説明

誘導管制装置

【課題】飛しょう体を目標に向けて誘導する飛しょう体誘導管制装置において、目標の運動性能を推定できる機種の類別情報をもとに目標の旋回加速度を推定し、シーカの捜索範囲を設定することにより、旋回する目標に対しても、捕そく性能を向上させるシステムを提供する。
【解決手段】目標12の種類を表わす類別情報をもとに目標12の旋回加速度を推定し、推定した旋回加速度に基づきシーカ10の捜索範囲を算出する。飛しょう体1に搭載されたシーカ10は算出された捜索範囲を捜索することにより、旋回する目標12に対して適切な範囲の捜索が可能であり、目標12の捕そく性能を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、飛しょう体を目標に向けて誘導する飛しょう体誘導管制装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発射後に目標を捜索、捕そくし追尾する飛しょう体において、従来の飛しょう体の誘導装置は、目標の捕捉をするための各種手段がとられてきた。一例として、ネットワーク環境を用いた他の外部システム(以下、他システムという)のセンサを含む各装置の位置誤差、遅れ時間等の推定値に基づき、バイアス誤差を推定することにより、バイアス誤差を除いた目標位置を推定し、シーカの捜索方向を指示することにより、目標に対する捕そく性能を確保し、目標捜索を行う従来技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−19487号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発射した後、目標を捜索、捕そくし、目標に向かって誘導する飛しょう体の場合、地上・車両・艦船・航空機等に搭載された誘導管制装置からの目標情報の誤差により、飛しょう体の目標に対する捕そく性能が低下するという課題があった。
また、他システムのセンサを利用する場合も、他システムのセンサの目標に対するバイアス誤差や遅れ時間を補正し、捕そく性能を確保して目標の捜索を行うのみで、目標がとる運動としては直進運動を前提としているため、目標が旋回することによって飛しょう体の捕そく性能が低下するという課題があった。
【0005】
この発明は係る課題を解決するためになされたものであり、目標の運動性能を推定できる機種の類別情報をもとに目標の旋回加速度を推定し、シーカの捜索範囲を設定することにより、旋回する目標に対しても、捕そく性能を向上させることを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る飛しょう体誘導管制装置は、飛しょう体を目標に向けて誘導する誘導管制装置であって、レーダ装置が取得した目標の類別情報に基づき、前記目標の旋回加速度を推定し、推定した前記旋回加速度に基づき、前記飛しょう体が備えるシーカの捜索範囲を算出するシーカ捜索幅算出部を備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る飛しょう体誘導装置によれば、旋回する目標に対しても適切な捜索範囲を設定することができ、捕捉性能を確保して目標に向けて精度よく飛しょう体を誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1による飛しょう体誘導装置を説明するための図である。
【図2】実施の形態1によるセンサ間バイアス誤差推定器を説明するための図である
【図3】実施の形態1によるシーカ捜索幅算出器を説明するための図である。
【図4】実施の形態1による目標運動予測後のシーカの指向方向を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は実施の形態1による飛しょう体誘導管制装置の運用を説明するための図である。
図1において、1は飛しょう体、2は誘導管制装置、3はレーダ装置、4は他システムセンサ、5はコマンド送信装置、6は発射機、11は先行する目標、12は後行する目標(破線で示す)である。
飛しょう体誘導管制装置2は、センサ間バイアス誤差推定器7、バイアス補正器8、類別推定器17、シーカ捜索幅算出器18を備える。
また、飛しょう体1は、捜索方向指示装置9、シーカ10を備える。
レーダ装置3と他システムセンサ4は共に、先行する目標11を観測することができるが、後行する目標12はレーダ装置3の観測可能エリア外であって、他システムセンサ4でのみ観測できるエリアを飛しょうしている。
本実施の形態の飛しょう体誘導管制装置2は、他システムセンサ4でのみ観測される後行する目標12に向けて飛しょう体1を精度よく誘導することを目的とする。
【0010】
次に、飛しょう体誘導管制装置2の動作について説明する。
図1において、レーダ装置3と他システムセンサ4は先行する目標11を捕そく、追尾し、目標11の観測値を、誘導管制装置2に出力する。
誘導管制装置2に備えられたセンサ間バイアス誤差推定器7でレーダ装置3による目標11の観測値、他システムセンサ4による目標11の観測値をもとに、他システムセンサ4のバイアス誤差を推定する。
【0011】
他システムセンサ4は、後行する目標12の観測値を、誘導管制装置2に備えられたバイアス補正器8に出力する。
バイアス補正器8により補正された他システムセンサ4の目標12の推定位置、速度情報は、飛しょう体1の発射前は発射器6へ出力され、飛しょう体発射後はコマンド送信装置5へ出力される。
発射機6またはコマンド送信装置5から、飛しょう体1の目標捜索方向指示装置へ目標12の推定位置、速度情報を送信する。
【0012】
他システムセンサ4は、観測した目標12の推定位置、速度情報をバイアス補正器8に出力する。また、他システムセンサ4は観測した目標12の類別情報を、誘導管制装置2に備えられた類別推定器17に出力する。
類別推定器17は、推定した目標12の類別情報を、シーカ捜索幅算出器18に出力する。
シーカ捜索幅算出器18は、算出したシーカ捜索幅をコマンドとして、発射機6またはコマンド送信装置5から飛しょう体1の目標捜索方向指示装置へ送信する。また、バイアス補正器8は、バイアス補正後の目標12の推定位置、速度情報を、発射機6またはコマンド送信装置5から飛しょう体1の目標捜索方向指示装置へ送信する。
目標捜索方向指示装置9は飛しょう体1から見た後行する目標12の方向へシーカを向け、かつ目標12の旋回加速度に対応した捜索を行い、目標12を捕そくし、追尾する。
【0013】
図2は、実施の形態1に係る誘導管制装置2が備えるセンサ間バイアス誤差推定器7の構成ブロック図である。
センサ間バイアス誤差推定器7は、レーダ用追尾フィルタ13、他システムセンサ用追尾フィルタ14、バイアス誤差補正器15、他システムセンサバイアスデータベース16からなる。
【0014】
次に、このセンサ間バイアス誤差推定器7の動作について説明する。
レーダ装置3から出力された先行する目標11の観測値は、レーダ用追尾フィルタ13に入力され、例えば、式(1)のαβフィルタなどを用いて、現在時刻の位置、速度の推定を行う。
【0015】
【数1】

【0016】
同様に、他システムセンサ4から出力された目標11の観測値が、他システムセンサ用追尾フィルタ14に入力され、他システムセンサ4から誘導管制装置2への伝送遅延時間を考慮して、例えば、式(2)のαβフィルタなどを用いて、現在時刻の位置、速度の推定を行う。
【0017】
【数2】

【0018】
レーダ用追尾フィルタ13、他システムセンサ用追尾フィルタ14でそれぞれ推定された目標11の位置、速度がバイアス誤差算出器15へ入力される。各時刻の位置、速度の誤差のバイアス誤差を例えば式(3)のように算出して、他システムセンサバイアスデータベース16に書き込まれる。
【0019】
【数3】

【0020】
次に、他システムセンサ4によって捕そく追尾された、後行の目標12の観測値が誘導管制装置2のバイアス補正器8に入力されると、式(4)のようにバイアス補正計算を行う。
【0021】
【数4】

【0022】
補正された目標推定位置を発射機6またはコマンド送信装置5を経由して飛しょう体1に備えられた目標捜索方向指示装置9に送信され、飛しょう体1からみた目標相対位置を式(5)のように計算し、シーカ10を指向させる。
【0023】
【数5】

【0024】
図3は、本実施の形態による誘導管制装置2に備えたシーカ捜索幅算出器18の構成ブロック図である。シーカ捜索幅算出器18は、旋回範囲推定器19、類別毎旋回データベース20、捜索範囲算出器21からなる。
【0025】
次に、このシーカ捜索幅算出器18の動作について説明する。
類別推定器17により、レーダ装置3、他システムセンサ4の類別をあらかじめ設定したルールに基づき統合し、旋回範囲推定器19に出力する。
旋回範囲推定器19は類別に応じた旋回加速度を類別毎旋回データベース20より算出し、捜索範囲推定器21に出力する。
捜索範囲算出器21は、飛しょう体から見た目標の旋回加速度に対応した捜索範囲を算出し、飛しょう体1の発射前は発射機6に出力し、飛しょう体1の発射後はコマンド送信装置5に出力する。
【0026】
捜索範囲算出器21は、バイアス誤差補正後の目標12の位置及び速度の推定値に対して目標の旋回加速度に応じた補正を、式(6)のように補正を行う。
【0027】
【数6】

【0028】
また、類別による加速度により補正された目標補正位置を飛しょう体からみた目標相対位置を、式(7)のように計算する。
【0029】
【数7】

【0030】
また、類別による加速度により補正された飛しょう体からみた目標相対位置と、類別による加速度を補正していない位置の差分を、式(8)のように計算する。
【0031】
【数8】

【0032】
捜索範囲算出器21は、式(8)により算出された差分をシーカの捜索幅として、飛しょう体1の発射前は発射機6に出力し、飛しょう体1の発射後はコマンド送信機5へ出力する。
飛しょう体1の目標捜索方向指示装置9は、式(8)により算出された差分だけシーカ10の首振り指示を行いシーカを指向させる。
【0033】
図4は、本実施の形態による飛しょう体1のシーカ捜索方向とシーカ捜索幅と目標の関係を説明する図である。
類別による加速度推定を行わない場合は、飛しょう体1から目標運動予測前シーカ指向方向22に向けてシーカが指向されるが、目標運動予測後シーカ捜索方向は23は、シーカ捜索幅24の範囲をカバーする首振り角指令が与えられることにより、目標12の運動に対応した捕そくの可能性を高くすることが可能となる。
【0034】
このように、本実施の形態の飛しょう体誘導管制装置によれば、目標の運動性能を推定できる飛しょう体の機種の
類別情報をもとに目標の旋回加速度を推定することができ、シーカの捜索範囲を適切に設定することにより、旋回する目標に対して捕そく性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 飛しょう体、2 誘導管制装置、3 レーダ装置、4 他システムセンサ、5 コマンド送信装置、6 発射機、7 センサ間バイアス誤差推定器、8 バイアス補正器、9 目標捜索方向指示装置、10 シーカ、11 目標、12 目標、13 レーダ用追尾フィルタ、14 他システムセンサ用追尾フィルタ、15 バイアス誤差算出部、16 他システムセンサバイアスデータベース、17 類別推定器、18 シーカ捜索幅算出器、19 旋回範囲推定器、20 類別毎旋回データベース、21 捜索範囲算出器、22 目標運動予測前シーカ捜索方向、23 目標運動予測後シーカ捜索方向、24 シーカ捜索幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛しょう体を目標に向けて誘導する誘導管制装置であって、
レーダ装置が取得した目標の類別情報に基づき前記目標の旋回加速度を推定し、推定した前記旋回加速度に基づき、前記飛しょう体が備えるシーカの捜索範囲を算出するシーカ捜索幅算出部を備えることを特徴とする誘導管制装置。
【請求項2】
前記シーカ捜索幅算出部は、飛しょう体類別情報と飛しょう体の旋回加速度とを関連付けした類別毎旋回データベースを備え、
前記シーカ捜索幅算出部は、レーダ装置が観測した目標情報から推定された飛しょう体類別情報を入力すると、前記類別毎旋回データベースから前記飛しょう体類別情報に関連付けされた旋回加速度を抽出することを特徴とする請求項1記載の誘導管制装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−198006(P2012−198006A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64222(P2011−64222)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】