説明

調光装置および照明装置

【課題】軽負荷の光源についても、その光源に印加される交流電圧の位相制御により調光できる調光装置および照明装置を提供する。
【解決手段】光源17に印加される交流電圧の位相角を制御するための導通角と導通時間を制御する導通制御信号を生成し出力する導通角制御手段13と、光源に交流電圧が印加される通電路に開閉可能に介装され、導通制御信号が入力されたときに、その導通角で前記通電路を導通させて光源17に印加される交流電圧の位相角を制御し、この導通状態を所要の保持電流により保持する自己保持形スイッチング装置12とを有する。また、インダクタ14bとコンデンサ14aを有し、自己保持形スイッチング装置12の駆動時の雑音を低減する雑音防止回路と、導通制御信号の導通時間を、雑音防止回路14のインダクタ14bとコンデンサ14aの共振周波数の1周期分以上に制御する導通時間制御手段15と、を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は位相制御形の調光装置および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、白熱電球を調光する調光装置の一例としては、主開閉素子としてトライアックを用いる位相制御形の調光装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4はこの種の従来の調光装置1の回路図である。この調光装置1は、トライアック2のゲートgに、ダイアック3からトリガパルスを与えることにより、このトライアック2をオン(導通)させる。この導通角は、可変抵抗器4および抵抗5の合成抵抗値Rと、コンデンサ6の容量Cの時定数CRにより制御される。このために、可変抵抗器4の抵抗値を制御することにより、トライアック2の導通角を制御して白熱電球等のランプ7に印加される交流電源8の交流電圧の位相角を制御し、ランプ7の明るさを制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−538378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そして、トライアック2は、一旦オン(導通)すると、その導通状態は保持電流により保持されるが、通流する電流が保持電流未満、または途中で保持電球未満に低下した場合には、そのオン(導通)状態を保持できず、導通の半ばでターンオフしてしまうという特性がある。
【0006】
また、図5に示すようにこの種の調光装置1では、雑音防止回路9のコンデンサ9aとインダクタ9bとにより共振周波数が例えば30〜50KHzの共振電流が発生する共振ループが形成され、トライアック2のターンオン時に、トライアック2に流れる電流とは逆方向の図中破線方向に流れる逆電流が発生する可能性がある。比較的大きな抵抗値を有する電球の場合、上記共振ループの共振は十分に減衰されるが、LED(発光ダイオード)を用いた電球形のランプの場合には減衰し得ず、トライアック2に流れる電流が保持電流未満に低下するので、トライアック2はターンオフしてLEDランプが消灯する。一般的に、同程度の光出力を得るためのLEDランプ7の抵抗は白熱電球よりも例えば約10倍程度高いので、共振電流が減衰しにくい。一旦ターンオフしたトライアック2は導通角制御回路によりターンオンされるが、再び共振電流によってターンオフされる。このようなターンオン・オフは電源周波数の半サイクルの中で複数回繰り返し発生し、その発生の規則性が無いので、チラツキとして視覚され易い。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、軽負荷の光源についても、その光源に印加される交流電圧の位相制御により調光できる調光装置および照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、光源に印加される交流電圧の位相角を制御するための導通角と導通時間を制御する導通制御信号を生成し出力する導通角制御手段と、光源に交流電圧が印加される通電路に開閉可能に介装され、導通制御信号が入力されたときに、その導通角で前記通電路を導通させて光源に印加される交流電圧の位相角を制御し、この導通状態を所要の保持電流により保持する自己保持形スイッチング装置とを有する。
【0009】
また、本発明の一実施形態は、インダクタとコンデンサを有し、自己保持形スイッチング装置の駆動時の雑音を低減する雑音防止回路と、導通制御信号の導通時間を、雑音防止回路のインダクタとコンデンサの共振周波数の1周期分以上に制御する導通時間制御手段と、を具備している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る照明装置と調光装置の回路図。
【図2】図1で示す雑音防止回路で発生する共振電流が重畳されたトライアックに流れる電流とトリガパルスの相対関係を示すタイミングチャート。
【図3】第2の実施形態に係る照明装置と調光装置の回路図。
【図4】従来の白熱電球用調光装置の回路図。
【図5】図4で示す調光装置の要部の等価回路図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の図面中、同一または相当部分には同一符号を付している。
【0012】
(第1の実施形態)
図1に示すように第1の実施形態に係る照明装置10は、照明装置本体10a内に配設された商用交流電源(50Hzまたは60Hz)16に接続されるLEDランプ17と、照明装置本体10a外に配設された調光装置11とを含んでいる。調光装置11は、自己保持形スイッチング装置12、導通角制御手段13、雑音防止回路14および導通時間制御手段15を具備している。
【0013】
自己保持形スイッチング装置12は例えばトライアックであり、図1中上下一対の主端子12a,12bとゲート12cを具備している。トライアック12は、その一対の主端子12a,12bを、例えば商用(50Hz)電源であるAC(交流)100Vの交流電源16とLED(発光ダイオード)ランプ17とを直列に接続してなる閉回路に、直列に挿入している。トライアック12は、そのゲート12cを、導通角制御手段13の一部を構成するゲートトリガ回路の一例であるダイアック13aの出力側に接続している。
【0014】
導通角制御手段13は、ダイアック13a、このダイアック13aの入力側にトライアック2と並列に接続された第1の抵抗13bおよび可変抵抗器13cの直列回路と、第1のコンデンサ13dを具備している。
【0015】
導通角制御手段13は、第1の抵抗13bと可変抵抗器13の合成抵抗値と、第1のコンデンサ13dの容量C1との相乗積である時定数CR1により、交流電源16の交流電圧が第1のコンデンサ13dに充電される充電時間を設定し、トライアック12のゲート12cに与えられる導通制御信号であるゲートトリガパルスの導通角を設定している。
【0016】
この導通角制御手段13の入力側には、可変抵抗器13の操作により導通角を最大に絞る(導通角を遮らせる)過程と最大に絞った状態から徐々に立ち上げていく過程とにおける導通角の相違、すなわちヒステリシスを軽減するためのヒステリシス防止回路18を接続している。このヒステリシス防止回路18は、第2の抵抗18aと直列に接続された第2のコンデンサ18bとの直列回路の中点を、第3の抵抗18cを介してダイアック13aの入力側に接続することにより構成されており、ダイアック13aがオンしたときに、第1のコンデンサ13dに発生するヒステリシスによる第1のコンデンサ13dの電圧の低下を抑制または防止することが可能である。
【0017】
雑音防止回路14はトライアック12aのオンオフ駆動時に発生する雑音を低減する、特にターンオン時の雑音が交流電源16側に漏洩するのを防止するものであり、例えば0.334〜0.474μFのいずれかの第3のコンデンサ14aをトライアック12と並列的に、例えば60μHのインダクタ14bをトライアック12と直列的に接続して構成されている。
【0018】
導通時間制御手段15は、第1のコンデンサ13dの放電路、すなわち、ダイアック13aの出力側Aおよび入力側B、または、第1のコンデンサ13dの高電位側C、低電位側Dのいずれかに、第4の抵抗15aを直列に挿入してゲートトリガパルスのオン幅、すなわち、トライアック12aの導通時間を雑音防止回路14の共振周波数に応じて適宜設定する。
【0019】
つまり、第1のコンデンサ13dの放電路のA,B,C,Dのいずれかの箇所にて、第4の抵抗15aを挿入し、その抵抗値を適宜設定することにより、第1のコンデンサ13dの放電時の時定数CR2によりゲートトリガパルスのオン幅を適宜設定することができる。
【0020】
すなわち、図2に示すようにゲートトリガパルスPtのオン幅wは雑音防止回路14の共振電流の1周期分に相当する時間に設定されている。この種調光装置において通常設計される雑音防止回路は、共振周波数が10KHz〜100KHzの範囲であるから、その1周期は10μsec〜100μsecとなる。したがって、トリガパルスのオン幅wも10μsec〜100μsecに設定される。また、共振周波数が30KHz〜50KHzの場合はトリガパルスPtのオン幅wはその1周期分の20μsec〜約33μsecに設定される。
【0021】
図2に示すようにトライアック12に導通(ON)時に流れる電流iは、共振電流が重畳されるが、抵抗分等により経時的に漸次減衰し、最初の第1周期の負の半サイクルに発生する逆電流(図中ハッチングにより図示)が最大であり、第2周期以降は負にならずに経時的に減衰して行き、LEDランプ17の消費電流で収束する。このために、共振電流が重畳するトライアック12に流れる電流iの最初の1周期の負の半サイクルに発生する逆電流が発生している期間中にも、トリガパルスがトライアック12に与えられるので、このトライアック12の導通を強制的に保持することができる。このトリガパルスPtのオン幅wはトライアック12の導通時の電流の1周期分以上あればよく、共振電流の減衰等の条件を考慮しても2周期、せいぜい数周期もあれば充分である。導通時間(本実施形態ではトリガパルスPとのオン幅w)をむやみに長くすることは、本実施形態においては第1のコンデンサ13dの容量を大きくする等、部品の容量が大きくなって、大形化と高価格化を招くため避けるべきである。したがって、導通時間の上限は、共振電流の5周期、絶対時間で表わすなら100μsecとすることが好ましい。
【0022】
なお、図1中、符号19はスイッチランプ点灯回路、20はダンピング回路である。スイッチランプ点灯回路19は例えば壁スイッチ等のスイッチ19aがオフの時に、このスイッチ19aと一体的に設けた表示用ランプ19bを点灯させる回路であり、夜間等によりスイッチ19aの視認が困難であるときに、点灯中のランプ19bにより、このスイッチ19aを見つけ易くすることができる。
【0023】
ダンピング回路20は、負荷回路抵抗の抵抗値を擬似的に低下させることにより、雑音防止回路14に発生する共振電流の減衰を早めることができる回路である。トライアック12のターンオン時にのみ擬似的負荷をトライアック12の出力側に接続する等の手段によって構成することができる。
【0024】
したがって、この調光装置11によれば、トライアック12を導通(オン)させるゲートトリガパルスPtのオン幅wを、雑音防止回路14に発生する共振電流の共振周波数の1周期分以上に設定したので、トリガパルスによりトライアック12に導通させ、かつその導通を保持することができ、その導通時は保持電流により自己保持されなくてもよい。このために、この共振電流の逆電流により、導通後にトライアック12に流れる電流iが保持電流以下に低下してトライアック12がターンオフしてLEDランプ17が消灯し、チラツキが発生することを防止することが可能である。
【0025】
これにより、光源が軽負荷のLEDランプ17や白熱電球であっても、調光装置1として用いることができる。特に、LEDランプ17については、光の応答性が電球に比してよいため、チラツキの問題が発生し易いが、これを低減できる。
【0026】
また、導通時間制御回路15は、第1のコンデンサ13dの放電回路に、第4の抵抗15aを単に直列に挿入することにより構成されるので、回路構成の簡素化を図ることができると共に、コスト低減と実用的効果の向上を図ることができる。
【0027】
(第2の実施形態)
図3は第2の実施形態に係る照明装置10Aと調光装置11Aの回路図である。図3に示すように照明装置10Aは、その照明装置本体10a内に配設されたLEDランプ17と、照明装置本体10a外に配設された調光装置11Aを含んでいる。この調光装置11Aは、上記導通角制御回路13として、IC(Integrated Circuit)化された導通角制御回路13Aを使用し、同じく、上記導通時間制御回路15としてIC化されたワンショットパルス発生回路15Aを用いた点に特徴がある。
【0028】
IC化された導通角制御回路13Aは、上記導通角制御回路13とヒステリシス防止回路18を1チップでIC化したIC回路であり、図1で示す可変抵抗器13cに相当する可変抵抗器13cを外付けで配設している。導通角制御回路13Aは、上記導通角制御回路13とヒステリシス防止回路18と同様の機能を有し、LEDランプ17に印加される交流電圧を位相制御するための所要の位相角でトライアック12を導通させる導通角を、外付けの可変抵抗器13cの抵抗値の制御により、微分波状の単一パルスPaを生成し、ワンショットパルス発生回路15Aに出力する。
【0029】
ワンショットパルス発生回路15Aは、入力された微分波状の単一パルスPaを、図2で示す単発の方形パルスPtをトライアック2のゲートに与える。この方形パルスPtのオン幅wは、上記第4の抵抗15aに相当する外付けの可変抵抗器15bの抵抗値を制御することにより、雑音防止回路14の共振電流の共振周波数の1周期分、または1周期分以上に設定されている。
【0030】
したがって、この調光装置11Aによっても、上記調光装置11と同様に、光源が軽負荷のLEDランプ17や同,白熱電球であっても、調光装置として使用することができる。特に、LEDランプ17では、チラツキを低減できる。
【0031】
そして、照明装置10,10Aは、上記調光装置11または11Aを住宅の壁に設置されるスイッチボックス等に収容し、この調光装置11または11Aを介して照明装置本体10aの光源に給電することにより構成されてもよい。このために、照明装置としても、軽負荷のLEDランプ17や白熱電球等軽負荷の光源を用いることができる。
【0032】
なお、上記実施形態では自己保持形スイッチング装置としてトライアック12を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばスイッチング素子としてFET(電界効果型トランジスタ)を用い、このFETの導通状態をその導通時の電流により保持するためのラッチ回路を設けることにより、トライアック12と同様の機能を有する回路に構成してもよい。また、逆並列接続された一対のSCR、ダイオードブリッジとSCRとを組み合せたもの等であってもよい。さらに、スイッチング素子としては、トランジスタ、IGBTあるいは他の素子を用いて、上記のように構成してもよい。
【0033】
以上、本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
10,10A…照明装置、10a…照明装置本体、11,11A…調光装置、12…トライアック(自己保持形スイッチング装置)、13,13A…導通角制御回路(導通角制御手段)、13a…ダイアック、13b…第1のコンデンサ、13c…可変抵抗器、13d…第1のコンデンサ、14…雑音防止回路、14a…コンデンサ、14b…インダクタ、15…導通時間制御回路(導通時間制御手段)、15A…ワンショットパルス発生回路(導通時間制御回路)、15a…第4の抵抗、16…交流電源、17…LEDランプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源に印加される交流電圧の位相角を制御するための導通角と導通時間を制御する導通制御信号を生成し出力する導通角制御手段と;
光源に交流電圧が印加される通電路に開閉可能に介装され、前記導通制御信号が入力されたときに、その導通角で前記通電路を導通させて光源に印加される交流電圧の位相角を制御し、この導通状態を所要の保持電流により保持する自己保持形スイッチング装置と;
インダクタとコンデンサを有し前記自己保持形スイッチング装置の駆動時の雑音を低減する雑音防止回路と;
前記導通制御信号の導通時間を、前記雑音防止回路のインダクタとコンデンサの共振周波数の1周期分以上に制御する導通時間制御手段と;
を具備していることを特徴とする調光装置。
【請求項2】
前記導通時間制御手段は、前記導通制御信号の導通時間を10〜100μsecに制御することを特徴とする請求項1記載の調光装置。
【請求項3】
前記請求項1または2記載の調光装置と;
この調光装置により印加電圧が制御される光源と;
この光源を収容する照明装置本体と;
を具備していることを特徴とする照明装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−22840(P2012−22840A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158784(P2010−158784)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】