説明

試験片収容体、その製造方法

【課題】本来収容されるべき場所とは異なる場所に試験片及び乾燥剤を収容する可能性が低い試験片収容体を提供する。
【解決手段】本発明の試験片収容体は、試料中の被検出物質を検出するための試験片と、乾燥剤と、前記試験片及び前記乾燥剤を収容する収容容器と、蓋部とを備え、前記収容容器は、前記試験片を収容する第一収容部と、前記乾燥剤を収容する第二収容部とを有し、前記蓋部は、前記第一収容部と前記第二収容部を封じ、前記第一収容部と前記第二収容部は、連通し、前記第二収容部に収容された前記乾燥剤が前記第一収容部内の湿気を吸収可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験片収容体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料中の被検出物質(例えば、病原性ウイルス、タンパク質、薬物など)の検出や、試料の性質(例えば、水素イオン濃度など)の判定を行うために、試験片が用いられる。
通常、試験片は判定部を有し、この判定部には、被検出物質と抗原抗体反応を生じる物質や、被検出物質に接触すると色が変化する物質等が存在する。この判定部が試料と接触することによって判定部の色等が変化し、被検出物質の検出や試料の性質の判定を行うことができる。
試験片の判定領域に存在する物質は、湿気等により変質することがあるため、試験片は、板状の乾燥剤と共に袋状の包装体に包装される。
袋状の包装体に収容した試験片を取り出すときは、包装体の指定部位を切り裂いて、包装体の内部に収容された試験片を取り出す。包装体は乾燥剤と同じ場所に試験片を収容しているため、試験片の包装の過程で、試験片試験片の判定部などと乾燥剤が接触しないように板状乾燥剤を収容する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、包装の過程で、誤って、試験片の判定部などと板状乾燥剤が接触するように試験片と乾燥剤とを包装してしまうと、判定部などが傷つき、被検出物質の検出に影響を与えることがある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、本来収容されるべき場所とは異なる場所に試験片及び乾燥剤を収容する可能性が低い試験片収容体を提供するものである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0005】
本発明の試験片収容体は、試料中の被検出物質を検出するための試験片と、乾燥剤と、前記試験片及び前記乾燥剤を収容する収容容器と、蓋部とを備え、前記収容容器は、前記試験片を収容する第一収容部と、前記乾燥剤を収容する第二収容部とを有し、前記蓋部は、前記第一収容部と前記第二収容部を封じ、前記第一収容部と前記第二収容部は、連通し、前記第二収容部に収容された前記乾燥剤が前記第一収容部内の湿気を吸収可能である。
【0006】
本発明では、試験片と乾燥剤が、それぞれ収容容器の第一収容部と第二収容部に収められている。そのため、試験片を収容する場所と乾燥剤を収容する場所とが明確に区別され、試験片及び乾燥剤を、本来収容すべき場所とは異なる場所に収容する可能性が低下し、適切に試験片及び乾燥剤を収容体に収容することができる。
【0007】
本発明は、以下の構成の1又は2つ以上を備えてもよい。
好ましくは、前記収容容器は、前記乾燥剤の前記第一収容部への移動、及び前記試験片の前記第二収容部への移動を制限する仕切り部をさらに備える。この場合、試験片と乾燥剤との接触を避けることができる。
好ましくは、前記第二収容部の深さが、前記第一収容部の深さよりも深い。この場合、段差によって、乾燥剤が第一収容部へ移動するのを防ぐことができる。
好ましくは、前記第一収容部が、前記試験片を載置する載置部と、前記載置部の一端側に設けられた取出部とを有し、前記載置部の他端が前記第二収容部に連通し、前記取出部の深さが前記載置部の深さよりも深い。この場合、取出部に指を入れて試験片を取り出しやすい。
好ましくは、前記収容容器が周辺部を有し、前記蓋部が前記周辺部に固着されている。この場合、蓋部を収容容器に容易に固着することができる。
好ましくは、前記試験片は、その一端に試料添加部を有し、前記試験片は、前記試料添加部が前記第二収容部の方向を向くように前記第一収容部内に収容される。さらに、好ましくは、前記蓋部が、前記試験片の他端側に、蓋部の剥離開始部を有する。この場合、蓋部の剥離開始部から蓋部を剥離することにより、試験片の試料添加部に指が触れることを防止することができる。上記のような従来の包装収容体から試験片を取り出す際は、包装体を引き裂く際に内部に収容した試験片に引っかかってうまく開封することができず、試験片を取り出しにくかった。しかし、この場合は、蓋部に剥離開始部が設けられていることにより収容体を容易に開封することができ、試験片を取り出しやすい。
好ましくは、前記蓋部と前記周辺部は、固着部において固着され、前記蓋部が、前記試験片の一端側の固着部において、前記試験片の他端側の固着部よりも強固に固着されている。この場合、蓋部は第一収容部の途中まで剥離容易であり、蓋部の第二収容部を覆う部分は剥離されにくい。これにより、試験片を収容容器から取り出す際に、乾燥剤が収容体から出てきてしまうことを防止することができ、さらに試験片の試料添加部に指が触れることをより確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。図面は、説明の便宜のために用いられるものであり、本発明の範囲は、図面に示す実施形態に限定されない。
【0009】
1.第1実施形態
図1(a)〜(c)は、それぞれ、本発明の第1実施形態の試験片収容体の構造を示す、平面図、正面図及び左側面図である。図2は、図1(a)に対応した平面図であり、蓋部7を固着する前の状態を示す。
第1実施形態では、抗原抗体反応を利用して試料中の被検出物質を検出するイムノクロマトグラフィー用試験片を収容できる試験片収容体について説明する。クロマトグラフィーとは、担体中の物質の移動度の差を利用してその物質を分離・分析する方法であり、特に抗原抗体反応を利用して物質を検出する方法をイムノクロマトグラフィーという。
本実施形態の試験片収容体は、試料中の被検出物質を検出するための試験片1と、乾燥剤3と、試験片1及び乾燥剤3を収容する収容容器5と、蓋部7とを備え、収容容器5は、試験片1を収容する第一収容部9と、乾燥剤3を収容する第二収容部11とを有し、蓋部7は、第一収容部9と第二収容部11を封じ、第一収容部9と第二収容部11は、連通し、第二収容部11に収容された乾燥剤3が第一収容部9内の湿気を吸収可能である。第一収容部9と第二収容部11は、連通部15を介して連通している。
収容容器5は、乾燥剤3の第一収容部9への移動、及び試験片1の第二収容部11への移動を制限する仕切り部13をさらに備える。
収容容器5は、周辺部17を有し、蓋部7は、周辺部17に固着されている。図1(a)の点線が固着部18を示す。
試験片1は、その一端1aに試料添加部19を有し、試料添加部19が第二収容部11の方向を向くように第一収容部9内に収容されている。試験片1の他端1b側(すなわち、収容容器5の第一収容部9側)に蓋部7の剥離開始部21が設けられている。蓋部7は、剥離開始部21から容易に剥離することができる。
固着部18は、第1固着部18aと第2固着部18bとからなる。第1固着部18aは、図1(a)で2本の点線で示すように、試験片1の一端1a側において、幅広に形成されている。第2固着部18bは、図1(a)で1本の点線で示すように、試験片1の他端1b側において、幅狭に形成されている。蓋部7は、第1固着部18aにおいて、第2固着部18bよりも強固に固着されている。このため、蓋部7は、実質的に、第2固着部18bのみにおいて剥離可能である。
試験片1には、第1及び第2保護シール23,25が貼られている。第1保護シール23には、矢印が描かれていて、試料添加部19の方向を示している。
【0010】
ここで、試験片1の詳細な構造を、図3を用いて説明する。図3は、試験片1の構造を示す正面図である。
試験片1は、表面に粘着層を有するプラスチック板からなる基材27上に、レーヨンの不織布からなる試料添加用部材29と、グラスファイバーの不織布からなる標識保持部材31と、ニトロセルロースの多孔体からなるクロマト用膜担体33と、セルロースの不織布からなる吸収部材35とを備える。試料添加用部材29は、試料に浸漬される試料添加部として機能する。標識保持部材31は、試料添加用部材29に接触して配置され、試料中の被検出物質と抗原抗体反応を生じる標識物質を保持する標識保持部として機能する。試料添加用部材29は、標識保持部材31を覆うように配置され、且つクロマト用膜担体33と接触して配置される。標識保持部材31は、クロマト用膜担体33と離隔して配置される。クロマト用膜担体33は、被検出物質と抗原抗体反応を生じる固定化用物質が固定された判定部を有する。吸収部材35は、クロマト用膜担体33と接触するように配置されている。吸収部材35は、判定部を通過した試料を吸収する。第1及び第2保護シール23,25は、それぞれ、試料添加用部材29及び吸収部材35を覆っている。
【0011】
クロマト用膜担体33には、上流側から順に、ライン状の第1判定部A、第2判定部B及び対照部Cが形成されている。標識保持部材31には、第1標識物質、第2標識物質及び対照用標識物質が保持されている。第1判定部A、第2判定部B及び対照部Cには、固定化用物質として、それぞれ、抗インフルエンザAウィルス抗体、抗インフルエンザBウィルス抗体(以下、それぞれ「抗FluA抗体」、「抗FluB抗体」とする。)、ビオチンが固定されている。第1標識物質及び第2標識物質は、それぞれ、青色ラテックス粒子で標識された抗FluA抗体及び抗FluB抗体であり、対照用標識物質は、赤色ラテックス粒子で標識されたアビジンである。抗FluA抗体及び抗FluB抗体は、それぞれ、第1被検出物質であるインフルエンザA型ウィルス及び第2被検出物質であるインフルエンザB型ウィルス(以下、それぞれ「FluAウィルス」、「FluBウィルス」とする。)と抗原抗体反応により結合する。
【0012】
試料中にFluAウィルスが含まれていると、標識保持部材31にある標識された抗FluA抗体は、FluAウィルスの特定部位を認識して、抗原抗体反応により結合して複合体を形成する。次に、クロマト用膜担体33にある抗FluA抗体は、FluAウィルスの別の部位を認識して複合体を捕捉する。複合体が捕捉されると、第1判定部Aには青色のラインが現れ、FluAウィルスが目視により検出される。
【0013】
また、アビジンは、クロマト用膜担体33にある抗FluA抗体、抗FluB抗体には捕捉されないが、ビオチンと特異的に結合するので、対照部Cに固定されたビオチンに捕捉される。アビジンが捕捉されると、対照部Cには赤色のラインが現れ、アビジンが対照部Cに到達したことが目視される。対照部Cは、第1判定部A及び第2判定部Bの下流に設けられるので、赤色のラインを確認することにより、試料が第1判定部A及び第2判定部Bを通過したことが確認される。
【0014】
次に、乾燥剤3について説明する。乾燥剤3は、樹脂材料と吸湿性材料とを混練したものを、円柱状や直方柱状などのブロック状に成型することによって、作製することができる。樹脂材料としては、ポリスチレン、PP(ポリプロピレン)、PVC(塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PE(ポリエチレン)、ナイロンなどの樹脂材料(好ましくは、熱可塑性)を用いることができる。吸湿性材料としては、シリカゲル、塩化カルシウム、シリカゲル、モレキュラーシーブ、二酸化珪素、アルミナ、ゼオライトなどを用いることができる。
【0015】
次に、試験片収容体(以下、「収容体」とも呼ぶ。)の製造方法について図4を用いて説明する。図4は、本実施形態の収容体の製造工程を示す平面図である。
まず、図4に示すように、収容容器5が複数個連なった容器連続体36を作製する。容器連続体36は、シート状材料を加熱して成型(絞り成型など)することによって作製することができる。シート状材料は、ヒートシールが可能なものであることが好ましい。シート状材料は、湿気を透過させ難いものであることが好ましい。シート状材料としては、例えば、第1樹脂層、アルミニウム層及び第2樹脂層を積層したものを用いることができる。第1樹脂層及び第2樹脂層は、それぞれ、ポリスチレン、PP(ポリプロピレン)、PVC(塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PE(ポリエチレン)、ナイロンなどの樹脂材料(好ましくは、熱可塑性)で形成することができる。シート状材料は、前記樹脂材料やアルミニウムの単層であってもよい。また、溶融した樹脂材料を金型に流し込んで成型(例えば、射出成型など)して、容器連続体36を作製することができる。また、シート状の金属材料(例えばアルミニウムなど)を金型でプレスすることにより容器連続体36を成型してもよい。次に、容器連続体36の各第一収容部9に試験片1を収容し、各第二収容部11に乾燥剤3を収容する。
さらに、容器連続体36と実質的に同等の大きさを有する蓋部7により各第一収容部9及び各第二収容部11を封じる。図4の点線部分に対応した位置で、蓋部7及び容器連続体36を裁断することにより、複数の収容体を得ることができる。また、裁断を行う前の収容体が複数個連なった収容体連続体を、そのまま提供してもよい。この場合、試験片1の使用者が、図4に示す容器連続体36の点線部分に対応した位置で収容体連続体から1つの収容体を切り離せるように、収容体連続体を作製することが好ましい。このような収容体連続体は、具体的には、例えば、図4に示す点線部分を他の部分より薄く成型した容器連続体36や、点線部分にミシン目を入れた容器連続体36を用いて、作製することができる。また、容器連続体36を覆う蓋部7は、図4の点線部分に対応した位置に切れ目やミシン目を入れる等、点線部分で切り離し易いように構成されていることが好ましい。これによって、収容体連続体から1つの収容体をさらに容易に切り離すことができる。
収容体を効率よく大量生産する際には、上記の製造方法が特に好適である。
従来は、1つ1つの収容体について試験片及び乾燥剤を包装体に収容する工程と包装体を封じる工程とが一連して行われる。本実施形態の製造方法によると、複数の収容体を効率よく生産することができるため、生産効率が向上し、製造コストが低下する。
また、収容容器5又は容器連続体にある程度の剛性を持たせることによって、外力によって内部に収容した試験片1が屈曲するのを防止することができる。
【0016】
収容容器5の第1収容部9及び第2収容部11は、それぞれ、試験片1及び乾燥剤3を収容可能なサイズである。第1収容部9と試験片1の長さの差は、1cm(好ましくは2cm)以上であることが好ましい。この場合、試験片1の一端1aが下になるように収容容器5を傾けることによって、試験片1の他端1b側に隙間ができて、試験片1を取り出しやすい。また、収容容器5が長くなり過ぎないように、前記長さの差は、4cm(好ましくは3cm)以下であることが好ましい。
仕切り部13は、第1収容部9と第2収容部11の間に設けられ、乾燥剤3の第一収容部9への移動、及び試験片1の第二収容部11への移動を制限する。仕切り部13は、収容容器5の側壁が収容容器5内部に向かって突出するように形成してもよく、収容容器5の底壁が収容容器5内部に向かって突出するように形成してもよい。周辺部17は、第1収容部9及び第2収容部11(これらを形成する部分を「収容容器本体」と呼ぶ。)と一体で形成してもよく、収容容器本体を形成した後に、周辺部17となる別部材を収容容器本体に取り付けてもよい。
【0017】
次に、蓋部7について説明する。蓋部7には、収容容器5と同様のシート状材料を用いることができる。シート状材料の組成や厚さは、収容容器5と同じであっても異なっていてもよい。蓋部7は、ヒートシールによって収容容器5に固着してもよく、接着剤による接着によって収容容器5に固着してもよい。ヒートシール又は接着によって、固着部18が形成される。固着部18は、互いに固着強度が異なる第1固着部18aと第2固着部18bを有していてもよく、全体の固着強度が同じであってもよい。また、第1固着部18aは、蓋部7が試験片1の試料添加部19(別の表現では、試験片1の一端1a)を覆う部位に設けてもよく、蓋部7が第2収容部11を覆う部位に設けてもよい。別の実施形態では、第1固着部18aを形成する際に、ヒートシールの温度、時間又は圧力を増大させることによって、又は接着強度の大きい接着剤を用いることによって、第1固着部18aの強度を高めてもよい。この場合、第1固着部18aと第2固着部18bの幅を同じにしてもよい。第1固着部18aをヒートシールで形成し、第2固着部18bを接着で形成してもよく、その逆であってもよい。
【0018】
次に、本実施形態の試験片収容体の使用方法の一例について、説明する。
まず、蓋部7の剥離開始部21を掴み、第2固着部18bを剥離する。これによって、図5に示すように、第2固着部18bにおいて蓋部7が剥離し、試験片1の他端1b側を掴んで試験片1を収容容器5から取り出せるようになる。このとき、試験片1の一端1a側では、蓋部7が剥離されていないので、誤って、試験片1の試料添加部19に触れることがない。また、蓋部7の第二収容部を覆う部分は剥離されていないので、収容容器5から試験片1を取り出す際に乾燥剤が出てくることがない。取り出した試験片1は、試料を注入した試験容器(図示せず)に、試料添加部19が試料に浸漬されるように挿入し、そのまま、10〜20分程度放置して、被検出物質の有無を調べるために、利用される。
【0019】
以下、本発明のさらに別の実施形態について説明する。
被検出物質は特に限定されず、細胞(例えば、細菌、原生生物、真菌など)、ウィルス、タンパク質、多糖類、薬物(例えば、麻薬、覚醒剤など)などが挙げられる。例えば、前記インフルエンザウイルスのほか、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、マイコプラズマニューモニエ、ロタウイルス、カルシウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウィルス、肝炎ウィルス、重症急性呼吸器症候群の病原ウィルス、大腸菌、スタフィロコッカスアウレウス、ストレプトコッカスニューモニエ、ストレプトコッカスピヨゲネス、マラリア原虫、その他、消化器系疾患、中枢神経系疾患、出血熱等の様々な疾患の病原体、これらの代謝産物、癌胎児性抗原やシフラなどの腫瘍マーカー、ホルモン、オキシプリン、グルコース、ビリルビン、尿酸、ウロビリノーゲン、白血球、ベンゾジアゼピン類、コカイン系麻薬、モルヒネ系麻薬、大麻、三環系抗うつ剤、バルビツール酸類、フェンシクリジン類などが例示される。
【0020】
基材27は、試料添加用部材29や標識保持部材31などの上記部材を適切に配置するためのものであり、プラスチック以外にも紙やガラスなど種々の材質のものを用いることができる。試料添加用部材29は、レーヨン以外にも、グラスファイバー又はセルロースファイバーなどの種々の素材で形成することができる。標識保持部材31は、グラスファイバー以外にも、セルロースファイバーなどの種々の素材で形成することができる。クロマト用膜担体33は、ニトロセルロース以外にも、ナイロン(例えば、カルボキシル基やアルキル基を置換基として有してもよいアミノ基が導入された修飾ナイロン)、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、セルロースアセテートなどの種々の素材で形成することができる。吸収部材35は、セルロース以外にも、グラスファイバーなどの種々の素材で形成することができる。試料添加用部材29、標識保持部材31、クロマト用膜担体33及び吸収部材35には、不織布又は多孔体以外にも、毛管現象により試料を展開可能な種々の構造のものを用いることができる。また、標識保持部材31とクロマト用膜担体33の間にレーヨン、グラスファイバー又はセルロースファイバーなどからなる展開用部材を備えていてもよい。この場合、標識保持部材31内の標識物質の溶出が速くなり、迅速な測定が可能になる。
【0021】
クロマト用膜担体33は、被検出物質の種類に応じて判定部を1つだけ備えてもよく、2つ以上備えてもよい。また、クロマト用膜担体33は、対照部を備えなくてもよい。また、判定部・対照部は、ライン状でなくてもよく、例えば円状、方形状などに形成してもよい。標識保持部材31は、標識物質を1種だけ保持してもよく、2種以上保持してもよい。また、標識保持部材31は、対照用標識物質を保持しなくてもよい。標識物質は、青や赤以外のラテックス粒子や、金などの金属コロイド、色素分子などで標識されてもよい。標識物質が2種以上ある場合、各標識物質は、互いに異なる色に標識されても、同じ色に標識されてもよい。さらに標識物質及び対照用標識物質は、互いに異なる色に標識されても、同じ色に標識されてもよい。
【0022】
固定化用物質及び標識物質は、上述した被検出物質と特異的に結合できるものであれば特に限定されない。例えば、種々の抗体又は抗原を用いることができる。すなわち、被検出物質が抗原である場合、固定化用物質及び標識物質は、この抗原と抗原抗体反応を生じる抗体を用い、被検出物質が抗体である場合、固定化用物質及び標識物質は、この抗体と抗原抗体反応を生じる抗原又は被検出物質である抗体と抗原抗体反応を生じる抗体を用いることができる。また、糖や糖タンパク質を検出する際は、固定化用物質及び標識物質にレクチンを用いることができる。
【0023】
対照部の固定化用物質がアビジンであり、対照用標識物質がビオチンであってもよい。さらに、対照部の固定化用物質と対照用標識物質は、ビオチンとアビジンの組み合わせ以外であってもよい。例えば、抗原抗体反応により結合する組み合わせであってもよい。例えば、対照用標識物質に抗原を用い、対照部の固定化用物質にこの抗原と抗原抗体反応を生じる抗体を用いる。この逆であってもよい。対照用標識物質には、被検出物質や判定部の固定化用物質と抗原抗体反応しないものを用いる。
なお、試験片1は、試料中の被検出物質を検出可能なものであれば、その構成は、限定されない。
【0024】
本実施形態の収容容器は、第1実施形態のようなイムノクロマトグラフィー用試験片ではなく、抗原抗体反応を用いないクロマトグラフィー用試験片や、クロマトグラフィーを用いない試験片などを乾燥剤と共に収容してもよい。
試験片の他の具体例としては、尿試験紙、水質検査試験紙、ホルムアルデヒド測定用試験紙、湿度インジケーターカード、pH試験紙、リトマス試験紙などが挙げられる。
例えば、尿試験紙を用いることにより、尿中のグルコース、オキシプリン、タンパク質(例えば、尿中アルブミン)などを定量的又は定性的に検出することができる。尿中のグルコースを検出する場合、試験紙のクロマト用膜担体の判定部には、酵素(グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼなど)と色原体とを保持させることができる。尿中のタンパク質を検出する場合、緩衝剤とpH指示薬(例えば、テトラブロモフェノールブルーなど)を判定部に保持させることができる。
水質検査試験紙を用いることにより、試料(例えば、井戸水、水道水、河川水など)のpH,硬度、塩素、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素、アンモニ性窒素、リン酸イオン、金属イオン(例えば、銅イオンや鉄イオンなど)などを検出することができる。
ホルムアルデヒド測定用試験紙を用いることにより、建材や接着剤などから発生するホルムアルデヒドを検出することができる。
湿度インジケーターカードを用いることにより、試料(気体)の湿度を検出することができる。
リトマス試験紙を用いることにより、試料が酸性、中性及びアルカリ性の何れであるかを判定することができる。
【0025】
2.第2実施形態
図6は、本発明の第2実施形態の試験片収容体の構造を示す正面図である。
本実施形態の試験片収容体では、第二収容部11の深さが、第一収容部9の深さよりも深い。第一収容部9は、細長い形状であり、その一端で第二収容部11に連通している。また、第一収容部9の他端には、取出部37が設けられている。第1収容部9の一端と他端の間には、試験片1を載置する載置部39が設けられている。取出部37の深さは、載置部39よりも深い。第一収容部9の深さとは、試験片1を載置する部位の深さを意味する。
【0026】
本実施形態では、第1収容部9と第2収容部11との間の段差によって乾燥剤3が第1収容部9に移動するのを防止している。また、試験片1が第2収容部11へ向かって移動すると、試験片1は、乾燥剤3に当接して、それ以上進むことができず、結局、試験片1の第2収容部11への移動も防止される。第1収容部9と第2収容部11との間の仕切り部は、設けても設けなくてもよい。また、第1収容部9を比較的浅くすることができるので、第1収容部9内で試験片1が回転するのを防止することができる。
また、取出部37に指を挿入し、下から試験片1を持ち上げることによって、試験片1を収容容器5から容易に取り出すことができる。試験片1の基材下面側に指を挿入しやすいように、取出部37の長さは、1.5cm(好ましくは、2cm)以上であることが好ましい。また、収容容器5が長くなりすぎないように、取出部37の長さは、4cm(好ましくは3cm)以下であることが好ましい。
第1実施形態で説明した内容は、基本的に、本実施形態にも当てはまる。
【0027】
3.第3実施形態
図7は、本発明の第3実施形態の試験片収容体の構造を示す正面図である。
本実施形態の試験片収容体では、収容容器5の開口や周辺部17は、試験片1の一端1a側(試料添加部19側)を長手方向に延長した位置に設けられている。第1収容部9及び第2収容部11は、何れも収容容器5の開口に面している。蓋部7は、第1実施形態と同様に、第1固着部18aと第2固着部18bとからなる固着部18で、周辺部17に固着されている。第1固着部18aは、蓋部7が第2収容部11を覆う位置に設けられている。蓋部7は、第1収容部9側に剥離開始部21を有している。本実施形態の収容容器5は、第1実施形態で示した樹脂材料で、金型成型などで作製することができる。第1実施形態で説明した内容は、基本的に、本実施形態にも当てはまる。
【0028】
次に、本実施形態の試験片収容体の使用方法の一例について、説明する。
まず、蓋部7の剥離開始部21を掴み、第2固着部18bを剥離する。これによって、図8に示すように、第2固着部18bにおいて蓋部7が剥離する。次に、図9に示すように、試料41を注入した試験容器43を準備し、試験容器43に向けて、試験片1の一端1aが下になるように収容容器5を傾ける。これによって、試験片1が収容容器5から滑り出て、試験容器43内に挿入される。試験片1は、そのまま、10〜20分程度放置され、試料41中の被検出物質の有無を調べるために、利用される。このように、本実施形態では、収容容器5を傾けるだけで、試験片1を試験容器43に挿入することができる。即ち、試験片1に触れることなく収容容器5から試験片を取り出すことができるため、試験片1の汚染を防止することができる。
なお、本明細書における「取り出す」とは、指などで収容容器5から試験片1を把持し、収容容器5の内部から外部へ試験片1を移動させることだけでなく、収容容器5を傾ける等して収容容器5の内部から外部へ試験片1を移動させることをも含む。
【0029】
以上の実施形態で示した種々の特徴は、互いに組み合わせることができる。1つの実施形態中に複数の特徴が含まれている場合、そのうちの1又は複数個の特徴を適宜抜き出して、単独で又は組み合わせて、本発明の試験片収容体に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a)〜(c)は、それぞれ、本発明の第1実施形態の試験片収容体の構造を示す、平面図、正面図、左側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の試験片収容体の構造を示す平面図であり、蓋部7を固着する前の状態を示す。
【図3】本発明の第1実施形態の試験片収容体に収容される試験片の構造を示す正面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の試験片収容体の製造工程を示す平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態の試験片収容体の使用方法の説明に用いる正面図である。
【図6】本発明の第2実施形態の試験片収容体の構造を示す正面図である。
【図7】本発明の第3実施形態の試験片収容体の構造を示す正面図である。
【図8】本発明の第3実施形態の試験片収容体の使用方法の説明に用いる正面図である。
【図9】本発明の第3実施形態の試験片収容体の使用方法の説明に用いる正面図である。
【符号の説明】
【0031】
1:試験片 1a:試験片の一端 1b:試験片の他端 3:乾燥剤 5:収容容器 7:蓋部 9:第一収容部 11:第二収容部 13:仕切り部 15:連通部 17:周辺部 18:固着部 18a:第1固着部 18b:第2固着部 19:試料添加部 21:剥離開始部 23:第1保護シール 25:第2保護シール 27:基材 29:試料添加用部材 31:標識保持部材 33:クロマト用膜担体 35:吸収部材 36:容器連続体 37:取出部 39:載置部 41:試料 43:試験容器 A:第1判定部 B:第2判定部 C:対照部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の被検出物質を検出するための試験片と、乾燥剤と、前記試験片及び前記乾燥剤を収容する収容容器と、蓋部とを備え、
前記収容容器は、前記試験片を収容する第一収容部と、前記乾燥剤を収容する第二収容部とを有し、
前記蓋部は、前記第一収容部と前記第二収容部を封じ、
前記第一収容部と前記第二収容部は、連通し、前記第二収容部に収容された前記乾燥剤が前記第一収容部内の湿気を吸収可能である、試験片収容体。
【請求項2】
前記収容容器は、前記乾燥剤の前記第一収容部への移動、及び前記試験片の前記第二収容部への移動を制限する仕切り部をさらに備える請求項1に記載の収容体。
【請求項3】
前記第二収容部の深さが、前記第一収容部の深さよりも深い請求項1又は2に記載の収容体。
【請求項4】
前記第一収容部が、前記試験片を載置する載置部と、前記載置部の一端側に設けられた取出部とを有し、前記載置部の他端が前記第二収容部に連通し、前記取出部の深さが前記載置部の深さよりも深い、請求項1〜3の何れか1つに記載の収容体。
【請求項5】
前記収容容器が周辺部を有し、前記蓋部が前記周辺部に固着されている請求項1〜4の何れか1つに記載の収容体。
【請求項6】
前記試験片は、その一端に試料添加部を有し、
前記試験片は、前記試料添加部が前記第二収容部の方向を向くように前記第一収容部内に収容される、請求項5に記載の収容体。
【請求項7】
前記蓋部が、前記試験片の他端側に、蓋部の剥離開始部を有する、請求項6に記載の収容体。
【請求項8】
前記蓋部と前記周辺部は、固着部において固着され、
前記蓋部が、前記試験片の一端側の固着部において、前記試験片の他端側の固着部よりも強固に固着されている請求項6に記載の収容体。
【請求項9】
前記試験片がクロマトグラフィー用試験片である、請求項1〜8の何れか1つに記載の収容体。
【請求項10】
試料中の被検出物質を検出するための試験片と、乾燥剤と、第一収容部と第二収容部を有する収容容器と、蓋部とを備える試験片収容体を製造する方法であって、
前記収容容器が複数連なった容器連続体の各第一収容部に前記試験片を収容し、各第二収容部に乾燥剤を収容する工程と、
前記蓋部により前記容器連続体の前記第一収容部及び前記第二収容部を封じる工程と、
を含み、
前記第一収容部と前記第二収容部は、連通し、前記第二収容部に収容された前記乾燥剤が前記第一収容部内の湿気を吸収可能である、試験片収容体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−178376(P2007−178376A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379632(P2005−379632)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】