説明

調光方法および調光回路

【課題】人間の目の感度に応じた明るさの変化を実現できるようにする。
【解決手段】所定時間経過毎に、現在輝度データD1に調整データを加算又は減算して新たな現在輝度データD5を生成し、該生成を、該新たな現在輝度データD5が目標輝度データD2になるまで繰り返す。前記所定時間を、新たな現在輝度データD5の値が小さいときは長く、大きいときは短く制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDの輝度を現在輝度から目標輝度に切り替える調光方法および調光回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図7に従来の調光回路を示す。LEDを調光するPWM信号を作成する調光データを制御する調光回路では、比較器3において、レジスタ2に記憶された目標輝度データD2から現在輝度データD5を差し引いた差分データD3(=D2−D5)が正のときは、加算器5において、レジスタ1に記憶された現在輝度データD1に「+1」を行い、負のときは「−1」を行って、現在輝度データD5が目標輝度データD2に近づくよう順次更新される。現在輝度データD1がLEDドライバ(図示せず)に出力されるが、場合によっては、現在輝度データD5をLEDドライバに出力することも行われる。そして、この更新により、差分データD3がゼロ(D3=D2−D5=0)になると、セレクタ7が切り替えられて、目標輝度データD2がレジスタ1に格納され、次のクロックでレジスタ1から現在輝度データD1として出力する。以後、レジスタ2への入力データD0が変化するたびにレジスタ2の目標輝度データD2が切り替えられて、同様な動作が繰り返され、現在輝度データD1が更新される。この種の調光方法は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
図8は図7の調光回路によって変化するLEDの輝度特性を示す図である。このように、図7の調光回路は、一定の値(ここでは「1」)を加算又は減算して調光する構成であるので、その変化は直線的となる。しかし、人間の目の感度は対数的であるので、暗い場面での変化はよく認識できるが、明るい場面での変化はわかりにくい。
【0004】
そこで、人間の目の感度に対応するような対策を施した調光回路として、図9に示す調光回路がある。この調光回路は、図7の調光回路によって得られた現在輝度データD1を、ガンマ曲線等の補正データを記憶したROMテーブル12で補正するようにしたものである。ROMテーブル12としては、図10に示すように、輝度データ(設定値)が小さい(暗い)領域は変換値(PWM値)の変化が小さく、大きくなる(明るい)と変化が大きくなるような特性のものを使用すると、人間の目の感度に対応させることができる。このROMテーブル12は、設定値を4ビット(0〜15)とし、PWM値を7ビット(0〜127)とした例のテーブルである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2004−207411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、得られた目標輝度データD1を直接変換するROMテーブルを使用する構成では、出力データを所定ビット(図10では7ビット)に正規化するので、設定できる変換特性が固定されるため、同じデータが連続する領域やデータの飛ぶ領域が発生する。このため、本来設定できる分解能よりも粗い分解能でしか設定できず、微調整ができず、特に暗い場面での粗さが目立ち、人間の目の感度に応じた明るさの変化を実現できないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、簡単な回路構成により、人間の目の感度に応じた明るさの変化を実現できるようにした調光方法および調光回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明の調光方法は、所定時間経過毎に、現在輝度データに調整データを加算又は減算して新たな現在輝度データを生成し、該生成を、該新たな現在輝度データが目標輝度データになるまで繰り返す調光方法であって、前記所定時間を、前記現在輝度データの値が小さいときは長く、前記現在輝度データの値が大きいときは短く制御することを特徴とする。
【0009】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の調光方法において、前記目標輝度データから前記新たな現在輝度データを差し引いた差分データが正のときは、前記現在輝度データに前記調整データを加算し、前記差分データが負のときは、前記現在輝度データから前記調整データを減算し、これを前記所定時間経過毎に繰り返すことを特徴とする。
【0010】
請求項3にかかる発明は、請求項2に記載の調光方法において、前記調整データを、固定のデータ、又は前記現在輝度データに比例したデータとしたことを特徴とする。
【0011】
請求項4にかかる発明の調光回路は、所定時間経過毎に、現在輝度データに調整データを加算又は減算して新たな現在輝度データを生成し、該生成を、該新たな現在輝度データが目標輝度データになるまで繰り返す調光回路であって、前記所定時間を、前記現在輝度データの値が小さいときは長く、前記現在輝度データの値が大きいときは短く制御する現在輝度データ更新手段を有することを特徴とする。
【0012】
請求項5にかかる発明は、請求項4に記載の調光回路において、前記目標輝度データから前記新たな現在輝度データを差し引いた差分データが正のときは、前記現在輝度データに前記調整データを加算し、前記差分データが負のときは、前記現在輝度データから前記調整データを減算し、これを前記所定時間経過毎に繰り返す手段を有することを特徴とする。
【0013】
請求項6にかかる発明は、請求項4に記載の調光回路において、前記調整データを、固定のデータ、又は前記現在輝度データに比例したデータとしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、現在輝度データを目標輝度データに向けて段階的に変化させる際に、現在輝度データが新たな現在輝度データに変化するまでの時間が、現在輝度データの値が小さいときは長く、大きいときは短くなるので、輝度変化を暗い場面では遅く、明るい場面では速くでき、人間の目の感度に応じた明るさの変化を実現できる。また、調整データを現在輝度データに比例したデータとすることにより、輝度変化を暗い場面では細かく、明るい場面では粗くでき、より人間の目の感度に応じた明るさの変化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施例の調光回路の回路図である。
【図2】第1の実施例の調光回路のROMテーブル6の内容の説明図である。
【図3】第1の実施例の動作のタイミングチャートである。
【図4】本発明の第2の実施例の調光回路の回路図である。
【図5】図4のROMテーブル10、6Aの内容の説明図である。
【図6】第2の実施例の動作のタイミングチャートである。
【図7】従来の調光回路の回路図である。
【図8】図7の調光回路の調光特性図である。
【図9】別の従来の調光回路の回路図である。
【図10】図9のROMテーブルの変換特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施例>
図1に本発明の第1の実施例の調光回路を示す。図1において、1は現在輝度データD1を記憶するレジスタ、2は入力データD0を記憶して目標輝度データD2として出力するレジスタ、3は目標輝度データD2から新たな現在輝度データD5を差し引いた差分データD3(=D2−D7)を演算する比較器である。4は切替器であり、差分データD3が正のときは調整データD4=「+1」を、負のときはD4=「−1」を出力し、ゼロのときは何も出力しない(D4=0)。5は現在輝度データD1と調整データD4を加算する加算器である。6はROMテーブルであり、レジスタ1から出力する現在輝度データD1をアドレスとして、読み出しデータD6を出力する。7は読み出しデータD6の値がロードされるとその値をクロック毎にダウンカウントするカウンタ、8はそのカウンタ7の出力データD7が00hになるとパルスデータD8を生成する比較器である。パルスデータD8が生成されると、カウンタ7がクリアされるととに、レジスタ1のから出力する現在輝度データD1が新たな現在輝度データD5に更新される。図2にROMテーブル6の内容を示した。
【0017】
図3に本実施例の動作のタイムチャートを示した。なお、この図3では、D1,D6,D7,D5は8ビットで表した。本実施例の調光回路はすべて基準クロックCLKに同期して動作する。いま、目標輝度データD2=15h、現在輝度データD1=00hとする。t0において、現在輝度データD1=00hであるので、ROMテーブル6からはD6=03hが読み出され、カウンタ7にロードされる。このとき、D2>D5でD3=+であるので、調整データD4=+1となり、D5=00h+01h=01hとなる。この後、1クロックごとにカウンタ7がダウンカウントされていき、4クロック目でD7=00hになると、比較器8がこれを検出して、パルスデータD8が立上がる。これにより、カウンタ7がクリアされるととともに、レジスタ1が新たな現在輝度データD5=01hを取り込んで現在輝度データD1として出力する。よって、現在輝度データD1は01hとなる。このため、ROMテーブル6からデータD6=03hが読み出される。これは前回と同じデータである。よって、上記と同様な動作が4クロック分行われる。このようにして、時刻t1直前では、現在データD1は4クロック毎に1づつ増加して03hにいたる。
【0018】
時刻t1で現在輝度データD1=04hになると、ROMテーブル6から読み出されるデータはD6=01hとなり、これがカウンタ7にロードされる。このときは、カウンタ7は2カウントでクリアされ、レジスタ1も同様に2クロック毎に新たな現在輝度データD5を取り込んで現在輝度データD1として出力する。よって、現在輝度データD1は、時刻t1〜t2直前の間は2クロック毎に1づつ増大して、D1=04h→05h→・・・→07hに変化する。
【0019】
時刻t2で現在輝度データD1=08hになると、ROMテーブル6から読み出されるデータはD6=00hとなり、これがカウンタ7にロードされる。このときは、カウンタ7は1カウントごとにクリアされ、レジスタ1も同様に1クロック毎に新たな現在輝度データD5を取り込んで現在輝度データD1として出力する。よって、時刻t2以降は、クロック毎に1づつ増大して、D1=09h→0Ah→・・・→14hとなる。そして、D5=15hになると、比較器3の出力がゼロなり、調整データD4=00hとなり、次のクロックで現在輝度データD1=目標輝度データD2になる。
【0020】
以上のように、本実施例では、現在輝度データD1の値が小さい領域(暗い場面)では輝度の時間変化が遅くなり、現在輝度データD1の値が大きくなる(明るい場面)ほどは輝度の時間変化が速くなる。よって、暗い場面での粗さが目立つことを防止でき、人間の目の感度に応じた明るさの変化を実現できる。
【0021】
なお、以上では調光開始時がD5<D2の場合、つまり現在輝度データD1を増大させる場合について説明したが、D2<D5の場合、つまり現在輝度データD1を減少させる場合も全く同様に調光が行われる。また、ROMテーブル6は図2の内容を演算する演算回路に置き換えることができる。また、実際に取り出す現在輝度データは、D1,D5のいずれであっても良い。
【0022】
<第2の実施例>
図4に第2の実施例の調光回路を示す。図4において、9は新たな現在輝度データD5と目標輝度データD2を切り替えるセレクタ、10はレジスタ1から出力する現在輝度データD1の値に応じて重み付けデータD9が読み出されるROMテーブルである。11は補数器であり、ROMテーブル10から出力する重み付けデータD9を入力し、比較器3から出力する差分データD3が、D3=01b(+)又は00b(ゼロ)のときは重み付けデータD9をそのまま調整データD10として出力し、D3=10b(−)のときは補数演算して重み付けデータD5の極性を反転して調整データD10として出力する。6AはROMテーブルである。図5(a)にROMテーブル10の内容を、図5(b)にROMテーブル6Aの内容を示す。ROMテーブル6Aの内容は図1のROMテーブル6と同じである。また、その他は図1と同じである。
【0023】
図6に本実施例の調光回路の動作のタイムチャートを示した。なお、この図7では、D1,D6,D7,D9,D10,D5,D2は8ビットで、D3は2ビットで表した。本実施例の調光回路はすべて基準クロックCLKに同期して動作する。いま、目標輝度データD2=2Ah、現在輝度データD1=00hとする。時刻t0では、現在輝度データD1=00hであるので、ROMテーブル10から読み出される重み付けデータD9=01hとなる。また、D2>D5であるので、差分データはD3=01(+)であり、重み付けデータD9は補数器11をそのまま通過し、調整データD10=01hとなる。よって、加算器5から出力する新たな輝度輝度データD5は、D1+D10=01hとなる。
【0024】
また、このときD5=01hであるので、ROMテーブル6Aからは、データD6=03hが読み出されカウンタ7にロードされる。この後、カウンタ7が4クロック分ダウンカウントすると、カウンタ7がクリアされるとともにレジスタ1の内容が更新され、現在輝度データD1=02hとなる。以後、4カウント毎にレジスタ1から出力する現在輝度データD1が1づつ増加し、現在輝度データD1=03hになると、新たな現在輝度データD5=04hになる。これにより、時刻t1において、ROMテーブル6AからデータD6=01hが読み出される。
【0025】
よって、時刻t1以後は、カウンタ7は2クロック分のダウンカウントを繰り返す。このとき、ROMテーブル10から読み出される重み付けデータD9=02hとなる。よって、2カウント毎に、レジスタ1から出力する現在輝度データD1が2づつ増加し、現在輝度データD1=0Ahになると、新たな現在輝度データD5=0Ehになる。
【0026】
これにより、時刻t2において、ROMテーブル6AからデータD6=00hが読み出されるので、この時刻t2以降は、レジスタ1が1クロック毎に現在輝度データD1を更新する。よって、1クロック毎に、レジスタ1から出力する現在輝度データD1が1ずつ増加する。
【0027】
時刻t3になると、D2=D5=2Ahとなって、比較器3の差分データD3が00bとなり、セレクタ9が目標値データD2を取り込み、次の時刻t4でD2=D1=2Ahなる。
【0028】
以上のように、本実施例では、現在輝度データD1が小さい領域(暗い場面)では、輝度変化ステップ小さく且つ時間変化が遅くなり、現在輝度データD1が大きくなる(明るい場面)ほど、輝度変化ステップが2倍、4倍、・・・のように大きく且つ時間変化が速くなる。よって、暗い場面での粗さが目立つことを防止でき、人間の目の感度に応じた明るさの変化を実現できる。
【0029】
なお、以上では調光開始時がD5<D2の場合、つまり現在輝度データD1を増大させる場合について説明したが、D2<D5の場合、つまり現在輝度データD1を減少させる場合も全く同様に調光が行われる。また、ROMテーブル10,6Aは図5(a)、(b)の内容を演算する演算回路に置き換えることができる。また、実際に取り出す現在輝度データは、D1,D5のいずれであっても良い。
【符号の説明】
【0030】
D1:現在輝度データ、D2:目標輝度データ、D3:差分データ、D4:調整データ、D5:新たな現在輝度データ、D6:読み出しデータ、D7:出力データ、D8:パルスデータ、D9:重み付けデータ、D10:調整データ
1,2:レジスタ、3:比較器、4:切替器、5:加算器、6,6A:ROMテーブル、7:カウンタ、8:比較器、9:セレクタ、10:ROMテーブル、11:補数器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定時間経過毎に、現在輝度データに調整データを加算又は減算して新たな現在輝度データを生成し、該生成を、該新たな現在輝度データが目標輝度データになるまで繰り返す調光方法であって、
前記所定時間を、前記現在輝度データの値が小さいときは長く、前記現在輝度データの値が大きいときは短く制御することを特徴とする調光方法。
【請求項2】
請求項1に記載の調光方法において、
前記目標輝度データから前記新たな現在輝度データを差し引いた差分データが正のときは、前記現在輝度データに前記調整データを加算し、前記差分データが負のときは、前記現在輝度データから前記調整データを減算し、これを前記所定時間経過毎に繰り返すことを特徴とする調光方法。
【請求項3】
請求項2に記載の調光方法において、
前記調整データを、固定のデータ、又は前記現在輝度データに比例したデータとしたことを特徴とする調光方法。
【請求項4】
所定時間経過毎に、現在輝度データに調整データを加算又は減算して新たな現在輝度データを生成し、該生成を、該新たな現在輝度データが目標輝度データになるまで繰り返す調光回路であって、
前記所定時間を、前記現在輝度データの値が小さいときは長く、前記現在輝度データの値が大きいときは短く制御する現在輝度データ更新手段を有することを特徴とする調光回路。
【請求項5】
請求項4に記載の調光回路において、
前記目標輝度データから前記新たな現在輝度データを差し引いた差分データが正のときは、前記現在輝度データに前記調整データを加算し、前記差分データが負のときは、前記現在輝度データから前記調整データを減算し、これを前記所定時間経過毎に繰り返す手段を有することを特徴とする調光方法。
【請求項6】
請求項4に記載の調光回路において、
前記調整データを、固定のデータ、又は前記現在輝度データに比例したデータとしたことを特徴とする調光回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−175877(P2011−175877A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39550(P2010−39550)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000191238)新日本無線株式会社 (569)
【Fターム(参考)】