、レジスタ領域上の各通過において、完全な旋回が行なわれたことを検出する。各場合、マイクロプロセッサは所定の数での領域94との先の接触以後に移動された道程の数を比較する。ピペットにおいて予め記録されたこの数は1旋回あたりの道程の数に対応する。検出された数が記録された数と異なれば、それは異常の問題である。一般に、数えられた道程の数は記録された数より少ない。その場合、マイクロプロセッサは、実際に数えられたが、行なわれた完全な旋回の道程の数を考慮しないためにスクリーン上の値の表示に対する補正を要求する。本例では、レジスタ領域94はトラック92と並んでおり、一回の旋回を行なうための道程の数は100個の道程である。従って、レジスタ領域94により送られた2つのピップ間の道程の数は99であるはずである。
【0027】
検出された異常によれば、特に、それらの頻度または反復度によれば、マイクロプロセッサがスクリーン上の1つまたはそれ以上の警戒メッセージまたはメンテナンスメッセージを送るための、またはもはや検出された数および記録された数の前記比較を行なうことなしに値の表示における欠陥に対する系統的な補正を行なうための対策を講じることができる。レジスタ領域94の不在の場合、少なくとも1つのインクレメントが各旋回時にブラシと接触しないなら、旋回ごとに連続誤差が蓄積し、その結果、実際に試料採取された量と、表示された量の値との非常に大きい相違が生じる。
トラックの状態の各変化が既知の角方向変位に対応することがわかった。これにより、マイクロプロセッサは受信された信号をピペットに対して試料採取すべき液体の値に変換することができる。この情報を考慮して、調整手段の各移動時の回転方向および移動された道程の数を知って、マイクロプロセッサは、スクリーンに表示されるべきであって、調整手段の現在の位置に対応する量の値を常に知る。
【0028】
ピペットが電力を受けていない間に量調整手段が変更されたときに、試料採取されるべき量の値がどのように表示されるかを以下に説明する。
工場で一般に行なわれる第1工程は、この場合には校正値である基準値をピペットのマイクロプロセッサのメモリに入れることよりなる。この工程は、ピペットで実際に試料採取され、調整手段の所定の構成に対応する液体の量を測定する(特に秤量する)ことによって実験的に定められた量の値の場合である。
ここでは、校正値が250ミクロメータの値に相当し、且つレジスタ領域94の後の2回の完全な旋回プラス35道程に対応するものと仮定される。
【0029】
ピペットが電力を受けていない間に量調整手段の位置が変更されるものと仮定される。例えば、ノブ8は軸線のまわりのねじの位置が変更されるように回動される。ピペットがもう一度始動されると、マイクロプロセッサは、先に表示されたもの同じ値を表示するようにピペットがオフに切換えされたときにブラシが移動した道程を考慮しない。従って、この値は誤っている。
下記の操作は、ピペットが再び正しい値を表示すべき位置になるように行なわれる。
使用者は調整手段を底接触位置に戻す。このようにして、ねじ10がその底移動限度に機械的当接した状態に戻される。ピペットは、接触させることがコーダー64およびブラシから独立した電気または電子手段でマイクロプロセッサにより検出されるように、公知なように構成されている。この検出により、マイクロプロセッサは、ねじが移動の底端部にあることを認識する。
【0030】
使用者は、値を増大するように値の調整をもう一度変更する。ブラシ68がレジスタ領域94を始めて通り越すと、この通過は当接以後の始めての通過としてマイクロプロセッサにより検出される。従って、マイクロプロセッサは、この時点で、校正値、つまり、2回の完全な旋回プラス35道程および250ミクロメータに対応する位置に対する調整手段の絶対位置を突き止めることを知る。従って、マイクロプロセッサは、これらの2つのデータおよび移動された道程の数から、表示されるべき量の値をいつでも算出することができる。
例えば、レジスタ領域94との最後の接触の後に10道程が移動されたことをカウンタが記録すると、このカウンタは、表示されるべき量が250−35+10−100、すなわち、125ミクロメータであることを知る。
【0031】
当然、本発明の範囲を逸脱することなしに本発明の多くの変更例を行うことができる。
レジスタ領域はトラックのうちの1つと並ぶ箇所以外のところに配置されることができる。レジスタ領域はインクレメントの構成と異なる構成を有することができる。レジスタ領域は2つのインクレメントより大きいまたはそれに等しい角度値にわたって延びることができる。
基準値に対応する所定の構成はねじの移動停止端部の構成以外の構成であることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の好適実施の形態によるピペットの長さ方向の軸方向断面図である。
【図2】図1のピペットの中間部分の拡大図である。
【図3】図1のピペットのねじと、ブラシ支持体と、トラック支持体とを示す斜視図である。
【図4】ブラシおよびそれらの支持体の分解斜視図である。
【図5】図3のトラック支持体の詳細平面図である。
【図6】ブラシがトラック上で移動するときに図1のマイクロプロセッサにより受信される信号を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクレメント(84、86)を有する少なくとも1つのトラック(80、82)と、
少なくとも1つのブラシ(68)と、を備えている手持ち式ピペットにおいて、
このピペットは、各トラックから独立していて、所定数のインクレメント(84)だけ移動した後に各ブラシに接触するように配置されたレジスタ領域(94)を備えていることを特徴とする手持ち式ピペット。
【請求項2】
接触領域および各トラックから独立していて、試料採取されるべき量を調整する手段(10)が所定の構成にあることを検出するための手段を備えていることを特徴とする先行請求項に記載のピペット。
【請求項3】
トラック(80、82)は数が少なくとも2つであり、インクレメント(84、86)は、ブラシ(68、70)がこれらのブラシによるトラック上での移動方向における異なる続発における接触を達成するように、配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のピペット。
【請求項4】
ブラシ(68、70)は2つのトラック(80、82)と同時に接触するように配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のうちのいずれか1項に記載のピペット。
【請求項5】
ブラシ(68、70)はトラック(80、82)と非同時に接触するように配置されていることを特徴とする請求項3または4に記載のピペット。
【請求項6】
各ブラシ(68、70)は1つのトラック(80、82)のみと接触することができるように配置されていることを特徴とする請求項3ないし5のうちのいずれか1項に記載のピペット。
【請求項7】
夫々のトラック(80、82)と関連された少なくとも2つのブラシ(68、70)を備えていることを特徴とする請求項3ないし6のうちのいずれか1項に記載のピペット。
【請求項8】
各トラック(80、82)と関連された少なくとも2つのブラシ(68、70)を備えていることを特徴とする請求項3ないし7のうちのいずれか1項に記載のピペット。
【請求項9】
ブラシ(68、70)は永久的に互いに電気的に接続されていることを特徴とする請求項7または8に記載のピペット。
【請求項10】
アーストラック(92)を備えており、各ブラシ(68、70)は永久的にアーストラックに電気的に接続されていることを特徴とする請求項1ないし9のうちのいずれか1項に記載のピペット。
【請求項11】
トラック(80、82)またはブラシ(68)用の少なくとも1つの支持体(54)を備えており、この支持体は部片(10)に回転可能に固定されていて、この部片(10)上で摺動自在であることを特徴とする請求項1ないし10のうちのいずれか1項に記載のピペット。
【請求項12】
少なくとも1つのブラシ(68)と、インクレメント(84、86)を有する少なくとも1つのトラック(80、82)とを備えている手持ち式ピペットにより試料採取されるべき量の値を定める方法において、
試料採取されるべき量を調整する手段(10)が所定の構成にあることを検出し、
量の調整を変更し、
各トラック(80、82)から独立したレジスタ領域(94)とのブラシ(68)の接触を検出し、
量の値を所定の基準値によって定める、ことを特徴とする試料採取されるべき量の値を定める方法。
【請求項13】
所定の構成が量の値の極値に対応することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
トラック(80、82)に対するレジスタ領域(94)の位置に関する値がピペットに記録されることを特徴とする請求項12ないし13のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
接触以後のブラシが移動した道程の数が測定されることを特徴とする請求項12ないし14のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
レジスタ領域(94)とのブラシ(68)の次々の接触の数が測定されることを特徴とする請求項12ないし15のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
手持ち式ピペットを制御する方法において、
レジスタ領域(94)との少なくとも1つのブラシ(68)の2回の接触の間でブラシ(68)によりトラック(80)上で移動された道程の数を測定し、
測定された数を所定の数と比較する、ことを特徴とする制御方法。
【請求項18】
所定の数を考慮して、試料採取されるべき液体の量の値の表示を要求することを特徴する請求項17に記載の制御方法。
【請求項19】
測定された数が所定の数と異なる場合、警報メッセージを表示することを特徴とする請求項17ないし18のうちのいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項20】
トラック(80、82)の数が少なくとも2つであり、
トラック(80、82)とのブラシ(68、70)の接触の続発を検出し、
検出された続発を所定の続発と比較する、ことを特徴とする請求項17ないし19のうちのいずれか1項に記載の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2007−528494(P2007−528494A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502425(P2007−502425)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【国際出願番号】PCT/IB2005/000469
【国際公開番号】WO2005/093787
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(503285760)
【Fターム(参考)】