説明

試験用具

【課題】ケース本体に収容された液体容器のシール部材が、蓋部のシールブレイカーを押すことによりこれに設けられた破断突起で押し破られ、液体容器内の展開液が検出部まで展開されるようにした試験用具において、シールブレイカーのいずれの部位を押し下げた場合でも、シールブレイカーが規定された動きを行うこと可能にする。
【解決手段】シールブレイカー9の大屋根部13の傾斜面の裏側にブロック19を設ける。このブロック19は、円柱体20と、この円柱体20の外周面から放射状に延びるガイドリブ21a、21b、21cとから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、免疫測定などにおける検体中の測定対象物を検知するためのディスポーザブルタイプの試験用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の試験用具として、測定対象物を展開液により展開して検出部まで移送するタイプのものが知られており、小型で、高感度で、簡単かつ迅速に検知ができるとされている。
このような試験用具の一例として、特許第3237540号公報に開示のものがある。
【0003】
この試験用具は、例えば酵素免疫検定法(EIA)に用いられる場合、図3および図4に示すように、全体の形状が細長い箱状となっており、ケース本体1とこのケース本体1を覆う蓋部2とから概略構成されている。
ケース本体1には、図4に示すように、その長手方向の一端部側に、アルミニウム箔などのシール部材3で密閉され、内部に展開液が満たされた液体容器4が収容されている。この液体容器4のシール部材3上には、平面形状が矩形の第1の吸収材5が載置されている。
【0004】
この第1の吸収材5の一方の端部側には、テープ状の第2の吸収材6の一端部が、第1の吸収材5の下側であってシール部材3の上側に、第1の吸収材5と重なり合うように置かれている。また、第2の吸収材6の長手方向のほぼ中間位置には、第3の吸収材7がこの上に置かれている。さらに、第2の吸収材6の他端部側には、第4の吸収材8がこの上に載置されている。
【0005】
上記第1の吸収材5には、特定の酵素が例えばアルカリホスタファーゼの場合には、この酵素で分解し発色する基質、例えば5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸ナトリウム(BCIP)やp−ニトロフェニルホスフェートなどを含有した吸水性の不織布、濾紙などが用いられる。
また、第2の吸収材6には、測定対象物と特異的に結合する第1の物質(例えば、抗原、抗体など)が固定されている検出部を有するニトロセルロースのメンブランなどが用いられる。
【0006】
第3の吸収材7には、上記特定の酵素、例えばアルカリホスタファーゼで標識された測定対象物と特異的に結合する第2の物質(例えば、酵素標識抗原、酵素標識抗体など)を含有する吸水性の不織布、濾紙などが用いられる。
第4の吸収材8には、試薬を含まない吸水性の不織布、濾紙などが用いられる。
【0007】
一方、このケース本体1を覆う蓋部2には、図3に示すように、その長手方向の一端側から、シールブレイカー9、検体滴下窓10、判定窓11および蒸散窓12がこの順序で他端側に向けて所定の間隔を介して設けられている。
そして、この蓋部2は、そのシールブレイカー9がケース本体1の液体容器4上に、検体滴下窓10が第3の吸収材7上に、判定窓11が第2の吸収材6の検出部上に、蒸散窓12が第4の吸収材8上にそれぞれ位置するようケース本体1に重ね合わせられている。
【0008】
上記シールブレイカー9は、図5に示すように、大屋根部13と、この大屋根部13の反対側に延びる小屋根部14と、大屋根部13と小屋根部14との側方に延びる2つの側屋根部15、15とからなる寄棟屋根状の部材である。
また、このシールブレイカー9のこれらの各屋根部13、14、15のそれぞれの境界となる稜線部分は、弱化線部16となっている。
【0009】
この弱化線部16は、シールブレイカー9をなす材料の厚さを薄くして形成した部分であり、この弱化線部16が存在することで、シールブレイカー9を押し下げた際、シールブレイカー9が不可逆的に押し込められた状態になる。また、シールブレイカー9の大屋根部13は、上記第2の吸収材6側に向いて配設されている。
【0010】
さらに、シールブレイカー9の大屋根部13の頂部の裏側から、破断突起18が垂下して設けられている。この破断突起18は、シールブレイカー9を押し下げた際に、第1の吸収材5の一部を下方に押しつけるとともに液体容器4のシール部材3を破断し、第1の吸収材5の一部を液体容器4内に満たされた展開液に浸すようにするものである。この破断突起18は、板状のもので、その長手方向が蓋部2の長手方向に直交するように配置されている。
【0011】
上記ケース本体1および蓋部2は、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を精密射出成形して形成されたものである。
【0012】
このような試験用具にあっては、試料液を検体滴下窓10に滴下し、第3の吸収材7に吸収させる。ついで、シールブレイカー9の大屋根部13を指先等で押し下げる。これにより、上述のように、破断突起18が押し下げられ、第1の吸収材5の一部が液体容器4の展開液に浸され、展開液が第1の吸収材5から第2の吸収材6に展開、移動し、さらに第4の吸収材8に向けて展開、移動する。
一定時間経過後、判定窓11を介して第2の吸収材6の検出部を観察し、判定窓11における発色を確認し、検体中の測定対象物について陽性または陰性の判定を行う。
【0013】
ところで、このような従来の試験用具にあっては、シールブレイカー9の大屋根部13を押し下げる必要があったが、誤って図6(a)に示すように、小屋根部14等、大屋根部13以外の部位を押してしまうことがある。特に、多数の試験用具を同時に用いる集団検査などではこのような誤操作が発生しやすい。
【0014】
このように、誤ってシールブレイカー9の小屋根部14を押すと、図6(b)に示すように、破断突起18の先端が大屋根部13方向に傾きつつ第1の吸収材5にその先端が当接し、第1の吸収材5は小屋根部14側に引っ張られるように、破断突起18により液体容器4内に押し込められることになり、その際第1の吸収材5が切断されて、その一部が液体容器4内に落下してしまうことがある。
第1の吸収材5が切断されると、展開液が第1の吸収材5に浸透、展開して行くことができなくなり、検査を行えなくなる問題が生じる(反応不成立)。
【特許文献1】特許第3237540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
よって、本発明における課題は、シールブレイカーの大屋根部以外の部位を誤って押しても、シールブレイカーが規定された以外の動きをすることが防止でき、誤操作を回避できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、ケース本体と、このケース本体を覆う蓋部とからなり、
ケース本体には、シール部材で密閉された液体容器と、この液体容器のシール部材上に載置された第1の吸収材と、この第1の吸収材の一端部に重ね合わせられて配置された第2の吸収材が収められており、蓋部には、シールブレイカーが形成されており、この蓋部が、そのシールブレイカーが第1の吸収材上に位置するようにしてケース本体に取り付けられ、上記シールブレイカーは、寄棟屋根状の部材であって、上記第2の吸収材側に向いた屋根部の頂部の裏面には、これから破断突起が垂下して設けられており、 上記シールブレイカーを押したときに、シールブレイカーが不可逆的に押し込められ、これに伴って破断突起が第1の吸収材を押し付けた状態で液体容器のシール部材を破り、第1の吸収材の一部を液体容器内の液体に浸すようにした試験用具であって、
第2の吸収材側に向いた屋根部の傾斜部の裏面にブロックが設けられたことを特徴とする試験用具である。
【0017】
請求項2にかかる発明は、上記ブロックは、その1つの側部が上記破断突起に連結され、他の1つの側部が第2の吸収材側に向いた屋根部の下端縁部まで延びていることを特徴とする請求項1記載の試験用具である。
請求項3にかかる発明は、上記ブロックが、円柱体とこの円柱体から四方に延びる4ヶのガイドリブとから構成され、これらガイドリブの内の1ヶが上記破断突起に連結され、他の1ヶが第2の吸収材側に向いた屋根部の下端縁部まで延びていることを特徴とする請求項1または2記載の試験用具である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の試験用具によれば、シールブレイカーの少なくとも一部を押し下げることにより、シールブレイカーが規定された以外の動きをすることなく不可逆的に押し込められるため、第1の吸収材が切断されて検査が実行することができないという事態(反応不成立)を回避することができる。また、シールブレイカーが斜めに押され、破断突起が横方向に振られることにより、ケース本体にあたり、シールブレイカーの動きが妨げられる、いわゆる片押し状態をも防止できる。
シールブレイカーが規定された動きを行うという本発明の効果は、第2の吸収材側に向いた屋根部の傾斜部の裏面に設けられたブロックと、該屋根部の付け根とが、シールブレイカーを押し下げる力に耐え得るヒンジの役割を果たすという点に基づく。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を図面に基づいて詳しく説明する。
図1および図2は、本発明の試験用具の要部であるシールブレイカーの一例を示すもので、このシールブレイカー以外の部分は先に説明した従来のものと同一であるので、その説明を省略する。
図1は、シールブレイカー9を蓋部2の長手方向に沿って切断した断面図であり、図2は、シールブレイカー9を裏面側から見た平面図である。
図1および図2において、従来のシールブレイカー9と同一構成部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0020】
図1および図2中、符号19はブロックを示す。このブロック19は、図1にあるように、第2の吸収材6側に向いた屋根部(ここでは「大屋根部13」)の傾斜面の裏側にこれと一体に設けられたものである。
この例でのブロック19は、図2に示すように、大屋根部13の傾斜面の裏側から垂下する円柱体20と、この円柱体20の円周面から四方に放射状に延びる4ヶのガイドリブ21a、21b、21c、21cとから構成されている。
【0021】
これらガイドリブの内の1ヶのガイドリブ21aは、破断突起18の側部に一体的に連結されており、このガイドリブ21aの円柱体20を挟んで反対側のガイドリブ21bは、大屋根部13の下端縁部にまで延びている。
また、この例での破断突起18は、やや厚さの厚い板状体であって、その先端および周囲は角のない丸みを帯びた形状となっている。
【0022】
このようなブロック19は、シールブレイカー9の小屋根部14を押しても、シールブレイカー9が規定以外の動きをすることを防止する機能を有する。すなわち、大屋根部13以外の部位を押し下げた場合でも、シールブレイカー9は常に規定された範囲の動きをするため、反応不成立という結果を招く第1の吸収材5の切断を防止することができる。
【0023】
また、この例では、ガイドリブ21の残りの2ヶ21c、21cが蓋部2の短手方向に延びるように形成されているので、大屋根部13を押す際に、押し方向が蓋部2の短手方向に少々偏っても、常に破断突起18の先端部が均等に第1の吸収材5に当たることになって、第1の吸収材5が均一に液体容器4内の展開液に浸されることにもなる。
【0024】
なお、この発明においては、ブロック19の形状は、先に示したものに限定されることはなく、種々の変形したブロックを採用することができる。例えば、台形状のものや板状のものなどが挙げられ、シールブレイカー9の小屋根部14を押しても、シールブレイカー9の動きが反応不成立という結果を招くことを防止できる機能を発揮するものであればどのような形状のものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の試験用具におけるシールブレイカーの一例を図2のI−I′線で切断した概略断面図である。
【図2】本発明の試験用具におけるシールブレイカーの一例を示す裏面から見た概略平面図である。
【図3】従来の試験用具を示す上平面図である。
【図4】従来の試験用具を示す図3のII−II′線で切断した縦断面図である。
【図5】従来の試験用具におけるシールブレイカーを示す概略断面図である。
【図6】従来の試験用具におけるシールブレイカーの動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1・・・ケース本体、2・・・蓋部、3・・・シール部材、4・・・液体容器、5・・・第1の吸収材、6・・・第2の吸収材、9・・・シールブレイカー、13・・・大屋根部、14・・・小屋根部、18・・・破断突起、19・・・ブロック、20・・・円柱体、21a、21b、21c・・・ガイドリブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体と、このケース本体を覆う蓋部とからなり、
ケース本体には、シール部材で密閉された液体容器と、この液体容器のシール部材上に載置された第1の吸収材と、この第1の吸収材の一端部に重ね合わせられて配置された第2の吸収材が収められており、
蓋部には、シールブレイカーが形成されており、
この蓋部が、そのシールブレイカーが第1の吸収材上に位置するようにしてケース本体に取り付けられ、
上記シールブレイカーは、寄棟屋根状の部材であって、上記第2の吸収材側に向いた屋根部の頂部の裏面には、これから破断突起が垂下して設けられており、 上記シールブレイカーを押したときに、シールブレイカーが不可逆的に押し込められ、これに伴って破断突起が第1の吸収材を押し付けた状態で液体容器のシール部材を破り、第1の吸収材の一部を液体容器内の液体に浸すようにした試験用具であって、
第2の吸収材側に向いた屋根部の傾斜部の裏面にブロックが設けられたことを特徴とする試験用具。
【請求項2】
上記ブロックは、その1つの側部が上記破断突起に連結され、他の1つの側部が第2の吸収材側に向いた屋根部の下端縁部まで延びていることを特徴とする請求項1記載の試験用具。
【請求項3】
上記ブロックが、円柱体とこの円柱体から四方に延びる4ヶのガイドリブとから構成され、これらガイドリブの内の1ヶが上記破断突起に連結され、他の1ヶが第2の吸収材側に向いた屋根部の下端縁部まで延びていることを特徴とする請求項1または2記載の試験用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−29817(P2006−29817A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205029(P2004−205029)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000237204)富士レビオ株式会社 (11)
【Fターム(参考)】