説明

誘導加熱式加熱装置

【課題】効率的に加熱できる誘導加熱式加熱装置を提供する。
【解決手段】誘導加熱式加熱装置1は加熱ロール3及び誘導加熱用コイル5を備える。加熱ロール3は肉厚部11及び、肉厚部11により規定されて誘導加熱用コイル5が収容される空間部13を有する。加熱ロール3は熱放射面43、過熱水蒸気生成室27及び過熱水蒸気取出口45を有する。過熱水蒸気生成室27は肉厚部11に形成されており、ジュール熱によって過熱水蒸気が生成される。過熱水蒸気取出口45は熱放射面43に形成された開口であって、過熱水蒸気生成室27の過熱水蒸気が取り出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は誘導加熱方式によって生成された過熱水蒸気を利用して加熱する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱は誘導加熱用コイルに交流電流を流して交番磁束を発生させ、これにより導電性部材に渦電流を流してジュール熱を発生させ、ジュール熱によって加熱をする。誘導加熱はクリーンかつ安全なので注目されている。誘導加熱を用いた装置としては、例えば、内部を中空としたロールの内部に誘導コイルを設け、誘導コイルに交流電流を流して交番磁束を発生させ、これによりロールの周壁に渦電流を流してジュール熱を発生させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、誘導加熱を用いた装置として、磁束が通過することによりジュール熱が発生する加熱器と、加熱器を挟む脚鉄心と、脚鉄心に巻かれたコイル部と、を備える電磁誘導加熱蒸気発生器がある (例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2686533号明細書
【特許文献2】特開平6−208887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
過熱水蒸気は飽和水蒸気(約100℃)よりも高温(例えば400〜500℃)の水蒸気であり、加熱又は乾燥に利用することができる。ガス又は重油を燃焼させて過熱水蒸気を生成する場合、以下の問題がある。(1)水蒸気搬送工程等で生じる熱損失が大きいのでエネルギー効率が低い。(2)排気ガスが生じるので作業環境が悪化する。(3)換気装置及びボイラ等の付帯設備が必要となる。(4)加熱又は乾燥の温度を正確に制御できないので加熱又は乾燥の温度を均一にすることが困難である。
【0006】
ヒートポンプを用いて過熱水蒸気を生成する場合、上記問題を解決することが可能であるが、ヒートポンプの性質上、温度が比較的高い過熱水蒸気の生成には用いることができない。
【0007】
誘導加熱式加熱装置を用いて過熱水蒸気を発生させれば、ガス、重油又はヒートポンプを用いて過熱水蒸気を発生させる場合の問題点を解決することが可能であり、その場合においても効率的な加熱が望まれる。
【0008】
本発明は効率的に加熱することができる誘導加熱式加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の一の局面に係る誘導加熱式加熱装置は、交流電流が流れることによって交番磁束を発生する誘導加熱用導電部材と、肉厚部及び、前記肉厚部により規定されて前記誘導加熱用導電部材が収容される空間部を有しており、前記誘導加熱用導電部材により発生した交番磁束によって渦電流が流れてジュール熱を発生する加熱部材と、を備え、前記加熱部材は、熱放射面と、前記肉厚部に形成されており、ジュール熱によって過熱水蒸気が生成される過熱水蒸気生成室と、前記熱放射面に形成された開口であって、前記過熱水蒸気生成室の過熱水蒸気が取り出される過熱水蒸気取出口と、を有する。
【0010】
本発明によれば、熱放射面から放射される熱と、熱放射面に形成された過熱水蒸気取出口から取り出される過熱水蒸気とによって、加熱部材が加熱対象物を加熱するので、効率的に加熱することができる。
【0011】
上記構成において、前記加熱部材を回転させるモータと、前記過熱水蒸気生成室での過熱水蒸気の生成において、前記モータにより前記加熱部材を回転させる制御をする加熱部材回転制御部と、を備えることができる。
【0012】
この構成によれば、加熱部材を回転させながら過熱水蒸気生成室で過熱水蒸気を生成するので、過熱水蒸気生成室で生成される過熱水蒸気の温度の均一化を図れる。
【0013】
上記構成において、前記加熱部材は前記誘導加熱用導電部材に対して独立に回転することができる。
【0014】
この構成によれば加熱部材を回転させるトルクを小さくできる。
【0015】
上記構成において、前記過熱水蒸気生成室での過熱水蒸気の生成において、前記過熱水蒸気生成室へ飽和水蒸気を供給する飽和水蒸気供給部を備えることができる。
【0016】
この構成によれば、過熱水蒸気生成室へ供給されるのは常温の水ではなく飽和水蒸気なので、過熱水蒸気生成室において過熱水蒸気を迅速に生成することができる。
【0017】
上記構成において、回転軸と、前記回転軸を回転自在に支持する支持体とを含み、前記回転軸と前記支持体を貫通する貫通路を有する回転継手を備えており、前記加熱部材は、前記モータによる回転で軸となる軸部を含み、前記軸部は、前記貫通路と前記過熱水蒸気生成室とをつなぐ軸部通路を有しており、前記飽和水蒸気供給部は、前記貫通路及び前記軸部通路を通して飽和水蒸気を前記過熱水蒸気生成室へ供給することができる。
【0018】
この構成によれば、回転継手に設けられた貫通路と加熱部材の軸部に設けられた軸部通路とを通して、飽和水蒸気を過熱水蒸気生成室へ供給している。貫通路及び軸部通路は回転移動しないので、回転する加熱部材の過熱水蒸気生成室に飽和水蒸気を供給するのを簡単な構成で実現することができる。
【0019】
上記構成において、前記熱放射面に接触して前記加熱部材の回転により駆動される回転ベルトを備えることができる。
【0020】
この構成によれば、加熱部材を回転ベルトの加熱と回転ベルトの駆動とを兼用することができる。
【0021】
上記構成において、前記過熱水蒸気取出口は複数設けられており、複数の前記過熱水蒸気取出口は前記熱放射面に均一に配置されているようにすることができる。
【0022】
この構成によれば、熱放射面から均一に過熱水蒸気を取り出すことができる。
【0023】
上記構成において、前記加熱部材に配置された温度センサと、前記温度センサからの出力に基づいて前記誘導加熱用導電部材に流れる交流電流を調整する加熱水蒸気温度制御部と、を備えることができる。
【0024】
この構成によれば、加熱部材に配置された温度センサからの出力に基づいて誘導加熱用導電部材に流れる交流電流を調整しているので、過熱水蒸気生成室で生成される過熱水蒸気の温度をフィードバック制御することができ、これにより過熱水蒸気を所望の温度に制御することができる。
【0025】
上記構成において、前記過熱水蒸気生成室での過熱水蒸気の生成において、前記過熱水蒸気生成室へ飽和水蒸気を供給する飽和水蒸気供給部を備えることができる。
【0026】
この構成によれば、過熱水蒸気生成室へ供給されるのは常温の水ではなく飽和水蒸気なので、過熱水蒸気生成室において過熱水蒸気を効率的に生成することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る誘導加熱式加熱装置によれば効率的に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る誘導加熱式加熱装置の全体構成を示す図である。
【図2】図1に示す加熱ロール及び誘導加熱用コイルにより構成される構造体をA−A線に沿って切断した断面図である。
【図3】本実施形態に係る誘導加熱式加熱装置の第1の応用例を示す図である。
【図4】本実施形態に係る誘導加熱式加熱装置の第2の応用例を示す図である。
【図5】本実施形態に係る誘導加熱式加熱装置の第3の応用例を示す図である。
【図6】本実施形態に係る誘導加熱式加熱装置の第4の応用例を示す図である。
【図7】本実施形態の変形例に係る加熱ブロックと誘導加熱用コイルを含む構造体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係る誘導加熱式加熱装置1の全体構成を示す図であり、誘導加熱式加熱装置1を構成する各要素は、構造(断面構造)又は機能ブロックで示されている。図2は加熱ロール3及び誘導加熱用コイル5により構成される構造体をA−A線に沿って切断した断面図である。誘導加熱式加熱装置1は、加熱ロール3、加熱ロール3にジュール熱を発生させる交番磁束を形成する誘導加熱用コイル5、加熱ロール3を回転させるモータ7及び飽和水蒸気を生成する電気式ボイラ9を備える。
【0030】
加熱ロール3はロールシェルと称されており、加熱部材の一例である。加熱ロール3は導電性の材料(カーボン又は導電性の金属)を含み、誘導加熱用コイル5により発生した交番磁束の作用により渦電流が流れてジュール熱を発生する。加熱ロール3は厚肉円筒形状を有しており、肉厚部11及び肉厚部11により規定される空間部13によって構成される。加熱ロール3の両端面にはそれぞれ、軸部15,17が形成されている。軸部15,17はそれぞれ、ベース19に固定された軸受ブラケット21,23に回転自在に支持されている。軸部15はモータ7の回転軸に固定されている。これにより加熱ロール3をモータ7によって回転させることができる。
【0031】
空間部13には誘導加熱用導電部材の一例である誘導加熱用コイル5が収容される。肉厚部11には過熱水蒸気生成室27及び肉厚部通路29が形成されている。肉厚部11はジャケット構造を有しており、ジャケット室と称される過熱水蒸気生成室27が設けられている。過熱水蒸気生成室27は加熱ロール3の軸心と同じ方向に延びる円筒形状を有する。過熱水蒸気生成室27には電気式ボイラ9で生成された飽和水蒸気が供給され、過熱水蒸気生成室27内でジュール熱によって飽和水蒸気を加熱することにより過熱水蒸気が生成される。
【0032】
肉厚部通路29は軸部17側に形成されており、過熱水蒸気生成室27と軸部17に形成された軸部通路31とをつないでいる。軸部17は回転継手33の回転軸35に接続されている。回転軸35は回転継手33の支持体37によって回転自在に支持されている。支持体37及び回転軸35には貫通路39が形成されている。貫通路39の一方は軸部17の軸部通路31につながっており、貫通路39の他方は飽和水蒸気の供給管41とつながっている。電気式ボイラ9で生成された飽和水蒸気は、供給管41、貫通路39、軸部通路31、肉厚部通路29を流れて過熱水蒸気生成室27へ送られる。
【0033】
加熱ロール3の肉厚部11の表面は、熱が放射される熱放射面43である。熱放射面43の全面に過熱水蒸気取出口45となる多数の開口が均一に配置されている。過熱水蒸気取出口45は過熱水蒸気生成室27と連通しており、過熱水蒸気生成室27で生成された過熱水蒸気は、過熱水蒸気取出口45から外部へ流れ出す。なお、過熱水蒸気取出口45の大きさと数は、必要とする過熱水蒸気の量に合わせて設定する。
【0034】
加熱ロール3の空間部13には誘導加熱用コイル5及び鉄心47が配置されている。誘導加熱用コイル5及び鉄心47は共に円筒形状を有しており、加熱ロール3の軸心と同じ方向に延びている。誘導加熱用コイル5は交流電流が流れることによって交番磁束を発生する。鉄心47は交番磁束を強くするために誘導加熱用コイル5内に挿入される。鉄心47の表面部は絶縁処理した薄いケイソ鋼層を積層した構造を有する。これにより、鉄心47に渦電流が流れて鉄心47が誘導加熱されるのを防止している。
【0035】
誘導加熱用コイル5及び鉄心47は加熱ロール3と分離されており、加熱ロール3は誘導加熱用コイル5及び鉄心47に対して独立に回転する。鉄心47にはホルダ49の一端が挿入されて、ホルダ49により支持されている。ホルダ49は軸部15に形成された通路及びモータ7の回転軸を通り、ホルダ49の他端がベース19に固定されている。
【0036】
ホルダ49にはホルダ通路51が形成されており、誘導加熱用コイル5に接続された導線53はホルダ通路51を通り、外部へ導かれる。
【0037】
誘導加熱式加熱装置1は過熱水蒸気温度制御部55、加熱ロール回転制御部57、過熱水蒸気生成量制御部59及びコントローラ61を備える。これらはCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等よって構成される。過熱水蒸気温度制御部55、加熱ロール回転制御部57及び過熱水蒸気生成量制御部59は、それぞれ交流電源と接続されている。
【0038】
加熱ロール3には温度センサ(図示せず)が配置されている。温度センサは加熱ロール3の肉厚部11に埋設してもよいし、過熱水蒸気生成室27に配置してもよい。軸部15には温度センサから出力された信号が送られる回転トランスのロータトランス(図示せず)が取り付けられている。ホルダ49には回転トランスのステータトランス(図示せず)が取り付けられている。ホルダ通路51にはステータトランスからの信号を伝送する配線(図示せず)が形成されており、その配線は過熱水蒸気温度制御部55に接続されている。これにより、温度センサから出力された信号は過熱水蒸気温度制御部55へ送られる。
【0039】
過熱水蒸気温度制御部55は誘導加熱用コイル5の導線53と接続されている。過熱水蒸気温度制御部55は上記温度センサからの出力に基づいて誘導加熱用コイル5に流れる交流電流を調整する。
【0040】
加熱ロール回転制御部57は加熱部材回転制御部の一例である。過熱水蒸気生成室27内での過熱水蒸気の生成において、モータ7の回転数を制御することにより、加熱ロール3の回転数を制御する。
【0041】
過熱水蒸気生成量制御部59は電気式ボイラ9から過熱水蒸気生成室27へ供給する飽和水蒸気量を調整することにより、過熱水蒸気の生成量を制御する。過熱水蒸気生成量制御部59及び電気式ボイラ9によって、過熱水蒸気生成室27へ飽和水蒸気を供給する飽和水蒸気供給部が構成される。
【0042】
コントローラ61は操作画面及び入力キーボード等を備えており、操作者はコントローラ61を用いて過熱水蒸気温度制御部55、加熱ロール回転制御部57及び過熱水蒸気生成量制御部59に制御指令をする。
【0043】
誘導加熱式加熱装置1の動作について簡単に説明する。モータ7により加熱ロール3を回転させた状態で、誘導加熱用コイル5に交流電流を流すことにより、交番磁束を発生させる。交番磁束により加熱ロール3に渦電流が流れてジュール熱が発生する。電気式ボイラ9から飽和水蒸気を連続して過熱水蒸気生成室27へ供給しながら、過熱水蒸気生成室27において飽和水蒸気を、加熱ロール3で発生したジュール熱で加熱することにより過熱水蒸気が生成される。生成された過熱水蒸気は過熱水蒸気取出口45から連続的に取り出される。加熱対象物は熱放射面43から放射される熱及び、過熱水蒸気取出口45から連続的に取り出される過熱水蒸気によって加熱される。
【0044】
本実施形態に係る誘導加熱式加熱装置1の主な効果を説明する。
【0045】
(1)誘導加熱式加熱装置1は、加熱ロール3にジュール熱を発生させ、加熱ロール3の肉厚部11に形成された過熱水蒸気生成室27で過熱水蒸気を生成している。加熱ロール3は熱放射面43から放射される熱と、熱放射面43に形成された過熱水蒸気取出口45から取り出される過熱水蒸気とによって、加熱対象物を加熱している。したがって、熱放射面43から放射される熱だけで加熱対象物を加熱する場合に比べて効率的に加熱することができる。
【0046】
加熱に必要な熱量を確保するために、熱放射面43を大きくしたり、加熱ロール3を複数設けたりする必要が生じることがある。本実施形態によれば、熱放射面43から放射される熱と過熱水蒸気取出口45から取り出される過熱水蒸気とによって、加熱ロール3が加熱対象物を加熱するので、熱放射面43の面積を大きくしなくても、また加熱ロール3が少ない個数でも、加熱に必要な熱量を確保することができる。
【0047】
過熱水蒸気を加熱ロール3と別の場所で生成して加熱ロール3に運搬するのではなく、過熱水蒸気を加熱ロール3の肉厚部11に形成された過熱水蒸気生成室27で生成するので、過熱水蒸気の潜熱と顕熱の熱エネルギーを有効に利用して加熱対象物を加熱することができる。
【0048】
過熱水蒸気は電気を用いて誘導加熱により生成するので、ガス又は重油で過熱水蒸気を生成する場合に比べて、コンパクトで簡素な構成にすることができる。また排気ガスが発生しないので、クリーンな作業環境を確保することができる。
【0049】
誘導加熱用コイル5に流す交流電流の制御によって、過熱水蒸気の温度を制御できるので、過熱水蒸気の温度制御が容易となり、100℃〜500℃及び500℃以上の過熱水蒸気を生成することができる。
【0050】
以上を総合すると、本実施形態に係る誘導加熱式加熱装置1によれば、その製造工程を簡素化でき、構成を簡素化でき(設備を簡素化)、エネルギー効率を向上でき、メンテナンスを省力化できる。このような効果を有する本実施形態に係る誘導加熱式加熱装置1は、例えば、製紙、不織布及び繊維の乾燥、各種材料の予熱、菓子及びパン等の食品の両面加熱又は焼き付けに適用可能となる。
【0051】
(2)本実施形態によれば、加熱ロール3をモータ7によって回転させながら、過熱水蒸気生成室27で過熱水蒸気を生成するので、過熱水蒸気生成室27で生成される過熱水蒸気の温度の均一化を図れる。
【0052】
(3)加熱ロール3の回転時、誘導加熱用コイル5及び鉄心47は静止しており、すなわち、加熱ロール3は誘導加熱用コイル5及び鉄心47に対して独立して回転するので、加熱ロール3を回転させるトルクを小さくできる。
【0053】
(4)過熱水蒸気生成量制御部59及び電気式ボイラ9によって飽和水蒸気供給部が構成される。飽和水蒸気供給部により、過熱水蒸気生成室27へ飽和水蒸気を供給している。過熱水蒸気生成室27へ供給されるのは常温の水ではなく飽和水蒸気なので、過熱水蒸気生成室27において過熱水蒸気を迅速に生成することができる。
【0054】
(5)回転継手33に設けられた貫通路39と加熱ロール3の軸部17に設けられた軸部通路31とを通して、飽和水蒸気を過熱水蒸気生成室27へ供給している。貫通路39及び軸部通路31は回転移動しないので、回転する加熱ロール3の過熱水蒸気生成室27に飽和水蒸気を供給するのを簡単な構成で実現することができる。
【0055】
(6)過熱水蒸気取出口45は熱放射面43に複数設けられており、複数の過熱水蒸気取出口45が熱放射面43に均一に配置されている。したがって、熱放射面43から均一に過熱水蒸気を取り出すことができる。
【0056】
(7)過熱水蒸気温度制御部55によって、加熱ロール3に配置された温度センサ(図示せず)からの出力に基づいて誘導加熱用コイル5に流れる交流電流を調整しているので、過熱水蒸気生成室27で生成される過熱水蒸気の温度をフィードバック制御することができ、これにより過熱水蒸気を所望の温度に制御することができる。温度センサを加熱ロール3の肉厚部11に埋設した場合は、加熱ロール3の温度制御をすることにより、過熱水蒸気生成室27で生成される過熱水蒸気の温度を所望の温度に制御する。また、温度センサを過熱水蒸気生成室27に配置した場合は、過熱水蒸気生成室27の温度制御をすることにより、過熱水蒸気生成室27で生成される過熱水蒸気の温度を所望の温度に制御する。
【0057】
次に、本実施形態に係る誘導加熱式加熱装置1の第1〜第4の応用例について、図3〜図6を用いて説明する。これらはベルトコンベアに応用したものであり、図1に示す誘導加熱式加熱装置1のうち加熱ロール3を図示している。
【0058】
図3は第1の応用例を示す図である。回転ベルト63には回転ベルト63を駆動する駆動ローラ65が掛け回されている。回転ベルト63の上側のベルト63aと下側のベルト63bとの間に、加熱ロール3が配置されている。加熱ロール3は回転ベルト63に接触してもよいし、非接触でもよい。加熱ロール3は熱放射面43から放射される熱と、過熱水蒸気取出口45から取り出される過熱水蒸気とによって、回転ベルト63の片面を加熱している。これにより、回転ベルト63の乾燥、殺菌及び回転ベルト63で搬送される物の乾燥、殺菌をすることができる。
【0059】
図4は第2の応用例を示す図である。第1の応用例との違いは、加熱ロール3が回転ベルト63を駆動する駆動ローラの機能を有する点である。加熱ロール3は回転ベルト63に掛け回されており、回転ベルト63は熱放射面43に接触して加熱ロール3の回転により駆動される。第2の応用例によれば、加熱ロール3が回転ベルト63の加熱と回転ベルト63の駆動を兼用しているので、回転ベルト63を駆動させる駆動ローラを省くことができる。
【0060】
図5は第3の応用例を示す図である。加熱ロール3が複数、例えば二つの加熱ロール3a,3bが配置されている。加熱ロール3aは回転ベルト63に掛け回されている。加熱ロール3bは加熱ロール3aの近くに位置し、回転ベルト63の上側のベルト63aと下側のベルト63bと間に配置されている。加熱ロール3a,3bは回転ベルト63を駆動する駆動ローラの機能を有している。補助ローラ67a,67b,67c,67d,67e,67fは、回転ベルト63に接触して回転ベルト63を案内する。
【0061】
加熱ロール3a,3bはハウジング69内に配置されている。回転ベルト63は外部からハウジング69内に入り、加熱ロール3a,3bにより加熱されて乾燥、殺菌された後、外部へ送られる。ハウジング69内の過熱水蒸気のうち、液化してハウジング69の底に溜まった水71はドレイン73により外部へ抜かれる。
【0062】
図6は第4の応用例を示す図である。第3の応用例との違いは、加熱ロール3bを回転ベルト63と接触した状態で回転ベルト63の上側のベルト63a上に配置した点及び加熱ロール3bの隣に加熱ロール3cが設けられている点である。加熱ロール3cは加熱ロール3bと同様に、回転ベルト63と接触した状態で回転ベルト63の上側のベルト63a上に配置されている。加熱ロール3aが回転ベルト63の一方の面に接触し、加熱ロール3b,3cが回転ベルト63の他方の面に接触している。したがって、第4の応用例によれば回転ベルト63の両面を直接加熱することができる。
【0063】
次に、本実施形態の変形例を説明する。ここまでは、ジュール熱を発生する加熱部材として、回転する加熱ロール3を説明したが、変形例の加熱部材は回転しない加熱ブロックである。図7は本実施形態の変形例に係る加熱ブロック75と誘導加熱用コイル5を含む構造体の斜視図である。
【0064】
加熱ブロック75は誘導加熱用コイル5により発生した交番磁束によって渦電流が流れてジュール熱を発生する。加熱ブロック75は加熱ロール3と同様に、肉厚部11、空間部13、熱放射面43、過熱水蒸気生成室27及び過熱水蒸気取出口45を有する。図示しない電気式ボイラで生成された飽和水蒸気が、供給管41から過熱水蒸気生成室27に供給される。
【0065】
加熱ブロック75は断面が四角形である。熱放射面43は四角形の平面である。熱放射面43から放射される熱と過熱水蒸気取出口45から取り出される過熱水蒸気とによって熱放射面43の上方を矢印方向に移動する回転ベルト63を加熱する。
【0066】
誘導加熱用コイル5及び鉄心47は断面が四角形である。誘導加熱用コイル5が過熱水蒸気生成室27の底面77と対向する対向面79は、底面77とほぼ同じ面積を有する。これにより、対向面79の面積が底面77の面積より小さい場合に比べて、過熱水蒸気生成室27の底面77でジュール熱をむらなく発生させることができ、過熱水蒸気の温度の均一化を図れる。
【符号の説明】
【0067】
1・・・誘導加熱式加熱装置、3,3a,3b,3c・・・加熱ロール(加熱部材の一例)、5・・・誘導加熱用コイル(誘導加熱用導電部材の一例)、7・・・モータ、9・・・電気式ボイラ(飽和水蒸気供給部の一例を構成する要素)、11・・・肉厚部、13・・・空間部、15,17・・・軸部、19・・・ベース、21,23・・・軸受ブラケット、27・・・過熱水蒸気生成室、29・・・肉厚部通路、31・・・軸部通路、33・・・回転継手、35・・・回転軸、37・・・支持体、39・・・貫通路、41・・・供給管、43・・・熱放射面、45・・・過熱水蒸気取出口、47・・・鉄心、49・・・ホルダ、51・・・ホルダ通路、53・・・導線、57・・・加熱ロール回転制御部(加熱部材回転制御部の一例)、59・・・過熱水蒸気生成量制御部(飽和水蒸気供給部の一例を構成する要素)、63・・・回転ベルト、63a・・・上側のベルト、63b・・・下側のベルト、65・・・駆動ローラ、67a〜67f・・・補助ローラ、69・・・ハウジング、71・・・水、73・・・ドレイン、75・・・加熱ブロック、77・・・過熱水蒸気生成室の底面、79・・・誘導加熱用コイルの対向面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電流が流れることによって交番磁束を発生する誘導加熱用導電部材と、
肉厚部及び、前記肉厚部により規定されて前記誘導加熱用導電部材が収容される空間部を有しており、前記誘導加熱用導電部材により発生した交番磁束によって渦電流が流れてジュール熱を発生する加熱部材と、を備え、
前記加熱部材は、
熱放射面と、
前記肉厚部に形成されており、ジュール熱によって過熱水蒸気が生成される過熱水蒸気生成室と、
前記熱放射面に形成された開口であって、前記過熱水蒸気生成室の過熱水蒸気が取り出される過熱水蒸気取出口と、を有する誘導加熱式加熱装置。
【請求項2】
前記加熱部材を回転させるモータと、
前記過熱水蒸気生成室での過熱水蒸気の生成において、前記モータにより前記加熱部材を回転させる制御をする加熱部材回転制御部と、を備える請求項1に記載の誘導加熱式加熱装置。
【請求項3】
前記加熱部材は前記誘導加熱用導電部材に対して独立に回転する請求項2に記載の誘導加熱式加熱装置。
【請求項4】
前記過熱水蒸気生成室での過熱水蒸気の生成において、前記過熱水蒸気生成室へ飽和水蒸気を供給する飽和水蒸気供給部を備える請求項2又は3に記載の誘導加熱式加熱装置。
【請求項5】
回転軸と、前記回転軸を回転自在に支持する支持体とを含み、前記回転軸と前記支持体を貫通する貫通路を有する回転継手を備えており、
前記加熱部材は、前記モータによる回転で軸となる軸部を含み、
前記軸部は、前記貫通路と前記過熱水蒸気生成室とをつなぐ軸部通路を有しており、
前記飽和水蒸気供給部は、前記貫通路及び前記軸部通路を通して飽和水蒸気を前記過熱水蒸気生成室へ供給する請求項4に記載の誘導加熱式加熱装置。
【請求項6】
前記熱放射面に接触して前記加熱部材の回転により駆動される回転ベルトを備える請求項2〜5のいずれか一項に記載の誘導加熱式加熱装置。
【請求項7】
前記過熱水蒸気取出口は複数設けられており、複数の前記過熱水蒸気取出口は前記熱放射面に均一に配置されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の誘導加熱式加熱装置。
【請求項8】
前記加熱部材に配置された温度センサと、
前記温度センサからの出力に基づいて前記誘導加熱用導電部材に流れる交流電流を調整する加熱水蒸気温度制御部と、を備える請求項1〜7のいずれか一項に記載の誘導加熱式加熱装置。
【請求項9】
前記過熱水蒸気生成室での過熱水蒸気の生成において、前記過熱水蒸気生成室へ飽和水蒸気を供給する飽和水蒸気供給部を備える請求項1に記載の誘導加熱式加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−22829(P2012−22829A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158499(P2010−158499)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】