説明

調光素子

【課題】遮光状態と透過状態の色度差の少ない調光素子を提供する。
【解決手段】第1の調光手段と第2の調光手段と前記第1の調光手段を駆動する第1の駆動回路と前記第2の調光手段を駆動する第2の駆動回路を有する調光素子であって、前記第1の調光手段と前記第2の調光手段は積層されており、CIE1976色空間におけるa*b*色度図において、前記第1の調光手段は遮光状態の色度座標と原点との距離が、透過状態での色度座標と原点との距離よりも大きく、前記第2の調光手段は遮光状態の色度座標と原点との距離が、透過状態での色度座標と原点との距離よりも大きく、かつ前記第1の調光手段の遮光状態から透過状態に向けての色度の変化と前記第2の調光手段の遮光状態から透過状態に向けての色度の変化が、概ね反対方向である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
調光素子の調光色の調整手法として、調光手段に懸濁粒子方式を用い、これに着色したガラスを利用する、あるいは染色したポリビニルブチラール(PVB)やポリエチレンテレフタレート(PET)を利用する、といった手法が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−534283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
調光素子の遮光状態と透過状態の色度座標が異なる場合、調光素子の調光色を特許文献1のような技術で調整しても、その遮光状態と透過状態の色度座標は異なったままという課題がある。本発明の目的は、遮光状態と透過状態とを少ない色変化で調光可能な調光素子を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の特徴は以下のとおりである。
(1)第1の調光手段と、第2の調光手段と、第1の調光手段を駆動する第1の駆動回路と、第2の調光手段を駆動する第2の駆動回路と、を有する調光素子であって、CIE1976色空間におけるa*b*色度図において、第1の調光手段の遮光状態における色度座標と原点との距離が、第1の調光手段の透過状態における色度座標と原点との距離よりも大きく、CIE1976色空間におけるa*b*色度図において、第2の調光手段の遮光状態における色度座標と原点との距離が、第2の調光手段の透過状態における色度座標と原点との距離よりも大きく、第1の調光手段における遮光状態から透過状態に向けての色度の変化と第2の調光手段における遮光状態から透過状態に向けての色度の変化とが、反対方向である調光素子。
(2)CIE1976色空間におけるa*b*色度図において、調光素子における透過状態の色度座標および遮光状態の色度座標が、−20<a*<20,−20<b*<20の範囲内である調光素子。
(3)第1の調光手段および第2の調光手段は、懸濁粒子方式,ゲストホスト液晶方式,エレクトロクロミック方式の何れかである調光素子。
(4)第1の調光手段が懸濁粒子方式であり、第2の調光手段がゲストホスト液晶方式である調光素子。
(5)第1の調光手段がエレクトロクロミック方式であり、第2の調光手段がゲストホスト液晶方式である調光素子。
(6)第1の調光手段は懸濁粒子方式であり、第1の調光手段は懸濁液を有し、懸濁液は分散剤および光調整粒子を有し、分散剤中に光調整粒子が分散され、光調整粒子は棒状であり、光調整粒子のアスペクト比は5以上30以下であり、光調整粒子はポリ過ヨウ化物,炭素系材料,金属材料または無機化合物の何れか一種以上である調光素子。
(7)第1の調光手段はマトリックス樹脂を有し、懸濁液がマトリックス樹脂におおわれている調光素子。
(8)第2の調光手段はゲストホスト液晶方式であり、第2の調光手段はゲストホスト液晶を有し、ゲストホスト液晶は二色性色素および液晶を有し、液晶中に二色性色素が分散され、第2の調光手段はマトリックス樹脂を有し、ゲストホスト液晶がマトリックス樹脂におおわれている調光素子。
(9)第1の調光手段に用いられる基板および第2の調光手段に用いられる基板が共通化されている調光素子。
(10)第1の調光手段の調光速度は第2の調光手段の調光速度より大きく、調光素子を所定の透過率に調光する際に、第1の駆動回路は、第1の調光手段の透過率を段階的に調光するように駆動する調光素子。
(11)調光素子はセンサを有し、センサより得られた情報に基づき、第1の駆動回路または第2の駆動回路は、調光素子の透過率を段階的に調光するように駆動する調光素子。
(12)第1の調光手段の外側に第1カバー層が形成され、第2の調光手段の外側に第2カバー層が形成され、第1カバー層および第2カバー層の少なくとも一方が紫外線カット,赤外線カットの何れか一つ以上の機能を有する調光素子。
(13)調光素子は、機能層を有し、機能層は、紫外線カット,赤外線カット,遮音,飛散防止の何れかの一つ以上の機能を有する調光素子。
(14)第1の調光手段および第2の調光手段が一組の基板の間に配置され、第1の駆動回路および第2の駆動回路が共通化されている調光素子。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、遮光状態と透過状態とを色変化を少ない色変化で調光可能な調光素子を提供できる。上記した以外の課題,構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施形態の調光素子の構成を示す概略図である。
【図2(a)】一実施形態の調光素子の構成を示す概略断面図である。
【図2(b)】一実施形態の調光素子の構成を示す概略断面図である。
【図3】一実施形態の調光手段の色度変化を説明する図ある。
【図4】一実施形態の調光手段および調光素子の一実施形態の色度の測定結果である。
【図5(a)】一実施形態の調光素子の構成を示す概略断面図である。
【図5(b)】一実施形態の調光素子の構成を示す概略断面図である。
【図6】一実施形態の調光素子の構成を示す概略断面図である。
【図7】一実施形態の調光素子の構成を示す概略断面図である。
【図8】一実施形態の調光素子の調光手段の透過率変化を説明する図である。
【図9】一実施形態の調光素子の構成を示す概略図である。
【図10】一実施形態の調光素子の構成を示す概略断面図である。
【図11】一実施形態の調光素子の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の実施例は本願発明の内容の具体例を示すものであり、本願発明がこれらの実施例に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、実施例を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【実施例1】
【0009】
図1は一実施形態の調光素子の概略図であり、第1の調光手段10,第2の調光手段20,第1の駆動回路100,第2の駆動回路200を有しており、第1の調光手段10と第2の調光手段20は積層されている。
【0010】
図2は第1の調光手段10に懸濁粒子方式、第2の調光手段20にゲストホスト液晶方式を用いた場合の一実施形態の調光素子の断面の概略図であり、図2(a)は遮光状態、(b)は透過状態を表している。
【0011】
本実施例の懸濁粒子方式の第1の調光手段10は、第1基板11上に形成された第1電極13と第2基板12上に形成された第2電極14が向かい合うように所定の間隙をもって配置され、その間隙によって形成される懸濁液充填空間を懸濁液17が満たしている。懸濁液17は光調整粒子16が分散剤15に分散されたものである。
【0012】
本実施例の懸濁粒子方式の第1の調光手段10は、以下の方法で作製可能である。まず酸化インジウムスズ(ITO)からなる透明電極を形成したガラス基板を1組作製し、それぞれ第1基板11,第1電極13および第2基板12,第2電極14とする。次に第1電極13と第2電極14が向かい合うようにし、両基板端部(図示しない)の対辺にスペーサビーズ等を含む封着剤を塗布して両基板を接着する。これにより、両基板間の距離が25μmである懸濁液17の懸濁液充填空間が形成される。懸濁液充填空間には、封着剤で接着していない両基板端部から毛細管現象により懸濁液17が充填される。懸濁液17はアクリル酸エステルオリゴマーからなる分散剤15とポリ過ヨウ化物からなる光調整粒子16で構成される。懸濁液17を充填後、接着していない両基板端部を封着剤で接着して封止する。第1電極13および第2電極14を第1の駆動回路100に配線接続し、第1の調光手段10が作製される。
【0013】
本実施例の懸濁粒子方式の第1の調光手段10は、第1の駆動回路100より第1電極13および第2電極14間に交流電圧を印加することで、光調整粒子16がランダムな遮光状態(図2(a))から基板に対してほぼ垂直方向に並んだ透過状態(図2(b))に調光する。また、印加電圧を変えることでランダム状態と垂直状態の間の状態をとることができるため、任意の透過状態を得ることができる。
【0014】
本実施例においては、ポリ過ヨウ化物を光調整粒子16として利用しているため、標準光源(D65)により第1の調光手段10を照射した際、遮光状態から透過状態へは概ね青から概ね透明(無彩色)に変化する。この変化は図3に示すCIE1976色空間のa*b*色度図においては図中の上の矢印で表される。図より明らかなように、遮光状態の色度座標と原点との距離が、透過状態での色度座標と原点との距離よりも大きい状態にある。
【0015】
本実施例のゲストホスト液晶方式の第2の調光手段20は、第3基板21上に形成された第3電極23と第4基板22上に形成された第4電極24が向かい合うように所定の間隙をもって配置され、その間隙によって形成されるゲストホスト液晶充填空間をゲストホスト液晶27が満たしている。ゲストホスト液晶27は二色性色素26が液晶25に分散されたものである。
【0016】
本実施例のゲストホスト液晶方式の第2の調光手段20は、以下の方法で作製可能である。まずガラス基板上にITOからなる透明電極を形成したものを1組作製し、それぞれ第3基板21,第3電極23と第4基板22,第4電極24とする。さらに、第3電極23および第4電極24上に配向膜(図示しない)を形成しそれらにラビング処理を施す。次に、第3電極23と第4電極24が向かい合うようにかつ、ラビング処理による配向方向が平行になるように第3基板21と第4基板22を対向に配置し、両基板端部(図示しない)の対辺にスペーサビーズ等を含む封着剤を塗布して両基板を接着する。これにより、両基板間の距離が25μmである二色性色素26が溶解した液晶25の充填空間が形成される。液晶充填空間には、封着剤で接着していない両基板端部から毛細管現象により液晶25が充填される。液晶25には室温でネマティック相を示す液晶を用い、二色性色素26は吸収のピークが波長470nmにあるアゾ系色素を溶解している。第3基板21と第4基板22との間に液晶25を充填後、接着していない両基板端部を封着材で接着して封止する。第3電極23および第4電極24を第2の駆動回路200に配線接続し、第2の調光手段20が作製される。
【0017】
本実施例のゲストホスト液晶方式の第2の調光手段20は、第2の駆動回路200より第3電極23および第4電極24間に交流電圧を印加することで、二色性色素26が基板と概ね平行に並んだホモジニアス配向による遮光状態(図2(a))から基板に対してほぼ垂直に並んだホメオトロピック配向による透過状態(図2(b))に変化する。また印加電圧を変えることで、平行状態と垂直状態の中間状態をとることができるため、任意の透過状態を得ることができる。
【0018】
本実施例においては、吸収のピーク波長が470nmにあるアゾ系色素を二色性色素26として利用しているため、標準光源(D65)により第2の調光手段20を照射した際、遮光状態から透過状態へは概ね黄から概ね透明(無彩色)に変化する。この変化は図3に示すCIE1976色空間のa*b*色度図においては図中の下向きの矢印で表される。図より明らかなように、遮光状態の色度座標と原点との距離が、透過状態での色度座標と原点との距離よりも大きい状態にある。
【0019】
前述の第1の調光手段10および第2の調光手段20からなる調光素子を標準光源(D65)により照射した場合、それぞれの調光手段の遮光状態から透過状態に向けての色度の変化が概ね反対方向あり、遮光状態では青と黄色が合わさった無彩色(黒)、透過状態(無彩色)と透過状態(無彩色)が合わさった無彩色となる。またそれぞれの中間状態、すなわち薄い青と薄い黄をそれぞれの透過率を調整して合わせても無彩色となるため、遮光状態および透過状態だけではなくその間の任意の透過状態において調光素子を無彩色で調光する効果がある。なお、ここで言う色度の変化が概ね反対方向とは、第1の調光手段10の遮光状態と透過状態の色度座標を結ぶ直線が第2の調光手段20の遮光状態と透過状態の色度座標を結ぶ直線とがなす角度が90度以上より大きく180度以下、より好ましくは135度以上180度以下の範囲にあることをいう。換言すれば、第1の調光手段10の遮光状態と透過状態の色度座標を結ぶ直線と、第2の調光手段20の遮光状態と透過状態の色度座標を結ぶ直線とを、それぞれの遮光状態を一致させた際になす角度の小さい方が、90度以上180度以下、より好ましくは135度以上180度以下の範囲にあることをいう。それぞれの調光手段の遮光状態は図3において同一象限に存在していても、異なる象限に存在していても良い。
【0020】
一例として、本実施例の調光素子にD65標準光源を照射した際の色度座標の測定結果を図4に示す。CIE1976色空間において、
第1の調光手段10の透過状態のおよび遮光状態の色度座標がそれぞれ、
(a*,b*)=(10,−32)、
(a*,b*)=(−3,−4)、
第2の調光手段20の透過状態および遮光状態の色度座標がそれぞれ、
(a*,b*)=(0,13)、
(a*,b*)=(2,35)、
であり、前述の第1の調光手段10および第2の調光手段20の遮光状態と透過状態を結ぶ直線同士がなす角度は約150度である。また、第1の調光手段10と第2の調光手段20を積層した調光素子の透過状態および遮光状態の色度座標はそれぞれ、
(a*,b*)=(−3,−7)、
(a*,b*)=(−1,−14)、
となり、透過状態および遮光状態ともに概ね無彩色としてみなせる−20<a*<20,−20<b*<20の範囲内にある。すなわち、本実施例の調光手段においては、遮光状態と透過状態及びその間の任意の透過状態において、常に概ね無彩色の調光を可能できる効果がある。
【0021】
本実施例では、光源として昼間の屋外光を模擬したD65標準光源を例にして挙げたが、他の標準光源や実際の太陽光や一般の蛍光ランプ,発光ダイオード,白熱電球等のランプなど各種白色光源の何れか、もしくは、これらが組み合わさったものを光源として用いた場合において、CIE1976色空間におけるa*b*色度図において、第1の調光手段10は遮光状態の色度座標と原点との距離が、透過状態での色度座標と原点との距離よりも大きく、第2の調光手段20は遮光状態の色度座標と原点との距離が、透過状態での色度座標と原点との距離よりも大きく、第1の調光手段10の遮光状態から透過状態に向けての色度の変化と第2の調光手段20の遮光状態から透過状態に向けての色度の変化が、概ね反対方向であるように調光素子を構成すれば、前述の効果を得ることができる。
【0022】
本実施例の懸濁粒子方式の第1の調光手段10、およびゲストホスト液晶方式の第2の調光手段20を用いた調光素子は、前述の部材以外にも、以下の部材を適宜利用することも可能である。
【0023】
第1基板11,第2基板12,第3基板21,第4基板22は、少なくとも可視光の一部の波長を透過する基板であり、各種ガラスや石英などの透明な無機の基板やポリエチレンテレフタレート(PET),ポリカーボネート(PC),シクロオレフィンポリマー(COP)等の樹脂基板が利用可能である。また、用途に応じて着色された基板や、散乱性を持つ基板も利用可能である。
【0024】
第1電極13および第2電極14は前述の第1基板11および、第2基板12上に、形成される電極であり、少なくとも可視光の一部の波長を透過する、酸化インジウムスズ(ITO),酸化インジウム亜鉛(IZO),酸化スズ,酸化亜鉛やカーボンナノチューブ,グラフェン等が利用可能である。本実施例では透明電極を支持基材上に一面に形成しているが、これに限らず円などの模様や文字型に配設しても構わない。また配線自体が可視光を透過しない場合においても、その配線幅を狭くし、メッシュ状や櫛歯状にし、配線による遮光率を少なくすることで利用することも可能である。
【0025】
スペーサビーズはガラスやポリマーなどが挙げられ、接着材に対して安定であることが望ましい。なお、懸濁液充填空間及び両基板間の距離は4μm以上100μm以下が透過率や駆動電圧の観点から好適である。また、スペーサビーズを第1基板11と第2基板12との間に散布し、懸濁液充填空間を維持しても構わない。スペーサビーズを第1基板11と第2基板12との間に散布する場合、スペーサビーズの屈折率は分散剤15の屈折率と近い方が好ましい。
【0026】
懸濁液17は後述する光調整粒子16が分散剤15に分散されたものであり、第1基板11と第2基板12の懸濁液充填空間を満たしている。
【0027】
光調整粒子16は、例えば、ポリ過ヨウ化物であり、形状に異方性があり、配向方向に起因して吸光度の異なる光学的異方性を発現し、アスペクト比が1ではない形状をしている。光調整粒子16を合成する過程において、粒子サイズの均一性を上げるためニトロセルロース等を加えても良い。また、懸濁粒子方式の調光手段を駆動するために印加する交流電圧の周波数及びその周波数以下の周波数において、光調整粒子16が配向分極を生じることが望ましい。その場合、光調整粒子16として導電性の低い誘電体材料を用いることが望ましい。導電性の低い誘電体材料としてはポリマー粒子,ポリマーでコートした粒子などが挙げられる。
【0028】
光調整粒子16の形状として、棒状や板状などが考えられる。例えば光調整粒子16を棒状とすることで、電界に対する粒子回転運動の抵抗や透過時のヘイズの上昇を抑制できる。この時の調光粒子の短軸と長軸のアスペクト比は、例えば、5以上30以下程度が望ましい。アスペクト比を5以上とすることにより、光調整粒子16の形状に起因する光学的異方性を発現できる。
【0029】
光調整粒子16の大きさは1μm以下であることが好ましく、0.1μm以上1μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがさらに好ましい。光調整粒の大きさが1μmを超える場合には、光散乱が生じたり、電界が印加された場合に分散剤15中での配向運動が低下したりするなど、透明性が低下する問題が発生することがあるためである。なお、光調整粒子16の大きさは、電子顕微鏡観察等により計測される。
【0030】
光調整粒子16の材質は、カーボンブラックなどの炭素系材料,銅,ニッケル,鉄,コバルト,クロム,チタン,アルミニウムなどの金属材料、窒化ケイ素,窒化チタン,酸化アルミニウムなどの無機化合物からなる粒子であっても構わない。また、これらの材料にポリマーでコートした粒子であっても構わない。光調整粒子16として、上記の材料が一種類のみ含まれていても良く、上記の材料が二種類以上含まれていても構わない。
【0031】
分散剤15は、アクリル酸エステルオリゴマーからなる液状共重合体である。他にポリシロキサン(シリコーンオイル)などが挙げられる。なお、光調整粒子16が浮遊,動作可能な粘度であり、高抵抗で、第1基板11,第2基板12,第1電極13,第2電極14とは親和性がなく、かつこれらに屈折率が近く、光調整粒子16と誘電率が異なる液状共重合体を使用することが好ましい。具体的には、温度298Kにおいて、分散剤15の抵抗率が1012Ωm以上1015Ωm以下であることが望ましい。分散剤15と光調整粒子16に誘電率差があると、光調整粒子16の配向動作において交流電界下における駆動力として作用させることができる。本実施例では、分散剤15の比誘電率は3.5以上5.0以下としている。
【0032】
第3電極23および第4電極24は、前述の第1電極13および第2電極14と同様のものが利用可能である。さらに電極表面に配向膜を形成し、適当な方向にラビングしても良い。配向膜のラビング方向は、第3電極23上と第4電極24上で平行となるようにしても良いし、垂直やそれ以外の角度になるようにしても良い。これにより液晶が配向に沿って配列しさらに色素もそれにならう。後述する色素の二色性が高まるため、狭セルギャップ化やそれに伴う低電圧化の効果がある。また、配向とプレチルトの効果により、マルチドメインの形成を抑え、応答速度を速める効果がある。
【0033】
スペーサビーズは前述のものと同様のものが利用可能である。なお、液晶充填空間およびなお、液晶充填空間及び両基板間の距離は1μm以上50μm以下が透過率や駆動電圧の観点から好適である。また、スペーサビーズを第3基板21と第4基板22との間に散布し、液晶充填空間を維持しても構わない。この際、スペーサビーズの屈折率は液晶25の屈折率と近い方が好ましい。
【0034】
ゲストホスト液晶27は後述する二色性色素26が液晶25に溶解されたものであり、第3基板21と第4基板22の液晶充填空間を満たしている。
【0035】
液晶25は、一般に公知の液晶材料を利用可能であり、例えば室温でネマティック相を示す液晶である。ゲストホスト液晶方式のホスト材料として色素溶解度が高いものが好ましい。また誘電率異方性によりP型,N型があるがどちらも利用可能である。また、液晶にカイラル剤を溶解し相転移型の液晶としても良い。
【0036】
二色性色素26は前述の液晶25に溶解し、かつ二色性、すなわち規則的に並んだ色素を見る方向によりその透過率が異なる光学特性を持つものが利用可能である。
【0037】
二色性色素26は、アゾ系,アントラキノン系,キノフタロン系,ペリレン系,ペリノン系,アゾメチン系,ベンズイメダゾール系,ナフタルイミド系,オキサジン系,ナフトキノン系などから選択でき、第1の調光手段10の遮光時の色度を補正し、無彩色化する物を選ぶことが望ましい。二色性色素26として、上記の材料が一種類のみ含まれていても良く、上記の材料が二種類以上含まれていても構わない。アゾ系色素は吸収波長域が広く、本実施例の調光粒子と合わせて無彩色化しやすい。アゾ系色素やアゾメチン系色素は二色性が高く、透過時により無彩色になりやすい。アントラキノン系色素やキノフタロン系色素は安定性が高く、熱や光に対して劣化しにくい。
【0038】
また、液晶25への溶解度が高く、かつ二色性の特性が高いものが好ましい。棒状の分子構造を持つ色素では、二色性と溶解度の観点からその長さは5Åから100Å程度、より好ましくは10Åから50Å程度がよい。
【0039】
二色性色素として、青領域の波長を吸収するものであることが望ましい。二色性色素26の吸収のピーク波長は420nm以上520nm以下であることが望ましい。ポリ過ヨウ化物を光調整粒子16として利用した場合、標準光源(D65)により第1の調光手段10を照射した際、概ね青の遮光状態から概ね透明(無彩色)の透過状態へ変化するからである。
【実施例2】
【0040】
本発明の調光素子の実施例について前述の実施例と特に異なる部分に関して説明する。
【0041】
図5は第1の調光手段10にエレクトロクロミック方式、第2の調光手段20にゲストホスト液晶方式を用いた場合の本実施例の調光素子の断面の概略図であり、図5(a)は遮光状態、(b)は透過状態を表している。エレクトロクロミック方式はメモリー性を有し、透過状態で電源が切れても透過状態を維持できる。
【0042】
本実施例のエレクトロクロミック方式の第1の調光手段10は、第1基板11上に形成された第1電極13,第1エレクトロクロミック層151,電解質層161,第2エレクトロクロミック層171,第2電極14および第2基板12により構成される。
【0043】
本実施例のエレクトロクロミック方式の第1の調光手段10は、以下の方法で作製可能である。まず、ガラス基板上に酸化インジウムスズ(ITO)からなる透明電極を形成し、第1基板11,第1電極13とする。さらに、第1電極13上に酸化タングステン(WO3)からなる第1エレクトロクロミック層151、酸化タンタル(Ta25)からなる電解質層161、酸化イリジウム(IrOx)からなる第2エレクトロクロミック層171、ITOからなる第2電極14を順次成膜する。次に、ガラス基板からなる第2基板12と貼り合わせ、第1電極13および第2電極14を第1の駆動回路100に配線接続し、第1の調光手段10が作製される。
【0044】
本実施例のエレクトロクロミック方式の第1の調光手段10は、第1の駆動回路100より第1電極13および第2電極14間に直流電圧を印加することで第1エレクトロクロミック層151および第2エレクトロクロミック層171を透過状態および遮光状態に調光できる。たとえば第1電極13がマイナス、第2電極14がプラスとなるように電圧を印加すると、第1エレクトロクロミック層151および第2エレクトロクロミック層171が着色し遮光状態となる。一方、第1電極13がプラス、第2電極14がマイナスとなるように電圧を印加すると、着色が解消し、透過状態になる。
【0045】
本実施例では、酸化タングステンおよび酸化イリジウムをエレクトロクロミック材料として用いているため、第1の調光手段10を標準光源(D65)により照射した場合、遮光状態は濃い青、透過状態は概ね無彩色を示す。
【0046】
一方、本実施例のゲストホスト液晶方式の第2の調光手段20は、前述の実施例に示したものと同様の構成であり、遮光状態では黄色、透過状態では概ね無彩色を示す。そのため、前述の第1の調光手段10および第2の調光手段20からなる調光素子を標準光源(D65)により照射した場合、それぞれの調光手段の遮光状態から透過状態に向けての色度の変化が概ね反対方向あり、遮光状態では青と黄色が合わさった無彩色(黒)、透過状態(無彩色)と透過状態(無彩色)が合わさった無彩色となる。また、それぞれの中間状態、すなわち薄い青と薄い黄を合わせても無彩色となるため、調光素子の任意の透過状態において無彩色化する効果がある。
【0047】
本実施例のエレクトロクロミック方式の第1の調光手段10を用いた調光素子は、前述の部材以外にも、以下の部材を適宜利用することも可能である。
【0048】
第1エレクトロクロミック層151と第2エレクトロクロミック層171は、酸化タングステン,プルシアンブルー,NiO,IrOxなどの金属酸化物からなる無機材料や、ビオローゲン誘導体に代表される有機材料を利用することが可能である。酸化タングステンと酸化イリジウムなど無機物を組み合わせると、熱や光に対する耐久性が高く、酸化発色と還元発色膜の組み合わせとなり好ましい。本実施例に示したように、第1エレクトロクロミック層151と第2エレクトロクロミック層171の2層を有する場合は、酸化タングステンのような還元発色膜とIrOxのような酸化発色膜を組み合わせて利用する。一方、第1エレクトロクロミック層151のみを有する構成(図示せず)においても調光手段として利用可能である。
【0049】
電解質層161は、固体電解質以外にもゲル状電解質や溶液電解質も利用可能であり、酸化タンタル,アンチモン酸,リン酸スズなどがある。固体電解質やゲル状電解質では漏えいがないことから取り扱いが容易である。一方、溶液電解質は導電率が高いため低電圧化や高速応答化の観点で好ましい。ゲル状電解質を利用する際には、第1電極13および第1のエレクトロクロミック層151が形成された第1基板11上にバーコータによりゲル状電解質を塗布し、第2電極14および第2エレクトロクロミック層171が形成された第2基板12で挟み込むことで構成可能である。また、溶液電解質の場合には、実施例1で述べたスペーサビーズを用い所定の間隙による電解質充填空間を形成した後に封入し、封着する工程で形成が可能である。
【0050】
実施例1および2では、第1の調光手段10および第2の調光手段20として異なる調光方式を採用しているが、同じ調光方式を採用しても良い。
【実施例3】
【0051】
本発明の調光素子の実施例について前述の実施例と特に異なる部分に関して説明する。
【0052】
図6は、第1の調光手段10に懸濁粒子方式、第2の調光手段20にゲストホスト液晶方式を用いた場合の本実施例の調光素子の断面の概略図である。
【0053】
本実施例の懸濁粒子方式の第1の調光手段10は、マトリックス樹脂18中に懸濁液17が分散されて固定されている。
【0054】
本実施例の懸濁粒子方式の第1の調光手段10は、以下の方法で作製可能である。マトリックス樹脂18となる紫外線硬化型のシリコーン樹脂と懸濁液17とを混ぜ合わせたのちに、第1電極13が形成された第1基板11上に適当な膜厚で塗布し、第2電極14が形成された第2基板12を第2電極14が内側になるように張り合わせる。さらに、紫外線を照射することで、懸濁液17がマトリックス樹脂18におおわれて小分けにされる。この際、懸濁液17中の分散剤15とマトリックス樹脂18の屈折率がほぼ等しい物を利用する。第1電極13および第2電極14を第1の駆動回路100に配線接続し、第1の調光手段10が作製される。マトリックス樹脂18としてアクリル系樹脂を用いてもよい。
【0055】
本実施例の懸濁粒子方式の第1の調光手段10は、第1の駆動回路100より第1電極13および第2電極14間に交流電圧を印加することで、光調整粒子16がランダムな遮光状態から基板に対してほぼ垂直方向に並んだ透過状態に調光する。また、印加電圧を変えることでランダム状態と垂直状態の間の状態をとることができるため、任意の透過状態を得ることができる。
【0056】
本実施例のゲストホスト液晶方式の第2の調光手段20はマトリックス樹脂28中にゲストホスト液晶27が分散され固定されている。
【0057】
本実施例のゲストホスト液晶方式の調光手段20は、以下の方法で作製可能である。マトリックス樹脂28となる紫外線硬化型のアクリル系樹脂とゲストホスト液晶27とを混ぜ合わせたのちに、所定の充填空間を有する第3基板21、および第4基板22間に封入し、封着した後に、紫外線を照射することで、ゲストホスト液晶27がマトリックス樹脂28におおわれて小分けにされる。第3電極23および第4電極24を第2の駆動回路200に配線接続し、第2の調光手段20が作製される。また、本実施例でゲストホスト液晶27に利用する液晶25は屈折率異方性があり、第3電極23および第4電極24間に電圧を印加した際に並んだ液晶25の垂直方向の屈折率のみが、マトリックス樹脂28の屈折率とほぼ等しい。
【0058】
本実施例のゲストホスト液晶方式の第2の調光手段20は、第2の駆動回路200より第3電極23および第4電極24間に交流電圧を印加することで二色性色素26が基板と概ね平行に並んだ遮光状態から基板に対してほぼ垂直に並んだ透過状態に変化する。また、印加電圧を変えることで、平行状態と垂直状態の中間状態をとることができるため、任意の透過状態を得ることができる。また、液晶25の屈折率異方性から透過状態ではほぼ無散乱だが、遮光状態になるにつれて散乱が増える。
【0059】
本実施例では、前述の効果の他に、マトリックス樹脂18,マトリックス樹脂28が第1基板11,第2基板12間、および第3基板21,第4基板22間を接着保持する効果があり、より丈夫な調光素子が作製できる効果がある。懸濁液17やゲストホスト液晶27がマトリックス樹脂18,マトリックス樹脂28によりおおわれ小分けされていることから、液漏れの心配がほとんどない。さらに調光素子を作成後、任意に切断しても液漏れがほとんどなく、特に各基板に樹脂基板を用いた際は、はさみ等で簡易に切断し任意の形状に加工できる利点がある。
【0060】
また第2の調光手段20を透過状態から遮光状態に調光するにつれて散乱性を増す光学特性があるため、遮光時には低透過率に散乱効果が加わり、調光素子の反対側をより見づらくする目隠しの効果がある。また、各調光手段は、遮光状態での透過率を低くすると透過状態での透過率も低くなるという関係にあることが多いため、目隠し効果を得ながら、透過状態をより明るくする効果がある。
【0061】
本実施例においては、おおよそ球形で小分けされマトリックス樹脂18,マトリックス樹脂28中に分散されたものを示したが、他の形状やこれらが混合された状態や網目状態のマトリックス樹脂18,マトリックス樹脂28中に懸濁液17やゲストホスト液晶27が取り込まれた状態でも同等の効果が得られる。
【0062】
また、本実施例においては第1の調光手段10および第2の調光手段20共にマトリックス樹脂18,マトリックス樹脂28を利用した例を示したが、どちらか一方の調光手段にのみ適用しても、前述の実施例と同様の効果が得られる。
【実施例4】
【0063】
本発明の調光素子の実施例について前述の実施例と特に異なる部分に関して説明する。
【0064】
図7は第1の調光手段10に懸濁粒子方式、第2の調光手段20にゲストホスト液晶方式を用いた場合の本実施例の調光素子の断面の概略図である。本実施例では第1の調光手段10の第2基板と第1の調光手段10の第3基板21が共通基板29として構成されている。
【0065】
本実施例では、前述の効果の他に、前述の実施例では4枚必要であった基板を3枚にし、部材点数を減らす効果がある。また、これらは懸濁粒子方式とゲストホスト液晶方式の調光手段の積層だけではなく、前述の何れかの実施例に記載した調光手段の組み合わせても適用可能である。
【0066】
特に第1の調光手段10としてエレクトロクロミック方式を利用する場合、前述の実施例2に示したように第1基板11に順次第1電極13,第1エレクトロクロミック層151,電解質,第2エレクトロクロミック層171,第2電極14を成膜形成可能し、第2の調光手段20の第3基板21と貼り合わせて共通基板29とすることが可能で製造において、4枚の基板を利用し第1の調光手段10と第2の調光手段20を作製後、それらを合わせて調光素子とする場合と工程がほとんど変わらず好適である。
【0067】
また前述の実施例3に示したようにマトリックス樹脂18と懸濁液17やマトリックス樹脂28とゲストホスト液晶27を塗布するような工程が取れる場合には、第1基板11にマトリックス樹脂18を塗布し、共通基板29と貼り合わせさらに共通基板29にマトリックス樹脂18を塗布し、第4基板22を貼り合わせるといった工程がとれるため、4枚の基板を利用し第1の調光手段10と第2の調光手段20を作製後、それらを合わせて調光素子とする場合と工程がほとんど変わらず、またロールtoロール方式の製造に好適である。
【実施例5】
【0068】
本発明の調光素子の実施例について前述の実施例と特に異なる部分に関して説明する。
【0069】
図8は本実施例の懸濁液方式の第1の調光手段10およびゲストホスト液晶方式の第2の調光手段20を遮光状態から透過状態に変調する際の透過率の時間変化を最大透過率で規格化して表した図である。図中〔1〕が懸濁液方式、図中〔2〕がゲストホスト液晶方式の透過率、図中〔3〕が本実施例の階段状に透過率を調光させる機能を持つ第2の駆動回路200により透過率変調した例である。図より明らかなように、〔1〕の懸濁液方式の調光手段の遮光状態から透過状態への移行時間は〔2〕ゲストホスト液晶方式のそれよりも遅い。そのため、本実施例の調光素子を遮光状態から透過状態に一気に調光すると、2種の調光手段間の応答速度差により、色付きが見える現象が発生する。
【0070】
本実施例の調光素子では、第2の駆動回路200が第2の調光手段20の透過率を段階的に調光するように駆動する機能を持つため、第1の調光手段10との透過率差を抑え、応答速度差による色付きを低減する効果がある。具体的には、電圧を段階的にあげるように駆動するよい。また、ステップ数を増やしたり、ステップ幅(時間)や高さ(透過率変化)を調整したりして駆動することで、調光速度の遅い第1の調光手段10の透過率変化が時間に対して直線ではない場合(図示せず)でも、ほぼ同じ透過率変化を第2の調光手段20で実現できる。
【0071】
調光速度の速い調光手段が懸濁液方式やエレクトロクロミック方式である場合も、透過率の段階的に変調する機能をもつ駆動回路を持っていれば同様の効果を得られる。特に調光手段がエレクトロクロミック方式の場合は電圧印加時間をパルス状にして、その時間や電圧を変えて駆動することで、透過率を段階的に変えることができる。
【0072】
懸濁液方式,エレクトロクロミック方式,ゲストホスト液晶方式の調光速度は、通常エレクトロクロミック方式<懸濁液方式<ゲストホスト液晶方式であるが、調光速度の大きい方式の物性(粘度,移動度)などを制御することにより、調光速度の関係を逆転できる。
【実施例6】
【0073】
本発明の調光素子の実施例について前述の実施例と特に異なる部分に関して説明する。
【0074】
図9は本実施例の調光素子の概略図であり、第1の調光手段10,第1の駆動回路100,第2の調光手段20,第2の駆動回路200,センサ300を有しており、第1の駆動回路100と第2の駆動回路200はそれぞれセンサ300の信号を元にそれぞれの調光手段の透過率を段階的に調光するように駆動する。
【0075】
センサ300は第1の調光手段10および/または第2の調光手段20からなる調光素子本体の周辺に配置された温度センサであり、調光素子の周囲環境の温度をモニタしている。第1の調光手段10と第2の調光手段20の応答速度に温度依存性がある場合、温度センサによって得られた情報に対応して、前述の実施例と同様にその温度において応答速度の速い調光手段の透過率を段階的に変調することできる。すなわち応答速度の温度依存性に違いがある場合でも、何れの温度でも応答速度差による色付きを低減する効果がある。
【0076】
上記ではセンサ300として温度センサを挙げたが、光など温度と間接もしくは擬似的に相関があるなんらかの周囲状況測定し、その情報を元に駆動しても同様の効果がある。また、これらのセンサと連動して、例えば温度が高い、あるいは日射が強い際に調光素子の透過率を下げるといった、調光素子の自動駆動に利用しても良い。
【実施例7】
【0077】
本発明の調光素子の実施例について前述の実施例と特に異なる部分に関して説明する。
【0078】
図10は本実施例の調光素子の概略断面図であり、第1基板11上に形成された第1電極13と第2基板12上に形成された第2電極14が向かい合うように所定の間隙をもって配置され、その間隙をマトリックス樹脂18が満たしその中に懸濁液17およびゲストホスト液晶27が分散されている。また第1電極13および第2電極14は駆動回路100に接続されている。本実施例においては実施例3に記載された調光素子と同等の効果があり、さらに、前述の実施例よりも基板,駆動回路を削減できる効果がある。また、応答速度の速いゲストホスト液晶27の粘度を高める等を調整し、応答速度の遅い懸濁液方式に近づけるなどすると、応答速度差による色付きを低減する効果がある。
【実施例8】
【0079】
本発明の調光素子の実施例について前述の実施例と特に異なる部分に関して説明する。
【0080】
図11は本実施例の調光素子の概略断面図であり、第1の調光手段10と第2の調光手段20のそれぞれ外側に第1カバー層40および第2カバー層50を有しており、また第1の調光手段10と第2の調光手段20との間に機能層30を有している。
【0081】
本実施例の調光素子は第1基板11,第2基板12,第3基板21,第4基板22はそれぞれ樹脂基板からなっており、第1カバー層40および第2カバー層50はガラスからなっている。第1カバー層40は紫外線カット機能を有する。機能層30は遮音機能を有する層である。
【0082】
このような構成の調光素子は、第1の調光手段10及び第2の調光手段20を、樹脂基板を利用することでロールtoロールなど生産性に優れる工程を採れる利点があり、樹脂基板の傷つきやすいという弱点をガラスからなる第1カバー層40および第2カバー層50で保護し、生産性と耐久性に優れた製品を提供できる。また特に、調光素子を室内外や車内外を隔てる窓ガラス等に利用する場合、紫外線カット機能を有する第1カバー層40および第2カバー層50が外側になるように配置すると、外部からの紫外線を第1カバー層40および第2カバー層50でカットするため、室内への有害な紫外線の侵入を低減できるだけではなく、第1の調光手段10および第2の調光手段20への紫外線による劣化を低減できることから、調光手段の長寿命化に効果的である。また、遮音機能を有する機能層30は室外からの音の侵入や室内からの音漏れを低減する効果があるほか、第1の調光手段10と第2の調光手段20を貼り合わせ、調光素子の機械的強度を高める効果がある。
【0083】
また、前述は、本実施例は第1カバー層40および第2カバー層50と機能層30を有する調光素子の一例に過ぎず、例えば第1カバー層40および第2カバー層50には赤外線カット機能を持たせることで、熱の室内,車内への侵入をおさえ、さらに調光手段の熱劣化を抑えることが可能である。また、第1基板11、第2基板12をガラスとし、第1カバー層40および第2カバー層50を樹脂とした場合は、第1カバー層40および第2カバー層50の樹脂は万一ガラス基板が割れた際の飛散防止の機能を発現可能である。機能層30もその配置は第1の調光手段10と第2の調光手段20の間だけではなく、第1カバー層40および第2カバー層50のいずれかと調光手段間に配置しても良く、その機能もその配置場所や第1カバー層40および第2カバー層50の機能に応じて、紫外線カット,赤外線カット,遮音,飛散防止の何れかの機能を一つまたは複数持たせてもよい。また、第1カバー層40および第2カバー層50の機能を第1基板11,第4基板22が兼ねても良い。
【符号の説明】
【0084】
10 第1の調光手段
11 第1基板
12 第2基板
13 第1電極
14 第2電極
15 分散剤
16 光調整粒子
17 懸濁液
18,28 マトリックス樹脂
20 第2の調光手段
21 第3基板
22 第4基板
23 第3電極
24 第4電極
25 液晶
26 二色性色素
27 ゲストホスト液晶
29 共通基板
30 機能層
40 第1カバー層
50 第2カバー層
100 第1の駆動回路
151 第1エレクトロクロミック層
161 電解質層
171 第2エレクトロクロミック層
200 第2の駆動回路
300 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の調光手段と、
第2の調光手段と、
前記第1の調光手段を駆動する第1の駆動回路と、
前記第2の調光手段を駆動する第2の駆動回路と、を有する調光素子であって、
CIE1976色空間におけるa*b*色度図において、前記第1の調光手段の遮光状態における色度座標と原点との距離が、前記第1の調光手段の透過状態における色度座標と原点との距離よりも大きく、
CIE1976色空間におけるa*b*色度図において、前記第2の調光手段の遮光状態における色度座標と原点との距離が、前記第2の調光手段の透過状態における色度座標と原点との距離よりも大きく、
前記第1の調光手段における遮光状態から透過状態に向けての色度の変化と前記第2の調光手段における遮光状態から透過状態に向けての色度の変化とが、反対方向である調光素子。
【請求項2】
請求項1において、
CIE1976色空間におけるa*b*色度図において、前記調光素子における透過状態の色度座標および遮光状態の色度座標が、−20<a*<20,−20<b*<20の範囲内である調光素子。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1の調光手段および前記第2の調光手段は、懸濁粒子方式,ゲストホスト液晶方式,エレクトロクロミック方式の何れかである調光素子。
【請求項4】
請求項3において、
前記第1の調光手段が懸濁粒子方式であり、
前記第2の調光手段がゲストホスト液晶方式である調光素子。
【請求項5】
請求項3において、
前記第1の調光手段がエレクトロクロミック方式であり、
前記第2の調光手段がゲストホスト液晶方式である調光素子。
【請求項6】
請求項3において、
前記第1の調光手段は懸濁粒子方式であり、
前記第1の調光手段は懸濁液を有し、
前記懸濁液は分散剤および光調整粒子を有し、
前記分散剤中に前記光調整粒子が分散され、
前記光調整粒子は棒状であり、
前記光調整粒子のアスペクト比は5以上30以下であり、
前記光調整粒子はポリ過ヨウ化物,炭素系材料,金属材料または無機化合物の何れか一種以上である調光素子。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1の調光手段はマトリックス樹脂を有し、
前記懸濁液が前記マトリックス樹脂におおわれている調光素子。
【請求項8】
請求項3において
前記第2の調光手段はゲストホスト液晶方式であり、
前記第2の調光手段はゲストホスト液晶を有し、
前記ゲストホスト液晶は二色性色素および液晶を有し、
前記液晶中に前記二色性色素が分散され、
前記第2の調光手段はマトリックス樹脂を有し、
前記ゲストホスト液晶が前記マトリックス樹脂におおわれている調光素子。
【請求項9】
請求項1において、
前記第1の調光手段に用いられる基板および前記第2の調光手段に用いられる基板が共通化されている調光素子。
【請求項10】
請求項1において、
前記第1の調光手段の調光速度は前記第2の調光手段の調光速度より大きく、
前記調光素子を所定の透過率に調光する際に、前記第1の駆動回路は、前記第1の調光手段の透過率を段階的に調光するように駆動する調光素子。
【請求項11】
請求項1において、
前記調光素子はセンサを有し、
前記センサより得られた情報に基づき、前記第1の駆動回路または前記第2の駆動回路は、前記調光素子の透過率を段階的に調光するように駆動する調光素子。
【請求項12】
請求項1において、
前記第1の調光手段の外側に第1カバー層が形成され、
前記第2の調光手段の外側に第2カバー層が形成され、
前記第1カバー層および前記第2カバー層の少なくとも一方が紫外線カット,赤外線カットの何れか一つ以上の機能を有する調光素子。
【請求項13】
請求項1において、
前記調光素子は、機能層を有し、
前記機能層は、紫外線カット,赤外線カット,遮音,飛散防止の何れかの一つ以上の機能を有する調光素子。
【請求項14】
請求項1において、
前記第1の調光手段および前記第2の調光手段が一組の基板の間に配置され、
前記第1の駆動回路および前記第2の駆動回路が共通化されている調光素子。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図3】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−7935(P2013−7935A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141340(P2011−141340)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】