説明

誘導加熱式液体加熱器

【課題】 本発明の解決課題は、発熱体の表面積を大きくして加熱効率を高めた誘導加熱式液体加熱器を提供することにある。
【解決手段】 本発明の誘導加熱式液体加熱器は、誘導コイルに高周波電流を流すと発熱して液体を加熱できるようにしたものであり、高周波電流を流す誘導コイルの内側に配置される熱伝導性の発熱基体及び発熱コイルを備え、発熱基体は板材を螺旋状に成形したフィンと、フィン間に設けた螺旋状のガイド溝を備え、前記発熱コイルが前記ガイド溝に沿って螺旋状に配置されたものである。前記誘導加熱式液体加熱器において、フィンは、帯状の板材がパイプ状の心材の外周に螺旋状に巻かれて心材に固定されたものとすることができる。前記誘導加熱式液体加熱器において、発熱コイルはフィンの外周部に設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高周波誘導加熱を利用して液体を加熱する誘導加熱式液体加熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体の加熱(加温)には各種加熱器が使用されており、その一つとして高周波誘導加熱を利用するもの(特許文献1、2)が知られている。
【0003】
特許文献1記載の誘導加熱温水器は、誘導加熱を利用するものではあるが、水用の配管とガス用の配管を必要としたガス温水器の施工上の面倒を改善するものであり、誘導加熱による加熱効率の向上を目的とするものではない(段落番号:0003、0004)。
【0004】
特許文献2の誘導加熱温水器は、誘導加熱を利用するものではあるが、従来は抑制の対象とされていたコイル外側の磁束を熱交換の対象として利用するものである(段落番号:0040)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−302755号公報
【特許文献2】特開平8−94176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決課題は、発熱体の表面積を大きくして加熱効率を高めた誘導加熱式液体加熱器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の誘導加熱式液体加熱器は、誘導コイルに高周波電流を流すと発熱して液体を加熱できるようにしたものであり、高周波電流を流す誘導コイルの内側に配置される熱伝導性の発熱基体及び発熱コイルを備え、発熱基体は板材を螺旋状に成形したフィンと、フィン間に設けた螺旋状のガイド溝を備え、前記発熱コイルが前記ガイド溝に沿って螺旋状に配置されたものである。前記誘導加熱式液体加熱器において、フィンは、帯状の板材がパイプ状の心材の外周に螺旋状に巻かれて心材に固定されたものとすることができる。前記誘導加熱式液体加熱器において、発熱コイルはフィンの外周部に設けることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の誘導加熱式液体加熱器は次のような効果がある。
(1)発熱基体に螺旋状のフィンを設けるだけでなく、フィン間の螺旋状のガイド溝に発熱コイルを配置したので、加熱コイルにより誘導加熱されるフィンと発熱コイルの双方からの熱が放熱されるので、誘導加熱式液体加熱器を液体が貯留又は通過する容器内に入れれば、液体との接触面積が広くなり、容器内の液体が加熱され易くなる。
(2)発熱コイルが発熱基体のガイド溝に沿って配置されているので、発熱コイルの配置が安定し型崩れすることがない。
(3)発熱コイルも発熱基体のフィンも螺旋状であるため、小型でも発熱面積を広くとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は本発明の誘導加熱式液体加熱器の斜視図、(b)はその平面図。
【図2】本発明の誘導加熱式液体加熱器の使用の一例を示す断面図。
【図3】本発明の誘導加熱式液体加熱器をケース付きの誘導加熱式液体加熱器とする場合の組み立て説明図。
【図4】ケース付きの誘導加熱式液体加熱器の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
本発明の誘導加熱式液体加熱器の実施形態の一例を、図1〜図4を参照して説明する。図1〜図4に示す誘導加熱式液体加熱器10は発熱基体1と発熱コイル2を備え、発熱基体1はパイプ状の心材3の外周に帯状の金属板材を螺旋状に巻き付け固定して発熱フィン5とし、発熱フィン5の外周部間にガイド溝6を設けてある。発熱コイル2は螺旋状の細長であり、前記ガイド溝6内に配置してある。発熱コイル2は少なくとも両端部を発熱フィン5に固定して不用意にガイド溝6から外れないようにしてある。
【0011】
前記発熱基体1には、例えば、勝川熱工株式会社製のAEROFIN TUBE(エロフィンチューブ)を用いることができる。このAEROFIN TUBEは、金属製パイプ(心材3)の外周に発熱フィン5を螺旋状に密着して巻いたものである。発熱基体1は各種サイズのものを使用することができる。また、心材3の外周に発熱フィン5を備えたものであれば、他社の物でも、新たに製作したものでも使用可能である。心材3の径、長さ、発熱フィン5の幅及び螺旋ピッチ等は用途に合わせて設計することができる。心材3、発熱フィン5にはステンレス、鉄、銅といった各種金属を使用することができる。
【0012】
前記発熱コイル2には、市販の螺旋状のニクロム線を使用することができるが、螺旋状に巻いた電熱線であれば他のコイルも使用でき、独自に製作することもできる。その線径、巻き径等は用途に合わせて設計することができる。ステンレス、金、銀、銅、アルミといった熱伝導率の高い他の材質製とすることもできる。
【0013】
本発明の誘導加熱式液体加熱器10は、その外周に誘導コイルを配置し、この誘導コイルに高周波電流を流すことにより、発熱基体1及び発熱コイル2に磁界が生じ、それらに渦電流が流れて発熱する。この場合、渦電流は表皮効果で表面に近いほど多く流れて発熱量も多くなる。従って、本発明の発熱基体1の場合は、発熱フィン5の外周部(先端側)ほど多く流れるため、発熱コイル2を発熱フィン5の外周部側(図1(b)の箇所)に配置して発熱量が多くなるようにするのがよい。
【0014】
(使用例1)
本発明の誘導加熱式液体加熱器10は、図2に示すように水槽(容器)30内に入れ、誘導加熱式液体加熱器10の外周に誘導コイル31を配置して使用することができる。誘導コイル31は密巻きでも粗巻きでもよい。図2に示す使用例では、水槽30の上周縁に、誘導加熱式液体加熱器10を取り付けた支持体7を載せ、誘導加熱式液体加熱器10を水槽30に支持してある。誘導コイル31はマッチングトランスMTに接続され、そのマッチングトランスMTに高周波発振器RFが接続されている。この場合、高周波発振器RFから誘導コイル31に高周波電流を流すと、誘導加熱式液体加熱器10の発熱基体1及び発熱コイル2に磁界が生じ、それらに渦電流が流れて発熱し、その熱で水槽30内の液体が加熱されて温水になる。この場合、水槽30内の液体を循環させることも、水槽30内を通過させることもできる。高周波発振器RFには、各種のものを使用可能であるが、例えば、富士電機株式会社製のHFR5.0C11K−1(5kW、30kHz)を用いることができる。マッチングトランスMTは場合によっては不要である。
【0015】
(使用例2)
本発明の誘導加熱式液体加熱器10は、図3のようにケース11内に収容し、そのケース11内に液体を流して、ケース11内を通過する液体を加熱してする温水化することもできる。図3に示すケース入りの誘導加熱式液体加熱器10は次のように構成されている。
【0016】
(1)下蓋12、下閉塞蓋13の上方に突出している軸棒14に下スペーサ15を被せて、下閉塞蓋13の外周に下スペーサ15を嵌合してある(図3)。
(2)前記軸棒14の外周に樹脂製の円筒状のケース11を被せてケース11の下端11aを下スペーサ15の上周縁15aに被せてある。ケース11の外周には誘導コイル17が巻かれている。誘導コイル17には高周波特性のよいリッツ線を使用することができる。図3、4に示す例では誘導コイル17を密巻きにしてある。誘導コイル17の両端には電極端子29(図3)を取付けてある。
(3)ケース11内にその上方から誘導加熱式液体加熱器10を入れて、心材3の下端部3aを前記下閉塞蓋13の外周に被せてある。この場合、誘導加熱式液体加熱器10の発熱コイル2の外周面をケース11の内周面に接触させてある。
(4)前記誘導加熱式液体加熱器10の心材3の上端に上閉塞蓋18を被せてある。この場合、心材3内を貫通する軸棒14の上端部を上閉塞蓋18の貫通孔19に差し込んで上方まで突出させてある。
(5)ケース11の上開口部内に上スペーサ20を入れて上閉塞蓋18に被せてある。このとき、軸棒14の上端部を上スペーサ20の上に突出させ、上スペーサ20の上から、ケース11の上方開口部に上蓋21を被せ、その中心孔21aに軸棒14を通して上方に突出させ、軸棒14にナット22を螺合して上蓋21をケース11に固定してある。上蓋21には排出口25(図4)に連通する排出パイプ26が、下蓋12には供給口23に連通する供給パイプ24が取付けられている。
【0017】
図3のように、ケース11内に誘導加熱式液体加熱器10を組み込んだケース付きの誘導加熱式液体加熱器10を使用するには、図示しない高周波発振器から誘導コイル17に高周波電流を供給して、発熱基体1を加熱させる。このとき、下蓋12の供給口23に連通された供給パイプ24からケース11内に液体を送り込み、その液体を発熱フィン5に沿って流して排出口25に連通する排出パイプ26側に向けて進行させると、液体がケース11内を通過する間に発熱フィン5、発熱コイル2に接触して加熱される。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の誘導加熱式液体加熱器10は、床暖房器具や各種工業製品における熱交換器の部品としても使用することができる。また、高周波誘導加熱の原理を利用した熱交換器に限らず、他の熱交換器の部品としても利用することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 発熱基体
2 発熱コイル
3 心材
3a (心材の)下端部
5 発熱フィン
6 ガイド溝
7 支持体
10 誘導加熱式液体加熱器
11 ケース
11a (ケースの)下端
12 下蓋
13 下閉塞蓋
14 軸棒
15 下スペーサ
15a 上周縁
17 誘導コイル
18 上閉塞蓋
19 貫通孔
20 上スペーサ
21 上蓋
21a 中心孔
22 ナット
23 供給口
24 供給パイプ
25 排出口
26 排出パイプ
29 電極端子
30 水槽
31 誘導コイル
MT マッチングトランス
RF 高周波発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導コイルに高周波電流を流すと発熱して液体を加熱できるようにした誘導加熱式液体加熱器において、高周波電流を流す誘導コイルの内側に配置される熱伝導性の発熱基体と発熱コイルを備え、発熱基体は板材を螺旋状に成形したフィンと、フィン間に設けた螺旋状のガイド溝を備え、前記発熱コイルは前記ガイド溝に沿って螺旋状に配置されたことを特徴とする誘導加熱式液体加熱器。
【請求項2】
請求項1記載の誘導加熱式液体加熱器において、フィンは、帯状の板材がパイプ状の心材の外周に螺旋状に巻かれて心材に固定されたものであることを特徴とする誘導加熱式液体加熱器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の誘導加熱式液体加熱器において、発熱コイルがフィンの外周部に巻かれたことを特徴とする誘導加熱式液体加熱器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−58329(P2013−58329A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194887(P2011−194887)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(505009416)日本スーパー工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】