説明

試薬表面への診断液のピエゾ計量分配

生物学的流体の試料が試薬含有多孔性支持体上に計量分配される検定は、生物学的流体を、その二つ以上の画分として、生物学的流体が計量分配されない間隔によって隔てながら計量分配することにより、精度及び繰り返し精度が改善される。生物学的流体が計量分配されない間隔中、試薬及び他の流体を計量分配することができる。あるいはまた、試薬及び他の流体を、同様なやり方で、生物学的流体をすでに含有する支持体上に計量分配することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析対象物と試薬とを反応させて検出可能な応答を生じさせることによって生物学的試料中の分析対象物の量を計測するために使用される試薬及び計器に関する。
【0002】
発明の背景
試薬含有支持体への液体の付着
生物学的試料、例えば、尿、血液、唾液又は粘膜もしくは組織の抽出物の中の分析対象物の量を計測するための計器が数多く開発されている。一般的に、試料液体を、分析対象物と反応する試薬を含有する面に塗布する。試薬は検出可能な応答を生じさせ、この応答を計測し、分析対象物の量と相関させる。表面は通常、親水性又は疎水性、例えば、ろ紙又はポリスチレンのようなものである。一部の装置は、表面の組み合わせ、例えば、疎水性ポリスチレン取っ手の上に親水性ろ紙パッドを使用する尿分析ストリップ試験を使用する。一般的な試験では、未反応試薬を含有するストリップを液体試料中に浸漬、すなわち完全に沈め、試料中の分析対象物と試薬との反応を通常は光学的方法によって計測する。未反応試薬そのものは水溶性であっても不溶性であってもよい。未反応試薬は、多孔性支持体に付着させる又は固定化し、乾燥させる。その支持体を支持面に取り付ける又は配置する。さらには、検定中、試薬を含む又は含まない液体を使用することができる。液体試薬は、分析対象物との反応の前、最中又は後で、通常は試料が塗布された後で、乾燥試薬をすでに含有する支持体の表面に塗布することができる。費用及び簡便さに関する明白な理由のため、試料及び試薬の量はできるだけ小さいべきである。それほど明白ではないことは、少量の液体試薬又は生物学的試料を試薬含有面に塗布する場合、均一かつ正確な応答を得ることがしばしば困難であるということである。反応区域が小さめであり、少なめの分析対象物しか存在しない場合、試薬との分析対象物の応答は減少する。
【0003】
支持体を使用して反応応答を増幅することができる。薄膜、例えば、メンブレンをアフィニティー試薬とともに固定化すると、反応体を読みゾーンに捕獲し、濃縮することができる。液体の流れを所望の方向、例えば、垂直方向ではなく横方向に向けると、液体試料又は試薬と反応ゾーンとの間の流体交換の回数が増すことにより、効率を高めることができる。交換のたび、分析対象物のさらなる反応を生じさせることができ、それにより、信号が増幅する。支持体表面の改質が試薬を反応ゾーンで単離させることを可能にする。さらには、表面そのものの性質を使用して、例えば、試薬の可溶化を高めることによって分析対象物の反応性を高める、又は表面上の試薬との反応を優先させることができる。
【0004】
大部分の生物学的試料及び液体試薬は、有意な水分を含有し、したがって、親水性支持体とは適合性であり、疎水性表面とは不適合性である。試料及び試薬液体は、計量分配されると、親水性支持体上では急速に延展し、疎水性支持体によってははじかれる。表面上での計量分配された液体と試薬との接触は、反応した又は部分的に反応した区域への直接計量分配によって生じる。しかし、支持体が比較的疎水性である場合、計量分配された液体は支持体表面でビーズを形成し、これらのビーズは、表面との接触を最小限にしようとし、したがって、試薬上に均一には延展しない。液体の計量分配に伴うもう一つの難点は、乾燥試薬が水溶性又は水不溶性のいずれでもありうるということである。不溶性乾燥試薬は液体試料にとって容易にアクセスすることはできず、可溶性試料は溶解し、液体とともに支持体上で動くことができる。試薬は、理想的には、試料と均一に接触すべきである。理由は、試料中の分析対象物の量の正確な読みを得るためには、試料に対する試薬の計測可能な応答、例えば、発色が均一でなければならないからである。
【0005】
計量分配された液体と試薬との表面上での良好な接触を得ることに関連するもう一つの問題は、試料の物理的性質に関連する。試料は、その物理的性質、例えば、表面張力、粘度、全固形分、粒度及び粘着性が異なる。したがって、試薬で覆われた支持体上に一貫した量で均一には付着しにくい。また、液体試料の量が減るにつれ、異なる性質を有する試料の一貫した量を試薬に塗布することがますます困難になる。対照的に、インクジェットプリントなどは、そのような用途のために開発された、一貫した物理的性質を有する液体に依存する。
【0006】
液体の小滴の付着は周知の操作である。例えば、数フェムトリットル〜数十ナノリットルを含有する直径約2〜300μm(一般的には50μm)の多数の小さな滴の制御された付着からプリントを形成する、ピエゾ式又はバブル作動式のインクジェットプリンタを含む。一般に圧電原理を使用して滴を形成する他の小滴付着方法が発案されているが、これらは一般的なインクジェットプリンタとは異なる。例えば、米国特許第5,063,396号、第5,518,179号、第6,394,363号及び第6,656,432号に見られる。シリンジタイプピペットを介する、より大きな滴(3〜100μL)の付着が、診断システムにおいて再現精度が高いということが知られている。そのようなピペットは、約2〜6mmの単一滴直径を生じさせる。そのようなピペットシステムの市販品の例が、CLINITEK ATLAS(登録商標)尿分析装置である。滴サイズは、ノズル形状、ポンプタイプ及び印加圧力に依存して、ノズルサイズよりも大きい又は小さいことができる。
【0007】
上述した問題は、液体試料が滴として試薬含有パッド上に計量分配される場合に特に認められる。試薬パッドを試料液体に沈める(浸漬する)ことによって試料が試薬パッドを完全に被覆するのではなく、試料が滴として加えられるとき、パッド表面と試薬との相互作用が不正確な応答を生じさせるということがわかった。支持体の疎水性が強すぎる場合、3〜100μLのオーダの大きな滴は、試薬の中へと移動せず、表面上でバブルを形成する。表面が親水性であるならば、大きな滴は過剰の流体で試薬を圧倒する。数フェムトリットル〜数十ナノリットルの小さめの滴もまた、疎水性が強すぎる支持体に付着された場合、表面区域を完全に被覆するための量を欠き、不均一なパターンでランダムに凝集するため、問題になるおそれがある。小さな滴はまた、水溶性試薬が移動するための空間を許容する。そのような小さな滴はまた、液体の蒸発を受けやすく、尿又は血液標本からなる場合にはバイオハザード性であると考えられるエアロゾルを形成しやすい。したがって、パッドを試料中に浸漬するのではなく、液体を滴として試験パッド上に付着させる場合、改善が必要であった。
【0008】
計量分配された液体と試薬との接触が完了したのち、いくつかの方法の一つを使用して結果を読むことができる。分光画像に基づいて応答を生じさせる光学的方法が一般に使用される。結果は、有用であるためには再現精度が高くなければならない。光学的計測は、観察される試薬面積及び計量分配された液体と試薬とが反応するために許される時間によって影響される。視野内の不均一区域の形成及び反応時間量の変化が誤差の増大を生じさせる。例えば、支持体上に不均一に延展した試料又は試薬に関して実施された計測は、読まれるたびに異なる結果を出す。
【0009】
本出願と譲受人が同じである、US2006/0263902A1号として公開された同時係属中の米国特許出願第11/135,928号において、本発明者らは、生物学的流体及び試薬を微細な滴として試薬担持支持体に付着させる方法を報告している。本発明者らは、試薬担持支持体が、試薬の水溶性及び支持体の表面エネルギーに依存して、すなわち、試薬担持支持体が親水性であるのか疎水性であるのかに依存して、異なるように挙動することを実証した。例えば、1.7〜20.4μLの大きな滴の付着は、約50pL〜1μLの小さな滴を試薬担持面に付着させる場合よりも不正確な結果を出すことが示された。発明者らはまた、小さな滴は疎水性支持体によって吸収されるが、大きな滴は容易には吸収されないことを見いだした。
【0010】
可溶性試薬は、試薬担持面上で延展するとき、溶解し、液体とともに動くということが示された。本発明者らは、そのような動きが生じさせる不均一な試薬応答を、小さな滴を付着させることによって緩和することができることを見いだした。
【0011】
小さな滴の付着は、多くの小さな開口を有するノズル又は単孔ノズルによって実施される。単孔ノズルの場合、所望の区域をカバーするために、ノズルを試薬担持支持体に対して又は試薬担持支持体をノズルに対して動かすことができる。液体試料と試薬との支持体上での反応は、試料によって被覆される面積の平均として読むこともできるし、好ましくは、反応面積を一度に1スポットずつスキャンし、結果を平均化することによって読むこともできる。
【0012】
公開出願2006/0263902A1に記載された方法のさらなる開発中、いくつかの問題点が見いだされ、それが、以下に記載される改良された方法をもたらした。
【0013】
計量分配装置の適切な設計によって上述した問題が解消された後でさえ、生物学的試料中の分析対象物の量の計測が、望まれるような繰り返し精度を与えないかもしれないということがわかった。小さな試料量は、反応からの応答の減少を生じさせ、試料を液体試薬で希釈することがその問題を拡大する。本発明者らは、結果の精度及び繰り返し精度に有意な改善を加えることにより、そのような問題を解消することができることを見いだした。特に、調時された量及びパターンで滴を計量分配することにより、改善された結果を得ることができることがわかった。
【0014】
発明の概要
本発明は、一つの態様において、生物学的流体に含まれる分析対象物の量を検定するための改良された方法である。方法は、生物学的流体の試料の二つ以上の画分を0.05〜1mmの範囲の直径を有する滴として試薬含有多孔性支持体の上又はそれに隣接するところに計量分配することを含む。試料画分は、計量分配が起こらない期間によって隔てられた所定の期間中に計量分配される。このような手順は、生物学的流体と試薬との反応が起こることを可能にする、他の液体の計量分配を可能にする、又は生じた反応の結果の読みを可能にする。
【0015】
あるいはまた、生物学的流体を支持体上に計量分配したのち、計量分配が起こらない期間によって隔てられた所定の期間に試薬を小さな滴として計量分配することもできる。
【0016】
好ましい実施態様の説明
定義
本明細書中、以下の用語を以下のように定義する。
【0017】
「分光画像」とは、例えば、色、反射率、透過率もしくは吸光度又はその他の変化、例えば、試薬含有区域全体のサブユニットの検査を可能にするラマン、蛍光、化学発光、リン光又は電気化学的独立分光法を使用した、試薬含有区域に付着された生物学的試料に対する試薬含有区域の光学的応答の詳細図をいう。画像は、光学的応答に位置(すなわちx−y)が加えられた多次元画像であることができる。
【0018】
「親水性」表面とは、表面とその上に配置された水滴との間に90°未満の接触角を有する表面である。
【0019】
「疎水性」表面とは、表面とその上に配置された水滴との間に90°以上の接触角を有する表面である。
【0020】
「性能指数(FOM)」とは、分析対象物が存在する試料から得られた結果と分析対象物が存在しない試料から得られた結果との間の平均差を標準偏差の自乗の和の平方根で割った、計算された性能の尺度である。結果は、分析対象物を有しない試料と、検出することができる最低分析対象物濃度を含有する試料とを比較するものである。
【0021】
「変動係数(CV)」は、データのセットの標準偏差をデータの平均で割った比として計算される、確率分布の分散の尺度である。
【0022】
液体と多孔性支持体との相互作用
本発明は、乾燥試薬を含有する多孔性支持体(「パッド」)の表面および内部で起こる反応の改善された制御を提供する。反応は、試料液体と試薬含有パッドとの相互作用の結果として生じる。
【0023】
未知の量の分析対象物を含有する液体試料が試薬含有パッドと接触すると、液体が試薬を溶解させて、分析対象物との反応が起こるようになり、その反応が、検出可能な結果、例えば、分光写真手段によって検出される、色のような特徴的な光学信号を生成する。反応が起こる速度及び結果が検出可能である程度は多くの要因によって影響される。このような要因は、試薬のアクセス可能性、液体へのその可溶性及び液体が配置される領域における試薬と液体との相対量を含む。例えば、一滴の液体は、必要な量の試薬を溶解させ、検出可能な結果を達成することができるよう、小さな区域に限定されるならば、効果的であることができる。しかし、滴が広い区域に延展するならば、試薬は効率的に溶解されることができず、反応は検出可能な結果を出さないおそれがある。したがって、一貫した正確な結果を得るのならば、多孔性パッド上への液体の均一かつ十分な付着が重要である。同様に、パッドの特性、例えば、その疎水/親水性、その多孔度および毛管作用ならびにその厚さもまた、検定結果を決定する要因である。実際に、当業者は、有用な検定システムを設計する際には、パッドそのもの、試薬及び試料液体の物理特性をすべて考慮しなければならないということを見いだす。
【0024】
本発明において、試料液体及び他の液体(使用されるならば)の調時された塗布は、液体と試薬含有パッドとの相互作用の改善された制御を提供して、増大した結果の精度及び均一さを提供する。
【0025】
液体試料の付着
多くの検定においては、試薬が多孔性支持体又は「パッド」に配置され、ストリップ形態の支持体が、試験される生物学的流体中に浸漬される。このような検定は有用であるが、必ずしも望まれるような精度又は繰り返し精度ではない。大きな試料滴(すなわち17μL〜20.4μL)の付着は、ストリップを液体中に浸漬する場合ほど満足ではないことがすでに示されている。しかし、小さな滴(すなわち50pL〜1μL)は、生物学的検定のアレイにおいて、より優れた結果を提供した。
【0026】
これまで、二つのタイプの計量分配ノズルが記載されている。第一のものでは、単孔ノズルを使用して一連の単一滴を試薬含有支持体上に計量分配する。所望の区域で均一な被覆を提供するために、ノズル又は支持体が動かされることになる。第二のタイプのノズルは、一度に多数の連続する滴を計量分配することができるよう、一連の穴を穿孔されたプレートを使用するものであった。いずれのタイプにおいても、最小滴サイズは、約45〜50μmの穴直径と対応する約50pLまでと考えられていた。ノズルは、様々な供給源からの圧力によって作動させることができる。毎秒150,000滴までの速度で滴を計量分配することができるピエゾアクチュエータの使用が、小さな滴を計量分配する一つの好ましい方法であった。
【0027】
計量分配問題
生物学的流体の試料が小さな滴として計量分配される検定の改善された性能にもかかわらず、パッド上での試料液体と試薬との反応が、多くの場合、パッドを試料中に浸漬する場合と比較して強さの劣る結果を出すということがわかった。これは、より多量の試料を付着させることによって解決することができるが、より長い計量分配時間を要し、より大きな区域を使用するものであった。この方法の目的は、より少ない試薬を使用しながらより短時間でより良い結果を得ることであったため、改良された方法が求められた。
【0028】
加えて、生物学的流体を一連の小さな滴として供給することは、いくつかのタイプの検定において、反応速度に影響するということがわかった。すなわち、試薬への液体のアクセスが悪影響を受けて、試料を計量分配したのち結果を読むことができるまでの期間が増大した。
【0029】
小さな試料滴を、滴が計量分配されない間隔によって隔てられたグループとして計量分配することが、試料液体中の分析対象物と多孔性支持体中の試薬との反応から生じる光学的応答、例えば、色の発現を増大させるということがわかった。この方法を以下の実施例で示す。
【0030】
実施例1
支持体としてのセルロースろ紙に付着させた、米国特許第5,318,894号に記載の過酸化的に活性な物質を計測することができる試薬を使用して、ヘモグロビンの検定を実施した。0.045mg/dLヘモグロビンを含有する尿又はリン酸緩衝液の試料を、毛管ピエゾディスペンサから、100pL滴500個のセットとして、0.75〜3秒の短い間隔によって隔てながら、毎秒85,000滴の速度で付着させた。発色をCCDカメラによって計測し、適切なソフトウェアによって読み、反射率(R)として報告した。より低い反射率値がより大きな発色を示す。結果は以下の表で求められる。
【0031】
【表1】

【0032】
同じ数の試料滴を、ただし一連の滴のセットとして、計量分配が行われない短い間隔によって隔てながら計量分配すると、増大した発色、すなわちより低いR値、ひいてはより正確な結果が提供されると結論づけることができる。この方法は、分析対象物濃度が低く、検出方法によって増幅されなければならない場合に特に有用である。この場合、指示薬又は信号生成試薬は水不溶性テトラメチルベンジジンであり、分析対象物は、他の成分との触媒反応ののち、mM量で検出される。また、一般に、マルチホールピエゾディスペンサの使用が、単孔ノズルディスペンサを使用する場合よりも良好な結果を与えるということがわかった。
【0033】
試料液体が一連の滴セットとして計量分配される場合、計量分配が休止する間隔中に試薬−分析対象物反応の読みを行うことが可能になる。そうすることにより、読みを最適化する機会が得られる。以下の実施例で示すように、特に試料流体中の分析対象物の量が低い場合、追加される読みが結果の精度を改善することができる。
【0034】
実施例2
ガラス、セルロース、ポリマー支持体上に付着させた、米国特許第5,424,215号に記載の試薬を使用して、リン酸緩衝液又は尿中のタンパク質の検定を実施した。0〜1000mg/dLアルブミンをタンパク質として含有するリン酸又は尿の試料を、毛管ピエゾディスペンサから、100pLの滴500個のセットとして、15〜120秒の間隔によって隔てながら、毎秒60,000滴の速度で付着させた。試料流体は、0〜10mg/dLから300〜1000mg/dLまでの範囲の五つのタンパク質濃度を含有するものであった。結果を以下の表に示す。表中、性能指数(FOM)は、CCDカメラを使用して実施した計測から読み期間ごとに計算し、適切なソフトウェアによって解釈したものである。
【0035】
【表2】

【0036】
FOM値は、試験された分析対象物(タンパク質)濃度における結果の相対精度を示す。より高いFOM値がより望ましい。これらのデータから、分析対象物の濃度が低〜中である場合、計量分配期間の間の間隔が長いほど、より正確な結果が提供されると結論づけることができる。しかし、分析対象物濃度が高い場合、計量分配期間の間の間隔を延ばしてもそれほど効果はなく、より短い間隔で十分である。
【0037】
本出願と譲受人が同じである特許出願US2006/0263902A1号において、グルコース含量に関する尿分析において、尿試料ののち等しい量のpH6.5リン酸緩衝液を計量分配した場合、性能指数が改善されることが示された。塩化物含量がグルコース試薬の反応を阻害したため、この改善は、試料の希釈に関連するものと考えられた。以下の実施例で報告する実験でこの結果をさらに試験した。
【0038】
実施例3
セルロース紙に付着させた、米国特許第3,814,668号に記載の試薬を使用して、尿中グルコースの検定を実施した。グルコース0〜2000mg/dLを含有する尿の試料を、250個の滴(50pL)として、単独で又は50pLの水滴とともに、毎秒85,000滴の速度で計量分配した。CCDカメラを使用して結果を計測し、適切なソフトウェアによって読んだ。結果を以下の表に示す。
【0039】
【表3】

【0040】
これらの結果から、水による尿試料の希釈が、グルコースのキャリヤとして水のみを用いた場合に得られる結果と本質的に同じ結果を出すと結論づけることができる。しかし、尿試料中の比重の効果は大きいものであった。
【0041】
他の実験において、はじめに尿試料を計量分配し、次いで希釈剤を計量分配すると、はじめに希釈剤を計量分配し、次に試料を計量分配する場合よりも良好な結果が得られるということがわかった。
【0042】
実施例4
アルブミン指示薬染料を省いたことを除き、米国特許第5,424,215号に記載の試薬を使用して、リン酸緩衝液又は尿中のタンパク質のための乾燥試薬パッドを実施した。3mMのアルブミン指示薬染料を80%エタノール−水に溶解することにより、液体染料溶液を製造した。乾燥試薬パッド試料を、0〜1000mg/dLアルブミンを含有する尿試料に浸漬し、パッド区域全体を尿で覆った。パッドをリーダに配置し、液体染料溶液を、毛管ピエゾディスペンサから、100pLの滴500個の4セットとして、15秒の間隔によって隔てながら、毎秒60,000滴の速度で付着させた。新しいパッドを用いて第二の試験を実施した。しかし、染料溶液は、毛管ピエゾディスペンサから、100pLの滴2000個の1セットとして、溶液が計量分配されない間隔によって隔てることなく、毎秒60,000滴の速度で付着させた。結果を以下の表に示す。表中、性能指数(FOM)は、CCDカメラを使用して実施した計測から読み期間ごとに計算し、適切なソフトウェアによって解釈したものである。
【0043】
【表4】

【0044】
FOM値は、試験された分析対象物(タンパク質)濃度における結果の相対精度を示す。より高いFOM値がより望ましい。これらのデータから、分離間隔の使用がデータを改善すること、及び試料をパッド上に配置し、液体試薬のみを計量分配することができることを結論づけることができる。
【0045】
実施例で示したように、生物学的試料を、試料が計量分配されない期間によって隔てながら徐々に計量分配することは、支持体表面上の試薬との反応のための時間を許して、色又は他の検出可能な結果の増大した発生を生じさせる。すなわち、すべての生物学的試料を一度に計量分配することは、効果が劣る。改善された結果は、より一般的な大きな滴又は支持体を生物学的試料中に浸漬する場合とは異なるように試薬含有支持体と反応すると思われる非常に小さな滴(すなわち直径0.1〜1mm)の使用に関連すると結論づけることができる。信号生成におけるこの増大は、分析対象物の濃度が低い状況で重要である。
【0046】
また、小さな滴の付着が試料液体を支持体の表面上に限定して、未反応区域によって分けられた特徴的なスポットを見ることができるようになることがわかった。これらは必ずしも肉眼で容易に見えるわけではないが、これらの実施例で支持体表面の分光写真画像を提供するために使用されたCCDカメラによって見られる。未反応区域は予想外の利点を有することがわかった。未反応区域は基準色を提供し、この基準色は、CCDカメラによって検出され、未反応区域との対比が分光画像中ですぐに利用可能であるため、検出可能な結果のより正確な読みを可能にする。
【0047】
使用される支持体のタイプは実施される検定に依存するが、そのような支持体は、ストリップ、カセット、カードなどを含む様々なフォーマットで使用することができることが明白である。これらのフォーマットはすべて、反応面の最適な分光写真画像を提供するパターンにおける小さな滴(直径0.1〜1mm)の支持体上への直接計量分配を受けるために配置された試薬含有支持体を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的流体の試料を約0.05〜1mmの範囲の直径を有する滴としてノズルから試薬含有多孔性支持体の上又はそれに隣接するところに計量分配し、前記計量分配された生物学的流体と前記試薬との反応の結果を読む、生物学的流体中の分析対象物の量を検定する方法であって、前記生物学的流体試料を、その二つ以上の画分として、前記試薬含有支持体上に計量分配することを含み、前記画分が所定の量で所定の期間に計量分配されるものであり、前記所定の期間が、前記生物学的流体試料が計量分配されない間隔によって隔てられたものである方法。
【請求項2】
前記生物学的試料が計量分配されない前記間隔を使用して、前記生物学的流体試料の前記画分以外の液体を計量分配する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記生物学的試料が計量分配されない前記間隔を使用して、液体希釈剤を計量分配する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記生物学的試料が計量分配されない前記間隔を使用して、前記付着させた生物学的流体と前記試薬との反応の結果を読む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記生物学的流体試料の前記二つ以上の画分が三つ以上の画分である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)の前に、液体希釈剤又は試薬を計量分配するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記生物学的試料が計量分配されない前記間隔を使用して、さらなる試薬を計量分配する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記生物学的流体が尿である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記分析対象物がヘモグロビン又はタンパク質又はグルコースである、請求項9記載の方法。
【請求項10】
生物学的流体中の分析対象物の量を検定する際の精度及び繰り返し精度を高める方法であって、
(a)前記生物学的流体の試料を、前記試料の二つ以上の画分として、試薬含有多孔性支持体上に計量分配するステップであって、前記画分は、小さな滴として、所定の量で所定の期間に計量分配され、前記所定の期間は、前記生物学的流体試料が計量分配されない間隔によって隔てられているステップと、及び
(b)前記計量分配された生物学的流体と前記試薬との反応の結果を読むステップと、
を含む方法。
【請求項11】
前記生物学的試料が計量分配されない前記間隔を使用して、前記生物学的流体試料の前記画分以外の液体を計量分配する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記生物学的試料が計量分配されない前記間隔を使用して、液体希釈剤を計量分配する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記生物学的試料が計量分配されない前記間隔を使用して、さらなる試薬を計量分配する、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記生物学的試料が計量分配されない前記間隔を使用して、前記付着させた生物学的流体と前記試薬との反応の結果を読む、請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記生物学的流体試料の前記二つ以上の画分が三つ以上の画分である、請求項10記載の方法。
【請求項16】
ステップ(a)の前に、液体希釈剤又は試薬を計量分配するステップをさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項17】
前記小さな滴が約0.05〜1mmの範囲の直径を有する、請求項10記載の方法。
【請求項18】
前記生物学的流体が尿である、請求項10記載の方法。
【請求項19】
前記分析対象物がヘモグロビン又はタンパク質又はグルコースである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
生物学的流体中の分析対象物の量を検定する際の精度及び繰り返し精度を高める方法であって、
(a)前記生物学的流体の試料を多孔性支持体上に計量分配すること、
(b)前記生物学的流体と反応するための試薬をその二つ以上の画分として計量分配するステップであって、前記画分は、所定の量で所定の期間に計量分配され、前記所定の期間は、前記試薬が計量分配されない間隔によって隔てられているステップと、及び
(b)前記生物学的流体と前記試薬との反応の結果を読むステップと、
を含む方法。

【公表番号】特表2010−526294(P2010−526294A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506359(P2010−506359)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/056995
【国際公開番号】WO2008/137213
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(507269175)シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレーテッド (39)
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS HEALTHCARE DIAGNOSTICS INC.
【Fターム(参考)】