説明

読取装置、データキャリアシステムおよび読取装置の復調方法

【課題】幅広い共振周波数の非接触情報記憶媒体に対してもデータを確実に復調することができること。
【解決手段】非接触情報記憶媒体20から送出される無線信号を受信して復調する読取装置10において、非接触情報記憶媒体20が備えたアンテナ21に対する結合係数が異なるアンテナ1次コイル11−1,アンテナ2次コイル11−2,検出コイル11aと、アンテナ1次コイル11−1,アンテナ2次コイル11−2,検出コイル11aをそれぞれ接続し無線信号を復調する復調回路17a〜17cと、各復調回路17a〜17cからの出力をオア処理して復調出力するオア回路18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、少なくとも非接触情報記憶媒体から送出される無線信号を受信して復調する読取装置、データキャリアシステムおよび読取装置の復調方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ICを内蔵した非接触情報記憶媒体から無線によって非接触で通信が可能なデータキャリアシステムが盛んに導入されている。たとえば、カードにICを内蔵したICカードを用いた交通ゲート入退装置や入退出室管理装置、ICを内蔵したタグを物品に付けて物品管理を行う物流管理装置、腕時計にICを内蔵したICリストバンドを用いた入退出室管理装置など、様々な形状の非接触情報記憶媒体を用いたデータキャリアシステムがある。
【0003】
図16は、従来のデータキャリアシステムの概要構成を示すブロック図である。図16に示すように従来のデータキャリアシステムは、読取装置110とこの読取装置110の読取対象となるデータを有する非接触情報記憶媒体20とを有する。読取装置110は、キャリア信号発生部115が生成する所定のキャリア信号、たとえば13.56MHzのキャリア信号を増幅器116で増幅し、プリント基板111a上に形成されたループアンテナであるアンテナ111を介して磁界として出力する。
【0004】
一方、非接触情報記憶媒体20は、アンテナ111から出力された磁界を検出するループアンテナであるアンテナ21とデータ処理IC22とを有する。アンテナ21の共振周波数は、並列接続されたコンデンサC20によって調整される。ここで、非接触情報記憶媒体20が読取装置110側のアンテナ111に対して十分な電磁誘導を引き起こす範囲内に位置する場合、アンテナ21を介してデータ処理IC22側に電力が供給される。非接触情報記憶媒体20は、この状態で電力供給が行われるとともに、読み出し指示に対応したデータに応じて、デジタル信号処理部23がスイッチSWをオン、オフし、これによって受信したキャリア信号を変調し、読取装置110側にアンテナ21を介して送出する。
【0005】
読取装置110側は、変調された無線信号を受信し、復調回路117によってデータを復調し、デジタル信号処理部113に出力し、この結果をコンピュータ114に送出する。なお、復調回路117は、アンテナ111で受信した無線信号を検波回路117aが検波し、増幅回路117bがこの検波出力を増幅し、二値化回路117cが二値化したデジタルデータをデジタル信号処理部113に出力する。
【0006】
なお、アンテナ111は、放射磁界を増大させるため、図17に示すように、トランス結合した1次コイルと2次コイルとによって構成されるものがある。
【0007】
【特許文献1】特開2002−222400号公報
【特許文献2】特開2001−103101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来のデータキャリアシステムでは、読取装置110が非接触情報記憶媒体20側によって振幅変調された無線信号を復調することができない場合があった。ここで、この読取装置110側において復調できない場合について説明する。まず、図18(a)に示す送信信号によってスイッチSWをオン、オフすると、キャリア信号が変調され、読取装置110側のアンテナ111には、図18(b)に示すアンテナ受信電圧が発生する。この振幅変調された信号は図18(c)に示すように、復調回路117によって検波、二値化されたデータとして復調される。
【0009】
ここで、非接触情報記憶媒体20側の共振周波数は、13.56MHzなどのキャリア周波数近傍に設定されるが、製造ばらつきによって幅をもつ。あるいは、積極的に、複数の非接触情報記憶媒体20を識別可能とするために、15〜17MHz帯に共振周波数を設定する場合もある(特許文献1参照)。このような場合、変調波を認識できないヌル点が発生する。
【0010】
図19に示すように、非接触情報記憶媒体20側のアンテナ21と読取装置110側のアンテナ111とは、それぞれループ面が対向するように配置され、図20および図21は、このときのアンテナ21,111間の距離Lと信号電圧δV(=Va−Vb)との関係を、非接触情報記憶媒体20側の共振周波数fcをパラメータとして示したものである。図9は、読取装置110を非接触情報記憶媒体20の共振周波数が13.5MHzの場合に最良の読取状態になるように設定した場合を示している。この場合、図20に示すように、非接触情報記憶媒体20側の共振周波数が17MHzの場合、信号電圧δVは正であり変調波を認識できるが、共振周波数が15MHzの場合、ある距離Lで信号電圧δVが零となり、変調波を認識できないヌル点PP1が発生する。同様に、図21は、読取装置110を非接触情報記憶媒体20の共振周波数が15MHzの場合に最良の読取状態となるように設定した場合を示している。この場合も、共振周波数が17MHzの場合に信号電圧δVは正であり変調波を認識できるが、共振周波数が13.5MHzの場合、ある距離Lで信号電圧δVが零となり、変調波を認識できないヌル点PP2が発生する。すなわち、ある共振周波数に設定された読取装置110は、この設定された共振周波数以外の共振周波数をもつ非接触情報記憶媒体20に対してヌル点が発生し、変調波を認識できず、復調することができない場合がある。したがって、幅広い共振周波数をもつ非接触情報記憶媒体20に対してヌル点を形成しない読取装置110の出現が要望されていた。
【0011】
この問題を解決するため、非接触情報記憶媒体20からの受信信号の周波数特性に補正を加えるものがある(特許文献2参照)。図22(a)は、ヌル点が生成された場合における受信信号の周波数特性を示している。この特許文献2による補正は、図22(b)に示すように、変調されたデータ成分が含まれるキャリア周波数の上側帯波のレベルを大きくし、下側帯波のレベルを小さくして受信するようにし、ヌル点が生成される場合であってもその後の補正処理によって復調できるようにしている。
【0012】
しかし、図22の状態とは異なる距離の場合に、図23(a)に示す受信信号の周波数特性をもつ場合がある。この場合、上述したように上側帯波のレベルを大きくし、下側帯波のレベルを小さくする補正処理を施すと、図23(b)に示す受信信号の周波数特性になり、上側帯波と下側帯波のレベルが同じになって、復調できない場合が発生する。すなわち、上述した補正処理を行っても、距離Lが異なる位置で他の共振周波数に対して再びヌル点が生じ、確実に復調することができないという問題点があった。
【0013】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、幅広い共振周波数の非接触情報記憶媒体に対してもデータを確実に復調することができる読取装置、データキャリアシステムおよび読取装置の復調方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1にかかる読取装置は、非接触情報記憶媒体から送出される無線信号を受信して復調する読取装置において、前記非接触情報記憶媒体が備えたアンテナに対する結合係数が異なる複数のアンテナと、前記複数のアンテナにそれぞれ接続され各アンテナが受信した前記無線信号を復調する複数の復調回路と、各復調回路からの出力をオア処理して復調出力するオア処理回路と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項2にかかる読取装置は、上記の発明において、前記複数の復調回路を有した復調手段は、前記複数のアンテナから入力される信号の全てあるいは一部を加算処理、減算処理、あるいは加減算処理を行う演算回路を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、請求項3にかかる読取装置は、上記の発明において、前記演算回路は、共振周波数をパラメータとしてアンテナから入力される信号電圧の距離依存性にヌル点を形成しないように加算処理、減算処理、あるいは加減算処理を行うことを特徴とする。
【0017】
また、請求項4にかかる読取装置は、上記の発明において、前記演算回路は、共振周波数をパラメータとしてアンテナから入力される信号電圧の距離依存性における信号電圧の絶対値が高くなるように加算処理、減算処理、あるいは加減算処理を行うことを特徴とする。
【0018】
また、請求項5にかかる読取装置は、上記の発明において、前記複数の復調回路を有した復調手段は、検波回路と、この検波回路によって検波された信号を増幅する増幅回路と、この増幅回路によって増幅された二値化回路とを有し、前記演算回路は、前記二値化回路の前段に設けられることを特徴とする。
【0019】
また、請求項6にかかる読取装置は、上記の発明において、前記複数の復調回路を有した復調手段は、検波回路と、この検波回路によって検波された信号を増幅する増幅回路と、この増幅回路によって増幅された二値化回路とを有し、前記演算回路は、前記増幅回路の前段に設けられることを特徴とする。
【0020】
また、請求項7にかかる読取装置は、上記の発明において、前記複数の復調回路を有した復調手段は、検波回路と、この検波回路によって検波された信号を増幅する増幅回路と、この増幅回路によって増幅された二値化回路とを有し、前記演算回路は、前記検波回路の前段に設けられることを特徴とする。
【0021】
また、請求項8にかかる読取装置は、上記の発明において、前記演算回路は、前記複数のアンテナから入力される信号を共用して減算処理、加算処理、あるいは加減算処理を行うことを特徴とする。
【0022】
また、請求項9にかかる読取装置は、上記の発明において、前記複数のアンテナの少なくとも1つは、他のアンテナとトランス結合されたアンテナであることを特徴とする。
【0023】
また、請求項10にかかる読取装置は、上記の発明において、前記複数のアンテナの少なくとも1つは、送受信共用のアンテナであることを特徴とする。
【0024】
また、請求項11にかかる読取装置は、上記の発明において、前記複数のアンテナの少なくとも1つは、受信専用のアンテナであることを特徴とする。
【0025】
また、請求項12にかかる読取装置は、上記の発明において、前記複数のアンテナの共振周波数は、前記非接触情報記憶媒体が備えたアンテナの共振周波数を含む近傍の異なる共振周波数であることを特徴とする。
【0026】
また、請求項13にかかるデータキャリアシステムは、非接触情報記憶媒体と、前記非接触情報記憶媒体からの無線信号を受信して復調する請求項1〜12のいずれか一つに記載の読取装置と、を備えたことを特徴とする。
【0027】
また、請求項14にかかるデータキャリアシステムは、上記の発明において、前記非接触情報記憶媒体は、前記読取装置側から受信したキャリア信号を変調して前記読取装置側にデータを送信することを特徴とする。
【0028】
また、請求項15にかかる読取装置の復調方法は、非接触情報記憶媒体から送出される無線信号を受信して復調する読取装置の復調方法において、前記非接触情報記憶媒体が備えたアンテナに対する結合係数が異なる複数のアンテナにそれぞれ接続された複数の復調回路が、各アンテナが受信した前記無線信号を復調する復調ステップと、各復調回路からの出力をオア処理して復調出力するオア処理ステップと、を含むことを特徴とする。
【0029】
また、請求項16にかかる読取装置の復調方法は、上記の発明において、前記復調ステップは、前記複数のアンテナから入力される信号の全てあるいは一部を加算処理、減算処理、あるいは加減算処理を行う演算ステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
この発明にかかる読取装置、データキャリアシステムおよび読取装置の復調方法では、非接触情報記憶媒体が備えたアンテナに対する結合係数が異なる複数のアンテナにそれぞれ接続された複数の復調回路が、各アンテナが受信した無線信号を復調し、オア処理回路が、各復調回路からの出力をオア処理して復調出力するようにしているので、幅広い共振周波数の非接触情報記憶媒体に対してもデータを確実に復調することができるという効果を奏する。
【0031】
また、この発明にかかる読取装置、データキャリアシステムおよび読取装置の復調方法では、前記複数の復調回路を有した復調手段の演算回路が、前記複数のアンテナから入力される信号の全てあるいは一部を加算処理、減算処理、あるいは加減算処理を行い、アンテナから入力される信号電圧の距離依存性にヌル点を形成しないように、さらには信号電圧の絶対値を大きくしてオア処理回路に入力するようにしているので、一層、復調処理を確実に行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、この発明を実施するための最良の形態である読取装置、データキャリアシステムおよび読取装置の復調方法について説明する。
【0033】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1にかかる読取装置を備えたデータキャリアシステムについて説明する。図1は、この発明の実施の形態1にかかるデータキャリアシステムの構成を示す模式図である。図1に示すように、このデータキャリアシステムは、読取装置10と非接触情報記憶媒体20とを有し、それぞれが非接触で通信を行う。
【0034】
読取装置10は、大きくアンテナ系11、アナログ処理を行う信号処理回路12、デジタル信号処理部13、およびコンピュータ14を有する。アンテナ系11は、図16に示したアンテナ111に対応し、アンテナ1次コイル11−1,アンテナ2次コイル11−2および検出コイル11aを有する。アンテナ1次コイル11−1とアンテナ2次コイル11−2とは、図17に示したように互いにトランス結合したループアンテナであり、物理的に別体で構成され、送受共用のアンテナである。一方、検出コイル11aは、受信専用のアンテナである。
【0035】
信号処理回路12は、キャリア信号発生器15および増幅器16を有し、キャリア信号発生器15が発生した所定のキャリア信号を増幅器が増幅してアンテナ1次コイル11−1に送出し、このアンテナ1次コイル11−1およびこれにトランス結合したアンテナ2次コイル11−2を介して、キャリア信号を無線信号として送出する。信号処理回路12は、さらに復調部17を有し、この復調部17は、3つの復調回路17a〜17cおよびオア回路18を有する。
【0036】
復調回路17a〜17cは、アンテナ2次コイル11−2,検出コイル11a,アンテナ1次コイル11−1にそれぞれ接続され、それぞれ検出された信号を復調する。オア回路18は、各復調回路17a〜17cからの出力をオア処理し、その結果を最終的な復調出力としてデジタル信号処理部13に出力する。
【0037】
一方、非接触情報記憶媒体20は、図16で示した非接触情報記憶媒体20と同じ構成、動作を行う。すなわち、アンテナ21で受信したキャリア信号をダイオードD2およびコンデンサC2からなる整流回路によって電力を蓄積し、FETなどによって実現されるスイッチSWをオン、オフすることによって受信したキャリア信号を変調しアンテナ21を介して出力する。このキャリア信号に対する変調度は抵抗R2の値を設定することによって調整できる。
【0038】
ここで、アンテナ1次コイル11−1,アンテナ2次コイル11−2,および検出コイル11aは、非接触情報記憶媒体20のアンテナ21に対する結合係数がそれぞれ異なって設定されている。図2および図3は、読取装置10が検出する信号電圧δVの距離L依存性を示し、図2が非接触情報記憶媒体20の共振周波数が13.5MHzのときであり、図3が非接触情報記憶媒体20の共振周波数が15MHzのときである。図2および図3において、非接触情報記憶媒体20の共振周波数がいずれの場合であっても、読取装置10側において復調不能となることがない。
【0039】
たとえば、図2では、アンテナ2次コイル11−2の特性曲線LL2は、ヌル点P1を生じるが、他のアンテナ1次コイル11−1の特性曲線LL1および検出コイル11aの特性曲線LL3は、同じ距離Lのときにヌル点を生じておらず信号電圧δVを検出でき、オア回路18が、これらアンテナ1次コイル11−1および検出コイル11aの信号電圧δVの各復調結果のオア処理を行うことによって確実に復調を行うことができる。また、検出コイル11aにヌル点P2が生じるときも、アンテナ1次コイル11−1およびアンテナ2次コイル11−2の信号電圧δVは零でないため、オア処理を施すことによって確実に復調を行うことができる。
【0040】
同様に、図3では、アンテナ1次コイル11−1,アンテナ2次コイル11−2,検出コイル11aのそれぞれにヌル点P4,P5,P6が生じているが、各距離Lにおいて他のアンテナの信号電圧δVが零とならないため、オア処理を施すことによって確実に復調を行うことができる。
【0041】
(実施の形態2)
つぎに、この発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、送受信アンテナとして機能するアンテナ1次コイル11−1およびアンテナ2次コイル11−2の双方で受信した受信信号を復調回路17a,17cが復調処理するようにしていたが、この実施の形態2では、受信専用のアンテナのみによって受信信号の復調処理を行うようにしている。
【0042】
図4は、この発明の実施の形態2にかかる読取装置の主要構成を示す模式図である。図4に示すように、この読取装置は、実施の形態1に示した読取装置10の構成に、さらに検出コイル11b,11cを付加し、3つの受信専用の検出コイル11a〜11cに接続された復調回路37a〜37cを設けた。この復調回路37a〜37cは、復調回路17a〜17cと同じ構成であり、復調回路117と同様に、検波回路117a,増幅回路117b,二値化回路117cを有する。したがって、アンテナ1次コイル11−1およびアンテナ2次コイル11−2は、双方とも送信専用アンテナとして機能し、復調回路は接続されない。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0043】
ここで、検出コイル11a〜11cは、実施の形態1と同様に非接触情報記憶媒体20のアンテナ21に対する結合係数がそれぞれ異なって設定されている。このため、実施の形態1と同様に、ある距離Lにおいてヌル点が発生する場合があるが、この距離Lにおいて他のアンテナの信号電圧δVが零とはならないので、オア処理を行うことによって確実に復調することができる。
【0044】
さらに、この実施の形態2では、送信アンテナと受信アンテナとを分離して構成したため、共用器などの構成を必要とせず、読取装置側の電力ロスを低減することができる。
【0045】
なお、上述した復調回路17a〜17cあるいは復調回路37a〜37cは、いずれも3つの復調回路とする構成であったが、これに限らず、2つあるいは4つ以上の復調回路を設けてもよい。その場合、各復調回路が接続されるコイルの結合係数は異ならせる。
【0046】
(実施の形態3)
つぎに、この発明の実施の形態3について説明する。上述した実施の形態1,2では、3つの復調回路17a〜17cを有した復調部17あるいは3つの復調回路37a〜37cを有した復調部37を用いていたが、この実施の形態3では、減算手段あるいは加算手段を用いることによって、さらに確実に復調処理ができるようにしている。
【0047】
図5は、この発明の実施の形態3であるデータキャリアシステムの復調部の構成を示すブロック図である。図5に示すように、この復調部40は、図1に示した復調部17に対応する復調部であり、この復調部40は、各復調回路17a〜17cと同じ構成をもつ復調回路41と、減算部44を有した復調回路44と、オア回路18とを有する。
【0048】
復調回路41は、図16の復調回路117と同様に、それぞれ順次接続された検波回路41a,増幅回路41b,二値化回路41cを有し、復調回路17cの機能を実現する。一方、復調回路44は、アンテナ2次コイル11−2からの信号を検波する検波回路42aと、検出コイル11aからの信号を検波する検波回路43aと、検波回路42aの出力を増幅する増幅回路42bと、検波回路43bの出力を増幅する増幅回路43bと、増幅回路42bの出力から増幅回路43bの出力を減算する減算回路44と、減算回路44の出力をデジタル値に変換出力する二値化回路42とを有する。
【0049】
減算回路44は、アンテナ2次コイル11−2からのアナログ信号から、検出コイル11aからのアナログ信号を減算し、この減算結果を、二値化回路42cを介してオア回路18に出力するが、この減算出力にはヌル点を形成しない距離依存性を持たせることができる。
【0050】
図6および図7は、読取装置10が検出する信号電圧δVの距離L依存性を示し、図6が非接触情報記憶媒体20の共振周波数が13.5MHzのときであり、図7が非接触情報記憶媒体20の共振周波数が15MHzのときである。ここで、特性曲線LL10は、アンテナ2次コイル11−2の特性曲線LL2から、検出コイル11aの特性曲線LL3を減算したものであり、減算回路44から出力される信号電圧δVに相当する。この場合、特性曲線LL3にはヌル点が形成されないため、確実に信号電圧δVを読み取ることができる。また、図7に示した特性曲線LL20も、減算回路44から出力されるものであり、共振周波数が15MHzのときであっても、信号電圧δVにヌル点が形成されない。この結果、たとえば、共振周波数が13.5MHzのとき、図6に示すアンテナ1次コイル11−1の特性曲線LL1と、減算回路44から得られる特性曲線LL10とのオア処理によって復調されるが、この場合、オア回路18に入力される復調結果のいずれにもヌル点が生じていないため、オア回路18からの出力がヌルになることがない。また、共振周波数が15MHzのときでも、減算処理を行うことによって、特性曲線上における3つのヌル点が1つのヌル点のみとなり、信頼性の高い復調処理が可能になる。すなわち、オア回路18に入力される複数の復調結果のうちの少なくとも1つにヌル点のない距離依存性をもたせ、これによって復調処理の確実性を高めることができる。
【0051】
特に、ヌル点が形成される特性曲線がある場合に、実施の形態1,2では、他の特性曲線がオア回路18によって選択出力されるが、この他の特性曲線のヌル点の信号電圧が低い場合、上述した減算回路44によって信号電圧を大きくすることができるので、復調処理の確実性を高めることができる。
【0052】
図8および図9は、減算回路44の具体的な構成を示す図である。減算回路44は、図8に示すようにオペアンプ51を用いた回路としてもよいし、図9に示す磁気回路としてもよい。図9に示した磁気回路では、磁性体コア52を用いて磁気回路を形成し、入力側におけるコイル52a、52bの巻き方向を逆にすることによって減算処理を行っている。
【0053】
なお、図5に示した復調部40では、減算回路44を用いていたが、これに限らず、減算回路44に替えて加算回路を設けるようにしてもよい。特性曲線同士の加算処理によってもヌルのない特性曲線あるいは全体的に大きな復調値をもつ特性曲線を得ることができるからである。
【0054】
図10および図11は、この加算回路の具体的な構成を示す図である。加算回路は、減算回路44と同様に、図10に示すようにオペアンプ53を用いた回路としてもよいし、図11に示す磁気回路としてもよい。図11に示した磁気回路では、磁性体コア52を用いて磁気回路を形成し、入力側におけるコイル52a、52bの巻き方向を同一方向とすることによって加算処理を行っている。
【0055】
つぎに、この実施の形態3の変形例について説明する。図12は、この発明の実施の形態3であるデータキャリアシステムの復調部の第1変形例を示す回路図である。図12に示すように、この復調部50は、減算回路54を検波回路42a,43aと増幅回路42bとの間に設けている。
【0056】
この復調部50の構成によっても、図5に示した復調部40と同じ作用効果を得ることができるとともに、さらに、増幅回路を1つ減らすことができ、構成が簡易になる。
【0057】
図13は、この発明の実施の形態3であるデータキャリアシステムの復調部の第2変形例を示す回路図である。図13に示すように、この復調部60は、復調回路41と同じ構成の復調回路61の前段に減算回路64を設けている。換言すれば、検波回路42a,43aの前段に減算回路64を設けているため、復調部50の構成から1つの検波回路を減らすことができるため、一層、簡易な構成になる。
【0058】
図14は、この発明の実施の形態3であるデータキャリアシステムの復調部の第3変形例を示す回路図である。図14に示すように、この復調部70は、図13に示した復調回路41の前段にさらに減算回路63を設け、この減算回路63がアンテナ1次コイル11−1からの信号から、アンテナ2次コイル11−2からの信号を減算し、この減算結果を復調回路41が復調処理するようにしている。
【0059】
この第3変形例では、減算回路が1つ増えるため、さらにヌル点のない特性曲線を得ることができるため、一層、復調処理の確実性を高めることができる。ここで、各特性曲線では、ヌル点のみに限らず、信号電圧δVの値が大きくなるように減算処理あるいは加算処理を行うことができるため、この点からも復調処理の確実性を高めることができる。
【0060】
なお、上述した実施の形態3およびその変形例では、いずれもアンテナ1次コイル11−1、アンテナ2次コイル11−2、および検出コイル11aの3つのアンテナからの信号入力に対する復調処理を行っていたが、これに限らず、2つのアンテナからの信号入力に対する復調処理時であっても、上述した減算回路あるいは加算回路を用いて、復調処理の確実性を高めることができる。
【0061】
たとえば、図15は、2つのアンテナからの信号入力に対して減算回路を適用した復調部の構成を示す図であり、この復調部80では、アンテナ1次コイル11−1からの信号とアンテナ2次コイル11−2からの信号とを用いて復調処理を行っている。この復調部80では、2つの復調回路41,61を設けるとともに、復調回路61の前段に減算回路84が設けられている。復調回路41にはアンテナ1次コイル11−1からの信号が入力され、復調回路41は、この信号の復調処理を行ってオア回路18に出力する。一方、減算回路84には、アンテナ1次コイル11−1からの信号とアンテナ2次コイル11−2からの信号とが入力され、減算回路は、アンテナ1次コイル11−1の信号から、アンテナ2次コイル11−2の信号を減算し、その減算結果を復調回路61に出力する。復調回路61は、入力された減算結果を復調処理し、オア回路18に出力する。このように、2つのアンテナからの信号入力であっても、減算回路あるいは加算回路を用いたオア処理を行うことができる。
【0062】
なお、上述した実施の形態3では、減算回路あるいは加算回路を設けるようにしていたが、たとえば図14に示すように2つの以上の減算回路を設ける場合には、減算回路と加算回路とを適宜組み合わせて構成するようにしてもよい。
【0063】
また、上述した実施の形態3では、減算回路あるいは加算回路を実施の形態1に適用して説明したが、これに限らず、実施の形態2に適用することができる。この場合、実施の形態3に示した復調部を復調部37に適用すればよい。
【0064】
なお、上述した実施の形態3に示した減算回路あるいは加算回路は、2つの入力信号に対する減算処理あるいは加算処理を行うものであったが、これに限らず、3つ以上の入力信号に対する減算処理あるいは加算処理、さらには加減算処理を行うようにしてもよい。
【0065】
また、上述した実施の形態1〜3では、いずれも読取装置(リーダ)10として説明したが、これに限らず、読取装置10は、非接触情報記憶媒体20に対して書込を行うリーダライタであってもよい。また、読取装置10は、コンピュータ14に接続されて遠隔制御されるものとして説明したが、これに限らず、可搬型あるいは携帯型の読取装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の実施の形態1にかかるデータキャリアシステムの構成を示す模式図である。
【図2】非接触情報記憶媒体の共振周波数が13.5MHzに設定されている場合における図1に示した読取装置の各アンテナが受信する信号電圧の距離依存性を示す図である。
【図3】非接触情報記憶媒体の共振周波数が15MHzに設定されている場合における図1に示した読取装置の各アンテナが受信する信号電圧の距離依存性を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態2にかかる読取装置の主要構成を示す模式図である。
【図5】この発明の実施の形態3にかかるデータキャリアシステムの復調部の構成を示す回路図である。
【図6】減算処理を施した場合における共振周波数が13.5MHzの信号電圧の距離依存性を示す図である。
【図7】減算処理を施した場合における共振周波数が15MHzの信号電圧の距離依存性を示す図である。
【図8】オペアンプを用いて減算回路を実現した回路図である。
【図9】磁気回路を用いて減算回路を実現した回路図である。
【図10】オペアンプを用いて加算回路を実現した回路図である。
【図11】磁気回路を用いて加算回路を実現した回路図である。
【図12】この発明の実施の形態3の第1変形例にかかるデータキャリアシステムの復調部の構成を示す回路図である。
【図13】この発明の実施の形態3の第2変形例にかかるデータキャリアシステムの復調部の構成を示す回路図である。
【図14】この発明の実施の形態3の第3変形例にかかるデータキャリアシステムの復調部の構成を示す回路図である。
【図15】2つのアンテナ入力でに減算回路を適用した回路図である。
【図16】従来のデータキャリアシステムの構成を示す模式図である。
【図17】従来のトランス結合されたアンテナの構成を示す図である。
【図18】従来のデータキャリアシステムにおける非接触情報記憶媒体から読取装置に送られる信号の遷移を示す図である。
【図19】非接触情報記憶媒体のアンテナと読取装置のアンテナとの位置関係を示す図である。
【図20】読取装置側のアンテナに誘起される信号電圧の距離依存性の一例を示す図である。
【図21】読取装置側のアンテナに誘起される信号電圧の距離依存性の一例を示す図である。
【図22】データ成分が含まれる上側帯波のレベルを大きくし、下側帯波のレベルを小さくする受信特性の補正を行ってヌル点を解消する状態を示すスペクトル図である。
【図23】図11に示した受信特性の補正を行ってもヌル点が生じる場合を示すスペクトル図である。
【符号の説明】
【0067】
10 読取装置
11 アンテナ系
11a〜11c 検出コイル
11−1 アンテナ1次コイル
11−2 アンテナ2次コイル
12 信号処理回路
13 デジタル信号処理部
14 コンピュータ
15 キャリア信号発生部
16 増幅器
17,37,40,50,60,70,80 復調部
17a〜17c,37a〜37c,41,42,45,61 復調回路
18 オア回路
20 非接触情報記憶媒体
21 アンテナ
22 データ処理IC
23 デジタル信号処理部
41a,42a,43a 検波回路
41b,42b,43c 増幅回路
41c,42c 二値化回路
44,54,63,64 減算回路
51,53 オペアンプ
52,54 磁性体コア
52a,52b,54a,,54b コイル
C1,C2,C20 コンデンサ
D2 ダイオード
R2 抵抗
SW スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触情報記憶媒体から送出される無線信号を受信して復調する読取装置において、
前記非接触情報記憶媒体が備えたアンテナに対する結合係数が異なる複数のアンテナと、
前記複数のアンテナにそれぞれ接続され各アンテナが受信した前記無線信号を復調する複数の復調回路と、
各復調回路からの出力をオア処理して復調出力するオア処理回路と、
を備えたことを特徴とする読取装置。
【請求項2】
前記複数の復調回路を有した復調手段は、前記複数のアンテナから入力される信号の全てあるいは一部を加算処理、減算処理、あるいは加減算処理を行う演算回路を備えたことを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項3】
前記演算回路は、共振周波数をパラメータとしてアンテナから入力される信号電圧の距離依存性にヌル点を形成しないように加算処理、減算処理、あるいは加減算処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の読取装置。
【請求項4】
前記演算回路は、共振周波数をパラメータとしてアンテナから入力される信号電圧の距離依存性における信号電圧の絶対値が高くなるように加算処理、減算処理、あるいは加減算処理を行うことを特徴とする請求項2または3に記載の読取装置。
【請求項5】
前記複数の復調回路を有した復調手段は、検波回路と、この検波回路によって検波された信号を増幅する増幅回路と、この増幅回路によって増幅された二値化回路とを有し、
前記演算回路は、前記二値化回路の前段に設けられることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一つに記載の読取装置。
【請求項6】
前記複数の復調回路を有した復調手段は、検波回路と、この検波回路によって検波された信号を増幅する増幅回路と、この増幅回路によって増幅された二値化回路とを有し、
前記演算回路は、前記増幅回路の前段に設けられることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一つに記載の読取装置。
【請求項7】
前記複数の復調回路を有した復調手段は、検波回路と、この検波回路によって検波された信号を増幅する増幅回路と、この増幅回路によって増幅された二値化回路とを有し、
前記演算回路は、前記検波回路の前段に設けられることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一つに記載の読取装置。
【請求項8】
前記演算回路は、前記複数のアンテナから入力される信号を共用して減算処理、加算処理、あるいは加減算処理を行うことを特徴とする請求項2〜7のいずれか一つに記載の読取装置。
【請求項9】
前記複数のアンテナの少なくとも1つは、他のアンテナとトランス結合されたアンテナであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の読取装置。
【請求項10】
前記複数のアンテナの少なくとも1つは、送受信共用のアンテナであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の読取装置。
【請求項11】
前記複数のアンテナの少なくとも1つは、受信専用のアンテナであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の読取装置。
【請求項12】
前記複数のアンテナの共振周波数は、前記非接触情報記憶媒体が備えたアンテナの共振周波数を含む近傍の異なる共振周波数であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の読取装置。
【請求項13】
非接触情報記憶媒体と、
前記非接触情報記憶媒体からの無線信号を受信して復調する請求項1〜12のいずれか一つに記載の読取装置と、
を備えたことを特徴とするデータキャリアシステム。
【請求項14】
前記非接触情報記憶媒体は、前記読取装置側から受信したキャリア信号を変調して前記読取装置側にデータを送信することを特徴とする請求項13に記載のデータキャリアシステム。
【請求項15】
非接触情報記憶媒体から送出される無線信号を受信して復調する読取装置の復調方法において、
前記非接触情報記憶媒体が備えたアンテナに対する結合係数が異なる複数のアンテナにそれぞれ接続された複数の復調回路が、各アンテナが受信した前記無線信号を復調する復調ステップと、
各復調回路からの出力をオア処理して復調出力するオア処理ステップと、
を含むことを特徴とする読取装置の復調方法。
【請求項16】
前記復調ステップは、前記複数のアンテナから入力される信号の全てあるいは一部を加算処理、減算処理、あるいは加減算処理を行う演算ステップを含むことを特徴とする請求項15に記載の読取装置の復調方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−14281(P2006−14281A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128124(P2005−128124)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】