説明

試薬等加熱装置およびこれを備える培養処理装置

【課題】 コンパクトな構成で効率よく試薬等の液体を加熱して、連続供給を可能とし、また、チューブを簡単に交換できるようにする。
【解決手段】
試薬L等の液体を流通させるチューブ3と、該チューブ3を螺旋状に巻き付けるコア部材2と、外面にチューブ3を巻き付けた該コア部材2を挿脱可能に収容する収容部11を有する略円筒状の断熱部材4とを備え、コア部材2に熱源7が備えられている試薬等加熱装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬等加熱装置およびこれを有する培養処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、変質や性能劣化等を防止するために5〜10℃の温度に保冷された試薬等を人体の体温に相当する約37℃に加熱するために、電気ヒータ等の加熱手段を内蔵した熱容量の大きな蓄熱材を資料分注プローブの周囲に配置する試薬加熱装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この試薬加熱装置は、試薬注入手段に装着された分注プローブに収容されている少量の試薬を加熱することにより、1測定分の試薬を加熱することとしている。
【特許文献1】特開平5−119041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、分注プローブを加熱する方式の試薬加熱装置では、分注プローブ内に収容されている分の少量の試薬しか加熱することができず、しかも、連続的に供給したい場合に、分注プローブ内の試薬が所定温度に加熱されるまで待たなければならず、効率が悪いという不都合がある。一方、分注プローブに接続する配管を加熱する方法も考えられるが、加熱する配管部分が長くなればその配管部分を加熱するための加熱装置も長くなり装置が大がかりになるという問題がある。また、このような長い配管部分を加熱する場合に、配管部分の外周を覆うようにヒータを配置する方法では、配管部分の交換作業が困難になるという問題もある。
【0004】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、コンパクトな構成で効率よく試薬等の液体を加熱して、連続供給を可能とし、また、チューブを簡単に交換できる試薬等加熱装置および培養処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、試薬等の液体を流通させるチューブと、該チューブを螺旋状に巻き付けるコア部材と、外面にチューブを巻き付けた該コア部材を挿脱可能に収容する収容部を有する略円筒状の断熱部材とを備え、前記コア部材に熱源が備えられている試薬等加熱装置を提供する。
【0006】
本発明によれば、コア部材にチューブを螺旋状に巻き付けることにより、短い寸法内に十分に長いチューブを配置することができる。コア部材には熱源が備えられているので、熱源の作動によりチューブが加熱され、チューブ内に流通させられる試薬等の液体が加熱される。また、コア部材に巻き付けられた状態のチューブにはその半径方向外方を覆う断熱部材が配置されるので、コア部材の熱源からの熱が外部に漏れることなくチューブ内の液体に効率よく供給される。
【0007】
その結果、螺旋状に巻かれた比較的長いチューブ内の比較的多量の試薬等の液体が加熱されながら流通し、試薬等加熱装置を出るまでに、供給するのに適した所定の温度まで昇温される。したがって、試薬等の液体を連続的に供給しても、チューブ内を長い距離にわたって流通させられる間に適度の温度まで加熱されるので、供給される際に試薬等の液体の温度が下がることがなく、効率的に供給されることになる。
【0008】
また、断熱部材が、外周面に螺旋状にチューブを巻き付けたコア部材を収容部内に挿脱可能に収容するので、チューブの交換時には、収容部内からコア部材を抜き出すことにより、コア部材の外部に巻き付けられているチューブを簡易に取り外すことができる。したがって、コンパクトな構成で、試薬等の液体を効率よく加熱でき、しかも、チューブの交換が容易な試薬等加熱装置を提供することができる。
【0009】
上記発明においては、前記コア部材がチューブを巻き付ける柱状の伝熱部材を備え、前記熱源が、前記伝熱部材に形成された差込孔内に挿入されるヒータからなることとしてもよい。
このように構成することで、ヒータの作動により伝熱部材が加熱され、加熱された伝熱部材を介してチューブ内の試薬等の液体が加熱されることになる。伝熱部材を介在させることで、加熱範囲を拡大してチューブ内の液体を効率よく加熱することができる。また、伝熱部材に設けられた差込孔内にヒータを挿入することで、ヒータを交換容易とすることができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記伝熱部材の外周面の前記断熱部材の収容部への挿入方向後側に、半径方向外方に突出する鍔部が備えられ、前記断熱部材の収容部の内周面に、半径方向内方に突出する内鍔部が備えられていることとしてもよい。
このように構成することで、伝熱部材の周囲に螺旋状に巻き付けられたチューブが、伝熱部材の鍔部と、断熱部材の内鍔部との間に挟まれて相互に密着させられる。これにより、伝熱部材の周囲にチューブを隙間なく巻き付けた状態に配置し、伝熱部材からの熱を効率的にチューブ内の液体に伝達することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記チューブが予め螺旋状に形成されていることが好ましい。予め螺旋状に形成されていることにより、コア部材に対して螺旋形状のままで一体として着脱することができる。その結果、着脱作業が容易となり、組立作業、および、保守作業の作業性を向上することができる。
【0012】
また、本発明は、上記いずれかの試薬等加熱装置と、試薬等を所定の温度に保冷しつつ貯留する保冷容器から試薬等を吸引して、前記試薬等加熱装置のチューブに供給する送給装置とを備える試薬等供給装置を提供する。
本発明によれば、送給装置の作動により、保冷容器に保冷された状態で貯留されている試薬等の液体が吸引されて試薬等加熱装置のチューブに供給される。試薬等加熱装置においては、試薬等がチューブ内を流通する間に加熱され、所定の温度となって放出される。したがって、性能劣化や変質を防止するために保冷されていた試薬等の液体を、所望の温度に加熱して供給することができる。この場合に、試薬等加熱装置をコンパクトに構成できるので、試薬等供給装置全体をコンパクトにすることができる。また、比較的長いチューブ内で加熱された試薬等を供給するので、加熱されるまでの待ち時間を必要とせず、連続供給することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る試薬等加熱装置によれば、コンパクトな構成で効率よく試薬等の液体を加熱することができるという効果を奏する。また、本発明に係る試薬等供給装置によれば、劣化、性能低下防止のために保冷されている試薬等の液体をコンパクトな構成で効率よく加熱して所望の温度として連続的に供給することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る試薬等加熱装置および試薬等供給装置について、図1〜図7を参照して説明する。
本実施形態に係る試薬等加熱装置1は、図1に示されるように、コア部材2と該コア部材2の外周面に螺旋状に配置されるチューブ3と、該チューブ3の半径方向外方を覆うように配置される断熱部材4とを備えている。
【0015】
コア部材2は、例えば、アルミニウム合金等の熱伝導率の高い材料からなる略円柱状の伝熱部材5と、該伝熱部材5の軸方向の一端面から軸方向に沿って形成された差込孔6に挿入配置される電気ヒータ(熱源)7とを備えている。差込孔6は、図1に示されるように、伝熱部材5の周方向に間隔をあけて複数設けられてる。差込孔6を複数設けることにより、複数の棒状の電気ヒータ7を挿入配置することができ、加熱能力を調節することが可能となる。また、差込孔6を伝熱部材5の中央に設け、その差込孔6に電気ヒータ7を挿入することにしてもよい。また、図中、符号8は、伝熱部材5の温度を検出する温度センサである。
【0016】
前記伝熱部材5は、前記差込孔6が形成されている端面側の外周面に、ほぼ全周にわたって半径方向に突出する鍔部9を備えている。鍔部9には一部に切欠10が形成されている。切欠10は前記チューブ3の外径寸法よりも大きな幅寸法を有し、該切欠10を介してチューブ3を断熱部材4の内部から外部に引き出すことができるようになっている。鍔部9の高さは前記チューブ3の外径寸法よりも若干大きく形成されている。また、鍔部9の外径寸法は、前記断熱部材4の内径寸法とほぼ同等に形成されている。
【0017】
前記断熱部材4は、略円筒状に形成され、内部に前記コア部材2を収容する収容部11を形成する筒状部材12と、該筒状部材12の周囲を被覆する、例えば、セラミックファイバ等の熱伝導率の低い材料からなる断熱材13とにより構成されている。前記筒状部材12の内部に形成された収容部11は、前記鍔部9の外径寸法と同程度の内径寸法を有している。また、断熱部材4の一端側には、挿入されたコア部材2の先端面を突き当てる突当部14と、該突当部14に突き当たった状態のコア部材2の外周面に嵌合する内径寸法を有する内鍔部15とが設けられている。突当部14および内鍔部15には、前記チューブ3の外径寸法よりも大きな幅寸法を有する切欠16(図4参照)が形成されている。図中、符号17は、断熱部材4をコア部材2に固定する取付ネジ、符号18は、断熱部材4とコア部材2との軸線回りの固定角度を調節するための長孔である。
【0018】
前記コア部材2が断熱部材4の収容部11に挿入され、コア部材2の先端面が断熱部材4の突当部14に突き当たると、該コア部材2の先端部近傍の外周面が内鍔部15に嵌合し、また、コア部材2の鍔部9が断熱部材4の収容部11に嵌合して、両者が位置決め状態に組み付けられるようになっている。このとき、コア部材2と断熱部材4との間には半径方向にチューブ3の外径寸法より若干大きな幅寸法を有する円環状の空間が、断熱部材4の内周面、コア部材2の外周面、鍔部9および内鍔部15によって画定されるようになっている。
【0019】
前記チューブ3は、例えば、フッ素樹脂の柔軟な材質により構成されている。チューブ3は、図1に示されるように、前記コア部材2を構成する伝熱部材5の外周面に巻き付けられている。そして、コア部材2と断熱部材4とが組み合わされた状態で、両者間に形成される円環状の空間内に、螺旋状に巻かれたチューブ3が配置されるようになっている。また、チューブ3は、その一端を鍔部9に形成された切欠10を通して前記空間から外部に引き出されており、また、他端は突当部14および内鍔部15に形成された切欠16を介して前記空間から外部に引き出されている。
【0020】
このように構成された本実施形態に係る試薬等加熱装置1は、図6に示されるように、試薬等供給装置20に用いられる。本実施形態に係る試薬等供給装置20は、上記試薬等加熱装置1と、試薬L等を貯留し保冷する保冷庫21と、該保冷庫21に貯留されている試薬L等を吸引して前記試薬等加熱装置1のチューブ3の一端に供給するポンプ(送給装置)22と、前記チューブ3の他端に接続されたノズル23とを備えている。
【0021】
ポンプ22は、例えば、ステッピングモータによって駆動され、入力パルス数によってその液面位置を制御するよう駆動される。なお、これに限定されることなく、図7に示されるように、所定の液面センサ24によって液面位置を検出し、検出された液面位置に応じてポンプ22を駆動することにしてもよい。
【0022】
このように構成された本実施形態に係る試薬等加熱装置1および試薬等供給装置20の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る試薬等加熱装置1によれば、電気ヒータ7を作動させることにより、該電気ヒータ7を差込孔6に挿入している伝熱部材5が加熱される。伝熱部材5の温度は温度センサ8によって検出され、検出された温度に基づいて、伝熱部材5が所望の温度となるように、図示しない制御装置により電気ヒータ7が制御される。
【0023】
伝熱部材5から放出される熱は、その外周に巻き付けられているチューブ3に伝熱される。チューブ3の外側は断熱部材4によって覆われているので、伝熱部材5からの熱が、それ以上外側に放出されることが抑制され、チューブ3内の試薬L等の液体を加熱するために効率的に使用される。
この状態で、チューブ3の一端側から試薬L等の液体を供給すると、該試薬L等の液体がチューブ3に沿って伝熱部材5の外周を複数回にわたり周回し、その間に伝熱部材5からの熱を受け取って効率的に加熱され、所望の温度まで昇温される。
【0024】
また、本実施形態に係る試薬等加熱装置1においては、チューブ3を巻き付けた状態の伝熱部材5を断熱部材4の収容部11内に挿脱可能に挿入配置しているので、取付ネジ17を取り外すだけで、図5に示されるように、チューブ3を巻き付けた状態の伝熱部材5を断熱部材4内から抜き出し、さらに、伝熱部材5の外周からチューブ3を抜き出すことができる。したがって、伝熱部材5および断熱部材4からチューブ3を簡単に取り外し、簡単に交換することができる。
【0025】
本実施形態に係る試薬等加熱装置1によれば、チューブ3が伝熱部材5に螺旋状に巻き付けられることにより、チューブ3内を流れる試薬L等の液体が比較的長距離にわたって、伝熱部材5からの熱によって加熱され続ける。したがって、チューブ3内に試薬L等の液体を連続的に供給しても、試薬等加熱装置1から出力される時点における試薬L等の温度を安定して所望の温度に設定することができる。その結果、所定の温度に設定された試薬L等の液体を連続的に供給することができる。
【0026】
この場合において、本実施形態によれば、長いチューブ3を伝熱部材5に螺旋状に巻き付けることで、その占有スペースを縮小し、装置全体をコンパクトに構成することができる。そして、このようにしてコンパクトに形成された試薬等加熱装置1により試薬L等の液体を効率的に加熱することができる。
また、伝熱部材5を断熱部材4の収容部11に挿入すると、伝熱部材5に設けた鍔部9と、断熱部材4に設けた内鍔部15との間に螺旋状に巻かれたチューブ3が挟まれるように配置されるので、チューブ3どうしの間隔を詰めるようにして、伝熱部材5からの熱を効率的にチューブ3内の試薬L等の液体に伝達させることが可能となる。
【0027】
さらに、上述した試薬等加熱装置1を有する試薬等供給装置20によれば、コンパクトな構成の試薬等加熱装置1によって、試薬等供給装置20を小型化することができるとともに、保冷庫21において所定温度に保冷されている試薬L等の液体を一定温度に加熱してノズル23から連続的に供給することができる。
【0028】
なお、本実施形態においては、伝熱部材5の周囲にチューブ3を巻き付けることとしたが、これに代えて、予め螺旋状に巻いて円筒状に形成されたチューブ3を伝熱部材5の外面に嵌め込むこととしてもよい。このように構成することで、円筒状のチューブ3を一体的に組み付け、あるいは取り外すことができる。したがって、組立作業および保守作業の作業性を向上して、作業効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る試薬等加熱装置を示す縦断面図である。
【図2】図1の試薬等加熱装置を示す部分的な縦断面図である。
【図3】図1の試薬等加熱装置の一端面を示す側面図である。
【図4】図1の試薬等加熱装置の他端面を示す側面図である。
【図5】図1の試薬等加熱装置を分解した状態を示す一部を破断した正面図である。
【図6】図1の試薬等加熱装置を備える本発明の一実施形態に係る試薬等供給装置を模式的に示す全体構成図である。
【図7】図6の試薬等供給装置の変形例を示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0030】
L 試薬(液体)
1 試薬等加熱装置
2 コア部材
3 チューブ
4 断熱部材
5 伝熱部材
6 差込孔
7 電気ヒータ(熱源、ヒータ)
9 鍔部
11 収容部
15 内鍔部
20 試薬等供給装置
21 保冷庫(保冷容器)
22 ポンプ(送給装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬等の液体を流通させるチューブと、
該チューブを螺旋状に巻き付けるコア部材と、
外面にチューブを巻き付けた該コア部材を挿脱可能に収容する収容部を有する略円筒状の断熱部材とを備え、
前記コア部材に熱源が備えられている試薬等加熱装置。
【請求項2】
前記コア部材がチューブを巻き付ける柱状の伝熱部材を備え、前記熱源が、前記伝熱部材に形成された差込孔内に挿入されるヒータからなる請求項1に記載の試薬等加熱装置。
【請求項3】
前記伝熱部材の外周面の前記断熱部材の収容部への挿入方向後側に、半径方向外方に突出する鍔部が備えられ、
前記断熱部材の収容部の内周面に、半径方向内方に突出する内鍔部が備えられている請求項1または請求項2に記載の試薬等加熱装置。
【請求項4】
前記チューブが予め螺旋状に形成されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の試薬等加熱装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の試薬等加熱装置と、
試薬等を所定の温度に保冷しつつ貯留する保冷容器から試薬等を吸引して、前記試薬等加熱装置のチューブに供給する送給装置とを備える試薬等供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−250704(P2006−250704A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67513(P2005−67513)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】