説明

誘導炉用ラミング材

【課題】鋳鋼・鋳鉄溶解用の誘導炉において、初期の焼結運転に際し強度を確保することにより初受湯の際に耐火物挫屈を防止し、使用中の過焼結を抑制して亀裂が発生し難く安定して使用でき、充分な厚みの未焼結層を確保して溶湯漏れの危険性が低く安定して使用できる誘導炉用ラミング材を提供する。
【解決手段】結合剤自体もしくは当該結合剤以外のラミング材成分と当該結合剤との間で600℃から1200℃の温度域で溶融または固溶域を持つ第1の結合剤と、結合剤自体もしくは当該結合剤以外のラミング材成分と当該結合剤との間で1000℃から1500℃の温度域で溶融または固溶域を持つ第2の結合剤をそれぞれ適量添加することにより、800℃焼成後において0.2MPa以上の圧縮強度を確保して初受湯の際の挫屈を抑制し、かつ1200℃以上の温度域での過焼結による亀裂発生を抑制し、更には、充分な厚みの未焼結層を確保することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝型誘導炉や坩堝型誘導炉等に適用可能な誘導炉用ラミング材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の銑鉄や鋳鋼溶解用溝方誘導炉には、主原料としてマグネシア、副原料としてアルミナを使用するマグネシア系ラミング材、主原料としてアルミナ原料、副原料としてマグネシア原料を使用するアルミナ系ラミング材が広く用いられている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
これらのラミング材は、高温環境下においてスピネルを生成する化学反応を起し、その際の活性化状態を利用して焼結現象が進行する。このため、高温に曝される稼動面近傍にて必要な焼結強度が発現する。これを一般には焼結層と称する。また、稼動面近傍以外の領域のラミング材は、焼結に必要な温度に達しないため、未焼結の状態が維持される。これを一般には未焼結層と称する。
【0004】
誘導炉の稼動中、万一焼結層に亀裂が生じた場合でも、焼き固まっていない未焼結層には当該亀裂は進展しない。またその際、当該炉の内容物である溶湯が当該亀裂に進入するが、未焼結層まで溶湯が達した場合、当該溶湯の熱を受けて当該箇所の未焼結層が焼き固まることにより、それ以上の溶湯の差込みを抑制でき、誘導炉からの湯漏れ防止のために非常に効果的である。
【0005】
しかしながら、上述のスピネル生成反応は、一般に1200℃以上の比較的高温環境下において起こる化学反応であるため、上述のラミング材の初受湯前の焼結運転は、1200℃以上の高温とする必要がある。このため、焼結運転末期における初受湯前の時点において充分な焼結強度を確保することは困難であり、施工されたラミング材の焼結運転末期における初受湯の際の溶湯圧力及び衝撃等による挫屈が発生しやすく、このため亀裂発生及び地金差しが頻発していた。
【0006】
また、上述のスピネル生成反応を利用しないラミング材の場合、さらに高温の1300℃以上まで焼結運転を行う必要があるラミング材も存在するが、このようなラミング材の場合、挫屈の頻度が更に高くなっていた。
【0007】
一方、特に溝型誘導炉インダクター部の場合、施工されたラミング材の焼結運転末期時には、施工時に設置された中子の表面温度が箇所により約500℃の温度差を持つ場合もある。これは、中子形状が坩堝型誘導炉に比較して複雑な形状となり、温度均一性の確保が困難であることによる。このため、焼結運転末期において中子の一部が溶け落ちる際には、中子の箇所により温度が800℃から900℃程度にしか昇温していない箇所もあり、その箇所においては、施工されたラミング材の焼結温度に達していない為、焼結強度不足になってしまう。
【0008】
この場合、従来では800℃〜1200℃で強度が発現する低温用結合材として、例えばガラス粉末等を添加することが一般的であるが、低温用結合材の添加量が少ないと低温域での焼結強度が不十分となってしまう。また、添加量が多くなると高温域においてその結合材から生成する液相量が急激に多くなり、高温域での耐溶損性、耐クリープ性が不足してしまう。また、昇温中に過焼結に伴う収縮が起こり、ラミング材の焼結層への亀裂発生の原因となる。すなわち、800℃〜1200℃で強度が発現する低温用結合材のみの添加では、施工されたラミング材の焼結運転末期における充分な強度確保と、定常操業運転時の耐用性を両立させることが困難であった。
【0009】
また、低温における耐火物の初期硬化を充分に行い、かつ高温域における耐火物の割れ、亀裂等を抑制する技術として、低温熱硬化性樹脂及び高温熱硬化性バインダーを添加する技術が知られている。(例えば、特許文献2参照)
【0010】
しかしながら本技術における低温熱硬化性樹脂は、概ね常温から200℃の範囲において耐火物の一次硬化を行うものであり、高温熱硬化性バインダーは、概ね600℃から800℃における強度を担保することにより、耐火物の亀裂や剥離、割れ等を防止するものである。したがって、本技術を誘導炉用ラミング材に応用すると、未焼結層の厚みが不足、もしくは未焼結層が全く無くなるため、万一焼結層に亀裂が生じた場合の溶湯差込み抑制効果が得られないことになってしまう。
【特許文献1】特開2002−265284号公報
【特許文献2】特開2004−337956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、鋳鋼・鋳鉄溶解用の誘導炉において、初期の焼結運転に際し充分な強度を確保することにより初受湯の際に耐火物挫屈を防止し、使用中の過焼結を抑制することにより亀裂が発生し難く安定して使用でき、更には、充分な厚みの未焼結層を確保することにより溶湯漏れの危険性が低く安定して使用できる誘導炉用ラミング材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するために研究と開発を進めた結果、本発明者は、下記本発明に想到した。
【0013】
すなわち、本発明は、第1の結合剤と第2の結合剤とを含むラミング材であって、
前記第1の結合剤が、当該第1の結合剤単独で、または、当該第1の結合剤及び前記第2の結合剤以外のラミング材成分と当該第1の結合剤との間で、600℃未満では溶融または固溶域を持たず、600℃から1200℃の温度域で溶融または固溶域を持つ金属酸化物、金属窒化物、金属窒化物系酸化物、硼化物、及びフッ化物のいずれかに属する化合物のうちの1種の化合物または2種以上の混合物として、0.01質量%から5.0質量%含まれ、
前記第2の結合剤が、当該第2の結合剤単独で、または、当該第2の結合剤及び前記第1の結合剤以外のラミング材成分と当該第2の結合剤との間で、1000℃未満では溶融または固溶域を持たず、100℃から1500℃の温度域で溶融または固溶域を持つ金属酸化物、金属窒化物、金属窒化物系酸化物、硼化物、および金属炭化物のいずれかに属する化合物のうちの1種の化合物または2種以上の混合物として、0.1質量%から10.0質量%含まれ、
800℃焼成後におけるラミング材の圧縮強度が0.2MPa以上であり、1400℃焼成後におけるラミング材の圧縮強度が3.0MPaから30.0MPaであり、かつ30℃から1500℃までの温度域の熱膨張係数がゼロ以上であることを特徴とする誘導炉用ラミング材である。
【0014】
本発明の誘導炉用ラミング材は、第1の結合剤と第2の結合剤との間で、400℃から1200℃の温度域で溶融または固溶域を持ち、第1の結合剤を0.01質量%から3.0質量%含み、第2の結合剤を0.1質量%から7.0質量%含むことが望ましい。
【0015】
更には、第1の結合材として無水硼酸(B)を0.01質量%から1.0質量%、第2の結合材としてシリカ(SiO)を0.1質量%から5.0質量%含むことが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1によれば、鋳鋼・鋳鉄溶解用の誘導炉において、初期の焼結運転に際し充分な強度を確保することにより初受湯の際に耐火物挫屈を防止し、使用中の過焼結を抑制することにより亀裂が発生し難く安定して使用でき、更には、充分な厚みの未焼結層を確保することにより溶湯漏れの危険性が低く安定して使用できる誘導炉用ラミング材を提供することができる。
【0017】
本発明の請求項2によれば、第1の結合剤と第2の結合剤との間で400℃から1200℃の温度域で溶融または固溶域を持つことで、第1の結合剤および第2の結合剤の添加量を低減することが可能となることにより、耐溶損性を向上させることができる。
【0018】
本発明の請求項3によれば、第1の結合材として無水硼酸(B)、第2の結合材としてシリカ(SiO)を適用することで、第1の結合剤と第2の結合剤の添加量をさらに低減することが可能となることにより、耐溶損性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の誘導炉用ラミング材には、主材の他に、第1の結合剤と第2の結合剤とを含む。以下、これらについて説明する。
【0020】
(第1の結合剤)
第1の結合剤を、当該第1の結合剤単独で、または、当該第1の結合剤及び前記第2の結合剤以外のラミング材成分と当該第1の結合剤との間で、600℃未満では溶融または固溶域を持たず、600℃から1200℃の温度域で溶融または固溶域を持つ金属酸化物、金属窒化物、金属窒化物系酸化物、硼化物、及びフッ化物のいずれかに属する化合物のうちの1種の化合物または2種以上の混合物として、0.01質量%以上添加することにより、600℃以上の温度域において融液を介した液相焼結または固溶体中の結晶構造欠陥を介した拡散速度増加が起こり、その結果、800℃における焼結強度を0.2MPa以上に向上させることができる。第1の結合剤の添加量が多すぎる場合、融液を介した液相焼結または固溶体中の結晶構造欠陥を介した拡散速度増加が過剰となり、1200℃以上の高温時において収縮が起こるが、第1の結合剤の添加量を5.0質量%以下に抑えることにより、これを抑制することができる。
【0021】
第1の結合剤として、氷晶石(NaAlF)、無水硼酸(B)、ソーダ(NaO)、ガラス粉末等が使用可能である。
【0022】
(第2の結合剤)
しかしながら、第1の結合剤のみを1200℃以上の高温時において収縮が起こらない程度に少量添加しても、1400℃における焼成強度(圧縮強度)を充分に向上させることは困難である。そこで、第2の結合剤を、当該第2の結合剤単独で、または、当該第2の結合剤及び前記第1の結合剤以外のラミング材成分と当該第2の結合剤との間で、1000℃未満では溶融または固溶域を持たず、100℃から1500℃の温度域で溶融または固溶域を持つ金属酸化物、金属窒化物、金属窒化物系酸化物、硼化物、および金属炭化物のいずれかに属する化合物のうちの1種の化合物または2種以上の混合物として、0.1質量%以上添加することにより、1000℃以上の温度域において融液を介した液相焼結または固溶体中の結晶構造欠陥を介した拡散速度増加が起こり、その結果、1400℃における焼結強度(圧縮強度)を向上させることができる。第2の結合剤の添加量が多すぎる場合、融液を介した液相焼結または固溶体中の結晶構造欠陥を介した拡散速度増加が過剰となり、1400℃以上の高温時において収縮が起こるが、第2の結合剤の添加量を10.0質量%以下に抑えることにより、これを抑制することができる。
【0023】
第2の結合剤として、珪灰石(CaO・SiO)、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)とマグネシア(MgO)との組合せ、アルミナ(Al)とシリカ(SiO)との組合せ等が使用可能である。
【0024】
第1の結合剤及び第2の結合剤ともに、それらの添加量が少ないと充分な強度が得られず、また多くなると高温域においてこれらの結合剤から生成される液相量が多くなり、高温域での耐溶損性、耐クリープ性が不足し、かつ過焼結による収縮に伴う亀裂発生に繋がる。特に第1の結合剤の過剰添加は、高温減での耐溶損性、耐クリープ性、過焼結に与える悪影響が大きい。
【0025】
(第1の結合剤と第2の結合剤の組合せ)
第1の結合剤と第2の結合剤との間で400℃から1200℃の温度域で溶融または固溶域を持つように第1の結合剤と第2の結合剤を選定すると、800℃における焼結強度を更に向上することが可能である。
【0026】
このような組合せとしては、第1の結合材としてソーダ(NaO)もしくは無水硼酸(B)を0.01〜1.0質量%、第2の結合材として、「珪灰石(CaO・SiO)もしくはシリカ(SiO)」及び「アルミナ(Al)」を0.1〜5.0質量%添加することが効果的である。特に第1の結合材として無水硼酸(B)を、第2の結合材としてシリカ(SiO)及びアルミナ(Al)を選択することが効果的である。これは、無水硼酸(B)の一部とシリカ(SiO)及びアルミナ(Al)の一部が互いに混合・溶融してアルミノ硼珪酸塩ガラスが生成することにより400℃付近から液相が生成し始め、1200℃以上の温度域では余剰のシリカ(SiO)及びアルミナ(Al)に由来するアルミノ珪酸塩ガラスが生成するため、焼結運転中、400℃から初受湯を迎える1200℃近辺に到る比較的広い温度域で適度な液相焼結が進行するため充分な初期強度を得ることができる。また、400℃未満の温度域では焼結に寄与する液相が生成しないため必要にして充分な厚みの未焼結層を確保できる。さらには、Na原子はガラス中にてネットワークモディファイヤーとして存在するのに対して、B原子はネットワークフォーマーとして存在するため、第1の結合材としてソーダ(NaO)を選択するよりも無水硼酸(B)を選択する方が高耐食性を期待できる。また、第1の結合材として無水硼酸(B)を、第2の結合材としてシリカ(SiO)及びアルミナ(Al)を選択する場合、保管中の水分による潮解等の品質劣化がほとんどないため保管性に優れ、入手も容易であるという利点もある。
【0027】
溝型誘導炉と異なり、坩堝型誘導炉で適切に焼結運転する場合は、従来からの公知技術であるところの、主原料としてマグネシア、副原料としてアルミナを使用するマグネシア系ラミング材、主原料としてアルミナ原料、副原料としてマグネシア原料を使用するアルミナ系ラミング材でも充分である場合が多いが、本発明に基づく第1の結合剤と第2の結合剤の双方を添加することにより、溶湯漏れの危険性をより一層低減できることは言うまでもない。
【0028】
上述のように、本発明の誘導炉用ラミング材は、800℃焼成後の圧縮強度が0.2MPa以上あることが必要である。これは、初期の焼結運転に際し、初受湯の際の耐火物挫屈を防止するためである。好ましくは、2.0MPa以上の圧縮強度を確保することが望ましい。800℃焼成における圧縮強度の上限値は特に設けないが、通常7.0MPa以下となる場合が殆どである。また、1400℃焼成後の圧縮強度が3.0〜30.0MPaであることが必要である。これは、稼動面近傍の焼結強度を確保するとともに使用中の過焼結を抑制することにより、亀裂が発生し難く安定して使用できるためである。好ましくは、8.0〜25.0MPa、更に好ましくは15.0〜20.0MPaの圧縮強度であることが望ましい。圧縮強度測定は、JIS規格R2206に準じて行うことができる。
【実施例】
【0029】
(実施例1〜16及び比較例1〜5)
下記表1および表2に記載の原料および配合比で誘導炉用ラミング材を作製し、圧縮強度試験、熱膨張試験、及び高周波誘導炉による貼り分け試験を行った。
【0030】
これらのラミング材は、骨材としてアルミナ(Al)を適用し、これに結合剤を添加する手法により作製した。骨材としてアルミナ(Al)を適用しているため、マグネシア(MgO)の添加はスピネル(MgAl)生成により結合剤としてはたらくことになり、表中では第2の結合剤として表記されている。また、第1の結合剤として採用したガラス粉末は、アルミナ−シリカ−ライム系ガラスを微粉砕したものである。
【0031】
ここで、圧縮強度測定は下記の通りにして行った。すなわち、各供試材を40×40×160mmの型枠に手突きにて成型し、昇温速度2℃/分にて昇温し、800℃または1400℃にて3時間保持後、常温まで自然冷却し、JIS規格R2206に準じて圧縮強度測定を行った。
【0032】
800℃焼成後の圧縮強度測定結果の良否判定については、下記の要領で行った。すなわち、0.2MPa未満である場合の判定は×、0.2MPaから1.0MPaである場合の判定は△、1.0MPaから2.0MPaである場合の判定は○、2.0M以上である場合の判定は◎とした。
また、1400℃焼成後の圧縮強度測定結果の良否判定については、下記の要領で行った。すなわち、3.0MPa未満または30.0MPa以上である場合の判定は×、3.0〜8.0MPaもしくは25.0〜30.0MPaである場合の判定は△、8.0〜15.0MPaもしくは20.0〜25.0MPaである場合の判定は○、15.0〜20.0Mである場合の判定は◎とした。
【0033】
熱膨張試験は下記の通りにして行った。すなわち、20×20×80mmの型枠に手突きにて成型し、1500℃まで昇温速度2℃/分にて昇温し、JIS規格R2207に準じて熱間線膨張率測定を行った。
【0034】
熱膨張試験の良否判定については、下記の要領で行った。すなわち、室温から1500℃までの昇温中、昇温中に収縮が起こらず熱膨張係数が常に正の値であり、かつ熱膨張係数の乱れが比較的少ない場合の判定は◎、昇温中に熱膨張係数がゼロ又はその前後の温度域に比較して大きくなっている等の乱れが1箇所かつ比較的乱れが小さい場合の判定は○、昇温中に熱膨張係数がゼロ又はその前後の温度域に比較して大きくなっている等の乱れが比較的大きい場合もしくは2箇所以上見られる場合の判定は△、昇温中に収縮が観察された場合の判定は×とした。
【0035】
また、高周波誘導炉による貼り分け試験については、下記の要領で行った。すなわち、炉容100kgの高周波誘導炉の炉壁に1回あたり4種類のドライスタンプを貼り分けて築造し、型銑を入れて1400℃へ昇温後2時間保定し、これを800℃へ放冷し、ふたたび1400℃へ昇温するという操作を計10サイクル繰返し、その後、室温まで放冷してからドライスタンプ焼結体の断面観察を行った。
【0036】
高周波誘導炉貼り分け試験結果を鑑みた総合評価の良否判定については、下記の要領で行った。すなわち、比較的大きな亀裂が発生した場合もしくは比較的小さな亀裂が8本以上見られる場合もしくは圧縮強度試験結果または熱膨張試験結果にひとつでも×がある場合は×、比較的小さな亀裂が少量(4〜7本)見られる場合は△、比較的小さな亀裂がごく少量(3本以下)である場合は○、比較的小さな亀裂が3本以下かつ圧縮強度試験結果及び熱膨張試験結果が◎である場合は◎とした。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
表1より、結合剤自体もしくは当該結合剤以外のラミング材成分と当該結合剤との間で600℃から1200℃の温度域で溶融または固溶域を持つ第1の結合剤と、結合剤自体もしくは当該結合剤以外のラミング材成分と当該結合剤との間で1200℃以上の温度域で溶融または固溶域を持つ第2の結合剤をそれぞれ適量添加することにより、800℃焼成後において0.2MPa以上の圧縮強度を確保し、1400℃焼成後において8.0〜25.0MPaの圧縮強度を確保し、かつ昇温中の収縮を抑制することにより、受湯時及び使用中の亀裂発生を抑制して安定的に使用可能であることが確認できた。
【0040】
表2より、第1の結合剤として、たとえばソーダ(NaO)もしくは無水硼酸(B)を適用し、第2の結合剤のひとつとして、たとえば微粉シリカ(SiO)を適用すると、400℃から1200℃の温度域でアルミノ珪酸ソーダガラス、もしくは硼珪酸ガラスが生成するため、目的の焼結強度及び熱膨張特性を容易に確保可能であることが確認できた。さらには、無水硼酸(B)の添加量を0.2質量%、微粉シリカ(SiO)の添加量を1.0質量%にすると最良の結果が得られることが確認できた。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の結合剤と第2の結合剤とを含むラミング材であって、
前記第1の結合剤が、当該第1の結合剤単独で、または、当該第1の結合剤及び前記第2の結合剤以外のラミング材成分と当該第1の結合剤との間で、600℃未満では溶融または固溶域を持たず、600℃から1200℃の温度域で溶融または固溶域を持つ金属酸化物、金属窒化物、金属窒化物系酸化物、硼化物、及びフッ化物のいずれかに属する化合物のうちの1種の化合物または2種以上の混合物として、0.01質量%から5.0質量%含まれ、
前記第2の結合剤が、当該第2の結合剤単独で、または、当該第2の結合剤及び前記第1の結合剤以外のラミング材成分と当該第2の結合剤との間で、1000℃未満では溶融または固溶域を持たず、100℃から1500℃の温度域で溶融または固溶域を持つ金属酸化物、金属窒化物、金属窒化物系酸化物、硼化物、および金属炭化物のいずれかに属する化合物のうちの1種の化合物または2種以上の混合物として、0.1質量%から10.0質量%含まれ、
800℃焼成後におけるラミング材の圧縮強度が0.2MPa以上であり、1400℃焼成後におけるラミング材の圧縮強度が3.0MPaから30.0MPaであり、かつ30℃から1500℃までの温度域の熱膨張係数がゼロ以上であることを特徴とする誘導炉用ラミング材。
【請求項2】
第1の結合剤を0.01質量%から3.0質量%含み、第2の結合剤を0.1質量%から7.0質量%含み、第1の結合剤と第2の結合剤との間で、400℃から1200℃の温度域で溶融または固溶域を持つことを特徴とする請求項1の誘導炉用ラミング材。
【請求項3】
第1の結合剤として無水硼酸(B)を0.01質量%から1.0質量%含み、第2の結合剤としてシリカ(SiO)を0.1質量%から5.0質量%含むことを特徴とする請求項2の誘導炉用ラミング材。


【公開番号】特開2008−50217(P2008−50217A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−229108(P2006−229108)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(591255612)サンゴバン株式会社 (8)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】