説明

調剤システム

【課題】医薬品運搬用手押車の目視読取可能な表示について薬剤運搬先の表示に加えて他の有用な情報も表示する調剤システムを実現する。
【解決手段】医薬品運搬用手押車20に搬器21を積み込むに際して、処方情報その他の薬剤運搬先の分かる情報に基づき薬剤運搬先の同じ搬器21は薬剤運搬先の異なるものとの混載を避けながら一台で足りれば一台に纏めて積み込み一台で足りなければ複数台に分けて積み込むとともに、積み込み先の医薬品運搬用手押車20に付設されている情報表示器30には運搬先表示31を表示し更に薬剤運搬先の同じ医薬品運搬用手押車20に係る積み込みの順番と後続の有無とを示す手押車情報表示32を表示し、分割積込み時には分割対象の患者と搬器分割状況とを示す分割情報表示34を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、注射薬等の各種薬剤をストックしておいて、処方箋データやそれから派生した調剤指示データにて指示された薬剤を自動で搬器に投入し、更にその搬器を医薬品運搬用手押車に積み込む調剤システムに関し、詳しくは、視認可能な情報表示器を薬品カートに装着しておいて行先案内等に利用する調剤システムに関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤やカプセル剤等の薬剤を対象とした自動調剤機として、PTP包装の薬剤を扱う薬剤払出装置や、ばらの薬剤を扱う薬剤分包機、注射薬を扱う注射アンプル自動供給装置などが実用化されている。さらに、それらの調剤機をトレー(搬器)の搬送機構に臨ませたうえで、トレーを搬送するとともに調剤対象薬剤を調剤機からトレーに投入することで、指示された薬剤をトレーに収集して払い出す調剤システムも、実用化されている(例えば特許文献1参照)。この調剤システムでは、例えばバーコードからなるトレー識別情報を書き込み可能な感熱感光式のラベルがトレーに装着されており、そのラベルに対する視認可能な再書込がレーザ光にて非接触で行えるようになっている。
【0003】
また、アンプルや小ボトル入り薬剤などを対象とする透明薬袋袋詰機も実用化されている(例えば特許文献2参照)。この薬袋袋詰機は、トレー(搬器)に加えて、薬袋とハンガーも取り扱うようになっている。具体的には、上位の処方オーダリングシステム等から処方箋データ(処方情報)が送信されて来ると、それに応じてアンプル等の薬剤が自動調剤装置から払い出されて先ずは収集用トレーに収集され、そのトレーがコンベアで薬袋袋詰機に搬送され、薬袋袋詰機では、薬袋に薬剤情報が印刷されるとともに薬剤が詰め込まれ、それがハンガーにて纏められる。それと並行して輸液ボトル等は薬袋トレーに投入されるが、その薬袋トレーに袋詰め済み薬袋とハンガーが追加投入される。こうして、薬剤がバラバラにならないよう患者単位や病棟単位など適宜な単位で纏められる。
【0004】
さらに、医薬品を収納して手押しで運搬することができるばかりか保冷機能や走行駆動機能まで発揮できる医薬品運搬用手押車(薬品カート)も実用化されている(例えば特許文献3参照)。この医薬品運搬用手押車に装備された薬品情報管理装置は、マイクロプロセッサシステム等からなり、カードリーダやLCDパネルを具備している。そして、ICカード等から処方箋情報や,手術情報,患者情報,セット情報,運搬先情報,運搬経路情報などを読み取って、運搬先を示す病室・手術室等の案内表示,施用対象患者の確認を促すための表示などをLCDパネルに行わせるようになっている。
【0005】
また、自動調剤機と医薬品運搬用手押車との間で搬器を移載する搬器供給装置も実用化されている(例えば特許文献4参照)。この搬器供給装置は、医薬品運搬用手押車から空の搬器を取り出して自動調剤機に供給するとともに、薬剤を収容して自動調剤機から返された搬器を医薬品運搬用手押車に戻すようになっている。また、医薬品運搬用手押車に付されたデータキャリア等の情報担体から搬器配置特定可能情報を読み取り、その情報に基づいて移載機構の搬器取込動作の制御を行うとともに搬器有無の確認処理を行うようにもなっている。さらに、搬器取入口が装置の前面に加えて右側面にも形成されて複数になったものもあり、この場合、通常は前面の搬器取入口を使用し、右側面の搬器取入口は予備的・一時的・バッファ的に用いられる。
【0006】
また、電子データと印刷物との長所を兼ね備えた情報表示手段である電子ペーパーと、その表示に係る駆動制御とデータ記憶とを行う内蔵電子回路と、そのデータや表示情報書換指令等の指令を受け取る無線受信部とを一体化した電子棚札が実用化されている(例えば特許文献5参照)。この電子棚札を多数設置した電子棚札システムでは、サーバ(無線制御ユニット)にLAN接続された固定設置のトランシーバ(無線送信器)を用いて電子棚札にアクセスできる他、可搬性のリモコン(無線操作器)にて電子棚札の表示情報を切り替えることもできるようになっている。
【0007】
そして、そのような電子棚札や電子棚札システムが安価かつ安定に提供されるようになったことから、調剤システムについても、搬器に装着されるラベルに上述した電子ペーパー利用の電子棚札を転用するといったことにより、搬器のラベルを無線受信可能なラベル装置にしてラベル書換の自由度や柔軟性を高めたものが開発されている(例えば特許文献6参照)。この調剤システムでは、電子ペーパーに、処方番号や患者名の他、監査台への運搬先案内や、欠品のリスト、搬器の内部空間の分割案内、監査の未済、病棟への運搬先案内などが、目視読取可能な文字や図で表示されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−153542号公報
【特許文献2】特開2004−148034号公報
【特許文献3】特開2005−040371号公報
【特許文献4】特開2006−239046号公報
【特許文献5】特開2009−026329号公報
【特許文献6】特願2009−238050号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように電子ペーパーを導入することにより、手に持って運んだりコンベアに乗せて搬送したりする搬器については、収容した薬剤の情報や運搬先の情報などを目視読取可能に表示する際、欠品リストなど従来より高度な情報を表示することまで、ラベル書換でかなり容易に行えるようになってきている。
しかしながら、そのような搬器を幾つか積み込んで纏めて運ぶ医薬品運搬用手押車については、データキャリアなど機械読取専用の情報担体は導入されているが、人向けの目視読取可能な情報表示器は、旧態のままであり、手書き札や印刷シールなど表示内容が固定式かそれに近いものが用いられていたので、手押車を柔軟に運用するのが難しかった。
【0010】
とは言え、それに関しては、医薬品運搬用手押車の情報表示器にも電子ペーパーなど表示書換の自由度や柔軟性に優れたものを採用することで、運搬先表示の変更が簡便になるため、医薬品運搬用手押車を各部門間で融通し合うといった柔軟な運用が可能になると期待される。
もっとも、情報表示器の表示書換の自由度や柔軟性を高めたことによる改良が運搬先表示の変更にとどまるのでは、従来より高機能だが費用の嵩む電子ペーパー等を導入した甲斐がない。
そこで、医薬品運搬用手押車の目視読取可能な表示について薬剤運搬先の表示に加えて他の有用な情報も表示する調剤システムを実現することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の調剤システムは(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、収容している薬剤を搬器に投入して送り出す調剤装置と、情報を目視読取可能に表示する情報表示器が目視可能部位に付設されている手押車であって複数の搬器を積み込める複数の医薬品運搬用手押車と、前記調剤装置から搬器を受け取って前記医薬品運搬用手押車に積み込む搬器積込装置とを備えていて、処方情報に基づいて前記調剤装置と前記搬器積込装置とを協動させる調剤システムにおいて、前記情報表示器には表示内容を書き換えられるものが採用されており、前記情報表示器の表示内容を書き換える手段が設けられており、(単体の制御装置での集中制御によって又は協動する複数の制御手段での分散制御によって)前記医薬品運搬用手押車に搬器を積み込むに際して、処方情報その他の薬剤運搬先の分かる情報に基づき薬剤運搬先の同じ搬器は薬剤運搬先の異なるものとの混載を避けながら一台で足りれば一台に纏めて積み込み一台で足りなければ複数台に分けて積み込むとともに、積み込み先の医薬品運搬用手押車に付設されている情報表示器には薬剤運搬先を表示させ更に薬剤運搬先の同じ医薬品運搬用手押車に係る積み込みの順番と後続の有無とを示す手押車情報を表示させるようになっている、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の調剤システムは(解決手段2)、上記解決手段1の調剤システムであって、前記医薬品運搬用手押車に搬器を積み込む際に薬剤運搬先の同じ搬器を複数台に分けて積み込むときには、処方情報その他の施用対象患者の分かる情報に基づいて同一患者に施用される薬剤を収容した複数の搬器が複数の医薬品運搬用手押車に分割積込みされるか否かを判別するとともに、分割積込み時には積み込み先の医薬品運搬用手押車に付設されている情報表示器に分割積込み対象の患者と分割積込み対象の搬器の分割状況とを示す分割情報を表示させるようになっている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このような本発明の調剤システムにあっては(解決手段1)、搬器に収容して払い出された薬剤が病棟単位など運搬先毎に纏めて医薬品運搬用手押車に積み込まれるとともに、医薬品運搬用手押車の情報表示器には運搬先だけでなく手押車情報表示も表示される。しかも、その手押車情報表示には薬剤運搬先の同じ医薬品運搬用手押車に係る積み込みの順番と後続の有無とが示されているので、どの医薬品運搬用手押車の医薬品運搬用手押車を見ても、一緒に移動させると作業能率の良い医薬品運搬用手押車が他にも有るのか否かや、他にもあれば順序はどうするのが良いのか、といったことが直ちに分かる。
したがって、この発明によれば、医薬品運搬用手押車の目視読取可能な表示について薬剤運搬先表示に加えて他の有用な情報も表示する調剤システムを実現することができる。
【0014】
また、本発明の調剤システムにあっては(解決手段2)、同一患者について分割積込みが生じたときには、分割積込み対象の患者と分割積込み対象の搬器の分割状況とが表示されるので、運搬先確認等のために情報表示器を見れば直ちに分割積込みのあったことが分かるとともに、分割積込み対象の搬器を患者単位で纏め直すことも容易かつ的確に行えることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1について、調剤システムの構造等を示し、(a)が調剤システムの各装置の平面配置図、(b)が医薬品運搬用手押車の外観斜視図、(c)〜(e)が情報表示器の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
このような本発明の調剤システムについて、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1により説明する。
図1に示した実施例1は、上述した解決手段1〜2(出願当初の請求項1〜2)を総て具現化したものである。
なお、その図示に際しては、簡明化等のため、ボルト等の締結具や,ヒンジ等の連結具,電動モータ等の駆動源,タイミングベルト等の伝動部材,モータドライバ等の電気回路,コントローラ等の電子回路などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例1】
【0017】
本発明の調剤システムの実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が調剤システム10の各装置11〜14,20の平面配置図、(b)が搬器21を積み込んだ医薬品運搬用手押車20の外観斜視図、(c)が情報表示器30の表示面である。
【0018】
この調剤システム10には(図1(a)参照)、制御装置を装備した操作卓11と、搬器搬送路に沿って上流から下流へ連なるようにして並設された搬器供給装置12と一の又は複数の自動調剤装置13と搬器積込装置14と、手押しで移動させられる幾つかの医薬品運搬用手押車20とが具わっている。搬器搬送路は、各装置12〜14の底部等に組み込まれたり薬剤払出口や搬器送出口に隣接された例えばベルトコンベア等からなる搬器搬送機構によって構成されており、搬器21は、薬剤を収容して搬器搬送機構や人手で運搬できる器であり、典型例としては浅皿状のトレーや角箱状のボックスが挙げられる。
【0019】
搬器供給装置12は、空の搬器21を必要に応じて搬器搬送機構に引き渡すことができれば、搬器21を自ら多数収納しているものでも(例えば特許文献1,6参照)、他から搬器21を移載するものでも良い(例えば特許文献4参照)。
自動調剤装置13は、多数・多量の薬剤を薬品庫部等に収容しており制御指令等に応じて薬剤を搬器21に投入して送り出すものであれば、薬剤をそのまま搬器21に投入するものでも(例えば特許文献1,6参照)、袋詰め等をしてから投入するものでも良い(例えば特許文献2参照)。
【0020】
搬器積込装置14は、自動調剤装置13から送られてきた薬剤収容済みの搬器21を受け取って医薬品運搬用手押車20に積み込むことができるものであれば、医薬品運搬用手押車20を寄せる搬器積込み口が一つだけのものでも(例えば特許文献1の実施例1及び図1参照)、搬器積込み口が複数のものでも良いが(例えば特許文献1の実施例2及び図2参照)、ここでは、搬器積込み口として通常口と優先口との二つが設けられているものを具体例とする。
【0021】
医薬品運搬用手押車20は(図1(b)参照)、薬品カートと呼び慣わされており、複数の搬器21を積み込んで手押しで運搬することができるものであれば、走行駆動機能等が付いていてもいなくても良く(例えば特許文献3参照)、搬器配置特定可能情報等の情報担体が付いていてもいなくても良いが(例えば特許文献4参照)、外側面などの目視可能部位には一個か複数個の情報表示器30が表示面を露出させた状態で付設されている。なお、搬器21を20個ほど積み込んだ医薬品運搬用手押車20を図示したが、以降の説明では、医薬品運搬用手押車20が搬器21を最大で27個まで積み込めるものとして、数値例を述べる。
【0022】
情報表示器30は(図1(b),(c)参照)、電子ペーパーと内蔵電子回路と無線受信部とを一体化してカード状にしたラベル装置が採用されて、情報を文字や図形などで目視読取可能に表示できるうえ、表示内容を容易に書き換えることができ、さらには消費電力の少ないものとなっている(例えば特許文献5,6参照)。情報表示器30は、医薬品運搬用手押車20の表面の見やすいところに張付状態で装着されているが、医薬品運搬用手押車20の使用時に固定されていれば着脱式であっても良い。
【0023】
さらに、図示は割愛したが、情報表示器30に無線でアクセスする無線送信器が、情報表示器30の表示内容を書き換える手段として、設けられている。この無線送信器は、制御装置から指示された書込データや表示切替指令を搬器積込装置14の通常口や優先口の医薬品運搬用手押車20の情報表示器30に送りつけることができるよう、搬器積込装置14やその近くの自動調剤装置13に付設されるか、専用の台や支柱などに取り付けられている。複数の無線送信器を例えば通常口向けと優先口向けとで使い分けるようにしても良く、カート番号等で医薬品運搬用手押車を識別して無線送信器を共用するのも良い。
【0024】
制御装置は、パーソナルコンピュータやマイクロプロセッサシステムなどのプログラマブルな情報処理装置からなり、操作卓11の操作や可能なら外部の処方オーダリングシステムからのダウンロード等にて処方情報を取得するようになっている。
処方情報は、処方箋データそのままのこともあれば、処方箋データから調剤に必要な部分を抽出したり調剤に適するよう加工した調剤指示になっていることもある。処方情報には、薬剤の種類や用量など調剤に必要な情報が含まれている。その他、調剤した薬剤を施用する対象である患者の氏名や性別などといった施用対象患者の分かる情報に加えて、調剤した薬剤を施用する場所となる病棟や手術室などといった薬剤運搬先の分かる情報も、処方情報に含まれていることが多いが、何れか一方または双方が含まれていないこともある。例えば、術式に応じて予め調剤内容の決まっているセット薬品を手術場所や手術対象患者の決定前に予め準備しておくための処方情報の場合、施用対象患者や薬剤運搬先の分かる情報が調剤時には未だ含められていないこともある。
【0025】
制御装置は、取得した処方情報に基づいて搬器供給装置12と自動調剤装置13と搬器積込装置14を協動させるために、それらと適宜な信号ケーブルやLANケーブル等で接続されていて、それらに動作指令を送信したり、それらから装置状態を受信するようになっている。また、制御装置は、搬器積込装置14の通常口と優先口に寄せられている医薬品運搬用手押車20の情報表示器30に対しては、無線送信器を介して無線でアクセスすることで、表示内容を書き換えさせることができる。そして、処方情報を取得する度に、順次、搬器供給装置12には空の搬器21を自動調剤装置13へ供給させ、自動調剤装置13には処方薬剤を搬器21へ投入させるとともに薬剤投入済み搬器21を搬器積込装置14へ引き渡させ、搬器積込装置14には搬器21を通常口か優先口か何れかの医薬品運搬用手押車20へ積み込ませる、といった制御を行うようになっている。
【0026】
さらに、制御装置は、搬器積込装置14に医薬品運搬用手押車20へ搬器21を積み込ませる際に、対応する処方情報から薬剤運搬先が分かるときにはそれを採用し、処方情報では薬剤運搬先が分からないときには動作モードにもよるが操作卓11等から入力を求めて得た薬剤運搬先を採用して、積み込もうとしている搬器21の薬剤運搬先をできるだけ確定してから、通常口の医薬品運搬用手押車20が空であれば、積み込もうとしている搬器21の薬剤運搬先を通常口の医薬品運搬用手押車20の薬剤運搬先に決定するとともにその医薬品運搬用手押車20の情報表示器30の運搬先表示31の欄に表示させ更に搬器21を通常口の医薬品運搬用手押車20に積み込ませるようになっている。
【0027】
これに対し、通常口の医薬品運搬用手押車20が空でなく既に薬剤運搬先が決定済みであれば、積み込もうとしている搬器21の薬剤運搬先と通常口の医薬品運搬用手押車20の薬剤運搬先とを比較照合して、一致したときには搬器21を通常口の医薬品運搬用手押車20に積み込むが、一致しないときや薬剤運搬先を確定できなかったときには搬器21を優先口の医薬品運搬用手押車20に積み込ませるようになっている。また、医薬品運搬用手押車20が搬器21を満載したときには、空の医薬品運搬用手押車20との交換を操作卓11にて作業者に促すとともに、次の搬器21の積み込みは、空の医薬品運搬用手押車20を待って行うようになっている。
【0028】
このような制御により、調剤システム10は、薬剤運搬先の同じ搬器21は、薬剤運搬先の異なるものとの混載を避けながら、医薬品運搬用手押車20が一台で足りれば一台の医薬品運搬用手押車20に纏めて積み込み、医薬品運搬用手押車20が一台で足りなければ複数台の医薬品運搬用手押車20に分けて積み込むものとなっている。また、積み込み先の医薬品運搬用手押車20に付設されている情報表示器30の運搬先表示31の欄には薬剤運搬先を表示させるものとなっている(図1(c)参照)。
【0029】
さらに(図1(c)参照)、制御装置は、情報表示器30の手押車情報表示32の欄には、薬剤運搬先の同じ医薬品運搬用手押車20に係る積み込みの順番と後続の有無とを示す手押車情報を表示させるようになっている。積み込みの順番の表示の典型例は、1から始まる整数であり、後続の有無の表示は、後続有や後続無の文字でも良いが、ここでは、後続の有るときには次の医薬品運搬用手押車20の積み込みの順番を採用し、後続の無いときには現在の医薬品運搬用手押車20の積み込みの順番を採用して、二つの番号の一致不一致で後続の有無を表すようになっている。それに加え、情報表示器30の搬器情報表示33の欄には、医薬品運搬用手押車20に実際に積み込んだ搬器21の個数と、医薬品運搬用手押車20に搬器21を積み込める最大数とを表示させるようにもなっている。
【0030】
また、制御装置は、医薬品運搬用手押車20に搬器21を積み込む際に薬剤運搬先の同じ搬器21を複数台の医薬品運搬用手押車20に分けて積み込むときには、処方情報その他の施用対象患者の分かる情報に基づいて同一患者に施用される薬剤を収容した複数の搬器21が複数の医薬品運搬用手押車20に分割積込みされるか否かを判別するとともに、分割積込み時には、積み込み先の医薬品運搬用手押車20に付設されている情報表示器30の分割情報表示34の欄に、分割情報として、分割積込み対象の患者を特定する例えば患者名と、分割積込み対象の搬器の分割状況を示す例えば片割れ数および総数とを、表示させるようになっている。
【0031】
この実施例1の調剤システム10について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図1(c)は、A病棟への薬剤運搬が一台の医薬品運搬用手押車20で足りるときの表示例、図1(d)は、A病棟への薬剤運搬に複数台の医薬品運搬用手押車20が必要なときの表示例、図1(e)は、一患者分の薬剤を収容した複数の搬器21が複数の医薬品運搬用手押車20に分かれて積み込まれたときの表示例である。
【0032】
調剤システム10のうち操作卓11と搬器供給装置12と自動調剤装置13と搬器積込装置14は、信号ケーブルや搬器搬送機構で連結されて、病院の調剤部門や院内薬局などに固定的に設置されるが、調剤システム10のうち医薬品運搬用手押車20は、薬剤を収容した搬器21を積み込んで運搬するためのものなので、搬器積込装置14の設置された調剤部門等と、薬剤を使用する病棟等とを、手押しでの移動にて行き来する。医薬品運搬用手押車20に付された情報表示器30による運搬先表示31が、搬器21の医薬品運搬用手押車20への積み込み時に書き換えられるので、医薬品運搬用手押車20は、薬剤運搬先が複数ある場合、何れか一カ所に専用されることなく、何処にでも使用される。
【0033】
すなわち、調剤箇所に戻って来た医薬品運搬用手押車20は、何処から戻って来たかにかかわらず、搬器21を総て取り出されてから、搬器積込装置14の通常口か優先口が空いていれば、そこに寄せて置かれる。そして、処方オーダリングシステムから処方情報が次々に送られて来て、さらには操作卓11から入力された処方情報も加わって、調剤システム10の処理すべき処方情報が操作卓11の制御装置に蓄積されるが、一処方分以上蓄積したら、更なる処方情報の有無に拘わらず、処方情報が制御装置によって順次処理され、その制御装置の制御下で、空の搬器21が搬器供給装置12から供給され、その搬器21に自動調剤装置13から処方対象の薬剤が投入され、そうして薬剤を収容した搬器21が搬器積込装置14によって医薬品運搬用手押車20に積み込まれる。
【0034】
制御装置に蓄積保持される処方情報には、薬剤運搬先が確定しているうえスケジュール順に通常処理すれば足りる定常レベルのものが多いが、優先的に割込処理しなければならない緊急レベルのものや、両者の中間の臨時レベルのもの、薬剤運搬先が未定のものもある。それらの処方情報のうち定常レベルのものについては、なるべく薬剤運搬先の同じものが纏めて処理されるようにスケジュールされるが、緊急レベルや臨時レベルの処方情報の処理は定常レベルの処方情報の一連処理の途中に割り込むことがあるので、混載の防止と能率の向上との両立を図るために、定常レベルの処方情報に対応した搬器21の積み込みは通常口の医薬品運搬用手押車20に対して行われ、緊急レベルや臨時レベルさらには薬剤運搬先未定の処方情報の処理に対応した搬器21の積み込みは優先口の医薬品運搬用手押車20に対して行われる。
【0035】
以下、運搬先の確定している定常レベルの処方情報に対応した搬器21を通常口の医薬品運搬用手押車20に積み込むときの情報表示器30の表示内容について詳述する。
薬剤を収容した搬器21を通常口の医薬品運搬用手押車20に積み込むとき、通常口の医薬品運搬用手押車20が空であれば、それへの積み込みがなされるとともに、確定している薬剤運搬先たとえば「A病棟」が通常口の医薬品運搬用手押車20の情報表示器30の運搬先表示31の欄に表示される。これに対し、通常口の医薬品運搬用手押車20が空でない場合、積み込もうとしている搬器21の薬剤運搬先と先に積み込んでいた搬器21の薬剤運搬先とが比較照合され一致していれば通常口の医薬品運搬用手押車20に搬器21が積み込まれるが、一致しなければ、混載防止のため、優先口の医薬品運搬用手押車20に搬器21が積み込まれる。
【0036】
こうして次々に搬器21が通常口の医薬品運搬用手押車20に積み込まれ、薬剤運搬先の同じ搬器21が総て一台の医薬品運搬用手押車20に収まった場合(図1(c)参照)、例えば最大積載数が27個であるところ実際の積載数が10個だったような場合、その医薬品運搬用手押車20の情報表示器30の手押車情報表示32の欄には、積み込みの順番が一番であって後続が無いことを示す例えば「カート 1/1」が表示され、搬器情報表示33の欄には、搬器21の実積載数と最大積載数とを示す例えば「トレー 10/27」が表示され、分割情報表示34の欄は、一患者に係る分割積込みがないので、例えばクリアされてブランク表示になる。
【0037】
また、薬剤運搬先が「A病棟」で同じになっている搬器21の個数が多くて一台の医薬品運搬用手押車20の最大積載数である27個を上回る例えば45個になった場合、一台の医薬品運搬用手押車20には収まり切らず、二台の医薬品運搬用手押車20に分けて積み込まれる。その場合(図1(d)参照)、一台目の医薬品運搬用手押車20には最大積載数の27個の搬器21が積み込まれ、二台目の医薬品運搬用手押車20には残りの18個の搬器21が積み込まれる。そして、一台目の医薬品運搬用手押車20の情報表示器30a(30)については、手押車情報表示32の欄に、積み込みの順番が一番であって後続の二番目が有ることを示す例えば「カート 1/2」が表示され、搬器情報表示33の欄に、搬器21の実積載数と最大積載数とを示す「トレー 27/27」が表示され、分割情報表示34の欄は、一患者に係る分割積込みがなければ、クリアされる。
【0038】
また、二台目の医薬品運搬用手押車20の情報表示器30b(30)については、手押車情報表示32の欄に、積み込みの順番が二番であって後続が無く二番目が最後であることを示す例えば「カート 2/2」が表示され、搬器情報表示33の欄に、搬器21の実積載数と最大積載数とを示す「トレー 18/27」が表示され、分割情報表示34の欄は、一患者に係る分割積込みがなければ、クリアされる。
もっとも、一患者に係る複数の例えば3個の搬器21が、一台目の医薬品運搬用手押車20に例えば1個だけ積み込まれ、残りの2個が二台目の医薬品運搬用手押車20に積み込まれた場合(図1(e)参照)、そのような一患者に係る分割積込みに対応して、情報表示器30aの分割情報表示34の欄には患者名と共に片割れ数と総数の「1/3」が表示され、情報表示器30bの分割情報表示34の欄には患者名と共に片割れ数と総数の「2/3」が表示される。
【0039】
さらに、図示は割愛したが、薬剤運搬先の同じ搬器21の個数がもっと多くて例えば66個の場合、三台の医薬品運搬用手押車20に分けて搬器21が積み込まれ、一台目の医薬品運搬用手押車20の情報表示器30については、手押車情報表示32の欄に「カート 1/2」が表示され、搬器情報表示33の欄に「トレー 27/27」が表示され、二台目の医薬品運搬用手押車20の情報表示器30については、手押車情報表示32の欄に「カート 2/3」が表示され、搬器情報表示33の欄に「トレー 27/27」が表示され、二台目の医薬品運搬用手押車20の情報表示器30については、手押車情報表示32の欄に「カート 3/3」が表示され、搬器情報表示33の欄に「トレー 12/27」が表示される。
【0040】
なお、処方情報が予め蓄積済みであったり、処方情報の蓄積が早々になされたりで、薬剤運搬先の同じ搬器21の総数ひいては薬剤運搬先の同じ医薬品運搬用手押車20の総数例えば「3」が早めに判明したような場合に、一台目の医薬品運搬用手押車20の情報表示器30の手押車情報表示32の欄に「カート 1/3」が表示されるようにしても良い。また、そのような処方情報の蓄積が一台目の医薬品運搬用手押車20への積み込み完了に間に合わなかったときでも、一台目の医薬品運搬用手押車20の情報表示器30が無線送信器でのアクセス範囲に入っていれば或いはアクセス範囲に入れるよう促して入れて貰えれば、手押車情報表示32の欄を「カート 1/2」から「カート 1/3」に書き換えるようにしても良い。
【0041】
こうして、医薬品運搬用手押車20がどの運搬先にも共用されるとともに、医薬品運搬用手押車20を手で押して薬剤運搬先へ移動させる搬送担当者も、薬剤運搬先で薬剤を取り揃える施用担当者も、担当作業を容易かつ的確に行うことができる。すなわち、各担当者は、医薬品運搬用手押車20に付された情報表示器30を目で見て、その表示内容を目視で読み取ることにより、運搬先を容易に把握や確認することでき、同じ所へ移動させるべき医薬品運搬用手押車20が一台だけなのか複数台なのか複数台ならどれとどれなのかといったことも容易に把握することができ、さらに、一人の患者に施用される薬剤が複数の搬器21に収容されていて、それらの搬器21が複数の医薬品運搬用手押車20に分かれて積み込まれた場合でも、分割積込み対象の患者を特定する患者名ばかりか、分割積込み対象の搬器21の分割状況まで、容易に把握することができる。
【0042】
[その他]
なお、上記実施例では、専用の搬器供給装置12が搬器搬送路の最上流に設けられていたが、搬器供給装置12の明示的な設置は必須でなく、搬器供給装置は、搬器積込装置14が兼用しても良く(例えば特許文献4参照)、何れかの自動調剤装置13に組み込んでも良く、幾つかの自動調剤装置13に分散させても良い。
また、上記実施例では、搬器搬送機構が直線状で一方向搬送のみ行うようになっていたが、搬器搬送路は、曲がっていても良く、分岐していても良く、循環搬送や双方向搬送を行うようになっていても良い。
【0043】
さらに、上記実施例では、制御装置が操作卓11に設けられていたが、制御装置の設置場所も任意であり、集中制御と分散制御の採択も任意である。例えば、搬器供給装置12と自動調剤装置13と搬器積込装置14との協動制御を担う制御装置から、情報表示器30に各表示31〜34を表示させるための情報処理機能や制御機能を外して、別の装置に分担させるようにしても良い。また、その場合、操作卓11を省くことも可能である。
また、上記実施例では、情報表示器30へのアクセスに無線方式が採用されていたが、情報表示器30へのアクセス方式は、無線方式に限られる訳でなく、例えば光方式でも良く、接触伝送方式でも良い。
【符号の説明】
【0044】
10…調剤システム、11…操作卓(制御装置)、
12…搬器供給装置、13…自動調剤装置、14…搬器積込装置、
20…医薬品運搬用手押車(薬品カート)、21…搬器(トレー)、
30,30a,30b…情報表示器(電子ペーパー)、
31…運搬先表示、32…手押車情報表示、33…搬器情報表示、34…分割情報表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容している薬剤を搬器に投入して送り出す調剤装置と、情報を目視読取可能に表示する情報表示器が目視可能部位に付設されている手押車であって複数の搬器を積み込める複数の医薬品運搬用手押車と、前記調剤装置から搬器を受け取って前記医薬品運搬用手押車に積み込む搬器積込装置とを備えていて、処方情報に基づいて前記調剤装置と前記搬器積込装置とを協動させる調剤システムにおいて、前記情報表示器には表示内容を書き換えられるものが採用されており、前記情報表示器の表示内容を書き換える手段が設けられており、前記医薬品運搬用手押車に搬器を積み込むに際して、処方情報その他の薬剤運搬先の分かる情報に基づき薬剤運搬先の同じ搬器は薬剤運搬先の異なるものとの混載を避けながら一台で足りれば一台に纏めて積み込み一台で足りなければ複数台に分けて積み込むとともに、積み込み先の医薬品運搬用手押車に付設されている情報表示器には薬剤運搬先を表示させ更に薬剤運搬先の同じ医薬品運搬用手押車に係る積み込みの順番と後続の有無とを示す手押車情報を表示させるようになっている、ことを特徴とする調剤システム。
【請求項2】
前記医薬品運搬用手押車に搬器を積み込む際に薬剤運搬先の同じ搬器を複数台に分けて積み込むときには、処方情報その他の施用対象患者の分かる情報に基づいて同一患者に施用される薬剤を収容した複数の搬器が複数の医薬品運搬用手押車に分割積込みされるか否かを判別するとともに、分割積込み時には積み込み先の医薬品運搬用手押車に付設されている情報表示器に分割積込み対象の患者と分割積込み対象の搬器の分割状況とを示す分割情報を表示させるようになっている、ことを特徴とする請求項1記載の調剤システム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−130361(P2012−130361A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282435(P2010−282435)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000151472)株式会社トーショー (156)
【Fターム(参考)】