説明

試料溶液のpHを調節する方法

【課題】pH調節用の溶液を添加および/または除去する工程なしに、微小流体素子を用いて試料溶液のpHを調節する手段を提供する。
【解決手段】アノードおよびカソードチャンバを備えた電気分解素子を備える微小流体素子を用い、アノードチャンバの流入口から水より標準酸化還元電位が低い化合物を含む溶液をアノードチャンバに流入させる工程、カソードチャンバの流入口から水より標準酸化還元電位が高い化合物を含む溶液をカソードチャンバに流入させる工程、アノードおよびカソードチャンバが備える電極に電圧を加え電気分解を行う工程、ならびにアノードおよびカソードチャンバ内の電解液を同じ体積で混合する工程を含み、アノードおよびカソードチャンバの体積は、アノードおよびカソードチャンバ内の電解液を混合して得られる試料溶液の、標的とするpHに従って所定の比率に調節されている、試料溶液のpH調節方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気分解素子を備える微小流体素子を用いて、試料溶液のpHを調節する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微小流体素子は、入口、出口、および反応容器などがマイクロチャンネルを介して連結されている装置をいう。かかる装置は、当業界に公知であり、LOC(Lab−on−a−chip)のような微細分析装置に広く利用されている。かかる微小流体素子には、前記マイクロチャンネルが形成されている以外に、一般的に流体の移送のためのマイクロポンプ、流体の混合のためのマイクロミキサ、および移送される流体を濾過するためのマイクロフィルタなどが備わっている。
【0003】
LOCのような生物学的分析装置として用いられる微小流体素子は、細胞の溶解、PCRなどの核酸の増幅および分離、蛋白質の分離および検出などの、一連の生物学的分析工程を行う。かかる生物学的分析工程において、従来のpH調節は、酸性溶液、中性溶液、またはバッファ溶液を添加および/または除去することによって行っていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、微小流体素子において、かかるpH調節用の溶液を添加および/または除去する場合、試料の量が少ないために、希釈、混合、およびマイクロチャンネル内への物質移動などの問題が発生しうる。また、このように添加されたpH調節用の溶液に含まれる物質が、その後の生物学的分析工程で阻害物質として作用しうる場合には、使用後に除去しなければならない。
【0005】
そこで本発明は、pH調節用の溶液を添加および/または除去する工程なしに、微小流体素子を用いて試料溶液のpHを調節する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を積み重ねた結果、アノードチャンバおよびカソードチャンバの体積の比率を調節した電気分解素子を備える微小流体素子を用いて電気分解を実施し、その電気分解により得られるアノードチャンバ内の酸性の電気分解された溶液、およびカソードチャンバ内の塩基性の電気分解された溶液を同じ体積で混合することにより、試料溶液のpHを調節できるということを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
したがって、本発明は、アノードチャンバ、カソードチャンバ、および分割膜を備える電気分解素子を備える微小流体素子であって、前記分割膜は、前記アノードチャンバおよび前記カソードチャンバの間に設置されており、前記アノードチャンバは、アノードチャンバ溶液が流入する流入口、アノードチャンバ溶液が流出する流出口、および電極を備え、前記カソードチャンバは、カソードチャンバ溶液が流入する流入口、カソードチャンバ溶液が流出口、および電極を備える微小流体素子を用いて、試料溶液のpHを調節する方法であって、(a)前記アノードチャンバの流入口を介して、水より標準酸化還元電位が低い化合物を含むアノードチャンバ溶液を、前記アノードチャンバに流入させるステップと、(b)前記カソードチャンバの流入口を介して、水より標準酸化還元電位が高い化合物を含むカソードチャンバ溶液を、前記カソードチャンバに流入させるステップと、(c)前記アノードチャンバおよび前記カソードチャンバに備わっている前記電極を介して電圧を印加し、前記アノードチャンバおよび前記カソードチャンバで電気分解を行うステップと、(d)前記アノードチャンバ内の酸性の電気分解された溶液および前記カソードチャンバ内の塩基性の電気分解された溶液を同じ体積で混合するステップと、を含み、前記アノードチャンバの体積および前記カソードチャンバの体積は、前記アノードチャンバ内の電気分解された溶液および前記カソードチャンバ内の電気分解された溶液を混合して得られる試料溶液の、標的となるpHに従って所定の比率に調節されていることを特徴とする、試料溶液のpHを調節する方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のpH調節方法によれば、試料溶液のpHは、アノードチャンバ溶液およびカソードチャンバ溶液を電気分解した後、得られた溶液を同じ体積で混合することにより、所望の値に調節可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、アノードチャンバ、カソードチャンバおよび分割膜を備える電気分解素子を備える微小流体素子であって、前記分割膜は、前記アノードチャンバおよびカソードチャンバの間に設置されており、前記アノードチャンバは、アノードチャンバ溶液が流入する流入口、アノードチャンバ溶液が流出する流出口、および電極を備え、前記カソードチャンバは、カソードチャンバ溶液が流入する流入口、カソードチャンバ溶液が流出する流出口、および電極を備える微小流体素子を用いて、試料溶液のpHを調節する方法であって、(a)前記アノードチャンバの流入口を介して、水より標準酸化還元電位が低い化合物を含むアノードチャンバ溶液を、前記アノードチャンバに流入させるステップと、(b)前記カソードチャンバの流入口を介して水より標準酸化還元電位が高い化合物を含むカソードチャンバ溶液を、前記カソードチャンバに流入させるステップと、(c)前記アノードチャンバおよび前記カソードチャンバに備わっている前記電極を介して電圧を印加し、前記アノードチャンバおよび前記カソードチャンバで電気分解を行うステップと、(d)アノードチャンバ内の酸性の電気分解された溶液およびカソードチャンバ内の塩基性の電気分解された溶液を同じ体積で混合するステップと、を含み、前記カソードチャンバの体積およびアノードチャンバの体積は、前記アノードチャンバ内の電気分解された溶液および前記カソードチャンバ内の電気分解された溶液を混合して得られる試料溶液の、標的となるpHに従って所定の比率に調節されていることを特徴とする、試料溶液のpHを調節する方法を提供する。
【0010】
本発明の方法は、まず(a)前記アノードチャンバの流入口を介して、水より標準酸化還元電位が低い化合物を含むアノードチャンバ溶液を、前記アノードチャンバに流入させるステップと、(b)前記カソードチャンバの流入口を介して、水より標準酸化還元電位が高い化合物を含むカソードチャンバ溶液を前記カソードチャンバに流入させるステップとを含む。前記カソードチャンバ溶液は、細胞またはウイルスを含みうる。
【0011】
本発明の方法において、前記水より標準酸化還元電位が低い化合物の例は、NO、F、SO2−、PO3−、およびCO2−のような陰イオンを少なくとも一つ含む化合物であるが、これらの例に限定されるものではない。また、前記水より標準酸化還元電位が高い化合物の例は、Na、K、Ca2+、Mg2+、およびAl3+のような陽イオンを少なくとも一つ含む化合物であるが、これらの例に限定されるものではない。前記(a)および(b)のステップは、同時にまたは順次に行われうる。
【0012】
本発明の方法に用いられる前記電気分解素子において、前記分割膜は、電流を通過させるが、前記アノードチャンバおよび前記カソードチャンバに含まれている電解液の電気分解により発生するイオンおよび/または気体を通過させない特性を有することが望ましい。さらに望ましくは、前記分割膜は、電流は通過させるが、水素イオン、ならびに水酸化物イオンおよび/または気体は通過させない特性を有する。かかる分割膜の例には、Nafion(登録商標)(Dupont社製)、Dowex(登録商標)(Aldrich社製)、およびDiaion(登録商標)(三菱化学社製)などが含まれるが、これらの例に限定されるものではない。
【0013】
また、本発明の方法に使われる電気分解素子のアノードチャンバおよびカソードチャンバが備える電極の材料は、白金、金、銅、およびパラジウムからなる群より選択されうる。アノードチャンバに白金を含む電極を使用する場合、電極への蛋白質およびDNAの吸着が防止されうる。銅電極を使用する場合、アノードチャンバ溶液に含まれる、NaClなどに由来する塩化物イオンと反応してCuClを形成し、それによって毒性のある塩素ガスの発生を減らすことができる。また、パラジウム電極を使用する場合、カソードチャンバで発生した水素ガスを吸収するので、ガス除去工程が不要である。
【0014】
本発明の方法は、また、(c)前記アノードチャンバおよび前記カソードチャンバに備わっている前記電極を介して電圧を印加し、前記アノードチャンバおよび前記カソードチャンバで電気分解を行うステップを含む。本発明の方法において、前記カソードチャンバでは、水より標準酸化還元電位が低い化合物を含むカソードチャンバ溶液が含まれているために、水が電気分解され、水素ガスおよび水酸化物イオンが発生する。また、前記アノードチャンバでは、水より標準酸化還元電位が低い化合物を含むアノードチャンバ溶液が含まれているために、水が電気分解され、酸素ガスおよび水素イオンが発生する。結果的に、前記カソードチャンバ溶液のpHは塩基性側に変化し、前記アノードチャンバ溶液のpHは酸性側に変化する。
【0015】
一般的に、LOCのような生物分析用の微小流体素子では、細胞の溶解、PCR、核酸分離、または蛋白質分離などの様々な追加の生物学的分析工程を経る。かかる生物学的分析工程は、核酸または蛋白質のような生物学的分子が一般的に中性で安定であるために、ほとんど中性でなされる。特に、微小流体素子内での細胞の溶解、核酸の分離、核酸の増幅、蛋白質の分離および検出工程などが連続的な系列で行われうる。この場合、各ステップで行われる反応の結果として得られる溶液は、その後のステップで起こる反応に影響を与えうる物質が含まれていないことが望ましい。これらの溶液は、中性、またはその後の反応に適したpHを有することが望ましい。
【0016】
したがって、本発明のpH調節方法は、(d)電気分解の結果として得られたアノードチャンバ内の酸性の電気分解された溶液およびカソードチャンバ内の塩基性の電気分解された溶液を同じ体積で混合するステップをさらに含む。同じ体積で混合する手段としては、例えば、前記アノードチャンバの流出口のマイクロチャンネル、および前記カソードチャンバの流出口のマイクロチャンネルが連結して形成されたマイクロチャンネルに設置された1つのポンプが用いられうる。この場合、前記各流出口から流出する溶液の量を測定せずに、同じ体積で混合できるため、流量測定器を必要としない。また、本発明のpH調節方法は、前記アノードチャンバの流出口のマイクロチャンネルから流出する溶液の量および前記カソードチャンバの流出口のマイクロチャンネルから流出する溶液の量を測定し、同じ量を混合することによってもなされうる。しかし、本発明に用いられる混合方法は、前述の例に限定されるものではない。
【0017】
本発明の方法に用いられる微小流体素子が備える電気分解素子の望ましい一実施形態は、前記アノードチャンバの流出口のマイクロチャンネルおよび前記カソードチャンバの流出口のマイクロチャンネルが連結して形成されたマイクロチャンネルに設置された1つのポンプをさらに備える。
【0018】
本発明の方法に用いられる電気分解素子のアノードチャンバの体積およびカソードチャンバの体積は、前記アノードチャンバ内の電気分解された溶液および前記カソードチャンバ内の電気分解された溶液を混合して得られる試料溶液の、標的となるpHに従って、所定の比率に調節されていることを特徴とする。本発明の方法において、前記アノードチャンバおよび前記カソードチャンバで発生する水素イオンおよび水酸化物イオンの当量は同じである。それゆえ、アノードチャンバ溶液の総量およびカソードチャンバ溶液の総量を混合すれば、試料溶液は所望のpHを有することになる。すなわち、様々な工程において、追加的な試料のpHの調節工程を必要としない。本発明によるpH調節方法において、前記アノードチャンバおよび前記カソードチャンバの体積は、前記アノードチャンバ内および前記カソードチャンバ内の異なるイオン濃度を有する電気分解された溶液を、同じ体積で混合して標的となるpHを有する溶液が得られるように、所定の比率で変わりうる。
【0019】
以下、添付した図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
【0020】
図1Aないし図1Cは、本発明のpH調節方法を模式的に説明する図である。図1Aのように、アノードチャンバ20およびカソードチャンバ30の体積が同じである場合、電極10に電圧を印加して電気分解を行った後、アノードチャンバ20およびカソードチャンバ30で発生する水素イオンの当量と水酸化物イオンの当量は、同じである。それゆえ、それらの溶液を同じ体積で混合する場合、得られる溶液は中性のpHを有する。一方、図1Bのように、アノードチャンバ20の体積がカソードチャンバ30の体積より大きい場合には、アノードチャンバ20内の水素イオン濃度はカソードチャンバ30内の水酸化物イオン濃度に比べて低い。そのため、それらの溶液を同じ体積で混合する場合、得られる溶液は塩基性のpHを有する。さらに、図1Cのように、カソードチャンバ30の体積がアノードチャンバ20の体積より大きい場合には、カソードチャンバ30内の水酸化物イオン濃度はアノードチャンバ20内の水素イオン濃度に比べて低い。そのため、それらの溶液を同じ体積で混合する場合、得られる溶液は酸性のpHを有する。
【0021】
最終的に得られる溶液の標的となるpHは、本発明の方法に用いられる前記微小流体素子中の、前記アノードチャンバおよび前記カソードチャンバに含まれる電気分解された溶液の標準酸化還元電位、および前記アノードチャンバおよび前記カソードチャンバの体積を参照して、発生する水素イオンおよび水酸化物イオンの濃度を計算することによって決定されうる。また、最終的に得られる溶液の標的となるpHは、実験的には、様々な前記アノードチャンバおよびカソードチャンバの体積比を有する、アノードチャンバおよびカソードチャンバを有する電気分解素子を備える本発明の方法に用いられる微小流体素子を製造するステップと、前記アノードチャンバの流入口を介して水より標準酸化還元電位が低い化合物を含むアノードチャンバ溶液を、前記アノードチャンバに流入させるステップと、前記カソードチャンバの流入口を介して水より標準酸化還元電位が高い化合物を含むカソードチャンバ溶液を、前記カソードチャンバに流入させるステップと、前記アノードチャンバおよび前記カソードチャンバに備わっている電極を介して電圧を印加し、前記アノードチャンバおよび前記カソードチャンバで電気分解を行うステップと、アノードチャンバ内の酸性の電気分解された溶液およびカソードチャンバ内の塩基性の電気分解された溶液を同じ体積で混合するステップと、混合された最終溶液のpHを測定するステップとを含む方法によって決定されうる。かかる標的となるpHは、選択される電解液に従って、当業者によって容易に決定されうる。このような方法で、標的となるpHおよび試料溶液に従って、アノードチャンバおよびカソードチャンバの体積比が決定されうる。上述のように決定されたアノードチャンバおよびカソードチャンバの体積比は、アノードチャンバ内の電気分解された溶液およびカソードチャンバ内の電気分解された溶液を同じ体積で混合することにより標的とするpHが得られる、本発明による方法に用いられる電気分解素子を製造するために用いられうる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を、実施例を介してさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれら実施例に限定されるものではない。
【0023】
実施例:アノードチャンバおよびカソードチャンバの体積比によるpH調節
本実施例では、電気分解はアノードチャンバ、カソードチャンバ、および前記アノードチャンバとカソードチャンバとの間に設置されている分割膜を有する電気分解素子を用いて試料溶液のpH調節を行った。電気分解を行った後で得られたアノードチャンバ溶液およびカソードチャンバ溶液を、ポンプを用いて同じ体積で混合した。その混合溶液のpHを測定した。
【0024】
図2は、本実施例に用いた電気分解素子の構造を表した模式図である。アノードチャンバ20およびカソードチャンバ30には、それぞれ白金電極10aおよび金電極10cが備わっており、前記アノードチャンバ20および前記カソードチャンバ30は、Nafion(登録商標)(米国、Dupont社製)膜によって分割されている。本実施例では、図2の電気分解素子で、アノードチャンバ20およびカソードチャンバ30の総体積を10mlとし、体積比を変化させて電気分解素子を製造した。アノードチャンバには100mMのNaSOを満たし、カソードチャンバには100mMのNaClを満たし、電極(10a、10c)を介して5Vの直流電圧を1分間印加して電気分解を行った。その後に得られた電気分解された溶液について、マイクロポンプ40を通して混合した。前記マイクロポンプ40は、前記アノードチャンバ20の流出口のマイクロチャンネルおよび前記カソードチャンバ30の流出口のマイクロチャンネルの連結によって形成されたマイクロチャンネルに設置されている。混合溶液のpHを測定した。
【0025】
本実施例で用いたアノードチャンバおよびカソードチャンバの体積比、アノードチャンバ溶液のpH、カソードチャンバ溶液のpH、ならびに混合溶液のpHは、表1および図3の通りである。
【0026】
【表1】

【0027】
表1および図3に示されているように、アノードチャンバおよびカソードチャンバの体積比を調節し、電気分解後のアノードチャンバ溶液およびカソードチャンバ溶液を同じ体積で混合することにより、混合溶液のpHが調節できる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の電気分解素子を備える微小流体素子を用いたpH調節方法は、例えば試料分析に関連した技術分野に効果的に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1A】本発明のpH調節方法を説明する模式図である。
【図1B】本発明のpH調節方法を説明する模式図である。
【図1C】本発明のpH調節方法を説明する模式図である。
【図2】本発明の実施例に用いた電気分解素子を表した模式図である。
【図3】アノードチャンバ溶液のpH、カソードチャンバ溶液のpH、ならびにアノードチャンバおよびカソードチャンバの体積比を変化させた電気分解素子を用いて電気分解を行って得られた、各チャンバ内の電気分解された溶液を同じ体積で混合した混合溶液のpHの変化を表すグラフである。
【符号の説明】
【0030】
10 電極、
10a 白金電極、
10c 金電極、
20 アノードチャンバ、
30 カソードチャンバ、
40 マイクロポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードチャンバ、カソードチャンバ、および分割膜を備える電気分解素子を備える微小流体素子であって、前記分割膜は、前記アノードチャンバとカソードチャンバとの間に設置されており、前記アノードチャンバは、アノードチャンバ溶液が流入する流入口、アノードチャンバ溶液が流出する流出口、および電極を備え、前記カソードチャンバは、カソードチャンバ溶液が流入する流入口、カソードチャンバ溶液が流出する流出口、および電極を備える微小流体素子を用いて、試料溶液のpHを調節する方法であって、
(a)前記アノードチャンバの流入口を介して、水より標準酸化還元電位が低い化合物を含むアノードチャンバ溶液を前記アノードチャンバに流入させるステップと、
(b)前記カソードチャンバの流入口を介して、水より標準酸化還元電位が高い化合物を含むカソードチャンバ溶液を前記カソードチャンバに流入させるステップと、
(c)前記アノードチャンバおよび前記カソードチャンバに備わっている前記電極を介して電圧を印加し、前記アノードチャンバおよび前記カソードチャンバで電気分解を行うステップと、
(d)前記アノードチャンバ内の酸性の電気分解された溶液および前記カソードチャンバ内の塩基性の電気分解された溶液を同じ体積で混合するステップと、を含み、
前記アノードチャンバの体積および前記カソードチャンバの体積は、前記アノードチャンバ内の電気分解された溶液および前記カソードチャンバ内の電気分解された溶液を混合して得られる試料溶液の、標的となるpHに従って所定の比率に調節されていることを特徴とする、試料溶液のpHを調節する方法。
【請求項2】
前記水より標準酸化還元電位が低い化合物は、NO、F、SO2−、PO3−、およびCO2−からなる群より選択される少なくとも一つのイオンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水より標準酸化還元電位が高い化合物は、Na、K、Ca2+、Mg2+、およびAl3+からなる群より選択される少なくとも一つのイオンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記分割膜は、電流を通過させるが、前記アノードチャンバおよび前記カソードチャンバで電気分解によって発生したイオンおよび/または気体を通過させない特性を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電極は、白金、金、銅、およびパラジウムからなる群より選択される金属を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電気分解素子は、前記アノードチャンバの流出口のマイクロチャンネル、および前記カソードチャンバの流出口のマイクロチャンネルが連結して形成されたマイクロチャンネルに設置されたポンプをさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−171005(P2006−171005A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363918(P2005−363918)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】