説明

詰替え容器

【課題】口栓等の別部材を使用することなく、注出口の形成が容易かつ確実にでき、詰め替え操作が容易かつ迅速で確実にできる詰替え容器を提案するものである。
【解決手段】基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を内側にして折り曲げて、折り曲げ部と本体表面積層体と本体裏面積層体を形成し、周縁をシールしてなる詰替え容器であって、前記折り曲げ部は、注出ノズルシール部および抜き加工部シール部と共に、内容物を注ぎ出すための注出ノズルを形成しており、該注出ノズルを形成する前記積層体には、外側に凸の、帯状または筋状の凸エンボスが設けられており、該凸エンボスは、前記開封予定線の長さをAとしたとき、開封予定線上の前記注出ノズルシール部から3分の2Aの範囲にエンボスの中心が存在し、開封予定線から前記抜き加工部シール部の延長線上までは少なくとも連続して存在していることを特徴とする詰替え容器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗剤、柔軟剤などのトイレタリー用品や、食用油、インスタントコーヒーなどの食品等を収納する詰め替え容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体洗剤や柔軟仕上げ剤などのトイレタリー用品や、食用油、インスタントコーヒーなどの食品は、それぞれ使いやすいような形状の専用容器に収納されている。専用容器は、構造もしっかりしており、従って高価であることから、内容物が無くなった段階で、繰り返し使用することができるように、内容物のみを詰替える詰替え容器入りの製品が別途販売されていることが多い。
【0003】
例えば液体洗剤の容器は、洗剤を使用する時にその都度適切な量を計量して取り出す必要があるため、軽量カップに注ぎやすいように、注出口にノズルを備えた剛性のあるプラスチック容器が、繰り返し使用容器として用いられている。この容器に対して、内容物を補充するための詰め替え用の容器としては、軟包装フィルムからなる柔軟な容器に、注出口を形成した容器や、口栓を取付けた容器が一般的に使用されている。
【0004】
繰り返し使用する剛性の容器は、もっぱら注出し易いように設計されているため、繰り返し使用する容器に対して、詰替え容器から内容物を補充する詰替え操作の利便性を考慮したものでは、必ずしもなかった。
【0005】
また一方、詰替え容器も、もっぱら安価に製造することに重点を置くあまり、必ずしも詰替え操作の利便性を考慮したものではなかった。
【0006】
繰り返し使用する容器に設けられたノズルを利用して、詰替え容器の開封を行うことができ、さらに詰替え中に、詰替え容器が自立するために、手で保持しなくてもよい詰替え容器が提案されている。この手放し詰め替え容器は、繰り返し使用する容器の開口部に着脱可能かつ脱落不能に連結される結合部材と、詰め替え容器本体を密封する容器密封部材とを備えた詰め替え容器である(特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1に記載された詰め替え容器は、繰り返し使用する容器と詰め替え容器を結合するために、口栓部に、結合部材と容器密封部材という2つの部材を用いているため、容器のコストが高いものとならざるを得ない。また詰め替え容器を、繰り返し使用する容器の開口部にねじ込んで使用する構造であるため、両者の結合は確実であるが、反面、操作が面倒であるばかりでなく、口栓のコスト面においても不利であるという欠点があった。
【0008】
コストの面からは、図10に示したような表裏2枚の包装フィルムの周縁をシールしてなる包装袋が有利である。この詰替え用包装袋は、容器の口径に見合った任意の巾の注出口を設けることができるが、表裏2枚のフィルムの端縁部をシールして注出口部を形成した場合、内容物を注出する際、開口部がシールされた両端に引張られ、表裏のフィルムが疑似密着状態となり、注出口が閉塞してしまうという問題や、注出口が折れ曲がり易く、詰替え操作中に注出口が繰り返し使用する容器から外れてしまうといった問題がある。
【0009】
この注出口が閉塞したり、折れ曲がったりする問題を解決するために、注出口部にフィルムとは別部材のパーツを挿入したり(特許文献2参照)、注出口部付近のフィルムを膨らませて立体形状とすることで、開口面積を確保したりするものが多く提案されている(特許文献3参照)。
【0010】
しかしこれらの包装袋は、別部材を取り付ける工程や、フィルムに深いエンボス加工を施す工程などが増加するという問題の他、充填時に包装袋の供給部において包装袋を整然と積み上げて揃えることができないという問題や、表裏2枚のフィルムをシールしてなる開口部は、両端にシール部が存在するため、その分だけ開口巾が狭くなり、十分な開口面積を確保することができないという基本的な問題があった。十分な開口面積が確保できないと、詰替え時の注出に要する時間は長くなってしまう。
【0011】
この問題を解決するために、包装袋を構成するフィルムを折り曲げて、注出口の片側を形成し、注出口のシール部を片側だけとする包装袋が提案されている(特許文献4、5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004-99082号公報
【特許文献2】特開平5-132069号公報
【特許文献3】特許第4110940号
【特許文献4】特開平11-236053号公報
【特許文献5】特開2008-18991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献4、5に示されたような、注出口の片側が折り曲げられたフィルムで構成されている包装袋の場合、注出口が閉塞する問題や、注出口部の開口面積が不足するという問題はある程度解消されるが、注出に要する時間や、注ぎ勝手においては、まだ十分とは言えなかった。
【0014】
本発明の解決しようとする課題は、口栓等の別部材を使用することなく、注出口の形成が容易かつ確実にでき、詰め替え操作が容易かつ迅速で確実にできる詰替え容器を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を内側にして折り曲げて、折り曲げ部と本体表面積層体と本体裏面積層体を形成し、周縁をシールしてなる詰替え容器であって、前記折り曲げ部は、注出ノズルシール部および抜き加工部シール部と共に、内容物を注ぎ出すための注出ノズルを形成しており、該注出ノズルの先端は注出ノズル先端シール部によってシールされており、開封予定線に沿って切り離すことにより注出口を形成するものであり、該注出ノズルを形成する前記積層体には、外側に凸の、帯状または筋状の凸エンボスが設けられており、該凸エンボスは、前記開封予定線の長さをAとしたとき、開封予定線上の前記注出ノズルシール部から3分の2Aの範囲にエンボスの中心が存在し、開封予定線から前記抜き加工部シール部の延長線上までは少なくとも連続して存在していることを特徴とする詰替え容器である。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を外側にして折り曲げて底テープとし、前記本体表面積層体と本体裏面積層体の間に挿入して周縁をシールしてなるスタンディングパウチ形状としたことを特徴とする請求項1に記載の詰替え容器である。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、前記折り曲げ部の稜線と前記凸エンボスの中心線のな
す角度が、0°以上60°以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の詰替え容器である。
【0018】
また、請求項4に記載の発明は、前記凸エンボスと前記注出ノズルシール部の間に、外側に凹の、帯状または筋状の凹エンボスが設けられており、該凹エンボスは、前記開封予定線上の注出ノズルシール部から3mm以内の範囲にエンボスの中心が存在し、開封予定線から前記抜き加工部シール部の延長線上までは少なくとも連続して存在しており、その角度は前記注出ノズルシール部に平行な角度から、前記折り曲げ部の稜線に垂直な角度までの範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の詰替え容器である。
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、前記開封予定線上に、レーザーによる易カット加工が施されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の詰替え容器である。
【0020】
また、請求項6に記載の発明は、前記注出ノズルを形成する注出口シール部の抜き加工部と反対の側に、該抜き加工部に納まる形状の把手を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の詰替え容器である。
【0021】
また、請求項7に記載の発明は、前記折り曲げ部の一部を切り開き、内容物充填用開口部としたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の詰替え容器である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る詰替え容器は、基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を内側にして折り曲げて、折り曲げ部と本体表面積層体と本体裏面積層体を形成し、周縁をシールしてなる詰替え容器であるから、プラスチックボトルや、プラスチック製の口栓を使用した容器などと異なり、軟包装用積層体のみから製造することができるため、安価に製造することができる。
【0023】
また、本発明に係る詰替え容器は、1枚の積層体を、シーラント層を内側にして折り曲げて、折り曲げ部を形成し、該折り曲げ部は、注出ノズルシール部および抜き加工部シール部と共に、内容物を注ぎ出すための注出ノズルを形成したので、大面積の直線状の流出路を安定して確保することが可能となり、その結果円滑かつ迅速な詰め替え操作が可能となった。また、注出口の形成も容易かつ確実にできる。
【0024】
また、本発明に係る詰替え容器は、注出ノズルを形成する積層体に、外側に凸の、帯状または筋状の凸エンボスを特定の位置に設けたことにより、注出口および流出路の断面積を大きく確保することが可能となると同時に、注出ノズルが折れ曲がったり、繰り返し使用する容器から外れたりすることがなくなり、詰め替え操作が容易かつ迅速で確実にできるようになった。
【0025】
この時、折り曲げ部の稜線と前記凸エンボスの中心線のなす角度が、0°以上60°以下である場合には、この特徴がさらに十分に発揮されるものとなる。
【0026】
また、基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を外側にして折り曲げて底テープとし、本体表面積層体と本体裏面積層体の間に挿入して周縁をシールしてなるスタンディングパウチ形状とした場合には、自立性を有する大容量の詰替え容器とすることが可能となり、本発明の特徴を十分に生かせるものとなる。
【0027】
また、前記凸エンボスと前記注出ノズルシール部の間に、外側に凹の、帯状または筋状の凹エンボスを、特定の角度をもって特定の位置に設けた場合においては、注出口および
流出路の断面積をさらに大きく確保することが可能となると同時に、注出ノズルが折れ曲がったり、繰り返し使用する容器から外れたりすることがなくなり、詰め替え操作が容易かつ迅速で確実にできるという本発明の特徴がさらに安定したものとなる。
【0028】
前記開封予定線上に、レーザーによる易カット加工が施されている場合には、開封予定線に沿った正確な開封が容易に可能となる。
【0029】
また前記注出ノズルを形成する注出口シール部の抜き加工部と反対の側に、該抜き加工部に納まる形状の把手を設けた場合には、この把手を持って詰替え操作を行うことができるので、より安全にまた容易に詰替え操作を行うことができる。また把手は抜き加工部に納まる形状であるから、連続したフィルムから打ち抜いて製造する場合に、フィルムの無駄が生じない。
【0030】
また、前記折り曲げ部の一部を切り開き、内容物充填用開口部とした場合には、他のシール部分を充填用開口部とすることができないような形状の容器であっても、安定した充填操作が可能となる。
【0031】
本発明に係る詰替え容器は、ノズルキャップを有する繰り返し使用する容器のノズルを前記注出ノズルに挿入可能とした場合、水平に保持した注出ノズルに前記繰り返し使用する容器のノズルを挿入した後に、注出ノズルが垂直になるように容器を傾けることにより、迅速な詰め替えを可能とした詰替え容器となり、本発明の効果が最大限に発揮される。すなわち、本発明に係る詰替え容器は、1枚の積層体を折り曲げた折り曲げ部の存在によって、注出口が自然に開くので、目的とする容器のノズルを挿入し易く、またノズルに合わせて注出口の寸法を設計することにより、ノズルにぴったり合った注出口とすることができる。このため、水平に保持した注出ノズルに繰り返し使用する容器のノズルを挿入した後に、注出ノズルが垂直になるように傾けることにより、迅速な詰替え操作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明に係る詰替え容器の一実施態様を示した模式図である。
【図2】図2(1)は、図1のX−X’断面を示した断面模式図である。また(2)は、詰替え容器を構成する積層体の層構成を示した断面模式図である。
【図3】図3は、本発明に係る詰替え容器の注出ノズル部の拡大図であり、凸エンボスの説明図である。
【図4】図4は、本発明に係る詰替え容器の注出ノズル部の拡大図であり、凹エンボスの説明図である。
【図5】図5は、本発明に係る詰替え容器の注出ノズル部の拡大図であり、凸エンボスと凹エンボスの他の実施態様を示した例である。
【図6】図6(1)〜(4)は、本発明に係る詰替え容器の注出ノズル部の実施態様の例を示した断面拡大図である。
【図7】図7は、本発明に係る詰替え容器の他の実施態様を示した模式図である。
【図8】図8(1)は、図7のY−Y’断面を示した断面模式図である。また(2)は、容器本体を開いた状態を示した断面模式図である。
【図9】図9は、本発明に係る詰替え容器の他の実施態様を示した模式図である。
【図10】図10は、従来の詰替え容器の一例を示した模式図である。
【図11】図11〜13は、本発明に係る詰替え容器を用いた一連の詰替え操作を示した模式図であり、図11は、詰替え容器を開封し、繰返し使用する容器本体のノズルを詰替え容器の注出口に挿入しようとする状態を示した模式図である。
【図12】図12は、容器本体のノズルが詰替え容器の注出口に完全に挿入された状態を示した模式図である。
【図13】図13は、容器本体と詰替え容器全体を引き起こし、一気に詰替える状態を示した模式図である。
【図14】図14は、注出ノズルにおけるエンボスの有無により、注ぎ時間と注出量の関係がどのようになるかを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下本発明に係る詰替え容器について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る詰替え容器の一実施態様を示した模式図である。また図2(1)は、図1のX−X’断面を示した断面模式図である。また(2)は、詰替え容器を構成する積層体の層構成を示した断面模式図である。また図3は、本発明に係る詰替え容器の注出ノズル部の拡大図であり、凸エンボスの説明図である。
【0034】
本発明に係る詰替え容器1は、図2(2)に示したように、基材11とシーラント層12を少なくとも有する積層体からなる詰替え容器であって、図1、図2(1)に示したように、1枚の積層体を、シーラント層12を内側にして折り曲げて、折り曲げ部6と本体表面積層体2と本体裏面積層体3を形成し、周縁をシールしてなる詰替え容器である。
【0035】
折り曲げ部6は、注出ノズルシール部24aおよび抜き加工部シール部25aと共に、内容物を注ぎ出すための注出ノズル32を形成しており、注出ノズル32の先端は注出ノズル先端シール部24bによってシールされており、開封予定線34に沿って切り離すことにより注出口31を形成するものであり、注出ノズル32を形成する前記積層体には、外側に凸の、帯状または筋状の凸エンボス35が設けられており、凸エンボス35は、開封予定線34の長さをAとしたとき、開封予定線上の注出ノズルシール部24aから3分の2Aの範囲にエンボスの中心線35cが存在し、開封予定線34から前記抜き加工部シール部25aの延長線25b上までは少なくとも連続して存在していることを特徴とする。
【0036】
本発明に係る詰替え容器における第一の特徴は、折り曲げ部6を有することである。折り曲げ部6は、1枚の積層体をシーラント層12を内側にして天部で折り曲げて形成したものであり、折り曲げ部6は、折り曲げ部6の下部に設けた注出ノズルシール部24aおよび抜き加工部シール部25aと共に、注出口31に至る内容物の流出路33を形成している。折り曲げ部6における積層体の戻ろうとする弾性の働きにより、流出路33の断面は、常に上部が膨らんだ状態となる。このため、注出口31の断面積を広く確保することが可能となり、一度に大量の内容物を排出することが可能となる。
【0037】
また本発明に係る詰替え容器における第二の特徴は、注出ノズル32を形成する前記積
層体に、外側に凸の、帯状または筋状の凸エンボス35が設けられており、凸エンボス35は、開封予定線34の長さをAとしたとき、開封予定線上の注出ノズルシール部24aから3分の2Aの範囲にエンボスの中心線35cが存在し、開封予定線34から前記抜き加工部シール部25aの延長線25b上までは少なくとも連続して存在していることである。
【0038】
図3に示した注出ノズル部32の拡大図において、凸エンボス35は、積層体に対して外側に凸状に設けられたエンボスであり、その形状は帯状または筋状とする。帯状とは、断面形状が矩形、台形、半円形、かまぼこ型等のことを指し、筋状とは断面形状が三角形となるような、線状のエンボスを指している。凸エンボス35は、直線状でなくても連続的であればよい。
【0039】
凸エンボス35の位置としては、開封予定線34の長さをAとした場合、開封予定線上の注出ノズルシール部24aから3分の2Aの範囲にエンボスの中心線35cが存在するような位置が好ましいことが、実験的に明らかとなっている。この範囲内に凸エンボス35を設けることにより、注出口31の開口が安定的に広くなることが分かった。
【0040】
また、凸エンボス35の長さについては、開封予定線34から抜き加工部シール部25aの延長線25b上までは少なくとも連続して存在していることが望ましい。図3に示されたように、抜き加工部シール部延長線25bを大幅に超えて設けてもよい。
【0041】
凸エンボス35の角度については、凸エンボス35の中心線35cと折り曲げ部6の稜線7とがなす角度θが0°以上60°以下であることがより好ましい。角度θがこの範囲にある場合には、注出口31の開口を円滑にする効果がより高まる。
【0042】
図1に示した実施態様においては、本体表面積層体2と本体裏面積層体3は、サイドシール部22とボトムシール部23においてシールされて袋状となっている。実際の容器では、内容物を充填するための充填用開口部が必要であるが図1では省略されている。図1に示された実施態様においては、ボトムシール部23ないしはサイドシール部22に充填用開口部を設けることができる。また折り曲げ部6の一部を切り開いて、充填用開口部とすることもできる。
【0043】
図1に示した実施態様においては、折り曲げ部6が詰替え容器1の上部に水平に配置されているが、詰替え容器1の側面に垂直に配置されていてもよい。
【0044】
開封予定線34に相当する注出口シール部にV字型やU字型のノッチや切込み線を設けたり、注出口シール部の先端部を広巾に加工して開封つまみ8を設けたりすることにより、開封のし易さが向上する。
【0045】
なお開封予定線34は、開封位置を示す仮想的な線であるが、開封位置を明らかにするために、実際に印刷表示等を行っても良い。また、開封予定線34は、本体表面積層体2および本体裏面積層体3の外側面に連続して設けたハーフカット線であることが好ましい。このようにすることにより、開封予定線34の部分を手で引き裂いて注出口31を容易に形成することが可能となる。ハーフカット線は、刃物によって形成する方法と、レーザー加工によって形成する方法が一般に用いられているが、レーザー加工による方法の方が均一で安定した切れ目を形成できるので好ましい。レーザーの種類としては、炭酸ガスレーザーがより好ましい。開封予定線34は、折り曲げ部の稜線7に対して垂直である必要はなく、斜めでもよい。
【0046】
本発明に係る詰替え容器に使用する積層体としては、通常軟包装袋に使用される積層体
を用いることができる。基材11としては、1層ないしは数層からなる紙や金属箔や合成樹脂フィルムを使用する。一例を挙げれば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリオレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等のポリエステル系樹脂、セロハン、三酢酸セルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂(EVA)、アイオノマー樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂(PS)、ポリ塩化ビニル系樹脂(PVC)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(PVDC)、ポリカーボネート樹脂(PC)、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂等の合成樹脂フィルムおよび紙、金属箔等が単体または、複合して使用される。基材11には、必要に応じて印刷層や接着剤層が含まれる。
【0047】
紙としては、上質紙、片アート紙、コート紙、キャストコート紙、模造紙などを用いることができる。積層体に紙を用いた場合には、深いエンボス加工により紙に割れが生じることがあるので、本発明に係る詰替え容器に用いる場合は、凸エンボスおよび凹エンボスとして、筋状のエンボスを採用することにより、紙を用いた積層体を安定して使用することができる。環境配慮の点からも、紙を用いることは有効である。
【0048】
シーラント層12としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・αオレフィン共重合体などのエチレン系樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂などが使用される。またこれらの樹脂を複合した多層フィルムが使用されることもある。
【0049】
積層体の具体的な構成例としては、PET/印刷層/接着剤層/延伸ポリアミド樹脂フィルム(以下ONYと略す)/接着剤層/LLDPEからなる構成のフィルムや、ONY/接着剤層/LLDPE、ONY/接着剤層/ONY/接着剤層/LLDPE、紙/LDPE/アルミニウム箔/LDPE、紙/LDPEなどが挙げられる。
【0050】
図4は、本発明に係る詰替え容器の注出ノズル部の拡大図であり、凹エンボスの説明図である。凸エンボス35と注出ノズルシール部24aの間に、外側に凹の、帯状または筋状の凹エンボス36を、特定の角度をもって特定の位置に設けた場合においては、注出口31および流出路33の断面積をさらに大きく確保することが可能となると同時に、注出ノズル32が折れ曲がったり、繰り返し使用する容器から外れたりすることがなくなり、詰め替え操作が容易かつ迅速で確実にできるという本発明の特徴がさらに安定したものとなる。凹エンボス36の主な働きは、注出口31の注出ノズルシール部24a付近が広がりにくいことを改善しようとするものであるが、注出口31の折れ曲がりを防止する効果を高める働きも持っている。
【0051】
凹エンボス36は、開封予定線34上の注出ノズルシール部24aから3mm以内の範囲に凹エンボスの中心線36cが存在し、開封予定線34から抜き加工部シール部25aの延長線25b上までは少なくとも連続して存在しており、凹エンボス中心線36cの角度は注出ノズルシール部に平行な角度から、折り曲げ部の稜線7に垂直な角度までの範囲内であることが好ましい。図4では、この角度の範囲をδで表してある。
【0052】
凹エンボス36の形状については、凸エンボス35と同様であり、その形状は帯状または筋状とする。帯状とは、断面形状が矩形、台形、半円形、かまぼこ型等のことを指し、
筋状とは断面形状が三角形となるような、線状のエンボスを指している。凹エンボスも凸エンボスと同様、連続的であれば直線でなく曲線でもよく、注出ノズルシール部24aに沿った曲線でもよい。
【0053】
図5は、本発明に係る詰替え容器の注出ノズル部の拡大図であり、凸エンボスと凹エンボスの他の実施態様を示した例である。この例では、凸エンボス35、凹エンボス36ともそれぞれ1本の筋状のエンボスで形成されている。本発明に係る詰替え容器においては、このような簡単なエンボス形状であっても、十分にその効果を発揮することができる。特に詰替え容器を構成する積層体として、紙を使用した場合には、紙の割れを防ぐ意味でも、このような筋状のエンボスが好ましい。
【0054】
図6(1)〜(4)は、本発明に係る詰替え容器の注出ノズル部の実施態様の例を示した断面拡大図である。図6(1)に示した実施態様においては、断面形状が台形状の帯状の凸エンボス35と、同じく断面形状が台形状の帯状の凹エンボス36とが設けられている。図6(2)に示した実施態様においては、断面形状が台形状の帯状の凸エンボス35のみが施されている。図6(3)に示した実施態様においては、断面形状が三角形状の筋状の凸エンボス35と、同じく断面形状が三角形状の筋状の凹エンボス36とが設けられている。また図6(4)に示した実施態様においては、断面形状がかまぼこ型の筋状の凸エンボス35のみが施されている。
【0055】
図7は、本発明に係る詰替え容器の他の実施態様を示した模式図である。図8(1)は、図7のY−Y’断面を示した断面模式図であり、(2)は、容器本体を開いた状態を示した断面模式図である。
この実施態様は、基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を外側にして折り曲げて底テープ4とし、本体表面積層体2と本体裏面積層体3の間に挿入して周縁をシールしてなるスタンディングパウチ形状としたものである。このような形状の場合、内容物を充填する充填用開口部をサイドシール部に設けることができないため、折り曲げ部6の一部を切り開いて、充填用開口部41としてある。図7に示した実施態様では、充填用開口部41は、シールされてトップシール部21となっている。このように、容器の天部に充填用の開口部が存在すると、内容物の充填操作がやり易くなる利点がある。
【0056】
図8(2)に示されたように、スタンディングパウチ形状の容器は、底テープ4が広がるため、大容量の容器とすることが容易に可能である。従って、本発明に係る詰替え容器における注出時間が短くて済むという特徴を十分に生かすことができる。
【0057】
折り曲げ部6は、1枚の積層体をシーラント層を内側にして天部で折り曲げて、形成されており、折り曲げ部6は注出口シール部24aおよび抜き加工部シール部25aと共に、注出口31に至る内容物の流出路33を形成している。このようにすることにより、特に内容物が液体の場合には、内容物を注出する際、内容物が直線状の流出路33を円滑に流れるために、迅速な注出を可能とする。この特徴は、この実施態様においては、容器が大容量であるためにより一層効果的なものとなっている。
【0058】
図9は、本発明に係る詰替え容器の他の実施態様を示した模式図である。
この実施態様においては、注出ノズル32を形成する注出口シール部24aの抜き加工部25と反対の側に、抜き加工部25に納まる形状の把手26を設けたことを特徴とする。注出口シール部24aに抜き加工部25を形成することにより、流出路33は、突出した注出ノズル32として形成されることになる。抜き加工部25の形状は、繰り返し使用する容器の口栓部周辺の構造に応じて、適当な形状を選択することができる。
【0059】
図9に示した詰替え容器を製造するには、容器の高さに相当する巾のほぼ2倍の巾にスリットした積層体をシーラント層面を内側にして天部で折り曲げて対向させ、本体表面積層体2と本体裏面積層体3とし、これを連続的に供給し、この間にシーラント層面が外側になるように二つ折りにした底テープ4を連続的に供給し、必要なシールを行った後に、打ち抜いて容器とする。
【0060】
抜き加工部25は、本来廃棄される部分であるが、図9に示したように、把手26を、隣の詰替え容器27の抜き加工部25に納まるような形状とすれば、特に材料の増加もなく、把手26を付加することができる。把手26が存在することにより、この把手26を持って詰替え操作を行うことができるので、より安全にまた容易に詰替え操作を行うことができる。
【0061】
またこの実施態様においては、折り曲げ部6の一部を切り開き、内容物を充填するための充填用開口部41としている。この例では、サイドシール部22に抜き加工部25や把手26が存在するために、折り曲げ部6以外に、十分な巾をもった充填用開口部を設けることが困難である。従って、充填用開口部41の位置としては、折り曲げ部6に設けるのが好ましい。
【0062】
図11〜13は、本発明に係る詰替え容器を用いた一連の詰替え操作の例を示した模式図である。図11に示したように、本発明に係る詰替え容器1を保持し、注出ノズル32の先端をカットして注出口31を開く。この注出口31に空になった繰り返し使用容器51のノズル52を挿入する。この図では、繰り返し使用容器51は、ノズル52を有するノズルキャップ53を備えたプラスチック容器である。
【0063】
次に図12に示したように詰替え容器1の注出ノズル32を繰り返し使用容器51のノズルキャップ53に確実に挿入した状態とする。次に図13に示したように、繰り返し使用容器51と詰替え容器1の位置関係を一定に保ちながら、注出ノズル32が垂直になるように全体を引き起こすと、詰替え容器1中の内容物が一気に繰り返し使用容器51に注入される。
【0064】
このように、本発明に係る詰替え容器は、特別のプラスチック製の口栓等を使用せずに、大面積の注出口を確保することが可能であり、またこの注出口の大きさは、目的とする繰り返し使用容器の口栓の形状に合わせて自由に設計することができるので、迅速な詰替え操作が可能な専用詰替え容器として極めて価値の高いものである。
以下実施例に基づいて、本発明に係る詰替え容器についてさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0065】
本体表面積層体および本体裏面積層体として以下の構成からなる積層体を使用した。
<積層体の構成>
PET(東レ社製P60、12μm)/印刷層/接着剤層(東洋モートン社製TM272、3g/m(dry))/ONY(ユニチカ社製ONMB、15μm)/接着剤層(同上)/LLDPE(東セロ社製TUX−FCS、150μm)
底テープとして以下の構成からなる積層体を使用した。
<積層体の構成>
ONY(ユニチカ社製ONM、25μm)/LLDPE(同上、120μm)
【0066】
上記の積層体を用いて、図7に示した形状のスタンディングパウチを作製した。パウチサイズは、巾150mm、高さ272mmとした。注出ノズル部のエンボスは、凸エンボスのみとし、凹エンボスは施さなかった。凸エンボスは、断面形状が台形で、高さ1mm、長さ40mm、角度θを50°とした。
充填用開口部としては、折り曲げ部の一部をカットし、充填用開口部とした。また注出ノズル先端部の注出口となるべき開封予定線をレーザー加工によるハーフカット線とした。こうして得られた詰替え容器に液体洗剤を900g充填し、充填開口部をヒートシールして評価用試験体とした。
【実施例2】
【0067】
注出ノズル部に凸エンボスに加えて凹エンボスも施した以外は、実施例1と同様にして評価用容器を作成し、同様の内容物を充填した。凹エンボスは、断面形状が台形で、高さ1mm、長さ30mm、角度δを35°とした。
<比較例1>
【0068】
注出ノズル部にエンボスを施さない以外は、実施例1と同様にして評価用容器を作成し、同様の内容物を充填した。
【0069】
上記の各評価用試験体容器の注出ノズル先端を開封予定線に沿って手で切り取り、内容物の注出に要する時間を評価した。これらの実験結果を表1および図14に示す。なお表1における注ぎ時間は、内容量の95%の注出に要した時間である。
【0070】
【表1】

【0071】
表1および図14から分かるように注出ノズル部に凸エンボスを設けることによって注出時間は短縮され、さらに凹エンボスを設けた場合には、さらに短縮されることが分かる。
【符号の説明】
【0072】
1・・・詰替え容器
2・・・本体表面積層体
3・・・本体裏面積層体
4・・・底テープ
6・・・折り曲げ部
7・・・折り曲げ部の稜線
8・・・開封つまみ
11・・・基材
12・・・シーラント層
21・・・トップシール部
22・・・サイドシール部
23・・・ボトムシール部
24a・・・注出ノズルシール部
24b・・・注出ノズル先端シール部
25・・・抜き加工部
25a・・・抜き加工部シール部
25b・・・抜き加工部シール部延長線
26・・・把手
27・・・隣の詰替え容器
31・・・注出口
32・・・注出ノズル
33・・・流出路
34・・・開封予定線
A・・・開封予定線の長さ
35・・・凸エンボス
35c・・・凸エンボス中心線
θ・・・凸エンボス中心線の角度
36・・・凹エンボス
36c・・・凹エンボス中心線
δ・・・凹エンボスの角度の範囲
41・・・充填用開口部
51・・・繰り返し使用容器
52・・・ノズル
53・・・ノズルキャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を内側にして折り曲げて、折り曲げ部と本体表面積層体と本体裏面積層体を形成し、周縁をシールしてなる詰替え容器であって、
前記折り曲げ部は、注出ノズルシール部および抜き加工部シール部と共に、内容物を注ぎ出すための注出ノズルを形成しており、
該注出ノズルの先端は注出ノズル先端シール部によってシールされており、開封予定線に沿って切り離すことにより注出口を形成するものであり、
該注出ノズルを形成する前記積層体には、外側に凸の、帯状または筋状の凸エンボスが設けられており、
該凸エンボスは、前記開封予定線の長さをAとしたとき、開封予定線上の前記注出ノズルシール部から3分の2Aの範囲にエンボスの中心が存在し、開封予定線から前記抜き加工部シール部の延長線上までは少なくとも連続して存在している
ことを特徴とする詰替え容器。
【請求項2】
基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を外側にして折り曲げて底テープとし、前記本体表面積層体と本体裏面積層体の間に挿入して周縁をシールしてなるスタンディングパウチ形状とした
ことを特徴とする請求項1に記載の詰替え容器。
【請求項3】
前記折り曲げ部の稜線と前記凸エンボスの中心線のなす角度は、0°以上60°以下である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の詰替え容器。
【請求項4】
前記凸エンボスと前記注出ノズルシール部の間に、外側に凹の、帯状または筋状の凹エンボスが設けられており、
該凹エンボスは、前記開封予定線上の注出ノズルシール部から3mm以内の範囲にエンボスの中心が存在し、
開封予定線から前記抜き加工部シール部の延長線上までは少なくとも連続して存在しており、
その角度は前記注出ノズルシール部に平行な角度から、前記折り曲げ部の稜線に垂直な角度までの範囲内である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の詰替え容器。
【請求項5】
前記開封予定線上に、レーザーによる易カット加工が施されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の詰替え容器。
【請求項6】
前記注出ノズルを形成する注出口シール部の抜き加工部と反対の側に、該抜き加工部に納まる形状の把手を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の詰替え容器。
【請求項7】
前記折り曲げ部の一部を切り開き、内容物充填用開口部としたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の詰替え容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−184065(P2011−184065A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50338(P2010−50338)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】