説明

詰め込み可能な耐水性断熱物品

本発明は、小容積に容易に詰め込み可能な、衣類や寝袋等の透湿性のある耐水性保護物品に関する。この物品は、バリア層に布地が結合した積層体を含む外層、断熱層、および通気性の布地を含む内層で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透湿性および耐水性があり、容易に詰め込み可能な、衣類や寝袋等の断熱保護物品に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量で輸送可能な、風雨からの保護物品を所望する人々は、バックパック、ダッフルバッグあるいはその他の輸送コンテナーに容易に詰め込み可能な、透湿性のある耐水性断熱物品を必要としている。
【0003】
従来の防水または耐水性の透湿性断熱物品には、かさ高で、小さく巻いたり折り畳んだりしてパックなどの輸送手段に納めるためにそこから空気を抜くのに、非常に長い時間を要する等の問題があった。例えば、従来の防水透湿性断熱衣類および寝袋には、詰め込む前に空気を抜くのに比較的長い時間が必要であり、さらにそうした後でも、物品中に残存する空気によってパッキング容積が大きくなり、他の物品を収納するためのスペースが小さくなってしまう。
【0004】
従って、透湿性および耐水性があり、容易に詰め込み可能な断熱保護物品が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、衣類や寝袋等の、短時間で簡単に小容積に詰め込み可能な、透湿性のある耐水性保護物品に関する。この物品は、バリア層に布地が結合した積層体を含む外層、断熱層、および通気性の布地を含む内層で構成されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施態様において、本発明の物品は、バリア層に布地が結合した積層体を含む外層、断熱層、および通気性の布地を含む内層で構成されており、上記積層体の漏水率は約1g/H2O以下、透湿度は約1000g/m2/24h以上、空気透過率は約0.3cfm以上である。また別の実施態様では、物品の外層は約0.8cfm以上の空気透過率を有していてもよい。さらに別の実施態様では、物品の外層は約4cfm以上の空気透過率を有していてもよい。
【0007】
上記のように、物品の内層は通気性の布地を含む。一実施態様において内層は、最終製品に求められる特性に応じて、外層よりも大きい空気透過率を有するように選択することができる。
【0008】
本発明の構造物の総質量は、物品に求められる性能特性に応じて広範囲に変化させることができる。本発明の物品の単位面積当たりの材料の質量は、とりわけ使用する構成物質の選択に依存する。好ましくは、本発明の物品の材料の質量は40oz/yd2未満である。本発明の物品はまた、単位面積当たりの質量が30oz/yd2未満、さらには15oz/yd2未満となるように設計してもよい。使用にあたって質量が重大な要素であり、より低質量の構造物が望ましい場合は、物品の総質量は約10oz/yd2以下または8oz/yd2以下、あるいはさらに6oz/yd2以下に調整することができる。
【0009】
本物品は多数回の使用に耐えられるよう、十分な耐久性があることが望ましい場合がある。従って、本発明の一実施態様においては、本発明の物品は、約1g/H2O以下の永続的な漏水率を有する。これは40時間洗浄後に測定するものであり、以下に詳細に述べる。
【0010】
本発明の布地構成要素に用いることができる適当な布地構造としては、例えば織物、不織布、編地等が挙げられ、最終製品に求められる特性に応じて、その組成物は広範囲に変化させることができる。ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、綿およびその他の天然および合成材料は、本発明の意図する布地材料の範囲に含まれる。
【0011】
積層体のバリア材料は、保護膜または保護フィルムであってもよい。この材料は、ポリエステル、ポリアミド、ポリケトン、ポリスルホン、ポリカーボネート、フルオロポリマー、ポリアクリレート、コポリエーテルエステル、コポリエーテルアミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレンまたはポリオレフィンを含む材料群から選択することができるが、これらに限定されるものではない。延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)は、適当なバリア層の一例である。ePTFEには、親水性または疎水性ポリマーのコーティングを公知の方法で施してもよい。
【0012】
本発明で用いることができる適当な断熱層には、典型的には結合繊維構造の形の合成繊維断熱材料(不織中綿など)が含まれる。適当な断熱層の市販の一例としては、極細マイクロファイバーから作られる不織構造が挙げられ、商標名プリマロフト(Primaloft(R))として販売されている。物品中で断熱性を提供する他の類似材料も、本発明の範囲内であると考えられる。
【0013】
本発明の新規物品の優れた特徴は、上記独自の構造によりパッキング性が向上することである。特に材料の特性によって、本物品は迅速かつ容易に小容量に詰め込むことができる。本発明の物品のパッキング容積は、従来の断熱物品と比べて驚くほど小さい。パッキング容積は、本発明の物品の構成材料に応じて調整することができる。例えばある実施態様では、約1000in3未満さらには約800in3未満、さらには約500in3未満、さらには300in3以下のオーダーのパッキング容積を有する衣類を構成することができる。さらに別の実施態様では、約1000in3未満さらには約800in3未満、さらには約600in3未満、さらには500in3以下のオーダーのパッキング容積を有する、本発明の寝袋を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
上記要旨および下記発明の詳細な説明には、添付の図面を参照されたい。本発明を図示する目的で、目下好ましい実施態様を図面に示す。しかしながら本発明は、示された厳格な配置および手段に限定されるものではない。
【0015】
【図1】本発明の物品の一実施態様の断面図である。
【図2】本発明の物品の別の実施態様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1には、本発明の構造の第一の実施態様が示されている。特に物品10の層状構造は、バリア層14に積層された外側の布地12を含み、物品10の外層16を形成している。断熱層18は外層16のバリア層14に隣接して配向し、内側の布地層20は断熱層18に隣接して配向する。
【0017】
図2に示される本発明の適当な構造の別の実施態様においては、物品30の層状構造は、バリア層34に積層した外側の布地32を含み、物品30の外層36を形成する。断熱パッケージ40は物品の外層36に隣接して配向する。断熱パッケージ40は断熱層42を含み、内側の布地層46と任意の追加布地層44の間に配向している。追加布地層を持たない断熱パッケージの別の構造も、本発明の意図する構造の範囲内である。任意のキルティングステッチ48を用いてもよく、物品の組み立ておよび使用において断熱層の安定化に役立つ。
【0018】
測定および試験方法
水蒸気透過率
ASTM E-96、Procedure B「Standard Test Method for Water Vapor Transmission of Materials(材料の水蒸気透過率標準試験法)」に規定された手順に従って、材料の試験を行った。
【0019】
耐水性/耐水圧性
FED-STD-191A、Method 55164に規定された手順に従って、材料の試験を行った。材料の性能を、測定した漏水率として記載する。
【0020】
永続的な耐水性/耐水圧性
上記のように材料の耐水性を試験する。ただし試験は、材料を洗浄後40時間後に行う。洗浄はサンプルを洗浄器に入れ、40時間継続して行った。
【0021】
空気透過率
ASTM D737-04 「Standard Test Method for Air Permeability of Textile Fabrics (布地の通気性の標準試験法)」に規定された手順に従って、材料の試験を行った。
【0022】
パッキング容積
直径が5.5”で上部が開いた1/2”厚肉レキサン(Lexan)シリンダーおよび、シリンダー中にきちんと直立しシリンダーの壁で密閉されていないプランジャーを含む試験装置を用いた。プランジャーをシリンダーから取り外し、試験サンプルをシリンダーに挿入する。プランジャーをシリンダー内のサンプルの上に置く。48lbfに達するまで、ゆっくりと重りを加える。重りはシリンダーの側面に接触しないように配向させる。重りが急速に解放された場合、その試験は無効とする。所望の重りが一旦加えられると、シリンダー基部からプランジャー底部へ向かって測定が行われ、平均圧縮高さが得られる。その後サンプルをシリンダーから取り外し、試験を繰り返す前に膨張させる。試験を5回繰り返し、データを平均する。プランジャーの面積(23.76平方インチ)と平均圧縮高さをかけて、圧縮された材料の容積を計算する。パッキング容積は平方インチ(in3)であらわされる。
【0023】
水侵入圧
水侵入圧は、標準試験法AATCC 127-2003(標題「Water Resistance: Hydrostatic Pressure Test(耐水性:静水圧試験)」の「オプション2-Hydrostatic Head Tester(水圧ヘッドテスター)」を用いて測定した。
【0024】
以下の実施例は本発明の実施および使用方法をあらわすが、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0025】
実施例1
本発明の衣類を構築した。この衣類は、布地およびバリア層の積層体を含む外層、断熱層、および通気性の布地を含む内層を有する。
【0026】
本実施例の積層体を、ナイロン織地(スタイル番号131907、ミリケン・アンド・カンパニー、サウスカロライナ州スパルタンバーグ)および米国特許第3,953,566号に記載の方法に従って製造された延伸PTFEのバリア層を用いて構築した。特にナイロン織地層は、湿気硬化形ポリウレタンの分離ドットパターンを膜上にグラビア印刷し、続いてナイロン織地を一般的には米国特許第4,194,041号に記載の方法に従ってePTFE膜へ挟むことによって、延伸PTFE層の一側面に接着した。積層に続いて、積層体のナイロン織地面をフルオロアクリレートベースの撥水処理でコーティングした。この積層体構造の特性を表1に示す。
【0027】
6oz/yd2マルチダイアメーターポリエステル短繊維(プリマロフトスポーツ、プリマロフト、ニューヨーク州アルバニー)を含む断熱層を得た。衣類を構築する前に、断熱層を所望の大きさおよびパターンに切断した。
【0028】
内側の布地層は、永続的撥水コートされ1.9oz/yd2である、カレンダー処理された100%ナイロンリップストップ織地を含んでいた。
【0029】
断熱層および内側の布地層は、断熱層のポリエステル繊維が移動をしないよう、あわせてキルト加工した。従来のキルティング方法を用いて、断熱層がスクリムと内側の布地層の間に位置するようにした。続いて上記の外層およびキルト加工された断熱層/内側の布地層を、従来の切断および裁縫衣類構築技術を用いてつなげ、組み立てた。得られた衣類の特性を表2に示す。
【0030】
実施例2
布地およびバリア材料の積層体を含む外層、断熱層、および通気性の布地を含む内層を有する本発明の寝袋を構築した。本実施例の寝袋は、一方向により開いたバリア層を含む二層積層体がフルオロアクリレートベースのより厚い撥水処理コーティングを有する以外、実施例1に記載のものと同じ材料層を用いて作成した。二層積層体を含む外層の特性を表1に示す。本実施例の材料の単位面積当たりの複合質量は、約10oz/yd2であった。
【0031】
従来の切断および裁縫寝袋構築技術を用いて寝袋を作成した。得られた寝袋の特性を表2に示す。
【0032】
実施例3
使用した断熱層が6oz/yd2ポリエステル連続フィラメント(クリマシールドXP、クリマシールド、テネシー州クリントン)である以外は実施例2の記載と同様の方法で、本発明の別の物品を構築した。得られた構造は柔らかく、耐水性および通気性があり、種々の形態の断熱を用いてもよいことを確認した。
【0033】
実施例4
二層積層体を構築するのに使用したナイロン織地をポリエステル編地(スタイル番号758616、ミリケン・アンド・カンパニー、サウスカロライナ州スパルタンバーグ)で置き換え、より目のあらい延伸PTFE膜を用いたこと以外は実施例1の記載と同様の方法で、本発明の別の物品を構築した。外層積層体の特性を表1に示した。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
ここでは本発明の特定の実施態様を図示および記載しているが、本発明はこれらの図示および記載に限定されるものではない。以下の特許請求の範囲内で、本発明の一部として変更および改良を組み込み実施してもよいことは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的に
(a)バリア材料に布地が結合した積層体を含む外層であって、該積層体は約1g/H2O以下の漏水率、約1000g/m2/24h以上の透湿度および約0.3cfm以上の空気透過率を有する;
(b)断熱層;および
(c)通気性の布地を含む内層
からなる物品。
【請求項2】
該外層が約0.8cfm以上の空気透過率を有することを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
該外層が約4cfm以上の空気透過率を有することを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
該内層が外層よりも大きい空気透過率を有することを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
衣類の形態である請求項1に記載の物品。
【請求項6】
寝袋の形態である請求項1に記載の物品。
【請求項7】
該物品が約1g/H2O以下の永続的な漏水率を有することを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
本質的に
(a)バリア材料に布地が結合した積層体を含む外層であって、該積層体は約1g/H2O以下の漏水率、約1000g/m2/24h以上の透湿度および約0.3cfm以上の空気透過率を有する;
(b)二つの通気性布地層の間に配向した断熱層を含む断熱パッケージ層であって、該断熱パッケージはともにキルト加工されている
からなる物品。
【請求項9】
該外層が約0.8cfm以上の空気透過率を有することを特徴とする、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
該外層が約4cfm以上の空気透過率を有することを特徴とする、請求項8に記載の物品。
【請求項11】
該断熱パッケージの各布地層が外層よりも大きい空気透過率を有することを特徴とする、請求項8に記載の物品。
【請求項12】
衣類の形態である請求項8に記載の物品。
【請求項13】
寝袋の形態である請求項8に記載の物品。
【請求項14】
該物品が約1g/H2O以下の永続的な漏水率を有することを特徴とする、請求項8に記載の物品。
【請求項15】
本質的に
(a)バリア材料に布地が結合した積層体を含む外層であって、該積層体は約1g/H2O以下の漏水率、約1000g/m2/24h以上の透湿度および約0.3cfm以上の空気透過率を有する;
(b)断熱層;および
(c)通気性の布地を含む内層
からなる物品であって、該物品が1000cc以下のパッキング容積を有している物品。
【請求項16】
該外層が約0.8cfm以上の空気透過率を有することを特徴とする、請求項15に記載の物品。
【請求項17】
該外層が約4cfm以上の空気透過率を有することを特徴とする、請求項15に記載の物品。
【請求項18】
該内層が外層よりも大きい空気透過率を有することを特徴とする、請求項15に記載の物品。
【請求項19】
衣類の形態である請求項15に記載の物品。
【請求項20】
寝袋の形態である請求項15に記載の物品。
【請求項21】
該物品が約1g/H2O以下の永続的な漏水率を有することを特徴とする、請求項15に記載の物品。
【請求項22】
該物品が約40g/m2以下の質量を有することを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項23】
該物品が約15g/m2以下の質量を有することを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項24】
該物品が約6g/m2以下の質量を有することを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項25】
本質的に
(a)バリア材料に布地が結合した積層体を含む外層であって、該積層体は約1g/H2O以下の漏水率、約1000g/m2/24h以上の透湿度および約0.3cfm以上の空気透過率を有する;
(b)内側の通気性布地層に隣接して配向した断熱層を含む断熱パッケージ層であって、該断熱パッケージはともにキルト加工されている
からなる物品。
【請求項26】
該外層が約0.8cfm以上の空気透過率を有することを特徴とする、請求項25に記載の物品。
【請求項27】
該外層が約4cfm以上の空気透過率を有することを特徴とする、請求項25に記載の物品。
【請求項28】
該断熱パッケージの各布地層が外層よりも大きい空気透過率を有することを特徴とする、請求項25に記載の物品。
【請求項29】
衣類の形態である請求項25に記載の物品。
【請求項30】
寝袋の形態である請求項25に記載の物品。
【請求項31】
該物品が約1g/H2O以下の永続的な漏水率を有することを特徴とする、請求項25に記載の物品。
【請求項32】
本質的に
(a)バリア材料に布地が結合した積層体を含む外層であって、該積層体は約1g/H2O以下の漏水率、約1000g/m2/24h以上の透湿度および約0.3cfm以上の空気透過率を有する;
(b)断熱層;および
(c)通気性の布地を含む内層
からなる寝袋であって、該寝袋が1000in3以下のパッキング容積を有している寝袋。
【請求項33】
本質的に
(a)バリア材料に布地が結合した積層体を含む外層であって、該積層体は約1g/H2O以下の漏水率、約1000g/m2/24h以上の透湿度および約0.3cfm以上の空気透過率を有する;
(b)断熱層;および
(c)通気性の布地を含む内層
からなる衣類であって、該衣類が1000in3以下のパッキング容積を有している衣類。
【請求項34】
該物品が約40g/m2以下の質量を有することを特徴とする、請求項8に記載の物品。
【請求項35】
該物品が約15g/m2以下の質量を有することを特徴とする、請求項8に記載の物品。
【請求項36】
該物品が約6g/m2以下の質量を有することを特徴とする、請求項8に記載の物品。
【請求項37】
該寝袋が500in3以下のパッキング容積を有することを特徴とする、請求項32に記載の寝袋。
【請求項38】
該衣類が300in3以下のパッキング容積を有することを特徴とする、請求項33に記載の衣類。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−516513(P2010−516513A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547298(P2009−547298)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/000968
【国際公開番号】WO2008/091684
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】