説明

試験測定機器用表示装置

【課題】3次元イメージの右イメージ及び左イメージの不一致の情報を視覚化するために追加の表示を行う。
【解決手段】被試験3次元イメージのセグメントA、B、C、D及びEの不一致の統計値を計算し、これら不一致計算値を表す複数のマーカを発生する。不一致統計は、最大不一致、最小不一致、平均不一致、又は、RMS不一致である。また、マーカの各々は、対応する不一致統計に基づくグレー・スケールの影(対象1及び2の影)又はカラー・コード化により示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオ試験測定機器に関し、特に、3次元(3D)イメージの不一致の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数年の間に、ライブ及び記録済みプログラムの素材の両方で、3Dビデオの分野に飛躍的な成長がある。3Dコンテンツの制作者は、目の負担、頭痛などを含む種々の新たな聴視者の問題に取り組まなければならない。これら問題の多くは、コンテンツ作成期間中、又はポスト・プロダクション・サイトにて、フレーム単位での不一致(disparity)値を測定することにより検出できる。この不一致値は、左イメージ・フレーム及び右イメージ・フレームの間の各ピクセル位置での水平(又は垂直)方向での移動又はずれ(translation)の値を示す。技能者又は技術者は、不一致値を用いて、フレーム内の種々の位置での実際の「深さ(depth)」を求めることができる。
【0003】
不一致情報は、種々の方法で表示することができる。例えば、英国ケンブリッジのセル・ソフト・コム社(Cel-Soft.com Ltd)が販売するセル・スコープ3D(Cel-Scope3D)立体分析器は、「深さマップ(depth map)」フォーマットにて水平及び垂直の両方向での不一致情報を表示する(非特許文献1を参照)。セル・スコープ3D立体分析器は、所定のフレームに対して、フレーム内の種々の位置での不一致を計算し、これら不一致のカラー・コード化不一致関数(即ち、ヒストグラム)を作成する。さらに、セル・スコープ3D立体分析器は、分布での不一致測定値が所定レンジを外れた時に、ユーザに警告するアラームを発生する。ここで、任意のエッジ・ポイントのカラーが、ヒストグラムにマッピングされた際のポイントでの深さ値のカラーと同じになる方法で、分布関数でのカラー・コードが疑似カラー・コード化エッジ・マップに戻るマッピングを行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】セル・ソフト・コム社のセル・スコープ3D立体分析器の紹介[平成23年11月21日検索]インターネット(URL:http://www.cel-soft.com/celscope3d)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セル・スコープ3D立体分析器の「深さマップ」は有用な表示であるが、ビデオ技能者及び技術者は、不一致情報を視覚化するために追加の表示を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は次の通りである。
(1)被試験3次元イメージのセグメントの計算済み不一致統計値を夫々が表す複数のマーカを発生する手段を具えた試験測定機器用表示装置。
(2)上記不一致統計は、最大不一致、最小不一致、平均不一致、RMS(実効値)不一致のグループから選択される態様1の表示装置。
(3)上記セグメントは、水平セグメントである態様1の表示装置。
(4)上記セグメントは、垂直セグメントである態様1の表示装置。
(5)警告限界を更に設ける態様1の表示装置。
(6)上記マーカの各々は、対応する上記不一致統計に基づくグレー・スケールの影又はカラー・コード化により示される態様1の表示装置。
(7)上記複数のマーカは、対応する複数の不一致値と共に表示される態様1の表示装置。
(8)1つ以上の不一致統計に夫々基づく複数のマーカを発生する手段を具え;フレーム単位で被試験3次元ビデオの単一のフレーム又はフィールドにわたって上記不一致統計の各々を計算することを特徴とする試験測定機器用表示装置。
(9)上記不一致統計は、最大不一致、最小不一致、平均不一致、RMS(実効値)不一致のグループから選択される態様8の表示装置。
(10)正警告限界を更に設ける態様8の表示装置。
(11)負警告限界を更に設ける態様8の表示装置。
(12)1つ以上の不一致統計に基づいた値の変化レートを夫々表す複数のマーカを発生する手段を具え;フレーム単位で計算された被試験3次元ビデオの単一のフレーム又はフィールドにわたって上記不一致統計の各々を計算することを特徴とする試験測定機器用表示装置。
(13)上記不一致統計は、最大不一致、最小不一致、平均不一致、RMS(実効値)不一致のグループから選択される態様12の表示装置。
(14)正警告限界を更に設ける態様12の表示装置。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明は、表示データの視覚化を容易にする種々の表示を提供できる。本発明の実施例では、複数のマーカを有する「スナップショット」表示を提供できる。ここで、各マーカは、被試験3Dイメージの水平又は垂直セグメントの不一致統計を表す。他の実施例では、複数のマーカを有する「傾向」表示を提供できる。ここで、各マーカは、フレーム単位での被試験3Dビデオの単一のフレーム又はフィールドにわたって計算した不一致統計、又は不一致統計の変化レートを示す。不一致統計は、最大不一致、最小不一致、平均不一致、RMS(実効値)不一致などでよい。
【0008】
本発明の目的、利点及び新規な特徴は、添付図を参照した以下の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】3Dビデオ・フレームを示す図である。
【図2】本発明の実施例により水平方向にセグメント化されたビデオ・フレームを示す図である。
【図3】本発明の実施例によりセグメント化されたフレーム不一致の表示を示す図である。
【図4】本発明の実施例により垂直方向にセグメント化されたビデオ・フレームを示す図である。
【図5】本発明の実施例による不一致傾向のデータの表示を示す図である。
【図6】本発明の実施例による不一致の変化レートの表示を示す図である。
【実施例】
【0010】
本発明の実施例は、不一致情報を視覚化する種々の新たな表示を提供する。なお、不一致及び不一致統計を計算したり、マーカを発生したり、計算結果を表示したり、その他の処理を行ったりする手段は、マイクロプロセッサ及びその制御ソフトウェアなどにより構成できる。
【0011】
[I.セグメント化されたフレームの深さの「スナップショット」表示]
例として図1を示す。図1は、各々が異なる視覚深さを有する5つの対象1、2、3、4及び5を表示するビデオ・フレーム100を示す。対象1及び2は、負の不一致なので、観察者に対してスクリーン・プレーンの前に現れる。対象4及び5は、正の不一致なので、観察者に対してスクリーン・プレーンの後ろに現れる。対象3は、ゼロの不一致(不一致なし)なので、観察者に対してスクリーン・プレーン上に現れる。
【0012】
図2は、図1に示すビデオ・フレームと同じでビデオ・フレーム200あるが、5つのセグメントA、B、C、D及びEに水平方向に分割されている。本発明の実施例において、5つのセグメントの各々に対して不一致値を計算し、これら不一致値に基づいて5つのセグメントの各々に対して不一致統計を計算し、不一致統計をグラフで表示する。種々の方法により不一致値を計算できる。かかる方法の1つは、2011年1月11日出願の米国特許出願第13/004124号「立体不一致を効率的に測定し、関連ミスマッチ・イメージを発生するシステム及び方法」に記載された方法である。不一致統計は、最大不一致、最小不一致、平均不一致、RMS(実効値)不一致などでよい。
【0013】
例えば、図3に示すように、セグメントA、B、C、D及びEの各々における最大の正及び負の不一致値305、310、315、320を、棒グラフの形式で表示する。最大の正及び負の不一致値は、305、310、315及び320は、図2に示す対象1、2、3、4及び5に対応する点に留意されたい。よって、表示300は、ビデオ・フレームの各垂直セグメントにおける最大の正及び負の不一致の「スナップショット」、即ち、不一致の「セグメント化された水平ビュー」を技能者又は技術者に提供する。
【0014】
「スナップショット」表示300により、技能者又は技術者は、フレームの正及び負の不一致値を直ちに確認できる。これは、ポスト・プロダクションの現場にてビデオ・データを分析する技能者にとって特に有用である。その理由は、ヒストグラムの如き複雑な深さデータを分析する必要がなく、深さマップを視覚化するのを援助するためである。
【0015】
いくつかの実施例において、正の不一致に対して警告限界325を表示する。他の実施例においては、負の不一致に対して警告限界330を表示する。これら警告限界のいずれかに違反すると、ユーザに警告(アラーム)が発せられる。
【0016】
図4は、図1に示すビデオ・フレームと同じビデオ・フレーム400であるが、5つのセグメントF、G、H、I及びJに垂直方向に分割されている。いくつかの実施例において、これらセグメントの各々の不一致は、図3と同様な方法で表示することができるので、不一致の「セグメント化された垂直ビュー」を提供できる(図示せず)。
【0017】
上記のビデオ・フレームは全部で5つのセグメントに分割されているが、代わりに、ビデオ・フレームを任意の数のセグメントに分割できることが明らかである。よって、実施例において、セグメントの数、又はセグメントの幅又は高さは、ユーザが定義できる。
【0018】
実施例において、表示する不一致統計は、それらの対応する不一致統計の値に基づいたカラーのコード化又はグレー・スケールの異なる影を用いて示すことができる。例えば、負の不一致統計は、赤の種々の影を用いて示すことができ、より一層負の不一致統計は、一層飽和した赤を用いて示すことができ、正の不一致は、シアンの種々の影を用いて表示できる。
【0019】
いくつかの実施例(図示せず)において、一層の洞察を不一致統計に与えるために、対応する不一致値と共に不一致統計を表示する。例えば、特定のセグメントの最大不一致を表すバー(棒)を、不一致統計に基づいた不一致値と重ねて示すこともできる。
【0020】
これら「スナップショット」表示は、フレーム単位で不一致情報を示すので、実施例において、これら表示が、ピーク検出、高速アタック、低速減衰などのユーザ定義の特性を含むことができる。
【0021】
[II.「傾向」表示]
いくつかの実施例において、フレーム単位で単一のフレーム又はフィールドにわたって不一致統計を計算し、その結果の値を傾向グラフでのマーカにより示す。不一致統計は、最大不一致、最小不一致、平均不一致、RMS不一致などでよい。例えば、図5は、最大の正の不一致505及び最大の負の不一致510の傾向グラフ500を示し、各マーカが単一のフレームに対応する。他の実施例(図示せず)において、各マーカは、2つ以上のフレーム又はフィールドの不一致統計に基づいて計算された値を示す。例えば、傾向グラフでの各マーカは、最新の10個のフレーム又はフィールドの不一致統計の移動平均などを示すことができる。移動平均の代わりに、種々の他の計算を濾波などに用いてもよい。
【0022】
実施例において、正の不一致の警告限界515及び負の不一致の警告限界520も表示されている。これら警告限界の何れかを外れると、ユーザに警告を発生する。
【0023】
他の実施例において、上述の不一致値の変化レートを表示する。例えば、図6は、図5に示す最大の正の不一致605と最大の負の不一致610のフレーム当たりの変化レートの表示600を示す。図6に示すデータは、図5に示すデータの1次導関数である。
【0024】
実施例において、最大の正の不一致の変化レート用の正の警告限界615及び負の警告限界620を示す。別の実施例において、最大の負の不一致の変化レート用の正の警告限界625及び負の警告限界630を示す。これら警告限界のいずれかを外れると、ユーザに警告する。
【0025】
これら傾向のデータ表示は、時間経過に伴う深さの傾向、即ち、フレームからフレームへの不一致の傾向及び不一致の変化レートの両方を理解するのに有用である。このデータ及び警告設定により、ユーザは、延長した時間にわたる不一致情報を観察できる。これは、連続したビデオ・プログラムの素材にとって特に有効である。フレームからフレームへの深さ情報がどのように変化するかを理解することは、3Dデータでのシーン・カットを分析する際に特に有用である。
【0026】
ここで説明した種々の表示は、小さな携帯電話の表示から大きなシネマ・スクリーンまでの任意のサイズのイメージの不一致情報を示すのに有用である。
【0027】
ここで説明した表示は、任意の不一致測定アプリケーションに用いることができ、本願出願人のテクトロニクス社製VQS1000型ビデオ品質分析ソフトウェアの如きソフトウェア・アプローチに特に有用である。VQS1000型ビデオ品質分析ソフトウェアは、QoE(quality of experience)のモニタ、ネットワーク・パーフォマンスの最適化、放送配信問題の厳格な遠隔診断に有用なツールである。
【0028】
不一致統計を図3でバーとして示し、図5でポイントとして示したが、不一致のこれらの表示は、単に説明のためであり、任意の他の種類のマーカを用いて不一致統計を示してもよい。
【0029】
本発明は、ビデオ試験測定機器の分野で顕著な利点を有することが上述から理解できよう。本発明の説明のために特定の実施例について図示し説明したが、本発明の要旨を逸脱することなく種々の変更が可能なことが理解できよう。
【符号の説明】
【0030】
100、200、400 ビデオ・フレーム
300 「スナップショット」表示
305、310、315、320 不一致値
325、330 警告限界
500 傾向グラフ
505 最大の正の不一致
510 最大の負の不一致
515 正の不一致の警告限界
520 負の不一致の警告限界
600 変化レートの表示
605 最大の正の不一致
610 最大の負の不一致
615 正の警告限界
620 負の警告限界
625 正の警告限界
630 負の警告限界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験3次元イメージのセグメントの計算済み不一致統計値を夫々が表す複数のマーカを発生する手段を具えた試験測定機器用表示装置。
【請求項2】
1つ以上の不一致統計に夫々基づく複数のマーカを発生する手段を具え、
フレーム単位で被試験3次元ビデオの単一のフレーム又はフィールドにわたって上記不一致統計の各々を計算することを特徴とする試験測定機器用表示装置。
【請求項3】
1つ以上の不一致統計に基づいた値の変化レートを夫々表す複数のマーカを発生する手段を具え、
フレーム単位で計算された被試験3次元ビデオの単一のフレーム又はフィールドにわたって上記不一致統計の各々を計算することを特徴とする試験測定機器用表示装置。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−134955(P2012−134955A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255232(P2011−255232)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(391002340)テクトロニクス・インコーポレイテッド (234)
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
【Fターム(参考)】