説明

誘導体化3,4−アルキレンジオキシチオフェンモノマー、その製造方法およびその使用方法

本発明は、誘導体化3,4−アルキレンジオキシチオフェンモノマーの製造法および3,4−アルキレンジオキシチオフェンモノマーの使用法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された水溶性を有する誘導体化3,4−アルキレンジオキシチオフェンの調製プロセス、それらの製造方法および電気デバイスにおけるそれらの使用に関する。
【0002】
(関連出題の相互参照)
本願は、2005年6月27日出願の米国特許公報(特許文献1)および2004年12月30日出願の米国特許公報(特許文献2)に利益を要求する。これらの特許の開示は、本明細書において全体として援用される。
【背景技術】
【0003】
高い導電率および温度安定性のため、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)は重要な導電性ポリマーである。しかしながら、そのモノマー単位、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)は乏しい水溶性を有する。EDOT−CH2OHのようないくつかの水溶性EDOT化合物が当該分野において既知であるが、EDOT−CH2OHの既知の製造方法は、チオジグリコール酸から出発する一連の複雑な6回の反応工程を含む。従って、改善された水溶性を有する誘導体化EDOT化合物を製造するための改善されたプロセスに対する必要性がある。
【0004】
【特許文献1】米国仮特許出願第60/694,393号明細書
【特許文献2】米国仮特許出願第60/640,563号明細書
【特許文献3】米国仮特許出願第2004/0254297号明細書
【特許文献4】米国仮特許仮出願第60/694276号明細書
【特許文献5】国際公開第02/02714号パンフレット
【特許文献6】米国特許出願公開第2001/0019782号明細書
【特許文献7】欧州特許出願第1191612号明細書
【特許文献8】国際公開第02/15645号パンフレット
【特許文献9】欧州特許出願第1191614号明細書
【特許文献10】国際公開第00/70655号パンフレット
【特許文献11】国際公開第01/41512号パンフレット
【特許文献12】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献13】米国特許第6,150,426号明細書
【非特許文献1】「ジャーナル オブ キャタリシス(Journal of Catalysis)」、208(2)、339頁−344頁、2002年
【非特許文献2】「シンテシス(Synthesis)」、(4)、295−7、1989年
【非特許文献3】カーク−オスマー(Kirk−Othmer)、「コンサイス エンサイクロペディア オブ ケミカル テクノロジー(Concise Encyclopedia of Chemical Technology)」、第4版、1537頁(1999年)
【非特許文献4】「フレキシブル ライト−エミッティング ダイオード メイド フローム ソルブル コンダクティング ポリマー(Flexible light−emitting diodes made from soluble conducting polymer)」、ネーチャー(Nature)、第357巻、477頁〜479頁(1992年6月11日)
【非特許文献5】カーク オスマー(Kirk Othmer)、「エンサイクロペディア オブ ケミカル テクノロジー(Encyclopedia of Chemical Technology)」、第4版、第18巻、837頁〜860頁、1996年
【非特許文献6】ブラッドレイ(Bradley)ら、「シンテティック メタルズ(Synth.Met.)」(2001年)、116(1−3)、379頁−383頁
【非特許文献7】キャンプベル(Campbell)ら、「フィジカル レビュー B(Phys.Rev.B)」、第65 085210巻
【非特許文献8】「エレクトロポリマリゼーション オブ アンド 3,4−エチレンジオキシチオフェン メタノール イン ザ プレゼンス オブ ドデシルベンゼンスルホネート(Electropolymerization of and 3,4−ethylenedioxythiophene methanol in the presence of dodecylbenzenesulfonate)」、リマ A(Lima A)、スコットランド P(Schottland P)、サドキ A(Sadki A)、シェブロット C(Chevrot C);シンテティック メタルズ(Synth.Met.)1998年、93、33頁−41頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
誘導体化3,4−アルキレンジオキシチオフェン化合物の製造方法が提供される。
【0006】
一実施形態において、本発明は、式I:
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、nは1〜4である)の化合物の調製方法であって、式II:
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、Xはハロゲンであり、nは1〜4である)の化合物と;無機水酸化物、アルカリ金属カルボン酸塩またはアルカリ土類金属カルボン酸塩、カルボン酸アンモニウムもしくはカルボン酸アルキルアンモニウム、アルカリ金属アルコキシドもしくはアルカリ土類金属アルコキシドまたはアンモニウムアルコキシドもしくはアルキルアンモニウムアルコキシドとを接触させる工程を含む方法を含む。
【0011】
式IIの
【0012】
【化3】

【0013】
は直鎖または分枝鎖であり得る。いくつかの実施形態において、式Iによる化合物の形成プロセスにおける化学を妨害しない部分によって基を置換することができる。いくつかの実施形態において、例えば、エーテル、エステルまたはカルボキシレート基のような置換基も水溶性を改善し得る。
【0014】
一実施形態において、本発明は、式II:
【0015】
【化4】

【0016】
の化合物の調製方法であって、酸の存在下で3,4−ジアルコキシチオフェンとω−ハロ−1,2−アルカンジオールとを接触させる工程を含む方法を含む。特定の実施形態において、ω−ハロ−1,2−アルカンジオールは3−ハロ−1,2−プロパンジオールである。
【0017】
一実施形態において、本発明は、式V:
【0018】
【化5】

【0019】
(式中、mは1または2であり、そしてpは2または3である)の化合物の調製方法であって、式VI:
【0020】
【化6】

【0021】
(式中、Xはハロゲンであり、mは1または2であり、そしてpは2または3である)の化合物と、無機水酸化物、アルカリ金属カルボン酸、アルカリ土類金属カルボン酸塩、カルボン酸アンモニウムもしくはカルボン酸アルキルアンモニウム、アルカリ金属アルコキシドもしくはアルカリ土類金属アルコキシドまたはアンモニウムアルコキシドもしくはアルキルアンモニウムアルコキシドとを接触させる工程を含む方法を含む。
【0022】
前記の一般的な記載および以下の詳細な記載は例示であり、あくまでも説明のためのものであり、添付の特許請求の範囲で定義されるように本発明を限定するものではない。
【0023】
実施形態は、本明細書において提示される概念の理解を向上するため、添付の図面に例示される。
【0024】
当業者は、図面中の物体が単純および明瞭さのために簡単におよび明瞭にするために例示されており、そして必ずしも一定の比率で描写されているわけではないことを認識する。例えば、実施形態の理解を向上するのを補助けるのために、図面中の物体のいくつかの寸法は他の物体に対して誇張されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
誘導体化3,4−アルキレンジオキシチオフェン化合物の調製方法、この方法によって製造された生成物、誘導体化3,4−アルキレンジオキシチオフェンモノマーを含む導電性ポリマー組成物およびそれらのデバイスが提供される。本発明の例示的な誘導体化3,4−アルキレンジオキシチオフェン化合物は(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ダイオキシン−3−イル)メタノールまたはEDOT−CH2OHである。
【0026】
本明細書の使用に関して、用語EDOT−CH2OHは式III:
【0027】
【化7】

【0028】
の化合物を指す。
【0029】
一実施形態において、本発明は、式II:
【0030】
【化8】

【0031】
(式中、Xはハロゲンであり、nは1〜4である)の化合物と、無機水酸化物、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ土類金属カルボン酸塩、カルボン酸アンモニウムもしくはカルボン酸アルキルアンモニウム、アルカリ土類金属アルコキシド、アルカリ金属アルコキシドまたはアンモニウムアルコキシドもしくはアルキルアンモニウムアルコキシドとを接触させて、式I:
【0032】
【化9】

【0033】
(式中、nは1〜4である)の化合物を提供する工程を含む誘導体化3,4−アルキレンジオキシチオフェン化合物の調製方法に関する。
【0034】
一実施形態において、nは1であり、かつ誘導体化3,4−アルキレンジオキシチオフェン化合物はEDOT−CH2OHである。
【0035】
一実施形態において、無機水酸化物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物または水酸化アンモニウムもしくは水酸化アルキルアンモニウムである。例示的なアルカリ金属水酸化物としては、例えば、KOH、NaOHまたはLiOHが挙げられる。例示的なアルカリ土類金属水酸化物としては、例えば、Mg(OH)2またはCa(OH)2が挙げられる。
【0036】
一実施形態において、接触工程は触媒の存在下で行われる。触媒は、合成反応を促進し得るいずれの分子でもあり得る。いくつかの例示的な実施形態において、触媒はクラウンエーテルである。本明細書での使用に関して、用語クラウンエーテルは、酸素原子上の孤立電子対との配位によってカチオンを捕捉することが可能であるいわゆる正孔との立体配座を示す構造である大環状ポリエーテルを指す。各酸素原子は2つの炭素原子間に結合し、そして環において配列される。本発明で使用するための例示的なクラウンエーテルとしては、18−クラウン−6、15−クラウン−5、12−クラウン−4またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
一実施形態において、式IIの化合物から3,4−アルコールのような誘導体化3,4−アルキレンジオキシチオフェン化合物への変換は置換反応による。置換反応は、もう1つの官能基による脱離基の置換を含む。一態様において、置換反応は、1つまたは複数の極性非プロトン性溶媒における式IIの化合物と水酸化物との反応を必然的に伴う。いくつかの例示的な実施形態において、1つまたは複数のクラウンエーテル、1つまたは複数のクリプタンド、ヨウ化ナトリウムまたはそれらの組み合わせを触媒として使用することができる。用語クリプタンドは、三配位窒素原子が三次元構造の頂点を提供する大多環状ポリアゾ−ポリエーテルを指す。例示的なクリプタンドとしては、例えば、4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.8.8]ヘキサコサンが挙げられる。
【0038】
一実施形態において、式IIの化合物から3,4−アルキレンジオキシチオフェンアルコールのような誘導体化3,4−アルキレンジオキシチオフェン化合物の変換は2工程手順による。第1の工程は、1つまたは複数の極性非プロトン性溶媒においてカルボン酸の塩、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウムおよび安息香酸アンモニウムを使用して有機エステルを形成する置換反応である。次いで、このエステルを加水分解して、相当する3,4−アルキレンジオキシチオフェンアルコールを形成することができる。
【0039】
一実施形態において、式IIの化合物から3,4−アルキレンジオキシチオフェンアルコール、例えば、EDOT−CH2OHへと変換するために、アルカリ金属アルコキシドを使用する。1つまたは複数の開裂試薬を介して、次いで3,4−ジオキシアルキレンチオフェンアルコール、例えば、EDOT−CH2OHへと変換されるエーテルを形成するため、アルカリ金属アルコキシドを使用することができる。例示的な開裂試薬としては、例えば、亜鉛または酢酸が挙げられる。例示的なアルカリ金属アルコキシドとしては、例えば、ナトリウム2−プロペン−1−オキシドのようなナトリウムアルコキシドが挙げられる。
【0040】
酸の存在下で3,4−アルキレンジオキシチオフェンとハロ−1,2−アルカンジオールとを接触させる工程を含む式II:
【0041】
【化10】

【0042】
(式中、Xはハロゲンであり、nは1〜4である)の化合物の調製方法も提供される。一実施形態において、ハロ−1,2−アルカンジオールは式CH2(OH)CH(OH)(CH2nX(式中、nは1〜4である)を有する。例示的な酸としては、限定されないが、パラ−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、硫酸またはいずれかのそれらの組み合わせが挙げられる。
【0043】
一実施形態において、nは1であり、かつ3,4−アルキレンジオキシチオフェンを3−ハロ−1,2−プロパンジオールと接触させる。実施形態において、nは2、3または4であり、3,4−アルキレンジオキシチオフェンを、例えば、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、4−ブロモ−1,2−ブタンジオール、5−ブロモ−1,2−ペンタンジオール等を含む他のハロ−1,2−アルカンジオールと接触させることができる。ハロ−1,2−アルカンジオールは、米国、ウィスコンシン州、ミルウォーキーのアルドリッチ カンパニー(Aldrich Company,Milwaukee,Wisconsin,USA)のような商業的供給源から容易に入手可能であり、当該分野で既知の方法に従って合成可能であるか((非特許文献1)、(非特許文献2))、または過マンガン酸カリウムまたは四酸化オスミウムのような酸化剤を使用してω−ブロモ−(−オレフィンの直接酸化によって入手可能である。
【0044】
一実施形態において、接触工程は溶媒の存在下で行われる。例示的な溶媒としては、限定されないが、アラルカン(aralkane)が挙げられる。本発明の一実施形態において、アラルカンはトルエンである。例示的な3−ハロ−1,2−プロパンジオールとしては、3−クロロ−1,2−プロパンジオールおよび3−ブロモ−1,2−プロパンジオールが挙げられる。
【0045】
一実施形態において、銅およびヨウ素試薬の存在下で、3,4−ジハロチオフェン、例えば3,4−ジブロモチオフェンと、アルコキシドとを接触させる工程を含む誘導体化3,4−アルキレンジオキシチオフェンの調製方法が提供される。一実施形態において、3,4−ジアルコキシチオフェンは3,4−ジメトキシチオフェンである。例示的なアルコキシドとしては、限定されないが、ナトリウムまたはカリウムメトキシドが挙げられる。銅およびヨウ素試薬は、合成反応を促進し得るいずれの化合物でもあり得る。例示的な実施形態において、試薬は酸化銅(II)およびヨウ化カリウムである(両方とも反応が作用するために存在する必要がある)。一実施形態において、接触工程は溶媒の存在下で行われる。例示的な溶媒としては、例えばアルカノールが挙げられる。例示的なアルカノールとしては、例えばメタノールが挙げられる。一態様において、この方法は還流下で行われる。一実施形態において、この反応は、窒素、アルゴンまたはそれらの組み合わせの不活性雰囲気下で行われる。
【0046】
従って、酸の存在下で3,4−アルキレンジオキシチオフェンとハロ−1,2−アルカンジオールとを接触させ、式II:
【0047】
【化11】

【0048】
(式中、Xはハロゲンであり、nは1〜4である)の化合物を形成する工程と、その後、式IIの化合物と、無機水酸化物、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ土類金属カルボン酸塩、カルボン酸アンモニウムもしくはカルボン酸アルキルアンモニウム、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類金属アルコキシド、アンモニウムアルコキシドもしくはアルキルアンモニウムアルコキシドとを接触させ、式I:
【0049】
【化12】

【0050】
の化合物を形成する工程とを含む誘導体化3,4−アルキレンジオキシチオフェン化合物の調製方法が提供される。一態様において、誘導体化3,4−アルキレンジオキシチオフェンは、銅およびヨウ素試薬の存在下で、3,4−ジハロチオフェンとアルコキシドとを接触させることによって調製される。
【0051】
一実施形態において、酸の存在下で3,4−ジアルコキシチオフェンと3−ハロ−1,2−プロパンジオールとを接触させ、式IV:
【0052】
【化13】

【0053】
(式中、Xはハロゲンである)の化合物を形成する工程と、その後、式IVの化合物と、無機水酸化物、水酸化アンモニウムもしくは水酸化アルキルアンモニウム、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ土類金属カルボン酸塩、カルボン酸アンモニウムもしくはカルボン酸アルキルアンモニウム、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類金属アルコキシド、アンモニウムアルコキシドもしくはアルキルアンモニウムアルコキシドとを接触させ、EDOT−CH2OHを形成する工程とを含むEDOT−CH2OHの調製方法が提供される。一実施形態において、3,4−ジアルコキシチオフェンは、銅およびヨウ素含有試薬の存在下で、3,4−ジハロチオフェンとアルコキシドとを接触させることによって調製される。
【0054】
式IV:
【0055】
【化14】

【0056】
(式中、Xはハロゲンである)の化合物も提供される。
【0057】
上記方法によって調製された式I、II、III、IV、VおよびVIの化合物も提供される。
【0058】
本発明の代表的な合成スキームを以下にスキームIとして提供する。スキームIは、EDOT−CH2OH((2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ダイオキシン−2−イル)−メタノール)の例示的な調製方法を論証する。当業者はこれらのプロセス工程の変形の使用法を既知である。この代表的なスキームにおいて、酸化銅(II)およびヨウ化カリウムの存在下でのアルコキシド塩基による3,4−ジハロチオフェンの処理によって、相当する3,4−アルキレンジオキシチオフェンが提供される。パラ−トルエンスルホン酸等のような酸の存在下で、3,4−ジアルコキシチオフェンと3−ハロ−1,2−プロパンジオールとの反応によって、ハロメチル誘導体化EDOTが生じる。その後のハロ誘導体と、例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、水酸化アンモニウムもしくは水酸化アルキルアンモニウム、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ土類金属カルボン酸塩、カルボン酸アンモニウムもしくはカルボン酸アルキルアンモニウム、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類金属アルコキシドまたはアンモニウムアルコキシドもしくはアルキルアンモニウムアルコキシドの反応によって、ハロ−EDOTはヒドロキシ−EDOTへと変換される。
【0059】
スキーム1:((2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ダイオキシン−2−イル)−メタノール)の調製
【0060】
【化15】

【0061】
式IおよびIIを有する化合物と同様の様式で、式VおよびVIを有する化合物をそれぞれ調製することができる。式Iまたは式Vを有する化合物は集合的に、「誘導体化3,4−アルキレンジオキシチオフェン化合物」と呼ばれる。
【0062】
また本明細書に記載の方法によって製造された誘導体化3,4−アルキレンジオキシチオフェン化合物を含む組成物も提供される。これらの組成物は、限定されないが、溶液、乳濁液、コロイドおよび分散体を含むいずれかの形態であり得る。一態様において、誘導体化3,4−アルキレンジオキシチオフェン化合物は、本明細書に記載の合成スキームを使用して調製される。
【0063】
またEDOT−CH2OHのような誘導体化3,4−アルキレンジオキシチオフェン化合物を含むデバイスも提供される。一実施形態において、本明細書に記載の方法によって製造された少なくとも1つモノマーを含む少なくとも1つのポリマーを含む少なくとも一層を有するデバイスが提供される。一実施形態において、デバイスは、少なくとも1つ分散液および任意にプロセス助剤、電荷輸送材料または電荷ブロック材料をさらに含むだろう。デバイスは、例えば、電気エネルギーを放射線に変換するため、電子プロセスによって信号を検出するため、または放射線を電気エネルギーに変換するためであり得る。一態様において、デバイスは、1つまたは複数の有機半導体層を含む1つまたは複数の電子部品を含む。いくつかの例示的な実施形態において、デバイスは、記憶装置デバイスのためのコーティング材料、帯電防止フィルム、バイオセンサー、エレクトロクロミックデバイス、固体電解質コンデンサー、エネルギー貯蔵デバイス、例えば充電式バッテリーおよび電磁ブロック適用またはそれらの組み合わせをさらに含む。
【0064】
米国特許公報(特許文献3)および同時係属の米国特許公報(特許文献4)に記載されるように、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/フッ酸ポリマー(「PEDOT/FAP」)は導電性ポリマー(ECP)であり、そして水およびフッ酸ポリマー中での3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)の重合によって製造される。上記特許のそれぞれは、本明細書において全体として援用される。フッ酸ポリマーは、フッ素化され、酸基を有するいずれかのポリマーであり得る。例示的な酸基としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、スルホンイミド基、リン酸基、ホスホン酸基またはそれらの組み合わせが挙げられる。フッ酸ポリマーは可溶性であり得、または水性媒体中でコロイドとして存在し得る。水性媒体とは、少なくとも40%の水を有する液体の混合物を指す。
【0065】
PEDOT/FAPの導電性ポリマー(ECP)は、有機電子デバイスにおけるバッファー層または正孔注入層としての使用を含む多数の実用性を有する。有機発光ダイオードにおけるPEDOT/FAPの使用は、デバイスの寿命および効率の改善を提供する。本発明の方法によって調製されるようなEDOT−CH2OHをEDOTの代わりに使用して、PEDOT/FAPを製造することができる。バッファー層または正孔注入層という用語は、アノードからの正孔注入および層を通しての正孔輸送を促進するようにアノード上にコーティングされる材料を指す。
【0066】
従って、一実施形態において、水性FAP溶液または分散体中でEDOT−CH2OHまたは本明細書に記載のもう1つの誘導体化3,4−アルキレンジオキシチオフェン化合物を重合させる工程を含む導電性ポリマーの製造方法が提供される。本発明の一態様において、導電性ポリマーは、EDOT−CH2OHと少なくとも1つのコモノマーとのコポリマーを含み得る。コポリマーは、例えば、ブロックコポリマー、グラジエントコポリマーまたはランダムコポリマーであり得る。コモノマーの例としては、限定されないが、ピロール、アニリン、チオフェン、置換ピロール、置換アニリン、置換チオフェンまたはそれらの組み合わせのようないずれかの酸化重合モノマーが挙げられる。
【0067】
多くの態様および実施形態が上記されているが、これらは単に例示的なものであり、限定するものではない。本明細書を読んだ後、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく他の態様および実施形態が可能であることを認識する。
【0068】
いずれの1つまたは複数の実施形態の他の特徴および利益は、以下の詳細な説明から、そして特許請求の範囲から明白である。詳細な説明では、最初に用語の定義および説明が記載され、続いて実例となる電子デバイス、そして最後に実施例が記載される。
【0069】
(1.用語の定義および説明)
以下に実施形態の詳細を記載する前に、いくつかの用語を定義または説明する。
【0070】
本明細書で使用される場合、用語「を含む(comprises)」「を含んでなっている(comprising)」「を含む(includes)」「を含んでいる(including)」「を有する(has)」「を有している(having)」またはそれらのいずれかの他の変形は、排他的でない包含に及ぶように意図される。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるわけではなく、明白に記載されない他の要素または固有のかかるプロセス、方法、物品または装置を含んでもよい。さらに、明白に逆であることが定義されなければ、「または」は包含的論理和を指し、そして排他論理和を指さない。例えば、条件AまたはBは次のいずれかによって満たされる:Aは真(または存在する)であり、そしてBは偽(または存在しない)である。Aは偽(または存在しない)であり、そしてBは真(または存在する)である。ならびにAおよびBは真(または存在する)である。
【0071】
また本発明の要素および構成を記載するために、「a」または「an」の使用も利用される。これは単に便宜上のためだけであり、本発明の一般的な意味を与えるためである。この記載は1つまたは少なくとも1つを含むものとして読解されるべきであり、そして他に意味があることが明白でない限り、単数は複数も含む。
【0072】
用語「ハロゲン」または「ハロ」は、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素を指す。
【0073】
用語「有機電子デバイス」は、1つまたは複数の半導体層または材料を含むデバイスを意味するように意図される。有機電子デバイスとしては、限定されないが、(1)電気エネルギーを放射線に変換するデバイス(例えば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、ダイオードレーザーまたは照明パネル)、(2)電子プロセスによって信号を検出するデバイス(例えば、光検出器、光伝導セル、光抵抗器、光スイッチ、光トランジスター、光電管、赤外線(「IR」)検出器またはバイオセンサー)、(3)放射線を電気エネルギーに変換するデバイス(例えば、光電池デバイスまたは太陽光電池)、および(4)1つまたは複数の有機半導体層を含む1つまたは複数の電子部品を含むデバイス(例えば、トランジスタまたはダイオード)が挙げられる。
【0074】
「デバイス」という用語は、記憶デバイスのためのコーティング材料、帯電防止フィルム、バイオセンサー、エレクトロクロミックデバイス、固体電解質コンデンサー、エネルギー貯蔵デバイス、例えば充電式バッテリーおよび電磁ブロック適用も含む。
【0075】
用語「層」は用語「フィルム」と交換可能に使用され、そして所望の領域を被覆するコーティングを指す。この領域は、全デバイスまたは実際の視覚ディスプレイのような特定の機能領域と同じぐらい大きくてもよく、または単一サブピクセルと同じぐらい小さくてもよい。蒸着および液体付着を含むいずれかの従来の付着技術によってフィルムを形成することができる。液体付着技術としては、限定されないが、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、ディップコーティング、スロット−ダイコーティング、スプレーコーティングおよび連続ノズルコーティングのような連続付着技術ならびにインクジェット印刷、グラビア印刷およびスクリーン印刷のような不連続付着技術が挙げられる。
【0076】
層または材料を指す場合、用語「活性」は、電子または電子放射性特性を示す層または材料を意味するように意図される。放射線を受けた時に活性層材料は放射線を放出するか、または電子正孔対の濃度の変化を示し得る。
【0077】
「アラルカン」は、アリール置換基を有するアルカンからなる部分、またはアリール環に縮合したシクロアルカンを指す。これは、約6個〜約20個の炭素原子(およびその中の炭素原子の範囲および具体的な数の全ての組み合わせおよび部分的組み合わせ)を有し、約6個〜約10個の炭素原子が好ましい。非限定的な例としては、例えば、トルエン、エチルベンゼン、メシチレン、テトラリン、クメン、シメン、メチルナフタレンおよびジフェニルメタンが挙げられる。
【0078】
用語「コロイド」または「コロイド状」は連続液体媒体中に懸濁される微粒子を指し、前記粒子はナノメートルスケール粒度を有する。用語「コロイド形成」は、液体媒体中に分散時に微粒子を形成する物質を指し、すなわち、「コロイド形成」材料は液体媒体中で可溶性でない。
【0079】
「アルキル」は、約1個〜約20個の炭素原子(およびその中の炭素原子の範囲および具体的な数の全ての組み合わせおよび部分的組み合わせ)を有する、任意に置換された飽和直鎖、分枝鎖または環式炭化水素基を指す。アルキル基としては、限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチルおよび2,3−ジメチルブチルが挙げられる。
【0080】
「アルコキシド」はアルキル−O−アニオンを指す。ここでアルキルは前記で定義された通りである。アルコキシドは、一般的に、等価電荷基準で、Na+、K+、Li+、Mg++、Ca++、アンモニウム、アルキルアンモニウム等のようなカチオン対イオンと会合する。例示的なアルコキシドとしては、例えば、メトキシド、エトキシド、n−プロポキシド、i−プロポキシド、n−ブトキシドおよび七酸化物が挙げられる。
【0081】
「アルカノール」は、アルコキシドのプロトン化によって提供されるもののようなアルキルアルコールを指す。ここでアルキルは前記で定義された通りである。
【0082】
「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード部分を指す。
【0083】
本明細書で使用される場合、用語「導電性ポリマー」は、カーボンブラックまたは導電性金属粒子の添加なしに本質的に電気伝導が可能であるいずれかのポリマーまたはオリゴマーを指す。用語「ポリマー」はホモポリマーおよびコポリマーを包含する。用語「電気伝導」は導電性および半導電性を含む。一実施形態において、ドープされた導電性ポリマーから製造されたフィルムは、少なくとも10-7S/cmの導電率を有する。
【0084】
特記されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的な用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験において使用することが可能であるが、適切な方法および材料を以下に記載する。
【0085】
本明細書に記載されない範囲まで、特定の材料、プロセス実施および回路に関する多くの詳細は従来通りであり、そして有機発光ダイオードディスプレイ、光検出器、光電池および半導体部材の分野における教本および他の情報源に見出され得る。
【0086】
(2.実例となる電子デバイス)
有機電子デバイス構造の1つの具体例を図1に示す。デバイス100はアノード層110とカソード層160と、そしてそれらの間の光活性層130とを有する。導電性ポリマー、例えば、本発明のポリ(EDOT−CH2OH)/FAPから誘導される正孔注入層を含む層120はアノードに隣接する。任意に、正孔輸送層(図1に示されない)が正孔注入層120と光活性層130との間に挿入される。電子輸送材料を含む電子輸送層140はカソードに隣接する。任意に、デバイスはカソードの次にさらに電子注入層150を使用してもよい。
【0087】
デバイス100は基材105を含み得る。基材105は剛性でも屈曲性でもよく、例えば、ガラス、セラミック、金属、プラスチックであってよい。電圧が印加される時、放射される光は基材105を通して可視である。アノード層110は基材105上に付着されてもよい。
【0088】
本明細書で使用される場合、電荷注入という用語は、アノードからの正孔注入またはカソードからの電子注入を促進する材料を指す。
【0089】
本明細書で使用される場合、「光活性」は、適用された電圧によって活性化された時に光を放出する(例えば、発光ダイオードまたは発光電気化学セル)か、または適用されたバイアス電圧の有無にかかわらず、エネルギーを放出し、信号を発生するように応答する(例えば、光検出器)材料を指す。光活性層の例は放射体層である。
【0090】
本明細書で使用される場合、用語「電荷輸送」は、層、材料、部材または構造を指す場合、相対効率および小さい電荷喪失を伴って、かかる層、材料、部材または構造の厚さを通して、かかる電荷の移動を促進する、かかる層、材料、部材または構造を意味するように意図され、そして正孔輸送または電子輸送材料として機能し得る材料を含むように十分広範囲であるように意味される。用語「電子輸送」または「正孔輸送」は、層、材料、部材または構造を指す場合、かかる層または材料を通してもう1つの層、材料、部材または構造への負電荷または正電荷のそれぞれの移動を促進する、かかる層、材料、部材または構造を意味する。
【0091】
用語「電荷ブロック」は、層、材料、部材または構造を指す場合、もう1つの層、材料、部材または構造に電荷が移動する可能性を低下させる、かかる層、材料、部材または構造を意味するように意図される。用語「電子ブロック」は、層、材料、部材または構造を指す場合、もう1つの層、材料、部材または構造に電子が移動する可能性を低下させる、かかる層、材料、部材または構造を意味するように意図される。
【0092】
デバイス100の適用次第で、光活性層130は、印加電圧によって活性化される発光層(例えば、発光ダイオードまたは発光電気化学的電池において)、放射エネルギーに応答し、そして印加されたバイアス電圧の有無にかかわらず信号を発生する材料の層(例えば、光検出器において)であり得る。光検出器の例としては、光伝導セル、光抵抗器、光スイッチ、光トランジスターおよび光電管、および光電池が挙げられ、これらの用語は、(非特許文献3)に記載される。
【0093】
特定の実施形態において、電荷輸送層、例えば、電子輸送層140は、限定されないが、金属キレート化オキシノイド化合物、例えばビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−フェニル−フェノラト)アルミニウム(III)(BAlQ)、テトラ(8−ヒドロキシキノラト)ジルコニウム(ZrQ)およびトリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3);アゾール化合物、例えば2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)および1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンズイミダゾール)ベンゼン(TPBI);キノキサリン誘導体、例えば2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリン;フェナントロリン誘導体、例えば9,10−ジフェニルフェナントロリン(DPA)および2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA);ならびにいずれかの1つまたは複数のそれらの組み合わせを含む。任意の電子注入層150は無機であってもよく、そしてBaO、LiF、Li2O等を含む。
【0094】
特定の実施形態において、光活性層130は、少なくとも1つのトリス(N−アリール−ベンズイミダゾール)ベンゼン化合物と混合された光活性材料を含む。
【0095】
デバイス中の他の層は、かかる層において有用であることが既知であるいずれかの材料によって製造可能である。アノード110は、正電荷キャリア注入に特に有効である電極である。それは、例えば、金属、混合金属、合金、金属酸化物または混合金属酸化物を含有する材料から製造可能であるか、またはそれは導電性ポリマーおよびそれらの混合物であり得る。適切な金属としては、第11族金属、第4族、第5族および第6族金属ならびに第8族、第10族遷移金属が挙げられる。アノードが光を伝送する場合、インジウム−スズ酸化物のような第12族、第13族および第14族金属の混合金属酸化物が一般的に使用される。アノード110は有機材料、例えばポリアニリンも含んでよく、(非特許文献4)に記載される。発生した光が観測されるように、アノードおよびカソードの少なくとも一方は少なくとも部分的に透明でなければならない。
【0096】
層を通してもう1つの電子デバイスの層へと正電荷の移動を促進する層である任意の正孔輸送層は、いずれかの数の材料を含み得る。他の成功輸送材料の例は、例えば、Y.ワン(Y.Wang)によって(非特許文献5)にまとめられている。正孔輸送分子およびポリマーの両方が使用されてよい。一般的に使用される正孔輸送分子としては、限定されないが:N,N’ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、1,1ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N’ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD)、テトラキス(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA)、a−フェニル4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS)、p(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH)、トリフェニルアミン(TPA)、ビス[4(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP)、1フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP)、1,2トランス−ビス(9H−カルバゾル−9−イル)シクロブタン(DCZB)、N,N,N’,N’テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB)、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン(α−NPB)および銅フタロシアニンのようなポルフィリン化合物が挙げられる。一般的に使用される正孔輸送ポリマーとしては、限定されないが、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリジオキシチオフェン、ポリピロールおよびポリアニリンが挙げられる。上記のような正孔輸送分子をポリスチレンおよびポリカーボネートのようなポリマーへとドーピングすることによって正孔輸送ポリマーを得ることも可能である。
【0097】
もう1つの実施形態において、HTMはアリールアミンと共役モノマーのコポリマーを含む。もう1つの実施形態において、HTMポリマーまたはコポリマーは、その後の層付着の溶媒中で不溶性にさせるため、架橋性セグメントを含む。上記のような正孔輸送分子をポリスチレンおよびポリカーボネートのようなポリマーへとドーピングすることによって正孔輸送ポリマーを得ることも可能である。
【0098】
いずれの有機エレクトロルミネセンス(「EL」)材料も層130において光活性材料として使用可能である。かかる材料としては、限定されないが、小有機蛍光化合物、蛍光性およびリン光性金属錯体、共役ポリマーおよびそれらの混合物が挙げられる。蛍光化合物の例としては、限定されないが、ピレン、ペリレン、ルブレン、クマリンそれらの誘導体およびそれらの混合物が挙げられる。金属錯体の例としては、限定されないが、金属キレート化オキシノイド化合物、例えばトリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3);シクロメタル化イリジウムおよび白金エレクトロルミネセンス化合物およびそれらの混合物が挙げられる。共役ポリマーの例としては、限定されないが、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリ(スピロビフルオレン)、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、それらのコポリマーおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0099】
デバイスの一実施形態において、光活性材料は有機金属錯体である。一実施形態において、光活性材料はイリジウムまたは白金のシクロメタル化錯体である。フェニルピリジン、フェニルキノリンまたはフェニルピリミジン配位子を有するイリジウムの錯体は、エレクトロルミネセンス化合物として、ペトロフ(Petrov)ら、(特許文献5)に開示されている。他の有機金属錯体は、例えば、米国特許公報(特許文献6)、(特許文献7)、(特許文献8)および(特許文献9)に記載されている。イリジウムの金属錯体でドープされたポリビニルカルバゾール(PVK)の活性層を有するエレクトロルミネセンスデバイスは、ボローズ(Burrows)およびトンプソン(Thompson)によって(特許文献10)および(特許文献11)に記載されている。電荷保有ホスト材料およびリン光性白金錯体を含むエレクトロルミネセンス放射層は、トンプソン(Thompson)らによって米国特許公報(特許文献12)、(非特許文献6)および(非特許文献7)に記載されている。同様の四座白金錯体も使用可能である。これらのエレクトロルミネッセンス錯体を単独で、または上記のような電荷保有ホストへとドープすることができる。一実施形態において、化合物は、他の蛍光またはリン光材料と混合された電荷保有ホストである。
【0100】
電子輸送層140において使用可能な電子輸送材料の例としては、少なくとも1つのトリス(N−アリール−ベンズイミダゾール)ベンゼン化合物が挙げられる。これらの層は任意に、ポリフルオレンまたはポリチオフェンのようなポリマーを含有し得る。層140のための他の適切な材料としては、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(AlQ3)のような金属キレート化オキノイド化合物;ならびに2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)および1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンズイミダゾール)ベンゼン(TPBI)のようなアゾール化合物;2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリンのようなキノキサリン誘導体;4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DPA)および2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA)のようなフェナントロリン;およびそれらの混合物が挙げられる。任意の電子注入層150は無機であってもよく、そしてBaO、LiF、Li2O等を含む。
【0101】
カソード層160は、電子または負電荷キャリアを注入するために特に有効な電極である。カソードは、アノードよりも低い仕事関数を有するいずれかの金属または非金属であり得る。カソードの材料は、第1族のアルカリ金属(例えば、Li、Cs)、第2族(アルカリ土類)金属、希土類元素およびランタニドを含む第12族金属、ならびにアクチニドが挙げられる。アルミニウム、インジウム、カルシウム、バリウム、サマリウムおよびマグネシウム、ならびに組み合わせのような材料を使用することができる。動作電圧を低下させるために、有機層とカソード層との間にLi含有有機金属化合物、LiFおよびLi2Oが付着されてもよい。
【0102】
デバイス100中への水および酸素のような望ましくない成分の侵入を防止するため、カプセル化層170を層160上に付着させてよい。かかる成分は有機成分に対して悪影響を有し得る。一実施形態において、カプセル化層170はバリア層またはフィルムである。
【0103】
有機電子デバイスに他の層を有することは既知である。例えば、層の正電荷輸送および/またはバンドギャップ整合を促進するために、あるいは保護層として機能するため、アノード110と正孔注入層120との間に層(図示せず)が存在し得る。当該分野等において既知の層が使用され得る。加えて、いずれかの上記の層は2層以上の層から構成され得る。あるいは、電荷キャリア輸送効率を増加させるために、アノード層110、正孔注入層120、電子輸送層140および任意の電子注入層150およびカソード層160のいくつかまたは全てが表面処理されてもよい。各構成層の材料の選択は、好ましくは、高いデバイス効率を有するデバイス提供の目的と、デバイス操作寿命とを釣り合わせることによって決定される。
【0104】
適切な基材上で個々の層を連続付着させることを含む様々な技術によって、デバイスを調製することができる。ガラス、金属およびポリマーフィルムのような基材を使用することができる。熱蒸発、化学的蒸着等のような従来の蒸着技術を使用することができる。あるいは、適切な溶媒を使用する液体付着によって有機層を適用することができる。液体は、溶液、分散液または乳濁液の形態であり得る。典型的な液体付着技術としては、限定されないが、連続付着技術、例えば、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティングおよび連続ノズルコーティング;ならびに不連続付着技術、例えば、インクジェット印刷、グラビア印刷およびスクリーン印刷、いずれかの従来のコーティングまたは印刷技術、例えば、限定されないが、スピンコーティング、浸漬コーティング、ロール−トウ−ロール技術、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等が挙げられる。
【0105】
一実施形態において、様々な層は、以下の厚さ範囲を有する:アノード110、500〜5000A、一実施形態において1000〜2000A;正孔注入層120、50〜2000A、一実施形態において200〜1000A;光活性層130、10〜2000A、一実施形態において100〜1000A;層140および150、50〜2000A、一実施形態において100〜1000A;カソード160、200〜10000A、一実施形態において300〜5000A。デバイスの電子正孔組換え領域、従ってデバイスの発光スペクトルの位置は、各層の相対的な厚さに影響を受け得る。従って、電子輸送層の厚さは、電子正孔組換え領域が発光層にあるように選択されなければならない。層の厚さの所望の比率は、使用される材料の正確な本質に依存する。
【0106】
本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することが可能であるが、適切な方法および材料を以下に記載する。本明細書において言及された全ての出版物、特許出願、特許および他の参照文献は、全体として援用される。
【実施例】
【0107】
実施例Aは、比較の目的のため、従来技術のEDOT−CH2OHの合成方法を提供する。実施例1〜13は本発明の代表的な方法を提供する。
【0108】
(実施例A)
出版物(非特許文献8)から、3,4−エチレンジオキシチオフェンメタノールの合成を適応させた。
【0109】
(1)チオジグリコール酸ジエチルの合成)
還流冷却器および平衡添加ロートを備えた2つ口丸底フラスコ中、100g(0.667モル)のチオジグリコール酸を500mL還流エタノールに溶解した。平衡添加ロートに40mLの濃硫酸を充填した。酸を滴下し、そして反応物を一晩還流させた。反応物を室温まで冷却する時、それを注意深く600mLの水中へ注ぎ入れた。エーテル洗浄液が所望の生成物を含有しなくなるまで、生成物をジエチルエーテルで抽出した。有機抽出物を3回、飽和重炭酸ナトリウム溶液で洗浄した。硫酸マグネシウムによる乾燥および減圧下での溶媒除去において、無色油状物が単離された(131.3g、収率95%)。1H/13C NMRおよびGC−MSによって構造および純度を確認した。
【0110】
(2)3,4−ジヒドロキシチオフェン−2,5−ジカルボン酸ジエチルの合成)
還流冷却器を備えた2Lの2つ口フラスコ中、175g(2.57モル)のナトリウムエトキシドを1200mLの無水エタノールに溶解した。反応物を0℃まで冷却し、そしてエタノール中106g(0.514モル)ジエチルチオグリコレートおよび188g(1.28モル)のシュウ酸ジエチルの溶液を滴下した。添加終了後、冷却浴を取り外し、そして反応物を一晩還流まで加熱した。次いで反応物を室温まで冷却し、そして濾過した。得られた黄色固体をエタノールで洗浄し、そして乾燥させた。固体を2部に分け、そしてそれぞれを水を含む大型エルレンマイヤーフラスコに添加し、撹拌によって懸濁液を作成した。HClによる酸性化によって白色固体が得られた。固体を濾過し、そして真空下で乾燥させ、80g(収率60%)の生成物を白色粉末として得た。母液の冷却およびその後の濾過によって材料をさらに単離することができる。1H/13C NMRおよびLC−MSによって構造および純度を確認した。
【0111】
(3)2,3−ジヒドロ−2−(ヒドロキシメチル)チエノ[3,4−b][1,4]ダイオキシン−5,7−ジカルボン酸ジエチルの合成)
7.7mL(0.0902モル)のエピブロモヒドリンおよび1.92g(0.0139モル)の炭酸カリウムを100mLの水に溶解し、そして350mLエタノール中16.11g(0.0694モル)の3,4−ジヒドロキシチオフェン−2.5−ジカルボン酸ジエチルの還流混合物に添加した。1時間の還流まで加熱後、追加の5.3mL(0.0624モル)のエピブロモヒドリンを添加し、そして反応物を一晩還流まで加熱した。室温まで冷却する時、反応物をエバポレーションによって濃縮し、次いで500mlの水に注ぎ入れた。混合物を酸性化し、次いで、有機洗浄液が生成物が存在することを示さなくなるまで塩化メチレンで抽出した。有機フラクションを飽和塩水で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、黄色固体を得た。ヘキサン中60%酢酸エチルを使用してカラムクロマトグラフィを行い、生成物およびプロピレン異性体の70:30混合物を白色固体として収率55%で得た。1H/13C NMRおよびLC−MSによって構造および純度を確認した。
【0112】
(4)ジエチル−2−(ヒドロキシメチル)−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ダイオキシン−5,7−ジカルボン酸の合成)
還流冷却器を備えた500mLの丸底フラスコ中、250mLの水中で11.3g(0.0357モル)の2,3−ジヒドロ−2−(ヒドロキシメチル)チエノ[3,4−b][1,4]ダイオキシン−5,7−ジカルボン酸ジエチルを12.0g(0.214モル)の水酸化カリウムと組み合わせた。反応混合物を還流させ、そして反応の進行をTLCによって追跡した。加水分解終了後反応物を約100mLに濃縮した。混合物を0℃まで冷却し、次いで濃HClによって酸性化した。一晩室温まで加温後、白色固体を濾過し、そして少量の水で洗浄した。高真空下での乾燥によって、白色の固体として8.5g(90%)の生成物を得た。1H/13C NMRおよびLC−MSによって構造および純度を確認した。
【0113】
(5)ジエチル−2−(ヒドロキシメチル)−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ダイオキシン−2−イルメタノールの合成)
100mLの丸底フラスコ中、14.0g(0.053モル)の微細粉末状2,3−ジヒドロ−2−(ヒドロキシメチル)チエノ[3,4−b]ダイオキシン−5.7−ジカルボン酸、0.42gの酸化銅(II)および25mLキノリンを組み合わせた。還流冷却器を取り付け、そして反応物フラスコを窒素パージングした。混合物を225℃まで加熱し、そして反応をTLCによって追跡した。全ての出発材料が消費されたら、反応物を室温まで冷却し、エーテルで希釈し、そして濾過した。エーテルを減圧下で除去した。ヘキサン中30%酢酸エチルを使用して、カラムクロマトグラフィによって粗製生成物混合物を精製した。溶媒の除去時に、4.4g(収率48%)の淡黄色油状物が単離された。1H/13C NMRおよびGC−MSによって構造および純度を確認した。
【0114】
(実施例1:EDOT−MEOHへの変換のためのクロロメチル−3,4−エチレンジオキシチオフェンの合成)
(1)改善されたEDOT−MeOH合成のための3,4−ジブロモチオフェンからの3,4−ジメトキシチオフェン合成)
窒素ブランケット下で還流冷却器を備えた1Lの3つ口フラスコ中、氷浴冷却された無水メタノール(600mL)にナトリウム金属(25g、1.05モル)の小さい立方体をゆっくり添加することによって、ナトリウムメトキシドを調製した。ナトリウムの添加の間、それを灯油で覆い、水分を排除した。ナトリウムの完全な溶解後、50g(0.207モル)の3,4−ジブロモチオフェン、16.5g(0.207モル)の酸化銅(II)および1.37g(0.00827モル)のヨウ化カリウムを反応混合物に添加した。反応物を3日間還流した。次いで、反応物を室温まで冷却し、そして焼結ガラスフリットロートを通して濾過した。得られた固体をエーテルですすぎ、そして濾液を500mLの水に注ぎ入れた。次いで溶液をエーテルで抽出した。有機フラクションを組み合わせ、そして硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去によって淡黄色油状物が得られた。真空蒸留によって26.2gの透明無色油状物が得られた。1Hおよび13C NMRならびにGC−MSによって構造および純度を確認した。収率は理論値の88%であった。
【0115】
(2)2−(クロロメチル)−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ダイオキシンの合成)
窒素雰囲気下、還流冷却器を備えた500mLの丸底フラスコ中、20.0g(0.139モル)のジメトキシチオフェン、17.8g(0.161モル)の3−クロロ−1,2−プロパンジオールおよび5gのp−トルエンスルホン酸を350mLのトルエンに溶解した。次いで反応物を一晩約90℃まで加熱した。この時点で、TLCは出発材料の消費を示した。冷却後、反応混合物を約100mLまで濃縮し、そして飽和炭酸カリウム溶液に注ぎ入れた。混合物をDCMで抽出し、そして組み合わせた抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去によって暗色油状物が得られ、3:1ヘキサン/DCMを使用してカラムクロマトグラフィによって精製した。溶媒除去によって白色固体として生成物が得られた。1H/13C NMRおよびLC−MSによって構造および純度を確認した。
【0116】
(実施例2:3,4−ジメトキシチオフェンから2−(ブロモメチル)−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ダイオキシンへの変換)
窒素下で、還流冷却器および撹拌バーを備えた500mLの丸底フラスコ中、20.0g(0.139モル)のジメトキシチオフェン、25.0g(0.161モル)の3−ブロモ−1,2−プロパンジオールおよび5gのp−トルエンスルホン酸を350mLのトルエンと組み合わせた。反応混合物を30分間窒素でパージングし、次いで一晩100℃まで加熱した。室温まで冷却する時、反応混合物を約100mLまで濃縮し、そして飽和炭酸カリウム溶液に注ぎ入れた。得られた溶液をDCMで抽出した。組み合わせた抽出物を塩水で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去によって黒色油状物が得られた。3:1ヘキサン/DCMを使用してカラムクロマトグラフィによって粗製材料を精製した。溶媒除去によって白色固体が得られ、これを一晩高真空下で乾燥し、18.6gの材料が得られた。1H/13C NMRおよびGC−MSによって構造および純度を確認した。収率は理論値の57%であった。
【0117】
(実施例3:(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ダイオキシン−2−イル)メチルアセトートから(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ダイオキシン−3−イル)メタノールの合成)
(1)(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ダイオキシン−2−イル)メチルアセテート(EDOT−MeOAc)の合成)
50mLのシュレンク管中、1.00gの2−(ブロモメチル)−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ダイオキシンを0.5g(0.0051モル)の酢酸カリウムおよび25mLのDMSOと組み合わせた。環を密封し、そして100℃で1時間撹拌した。この時点で、TLCは出発材料の完全消費を示した。反応物を水に注ぎ入れ、そしてエーテルで抽出した。減圧下でエーテルを除去した後、ヘキサン中90%塩化メチレンを使用してカラムクロマトグラフィを行い、90%収率で淡黄色油状物を単離した。1H/13C NMRおよびGC−MSによって構造および純度を確認した。
【0118】
(2)(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ダイオキシン−3−イル)メタノール(EDOT−MeOH)の合成)
還流冷却器を備えた25mLの丸底フラスコ中、0.64g(0.0030モル)の(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ダイオキシン−2−イル)酢酸メチルを水中50%NaOHと組み合わせた。反応物を一晩還流し、次いで室温まで冷却した。次いで、それを100mLの水で充填されたエルレンマイヤーフラスコに注ぎ入れた。混合物を酸性化し、次いでDCMで抽出した。溶媒を減圧下で除去し、そしてカラムクロマトグラフィ(7:3ヘキサン/酢酸エチル)を行い、0.46g(90%)の生成物を得た。LC−MSおよび1H/13C NMRによって構造を確認した。
【0119】
(実施例4:EDOT−メチル−ベンゾエートからのEDOT−MeOHの合成)
(1)(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ダイオキシン−3−イル)メチルベンゾエートの合成)
100mLの丸底フラスコ中、9.00g(0.0382モル)の2−(ブロモメチル)−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ダイオキシン、6.39g(0.0459モル)の安息香酸アンモニウムおよび55gのDMSOを組み合わせた。還流冷却器を取り付け、そして反応物を一晩100℃まで加熱した。室温まで冷却後、反応混合物を水に注ぎ入れ、そして生成物を塩化メチレンで抽出した。有機フラクションを組み合わせ、そして溶媒を減圧下で除去した。カラムクロマトグラフィによる精製によって、7.5g(収率71%)の白色固体が得られた。1H/13C NMRおよびLC−MSによって構造を確認した。
【0120】
(2)(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ダイオキシン−3−イル)メタノールの合成)
100mLの丸底フラスコ中、7.5g(0.027モル)の(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ダイオキシン−3−イル)メチルベンゾエートを最小量の温エタノールに溶解し、そして50mLの水中の4.58g(0.081モル)の水酸化カリウムの還流溶液に滴下した。一晩加熱後、反応物を室温まで冷却し、そして濃塩酸の滴下によってpH7まで酸性化した。反応混合物を塩化メチレンで抽出した。有機フラクションを組み合わせ、そして溶媒を減圧下で除去した。カラムクロマトグラフィによる精製によって、3.95g(収率85%)の(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ダイオキシン−3−イル)メタノールが得られた。1H/13C NMRおよびLC−MSによって構造を確認した。
【0121】
(実施例5:クロロメチル−EDOTからのEDOT−MeOHの合成(カルボン酸塩からエステルを形成、その後、水酸化カリウムによるエステル結合の開裂))
クロロメチル−EDOTを、極性/非プロトン性溶媒、例えばDMF、DMAcまたはDMSO中で100〜140℃まで加熱されたカルボン酸塩、例えば酢酸塩と反応させる。次いで、典型的な塩基鹸化、例えばMeOH/H2O中1%KOHを使用して、またはMeOHの存在下で酸もしくは塩基を使用するエステル交換反応によって、得られたエステルは容易に開裂する。
【0122】
(実施例6:クロロメチル−EDOTからのEDOT−MeOHの合成(アルコキシドを使用、その後、形成されたエーテル結合の開裂))
ナトリウムまたは水素化ナトリウムを使用して、以下のアルコール:
【0123】
【化16】

【0124】
のいずれかのアルコキシドを形成する。次いでクロロメチル−EDOTをアルコキシドと反応させ、エーテルが生じる。次いで、十分に立証された適切な試薬を使用することによって、エーテル官能性は容易に開裂し、EDOT−MeOHが生じる。
【0125】
(実施例7:ブロモメチル−EDOTからのEDOT−MeOHの合成(KOHと反応させるヨードメチル−EDOTのその位置での発生))
丸底フラスコ中、1gのブロモメチル−EDOTをアセトンに溶解する。次いで、ヨウ化ナトリウムの触媒量を添加する。次いで少量のDI水と一緒に、固体KOHを添加する。得られる沈殿物はKClであり、所望の生成物が生じる。
【0126】
(実施例8:ブロモメチル−EDOTからのEDOT−MeOHの合成(KOHとの直接反応))
ブロモメチル−EDOTを極性有機物に溶解し、次いでOH−による求核攻撃を受けさせる。単離には水による抽出および他の標準的実行が含まれる。
【0127】
(実施例9:ブロモメチル−EDOTからのEDOT−MeOHの合成(触媒量の適切なクラウンエーテル、例えば18−クラウン−6による、アルカリ金属水酸化物、例えばKOHとの直接反応))
ブロモメチル−EDOTは、必要とされる「予めの誘導体化(pre−derivitzation)」がなくても求核攻撃を受ける。この化合物を極性有機物に溶解し、次いで、触媒量の適切なクラウンエーテルの存在下でOH−による求核攻撃を受ける。クラウンエーテルは、例えばNaOHを使用する場合、15−クラウン−5が使用される。単離には水による抽出および他の標準的実行が含まれる。
【0128】
(実施例10:EDOT−MeOHとEDOTとの間の溶解性の比較)
約23℃の室温での水溶性に関して、アルドリッチ アドバンス サイエンス カンパニー(Aldrich Advance Science Company)(米国、ミルウォーキー(Milwaukee,USA))から購入したEDOT(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ダイオキシン)モノマーおよび実施例5で製造されたEDOT−MeOHを試験した。EDOTは0.4%(w/w)未満の溶解性を有するが、EDOT−MeOHは1.4%(w/w)の溶解性を有する。このような改善は、実施例11で例示される濃度における重合を促進するために十分である。
【0129】
(実施例11:ナフィオン(Nafion)(登録商標)、ペルフルオロエチレン−エーテル−スルホン酸の存在下でのEDOT−MeOH重合の説明およびOLEDの導電性の使用)
(1)ナフィオン(Nafion)(登録商標)、ポリ(テトラフルオロエチレン)/ペルフルオロエーテルスルホン酸 の存在下でのEDOT−MeOHの重合)
温度が約270℃であったことを除き、米国特許公報(特許文献13)、実施例1、パート2の手順と同様の手順を使用して、EW1050を有する25%(w/w)のナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体を製造した。次いで、これを水で希釈し、重合のために13.2%(w/w)分散体を形成した。本実施例で使用されるEDOT−MeOHは、実施例5の手順に従って製造された。
【0130】
500mLの反応釜中、57.4gの13.2%固形分水性ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体(7.23ミリモルSO3H基)、99.0gの水および130μLの37%HCl(1.62ミリモル)を添加した。二段プロペラブレードを備えたオーバーヘッドスターラーを使用して200RPMで混合物を撹拌しながら、水中0.65%の硫酸鉄(III)貯蔵液を作成し、そして2.11gの溶液を釜に添加した。この混合物に、10gの水に予め溶解された10.8g(3.318ミリモル)の過硫酸ナトリウムおよび35gの水に予め溶解された0.548g(3.184ミリモル)のEDOT−MeOHを添加した。この添加は、Na228/水に関して0.71mL/時間およびEDOT−MeOH水に関して2.5mL/時間の添加速度を使用して、連続的に200RPMで撹拌しながら、別々の注射器から開始した。添加は、テフロン(Teflon)(登録商標)管に連結された注射器に各溶液を配置することによって達成された。注入が段階的であるように、注入がチューブの末端から落下する個々の液滴を含むように、テフロン(Teflon)(登録商標)管の末端を反応混合物の上に配置した。添加が終了したら、15gのレバチット(Lewatit)(登録商標)S100(ペンシルバニア州、ピッツバーグのバイエル社(Bayer Company,Pittsburgh,PA)からの架橋ポリスチレンのスルホン酸ナトリウムの商品名)および15gのレバチット(Lewatit)(登録商標)MP62 WS(ペンシルバニア州、ピッツバーグのバイエル(Bayer,Pittsburgh,PA)からの架橋ポリスチレン第三級/第四級アミンの遊離塩基/塩化物の商品名)の添加による停止の前に、反応物混合をさらに14.5時間続行した。使用前、2つの樹脂を最初に水中で色がなくなるまでそれぞれ脱イオン水で洗浄した。120RPMで撹拌しながら、樹脂処理を11.5時間続行した。次いで得られたスラリーをワットマン(Whatman)#4濾紙を通して吸引濾過した。ポリ(EDOT−MeOH)/ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体は青色であり、これは導電性を有することの典型的な色である。分散は安定であり、そして4.2のpHを有し、また固体パーセンテージは3.92%(w/w)であると測定された。分散体からキャスティングされ、そして空気中10分間130℃で焼成された薄フィルムの伝導率は、室温で1.3×10-2S/cmであると測定される。
【0131】
(2)ポリマー緑色放射体を使用する有機発光ダイオード(OLED)の製造のための正孔注入層(HIL)としてのポリ(EDOT−MeOH)/ナフィオン(Nafion)(登録商標)の使用およびダイオード性能)
実施例11の項目1で製造されたポリ(EDOT−MeOH)/ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体を、ガラス/ITOバックライト基材(30mm×30mm)上でスピンコーティングした。100nm〜150nmのITO厚さを有する各ITO基材は、発光のため5mm×5mmピクセルの3ピースおよび2mm×2mmピクセルの1ピースからなる。ITO基材上にスピンコーティングされたら、フィルムを最初に空気中10分間130度で焼成し、次いで10分間200℃で焼成した。焼成後の層の厚さは185nmであった。空気中、(p−キシレン中1%w/v溶液から)ダウ ケミカルズ(Dow Chemicals)からのルミネーション グリーン(Lumination Green)1303エレクトロルミネセンスポリマーの厚さ約74nmのフィルムによって、ポリ(EDOT−MeOH)/ナフィオン(Nafion)(登録商標)層をトップコーティングした。乾燥ボックス中、30分間130℃でエレクトロルミネッセンスフィルムの焼成後、次いで、3nmのBaおよび250nmのAlからなるカソードを4×10-6Torr未満の圧力で熱蒸発させた。UV硬化性エポキシ樹脂を使用して、ガラススライドをデバイスの裏面に結合することによって、デバイスのカプセル化は達成された。
【0132】
表1は、発光デバイス効率200、500、1,000および2,000ニット(cd/m2)を示す。このデータは、低い輝度で非常に迅速に効率が上昇し、そして200cd/m2から2,000cd/m2までほぼ同一であることを示す。
【0133】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】例示的な有機電子デバイスの図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

の化合物の調製方法であって、式II:
【化2】

(式中、nは1〜4であり、Xはハロゲンである)の化合物と;無機水酸化物、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ土類金属カルボン酸塩、カルボン酸アンモニウム、カルボン酸アルキルアンモニウム、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類金属アルコキシド、アンモニウム金属アルコキシドまたはアルキルアンモニウム金属アルコキシドとを接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
無機水酸化物がアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、水酸化アンモニウムまたは水酸化アルキルアンモニウムであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Xがクロロまたはブロモであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
無機水酸化物がKOH、NaOH、LiOH、Mg(OH)2、Ca(OH)2、NH4OH、NR4OHまたはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記接触工程が触媒の存在下で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
触媒がクラウンエーテル、クリプタンド、ヨウ化ナトリウムまたはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
カルボン酸塩が酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸アンモニウムまたはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
式IV
【化3】

(式中、Xはハロゲンである)の化合物と無機水酸化物とを接触させて、式III:
【化4】

の化合物を提供する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
酸の存在下で3,4−アルキレンジオキシチオフェンと3−ハロ−1,2−プロパンジオールとを接触させて、式IVの化合物を提供することによって、式IVの化合物が製造されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
式II:
【化5】

(式中、Xはハロゲンであり、nは1〜4である)の化合物の調製方法であって、酸の存在下で3,4−ジアルコキシチオフェンとハロ−1,2−アルカンジオールとを接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
nが1であり、かつハロ−1,2−アルカンジオールが3−ハロ−1,2−プロパンジオールであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
酸がパラ−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、硫酸またはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記接触工程がアルゴンまたは窒素の不活性雰囲気下で行われることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記接触工程が溶媒の存在下で行われることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
溶媒がアラルカンであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
式Iの化合物の調製方法であって、
i)酸の存在下で3,4−ジアルコキシチオフェンとハロ−1,2−アルカンジオールとを接触させて、式II:
【化6】

(式中、Xはハロゲンであり、nは1〜4である)の化合物を形成する工程と、
ii)式IIの化合物と、無機水酸化物、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属カルボン酸、カルボン酸アンモニウムもしくはカルボン酸アルキルアンモニウム、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属アルコキシド、アンモニウムアルコキシドもしくはアルキルアンモニウムアルコキシドとを接触させて、式I:
【化7】

(式中、nは1〜4である)の化合物を形成する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記3,4−ジアルコキシチオフェンが、銅およびヨウ素含有試薬の存在下で3,4−ジハロチオフェンとアルコキシドとを接触させることによって調製されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
接触工程がアルゴンまたは窒素の不活性雰囲気下で行われることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
3,4−ジハロチオフェンとアルコキシドとの接触工程が溶媒の存在下で行われることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
請求項16に記載の方法によって製造されたことを特徴とする化合物。
【請求項21】
請求項20に記載の化合物およびフルオロポリマー酸を用いて製造された導電性ポリマーを含有するポリマー層を含むことを特徴とする電子デバイス。
【請求項22】
デバイスが光センサー、光スイッチ、光トランジスター、光導電体、バイオセンサー、光電管、IR検出器、光起電力デバイス、光起電セル、光抵抗器、太陽電池、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、ダイオード、エレクトロクロミックディスプレイ、電磁遮蔽デバイス、記憶装置デバイス、トランジスター、固体電解質コンデンサー、充電式バッテリー、プリント回路基板のスルーホールめっきおよびダイオードレーザーであることを特徴とする請求項21に記載の電子デバイス。
【請求項23】
【化8】

(式中、Xはハロゲンである)であることを特徴とする請求項20に記載の化合物。

【図1】
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【公表番号】特表2008−526753(P2008−526753A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549572(P2007−549572)
【出願日】平成17年12月23日(2005.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/047188
【国際公開番号】WO2006/073968
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】