説明

調光装置および電子内視鏡装置

【課題】絞りを用いた調光装置において、絞り機構に調光速度異常が発生しても適正な調光を維持する。
【解決手段】ランプ27とライトガイド29の光路上に、モータ25で駆動される絞り羽根26を配置する。ドライバ/信号処理部16において撮影画像の輝度レベルから生成される調光信号に基づき、モータドライバ23でモータ25を駆動する。ダミー信号を調光信号として出力し、絞り羽根26の経年劣化による応答遅れを計測する。応答遅れに基づき調光信号の補正ゲインを算出し、補正ゲインで調光信号を補正し、モータドライバ23を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞り羽根を用いた調光装置に関し、特にこのような調光装置を搭載した電子内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電子内視鏡装置では、光源からライトガイドに至る光路上に光の一部を遮光する絞り羽根を配置し、絞り羽根の位置を調整することでライトガイドに入射される光量を調整する調光装置が知られている。光はライトガイドを通して電子内視鏡先端から照射され、その光で照明された画像が電子内視鏡先端の撮像素子において撮影される。調光装置は撮影された画像の輝度信号が適正レベルとなるように絞り羽根の位置を随時で調整する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−286233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような調光装置では、一般に経年変化により絞り羽根の軸受部の摩擦が増大する。そのため経年変化後、当初の出力で絞り羽根を駆動すると応答遅れなど調光速度異常が発生し適正な調光が行えない。
【0005】
本発明は、上述のような問題に鑑みてなされたものであり、絞りを用いた調光装置において、絞り機構に調光速度異常が発生しても適正な調光を維持することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の調光装置は、調光用の絞りと、調光信号に基づき絞りを駆動する絞り駆動手段と、経時的に変化する絞りの応答遅れによる調光の遅れを補償するために調光信号の補正を行う調光補正手段とを備えることを特徴としている。
【0007】
また調光補正手段は、絞りの応答遅れを検出する遅れ検出手段と、応答遅れに基づく調光信号のゲインを算出するゲイン算出手段と、ゲインを記憶するゲイン記憶手段とを備えることが好ましい。遅れ検出手段は、例えば絞りを閉方向または開方向へ駆動させ、そのとき撮影される画像から調光速度を検出し、これを基準となる調光速度と比較することで応答遅れを検出する。
【0008】
調光装置は、閉方向および開方向各々に対するゲインを各々算出し記憶することが好ましい。遅れ検出手段は、調光信号のダミー信号を出力することで絞りを閉方向および開方向へ駆動する。調光速度は、例えば撮像画像の輝度レベルの変化に基づき算出される。
【0009】
本発明の電子内視鏡装置は上記の調光装置を備えたことを特徴としている。
【0010】
また本発明の電子スコープは、上記調光装置を備えた電子内視鏡装置に着脱される電子スコープであって、スコープに遅れ検出手段、ゲイン算出手段、ゲイン記憶手段が設けられたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、絞りを用いた調光装置において、絞り機構に調光速度異常が発生しても適正な調光を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の調光装置を搭載した電子内視鏡装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の絞り羽根の平面図である。
【図3】ドライバ/信号処理部における調光信号の生成に関わる部分の電気的な構成を示すブロック図である。
【図4】画像メモリに保存され、調光レベルの算出に用いられるフィールド画像と、その調光領域を範囲を例示する図である。
【図5】通常の内視鏡観察時(通常動作時)の処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】本実施形態のキャリブレーション処理の流れを示すフローチャートの前半部である。
【図7】本実施形態のキャリブレーション処理の流れを示すフローチャートの後半部である。
【図8】キャリブレーション処理において調光用ダミー信号発生器から出力される調光用ダミー信号のタイムシーケンスである。
【図9】ダミー信号により絞りを開閉駆動するときの輝度レベルの経時変化の一例を示すグラフである。
【図10】補正ゲインα、βの経時的な変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態である調光装置を搭載した電子内視鏡装置の構成を示すブロック図である。
【0014】
電子内視鏡装置10は、周知のように可撓管状の挿入部を備えるスコープ11と、スコープ11が着脱自在に接続されるプロセッサ装置12と、プロセッサ装置12に着脱自在に接続されるモニタ13から主に構成される。
【0015】
スコープ11の挿入部の先端には例えばCCDなどの撮像素子14が設けられ、その駆動は例えばプロセッサ装置12内に設けられたタイミングコントローラ15からのクロック信号に基づき駆動されるスコープ11内のドライバ/信号処理部16からの駆動信号によって制御される。撮像素子14は、撮像レンズ17を通して撮影を行い、撮像素子14から出力される撮像素子出力信号は、ドライバ/信号処理部16へと送られる。
【0016】
ドライバ/信号処理部16では、撮像素子出力信号に対し所定の信号処理を施し、プロセッサ装置12に設けられた前段信号処理部18へ映像信号として送出する。また、ドライバ/信号処理部16は、撮像素子出力信号に基づき、後述する調光信号を生成し、これを映像信号とともに前段信号処理部18へと送出する。
【0017】
前段信号処理部18に送られた映像信号は所定の映像信号処理が施された後、プロセッサ装置12内の画像メモリ19で一時的に保持され所定のタイミングで後段映像信号処理部20へと出力される。後段映像信号処理部20では、入力された映像信号を所定規格の映像信号へと変換し、例えばプロセッサ装置12からモニタ13へと出力する。
【0018】
なお、これら前段信号処理部18、画像メモリ19、後段映像信号処理部20における一連の処理は、タイミングコントローラ15からの信号に基づいて行われ、タイミングコントローラ15は、プロセッサ装置12に設けられたシステムコントローラ21によって制御される。また、プロセッサ装置12にはフロントパネル(Fパネル)22が接続されており、システムコントローラ21は、ユーザによるフロントパネル22の操作に基づきプロセッサ装置12内全体の制御を行う。
【0019】
また、スコープ11内のドライバ/信号処理部16から出力され、前段信号処理部18に入力された調光信号は、プロセッサ装置12のモータドライバ23へ出力される。モータドライバ23では、調光信号(電圧)を基準電圧回路24から出力される基準電圧と比較し、その差に対応した分モータ25を駆動して絞り羽根26を回動する。絞り羽根26は、ランプ27から集光レンズ28を通してライトガイド29へ到る光路を遮るように配置され、モータ25の回転によりその位置が調整される。すなわち、絞り羽根26の回動位置によりライトガイド29に入射される光量が調整される。
【0020】
絞り羽根26を介してライトガイド29に入射した光は、スコープ11内に配設されたライトガイド29内を伝送され、挿入部先端から照明レンズ30を通して照射される。すなわち、絞り羽根26の位置を制御して画像の明るさが一定となるように調光される。なお、ランプ27にはランプ電源31から電力が供給され、ランプ電源31は、システムコントローラ21によって制御される。
【0021】
図2に絞り羽根26と光束の位置関係を示す。図2は、ランプ27、集光レンズ28、ライトガイド29を結ぶ光軸方向に絞り羽根26を見た平面図であり、絞り羽根26の位置における光束の断面が破線Lで示される。
【0022】
絞り羽根26は略扇形状を呈する平板から形成され、モータ25により頂点Aを中心に回動される。扇形の一辺には扇の円弧に沿って湾曲する楔形の切り欠き32が設けられ、切り欠き32は、絞り羽根26の回動により光束Lを横切る位置に配置される。すなわち、光は切り欠き32を通してライトガイド29へと導かれ、切り欠き32と光束Lの位置関係により遮光される光量が制御される。図2では、絞り羽根26の左辺に切り欠き32が設けられ、絞り羽根26が頂点Aを中心に時計回りに回動されるときに絞りが閉じられ光量が低減され、反時計回りに回動されるときに絞りが開かれ光量が増大される。
【0023】
図3は、図1のドライバ/信号処理部16における調光信号の生成に関わる部分の電気的な構成を示すブロック図である。図3、図4を参照して本実施形態の調光信号の補正・キャリブレーション処理について説明する。
【0024】
撮像素子14からの撮像素子出力信号(アナログ画像信号)は、まずA/D変換器33においてデジタル変換され、前段信号処理回路34に入力される。前段信号処理回路34では、図4に示される映像領域A1の略中央を占める調光領域A2内の輝度信号から調光信号が生成され調光信号生成回路35へ出力されるとともに、調光領域A2の画像が順次画像メモリ37へ出力され保持される。また、前段信号処理回路34からは、映像領域A1を取り囲むマスク領域A3を含む映像信号が映像信号処理回路36へ出力される。なお、調光信号には、例えば調光領域A2の平均輝度値など、画像の明るさに応じた信号が用いられる。
【0025】
映像信号処理回路36では、例えば輪郭強調処理、ガンマ補正など必要に応じた画像処理が適宜映像信号に施され、プロセッサ装置12の前段信号処理部18へと出力される。調光信号生成回路35には、前段信号処理回路34から入力される調光信号の他、本調光システムのキャリブレーションに用いられるダミー信号が調光用ダミー信号発生器38から入力可能である。調光信号生成回路35は、システムコントローラ39からの指令に基づき、調光システムのキャリブレーションを行う際、前段信号処理回路34から入力される本来の調光信号に替えて、ダミー信号を調光信号としてプロセッサ装置12の前段信号処理部18へ出力する。
【0026】
また、本実施形態において、調光信号生成回路35は、前段信号処理回路34から入力される調光信号を補正する機能を備え、通常の内視鏡観察時、補正係数出力回路40から入力されるゲイン(後述)に基づいて調光信号に対して補正を行う。調光信号の補正は、例えば絞り羽根26の駆動機構の経時的な劣化(例えば経年劣化による回転摩擦力の増大)に対し行われる。
【0027】
通常の内視鏡観察時(通常動作時)には、補正係数出力回路40は、画像メモリ37に保存された最新のフィールドと過去のフィールドにおける調光領域A2の輝度レベルの変化に基づき、絞りを閉じる方向に回動されるか、開く方向に回動されるかを検出して回動方向に対応する補正ゲイン(αまたはβ)をメモリ41から読み出し、調光信号生成回路35へ出力する。調光信号生成回路35では、前段信号処理回路34から入力される調光信号に、閉方向に制御するときにはゲインαを、開方向に制御するときにはゲインβを掛けて調光信号を補正し、プロセッサ装置12の前段信号処理部18、モータドライバ23へと出力する。
【0028】
ここで補正ゲインα、βは、上述した調光システムのキャリブレーションにおいて算出され、メモリ41に保存されている。すなわちキャリブレーション実行時、輝度レベル算出回路42では、画像メモリ37に保存された複数のフィールドの画像に対して調光領域A2の輝度レベルの時間変化が調光速度として閉方向、開方向の両方で求められ、これらがメモリ44に記憶された基準調光速度Vと比較される。そしてゲイン算出回路45において、閉方向、開方向へ駆動する際の調光信号の補正ゲインα、βが求められメモリ41に保存される。
【0029】
図5は、通常の内視鏡観察時(通常動作時)の処理の流れを示すフローチャートである。図5のフローおよび図1、3を参照して、通常動作時の処理の流れについて説明する。
【0030】
通常の内視鏡観察時(通常動作時)、すなわち、ランプ27からの光を照明とした撮像素子14による撮影が開始され、撮影された内視鏡画像のモニタ13での表示が開始されると、ステップS100において、絞り羽根26が閉方向に駆動されるか、開方向に駆動されるかが補正係数出力回路40で検出され、それに合わせ補正ゲインα、βの一方が調光信号生成回路35へ出力される。絞り羽根26が閉方向に駆動されるときには、ステップS102において、前段信号処理回路34から調光信号生成回路35に入力された調光信号に補正ゲインαが掛けられ、補正された調光信号としてプロセッサ装置12の前段信号処理部18へ出力される。一方、絞り羽根26が開方向に駆動されるときには、ステップS104において、前段信号処理回路34から調光信号生成回路35に入力された調光信号に補正ゲインβが掛けられ、補正された調光信号としてプロセッサ装置12の前段信号処理部18へ出力される。以上の処理は、通常動作が継続される間繰り返され、スコープ11の先端から照射される照明光の明るさが略一定に維持される。
【0031】
次に図6、7のフローチャートおよび図1、3、8を参照して本実施形態の調光システムのキャリブレーション処理の流れについて説明する。なお、図6、7はキャリブレーション処理の流れを示すフローチャートであり、図8はキャリブレーション処理において調光用ダミー信号発生器38から出力される調光用ダミー信号のタイムシーケンスである。
【0032】
本実施形態のキャリブレーションは、例えばユーザがフロントパネル22を操作することでホワイトバランス調整終了後に開始される。キャリブレーション処理では、まず、ステップS200において初期化処理が実行され、絞りを初期位置(例えば全開位置)にまで移動させるためのダミー信号が調光用ダミー信号発生器38において生成され、調光信号生成回路35からは、このダミー信号が調光信号として出力される。すなわち、調光用ダミー信号発生器38において、例えば最も暗い画像に対応する低レベルの調光信号をダミー信号として生成し、例えば調光用絞りの開度が最大となるまで調光信号生成回路35から出力する(図8の区間L1)。
【0033】
調光用絞り(絞り羽根26)が初期位置に配置されると、ステップS202〜S208において、閉方向への絞りの駆動速度を計測するための処理が実行される。まずステップS202において、絞りを閉方向へ駆動するための調光用ダミー信号が調光用ダミー信号発生器38において生成され、調光信号生成回路35から出力される。例えば最も明るい画像に対応する高レベルの調光信号がダミー信号として生成され、調光信号生成回路35から出力される(図8の区間L2)。
【0034】
ステップS204では、輝度レベル算出回路42において画像メモリ37に記憶された画像データに対して調光領域A2の輝度レベルが算出される。そしてステップS206では、調光速度演算回路43において、輝度レベル算出回路42で算出された連続するフィールド(画像)の輝度レベルの時間変化から、絞り羽根26が閉方向に駆動されるときの調光速度Vが算出される。ステップS208では、閉方向のキャリブレーションが終了したか否かが判定され、終了していない場合には、ステップS202以下の処理が繰り返される。なお閉方向のキャリブレーションは、例えば絞りが最も閉じた位置に達するまで行われる。
【0035】
ステップS208において閉方向のキャリブレーションが終了したと判定されると、ステップS210〜ステップS216において開方向へのキャリブレーションが実行される。すなわち、ステップS210において絞りを開方向へ駆動するための調光用ダミー信号が調光用ダミー信号発生器38において生成され、調光信号生成回路35から出力される。例えば最も暗い画像に対応する低レベルの調光信号がダミー信号として生成され、調光信号生成回路35から出力される(図8の区間L3)。
【0036】
次にステップS210では、輝度レベル算出回路42において画像メモリ37に記憶された画像データに対して調光領域A2の輝度レベルが算出され、調光速度演算回路43において算出された連続するフィールド(画像)の輝度レベルの時間変化から、絞り羽根26が開方向に駆動されるときの調光速度Vが算出される。そしてステップS216において、開方向のキャリブレーションが終了したか否かが判定される。開方向のキャリブレーションは、例えば絞りが最も開いた位置に達するまで行われ、それまでの間ステップS210以下の処理が繰り返される。
【0037】
開方向のキャリブレーションが終了するとステップS218において、例えば閉方向調光速度V、開方向調光速度Vの絶対値が、調光速度演算回路43において、メモリ44に保存された基準調光速度Vの絶対値と比較される。基準調光速度Vは、新品の調光システム、すなわち絞り羽根26の回動機構に経年劣化が生じる前の状態においてダミー信号が出力された場合の調光速度に対応する。
【0038】
、V、Vの絶対値の何れかが異なる場合には、ステップS220において、調光速度V、Vに対応する調光信号の補正ゲインα、βが、ゲイン算出回路45において算出される。そして、ステップS222において算出された補正ゲインα、βがメモリ41に保存され、本実施形態のキャリブレーション処理は終了する。なお、ステップS218において、V、V、Vの絶対値が全て同じ場合には、調光信号に補正を加える必要がないのでキャリブレーション処理は直ちに終了し、例えばメモリ41にデフォルトで保存されたα=β=1が使用される。
【0039】
図9は、ダミー信号により絞りを開閉駆動するときの輝度レベルの経時変化の一例を示すグラフである。図9において、実線で示される曲線S0は新品(経年劣化する前)の状態での輝度レベル変化を表し、破線で示される曲線S1は経年劣化後の輝度レベルの時間変化を表す。なお、横軸は時間tであり、縦軸は輝度レベルY、例えば図4の調光領域A2の輝度の平均値である。
【0040】
本実施形態において、調光速度Vは、輝度レベルYの時間変化に対応し、図9においては、曲線S0、S1の傾きに対応する。なお図9には、図4の第1〜第3フィールドの輝度レベルY1、Y2、Y3が例示される。図9に示されるように、経時劣化前の曲線S0では、閉方向、開方向ともに調光速度V、Vは略対称であり、その値は予め基準調光速度Vとして計測されている。
【0041】
図9の場合、調光速度Vは、閉方向、開方向ともに絞りの位置により異なるので、V、V、Vとしては、例えば所定位置における値や各領域での平均値が用いられる。なおその場合、調光速度Vは、輝度レベルY1、Y2、Y3などを用いた差分(後進差分や中心差分など)から算出される。また、曲線S0、S1の近似曲線が予め与えられる場合には、その近似曲線を求めるのに必要な数の輝度レベルが使用される。なお、図9では、開方向への調光速度が遅くなった場合のみが曲線S1で示されるが、通常は閉方向の調光速度も同様に遅くなる。また、調光速度の算出は、必要な数の輝度レベルが算出されてから実際には行われる。
【0042】
経時劣化が進むと、図9の曲線S1に示されるように、同レベルの調光信号をモータドライバ23(図1)に出力したのでは、新品時よりも調光速度Vは遅く、絞り羽根26の移動が間に合わない。したがって、本実施形態では、V、VとVを比較することで、調光速度がVに維持されるような補正ゲインα、βが求められ、調光信号に掛けられる。
【0043】
しかし、調光信号に補正ゲインによりα倍あるいはβ倍すると、モータ25の出力が上がり、調光速度は基準調光速度Vに維持されるが、調光信号が常に本来のα倍あるいはβ倍となるので、本来の絞り位置よりも行き過ぎてしまう。このため、本実施形態では、補正ゲインα、βを図10に示されるように、経時的に1に収束させる。
【0044】
すなわち、調光が開始されたときにはα(>1)またはβ(>1)の値を取る補正係数は、時間の経過とともに漸減し、収束時間Tが経過すると1に収束する。なお収束時間Tは、調光開始から、絞り羽根26(図1)が目標位置に到達し調光終了するまでの時間である。これにより、補正ゲインの利用により、絞り位置が目的位置を通り過ぎることが防止される。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば絞りを用いた調光装置において、絞り機構に調光速度異常が発生しても適正な調光を維持することができる。
【0046】
本実施形態では、本来の調光信号に代えてダミー信号を出力してキャリブレーションを行うため、従来の構成に大きな変更を加えることなくキャリブレーションを行うことができる。
【0047】
なお、本実施形態では調光用絞りとして絞り羽根を用いたが、絞りの形式は本実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態では、スコープ側でダミー信号を生成し、補正ゲインを記憶したが、キャリブレーションに関わるスコープ側のドライバ/信号処理部の構成をプロセッサ装置側に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 電子内視鏡装置
11 スコープ
12 プロセッサ装置
13 モニタ
14 撮像素子
16 ドライバ/信号処理部
18 前段信号処理部
23 モータドライバ
24 基準電圧回路
25 モータ
26 絞り羽根
27 ランプ
29 ライトガイド
32 切り欠き
34 前段信号処理回路
35 調光信号生成回路
37 画像メモリ
38 調光用ダミー信号発生器
39 システムコントローラ
40 補正係数出力回路
41 メモリ
42 輝度レベル算出回路
43 調光速度演算回路
44 メモリ
45 ゲイン算出回路
A 頂点(回転軸)
L 光束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調光用の絞りと、
調光信号に基づき前記絞りを駆動する絞り駆動手段と、
経時的に変化する前記絞りの応答遅れによる前記調光の遅れを補償するために前記調光信号の補正を行う調光補正手段とを備える
ことを特徴とする調光装置。
【請求項2】
前記調光補正手段は、前記絞りの応答遅れを検出する遅れ検出手段と、前記応答遅れに基づく前記調光信号のゲインを算出するゲイン算出手段と、前記ゲインを記憶するゲイン記憶手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の調光装置。
【請求項3】
前記遅れ検出手段が前記絞りを閉方向または開方向へ駆動させ、そのとき撮影される画像から調光速度を検出し、これを基準となる調光速度と比較することで前記応答遅れを検出することを特徴とする請求項2に記載の調光装置。
【請求項4】
前記閉方向および前記開方向各々に対する前記ゲインを各々算出し記憶することを特徴とする請求項3に記載の調光装置。
【請求項5】
前記遅れ検出手段が、前記調光信号のダミー信号を出力することで前記絞りを前記閉方向および前記開方向へ駆動することを特徴とする請求項4に記載の調光装置。
【請求項6】
前記調光速度が撮像画像の輝度レベルの変化に基づき算出されることを特徴とする請求項3に記載の調光装置。
【請求項7】
請求項1に記載の調光装置を備えたことを特徴とする電子内視鏡装置。
【請求項8】
請求項2に記載の調光装置を備えた電子内視鏡装置に着脱される電子スコープであって、前記スコープに前記遅れ検出手段、前記ゲイン算出手段、前記ゲイン記憶手段が設けられたことを特徴とする電子スコープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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