説明

誘電体素子及び電子放出素子

【課題】 繰り返し使用による素子特性の劣化が抑制された誘電体素子及び電子放出素子を提供する。
【解決手段】 本発明の誘電体素子の一例である、電子放出素子120は、エミッタ層123に対して所定の駆動電界を印加することで作動するように構成されている。エミッタ層123は、PMN−PT−PZ三成分固溶系組成物を主成分とする誘電体層であって、そのキュリー温度Tc(℃)が60≦Tc≦150となるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体層を備えた誘電体素子に関する。また、本発明は、電子線を利用した種々の装置(例えば、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、電子線照射装置、光源、電子部品製造装置、電子回路部品、等)における、電子線源として好適に用いられ得る、電子放出素子に関する。
【背景技術】
【0002】
上述の電子放出素子は、所定の真空度の減圧雰囲気中に配置されたエミッタ部を備えている。このエミッタ部は、所定の駆動電界が印加されることで、前記減圧雰囲気中に電子を放出し得るように構成されている。
【0003】
FEDにおいては、複数の前記電子放出素子が、ガラスやセラミックス等の基体上に、二次元的に配列されている。また、前記減圧雰囲気による所定のギャップを隔てて前記各電子放出素子と対向するように、蛍光体が配置されている。このFEDは、前記電子放出素子から放出された電子が、前記ギャップ中を飛翔して前記蛍光体に衝突して、当該蛍光体より蛍光が発せられることで、所望の表示が行われ得るように構成されている。
【0004】
前記電子放出素子のうち、前記エミッタ部が誘電体材料(圧電材料)で構成されたものが知られている。かかる電子放出素子は、「圧電膜型電子放出素子」と称される。この種の圧電膜型電子放出素子は、製造コストが安価であるので、上述のように多数の電子放出素子が比較的広い面積で二次元的に配置されるFEDに対して好適に用いられ得る。
【0005】
この圧電膜型電子放出素子としては、例えば、特開2005−183361号公報(特許文献1)に開示されているものが、従来知られている。
【特許文献1】特開2005−183361号公報
【0006】
上述の圧電膜型電子放出素子は、誘電体層からなる前記エミッタ部と、第一電極と、第二電極と、を備えている。前記第一電極は、前記誘電体層の表面に設けられている。前記第二電極は、前記誘電体層の裏面に設けられている。そして、前記誘電体層の前記表面側であって、前記第一電極の外縁部の近傍には、前記エミッタ部が当該圧電膜型電子放出素子の外部(前記減圧雰囲気)に向けて露出されている箇所が設けられている。この箇所が、当該圧電膜型電子放出素子における電子放出動作に供される主要部である電子放出領域として機能するように、当該圧電膜型電子放出素子が構成されている。
【0007】
かかる構成を有する圧電膜型電子放出素子は、以下のように動作する。まず第1段階として、前記第一電極と前記第二電極との間に、前記第一電極の方が高電位となるような電圧が印加される。この印加電圧によって形成された電界に基づいて、前記エミッタ部の分極状態が所定の状態に設定される。次に、第2段階として、前記第一電極と前記第二電極との間に、前記第一電極の方が低電位となるような電圧が印加される。これにより、前記エミッタ部の分極が反転するとともに、前記電子放出領域に電子が蓄積される。続いて、第3段階として、再度前記第一電極が高電位となるような電圧が印加される。これにより、前記エミッタ部の分極が再度反転する。この分極の反転に伴い、前記電子放出領域に蓄積された電子が、双極子との静電斥力により、前記エミッタ部から放出されて、前記減圧雰囲気中に飛翔する。このようにして、当該圧電膜型電子放出素子による電子放出動作が行われる。
【発明の開示】
【0008】
従来の前記圧電膜型電子放出素子においては、繰り返し使用されることによって電子放出量が大幅に低下してしまうという問題があった。
【0009】
ここで、当該圧電膜型電子放出素子の構成要素である前記エミッタ部、前記第一電極、前記第二電極、及びこれらを支持する基体のうち、繰り返し使用によって特性の変化が起こり得る構成要素は、主として前記エミッタ部である。よって、前記圧電膜型電子放出素子の繰り返し使用による電子放出量の低下の主たる原因は、繰り返し使用による前記エミッタ部の劣化であると考えられる。
【0010】
このように、従来の圧電膜型電子放出素子等の誘電体素子においては、繰り返し使用によって誘電体層が劣化し、この誘電体層の劣化によって素子特性が大きく劣化する、という問題があった。
【0011】
ここで、本発明の発明者たちは、鋭意研究の結果、前記誘電体層のキュリー温度よりも若干(数十度程度、あるいは約20度ないし約70度程度)低い温度で前記誘電体素子が駆動された場合に、繰り返し使用による特性劣化が抑制されることを見出した。また、発明者たちは、上述のような温度を前記誘電体素子の実用温度(前記誘電体素子の駆動中に当該誘電体素子又は前記誘電体層が到達する温度:100℃以下、例えば室温ないし50℃近辺)と略一致させることで、繰り返し使用による特性劣化が抑制された高耐久性の素子を得ることができることを発案した。
【0012】
本発明の誘電体素子の特徴は、以下の特性を有する誘電体層を備えたことにある。
一般式:Pb(Mg1/3Nb2/3aTibZrc3・・・(1)
[前記一般式(1)中、0.2≦a≦0.375、0.25≦b≦0.43、0.25≦c≦0.375、a+b+c=1である。]
で示される組成物を主成分として、キュリー温度Tc(℃)が60≦Tc≦150である(好ましくは70≦Tc≦150である)。
【0013】
前記誘電体層の前記主成分における鉛の8ないし16mol%が、ストロンチウムによって置換されていてもよい。すなわち、前記誘電体層が、以下の特性を有するように形成されていてもよい。
【0014】
一般式:Pb1-xSrx(Mg1/3Nb2/3aTibZrc3・・・(2)
[前記一般式(2)中、0.08≦x≦0.16、0.2≦a≦0.375、0.25≦b≦0.43、0.25≦c≦0.375、a+b+c=1である。]
で示される組成物を主成分として、キュリー温度Tc(℃)が60≦Tc≦150である。
【0015】
かかる構成によれば、繰り返し使用による特性劣化が抑制された高耐久性の前記誘電体素子が得られる。
【0016】
前記誘電体層には、マンガンが、MnO2の添加量に換算した場合に0.2ないし1.0重量%添加されていてもよい。マンガンの添加によって、高耐久性とともに、高い駆動性能を発揮することができる。
【0017】
前記の特徴的な構成を有する、本発明の誘電体素子は、電子放出素子に好適に適用され得る。特に、液晶バックライト用光源やFED等の、比較的長時間にわたって連続的あるいは断続的に駆動される光源素子に対して、本発明の誘電体素子は好適に適用され得る。
【0018】
本発明の電子放出素子は、エミッタ層と、第一電極と、第二電極と、を備えている。前記エミッタ層は、前記誘電体層からなり、減圧雰囲気下で所定の駆動電界が印加されることで当該雰囲気に向けて電子を放出し得るように構成されている。前記第一電極及び第二電極は、前記エミッタ層に前記駆動電界を印加し得るように、前記エミッタ層に設けられている。
【0019】
そして、当該電子放出素子は、前記第一電極と前記第二電極との間で所定の駆動電圧が印加されて、前記エミッタ層に前記駆動電界が印加されることで、当該エミッタ層から前記減圧雰囲気に向けて電子が放出され得るように構成されている。
【0020】
すなわち、本発明の電子放出素子の特徴は、前記エミッタ層が、前記誘電体層からなることにある。
【0021】
本発明によれば、繰り返し使用による前記誘電体層(前記エミッタ層)の劣化が抑制される。よって、本発明によれば、繰り返し使用による素子特性の劣化が抑制された高耐久性の誘電体素子及び電子放出素子を提供することができる。
【0022】
また、前記エミッタ層を構成する前記誘電体層に、マンガンが、MnO2の添加量に換算した場合に0.2ないし1.0重量%添加され得る。これにより、高耐久性に加えて、電子放出量が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態を、図及び表を参照しながら説明する。なお、本実施形態の各構成要素の材質や構造については、とりあえず代表的な1つの実施形態を理解しやすく首尾一貫して説明する便宜上、単なる1つの代表例が例示的に示されているものである。本実施形態の各構成要素の材質や構造に関する変形例は、実施形態の構成、作用、効果の説明の後に、末尾にまとめて記述されている。
【0024】
<電子放出素子を用いたFEDの概略構成>
図1は、本実施形態に係る電子放出素子が適用されたFEDである、ディスプレイ100の概略構成を示す断面図である。
【0025】
図1を参照すると、ディスプレイ100は、発光パネル101を備えている。この発光パネル101は、透明板101aと、コレクタ電極101bと、蛍光体層101cと、から構成されている。
【0026】
透明板101aは、ガラスやアクリル製の板から構成されている。透明板101aの図中下側の表面には、コレクタ電極101bが形成されている。このコレクタ電極101bは、ITO(インジウム・錫酸化物)薄膜等の透明電極により構成されている。
【0027】
コレクタ電極101bの下側には、蛍光体層101cが形成されている。この蛍光体層101cは、所定の抵抗器を介してバイアス電圧源102と接続されたコレクタ電極101bに向けて飛翔する電子が衝突することで、蛍光を発し得るように構成されている。バイアス電圧源102は、アースとコレクタ電極101bとの間に所定のコレクタ電圧Vcを出力し得るように構成されている。
【0028】
発光パネル101の図中下方には、電子放出源装置110が配置されている。電子放出源装置110は、パルス発生源111と電気的に接続されている。この電子放出源装置110は、パルス発生源111によって駆動電圧Vaが入力されることで、電子を図中上方の発光パネル101(コレクタ電極101b及び蛍光体層101c)に向かって放出し得るように構成されている。
【0029】
電子放出源装置110と発光パネル101(蛍光体層101c)との間には、所定のギャップが形成されている。電子放出源装置110と蛍光体層101cとの間の空間は、所定の真空度、例えば102〜10-6Pa、より好ましくは10-3〜10-5Paの真空度の減圧雰囲気に設定されている。
【0030】
かかるディスプレイ100は、パルス発生源111によって電子放出源装置110に駆動電圧Vaが入力されることで当該電子放出源装置110から前記減圧雰囲気に電子が放出され、この放出された電子が、コレクタ電圧Vcの印加によって発生する電界によってコレクタ電極101bに向かって飛翔して蛍光体層101cと衝突することで蛍光を発するように構成されている。
【0031】
<電子放出源装置の構成>
電子放出源装置110は、薄い平板状に構成されている。この電子放出源装置110には、本実施形態の電子放出素子120が、2次元的に多数形成されている。
【0032】
電子放出素子120は、基板121と、下部電極122と、エミッタ層123と、上部電極124と、から構成されている。基板121は、耐熱性のガラスの薄板、又はセラミックスの薄板からなる。この基板121の上には、下部電極122が形成されている。下部電極122は、20μm以下の厚さの金属膜からなる。下部電極122には、上述のパルス発生源111が電気的に接続されている。
【0033】
本発明の第二電極としての下部電極122の上には、本発明のエミッタ層及び誘電体層としてのエミッタ層123が形成されている。本実施形態におけるエミッタ層123は、厚さが1〜300μm、より好適には5〜100μmの誘電体材料の多結晶体からなる。この誘電体材料は、誘電体組成物としての主成分と、添加成分と、からなる。
【0034】
前記主成分としては、マグネシウムニオブ酸鉛(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3:PMNと略称される)とチタン酸鉛(PbTiO3:PTと略称される)とジルコン酸鉛(PbZrO3:PZと略称される)との三成分固溶系の組成物が用いられ得る。このPMN−PT−PZ三成分固溶系組成物は、以下の一般式(I)に示されるものである。
一般式:Pb1-xSrx(Mg1/3Nb2/3aTibZrc3・・・(I)
[前記一般式(I)中、0.08≦x≦0.16、0.2≦a≦0.375、0.25≦b≦0.43、0.25≦c≦0.375、a+b+c=1である。]
【0035】
すなわち、本実施形態においては、エミッタ層123(特に37.5PMN−25PT−37.5PZ及びその近傍の組成)のキュリー温度(Tc)を、素子の実用温度よりも若干高い温度(60℃ないし150℃)まで低下させるために、前記主成分における鉛の8ないし16mol%が、ストロンチウムによって置換されている。
【0036】
ここで、「37.5PMN−25PT−37.5PZ」は、モル分率がマグネシウムニオブ酸鉛:チタン酸鉛:ジルコン酸鉛=37.5:25:37.5であるPMN−PT−PZ三成分固溶系組成物の省略表記である(以下同様)。
【0037】
前記添加成分としては、例えば、マンガン、鉄、クロム、コバルト、モリブデン、タングステン、等が好適に用いられる。この添加成分の添加量は、酸化物(二酸化マンガン(MnO2)、酸化第二鉄(Fe23)、酸化第二クロム(Cr23)、四三酸化コバルト(Co34)、三酸化モリブデン(MoO3)、三酸化タングステン(WO3)、等)の添加量として換算され得る。
【0038】
これらの添加成分は、前記エミッタ層123中に添加されることで、酸化剤として機能してより低酸化数の酸化物に変化し得る高酸化数の遷移金属元素の酸化物を構成するものである。すなわち、これらの添加成分は、エミッタ層123における金属鉛の析出を抑制することで、繰り返し使用による特性劣化を抑制する効果を奏するものである。
【0039】
また、前記添加成分がマンガンである場合、機械的品質係数(Qm)等の、エミッタ層123の誘電体層としての特性が向上し、これにより電子放出量が向上するため、好適である。このとき、マンガンの添加量は、二酸化マンガン(MnO2)の添加量に換算した場合に、0.2ないし1.0重量%となるように設定されていることが好適である。
【0040】
エミッタ層123における上側表面123aには、結晶粒界等により、微視的な凹凸が形成されている。すなわち、上側表面123aには、多数の凹部123bが形成されている。上側表面123aは、表面粗さRa(中心線平均粗さ:単位μm)が0.005以上3.0以下となるように形成されている。
【0041】
エミッタ層123は、上述の上側表面123aと反対側の表面である下側表面123cと下部電極122とが互いに密着するように、当該下部電極122上に形成されている。エミッタ層123の上側表面123aの上には、上部電極124が形成されている。上部電極124には、上述のパルス発生源111が電気的に接続されている。
【0042】
本発明の第一電極としての上部電極124は、0.1〜20μm程度の厚さの導電性物質の薄層からなる。この上部電極124を構成する前記導電性物質としては、金属膜、金属粒子、非金属導電性膜(カーボン膜や非金属導電性酸化物膜等)、非金属導電性粒子(カーボン粒子や導電性酸化物粒子等)が用いられ得る。
【0043】
上述の金属膜や金属粒子の材質としては、白金、金、銀、イリジウム、パラジウム、ロジウム、モリブデン、タングステン及びこれらの合金が好適に用いられ得る。上述の非金属導電性膜や非金属導電性粒子の材質としては、黒鉛、ITO(インジウム・錫酸化物)、LSCO(ランタン・ストロンチウム・コバルト酸化物)が好適に用いられ得る。この上部電極124が金属粒子や非金属導電性粒子から形成される場合の粒子形状としては、鱗片状、板状、箔状、針状、棒状、コイル状が好適に用いられ得る。
【0044】
上部電極124には、複数の開口部124aが形成されている。この開口部124aは、エミッタ層123の上側表面123aを電子放出源装置110の外部(すなわち上述の減圧雰囲気:以下同様)に露出するように形成されている。また、上部電極124の外周における縁部である外縁部124bにおいても、エミッタ層123の上側表面123aが電子放出源装置110の外部に露出されている。そして、電子放出源装置110の外部に露出されたエミッタ層123の部分によって、電子放出動作の主要部分であるエミッタ部125が構成されている。
【0045】
電子放出素子120は、後述するように、上部電極124から供給された電子がエミッタ部125上に蓄積され、このエミッタ部125上に蓄積された電子が、当該電子放出源装置110の外部に向けて(すなわち蛍光体層101cに向けて)放出されるように構成されている。
【0046】
<電子放出素子の構成の詳細>
図2は、図1に示されている電子放出素子120の要部を拡大した断面図である。なお、図1や図2においては、1つの開口部124a内に1つの凹部123bが形成されている場合が示されている。もっとも、1つの開口部124a内に複数の凹部123bが形成されている場合もあり得る。あるいは、1つの開口部124a内に凹部123bが全く形成されない場合もあり得る。
【0047】
図2を参照すると、上部電極124における開口部124aの近傍の部分である、庇部126は、エミッタ部125に対して庇の如く張り出すように設けられている。すなわち、この庇部126の下面126a及び先端126bと、エミッタ部125に対応するエミッタ層123の上側表面123aとが離隔するように、当該庇部126が形成されている。なお、この庇部126は、上部電極124の外縁部124b(図1参照)に対応する位置にも形成されている。
【0048】
庇部126の基端部であって、エミッタ層123の上側表面123aと接触する位置には、エミッタ層123と上部電極124と前記減圧雰囲気との3重点であるトリプルジャンクション126cが形成されている。
【0049】
このトリプルジャンクション126cは、図1を参照すると、下部電極122と上部電極124との間に駆動電圧Vaが印加された場合に、電気力線の集中(電界集中)が生じる箇所(電界集中部)である。なお、ここにいう「電気力線の集中」とは、仮に下部電極122、エミッタ層123、及び上部電極124を側断面視にて無限長の平板として電気力線を描く場合に、下部電極122から均等間隔で発した電気力線が集中する箇所をいうものとする。この電界集中部における電気力線の集中(電界集中)の様子は、有限要素法による数値解析によってシミュレーションすることで簡単に確認され得る。
【0050】
再び図2を参照すると、庇部126の下面126a及び先端126bと、エミッタ層123の上側表面123a(エミッタ部125)との間には、ギャップ127が形成されている。このギャップ127は、最大幅dが0μm<d≦10μm、エミッタ部125の表面とのなす角θが0°<θ≦60°となるように形成されている。
【0051】
また、庇部126の先端126bは、前記電界集中部となるような形状を備えている。具体的には、庇部126は、先端126bに向かうにつれて鋭角に尖る(厚みが徐々に薄くなる)ように形成されている。
【0052】
開口部124aは、平面視(図2における上側から見た場合)にて、円形、楕円形、多角形、不定形等、様々な形状に形成され得る。また、開口部124aは、下記の理由により、その平面視における平均開口径が0.1μm以上、20μm以下となるような大きさに形成されている。ここで、開口部124aの平均開口径とは、当該開口部124aの開口面積と同面積の円形の直径の個数基準平均値をいうものとする。
【0053】
図2に示されているように、エミッタ層123のうちの、前記駆動電圧(図1における駆動電圧Va)の印加に応じて分極が反転する部分は、第1の部分128と第2の部分129である。第1の部分128は、上部電極124と対向する部分である。第2の部分129は、庇部126の先端126bから開口部124aの中心側に向かう領域に対応した部分である。この第二の部分129の発生範囲は、駆動電圧Vaのレベルや当該第二の部分129の近傍における電界集中の状態によって変化する。
【0054】
開口部124aの平均開口径が上述の範囲(0.1μm以上、20μm以下)である場合、開口部124aの内側から放出される電子の量が充分に確保されるとともに、高い電子放出効率が確保される。
【0055】
一方、開口部124aの平均開口径が0.1μm未満の場合、前記第二の部分129の面積が小さくなる。この第二の部分129は、上部電極124から供給された電子を一旦蓄積した後に放出するという電子放出動作を行うためのエミッタ部125の、主要な部分を構成する。よって、この第二の部分129の面積が小さくなることで、放出される電子の量が少なくなる。また、開口部124aの平均開口径が20μmを超える場合、エミッタ部125のうちの、第二の部分129の割合(占有率)が小さくなる。よって、電子の放出効率が低下する。
【0056】
<電子放出素子の等価回路構成>
図3及び図4は、図1に示されている電子放出素子120の等価回路構成を示す図である。
【0057】
本実施形態の電子放出素子120は、最も簡略には、図3に示されているような等価回路構成に近似され得る。図中のC1は、エミッタ層123を挟んで下部電極122と上部電極124との間に形成されたコンデンサである。図中のCaは、各ギャップ127(図2参照)によって形成されたコンデンサである。図中のC2は、複数のコンデンサCaの集合体であって、これらを並列に接続したものである。そして、エミッタ層123によるコンデンサC1と、ギャップ127(図2参照)によるコンデンサC2とは、直列接続されている。
【0058】
もっとも、エミッタ層123によるコンデンサC1と、コンデンサCaの集合体であるコンデンサC2とが、単純に直列接続された等価回路は実際的ではない。実際には、上部電極124における開口部124a(図2参照)の形成状態(個数や面積等)に応じて、エミッタ層123によるコンデンサC1のうちの、集合体によるコンデンサC2と直列接続される割合が変化するものと考えられる。
【0059】
そこで、例えば、図4に示されているように、エミッタ層123によるコンデンサC1のうちの25%が、コンデンサC2と直列接続された場合を想定して、容量計算を行ってみる。
【0060】
ギャップ127は真空(比誘電率εr=1)とする。また、ギャップ127の最大間隔dを0.1μm、1つのギャップ127の部分の面積Sを1μm×1μmとし、ギャップ127の数を10,000個とする。さらに、エミッタ層123の比誘電率を2000、エミッタ層123の厚みを20μm、下部電極122と上部電極124とが対向する面積を200μm×200μmとする。
【0061】
以上の仮定の下では、コンデンサC1の容量値は35.4pFとなり、コンデンサC2の容量値は0.885pFとなる。そして、上部電極124と下部電極122との間の全体の合成容量値は、27.5pFとなる。この合成容量値は、エミッタ層123によるコンデンサC1の容量値35.4pFよりも小さくなる(コンデンサC1の容量値の78%)。
【0062】
このように、ギャップ127(図2参照)によるコンデンサCa、及びその集合体の合成容量値C2は、これらと直列接続されるエミッタ層123によるコンデンサC1よりも非常に小さいものとなる。よって、この直列回路に印加電圧Vaを印加した場合の分圧の大部分は、容量の小さな方のコンデンサCa(C2)の方に印加される。換言すれば、印加電圧Vaの大部分がギャップ127(図2参照)に印加されることになる。これにより、電子放出素子の高出力化が実現される。
【0063】
また、エミッタ層123によるコンデンサC1と、ギャップ127(図2参照)によるコンデンサCa及びその集合体の合成容量C2とは、直列接続された構造となる。よって、全体の合成容量値は、エミッタ層123によるコンデンサC1の容量値よりも小さくなる。したがって、全体の消費電力が小さくなるという好ましい特性が得られる。
【0064】
<電子放出素子の電子放出原理>
図5は、図1に示されている電子放出素子120に印加される駆動電圧Vaの波形を示す図である。図6及び図7は、図1に示されている電子放出素子120に対して図5に示されている駆動電圧Vaが印加された場合の動作の様子を示す図である。以下、電子放出素子120の電子放出原理について、図5〜図7を用いて説明する。
【0065】
本実施形態においては、駆動電圧Vaとしては、図5に示されている通りの、周期が(T1+T2)の矩形波の交流電圧が用いられる。この駆動電圧Vaにおいては、基準電圧(波動の中心に対応する電圧)が0Vである。
【0066】
図5ないし図7を参照すると、駆動電圧Vaにおける第1段階としての時間T1において、上部電極124の方が下部電極122よりも低電位である(負電圧)V2となり、続く第2段階としての時間T2において、上部電極124の方が下部電極122よりも高電位である(正電圧)V1となる。
【0067】
また、図6(A)に示されているように、初期状態において、エミッタ部125の分極方向が一方向に揃えられていて、双極子の負極がエミッタ層123の上側表面123aに向いた状態となっているものとする。
【0068】
まず、基準電圧が印加されている初期状態では、図6(A)に示されているように、エミッタ部125における分極状態が、双極子の負極がエミッタ層123の上側表面123aに向いた状態となっている。この状態においては、エミッタ部125には電子がほとんど蓄積されていない。
【0069】
その後、図6(B)に示されているように、負電圧V2が印加されると、分極が反転する。この分極反転によって、上述した電界集中部において電界集中が発生する。これにより、上部電極124における、上述の電界集中部から、エミッタ部125に向けて電子の供給が行われる。すると、図6(C)に示されているように、エミッタ部125に電子が蓄積される。すなわち、エミッタ部125が帯電する。この帯電は、エミッタ層123の表面抵抗値に基づく所定の飽和量に達するまで可能であり、制御電圧の印加時間や電圧波形により帯電量を制御することが可能である。このように、上部電極124(特に上述の電界集中部)が、エミッタ部125への電子供給源として機能する。
【0070】
その後、図7(A)に示されているように、駆動電圧Vaが一旦基準電圧となった後、さらに、図7(B)に示されているように、駆動電圧Vaとして正電圧V1が印加されると、分極が再度反転する。すると、双極子の負極との静電反発力によって、エミッタ部125に蓄積されていた電子が、図7(C)に示されているように、開口部124aを通過して外部に向けて放出される。
【0071】
なお、上部電極124における外縁部124b(図1参照)においても、上述と同様に電子放出が行われる。
【0072】
<実施例>
次に、上述のように構成された電子放出素子120(エミッタ層123)の実施例について、評価結果に基づいて説明する。この実施例の電子放出素子120(エミッタ層123)の評価は、以下の通りの「電子放出効率」の変化を指標として行われたものである。
【0073】
図1を参照すると、下部電極122と上部電極124との間に印加される駆動電圧をVa、電子放出素子120から放出された電子を発光パネル101に向けて飛翔させるための外部電界を形成するためのバイアス電圧源102による電子加速電圧であるコレクタ電圧をVc、当該電子放出素子120から放出された電子による電流(コレクタ電極101bとバイアス電圧源102との間を流れる電流)をi、当該電子放出素子120の駆動電力をPとすると、上述の電子放出効率ηは、以下の式で示される。
【0074】
η=Vc×i/(P+Vc×i
ここで、駆動電力P=[素子のヒステリシス損P1]+[駆動回路での抵抗損P2]
P1は、図8に示されているQ−Vヒステリシスの面積(図8における斜線部分の面積)であり、
P2は、駆動の方法により、
0≦P2≦(駆動電圧Va×電荷量Q)−(前記Q−Vヒステリシスの面積)
=(図8における斜線部分の外側の面積)
で表される。なお、上記の不等式における左辺の0は、Q−Vヒステリシスに沿うような電力となるように電子放出素子を駆動させた場合である。
【0075】
そして、電子放出素子120の製造直後の電子放出効率(初期値)η0と、所定回数駆動後の電子放出効率η1と、を測定して、初期比r=η1/η0を求めることにより、実施例の電子放出素子120の評価が行われた。
【0076】
表1は、実施例及び比較例の組成及び特性値を示す表である。
【0077】
ここで、表1において、「PMN」の値は、エミッタ層123の前記主成分であるPMN−PT−PZ三成分固溶系組成物におけるPMNのモル分率(mol%)であり、前記一般式(I)におけるaの値を100倍した値に相当するものである。同様に、「PT」の値は、前記一般式(I)におけるbの値を100倍した値に相当するものであり、「PZ」の値は、前記一般式(I)におけるcの値を100倍した値に相当するものである。
【0078】
また、表1における「Sr」の値は、前記主成分における鉛がストロンチウムによって置換された量(mol%)であり、前記一般式(I)におけるxの値を100倍した値に相当するものである。さらに、「Mn」の値は、マンガンの添加量を、MnO2の添加量に換算した場合の値(重量%)である。
【0079】
すなわち、実施例1において、前記主成分は、37.5PMN−25PT−37.5PZを母材とし、この母材における鉛の8モル%をストロンチウムで置換したものである。そして、実施例1の組成は、二酸化マンガン(MnO2)の添加量に換算した場合に当該添加量が0.2重量%となるように、マンガンが添加されているものである(この材料を、37.5PMN−25PT−37.5PZ/8Sr+0.2wt%MnO2と省略表記する。以下同様。)。
【表1】

【0080】
この表1に示された各実施例及び各比較例の、上述の評価方法による評価結果を、表2に示す。なお、表2においては、初期比rを求める際に、1×109パルス駆動された後の電子放出効率η1が用いられた。
【表2】

【0081】
この表2の評価結果から明らかなように、ストロンチウムによる鉛の置換量が8ないし16%の範囲内であって、キュリー温度(Tc)が、実用温度(50℃近辺)よりも若干高い温度範囲である、60℃以上(70℃以上)150℃以下となる、実施例1ないし実施例5によれば、良好な初期値η0と初期比rとが得られた。
【0082】
これに対し、ストロンチウムによる鉛の置換量が18%であって、キュリー温度(Tc)が60℃未満である比較例1においては、初期比rは良好であるものの、初期値η0は非常に低い値となった(比較例2においては、初期値η0が低すぎるために、初期比rを求めなかった。)。
【0083】
また、37.5PMN−25PT−37.5PZ/12Sr+1wt%MnO2である実施例3(Tc=106℃)と、37.5PMN−25PT−37.5PZ/14Sr+1wt%MnO2である実施例4(Tc=88℃)においては、初期値η0及び初期比rが最も良好であった。すなわち、ストロンチウムによる鉛の置換量が12ないし15%、キュリー温度(Tc)が80℃以上110℃以下の場合において、最も良好な特性が得られた。
【0084】
以上に説明したように、各実施例によれば、マンガン添加によって良好な初期の電子放出効率を得つつ、ストロンチウムによる鉛の置換及びマンガン添加によって、繰り返し使用による電子放出効率の低下を効果的に改善するとともに、電子放出効率自体をも向上させることができた。
【0085】
なお、マンガン添加量が少ない(MnO2換算で1%以下:例えば実施例1のような0.2%程度)場合、マンガン添加によるキュリー温度の上昇度合いが小さい。よって、この場合、ストロンチウムによる鉛の置換量は、8ないし10mol%程度であることが好適である。
【0086】
<変形例の例示列挙>
なお、上述の実施形態及び実施例は、出願人が取り敢えず本願の出願時点において最良であると考えた、本発明の代表的な実施形態及び実施例が単に例示的に記述されているものにすぎない。本発明はもとより、上述の実施形態等に何ら限定されるものではない。よって、上述の実施形態や実施例に対しては、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、種々の変形が施され得ることは当然である。
【0087】
以下、変形例について、幾つか例示する。以下の変形例の説明において、上述の実施形態にて説明されているものと同様の構成及び機能を有する部材に対しては、上述の実施形態と同様の符号が付されているものとする。そして、かかる部材の説明については、技術的に矛盾しない範囲内において、上述の実施形態における説明が援用され得るものとする。
【0088】
もっとも、言うまでもなく、変形例とて、以下に列挙されたものに限定されるものではない。また、複数の変形例が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
【0089】
本発明(特に、本発明の課題を解決するための手段を構成する各構成要素における、作用的・機能的に表現されているもの)は、上述の実施形態及び実施例や、下記の変形例の記載に基づいて、限定解釈されてはならない。このような限定解釈は、(先願主義の下で出願を急ぐ)出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、発明の保護及び利用を目的とする特許法の目的に反し、許されない。
【0090】
(i)本発明に係る電子放出素子は、FED用に限定されない。また、本発明に係る電子放出素子の構成も、上述の実施形態の構成に限定されない。
【0091】
例えば、前記実施形態の電子放出素子120においては、エミッタ層123の下側表面123cに下部電極122が形成され、エミッタ層123の上側表面123aに上部電極124が形成されていた。もっとも、本発明はかかる構成のみならず、エミッタ層123の上側表面123aに第一電極及び第二電極の双方が形成された構成にも好適に適用され得るものである。
【0092】
(ii)基板121の材質としては、ガラスやセラミックスの他に、金属をも用いることができる。基板121を構成するセラミックスの種類には特に制限がない。もっとも、耐熱性、化学的安定性、及び絶縁性の点から、安定化された酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ムライト、窒化アルミニウム、窒化珪素、及びガラスからなる群より選択される少なくとも一種を含むセラミックスからなることが好ましい。機械的強度が大きく、靭性に優れる点から、安定化された酸化ジルコニウムが用いられることが更に好ましい。
【0093】
なお、ここにいう「安定化された酸化ジルコニウム」とは、安定化剤の添加により結晶の相転移が抑制された酸化ジルコニウムをいう。これには、部分安定化酸化ジルコニウムも包含される。安定化された酸化ジルコニウムとしては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、酸化イッテルビウム、酸化セリウム又は希土類金属の酸化物等の安定化剤を、1〜30モル%含有するものが用いられ得る。機械的強度が特に高くなる点で、酸化イットリウムを安定化剤として含有したものが好ましい。この酸化イットリウムの含有量は、1.5〜6モル%が好ましく、2〜4モル%が更に好ましい。また、更に酸化アルミニウムを0.1〜5モル%含有したものも好適に用いられ得る。
【0094】
安定化された酸化ジルコニウムの結晶相は、立方晶+単斜晶の混合相、正方晶+単斜晶の混合相、立方晶+正方晶+単斜晶の混合相などであってもよい。強度、靭性、及び耐久性の観点から、主たる結晶相が、正方晶、又は正方晶+立方晶の混合相であるものが好ましい。
【0095】
(iii)エミッタ層123の材質や形成方法も、上述の実施例で示されたもの以外の様々なものが用いられ得る。例えば、エミッタ層123の主成分は、37.5PMN−25PT−37.5PZに限定されない。具体的には、37.5PMN−37.5PT−25PZや、20PMN−43PT−37PZや、それらの周辺の組成も好適に用いられ得る。すなわち、上述の一般式に含まれる組成は、すべて好適に用いられ得る。
【0096】
また、エミッタ層123は、スクリーン印刷法、ディッピング法、塗布法、電気泳動法、エアロゾルデポジション法、イオンビーム法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相成長法(CVD)、グリーンシート法、アルコキシド法、共沈法、等の一般的な誘電体膜形成プロセスによって形成され得る。必要に応じて、熱処理が適宜行われ得る。
【0097】
また、マンガンの添加率としては、二酸化マンガン(MnO2)基準の他に、一酸化マンガン(MnO)や炭酸マンガン(MnCO3)基準も用いられ得る。
【0098】
(iv)本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素は、上述の実施形態・実施例や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能な、いかなる構造をも含む。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本実施形態に係る電子放出素子が適用されたディスプレイの概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示されている電子放出素子の要部を拡大した断面図である。
【図3】図1に示されている電子放出素子の等価回路構成を示す図である。
【図4】図1に示されている電子放出素子の他の等価回路構成を示す図である。
【図5】図1に示されている電子放出素子に印加される駆動電圧Vaの波形を示す図である。
【図6】図1に示されている電子放出素子の動作説明のための模式図である。
【図7】図1に示されている電子放出素子の動作説明のための模式図である。
【図8】誘電体材料のQ−Vヒステリシスを示す図である。
【符号の説明】
【0100】
100…ディスプレイ、 110…電子放出源装置、
120…電子放出素子、 121…基板、
122…下部電極、 123…エミッタ層、
124…上部電極、 125…エミッタ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:Pb1-xSrx(Mg1/3Nb2/3aTibZrc3
[当該一般式中、0.08≦x≦0.16、0.2≦a≦0.375、0.25≦b≦0.43、0.25≦c≦0.375、a+b+c=1である。]
で示される組成物を主成分としてキュリー温度Tc(℃)が60≦Tc≦150となるように形成された誘電体層からなり、減圧雰囲気下で所定の駆動電界が印加されることで当該雰囲気に向けて電子を放出し得るように構成されたエミッタ層と、
前記エミッタ層に前記駆動電界を印加し得るように、前記エミッタ層に設けられた、第一電極及び第二電極と、
を備え、
前記第一電極と前記第二電極との間で所定の駆動電圧が印加されて、前記エミッタ層に前記駆動電界が印加されることで、当該エミッタ層から前記減圧雰囲気に向けて電子が放出され得るように構成されたことを特徴とする電子放出素子。
【請求項2】
請求項1に記載の電子放出素子であって、
前記エミッタ層を構成する前記誘電体層には、マンガンが、MnO2の添加量に換算した場合に0.2ないし1.0重量%添加されていることを特徴とする電子放出素子。
【請求項3】
一般式:Pb(Mg1/3Nb2/3aTibZrc3
[当該一般式中、0.2≦a≦0.375、0.25≦b≦0.43、0.25≦c≦0.375、a+b+c=1である。]
で示される組成物を主成分としてキュリー温度Tc(℃)が60≦Tc≦150となるように形成された誘電体層からなり、減圧雰囲気下で所定の駆動電界が印加されることで当該雰囲気に向けて電子を放出し得るように構成されたエミッタ層と、
前記エミッタ層に前記駆動電界を印加し得るように、前記エミッタ層に設けられた、第一電極及び第二電極と、
を備え、
前記第一電極と前記第二電極との間で所定の駆動電圧が印加されて、前記エミッタ層に前記駆動電界が印加されることで、当該エミッタ層から前記減圧雰囲気に向けて電子が放出され得るように構成されたことを特徴とする電子放出素子。
【請求項4】
請求項3に記載の電子放出素子であって、
前記エミッタ層を構成する前記誘電体層には、マンガンが、MnO2の添加量に換算した場合に0.2ないし1.0重量%添加されていることを特徴とする電子放出素子。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の電子放出素子であって、
前記エミッタ層を構成する前記誘電体層の前記主成分における鉛の8ないし16mol%が、ストロンチウムによって置換されていることを特徴とする電子放出素子。
【請求項6】
一般式:Pb1-xSrx(Mg1/3Nb2/3aTibZrc3
[当該一般式中、0.08≦x≦0.16、0.2≦a≦0.375、0.25≦b≦0.43、0.25≦c≦0.375、a+b+c=1である。]
で示される組成物を主成分としてキュリー温度Tc(℃)が60≦Tc≦150となるように形成された誘電体層を備えたことを特徴とする誘電体素子。
【請求項7】
請求項6に記載の誘電体素子であって、
前記誘電体層には、マンガンが、MnO2の添加量に換算した場合に0.2ないし1.0重量%添加されていることを特徴とする誘電体素子。
【請求項8】
一般式:Pb(Mg1/3Nb2/3aTibZrc3
[当該一般式中、0.2≦a≦0.375、0.25≦b≦0.43、0.25≦c≦0.375、a+b+c=1である。]
で示される組成物を主成分としてキュリー温度Tc(℃)が60≦Tc≦150となるように形成された誘電体層を備えたことを特徴とする誘電体素子。
【請求項9】
請求項8に記載の誘電体素子であって、
前記誘電体層には、マンガンが、MnO2の添加量に換算した場合に0.2ないし1.0重量%添加されていることを特徴とする誘電体素子。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の誘電体素子であって、
前記誘電体層の前記主成分における鉛の8ないし16mol%が、ストロンチウムによって置換されていることを特徴とする誘電体素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−53023(P2008−53023A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227367(P2006−227367)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】