説明

調光装置、顕微鏡

【課題】所望の明るさまで素早く、かつ正確に調光できる調光装置と、これを有する顕微鏡を提供すること。
【解決方法】LED照明の調光を行う調光コントローラと、前記LED照明の調光制御する制御部を有し、前記コントローラは、パルス生成手段と粗微設定手段とを有し、前記パルス生成手段は、前記LED照明の明るさを調光するパルスを生成し、前記粗微設定手段は、前記LED照明をステップ状に調光する粗調光モードと前記LED照明を略連続的に調光する微調光モードとを切り替え、前記制御部は、前記調光コントローラに接続されて前記パルスが入力され、かつ前記粗微設定手段の状態を検出し、前記粗調光モードと前記微調光モードを切換えて前記LED照明の調光用制御を行うことを特徴とする調光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源の調光装置とこれを有する顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、顕微鏡の照明部はハロゲンランプからLED(Light Emitting Diode)に変わりつつある。LEDの特徴として、明るさを変えても色温度はほとんど変化しない、これまでのハロゲンランプにはなかった長寿命、低消費電力、発熱の低下などが挙げられる。そして、LEDの明るさを調整するために、可変抵抗を使用した調光(例えば、特許文献1参照)や、パルス幅を可変して調光することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−13503
【特許文献2】特開2005−250151
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の変調方法を用いた調光装置では、調光に可変抵抗を使用した場合、可変抵抗が径時変化して連続的に抵抗値を変化させることができなくなる(いわゆるガリオームとも言う)ことがあり、調光を連続的かつ高精度に行うことができなくなる、またパルス幅を可変して調光する際のパルス変更幅が最小可変パルス幅に限られているため、所望の明るさのLED照明を得る為には多くのパルス入力が必要になり時間がかかるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて行われ、所望の明るさまですばやく、かつ正確に調光できる調光装置と、これを有する顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、LED照明の調光を行う調光コントローラと、
前記LED照明の調光制御する制御部を有し、前記コントローラは、パルス生成手段と粗微設定手段とを有し、前記パルス生成手段は、前記LED照明の明るさを調光するパルスを生成し、前記粗微設定手段は、前記LED照明をステップ状に調光する粗調光モードと前記LED照明を略連続的に調光する微調光モードとを切り替え、前記制御部は、前記調光コントローラに接続されて前記パルスが入力され、かつ前記粗微設定手段の状態を検出し、前記粗調光モードと前記微調光モードを切り替えて前記LED照明の調光制御を行うことを特徴とする調光装置を提供する。
【0007】
また、本発明は、前記調光装置を有することを特徴とする顕微鏡を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所望の明るさまで素早く、かつ正確に調光できる調光装置と、これを有する顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態にかかる調光装置を具備する顕微鏡の概略構成図。
【図2】調光装置のブロック図。
【図3】LED調光のための印加電圧特性の一例で、(a)は微調光時の特性を、(b)は粗調光時の特性を、(c)は(b)の一部の拡大図をそれぞれ示す。
【図4】調光装置の制御フローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の実施形態にかかる調光装置を有する顕微鏡について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、発明の理解を容易にするためのものに過ぎず、本願発明の技術的思想を逸脱しない範囲において当業者により実施可能な付加・置換等を施すことを排除することは意図していない。
【0011】
図1において、顕微鏡装置100は、顕微鏡本体101に焦準ハンドル102で上下動するステージ103と、ステージ103に載置された標本104を透過照明するLED照明105と、標本104の光を集光する対物レンズ106と、集光した標本104からの光を不図示の接眼レンズを介して観察者に観察させる鏡筒107とから構成されている。
【0012】
また、対物レンズ106は、顕微鏡本体101のアーム部に配設されたレボルバ108に複数装着されている。
【0013】
また、顕微鏡本体101には、LED照明105の明るさや顕微鏡100の動作を制御する制御部109が内蔵され、LED照明105の明るさを調整するためのリモートコントローラ110が接続されている。このようにして、実施形態にかかる顕微鏡100が構成されている。
【0014】
なお、LED照明105は、顕微鏡本体101に内蔵でも外付けでも良い。また、制御部109は顕微鏡本体101の外部に別体として設けても良い。また、リモートコントローラ110は、顕微鏡本体101のベース部全面または側面に配置しても良い。
【0015】
また、レボルバ108は手動で回転させ、クリックに入るとストップセンサ(不図示)からストップ状態を読み、その位置でのアドレスセンサ(不図示)を読むことで、観察光路内に挿入されているレボルバのアドレスを読み出せる。
【0016】
次に、制御部109とリモートコントローラ110について図1、2を参照しつつ説明する。
【0017】
制御部109は、制御用のCPU109aとD/Aコンバータ109bとLEDドライブ回路109cとレボルバ位置検出回路109dを有している。また、CPU109aは、リモートコントローラ110に接続されている。なお、制御部109は、その他の制御基板も内蔵しているが、本願の説明に直接関係無いので説明を省略する。
【0018】
リモートコントローラ110には、LED照明105の明るさをステップ状に調光する粗調光モードと明るさをほぼ連続的に調光する微調光モードとを切り替えるための粗微設定ボタン110aを有する。また、LED照明105の明るさを変えるための制御パルスを出力するためのロータリエンコーダ110bを有する。このロータリエンコーダ110bは、1回転で400パルスを出力する。なお、このロータリエンコーダ110bは、1回転で400パルスを出力するものに限られないことは言うまでもない。
【0019】
また、リモートコントローラ110には、レボルバ108に保持されている1本目の対物レンズ(アドレス1)の情報をCPU109aに設定するための対物レンズ情報設定ロータリスイッチ110d、2本目の対物レンズ(アドレス2)の情報をCPU109aに設定するための対物レンズ情報設定ロータリスイッチ110e、3本目の対物レンズ(アドレス3)の情報をCPU109aに設定するための対物レンズ情報設定ロータリスイッチ110fを備える。この対物レンズ情報設定ロータリスイッチ110d、110e、110fはそれぞれのポジションに対応してあらかじめ対物レンズの情報が設定されており、CPU109aはそのポジションを読み出すことでレボルバ108の各アドレスに保持されている対物レンズの情報を決定できる。
【0020】
ロータリエンコーダ110bには、ロータリエンコーダを回転させる機構に電気的に制御できるブレーキ機構110cが設けられ、粗微調設定ボタン110aに連動している。このブレーキ機構110cは、粗調光モード時にはロータリエンコーダ101bの回転機構にブレーキをかけて手感を重くするようにし、急激に回転しづらくして急激な光量変化を起こさないようにする。一方、微調光モードでは、ブレーキが解除されて手感が軽くなりロータリエンコーダ110bを軽く回転することができLED照明105の微調光を容易に行うことができる。また、粗調光モード時にユーザーが微調光モードと誤って光量を変化させようとすると、急にまぶしい光が目に入り事故となることを防止することができる。
【0021】
CPU109aは、粗微設定ボタン110aが粗調光モードに設定された時、LED照明105の明るさを所定のステップ状に変化させるためのロータリーエンコーダ110bの1パルスに対して出力パルスを逓倍するための逓倍数を不図示のメモリに記憶している。例えば、メモリは、ロータリーエンコーダ110bの1パルス増減に対して、100パルス増減するための情報として、この数100を逓倍数として記憶しておく。なお、この逓倍数は、数100に限らずLED照明105の粗調光制御に必要な逓倍数を適宜記憶しておけばよい。以下の説明では、粗調光モード時の逓倍数を数100として説明する。
【0022】
また、本実施形態では、D/Aコンバータ109bの分解能を16ビットとして0〜65535パルスを上記逓倍数ずつ増減するように設定している。なお、この65535パルスを逓倍数で割った整数656をステップと記す。これによりロータリーエンコーダ110bからの入力パルス数に対応するステップ数(0〜656ステップ、図3(b)参照)でデジタル出力0〜65535まで出力できる。
【0023】
粗微設定ボタン110aが粗調光モード側に設定されている場合、ロータリエンコーダ110bからCPU109aに入力されるパルス数がカウントされる。そして、このカウント数n(上記ステップ数対応)に上記逓倍数を乗じたデジタル出力(100×n)がCPU109aからD/Aコンバータ109bに出力される。例えば、ロータリエンコーダ110bからパルスが1パルス増減されると、これに対応する1ステップ分の100パルス増減したデジタル出力がCPU109aからD/Aコンバータ109bに出力される。ロータリーエンコーダ110bからのパルス数nが5ステップから6ステップになると(図3(b)参照)デジタル出力は500パルスから600パルスになる。これに応じて、D/Aコンバータ109bからドライブ回路109cに100パルス分LED照明105の明るさを増加する信号が出力され、LED照明105の調光が実行される。
【0024】
また、CPU109aは、D/Aコンバータ109bへのデジタル出力を監視しており、LED照明105の明るさを把握している。後述するように、CPU109aは観察者が微調光モードから粗調光モードに粗微設定ボタン110aを切り替えた時、そのとき出力しているデジタル出力値に最も近いステップ数のデジタル出力(ここでは逓倍数100の倍数のデジタル出力、例えば、100、200、・・・)でLED照明105の明るさが暗くなるステップ数のデジタル出力に設定する。これにより、続けて粗調光モードで調光することができる。また、明るさが暗いテーブル番号に設定するように制御することで粗微設定ボタン110aを微調光モードから粗調光モード側に操作したときにLED照明105の明るさが僅かではあるが暗くなる方に設定されるため、観察者の眼を保護することができる。なお、制御部109等は、電源投入時にゼロリセットされて入出力がゼロ状態に設定される。あるいは、不図示のリセットボタンを押すことでゼロリセットすることもできる。
【0025】
なお、粗調光モードの逓倍数の設定は、D/Aコンバータ109bの分解能と粗調光時の明るさの変化のさせ方により適宜変更可能である。また、ロータリエンコーダ110bの一回転あたりのパルス出力数により決めてもよい。例えば、本例の場合、ロータリエンコーダ110bは、400パルス/一回転であるので65536パルスを400パルスで割った値の整数値(逓倍数164)にしても良い。このようにすると、ロータリエンコーダ110bをほぼ一回転することで、LED照明105の明るさを0〜Imaxまで変化させることができ、観察者に操作しやすくすることができる。
【0026】
また、粗微設定ボタン110aが微調光側に設定されている場合、レボルバ108の現在アドレス及び対物レンズ情報設定ロータリスイッチ110d、110e、110fから現在光路に挿入されている対物レンズの倍率を読み出し、あらかじめ不図示のメモリに記憶しておいたその倍率に最適な分解能で0〜65535ビットを分割し、デジタル出力する。例えば、対物レンズが4倍ならば分解能14ビット(ロータリエンコーダ110bの1パルスに対してCPU109aは逓倍数4としてパルスを生成しD/Aコンバータ109bにデジタル出力)、100倍ならば10ビット(ロータリエンコーダ110bの1パルスに対してCPU109aは逓倍数64としてパルスを生成しD/Aコンバータ109bにデジタル出力)でデジタル出力するように構成している。
【0027】
このように、光路中に挿入された対物レンズの倍率によりCPU109aからD/Aコンバータ109bに出力されるロータリーエンコーダ110bからの1パルス入力当たりのデジタル出力逓倍数を変更する理由は、対物レンズの倍率によって接眼レンズで観察される明るさの変化が異なるためである。例えば、低倍の対物レンズで一定の明るさ変化となる光量変化と、高倍の対物レンズで同じ一定の明るさ変化となる光量変化を比較すると、低倍の方が少ない光量変化で一定の明るさ変化を達成できることによる。そこで、低倍より高倍の逓倍数を増やすことで、対物レンズの倍率に依存せず迅速に所望の明るさが得られるようになる。
【0028】
次にLED照明105の明るさ調整について図3、図4を参照しつつ説明する。ここで使われているLED照明105は、LEDドライブ回路109cにD/Aコンバータ109bからの0〜65535パルス入力に応じたアナログ出力がLEDドライブ回路109cに加えられ、LEDドライブ回路109cからLED照明105に0〜Imaxまでの電流を印加することで、明るさゼロから最大の明るさImaxまで変化する。
【0029】
図3(a)、(b)に示すように、LEDドライブ回路109cの特性は、パルス0〜65535でLED照明105の明るさが0〜Imaxまで下に凸のカーブを描くようにLED制御電流を出力する。これは、人間の眼の明るさに対する反応を考慮したもので、LED照明105の明るさが図3(a)のような変化をしても人間の眼には、明るさがほぼ直線的に増加しているよう認識される。なお、LED照明105の制御は上述に限られるものではなく、パルス0〜65535までで電流値が0〜Imaxまで直線的に変化するように制御してもよい。
【0030】
図3(a)は、粗微設定ボタン110aを微調光モード(16ビット)に設定した場合を示し、ロータリエンコーダ110bのパルス出力によるCPU109aからの0〜65535のパルス入力に従って0〜Imaxmでほぼ連続的に変化し、LED照明105の明るさは、ロータリエンコーダ109bからのパルス入力の積算値に従ってほぼ連続的に変化する。なお、対物レンズの倍率によって分解能は変化するが、観察者の眼に感じるLED照明105の明るさは、ほぼ連続的に変化するような分解能としておく。
【0031】
図3(b)は、粗微設定ボタン110aを粗調光モードに設定した場合を示し、ロータリエンコーダ110bからのパルス数に対応するステップ数(0〜656)に従ったデジタル出力がCPU109aからD/Aコンバータ109bに与えられる。例えば、ロータリエンコーダ110bからのパルス数nが1パルス増加すると、CPU109aからのデジタル出力は1ステップ増加し、これに対応してD/Aコンバータ109bへ逓倍数分の100パルス増加したパルスが出力される。
【0032】
図3(c)は、図3(b)の一部を拡大して示したものである。ロータリエンコーダ110bからのパルス出力nが4パルス(4ステップに対応),5パルス(5ステップに対応)、6パルス(6ステップに対応)の近傍を示している。4パルスでは400パルスのデジタル出力が出力されて明るさがI4に、5パルスでは500パルスのデジタル出力が出力されて明るさがI5に、6パルスでは600パルスのデジタル出力が出力されて明るさがI6にとそれぞれ100パルスずつデジタル出力が増加するので、これに対応して明るさもI4、I5、I6とステップ状に変化する。
【0033】
LED照明105による標本を照明する場合、初めに粗微設定ボタン110aを粗調光モードに設定して所望の明るさI(図3(c)参照)の近傍I5までは粗調光モードで明るさを調整する(ロータリーエンコーダ110bから5パルスを与える)。そして粗微設定ボタン110aを微調光モードに切り替えてロータリエンコーダ110bからのパルス入力の積算値(例えば、30パルス)により明るさI5から所望の明るさI(530パルス)にまで微調光を行う。このように、本実施形態では、ロータリエンコーダ110bからCPU109aに与えられるパルス信号を、粗微設定ボタン110aによって粗調光モードと微調光モードとを切り替えることで、所望の明るさIまで素早く、かつ正確に設定することができる。また、ロータリエンコーダ110bからのパルスに基づく上記増減は、ロータリエンコーダ110bの回転方向を出力するパルスをCPU109aが検出して、入力パルスの加減算を行うことで実現できる。なお、前述したように微調光モードにおける調光分解能は、光路中に挿入されている対物レンズの情報によってCPU109aが最適な分解能に設定するように構成されている。
【0034】
図4は本実施形態にかかる調光装置の調光時のフローチャートを示している。以下ステップ毎に説明する。
【0035】
(ステップS1)
CPU109aは、CPU109aが管理しているLED照明105の現在の照明値(デジタル出力)を読み出す。
【0036】
(ステップS2)
CPU109aは、現在の観察光路内に挿入されているレボルバ108のアドレスを読み出す。
【0037】
(ステップS3)
CPU109aは、現在アドレスに対応する倍率設定ロータリスイッチ110d、110e、110fのいずれかを読み出し、現在観察光路内に挿入されている対物レンズの情報を読み出す。
【0038】
(ステップS4)
CPU109aは、レボルバアドレスが変更されたことを検出するとステップS2に戻り、レボルバアドレスが変更されなければステップS5を実行する。
【0039】
(ステップS5)
CPU109aは、リモートコントローラ110の粗微設定ボタン110aの状態を監視する。粗微設定ボタン110aが切り替えられたことを検出するとステップS6を実行し、状態変化がない場合にはステップS7にジャンプする。
【0040】
(ステップS6)
CPU109aは、処理する調光モードを変更する。例えば、CPU109aは、粗微設定ボタン110aが微調光モードから粗調光モードに切り替えられたことを検出すると、ロータリエンコーダ110bからの入力パルス数nに対して(逓倍数100×n)パルス(nステップ)を出力する粗調光モードに切り替える。また、CPU109aはステップS1で読み出したLED照明105の照明値(デジタル出力)を参照して、現在のデジタル値に最も近い粗調光モードのステップ数、およびLED照明105の明るさが暗くなるデジタル出力の粗調光モードのステップ数の少なくとも一方に設定する。一方、CPU109aは、粗微設定ボタン110aが粗調光モードから微調光モードに切り替えられたことを検出すると、現在設定されている粗調光モードのステップ数に対応するデジタル出力にロータリエンコーダ110bからのパルス入力を逐次加算したデジタル出力を行う微調光モードに切り替える。
【0041】
(ステップS7)
CPU109aは、リモートコントローラ110のロータリエンコーダ110aからパルス出力、すなわちLED照明105の光量変更指令(パルス出力がある)を受信するとステップS8を実行し、ローラリエンコーダ110aからの信号入力が無ければステップS4に戻る。以降、CPU109aは、ステップS4からステップS7を実行する。
【0042】
(ステップS8)
CPU109aは、設定されている粗微調光モードにより、粗調光モードであるならステップS9を実行し、微調光モードならステップS10を実行する。
【0043】
(ステップS9)
CPU109aは、読み出された粗微調光モードが粗調光モードであることから、ロータリエンコーダ110bの入力パルス数nを逓倍数100で逓倍したデジタル出力によりLED照明105の明るさを増減する。本例の場合、1パルスでデジタル出力100パルス分、LED照明105の明るさが増減される。CPU109aは、ステップS9を実行後、ステップS1に戻る。ロータリエンコーダ110bからのパルスに基づく上記増減は、ロータリエンコーダ110bの回転方向を出力するパルスをCPU109aが検出して、入力パルスの加減算を行う。
【0044】
(ステップS10)
CPU109aは、ステップS3で取得した対物レンズ倍率から、あらかじめ決めておいたその倍率に前述の最適な微調分解能(倍率に応じた逓倍数)を決定する。
【0045】
(ステップS11)
CPU109aは、読み出された粗微調光モードが微調光モードであることから、切り替え前に設定されていたデジタル出力にロータリエンコーダ110aから入力されるパルスを対物レンズに対応した微調分解能(逓倍数)処理後のパルスを逐次加算してLED照明105の明るさを調整する。これにより、LED照明105は、ステップS10で決定した微調分解能で明るさを増減する。この時、微調分解能で明るさを増減することからLED照明105の明るさを微調整することが可能となる。ロータリエンコーダ110bからのパルスに基づく上記増減は、ロータリエンコーダ110bの回転方向を出力するパルスをCPU109aが検出して、入力パルスの加減算を行う。
【0046】
なお、本調光装置では、上述したように、CPU109aは微調光モードで逓倍数100(各ステップ)以外の光量(例えば、図3(c)の光量I)に設定したのち、粗微設定ボタン110aを粗調光コードに切り替えて明るさを増減する場合、ロータリエンコーダ110bからの最初の1パルス目は現在光量(I)に最も近いステップ数のデジタル出力、およびLED照明105の明るさが暗くなるステップ数のデジタル出力の少なくとも一方に設定する(例えば、図3(c)のI5)。その後はロータリエンコーダ110bからの入力パルスの増減に従ってステップ(逓倍数100/1パルス)毎に明るさが増減される。例えば、現在デジタル出力が500パルスに設定されたとすると、ロータリエンコーダ110bからのパルスが1パルス増加するパルスであれば1ステップ増加してデジタル出力が600パルスに、1パルス減少するパルスであれば1ステップ減少してデジタル出力が400パルスに、それぞれ100パルス(逓倍数)出力分明るさが増減する。また、ロータリエンコーダ110bからのパルスに基づく上記増減は、ロータリエンコーダ110bの回転方向を出力するパルスに基づいて決める。
【0047】
以上により、本調光装置は、LED照明を素早く、かつ正確に所望の明るさに設定することができる。実際のユーザー操作を鑑みると、まず粗調光モードで所望の明るさ付近に設定したのち、微調光モードに切り替えて明るさを微調整する。
【0048】
また本調光装置では、粗調光モードは、CPU109aは、ロータリーエンコーダ110bからの入力パルス数nに対してステップ数n分の(逓倍数100×n)パルスを出力するので、D/Aコンバータ109bからの出力0〜65535パルスを100パルスずつに分割することに対応する。ロータリエンコーダ110bは、1回転当たり400パルスを出力することから、ほぼ1回転半(656パルス)で最低の明るさから最大の明るさまでLED照明を調光することができる。また、微調光モードでは、粗調光モードのパルス間隔が±100パルスであることから、ロータリエンコーダ110bの半回転(合計200パルス分)の微調光操作で所望の明るさに調光することができる。なお、微調光モードでは、ロータリエンコーダ110bを一回転すれば400パルス分加算または減算されるので、CPU109aからのデジタル出力は、粗調光モードの400ビット分の明るさを変化させることもできる。さらに、対物レンズの倍率によってCPU109aが出力するロータリエンコーダ110bからの1パルス当たりの逓倍数を変えることによって、光路中に挿入されている対物レンズに最適な光量調整を達成することができる。
【0049】
なお、上記実施形態では、LED照明105の制御をリモートコントローラ110bにて行ったが、リモートコントローラ110にRS232CやUSBなどの通信機能を備えることにより制御部109(CPU109a)からの通信コマンドによる制御命令等で制御することも可能である。また、ロータリエンコーダ110bの仕様や図3(a)に示す、CPU109a、D/Aコンバータ109bのデジタル出力に対するLEDドライブ回路109cからLED照明105への印加電流特性(光量変化特性)、粗調光モードの逓倍数(例えば、100)のデジタル出力配分などに関しては必ずしも上記に限らず適宜設計することができる。
【0050】
このように、本実施形態にかかる調光装置を有する顕微鏡は、顕微鏡用LED照明の制御にD/Aコンバータの最小分解能を所定のビット数(逓倍数)で分割してステップ状に調光する粗調光モードと、上記対物レンズの倍率に対応した分解能で調光する微調光モードを有することで、粗調光モードの各ステップ間を微調光モードで補完してLED照明の明るさを素早く、かつ正確に所望の明るさにLED照明を調光でき、操作性の高い顕微鏡を提供できる。
【0051】
また、本実施形態にかかる調光装置を有する顕微鏡は、粗調光モード時にユーザーが微調光モードと誤って光量を変化させようとすると、急にまぶしい光が目に入り事故となる可能性があるため、ロータリエンコーダを回転させる機構に電気的に制御できるブレーキ機構を設け、粗調光モード時には回転機構にブレーキをかけ、手感を重くするようにし、急激な光量変化を起こさないようにすることで安全性の高い顕微鏡を提供できる。
【0052】
また、顕微鏡が対物レンズ交換、フィルタ交換、観察方法の切換え等が行える電動顕微鏡である場合、上記それぞれの切換えが発生したことがCPUで検出されたとき、調光モードを粗調光モードに切り替えて所望の明るさ近傍に調光できるようにし、その後微調光モードで所望の明るさに調光することで、上記各切り替えが発生した時でも明るさの調整を素早く、かつ正確に行うことができる。
【符号の説明】
【0053】
100 顕微鏡
101 顕微鏡本体
102 焦準ダイヤル
103 ステージ
104 標本
105 LED照明
106 対物レンズ
107 鏡筒
108 レボルバ
109 制御部
109a CPU
109b D/Aコンバータ
109c LEDドライブ回路
109d レボルバ位置検出回路
110 リモートコントローラ
110a 粗微設定ボタン
110b ロータリエンコーダ
110c ブレーキ機構
110d、110e、110f ロータリースイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED照明の調光を行う調光コントローラと、
前記LED照明の調光制御する制御部を有し、
前記コントローラは、パルス生成手段と粗微設定手段とを有し、
前記パルス生成手段は、前記LED照明の明るさを調光するパルスを生成し、
前記粗微設定手段は、前記LED照明をステップ状に調光する粗調光モードと前記LED照明を略連続的に調光する微調光モードとを切り替え、
前記制御部は、前記調光コントローラに接続されて前記パルスが入力され、かつ前記粗微設定手段の状態を検出し、前記粗調光モードと前記微調光モードを切り替えて前記LED照明の調光制御を行うことを特徴とする調光装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記LED照明の最小明るさから最大明るさを前記ステップ状に配分する逓倍数情報を有し、
前記粗調光モードにおいて、前記制御部は、前記パルス生成手段からの入力されたパルス数に前記逓倍数情報を乗じた第1デジタル出力により調光制御を行い、
前記微調光モードにおいて、前記制御部は、前記第1デジタル出力に前記パルス生成手段からの前記パルスを加減した第2デジタル出力により調光制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の調光装置。
【請求項3】
前記LED照明の光路中に挿入された対物レンズの情報を設定する対物レンズ情報設定手段と、
前記対物レンズに対応した分解能情報とを有し、
前記微調光モードにおいて、前記制御部は、前記対物レンズ情報設定手段の情報に基き前記分解能情報を設定し、前記パルス生成手段からの前記パルス数に前記分解能情報を乗じた前記第2デジタル出力により調光制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の調光装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記微調光モードから前記粗調光モードに切り替えられたことを検出すると、前記LED照明への前記第2デジタル出力に最も近い前記第1デジタル出力を選択することを特徴とする請求項2または3に記載の調光装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記微調光モードから粗調光モードに切り替えられたことを検出すると、前記LED照明への前記第2デジタル出力より当該LED照明の明るさを暗くする前記第1デジタル出力を選択することを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の調光装置。
【請求項6】
前記パルス生成手段の操作感覚を変更するブレーキ手段を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の調光装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の調光装置を有する顕微鏡。
【請求項8】
前記顕微鏡は、複数の電動ユニットを有し、
前記調光装置の制御部は、前記複数の電動ユニットの状態が変化したことを検出したとき、微調光モードから粗調光モードに切り替えることを特徴とする請求項7に記載の顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−51144(P2013−51144A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188905(P2011−188905)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】