説明

試薬チップ押圧機構を備えた体液分析装置

【課題】 試験チップ内の試料に一定の圧力を所定時間加え続け、かつ、試薬チップを所定位置に確実に位置決めすることが可能な血液分析装置を提供する。
【解決手段】 中空キャップ押圧機構16は、鉛直下方向の成分F1’と試薬チップ1が係止させられている所定方向(矢印D3)の成分F2とを合成した力F1を中空キャップ15に加えて押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、体液中の測定対象物を分析するための体液分析装置において、試薬チップ内に圧力を加えて体液から分離した試料を微細な流路を通して反応試薬と混和させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
血液試料に光を照射し、透過光(または反射光、散乱光)を測定して測定対象物の検出を行う方式の血液分析装置が広く知られている。これらの血液分析装置では、赤血球が測定に不都合な影響を与える場合があるため、多くの場合、全血から血漿や血清を分離したものが試料として用いられる。
【0003】
全血から血漿や血清を分離する手段としては遠心分離機が広く知られているが、医療現場では分析装置を設置するスペースが限られており、かつ、騒音や振動を抑えたいニーズがあるため、遠心分離機を用いるのは適切ではない。
【0004】
このため、試薬チップ内に設けた血漿分離膜(血球成分除去層)を用いて血漿を血液から分離する構造のものが従来から用いられている(特許文献1の図1、特許文献2の図1)。具体的には、図8に示すような血液分析装置200であり、試料Aを試料供給口211に滴下して、栓体205を手指操作で押圧して試料供給口211内の試料Aを加圧することにより血漿分離膜206で分離した血漿を流路208に沿って移動させ、反応室207において反応した体液の成分が分析される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−224090号公報
【特許文献2】特開2007−248101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2の技術では、栓体205を人間が押圧するため個人差が生じ、試料が流れ込む速度が不均一となって溶解ムラが生じたり、試薬の流れが強すぎて反応室内に気泡が生じたり、押圧不足により試料の移送不全が生じる等の問題があった。また、試料の光量レベルを正確に測定するためには試験チップを所定位置に配置する必要があるが、人間が栓体205を押圧している間に試験チップが所定位置から移動してしまい正確な測定を行えない問題もあった。
【0007】
なお、試料の流れ込む速度は、栓体205を手動で押し込むことによる操作上の変動に起因して不均一になるだけでなく、個々の試料が持つ特性に起因して不均一になることがある。生体試料である血液を扱う場合では、試料の蛋白濃度や脂質濃度によって粘性や表面張力が変動するため、特に、ゆっくりとした押し込み操作を行ったときに流れ込み速度に変動が生じやすい。さらに、全血から血漿を分離する工程を伴う場合には、試料のヘマトクリマット値の個体差(30%〜60%)により、分離膜上での血球成分の目詰まりによる圧力損失が、分離される血漿量や流入速度に大きな影響を与えることが分かっている。なお、「ヘマトクリット値」とは、血液中にしめる血球部分の容積の割合を示す数値である。
【0008】
上記では、血液についての問題を示したが、体液を用いた場合にも同様の問題がある。
【0009】
この発明は、試験チップ内の試料に一定の圧力を所定時間加え続け、かつ、試薬チップを所定位置に確実に位置決めすることが可能な体液分析装置の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)この発明の体液分析装置は、
体液滴下部から投入した体液を分離膜を介して分離して得た試料を空気圧で流路から反応部に送り込むよう構成した試薬チップを用いて、試料中の測定対象物を分析するための体液分析装置であって、
前記試薬チップを位置決めのために所定方向に係止させる位置決め係止部と、
前記試薬チップを所定位置に載置した状態で、前記試薬チップの体液滴下部を覆うことにより、閉じた空間を前記体液滴下部との間で形成する変形可能な中空キャップと、
前記中空キャップが一端に設けられ、駆動部が他端に接続され、回転中心となる支軸が前記試薬チップを載置する面に対して上方に位置する梃子によって構成される中空キャップ押圧機構であって、前記駆動部が前記梃子の他端を上方向に押し上げることにより、前記梃子の一端に設けられた前記中空キャップが下方向に移動して前記試薬チップの体液滴下部を覆った状態で、前記試薬チップを載置する面に対して垂直方向の成分と、前記試薬チップを係止させた前記所定方向に向かう成分とを合成した力によって前記中空キャップを押圧する中空キャップ押圧機構と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
このように、梃子を用いて載置面に対して垂直方向の力だけでなく、試薬チップを係止させた所定方向に向かう力を中空キャップに加えることで、試薬チップを所定位置に正確に位置決めした状態で、測定開始から終了まで試薬チップ内に所望の圧力を与えることができる。また、試料や溶解途上の試薬が逆流することなく確実に測定でき、ヘマトクリット値が高い血液であっても血漿を安定に分離でき、確実に反応室まで送り込むことができる。また、中空キャップ押圧機構は梃子により適切な力で動作されるので、押圧する人間による個人差が排除され、また試料の特性(粘性、表面張力など)を考慮した押圧ができる。
【0012】
(2)この発明の体液分析装置は、
体液滴下部から投入した体液を血漿分離膜を介して分離して得た血漿を空気圧で流路から反応部に送り込むよう構成した試薬チップを用いて、血漿中の測定対象物を分析するための体液分析装置であって、
前記試薬チップを位置決めのために所定方向に係止させる位置決め係止部と、
前記試薬チップを所定位置に載置した状態で、前記試薬チップの体液滴下部を覆うことにより、閉じた空間を前記体液滴下部との間で形成する変形可能な中空キャップと、
前記中空キャップが前記試薬チップの体液滴下部を覆った状態で、前記試薬チップを載置する面に対して垂直方向の成分と、前記試薬チップを係止させた前記所定方向に向かう成分とを合成した力によって前記中空キャップを押圧する中空キャップ押圧機構と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
このように、載置面に対して垂直方向の力だけでなく、試薬チップを係止させた所定方向に向かう力を中空キャップに加えることで、試薬チップを所定位置に正確に位置決めした状態で、測定開始から終了まで試薬チップ内に所望の圧力を与えることができる。また、試料や溶解途上の試薬が逆流することなく確実に測定でき、ヘマトクリット値が高い血液であっても血漿を安定に分離でき、確実に反応室まで送り込むことができる。また、中空キャップ押圧機構は適切な力で動作されるので、押圧する人間による個人差が排除され、また試料の特性(粘性、表面張力など)を考慮した押圧ができる。
【0014】
(3)この発明の体液分析装置は、
前記中空キャップが、試薬チップに接触する押圧面および前記押圧面より垂直方向に延びる側壁を有しており、前記側壁を球状の曲面に成形したこと、
を特徴とする。
【0015】
これにより、中空キャップを徐々に変形させることが可能となり、中空キャップが一気に変形してしまい内部圧力が急激に変化するのを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の血液分析装置の構成を示す図である。
【図2】試薬チップの構造を示す図である。
【図3】試薬チップの反応部の構造を示す図である。
【図4】中空キャップが試薬チップを覆った状態を示す図である。
【図5】中空キャップが変形した状態を示す図である。
【図6】中空キャップの外形を示す図である。
【図7】他の実施形態の中空キャップの外形を示す図である。
【図8】従来技術の血液分析装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[血液分析装置の構成]
本発明の血液分析装置100の構成について、図1を用いて以下に説明する。なお、図1では、中空キャップ15が試薬チップ1に接触していない状態の血液分析装置100を示している。
【0018】
血液分析装置100は、図1に示すように、筐体12と、試料を格納した試薬チップ1を載せるために当該筐体12に取り付けられた載置台13と、試薬チップ1の上面を押圧するための中空キャップ15と、中空キャップ15の駆動機構である梃子16および上下方向(図1に矢印D1、D2で示す)に軸18を駆動するモータ19と、試薬チップ1の所定部分に光を照射して光量レベルを得ることにより測定対象物を分析する測定用光学部品17とを備えている。また、図1に示す載置台13には、試薬チップ1を所定方向に係止させて位置決めするための突起14(位置決め係止部)が設けられている。
【0019】
まず、図1に示す試薬チップ1の構造について、図2などを用いて説明する。なお、図2Aは、試薬チップ1の平面図であり、図2Bは、図2Aに示す試薬チップ1のY−Y断面図であり、図2Cは、図2Aに示す試薬チップ1のα矢視図である。
【0020】
図2Aに示すように、試薬チップ1は、血液受け2と反応部3を組み合わせて構成される。なお、血液受け2の下面には、反応部3の切り欠き39に嵌め込むための結合部25が設けられており、これにより血液受け2と反応部3とが一体的に固定される。
【0021】
図2Bに示すように、血液受け2の上面には、凹状の血液滴下口21および環状の隆起部23が設けられている。血液滴下口21の底部には貫通孔22が設けられる。なお、血液滴下口21および隆起部23により血液滴下部が構成される。また、血液受け2には、試薬チップ1を持ち運ぶための取手部分20が設けられている。突起24は、指に針などで傷を付けて血を垂らした場合に指を拭うために用いられる。
【0022】
反応部3には、図2Aに示すように、複数個(例えば、図2に示す8個)の反応室33、および試薬チップ1の位置決めのための切り欠き34が設けられている。なお、この切り欠き34は、図2Aに破線で示す載置台13の突起14に係止される。
【0023】
図3Aに示すように、反応部3は、上から上層フイルム38、中層フイルム36、下層フイルム37の順に積層した構造となっており、各フイルムを接着剤で貼り付けて形成される。図3B〜Dは、試薬チップ1の反応部3を構成する各フイルム(中層フイルム36、下層フイルム37、上層フイルム38)の詳細を示す図である。
【0024】
図3Bに示す中層フイルム36は、貫通孔31aと、複数の反応室33の側壁を構成する反応孔33aと、貫通孔31aから各反応孔33aへ分岐する流路35とを打ち抜いた空気透過性の多孔膜(例えば、厚み0.1mm)によって成形される。なお、図2Aに示す反応室33は、反応孔33aの下面を下層フイルム37で、上面を上層フイルム38で覆うことにより形成される空間である。
【0025】
また、流路35は、幅が0.3mm程度と細いものであり(中層フイルム36の厚みが0.1mmのとき、断面積は0.03m)、流路35より分岐した各反応室33に約40μLの血漿が充填されれば容量が満杯になるようになっているため、各反応室33には適度な量の血漿を供給する必要がある。また、図2Aに示す各反応室33には、総コレステロール、グルコース、中性脂肪などの測定対象物を分析するための試薬がそれぞれ封入されている。なお、測定項目は必要に応じて増減し設定することができ、測定対象の変更も可能である。
【0026】
図3Cに示す下層フイルム37には、反応室33の下面を構成する部分33bを除いて不透明印刷した樹脂材料(スチレン・アクリロニトリル樹脂など)が用いられる。
【0027】
図3Dに示す上層フイルム38には、反応室33の上面を構成する部分33cを除いて不透明印刷するとともに、貫通孔31bを設けた樹脂材料(スチレン・アクリロニトリル樹脂など)が用いられる。中層フイルム36の貫通孔31aおよび上層フイルム38の貫通孔31bが、図2Aに示す反応部3の貫通孔31を構成する。また、上層フイルム38の枠体40に血漿分離膜32が嵌め込まれる。なお、これら上層フイルム37、下層フイルム38の厚みは、例えば100〜150μmである。
【0028】
さらに、血液分析装置100の各部について、以下に詳細に説明する。
【0029】
図1に示す筐体12の上部には、試薬チップ1の血液滴下部(図2に示す血液滴下口21および環状の隆起部23)を覆う中空キャップ15と、中空キャップ15を押圧して空気圧で血漿を反応室33に送り込むための中空キャップ押圧機構16が設けられている。
【0030】
中空キャップ15は、図1に示すように、試薬チップ1に接触する押圧面15a、および前記押圧面15aより垂直方向に延びる側壁15bを有している。中空キャップ15は、ブチルゴムなどの弾性部材により、側壁15bが球状の曲面に成形されており、押圧面15aが試薬チップ1の隆起部23(図2)と合致するようにその外形および内径が設計される。なお、中空キャップ15の押圧面15aの外形は、例えば17mm、内径は14mm程度で、中空キャップ15の厚みはほぼ均一に成形している。
【0031】
また、図1に示すように中空キャップ押圧機構である梃子16は、中空キャップ15が梃子の一端16aの凹部に嵌め込んで設けられ、梃子の他端16cには上下移動な軸18を介して駆動部であるモータ19が接続される。梃子16の回転中心となる支軸16bは、図1に示すように、試薬チップ1を押圧する面に対して上方に位置するように筐体12の上部に固着される。
【0032】
図1に示す中空キャップ15が試薬チップ1に接触していない状態で、モータ19が梃子16の他端16cを上方向(図1に矢印D1で示す)に押し上げると、まず、図4に示すように中空キャップ15が下方向(図1に矢印D2で示す)に移動して試薬チップ1の血液滴下部を覆った状態になる。図4は、中空キャップ15が試薬チップ1を覆った状態を示す図である。このとき、中空キャップ15が試薬チップを押圧する力F1は、図4に示すように鉛直下方向(つまり載置面13に対して垂直方向)に向かう。
【0033】
このように、中空キャップ15は、試薬チップ1を位置決め係止部である突起14に対して所定方向(図1に矢印D3で示す)に係止させて載置台13の所定位置に載置した状態で、試薬チップ1の血液滴下部(図2の血液滴下口21および環状の隆起部23)を覆うことにより、閉じた空間を試薬チップ1の血液滴下部との間で形成する。
【0034】
さらに、モータ19の駆動により中空キャップ15が下方向に移動すると、図5に示すように中空キャップ15が変形した状態になる。このとき、中空キャップ押圧機構16は、図5において梃子16の一端16aが支軸16bを中心として回転する力(図5のF1)の方向に中空キャップ15を押圧する。この力F1は、鉛直下方向(つまり載置面13に対して垂直方向)の成分(図5のF1’)と試薬チップ1が係止させられている所定方向(図5のD3)に向かう成分(図5のF2)とを合成した力である。このように鉛直下方向の力F1’だけでなく、所定方向(図5のD3)に向かう力F2が中空キャップ15に加わるのは、梃子16の一端16aが支軸16bを含む水平面(図5に点線で示す)より下方向に移動したためである。さらに、中空キャップ15が変形することにより生じた空気圧によって、血漿が試薬チップ1の反応部33(図2)に送り込まれるとともに、試薬チップ1が所定位置に保持される。
【0035】
なお、図5に示す所定方向(図5のD3)に向かう力F2は、試薬チップ1の反応部3が変形しない程度の大きさになるように設計する。例えば、梃子16の一端16aから支軸16bまでの長さや、試薬チップ1を押圧する面に対する支軸16bの相対的な位置を変更する等により、試薬チップ1を係止させる力F2の大きさを調節することができる。
【0036】
中空キャップ押圧機構16は、筐体12に固定されたモータ19により、測定を開始してから測定を終了するまで所定時間(例えば、5分間)だけ駆動するよう制御され、その間、中空キャップ15が試薬チップ1を押圧し続ける。
【0037】
以上のように、中空キャップ15の押圧面15aが試薬チップ1の上面を押下し、試薬チップ1の内部において空気が圧縮されて圧力が上昇することで、血液から血漿が分離され、流路を通って反応室33に送り込まれることになる。
【0038】
図1に示す載置面13には、本実施形態では、透過光量を測定するために、各反応室33に対応する位置に孔が開けられている。
【0039】
さらに、載置した試薬チップ1の反応室33を走査するための測定用光学部品17は、透過光量測定のために必要な光源17aを載置台13の下側に、受光器17bを載置台13の上側に備える。
【0040】
光源17aは、測定項目に応じて波長の異なる複数のチップLEDや、チップLEDの光量を保証するフォトダイオードで構成される。例えば、波長がそれぞれ405nm、630nm、810nmの3種類のチップLEDを用いることができ、810nmのチップLEDは、試薬の発色に対して吸収の無い波長であるため、吸収のバックグラウンド影響を除去する目的で使用される。また、受光器17bにはフォトダイオードを使用し、電流−電圧変換回路からA/D変換回路を介して光量レベルを得ることができる。
【0041】
[血液分析装置100による測定の手順]
図1に示す血液分析装置100によって行われる血液分析の手順を以下に示す。
【0042】
まず、図3に示す試薬チップ1の血液滴下部に1滴(約50μL)の血液を指または注射器の針からたらす。さらに、試薬チップ1の取手部分20を持った作業者は、試薬チップ1を載置台13にセットする。このとき、図2Aに示すように、試薬チップ1の位置決めのための切り欠き34が載置台13の突起14に係止されるまで所定方向に押し込む。
【0043】
さらに、入力操作(スタートボタンを押下する等)に応じて、モータ19が中空キャップ押圧機構16を始動させ、ネジ機構により軸16bが回転してレバー16cを押し上げ、梃子16の支軸16bを中心として中空キャップ15が押し下げられ、中空キャップ15が試薬チップ1の血液滴下部に接触する(図4)。
【0044】
さらに中空キャップ15が下方向に押圧され変形すると(図5)、鉛直下方向(つまり載置面13に対して垂直方向)の成分(図5のF1’)と試薬チップ1が係止させられている所定方向(図5のD3)に向かう成分(図5のF2)とを合成した力F1が加わり中空キャップ15に加わり、試薬チップ1の血漿が流路35を通して各反応室33に押し込まれ試薬との反応が開始する。
【0045】
このときモータ19は、中空キャップ15内の圧力を数秒以内にピーク圧力に到達させるよう駆動され、測定開始から測定終了まで中空キャップ15を押し込んだ状態を保持して加圧状態を維持する。本実施形態では、試薬チップへの加圧条件は、加圧操作開始からピーク圧力に達するまでの時間を3秒以内とし、到達させるピーク圧力は4kPa以上、26.6kPa以下としたが、これに限定されるものではない。
【0046】
各反応室33の反応時間が経過するまで、測定用光学部品17が各反応室33を一定時間間隔(例えば、10秒間隔)で走査して、透過光量を測定する。
【0047】
試薬チップ1の測定が終わると、検出されたデータが出力されるとともに、モータ19が逆転して軸18が押し下げられて中空キャップ15による押圧が解除され、測定済みの試薬チップ1が取り出せる状態になる。なお、測定の終了を、ブザー等で知らせるようにしてもよい。
【0048】
[その他の実施形態]
なお、上記実施形態では、図1に示すように、中空キャップ15の側壁15bを球状の曲面に成形したが、その他の形状に成形することも可能である。例えば、図6に示す中空キャップ15’のように、側壁15b’を平面に成形することも可能である。ただし、図1に示す中空キャップ15の方が、より押圧方向に変形し易い構造であり、所望の圧力を得るのに適している。
【0049】
なお、上記実施形態では、梃子16を用いて中空キャップ15を円軌道上に移動させて、試薬チップ1の上面を押圧することとしたが、その他の機構を採用することもできる。例えば、一端に中空キャップ15を設けたL字形のリンクを用いて当該リンクを回転させるよう力を加えたり、ギアなどの機構を介して支持を駆動させて回転させる等により、少なくとも中空キャップ15が設けられ、回転中心が前記試薬チップ1を押圧する面に対して上方に位置するリンク(連結部材)を備えた機構によって実現することができる。
【0050】
また、例えば、図1に示す梃子16の代わりに、中空キャップの真上にモータを配置し、モータにより先端に中空キャップ15を備えた軸を直線上に移動させて、試薬チップ1の上面を直接押し込むように構成しても良い。この場合、モータが軸に加える力が、試薬チップ1を位置決めのために係止する方向(図1の矢印D3の向き)にも加わるように、モータの軸を傾けて設置すればよい。
【0051】
なお、上記実施形態では、図1に示す載置面13を水平に配置することとしたがこれに限定されるものではなく、載置面13を傾けて設け、中空キャップ15から当該載置面に対して垂直方向の力と、前記試薬チップを係止させた前記所定方向に向かう載置面に対して平行の力とを試薬チップ1に同時に加えるようにしてもよい。
【0052】
なお、上記実施形態では、中空キャップ15の厚みを一定としているが、中空キャップ15の硬さや容積に応じて部分的に厚みを変える等により、中空キャップ15を変形させ易くすることも可能である。
【0053】
また、上記実施形態では、試中空キャップの押圧面15aを平面に形成しているが、図7に示すように、中空キャップの押圧面15aに環状の突起15cを複数設けて境界面における吸着性(密着性)を増すような構成を採用しても良い。図7は、中空キャップ15の押圧面15aを拡大した図である。
【0054】
なお、上記実施形態では、試料を血液としたが、これに限られるものではなく、血液以外の体液、例えば、唾液、尿、リンパ液、汗、細胞間液など、含まれる物質を分離した状態で分析を行う必要がある他の液体を試料として用いることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液滴下部から投入した体液を分離膜を介して分離して得た試料を空気圧で流路から反応部に送り込むよう構成した試薬チップを用いて、試料中の測定対象物を分析するための体液分析装置であって、
前記試薬チップを位置決めのために所定方向に係止させる位置決め係止部と、
前記試薬チップを所定位置に載置した状態で、前記試薬チップの体液滴下部を覆うことにより、閉じた空間を前記体液滴下部との間で形成する変形可能な中空キャップと、
前記中空キャップが一端に設けられ、駆動部が他端に接続され、回転中心となる支軸が前記試薬チップを載置する面に対して上方に位置する梃子によって構成される中空キャップ押圧機構であって、前記駆動部が前記梃子の他端を上方向に押し上げることにより、前記梃子の一端に設けられた前記中空キャップが下方向に移動して前記試薬チップの体液滴下部を覆った状態で、前記試薬チップを載置する面に対して垂直方向の成分と、前記試薬チップを係止させた前記所定方向に向かう成分とを合成した力によって前記中空キャップを押圧する中空キャップ押圧機構と、
を備えたことを特徴とする体液分析装置。
【請求項2】
体液滴下部から投入した体液を血漿分離膜を介して分離して得た血漿を空気圧で流路から反応部に送り込むよう構成した試薬チップを用いて、血漿中の測定対象物を分析するための体液分析装置であって、
前記試薬チップを位置決めのために所定方向に係止させる位置決め係止部と、
前記試薬チップを所定位置に載置した状態で、前記試薬チップの体液滴下部を覆うことにより、閉じた空間を前記体液滴下部との間で形成する変形可能な中空キャップと、
前記中空キャップが前記試薬チップの体液滴下部を覆った状態で、前記試薬チップを載置する面に対して垂直方向の成分と、前記試薬チップを係止させた前記所定方向に向かう成分とを合成した力によって前記中空キャップを押圧する中空キャップ押圧機構と、
を備えたことを特徴とする体液分析装置。
【請求項3】
請求項1または2の体液分析装置において、
前記中空キャップが、試薬チップに接触する押圧面および前記押圧面より垂直方向に延びる側壁を有しており、前記側壁を球状の曲面に成形したこと、
を特徴とする体液分析装置。
【請求項4】
体液滴下部から投入した体液を分離膜を介して分離して得た試料を空気圧で流路から反応部に送り込むよう構成した試薬チップを用いて、血漿中の測定対象物を分析するための体液分析方法であって、
前記試薬チップを位置決めのために所定方向に係止させ、
前記試薬チップを前記位置決め係止部に係止させて所定位置に載置した状態で、前記試薬チップの体液滴下部を梃子の一端に設けられた変形可能な中空キャップで覆うことにより、閉じた空間を前記体液滴下部との間で形成し、
前記試薬チップの体液滴下部を覆った状態で、前記試薬チップを載置する面に対して垂直方向の成分と、前記試薬チップを係止させた前記所定方向に向かう成分とを合成した力によって前記中空キャップを押圧する、
ことを特徴とする体液分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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