説明

試薬調製装置

【課題】所定の水質に満たない純水が供給された場合の試薬原液の浪費を抑制することが可能な試薬調製装置を提供する。
【解決手段】この試薬調製装置4は、試薬を用いて検体を測定する測定部2に、RO水と高濃度試薬とを含む混合液を試薬として供給可能に構成され、RO水と試薬原液とを混合する第1希釈チャンバ43および第2希釈チャンバ44と、RO水の水質を測定する電気伝導度測定ユニット400と、RO水を測定して得られた電気伝導度Zに基づいて、RO水の流れを制御する制御部48とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水と試薬原液とから試薬を調製することが可能な試薬調製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、純水と試薬原液とから試薬を調製することが可能な試薬調製装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、高濃度試薬(試薬原液)をRO水(純水)により希釈して試薬を調製する試薬調製装置が開示されている。この試薬調製装置は、RO水と高濃度試薬とを試薬調製タンク内において混合するとともに、試薬調製タンク内に設けられた導電率センサにより混合液の電気伝導度を測定し、測定された電気伝導度に基づいて混合液が所望の濃度に希釈されているか否かを判断するように構成されている。所望の濃度に希釈されている場合には、混合液は外部に接続された測定部に試薬(混合液)を供給するための試薬貯留タンクに貯留される。一方、所望の濃度に希釈されていない場合には、混合液は廃棄されるように構成されている。ここで、試薬調製タンクに供給されるRO水(純水)の水質は混合液(試薬)の品質および電気伝導度に影響するため、ユーザには、所望の濃度かつ所望の品質の試薬を得るために一定以上の水質のRO水(純水)を試薬調製装置に供給することが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2009/031461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ユーザが常に一定以上の水質のRO水(純水)を試薬調製装置に供給するとは限らない。このため、上記特許文献1の試薬調製装置において、所定の水質に満たないRO水(純水)が供給される場合には、試薬調製タンク内の混合液が基準の電気伝導度を満たさずに混合液が廃棄されることになる。その場合には、混合に用いられた高濃度試薬(試薬原液)が無駄になってしまう。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、所定の水質に満たない純水が供給された場合の試薬原液の浪費を抑制することが可能な試薬調製装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における試薬調製装置は、試薬を用いて検体を測定する測定部に、純水と試薬原液とを含む混合液を試薬として供給可能に構成された試薬調製装置であって、純水と試薬原液とを混合する混合容器と、純水の水質を測定する水質測定部と、純水を測定して得られた水質情報に基づいて、純水の流れを制御する制御部とを備える。
【0008】
この発明の一の局面による試薬調製装置では、上記のように、水質測定部により純水を測定して得られた水質情報に基づいて純水の流れを制御する制御部を設けることによって、純水が高品質である(純度が高い)か低品質である(純度が低い)かといった水質情報に基づき、純水の水質が低品質である(純度が低い)場合には、低品質の純水を混合容器側に供給しないよう純水の流れを制御して低品質の純水が混合容器に供給されるのを防止することができる。この結果、低品質の(純度が低い)純水が試薬原液と混合されるのを防止することができるので、低品質の純水と試薬原液とが混合された混合液が廃棄されることに起因する試薬原液の浪費を抑制することができる。また、低品質の純水が装置に供給された場合にも、試薬原液を含む混合液を廃棄せずに済むので、従来と比較して環境に対する負荷を低減した試薬調製装置を提供することができる。
【0009】
上記一の局面による試薬調製装置において、好ましくは、制御部は、混合容器へ向かう流路と、それ以外の流路とで、純水の流れる流路を切り替えるように構成されている。このように構成すれば、水質情報に基づき、制御部により純水の流れる流路を切り替えるだけで、容易に低品質の純水を混合容器側に供給しないよう純水の流れを制御することができる。
【0010】
上記一の局面による試薬調製装置において、好ましくは、純水を廃棄するための廃棄ポートをさらに備え、制御部は、純水を測定して得られた水質情報に基づいて混合容器側へ純水を供給するか否かを決定し、混合容器側へ純水を供給しないと決定した場合に、廃棄ポートから純水を廃棄するように純水の流れを制御する。このように構成すれば、廃棄ポートを用いて容易に低品質の純水を廃棄することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、制御部は、純水が廃棄ポートに供給されるように純水の流れを制御するとともに、廃棄ポートに向かって流れる純水の水質情報を水質測定部によって取得し、水質情報に基づいて純水を混合容器に供給するか否かを決定し、純水を混合容器へ供給すると決定した場合に、純水が混合容器側に供給されるように純水の流れを制御する。このように構成すれば、純水を廃棄ポートから廃棄しながら純水の水質情報を取得し、純水の水質(純度)に問題がないことが確認されてから純水を混合容器側に供給することができるので、混合容器側に低品質の純水が供給されることを確実に防止することができる。
【0012】
上記廃棄ポート備える構成において、好ましくは、制御部は、純水が混合容器側に供給されるように純水の流れを制御するとともに、混合容器側に向かって流れる純水の水質情報を水質測定部によって取得し、水質情報に基づいて、純水の混合容器側への供給を停止するか否かを決定し、供給の停止を決定したとき、廃棄ポートから純水を廃棄するように純水の流れを制御する。このように構成すれば、混合容器側に純水を供給している際に純水の水質(純度)が低下したときに純水の混合容器側への供給を停止することができるので、純水の混合容器側への供給中に水質が低下した場合にも、低品質の純水が混合容器側に供給されることを抑制することができる。
【0013】
上記一の局面による試薬調製装置において、好ましくは、制御部は、純水が連続的に流れるように純水の流れを制御するとともに、純水の水質情報を水質測定部によって連続的に取得する。このように構成すれば、純水の水質情報を連続的に取得することができるので、混合容器側に純水を供給中に水質(純度)が低下した場合や、混合容器側への純水の供給停止中(廃棄ポートから廃棄中)に水質(純度)の低下が解消した場合などに、純水の水質(純度)の変化に速やかに対応することができる。
【0014】
上記一の局面による試薬調製装置において、好ましくは、混合容器に供給される純水を貯留する貯留容器をさらに備え、水質測定部は、貯留容器の上流側に配置されており、制御部は、純水を測定して得られた水質情報に基づいて、貯留容器への純水の流れを制御する。このように構成すれば、水質(純度)に問題のない純水を貯留容器に貯留しておくことができるので、水質(純度)が低下して純水の供給を停止した場合にも、即座に試薬の調製動作を停止させることなく、貯留容器から混合容器への純水の供給を継続することができる。
【0015】
上記一の局面による試薬調製装置において、好ましくは、純水を廃棄するための廃棄ポートと、水質測定部から混合容器に至る流路と、水質測定部から廃棄ポートに至る流路とで、純水の流れる流路を切り替える流路切替部とをさらに備え、制御部は、流路切替部を制御して流路を切り替えることにより、純水の流れを制御する。このように構成すれば、流路切替部によって、水質(純度)に問題のない純水を混合容器側に供給する流路と、水質(純度)の低下した純水を廃棄ポートに供給する(廃棄する)流路とを使い分けることができるので、水質(純度)の低下した純水が流路に残留することに起因して、流路に残留した低品質の純水が混合容器側に流入してしまうのを抑制することができる。
【0016】
上記一の局面による試薬調製装置において、好ましくは、制御部は、水質測定部によって取得した水質情報が所定の基準を満たすか否かを判断し、所定の基準を満たさないと判断したとき、純水の水質に関する異常を通知する。このように構成すれば、純水の水質(純度)に関する異常を通知することにより、ユーザは純水の水質(純度)が良好でないことを知ることができるので、純水を精製する機構のメンテナンスの必要性を知ることができる。
【0017】
この場合において、好ましくは、所定の基準は、第1の基準と第1の基準よりも緩い第2の基準とを含み、制御部は、水質情報が第2の基準を満たさない場合に、純水を混合容器側へ供給しないように純水の流れを制御するとともに第1の異常を通知し、水質情報が第2の基準を満たし且つ第1の基準を満たさない場合に、純水を混合容器側へ供給するように純水の流れを制御するとともに第2の異常を通知するように構成されている。このように構成すれば、ユーザは、純水を混合容器側へ供給しない第1の異常の通知に基づいて純水を精製する機構のメンテナンスを早急に行う必要があることを知ることができるとともに、純水を混合容器側へ供給可能な第2の異常の通知に基づいて早急にメンテナンスを行う必要はないがメンテナンス時期が近いことを知ることができる。
【0018】
上記一の局面による試薬調製装置において、好ましくは、水質測定部は、水質情報として純水の電気伝導度を測定する。ここで、純水中の導電性の不純物の量は、電気伝導度(電気伝導率、導電率)を指標として定量的に評価することができる。したがって、純水の水質情報として純水の電気伝導度を取得するように構成することにより、純水の水質を高精度に評価することができる。
【0019】
この場合において、好ましくは、水質測定部は、内部に純水を通過させ、通過する純水の電気伝導度を測定する。このように構成すれば、純水を貯留して水質情報を取得する場合と異なり、純水が一定量貯留されるまで待機する必要がなく、純水の水質情報を迅速に取得することができる。この結果、純水の水質の変化にも迅速に対応することができる。
【0020】
上記水質測定部が純水の電気伝導度を測定する構成において、好ましくは、水質測定部は、第1の間隔で配置された電極間に存在する純水の電気伝導度を測定する第1電気伝導度計を含み、第2の間隔で配置された電極間に存在する混合液の電気伝導度を測定する第2電気伝導度計をさらに備え、第1電気伝導度計の電極間の第1の間隔は、第2電気伝導度計の電極間の第2の間隔よりも小さい。このように構成すれば、第1電気伝導度計によって純水の電気伝導度を水質情報として取得することができるとともに、第2電気伝導度計によって純水と試薬原液とを含む混合液の電気伝導度から混合液の濃度を取得することができる。この際、第1電気伝導度計の電極間の第1の間隔を、第2電気伝導度計の電極間の第2の電極間隔よりも小さくすることによって、電気伝導度の低い純水の電気伝導度を、精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態による試薬調製装置を備えた血液分析装置を示した斜視図である。
【図2】図1に示した一実施形態による試薬調製装置の構成を示した模式図である。
【図3】図2に示した一実施形態による試薬調製装置のRO水の電気伝導度を測定するための電気伝導度測定ユニットを示した断面図である。
【図4】図3に示した電気伝導度測定ユニットを拡大して示した断面図である。
【図5】図2に示した一実施形態による試薬調製装置の試薬の電気伝導度を測定するための電気伝導度測定ユニットを示した断面図である。
【図6】本発明の一実施形態による試薬調製装置の制御部を説明するためのブロック図である。
【図7】本発明の一実施形態による試薬調製装置の試薬調製処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】図7に示した試薬調製処理動作のステップS4におけるRO水供給処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態による試薬調製装置によるRO水の水質の異常通知(異常通知)を説明するための図である。
【図10】本発明の一実施形態による試薬調製装置によるRO水の水質の異常通知(警告通知)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
まず、図1〜図6を参照して、本発明の一実施形態による血液分析装置1の構成について説明する。また、本実施形態では、血液検査を行うための血液分析装置1の一部として、本発明の一実施形態による試薬調製装置4を使用する場合について説明する。
【0024】
血液分析装置1は、図1に示すように、血液の測定を行う機能を有する測定部2と、測定部2から出力された測定データを分析して分析結果を得るデータ処理部3と、検体の処理に用いられる試薬を調製する試薬調製装置4とにより構成されている。測定部2は、フローサイトメトリー法により、血液中の白血球、網状赤血球および血小板の測定を行うように構成されている。また、測定部2は、試薬調製装置4によって調製され、供給される試薬を用いて血液を希釈し、白血球、網状赤血球および血小板の測定を行うように構成されている。なお、フローサイトメトリー法とは、測定試料を含む試料流を形成するとともに、その試料流にレーザ光を照射することによって、測定試料中の粒子(血球)が発する前方散乱光、側方散乱光および側方蛍光を検出する粒子(血球)の測定方法である。
【0025】
また、測定部2には、筐体外に設置された空圧部8が接続されており、空圧部8から供給される陰圧力および陽圧力を用いて、装置内における各種液体の移送を行うように構成されている。空圧部8は、測定部2に対して陰圧力を供給するための陰圧源81、および、陽圧力を供給するための陽圧源82を有している。この陰圧源81の陰圧力を用いることにより、測定に用いられる試薬が試薬調製装置4から測定部2に吸引される(試薬調製装置4から試薬が供給される)ように構成されている。
【0026】
データ処理部3は、パーソナルコンピュータ(PC)などからなり、測定部2の測定データを分析するとともに、その分析結果を表示する機能を有する。また、データ処理部3は、制御部(PC本体)31と、表示部32と、入力デバイス33とを含んでいる。
【0027】
制御部31は、図示しない通信インターフェースを介して測定部2および試薬調製装置4と通信可能に接続されており、測定部2の測定データを受信する他、測定開始信号およびシャットダウン信号を測定部2および試薬調製装置4に送信する機能を有する。ユーザは、入力デバイス33を用いて、測定モードの選択、測定部2および試薬調製装置4の起動およびシャットダウンなどを行うことが可能である。
【0028】
表示部32は、制御部31より入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。データ処理部3は、制御部31により測定部2および試薬調製装置4の動作情報を収集し、表示部32に表示することによって、ユーザに対して異常の通知や分析処理の経過などの各種情報の通知を行うことが可能なように構成されている。
【0029】
ここで、本実施形態では、試薬調製装置4は、測定部2で用いられる試薬を調製するために設けられている。具体的には、試薬調製装置4は、水道水から作製されるRO水を用いて高濃度試薬(試薬原液)を所望の濃度に希釈することにより、血液分析に用いられる試薬を調製するように構成されている。ここで、RO水とは、純水の一種であり、RO(Reverse Osmosis)膜(逆浸透膜)を透過することによって、不純物を取り除かれた水である。また、純水とは、RO水の他に、精製水、脱イオン水、および蒸留水などを含み、不純物を取り除く処理が実施された水であるが、その純度(水質)は特に限定されない。試薬の調製に用いられる純水(RO水)としては、水質の適否が調製される試薬の性能(品質)に影響を及ぼすため、所定以上の水質(純度)の純水(RO水)が供給される必要がある。純水に含まれる不純物としては導電性の不純物(イオン)と非導電性の不純物とが含まれ、このうち導電性の不純物の量は、純水の電気伝導度(導電率、電気伝導率)を指標として評価することができる。したがって、純水の水質として、純水に含まれる不純物の含有度合いを、その純水の電気伝導度(導電率、電気伝導率)を測定することにより定量的に測定することができる。なお、純水の水質が劣化する原因としては、水道水の水質の低下や、フィルタなどの消耗品の劣化などが挙げられる。
【0030】
試薬調製装置4は、図2に示すように、高濃度試薬チャンバ41と、RO水チャンバ42と、第1希釈チャンバ43および第2希釈チャンバ44と、2つのダイアフラムポンプ45aおよび45bと、攪拌チャンバ46と、供給チャンバ47と、試薬調製装置4の各部の動作を制御する制御部48とを含んでいる。さらに、図1に示すように、試薬調製装置4は、筐体外に設置された高濃度試薬タンク5と、空圧部6と、RO水作製部(RO水供給ユニット)7とにそれぞれ接続されている。試薬調製装置4は、高濃度試薬タンク5およびRO水作製部7からそれぞれ高濃度試薬およびRO水を取得するとともに、空圧部6から供給される陰圧力および陽圧力を用いて、装置内における各液体の移送を行うように構成されている。空圧部6は、試薬調製装置4に対して陰圧力を供給するための陰圧源61、および、陽圧力を供給するための陽圧源62を有している。
【0031】
図2に示すように、高濃度試薬チャンバ41は、高濃度試薬タンク5から高濃度試薬が供給されるように構成されている。高濃度試薬チャンバ41には、チャンバ内に所定量の高濃度試薬が収容されていることを検知するためのフロートスイッチ100が設けられている。フロートスイッチ100は、高濃度試薬チャンバ41内の液量(液面)に応じてフロート部が上下動するように構成され、フロートスイッチ100のフロート部が下限に到達すると、フロート部が上限に達するまで高濃度試薬タンク5から高濃度試薬チャンバ41に高濃度試薬が供給されるように、制御部48により各部が制御されるように構成されている。これにより、高濃度試薬チャンバ41には、常時、約300mL貯留されるように高濃度試薬が供給される。
【0032】
また、高濃度試薬チャンバ41は、電磁バルブ200を介して高濃度試薬タンク5に接続され、電磁バルブ201を介して空圧部6の陰圧源61に接続されている。また、高濃度試薬チャンバ41は、電磁バルブ202の開閉により、大気に開放され、または、閉塞されるように構成されている。また、高濃度試薬チャンバ41は、流路300により、ダイアフラムポンプ45a(45b)から第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)に液体を移送するための流路301に接続されている。また、流路300上には、電磁バルブ203が設けられており、電磁バルブ203の開閉により高濃度試薬の流路301への流入が制御される。
【0033】
RO水チャンバ42は、高濃度試薬を希釈するためのRO水がRO水作製部7から供給されるように構成されている。RO水チャンバ42には、チャンバ内に収容されるRO水が上限量に達したこと、および、下限量に達したことをそれぞれ検知するためのフロートスイッチ101および102が設けられている。フロートスイッチ101(102)は、RO水チャンバ42内の液量(液面)に応じてフロート部が上下動するように構成されている。フロートスイッチ101のフロート部がRO水チャンバ42の上限量(約600mL)に対応する位置に到達すると、RO水作製部7からRO水チャンバ42へのRO水の供給が停止されるように、制御部48により各部が制御されるように構成されている。また、フロートスイッチ102のフロート部がRO水チャンバ42の下限量(約300mL)に対応する位置に到達すると、RO水作製部7からRO水チャンバ42にRO水が供給されるように、制御部48により各部が制御されるように構成されている。これにより、試薬調製装置4が動作している間、RO水チャンバ42には、約300mL以上約600mL以下のRO水が貯留されることとなる。
【0034】
また、RO水チャンバ42は、チャンバ内のRO水を廃棄可能に構成されている。具体的には、RO水チャンバ42は、電磁バルブ204を介して陽圧源62に接続されているとともに、電磁バルブ205を介して廃棄流路に接続されており、電磁バルブ204および205の両方を開放することによって、陽圧力で内部のRO水が廃棄流路に押し出されるように構成されている。また、RO水チャンバ42は、電磁バルブ206の開閉により、大気に開放され、または、閉塞されるように構成されている。また、RO水チャンバ42は、電磁バルブ208を介して、流路302によりダイアフラムポンプ45aおよび45bに接続されている。
【0035】
ここで、本実施形態では、RO水作製部7と試薬調製装置4とは、流入制御バルブ207aを介して接続され、流入制御バルブ207aの開閉により試薬調製装置4内の流路500へのRO水の流入(供給)が制御されるように構成されている。この流路500は分岐路であり、流路500はRO水チャンバ42へRO水を供給するための流路501と、流入したRO水を廃棄するための廃棄ポート503に接続された流路502とにそれぞれ接続されている。また、流路500と流路501とは供給バルブ207bを介して接続され、流路500と流路502とは廃棄バルブ207cを介して接続されている。これにより、廃棄バルブ207cを閉塞した状態で流入制御バルブ207aおよび供給バルブ207bを開放すると、RO水作製部7から供給されるRO水が流路500および流路501を介してRO水チャンバ42に流入する。また、供給バルブ207bを閉塞した状態で流入制御バルブ207aおよび廃棄バルブ207cを開放すると、RO水作製部7から供給されるRO水が流路500および流路502を介して廃棄ポート503から廃棄される。このように、供給バルブ207bおよび廃棄バルブ207cは、それぞれ、流路501および502の流路切替部として機能するように構成されている。
【0036】
また、本実施形態では、流入制御バルブ207aと供給バルブ207bおよび廃棄バルブ207cとの間(流路500)には、電気伝導度測定ユニット400が設けられている。したがって、電気伝導度測定ユニット400は、RO水チャンバ42に対してRO水供給経路の上流側に設けられている。電気伝導度測定ユニット400は電気伝導度計と温度センサ(サーミスタ)とを含み、供給されるRO水の水質として、RO水の電気伝導度を測定する機能を有する。電気伝導度測定ユニット400は、図3に示すように、流入制御バルブ207a側からRO水が流入する流入口401aが設けられた本体部401と、本体部401に接続された円筒状の電極403および電極403の内部に同心で配置された円柱状(棒状)の電極404と、電極403に接続され、内部を通過したRO水が供給バルブ207b(廃棄バルブ207c)側に流出する流出口402aが設けられた本体部402と、RO水の温度を測定するためのサーミスタ405とを含んでいる。RO水は、流入口401aから流入し、電極403と電極404との間隙を通過し、サーミスタ405の近傍を通過して流出口402aから流出する。電気伝導度測定ユニット400は、内部の電極403と電極404との間隙にRO水を連続的に通過させて、通過するRO水の電気伝導度を測定するように構成されている。本実施形態では、測定されたRO水の電気伝導度に基づいて、制御部48により、RO水による高濃度試薬の希釈を行うための第1希釈チャンバ43または第2希釈チャンバ44側へ供給されるRO水の流れが制御されるように構成されている。すなわち、RO水の水質(電気伝導度)に基づいて、RO水が流路501を介してRO水チャンバ42に供給されるか、RO水が流路502を介して廃棄ポート503から廃棄されるかが、制御部48により決定される。
【0037】
ここで、一般に、液体の電気伝導度Zは、液体中において面積Sの平板電極を間隔Dで対向させた場合(平板モデル)に、両電極間に電圧を印加して両電極間に存在する液体の抵抗値Rが得られたとすると、下式(1)で表される。
Z=(1/R)×(D/S)・・・(1)
【0038】
ここで、純水は電気伝導度Zが小さいため、精度良く測定を行うためには、電極の面積Sを大きくするとともに、電極の間隔Dを小さくする必要がある。このとき、測定される抵抗値Rも小さくなるので、高精度な測定を行うことが可能となる。したがって、電極の面積Sと、電極の間隔Dとによって、電気伝導度測定ユニットの感度を変えることができる。
【0039】
このため、本実施形態では、図4に示すように、電極403と電極404との電極の間隔Dを小さくすることにより、供給されるRO水(純水)の電気伝導度の高精度な測定を容易に行うことが可能なように構成されている。具体的には、円筒状の電極403は、内径d1を有し、円柱状の電極404は外形d2を有する。このとき、電極の間隔Dは、(d1−d2)/2となる。本実施形態では、d1=約7.2mm、d2=約6.0mmであり、D=約0.6mmとなるように構成されている。
【0040】
また、円筒状の電極403は、高さhを有し、本実施形態では、たとえばh=約35mmとなるように構成されている。したがって、電極403の面積S=2π×d1×hとなる。なお、上式(1)は平板モデルによる理論値であり、実際の(電極の間隔D/電極の面積S)の値は、電気伝導度Zが既知の標準液体を用いて予め測定を行うことによって逆算して得た値を、電気伝導度測定ユニット400固有の値として用いる。
【0041】
また、測定される電気伝導度Zは温度によって変化するので、サーミスタ405により測定されたRO水の温度を用いて温度補償を行い、制御部48により基準温度(25℃)に換算された電気伝導度Z(25℃換算値)が算出される。本実施形態では、このZ(25℃換算値)が所定の閾値(第1閾値Zおよび第2閾値Z、いずれも25℃換算値)を超えるか否かが制御部48により判断される。ここで、本実施形態では、第1閾値Z(25℃換算値)=約1(μs/cm)、第2閾値Z(25℃換算値)=約3〜5(μs/cm)に設定されている。そして、取得された電気伝導度Zが第1閾値Zを超えると、制御部48によりユーザに水質低下の異常通知(レベル1、警告)が行われる。さらに、取得された電気伝導度Zが第2閾値Zを超えると制御部48によりユーザに水質悪化の異常通知(レベル2、異常)が行われるとともに、RO水チャンバ42へのRO水の供給が停止されてRO水が廃棄ポート503から廃棄されるように各部が制御される。なお、この第1閾値Z(25℃換算値)=約1(μs/cm)および第2閾値Z(25℃換算値)=約3〜5(μs/cm)の値は、用いられる試薬の種類や、使用される地域などによっても異なるので、ユーザにより目的に応じた値に変更(設定)することが可能である。
【0042】
また、図2に示すように、第1希釈チャンバ43および第2希釈チャンバ44は、それぞれ、RO水により高濃度試薬を希釈するために設けられている。また、第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)は、後述するように、ダイアフラムポンプ45aおよび45bによって送り込まれる約300mLの液体(高濃度試薬およびRO水の混合液)を収容可能に構成されている。第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)には、チャンバ内に収容された液体(高濃度試薬およびRO水の混合液)の残量が所定量に到達したことを検知するための上下動可能なフロートスイッチ103(104)が設けられている。第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)は、常時大気開放された状態となるように構成されている。また、第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)は、電磁バルブ209(210)を介して、流路303(304)により流路301に接続されている。電磁バルブ209および210の開閉を制御することによって、流路301を介して移送される液体(RO水および高濃度試薬)を流路303から第1希釈チャンバ43に供給するか、または、流路304から第2希釈チャンバ44に供給するかを選択することが可能である。第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)は、電磁バルブ211(212)を介して、攪拌チャンバ46に接続されている。
【0043】
ダイアフラムポンプ45aおよび45bは、互いに同様の構成を有しており、同時に同じ動作を行うように構成されている。ダイアフラムポンプ45a(45b)は、1回の定量動作で高濃度試薬およびRO水をそれぞれ約6.0mL(一定量)分定量する機能を有し、1回の定量によって合計約12mL(約6.0mL×2)の液体を供給するように構成されている。また、ダイアフラムポンプ45a(45b)は、電磁バルブ213(215)を介して陰圧源61に接続されているとともに、電磁バルブ214(216)を介して陽圧源62に接続されている。
【0044】
ダイアフラムポンプ45aおよび45bによる液体(RO水および高濃度試薬)の供給動作は、電磁バルブ213(215)を介した陰圧源61による液体の流入と、電磁バルブ214(216)を介した陽圧源62による液体の流出との2つの過程を含む。そして、それぞれの過程において電磁バルブ203、208、209および210などの開閉制御に伴って流路300〜304から所定の流路が選択されることにより、高濃度試薬チャンバ41またはRO水チャンバ42から高濃度試薬またはRO水が流入され、第1希釈チャンバ43または第2希釈チャンバ44へ約12mL(約6.0mL×2)毎に定量され、複数回に分けて供給されるように構成されている。
【0045】
攪拌チャンバ46は、約300mLの液体を収容可能に構成されており、第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)から供給される液体(高濃度試薬およびRO水の混合液)を攪拌するために設けられている。具体的には、攪拌チャンバ46は、屈曲されたパイプ461を有し、第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)から供給される液体(高濃度試薬およびRO水の混合液)が攪拌チャンバ46の内壁面に沿って流動されることにより対流が発生して高濃度試薬とRO水とが攪拌されるように構成されている。
【0046】
攪拌チャンバ46には、チャンバ内に収容された液体(高濃度試薬およびRO水の混合液)の残量が所定量に到達したことを検知するための上下動可能なフロートスイッチ105が設けられている。フロートスイッチ105のフロート部が下限に到達してチャンバ内が空になると、電磁バルブ211(または212)と電磁バルブ217とを開放するとともに、電磁バルブ212(または211)と電磁バルブ218とを閉じることによって、第1希釈チャンバ43および第2希釈チャンバ44のいずれか一方から攪拌チャンバ46に約300mLの混合液(チャンバ内に収容されている混合液の全量)が供給されるように、制御部48により各部が制御されるように構成されている。
【0047】
供給チャンバ47は、測定部2への供給を待機する試薬を収容して、貯留しておくために設けられている。供給チャンバ47は、最大液量約600mLの試薬(所定濃度を有し、攪拌された混合液)を収容可能である。供給チャンバ47には、チャンバ内に収容される試薬の残量が約300mLに到達したことを検知するためのフロートスイッチ106と、試薬の残量が略ゼロとなったことを検知するためのフロートスイッチ107とが設けられている。フロートスイッチ106(107)は、供給チャンバ47内の液量(液面)に応じてフロート部が上下動するように構成されている。フロートスイッチ106のフロート部が下限位置まで到達すると、攪拌チャンバ46から供給チャンバ47に約300mLの所望濃度の試薬が供給されるように、制御部48により各部が制御されるように構成されている。このように供給チャンバ47に所定量の試薬を貯留しておくことによって、常時測定部2に試薬を供給することが可能である。なお、試薬を供給チャンバ47に貯留しておいたとしても、試薬には上記の防腐剤が含まれているので、試薬の劣化は抑制される。
【0048】
また、フロートスイッチ107により、チャンバ内に収容される試薬の残量が略ゼロとなったことを検知した場合には、測定部2への試薬の供給は停止される。これにより、何らかの理由で試薬が供給チャンバ47に供給されなかったとしても、極力測定部2への試薬の供給を継続させながら、測定部2に供給する試薬に気泡が混入することを防止することが可能である。
【0049】
また、供給チャンバ47は、電磁バルブ219を介して攪拌チャンバ46に接続されている。また、供給チャンバ47は、電磁バルブ220を開放することにより、メンテナンス時などにチャンバ内の試薬を廃棄可能に構成されている。また、供給チャンバ47は、常時大気開放された状態となるように構成されている。また、供給チャンバ47は、フィルタ471を介して測定部2に接続されている。フィルタ471は、測定部2に供給される試薬に不純物が混入するのを防止するために設けられている。
【0050】
また、本実施形態では、攪拌チャンバ46と供給チャンバ47との間には、電気伝導度測定ユニット410が設けられている。電気伝導度測定ユニット410は電気伝導度計と温度センサ(サーミスタ)とを含み、電気伝導度測定ユニット410が配置された位置における試薬の電気伝導度を測定する機能を有する。試薬の濃度と電気伝導度とは所定の関係を有するので、RO水と高濃度試薬とが混合された試薬(混合液)の電気伝導度を測定することにより、調製された試薬の濃度を判定することが可能である。また、電気伝導度測定ユニット410と電磁バルブ219との間には、電磁バルブ221を介して廃棄流路が接続されている。測定された試薬の濃度が所望の濃度ではない場合には、その試薬が廃棄流路から廃棄されるように構成されている。
【0051】
図5に示すように、電気伝導度測定ユニット410は、第1本体部411および第2本体部412と、内部を通過した試薬が供給チャンバ47側に流出する流出口413aを有する第3本体部413と、攪拌チャンバ46側からの試薬の流入口414aを有する電極414と、第1本体部411および第2本体部412の間に設けられた電極415と、第2本体部412および第3本体部413の間に設けられた電極416と、試薬の温度を測定するためのサーミスタ417とを含んでいる。これらの第1本体部411、第2本体部412、第3本体部413、電極414、電極415および電極416は、いずれも内部に試薬流路が形成されており、電極414の流入口414aから流入した試薬が内部を通過して第3本体部413の流出口413aから流出するように構成されている。電気伝導度測定ユニット410は、電極414、電極415および電極416の間を通過する試薬の電気伝導度を測定するように構成されている。
【0052】
具体的には、両端の電極414および416を接地するとともに中央の電極415を電源と接続して、電極414および415の間と、電極415および416の間とに電圧を印加する。このとき、電極414および415の間に存在する試薬の抵抗値と、電極415および416の間に存在する試薬の抵抗値とが、それぞれ上式(1)の抵抗値Rに相当する。また、この場合、電流の流れる方向は試薬流路の延びる方向に一致するため、上式(1)における電極の面積Sが、試薬流路の断面積に対応し、上式(1)における電極の間隔Dが、電極414および415の間の距離l1と、電極415および416の間の距離l2とに対応する。
【0053】
本実施形態では、電極414および415の間の距離l1と、電極415および416の間の距離l2とは互いに等しく、l1=l2=約27mmとなるように構成されている。したがって、電気伝導度測定ユニット410では、電極414および415の間の間隔(=電極415および416の間隔)D=約27mmとなる。この電極の間隔Dを電気伝導度測定ユニット400と、電気伝導度測定ユニット410とで比較すると、電気伝導度測定ユニット400の電極の間隔D(=約0.6mm)は、電気伝導度測定ユニット410の電極の間隔D(=約27mm)よりも小さい。これにより、電気伝導度Zの小さいRO水を測定する電気伝導度測定ユニット400では電極の間隔Dを小さくするとともに、高濃度試薬とRO水を混合することによって電気伝導度Zが大きい試薬を測定する電気伝導度測定ユニット410では電極の間隔Dを大きくすることによって、RO水および試薬(混合液)のそれぞれの電気伝導度を高精度に測定することが可能なように構成されている。
【0054】
また、電気伝導度測定ユニット410の試薬流路の内径d3は、約3.5mmとなるように構成されている。したがって、電気伝導度測定ユニット410では、上式(1)における電極の面積Sに対応する面積(断面積)S=π×(d3)となる。この面積Sを比較した場合でも、それぞれの測定対象の電気伝導度の大きさの差異に応じて、RO水を測定する電気伝導度測定ユニット400の電極の面積Sが、試薬を測定する電気伝導度測定ユニット410の電極の面積Sよりも大きくなるように構成されている。なお、電気伝導度測定ユニット410においても、実際の(電極の間隔D/電極の面積S)の値は、電気伝導度Zが既知の標準液体を用いて予め測定を行うことによって逆算して得た値を、電気伝導度測定ユニット410固有の値として用いる。
【0055】
また、測定される電気伝導度Zは温度によって変化するので、サーミスタ417により測定された試薬の温度を用いて温度補償を行い、制御部48により基準温度(25℃)に換算された試薬の電気伝導度Z(25℃換算値)が算出される。そして、Z(25℃換算値)と、実験により予め求められた基準温度(25℃)における試薬濃度の目標値Zとを比較して、Zが目標値Zに対して所定範囲内にあるか否かが判断されることにより、試薬濃度が適正か否か(試薬の廃棄を行うか否か)が制御部48により判定されるように構成されている。
【0056】
図2に示すように、試薬調製装置4に接続されたRO水作製部(RO水供給ユニット)7は、高濃度試薬を希釈するための希釈用液体としてのRO水を、水道水を用いて作製することが可能なように構成されている。また、RO水作製部7は、RO水貯留タンク7aと、RO膜7bと、水道水に含まれる不純物を取り除くことによって、RO膜7bを保護するためのフィルタ7cとを含んでいる。さらに、RO水作製部7は、水分子がRO膜7bを透過するようにフィルタ7cを通過した水に高圧をかける高圧ポンプ7dと、水道水の供給を制御する電磁バルブ7fとを含んでいる。
【0057】
RO水貯留タンク7aは、RO膜7bを透過したRO水を貯留するために設けられている。RO水貯留タンク7aには、所定量のRO水が貯留されていることを検知するためのフロートスイッチ7eが設けられている。なお、RO水がRO水作製部7からRO水貯留タンク7aに供給される速度、すなわち、RO水作製部7によるRO水の作製速度は、約20L/時間以上約50L/時間以下である。
【0058】
図6に示すように、制御部48は、CPU48aと、ROM48bと、RAM48cと、データ処理部3に接続される通信インターフェース48dと、各回路を介して、試薬調製装置4内の各部に接続されるI/O(Input/Output)部48eとを含んでいる。
【0059】
CPU48aは、ROM48bに記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM48cにロードされたコンピュータプログラムを実行するために設けられている。また、CPU48aは、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、RAM48cを作業領域として利用するように構成されている。
【0060】
通信インターフェース48dは、ユーザが試薬調製装置4内で発生したエラーを確認することができるように、エラー情報をデータ処理部3に伝達可能に構成されている。エラー情報としては、高濃度試薬タンク5の交換を促すための情報、RO水の水質の異常通知(警告および異常)、陰圧源61および陽圧源62の異常を知らせる情報などがある。これらのエラー情報に基づいて、データ処理部3の表示部32にエラー通知が表示される。
【0061】
I/O部48eは、図6に示すように、各センサ回路を介して、フロートスイッチ100〜107、電気伝導度測定ユニット400および電気伝導度測定ユニット410から信号が入力されるように構成されている。また、I/O部48eは、各駆動回路を介して、電磁バルブ200〜206、流入制御バルブ207a、供給バルブ207b、廃棄バルブ207c、電磁バルブ208〜221および空圧部6などの駆動を制御するために、各駆動回路に信号を出力するように構成されている。
【0062】
次に、図1、図2および図7を参照して、本発明の一実施形態による試薬調製装置4の試薬調製処理動作について説明する。
【0063】
図2に示すように、試薬調製処理動作は、ユーザがデータ処理部3から装置起動を指示したとき、すなわち、試薬調製装置4がデータ処理部3から起動信号を受信したときに開始される。試薬調製処理動作が開始されると、まず、図7のステップS1において、CPU48aにより、ROM48bに記憶されているコンピュータプログラムの初期化が行われる。
【0064】
そして、ステップS2において、RO水作製部7ではRO水作製処理が開始される。すなわち、高圧ポンプ7dが駆動され、フィルタ7cを通過した水が高圧によりRO膜7bを透過する。そしてフロートスイッチ7eの検知結果に基づいて、所定量のRO水がRO水貯留タンク7aに収容されるまでRO水がRO水貯留タンク7aに供給される。
【0065】
次に、ステップS3において、フロートスイッチ102(図2参照)の検知結果に基づいて、CPU48aにより、RO水チャンバ42へのRO水の供給が必要か否かが判断される。フロートスイッチ102のフロート部がRO水チャンバ42の下限量(約300mL)に対応する位置に到達すると、RO水の供給が必要と判断され、ステップS4に進む。RO水の供給が必要と判断されない場合、ステップS4の処理がスキップされ、ステップS5の処理に進む。ステップS4では、CPU48aにより、RO水チャンバ42へのRO水供給処理が実行される。この際、電気伝導度測定ユニット400によりRO水作製部7から供給されるRO水の水質(電気伝導度Z)が測定され、水質に問題がなければフロートスイッチ101(102)の検知結果に基づいてRO水チャンバ42にRO水が供給される。その後もRO水供給処理は継続して実行され、フロートスイッチ101(102)の検知結果に基づいて、逐次RO水チャンバ42にRO水が供給される。なお、このRO水供給処理は、後に詳細に説明する。
【0066】
ステップS5において、CPU48aにより、供給チャンバ47に所定量の試薬が貯留されているか否かが判断される。すなわち、フロートスイッチ106の検知結果に基づいて、供給チャンバ47に所定量(約300mL以上約600mL以下)の試薬が貯留されているか否かが判断される。所定量の試薬が貯留されている場合には、ステップS12に移行される。
【0067】
一方、所定量の試薬が貯留されていない場合には、ステップS6において、ダイアフラムポンプ45aおよび45bにより、第1希釈チャンバ43(または、第2希釈チャンバ44)への高濃度試薬およびRO水の供給が行われる。ダイアフラムポンプ45aおよび45bにより、約12.0mL×24回=約288mLのRO水がRO水チャンバ42から吸引され、第1希釈チャンバ43または第2希釈チャンバ44に供給される。一方、約12.0mL×1回=約12mLの高濃度試薬が高濃度試薬チャンバ41から吸引され、第1希釈チャンバ43または第2希釈チャンバ44に供給される。したがって、約288mL+約12mL=約300mLの混合液が供給される。なお、RO水および高濃度試薬は、フロートスイッチ101(102)およびフロートスイッチ100の検知結果に基づいて、RO水チャンバ42および高濃度試薬チャンバ41にそれぞれ供給(補充)される。
【0068】
ステップS7において、第1希釈チャンバ43(または、第2希釈チャンバ44)内に収容された約300mLの混合液の全量が攪拌チャンバ46に供給される。この際、供給される混合液は、攪拌チャンバ46内に設けられたパイプ461により、攪拌チャンバ46の内壁に沿うように流されることによって、攪拌チャンバ46内で攪拌される。また、たとえば第1希釈チャンバ43から攪拌チャンバ46に混合液が供給される間に、上記ステップS6において第2希釈チャンバ44に約300mLの混合液が供給される。したがって、第1希釈チャンバ43と、第2希釈チャンバ44とは、試薬(混合液)の攪拌チャンバ46への供給動作と、合計約300mLのRO水と高濃度試薬とが供給される希釈動作とが、交互に行われる。
【0069】
ステップS8において、電磁バルブ218および219が開放されて試薬が攪拌チャンバ46から供給チャンバ47に供給(移送)される。この際、ステップS9において、電気伝導度測定ユニット410により、供給される試薬の電気伝導度が測定されるとともに、サーミスタ417により試薬の温度が測定される。これにより、CPU48aにより、測定された試薬温度における電気伝導度に、基準温度(25℃)への温度補償が行われることによって、試薬の電気伝導度Z(25℃換算値)が算出される。そして、ステップS10において、CPU48aにより、試薬の電気伝導度Z(25℃換算値)が所定範囲内にあるか否かが判断される。すなわち、予め測定された希釈倍率25倍における試薬の電気伝導度の目標値Zに対して、測定された電気伝導度の25℃換算値Zが所定範囲内にあるか否かが判断される。電気伝導度Zが所定範囲内にない場合には、ステップS11において、電磁バルブ219(図2参照)が閉じられるとともに、電磁バルブ221(図2参照)が開放されて、電気伝導度Zが所定範囲内にない試薬が廃棄流路を介して廃棄される。これにより、精度よく希釈された試薬のみを供給チャンバ47に貯留させることが可能となる。なお、試薬が攪拌チャンバ46から供給チャンバ47に供給され、または廃棄されることにより、攪拌チャンバ46内の試薬が空になったことがフロートスイッチ105により検知されると、第2希釈チャンバ44(または、第1希釈チャンバ43)から試薬が攪拌チャンバ46に供給される。
【0070】
次に、ステップS12において、CPU48aにより、ユーザからのシャットダウン指示の有無が判断され、指示がない場合にはステップS2に移行される。したがって、ステップS12におけるシャットダウン指示がない場合には、上記ステップS2〜S12までの処理が繰り返される。これらのステップS2〜S12までの処理の間にも測定部2では検体の測定動作(試薬の使用)が行われる。このため、ステップS2〜S12までの処理と並行して、供給チャンバ47内の試薬は、空圧部8(図1参照)の陰圧源81(図1参照)から供給される陰圧力によって測定部2に吸引(測定部2に供給)される。また、上記ステップS6〜S8において説明したように、高濃度試薬チャンバ41、RO水チャンバ42、第1希釈チャンバ43、第2希釈チャンバ44および攪拌チャンバ46のそれぞれへの高濃度試薬、RO水、混合液などの供給は、それぞれのフロートスイッチ100〜105の検知結果に基づいて行われる。したがって、各チャンバ内の液体が空の状態では上記ステップS2〜S8の順で動作するが、以降の動作においては、ステップS5における供給チャンバ47内の試薬量の判断結果に関わらず、フロートスイッチ100〜105の検知結果により各液体の供給が必要と判断されたタイミングでそれぞれのチャンバへの供給動作が行われる。
【0071】
また、シャットダウン指示がある場合には、ステップS13において、所定のシャットダウン処理が実行される。たとえば、調製途中の試薬がある場合には、最終的に供給チャンバ47に供給されるまで動作が継続される。また、RO水チャンバ42へのRO水の供給が終了して、RO水チャンバ42からRO水が排出される。これにより、試薬調製装置4が次回起動されるまでRO水がRO水チャンバ42に滞留してしまうのを防止することが可能である。シャットダウン処理が正常に行われると、試薬調製処理動作が終了する。
【0072】
次に、図2および図7〜図10を参照して、本発明の一実施形態による血液分析装置1の試薬調製装置4による試薬調製処理のステップS4に示したRO水供給処理について説明する。このRO水供給処理は、制御部48(CPU48a)により装置各部が制御されることにより行われる。
【0073】
図8に示すように、ステップS21において、CPU48aにより流入制御バルブ207aおよび廃棄バルブ207cが開放(供給バルブ207bは閉塞)される。このとき、RO水がRO水作製部7から試薬調製装置4の流路500に流入することによって、流路500に設けられた電気伝導度測定ユニット400内部を通過するRO水の水質の測定が開始される。すなわち、供給されるRO水の電気伝導度が測定されるとともに、サーミスタ405によりRO水の温度が測定される。これにより、CPU48aにより、測定されたRO水の温度における電気伝導度に、基準温度(25℃)への温度補償が行われることによって、RO水の電気伝導度Z(25℃換算値)が算出される。このRO水の水質(電気伝導度Z)の測定はRO水の供給が終了するまで継続して行われるとともに、電気伝導度測定ユニット400内部のRO水の通過に伴ってRO水の水質(電気伝導度Z)が連続的に測定される。また、廃棄バルブ207cが開放されることにより、RO水の流路500が廃棄ポート503に至る流路502に接続されるので、流入したRO水は廃棄ポート503から廃棄される。
【0074】
そして、ステップS22において、CPU48aにより、電気伝導度測定ユニット400により測定されたRO水の電気伝導度Z(25℃換算値)が、レベル2(第2閾値Z(25℃換算値))よりも大きいか否かが判断される。本実施形態では、RO水の電気伝導度Z(25℃換算値)が、Z(25℃換算値)=約3〜5(μs/cm)よりも大きいか否かが判断される。
【0075】
RO水の電気伝導度Z(25℃換算値)が第2閾値Z(25℃換算値)よりも大きい場合には、ステップS24に進み、RO水の供給停止(廃棄ポート503からの廃棄)を継続したままの状態で、異常通知がデータ処理部3に送信され、図9に示すメッセージ(異常通知)が表示部32に表示される。これにより、RO水の供給を行わないレベルのRO水の水質の異常(レベル2、水質異常)がユーザに通知される。この場合、ユーザに対して、RO水の供給を行うことができないので、RO水作製部7(RO水供給ユニット)の確認を即時に実行するように促す内容のメッセージが通知される。その後、ステップS25において、異常通知を行ってから所定時間が経過したか否かが判断され、所定時間が経過しない場合には、ステップS22に戻る。したがって、RO水作製部7からのRO水の水質が改善しない場合には、RO水の供給停止(廃棄ポート503からの廃棄)と異常通知とが継続されたまま、ループして再度ステップS25に到達する。ステップS25で所定時間が経過した場合には、タイムアウトして停止する。
【0076】
ステップS22でRO水の電気伝導度Z(25℃換算値)が、第2閾値Z=約3〜5(μs/cm)以下と判断された場合には、ステップS23に進み、RO水の水質が異常なし(レベル2の異常ではない)と判定される。また、上記のようにステップS24で異常通知が行われ、その後所定時間経過前にRO水作製部7からのRO水の水質が改善した場合には、異常通知が解除される。
【0077】
次に、ステップS26では、CPU48aにより、電気伝導度測定ユニット400により測定されたRO水の電気伝導度Z(25℃換算値)が、レベル1(第1閾値Z(25℃換算値))よりも大きいか否かが判断される。本実施形態では、RO水の電気伝導度Z(25℃換算値)が、Z=約1(μs/cm)よりも大きいか否かが判断される。
【0078】
ステップS26でRO水の電気伝導度Z(25℃換算値)が、第1閾値Z=約1(μs/cm)以下と判断された場合には、ステップS27に進み、RO水の水質が警告なし(レベル1の警告ではない)と判定される。また、RO水の電気伝導度Z(25℃換算値)が第1閾値Z(25℃換算値)よりも大きいと判断された場合には、ステップS28に進み、警告通知がデータ処理部3に送信され、図10に示す警告通知が表示部32に表示される。これにより、RO水の供給可能なレベルのRO水の水質の異常(レベル1、警告)がユーザに通知される。この場合、RO水の供給は可能であるので、ユーザに対して、RO水作製部7(純水供給ユニット)のメンテナンス時期が近づいていることを知らせる内容のメッセージが表示される。
【0079】
次に、ステップS29において、CPU48aにより、開放されていた廃棄バルブ207cが閉塞されるとともに、供給バルブ207bが開放される。供給バルブ207bが開放されることにより、RO水の流路がRO水チャンバ42に至る流路501に切り替えられるので、電気伝導度Z(25℃換算値)がレベル1(第1閾値Z=約1(μs/cm))かまたはレベル1よりも小さいRO水のRO水チャンバ42への供給が開始される。
【0080】
その後、ステップS30において、フロートスイッチ101(図2参照)の検知結果に基づいて、RO水チャンバ42へのRO水の供給が不要か否かが判断される。フロートスイッチ101のフロート部がRO水チャンバ42の上限量(約600mL)に対応する位置に到達するまでは、RO水の供給が必要(No)と判断され、ステップS31に進む。
【0081】
ステップS31では、ステップS22と同様に、CPU48aにより、電気伝導度測定ユニット400により測定されたRO水の電気伝導度Z(25℃換算値)が、レベル2(第2閾値Z(25℃換算値))よりも大きいか否かが判断される。すなわち、RO水チャンバ42へのRO水の供給中も供給されるRO水の水質(電気伝導度)が継続的に監視される。
【0082】
RO水の電気伝導度Z(25℃換算値)が第2閾値Z(25℃換算値)よりも大きい場合には、ステップS32に進み、CPU48aにより、開放されていた供給バルブ207bが閉塞されるとともに、廃棄バルブ207cが開放される。したがって、RO水チャンバ42へのRO水の供給が停止される。そして、ステップS33において、ステップS24と同様の異常通知(レベル2、水質異常、図9参照)がユーザに通知される。ステップS34において、ステップS25と同様に異常通知を行ってから所定時間が経過したか否かが判断され、所定時間が経過しない場合には、ステップS30に戻る。したがって、RO水作製部7からのRO水の水質が改善しない場合には、RO水の供給停止(廃棄ポート503からの廃棄)と異常通知とが継続されたまま、タイムアウトして停止する。
【0083】
ステップS31でRO水の電気伝導度の25℃換算値Zが、第2閾値Z以下と判断された場合には、ステップS35に進み、RO水の水質が異常なし(レベル2の異常ではない)と判定される。なお、ステップS32でRO水の供給が停止され、ステップS33で異常通知が行われた場合も、その後RO水作製部7からのRO水の水質が改善した場合には、異常通知が解除される。この場合には、RO水の供給停止のために開放されていた廃棄バルブ207cが閉塞されるとともに、供給バルブ207bが開放されて、RO水チャンバ42へのRO水の供給が再開される。
【0084】
次に、ステップS36では、ステップS26と同様に、CPU48aにより、電気伝導度測定ユニット400により測定されたRO水の電気伝導度Z(25℃換算値)が、レベル1(第1閾値Z(25℃換算値))よりも大きいか否かが判断される。
【0085】
ステップS36でRO水の電気伝導度Z(25℃換算値)が、第1閾値Z=約1(μs/cm)以下と判断された場合には、ステップS37に進み、RO水の水質が警告なし(レベル1の警告ではない)と判定される。なお、たとえばステップS28でレベル1の警告通知が行われていた場合であって、RO水の供給中にRO水の水質がレベル1よりも改善した場合(電気伝導度Zがレベル1以下になった場合)には、警告が解除される。
【0086】
また、ステップS36でRO水の電気伝導度Z(25℃換算値)が第1閾値Zよりも大きいと判断された場合には、ステップS38に進み、警告通知がデータ処理部3に送信され、ステップS28と同様の警告通知(レベル1、警告、図10参照)がユーザに通知される。この場合、RO水の供給は可能であるので、RO水の供給は継続されたままである。なお、ステップS28でレベル1の警告通知が行われていた場合には、警告が維持される。
【0087】
その後は、ステップS30に戻り、フロートスイッチ101のフロート部がRO水チャンバ42の上限量(約600mL)に対応する位置に到達するまで、ステップS30〜S38までの処理が繰り返される。一方、フロートスイッチ101のフロート部がRO水チャンバ42の上限量(約600mL)に対応する位置に到達すると、RO水の供給が不要(Yes)と判断され、ステップS39に進む。
【0088】
ステップS39では、CPU48aにより、流入制御バルブ207a、供給バルブ207bおよび廃棄バルブ207cが閉塞され、電気伝導度測定ユニット400による水質(電気伝導度Z)の測定も停止され、主ルーチン(図7参照)にリターンする。これにより、1回分のRO水供給処理は終了する。
【0089】
上記のように、図7に示した試薬調製処理においては、測定部2による試薬の使用に伴って継続的に試薬の調製が行われるので、ステップS6で第1希釈チャンバ43(または、第2希釈チャンバ44)への高濃度試薬およびRO水の供給処理が行われるのに伴い、RO水チャンバ42内のRO水が減少する。したがって、ステップS4以降においても、第1希釈チャンバ43(または、第2希釈チャンバ44)への供給によってRO水チャンバ42の下限量に達したタイミングで、ステップS3(図8参照)においてRO水チャンバ42へのRO水の供給が必要と判断されることによりRO水供給処理が実行される。RO水供給処理は、図7のステップS13におけるシャットダウン処理が実行されることによって終了する。
【0090】
本実施形態では、上記のように、電気伝導度測定ユニット400によりRO水を測定して得られた電気伝導度Zに基づいてRO水の流れを制御する制御部48(CPU48a)を設けることによって、RO水が高品質である(純度が高い)か低品質である(純度が低い)かを定量的に評価する電気伝導度Zに基づき、RO水の水質が低品質である(電気伝導度Zが大きい)場合には、低品質のRO水を第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)側に供給しないようRO水の流れを制御して低品質のRO水が第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)に供給されるのを防止することができる。この結果、低品質の(電気伝導度Zが大きい)RO水が高濃度試薬(試薬原液)と混合されるのを防止することができるので、低品質のRO水と高濃度試薬(試薬原液)とが混合された混合液が廃棄されることに起因する高濃度試薬(試薬原液)の浪費を抑制することができる。また、低品質のRO水が供給された場合に、低品質のRO水と高濃度試薬とが混合された混合液を廃棄せずに済むので、環境に対する負荷を低減した試薬調製装置を提供することができる。
【0091】
また、本実施形態では、CPU48aにより、RO水を測定して得られた電気伝導度Zに基づいて第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)側へRO水を供給するか否かを決定し、第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)側へRO水を供給しないと決定した場合に、廃棄ポート503からRO水を廃棄するようにRO水の流れを制御することによって、廃棄ポート503を用いて容易に低品質のRO水を廃棄することができる。
【0092】
また、本実施形態では、CPU48aにより、RO水が廃棄ポート503に供給されるようにRO水の流れを制御するとともに、廃棄ポート503に向かって流れるRO水の電気伝導度Zを電気伝導度測定ユニット400によって取得し、電気伝導度Zに基づいてRO水を第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)に供給するか否か(RO水チャンバ42に貯留するか否か)を決定し、RO水を第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)へ供給する(RO水チャンバ42に貯留する)と決定した場合に、RO水が第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)側のRO水チャンバ42に供給されるようにRO水の流れを制御することによって、RO水を廃棄ポート503から廃棄しながらRO水の電気伝導度Zを取得し、RO水の水質(電気伝導度Z)に問題がないことが確認されてからRO水を第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)側のRO水チャンバ42に供給することができるので、第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)側のRO水チャンバ42に低品質のRO水が供給されることを確実に防止することができる。
【0093】
また、本実施形態では、CPU48aにより、第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)側のRO水チャンバ42に供給中のRO水の電気伝導度Zを電気伝導度測定ユニット400によって取得し、電気伝導度Zに基づいて、RO水のRO水チャンバ42への供給を停止するか否かを決定し、供給の停止を決定したとき、廃棄ポート503からRO水を廃棄するようにRO水の流れを制御することによって、第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)側のRO水チャンバ42にRO水を供給している際にRO水の水質が低下したときにRO水のRO水チャンバ42への供給を停止することができるので、RO水の第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)側への供給中に水質が低下した場合にも、低品質のRO水が第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)側に供給されることを抑制することができる。
【0094】
また、本実施形態では、CPU48aにより、RO水が連続的に流れるようにRO水の流れを制御するとともに、RO水の電気伝導度Zを電気伝導度測定ユニット400によって連続的に取得することによって、RO水の電気伝導度Zを連続的に取得することができるので、第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)側のRO水チャンバ42へRO水を供給中に水質が低下した場合や、第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)側へのRO水の供給停止中(廃棄ポート503から廃棄中)に水質の低下が解消した場合などに、純水の水質(純度)の変化に速やかに対応することができる。
【0095】
また、本実施形態では、CPU48aにより、RO水を測定して得られた電気伝導度Zに基づいて、第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)に供給されるRO水を貯留するRO水チャンバ42へのRO水の流れを制御することによって、水質(電気伝導度Z)に問題のないRO水をRO水チャンバ42に貯留しておくことができるので、水質が低下してRO水の供給を停止した場合にも、即座に試薬の調製動作を停止させることなく、RO水チャンバ42から第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)へのRO水の供給を継続することができる。
【0096】
また、本実施形態では、CPU48aにより、供給バルブ207bおよび廃棄バルブ207cからなる流路切替部を制御してRO水の流路を切り替えることにより、RO水の流れを制御することによって、供給バルブ207bおよび廃棄バルブ207cによって、水質(純度)に問題のないRO水をRO水チャンバ42に供給する流路501と、水質(純度)の低下したRO水を廃棄ポート503に供給する(廃棄する)流路502とを使い分けることができるので、水質(純度)の低下したRO水が流路に残留することに起因して、流路に残留した低品質のRO水が第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)側に流入してしまうのを抑制することができる。
【0097】
また、本実施形態では、CPU48aにより、電気伝導度Zがレベル2を超える(第2閾値Z=約3〜5(μs/cm)よりも大きい)場合に、RO水をRO水チャンバ42へ供給しないようRO水の流れを制御するとともにレベル2の異常を通知し、電気伝導度Zがレベル2以下で、かつ、レベル1を超える(第1閾値Z=約1(μs/cm)よりも大きい)場合に、RO水をRO水チャンバ42へ供給しながらレベル1の異常(第1閾値Z=約1(μs/cm)よりも大きい)を通知することによって、ユーザは、レベル2の異常通知に基づいてRO水作製部(RO水供給ユニット)7のメンテナンスを早急に行う必要があることを知ることができるとともに、レベル1の異常の通知に基づいてメンテナンス時期が近いことを知ることができる。
【0098】
また、本実施形態では、電気伝導度測定ユニット400の電極間の間隔Dを、電気伝導度測定ユニット410の電極間の間隔Dよりも小さくなるように構成することによって、電気伝導度の低いRO水の電気伝導度Zを、精度良く測定することができる。
【0099】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0100】
たとえば、上記一実施形態では、本発明の試薬調製装置の一例として、測定部2と別個に設置される試薬調製装置4を示したが、本発明はこれに限られない。本発明の試薬調製装置は、たとえば、測定部内に設けられ、試薬調製機構として機能する試薬調製装置であってもよい。試薬調製機構を備える測定部(装置)としては、たとえば、血球計数装置、免疫測定装置および塗抹標本作製装置などがあり、これらの試薬調製機構に本発明を適用してもよい。
【0101】
また、上記一実施形態では、RO水作製部7を試薬調製装置4の外部に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、RO水作製部を試薬調製装置の一部として、試薬調製装置の内部に設けてもよい。この場合にも、RO水作製部から希釈チャンバ側(RO水チャンバ)にRO水を供給する過程でRO水の水質(電気伝導度)を測定し、測定された電気伝導度に基づいてRO水の流れを制御するように構成すればよい。
【0102】
また、上記一実施形態では、第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)に供給されるRO水を貯留するためのRO水チャンバ42を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、RO水チャンバを設けることなく、RO水作製部からダイアフラムポンプによって直接希釈チャンバにRO水を供給するように構成してもよい。この場合にも、RO水作製部から希釈チャンバにRO水を供給する過程でRO水の水質(電気伝導度)を測定し、測定された電気伝導度に基づいてRO水の流れを制御するように構成すればよい。
【0103】
また、上記一実施形態では、本発明の混合容器の一例として、2つの希釈チャンバ(第1希釈チャンバ43および第2希釈チャンバ44)を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、混合容器(希釈チャンバ)を1つだけ設けてもよいし、混合容器(希釈チャンバ)を3つ以上設けてもよい。
【0104】
また、上記一実施形態では、本発明の水質測定部の一例として、電気伝導度計を含み、RO水の電気伝導度Zを測定することによってRO水の水質を測定する電気伝導度測定ユニット400を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明の水質測定部は、電気伝導度以外にも、水質を反映するパラメータを取得することが可能なものであればよい。たとえば、本発明の水質測定部として、pHメータ、吸光度計を用いてもよい。また、純水(RO水)の水質として、導電性の不純物の量を測定する以外にも、たとえば非導電性の不純物の量としてTOC(Total Organic Carbon:全有機体炭素量)を測定してもよい。
【0105】
また、上記一実施形態では、本発明の水質測定部の一例として、電気伝導度測定ユニット400を、電気伝導度測定ユニット400の内部を通過するRO水の電気伝導度を連続的に測定するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、RO水を一定量貯留して、貯留されたRO水の電気伝導度を測定する水質測定部を用いてもよい。
【0106】
また、上記一実施形態では、本発明の水質測定部の一例として、RO水の電気伝導度を測定するための電気伝導度測定ユニット400を1つ設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、水質測定部を複数設けてもよい。
【0107】
また、上記一実施形態では、RO水の電気伝導度Zが所定の条件を満たさない場合(第2閾値Zよりも大きい場合)に、RO水を廃棄ポート503から廃棄するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、純水(RO水)の水質が所定の条件を満たさない場合に純水(RO水)を廃棄することなく、試薬調製装置の内部または外部に設けられたろ過装置に所定の条件を満たさない純水(RO水)を供給して、ろ過された純水(RO水)の水質を再度取得するように構成してもよい。
【0108】
また、上記一実施形態では、本発明の水質測定部の一例として、RO水の電気伝導度を測定するための電気伝導度測定ユニット400を、第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)に至る流路上(流路500上)に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1希釈チャンバ43(第2希釈チャンバ44)に至る流路500とは別の流路を設けて、別の流路に流れた純水(RO水)の水質を取得するように構成してもよい。
【0109】
また、上記一実施形態では、本発明の水質測定部の一例としての電気伝導度測定ユニット400による水質(電気伝導度Z)の測定を、連続的に行うように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、純水(RO水)を廃棄ポートに向かって断続的に流して水質を測定し、水質が所定の条件を満たしている場合に、貯留容器に純水(RO水)を連続的に供給するように構成してもよい。
【0110】
また、上記一実施形態では、水質情報(電気伝導度Z)に応じて、RO水をRO水チャンバ42へ供給可能なレベル1の異常(警告通知)とRO水をRO水チャンバ42へ供給しないレベル2の異常(異常通知)とを通知するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、純水(RO水)が供給できない場合にのみ異常を通知するようにしてもよいし、3つ以上の異常レベルを設けてそれぞれのレベルに対応する通知を行うようにしてもよい。また、異常を通知しなくてもよい。
【0111】
また、上記一実施形態では、水質情報(電気伝導度Z)に応じた異常の通知を、データ処理部3の表示部32に表示することによって通知するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、試薬調製装置に表示部を設けて、試薬調製装置の表示部に異常通知を表示するように構成してもよい。また、表示部に表示させずに、音声や、その他の通知方法を用いて通知してもよい。また、表示による通知では、メッセージを表示することなく、LEDなどを用いて異常を示す所定色(たとえば赤色)の発光によって異常を通知してもよい。
【0112】
また、上記一実施形態では、異常の通知を行うか否かの条件として、第1閾値Z=約1(μs/cm)と、第2閾値Z=約3〜5(μs/cm)とを用いて例を示したが、本発明はこれに限られない。これらの閾値の値は、上述の通り用いられる試薬の種類や、使用される地域などによっても異なるので、ユーザにより目的に応じた値に変更すればよい。
【0113】
また、上記一実施形態では、RO水をRO水チャンバに供給する際に、まず流路500を流路502に接続して廃棄ポート503からRO水を廃棄しながら電気伝導度Zを測定し(図8のステップS21参照)、電気伝導度Zがレベル2以下(Z>Zでない)であることが確認されてから、流路501に切り替えてRO水チャンバ42に供給するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、まず流路501を流路501に接続して、電気伝導度Zがレベル2よりも大きい(Z>Z)ことが確認された時点で流路502に切り替えてRO水を廃棄ポート503から廃棄するように構成してもよい。たとえば、流路500の距離が長い場合には、RO水が流路502(供給バルブ207b)に到達するまでにRO水の電気伝導度Zを取得することができるので、この電気伝導度Zに基づいて水質が低い場合には、供給バルブ207bを閉塞(廃棄バルブ207cを開放)するように構成すればよい。
【符号の説明】
【0114】
2 測定部
4 試薬調製装置
42 RO水チャンバ(貯留容器)
43 第1希釈チャンバ(混合容器)
44 第2希釈チャンバ(混合容器)
48 制御部
207b 供給バルブ(流路切替部)
207c 廃棄バルブ(流路切替部)
400 電気伝導度測定ユニット(水質測定部、第1電気伝導度計)
410 電気伝導度測定ユニット(第2電気伝導度計)
501 流路(水質測定部から混合容器に至る流路)
502 流路(水質測定部から廃棄ポートに至る流路)
503 廃棄ポート
電極の間隔(第1の間隔)
電極の間隔(第2の間隔)
電気伝導度(純水の電気伝導度、水質情報)
電気伝導度(混合液の電気伝導度)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬を用いて検体を測定する測定部に、純水と試薬原液とを含む混合液を試薬として供給可能に構成された試薬調製装置であって、
純水と試薬原液とを混合する混合容器と、
純水の水質を測定する水質測定部と、
純水を測定して得られた水質情報に基づいて、純水の流れを制御する制御部とを備える、試薬調製装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記混合容器へ向かう流路と、それ以外の流路とで、純水の流れる流路を切り替えるように構成されている、請求項1に記載の試薬調製装置。
【請求項3】
純水を廃棄するための廃棄ポートをさらに備え、
前記制御部は、純水を測定して得られた水質情報に基づいて前記混合容器側へ純水を供給するか否かを決定し、前記混合容器側へ純水を供給しないと決定した場合に、前記廃棄ポートから純水を廃棄するように純水の流れを制御する、請求項1または2に記載の試薬調製装置。
【請求項4】
前記制御部は、純水が前記廃棄ポートに供給されるように純水の流れを制御するとともに、前記廃棄ポートに向かって流れる純水の水質情報を前記水質測定部によって取得し、水質情報に基づいて純水を前記混合容器に供給するか否かを決定し、純水を前記混合容器へ供給すると決定した場合に、純水が前記混合容器側に供給されるように純水の流れを制御する、請求項3に記載の試薬調製装置。
【請求項5】
前記制御部は、純水が前記混合容器側に供給されるように純水の流れを制御するとともに、前記混合容器側に向かって流れる純水の水質情報を前記水質測定部によって取得し、水質情報に基づいて、純水の前記混合容器側への供給を停止するか否かを決定し、供給の停止を決定したとき、前記廃棄ポートから純水を廃棄するように純水の流れを制御する、請求項3または4に記載の試薬調製装置。
【請求項6】
前記制御部は、純水が連続的に流れるように純水の流れを制御するとともに、純水の水質情報を前記水質測定部によって連続的に取得する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の試薬調製装置。
【請求項7】
前記混合容器に供給される純水を貯留する貯留容器をさらに備え、
前記水質測定部は、前記貯留容器の上流側に配置されており、
前記制御部は、純水を測定して得られた水質情報に基づいて、前記貯留容器への純水の流れを制御する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の試薬調製装置。
【請求項8】
純水を廃棄するための廃棄ポートと、
前記水質測定部から前記混合容器に至る流路と、前記水質測定部から前記廃棄ポートに至る流路とで、純水の流れる流路を切り替える流路切替部とをさらに備え、
前記制御部は、前記流路切替部を制御して流路を切り替えることにより、純水の流れを制御する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の試薬調製装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記水質測定部によって取得した水質情報が所定の基準を満たすか否かを判断し、前記所定の基準を満たさないと判断したとき、純水の水質に関する異常を通知する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の試薬調製装置。
【請求項10】
前記所定の基準は、第1の基準と前記第1の基準よりも緩い第2の基準とを含み、
前記制御部は、水質情報が前記第2の基準を満たさない場合に、純水を前記混合容器側へ供給しないように純水の流れを制御するとともに第1の異常を通知し、水質情報が前記第2の基準を満たし且つ前記第1の基準を満たさない場合に、純水を前記混合容器側へ供給するように純水の流れを制御するとともに第2の異常を通知するように構成されている、請求項9に記載の試薬調製装置。
【請求項11】
前記水質測定部は、水質情報として純水の電気伝導度を測定する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の試薬調製装置。
【請求項12】
前記水質測定部は、内部に純水を通過させ、通過する純水の電気伝導度を測定する、請求項11に記載の試薬調製装置。
【請求項13】
前記水質測定部は、第1の間隔で配置された電極間に存在する純水の電気伝導度を測定する第1電気伝導度計を含み、
第2の間隔で配置された電極間に存在する混合液の電気伝導度を測定する第2電気伝導度計をさらに備え、
前記第1電気伝導度計の電極間の前記第1の間隔は、前記第2電気伝導度計の電極間の前記第2の間隔よりも小さい、請求項11または12に記載の試薬調製装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate