説明

調整手段付残留防止装置

【課題】残留防止装置をテールプーリーから吊設することによりバケットと残留防止装置の底板の間のクリアランスを一定に確保できるという利点は保持しつつ、新たな構成を加えることにより、上記クリアランスを適宜可変とし得るようなバケットコンベアの残留防止装置を開発する
【解決手段】残留防止装置に固着され複数のピン孔が縦に配設された調整板と、テールプーリーの回転軸の軸受に固着され、ピン孔を有する移動板を有し、移動板の任意のピン孔と調整板のピン孔を結合用のピンにて結合固定することによりテールプーリーに吊設される調整手段付残留防止装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バケットコンベアの調整手段付残留防止装置に関するものであり、さらに詳しくは、搬送対象物を複数のバケットに収納して上方に連続的に搬送するバケットコンベアの下端に設けられたテールプーリーに吊設された搬送対象物の残留防止装置において、バケットの周回軌跡の最低点と残留防止装置の底板上面との間のクリアランスを変化させることのできるクリアランス調整手段を有していることを特徴とする調整手段付残留防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大豆、とうもろこし、小麦、大麦等の穀類は、食用のみならず家畜の飼料や各種加工食品の原料等としての需要も拡大し、輸入した穀類を収容する穀物用のサイロ施設が広く用いられるに至っている。すなわち、船舶に無包装状態で収納されて輸入される穀類を、粉粒状のままで搬送し、備蓄するシステムが広く用いられている。
【0003】
上記システムにおいては、粉粒状の穀類を水平方向あるいは垂直方向に搬送する必要が生じるが、このうち垂直方向に搬送する装置をバケットコンベア(あるいはバケットエレベータ)と呼称しており、このバケットコンベアは、穀類を、粉粒状のままで搬送し、備蓄するシステムにおいては必ず付属している必要不可欠な装置である。
【0004】
バケットコンベア自体は古くから公知の技術であるので図示しないが、ケーシングの上下に設けられた1対のプーリーにベルト(チェーンの場合もある)が環状に張設されており、このベルトに複数のバケットが固着されていて、上下のプーリーの同一方向の回転運動に伴いベルトが上下方向の運動を行い、それにつれて複数のバケットも上下方向の運動を行う。この際に、上行する複数のバケットにケーシング下部の投入口から搬送対象物(穀類)を投入し、搬送対象物を複数のバケットに収納して上方に搬送する。
【0005】
この際に、投入口から投入された搬送対象物は粉粒状であるため、バケットに入りきらず、下方に逸脱する場合も多く、当然、ケーシングの底部には搬送対象物が蓄積されることとなる。そうなると、ケーシングの底部を一々開いて蓄積された残留搬送対象物を掻き出さねばならず、そのための手間が中々大変なものとなる。従って、下方に逸脱した搬送対象物を受け止め、最下端に位置するバケットによってこれを掬い取って上方に搬送するためにケーシングの底部に設けられるのが残留防止装置である。
【0006】
バケットコンベアにおける残留防止装置には、大別して板状物にてケーシングの底部を遮蔽するタイプと籠状に構成してケーシングの底部に設置するタイプの両方がある。下記特許文献1には板状物にてケーシングの底部を遮蔽するタイプが開示されており、下記特許文献2には籠状に構成してケーシングの底部に設置するタイプが開示されている。
【0007】
特許文献1に開示されている残留防止装置(底部ユニットと呼称)は、ケーシング底部近傍におけるバケットの周回軌跡の下端(最低点)から間隙をおいて下方に離隔して円弧状に湾曲して配置され、ケーシング内において全体が上下動可能であり、全体を上下動させる支持機構(特許文献1の実施例ではターンバックル装置)を備えている。
【0008】
バケットコンベアにおいては、特許文献1の残留防止装置(底部ユニット)のように、通常、残留防止装置全体が上下動可能に構成されているが、その理由は次のようなものである。すなわち、バケットコンベアは前記のように上下1対のプーリーの間にベルト又はチェーンを張設するという構成のため、ベルト又はチェーンを張設して暫くするとバケットと搬送対象物の重量のためベルト又はチェーンが緩んでくる。
【0009】
このような状態になると、ベルト又はチェーンの回転効率が悪化し、各種の動作不良や故障の原因となるので、テールプーリー自体の高さを下げて、再度ベルト又はチェーンの緊張状態を回復する作業が行われる。このため、バケットコンベアにおいては、通常、テールプーリー自体の高さを一定の範囲で上下動できる機構が備えられているが、その1例を特許文献2に見ることができる。すなわち、特許文献2において「調整ネジ機構13」と呼称されている構成がそのような機構の例である。
【0010】
このようにして、ベルト又はチェーンの緊張状態は回復できるものの、この調整作業はバケットの周回軌跡の下端を再び上方に引き上げるものではなく、テールプーリー自体の高さをベルト又はチェーンの緩みに応じて下げるものなので、バケットの周回軌跡の下端は下がったままで安定することとなる。しかも、上記のベルト又はチェーンの再調整作業は、ベルト又はチェーンが緩んでくるとその都度行われるので、結果としてバケットの周回軌跡の下端は愈愈下降してくることとならざるを得ない。
【0011】
残留防止装置の位置が一定のままでこの工程を連続すると、ついに最下端のバケットの端部が残留防止装置の底板上面に接触する状態となるが、この際、バケットはかなりの高速で通過するため、バケットも残留防止装置の底板上面も損傷を蒙るばかりか、接触点で火花を発生し、この火花が粉塵爆発を誘発する可能性もあり(搬送対象物が粉粒体のため)、極めて危険である。従って、バケットの周回軌跡の最下端と残留防止装置の底板の間には、ある程度のクリアランスを確保しておく必要がある。
【0012】
このクリアランスは、バケットの端部と残留防止装置の底板の接触を回避するという観点からは大きければ大きい程良い。しかしながら、残留防止装置に貯留された搬送対象物を掬い取る効率という点からすれば逆で、クリアランスは少なければ少ない程良い。また、搬送対象物の種類を変えたいときには残留防止装置内の搬送対象物を一旦全部空にせねばならないので、その観点からもクリアランスを少なくして残留分を常に最小とするのが理想的である。すなわち、理論的にはクリアランスがゼロで、搬送対象物の残留が無い状態が理想となる。
【0013】
現実には、このクリアランスは、搬送対象物である穀物の種類や、取り扱い者の使い勝手によって一定の範囲の値に定められる。しかしながら、残留防止装置の位置が一定であると、上記のようにベルトやチェーンの緩みによってバケットの周回軌跡の最低点自体が下がってくるので、これに合わせて、テールプーリーの高さを下げるという作業を繰り返すうちに、クリアランスが上記定められた値を越えて小となり、ついにはバケット端部と残留防止装置との接触という事態まで引き起こしかねない。
【0014】
従って、このような危険を防止し、バケットの周回軌跡の最下端(最低点)と残留防止装置の間に一定の範囲のクリアランスを確保するために、残留防止装置全体をケーシング内部にて上下動可能としておく必要が生じる。すなわち、ベルト又はチェーンが緩んだ結果、テールプーリーの位置を下げて再調整を行う場合、その分だけ残留防止装置全体も下方に移動させ、上記一定のクリアランスを確保するという構成が不可欠となってくる。
【0015】
特許文献1にては、この残留防止装置の下方への移動を、先述の支持機構(実施例にてはターンバックル装置)にて行っているが、この方法の場合には、テールプーリーの位置を下げれば、その都度、残留防止装置の下方への移動を行って一定の範囲のクリアランスを確保するという作業が必要となる。しかるに、その都度、複数箇所のターンバックル装置を手動で調整して、残留防止装置(底部ユニット)を降下させるのは中々大変な作業であり、また、熟練も必要である。
【0016】
このように、残留防止装置を独立させて上下動する機構の場合には、調整に煩瑣な手間を要するので、本願発明者は今から10年程以前に、残留防止装置全体をテールプーリーから吊設することにより、テールプーリーと残留防止装置が一体として上下動するという構成を考えて実施した。特許文献2に開示されている「穀類搬送昇降機における残留物排除装置」においても、基本的にこれと同様の考え方が採られている。
【0017】
残留防止装置全体をテールプーリーから吊設する上記のような構成の場合には、テールプーリーを下げれば、その分だけ残留防止装置も下がるので、理論的にはバケットの周回軌跡の最低点と残留防止装置の底板の上面との間のクリアランスは常に一定に確保されるが、実施結果においてもやはりそのとおりとなった。従って、上記構成は現場において絶大な支持を受け、広く普及されるに至った。そして、ここに、この問題(クリアランスの確保)は、最終的な解決をみたかの観があった。
【0018】
しかしながら、上記構成が広く実施されるに及んで、新たな問題が生じてきた。すなわち、大規模な施設になると、バケットコンベアの必要数も増加し、数多くのバケットコンベアがサイロ間を連結するような設計がなされるのが普通である。そして、このような現場において、上記のように残留防止装置をテールプーリーから吊設する構成を採った場合には、それゆえに発生せざるを得ない問題点があることが明らかとなってきた。
【0019】
すなわち、バケットコンベアが多数稼動する現場において、多くのバケットコンベアのベルト又はチェーンを新品と交換した場合には、新品のベルトあるいはチェーンは緩む速度が速いので、常に多数のバケットコンベアの状態を監視し、適切な処置を施さねばならないという問題である。現実には、ベルト又はチェーンが新しいうちは、平均して2週間から1月に1回の調整が必要とされる。
【0020】
バケットコンベアの監視要員を多数配置できれば良いものの、現実には限られた要員で多数のバケットコンベアの監視と対処を行うこととなるので、中には手が回らず、監視の目が届かない内にバケットの周回軌跡の最低点と残留防止装置の底板の間のクリアランスが異常に狭小となり、粉塵爆発の危険さえ伴う状態のバケットコンベアも存在する現場も出てくる。また、監視体制を強化してベルト又はチェーンが新しいバケットコンベアについては2週間から1月に1回の調整を行えたとしても、今度は、その都度当該のバケットコンベアを含むシステム全体の稼動を一時停止せねばならないので、作業効率は著しく悪化してしまう。したがって、この点の根本的な解決が求められる状況となってきたのである。
【0021】
この問題を解決する方法としては、残留防止装置をテールプーリーから吊設するという基本構成は保ちながらも、ベルトあるいはチェーンが新品のうちはバケットの周回軌跡の最低点と残留防止装置の底板の間のクリアランスを広めに設定し、ベルトあるいはチェーンがある程度の経時変化で緩みが落ち着いてきた段階でクリアランスをより狭めていくという形で、クリアランスの設定を変化させることのできる構成を付加していくことが、どうしても必要となってくる。
【0022】
また、このような構成を採ることにより、それに伴う効果として、通常一般のクリアランスより広いクリアランス、あるいは狭いクリアランスにてバケットコンベアを使用したいという現場の要請(穀類の種類等各種要因によりこのような要請もある)にも簡単に答えていくことができるものである。
【特許文献1】特開2003‐95415号公報
【特許文献2】特開2001‐233430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
叙上より、本発明は、搬送対象物を複数のバケットに収納して上方に連続的に搬送するバケットコンベアの下端に設けられたテールプーリーに吊設された搬送対象物の残留防止装置において、以下の課題を解決せんとしてなされたものである。
【0024】
すなわち、残留防止装置をテールプーリーから吊設するという構成によってバケットの周回軌跡の最低点と残留防止装置の底板の間のクリアランスを一定に確保できるという利点は保持しつつ、これに新たな構成を加えることにより、上記クリアランスの設定を変更できる、すなわち上記クリアランスを可変とし得るようなバケットコンベアの残留防止装置を開発することを本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、下記の解決手段を提供するものである。
<解決手段1>
搬送対象物を複数のバケットに収納して上方に連続的に搬送するバケットコンベアの下端に設けられたテールプーリーに吊設された搬送対象物の残留防止装置において、バケットの周回軌跡の最低点と残留防止装置の底板上面との間のクリアランスを変化させることのできるクリアランスの調整手段を有していることを特徴とする調整手段付残留防止装置。
<解決手段2>
クリアランスの調整手段が、残留防止装置の2本の長辺の夫々の上端中間部に1基ずつ設けられており、該2基のクリアランスの調整手段の夫々が、残留防止装置に固着され複数のピン孔が縦に配設された調整板と、テールプーリーの回転軸の軸受に固着され、少なくとも1個のピン孔を有する移動板とから構成され、2基のクリアランスの調整手段の夫々において移動板のピン孔と調整板のピン孔を結合用のピンにて結合固定することにより残留防止装置全体がテールプーリーに吊設される構成であることを特徴とする解決手段1に記載の調整手段付残留防止装置。
<解決手段3>
結合用のピンの頭部が板状のピン板に固着され、結合用のピンが少なくとも1個のピン孔を有する留板のピン孔を挿通して移動板のピン孔と調整板のピン孔に挿通されており、ピン板と留板が螺着されることによって結合用のピンが安定的に移動板と調整板を結合固定する構成であることを特徴とする解決手段2に記載の調整手段付残留防止装置。
<解決手段4>
調整板のピン孔が、水平に2個穿設されたものを1対として、該1対のピン孔が縦に複数対配設され、調整板の中央部分上部にはテールプーリーの回転軸と干渉しないように凹部が設けられており、また移動板のピン孔も調整板のピン孔に対応するように水平に2個穿設されており、さらに留板のピン孔も調整板のピン孔に対応するように水平に2個穿設されており、ピン板に固着された2本の結合用のピンが留板のピン孔を夫々挿通して移動板のピン孔と調整板のピン孔に夫々挿通されていることを特徴とする解決手段3に記載の調整手段付残留防止装置。
【発明の効果】
【0026】
本発明の解決手段1の発明によれば、搬送対象物を複数のバケットに収納して上方に連続的に搬送するバケットコンベアの下端に設けられたテールプーリーに吊設された搬送対象物の残留防止装置において、バケットの周回軌跡の最低点と残留防止装置の底板上面との間のクリアランスを変化させることのできるクリアランスの調整手段を有していることを特徴とする調整手段付残留防止装置であるので、バケットコンベアのベルト又はチェーンが新しく、緩む速度が速い状態においては上記クリアランスを広めに設定することにより、バケットの周回軌跡の最低点と残留防止装置の底板上面とのクリアランスが異常に狭小となるのを防止し、バケットや残留防止装置自体の損傷を防止するとともにバケットコンベア全体の動作不良の発生を軽減し、さらには粉塵爆発の危険を減少させることができる。また、ベルト又はチェーンが新しいバケットコンベアにおいても頻繁に張り具合の調整を行わなくても良いので、バケットコンベアを含むシステム全体を常に円滑に稼動させることができ、作業効率を上昇させることができる。さらには、ベルト又はチェーンの緩む速度が鈍化して落ち着いてきたら上記クリアランスを基準値に設定することにより、搬送対象物の残留防止効率を高いものとすることができる。
【0027】
また同じく本発明の解決手段1の発明によれば、バケットの周回軌跡の最低点と残留防止装置の底板上面との間のクリアランスを基準値より広くも狭くも設定可能であるので、穀類の種類や使用者の使用勝手に応じて様々なクリアランスの設定が可能となり、使用者個々の好みに応じたクリアランスによってバケットコンベアを運転することが可能となる。
【0028】
本発明の解決手段2の発明によれば、クリアランスの調整手段が、残留防止装置の2本の長辺の夫々の上端中間部に1基ずつ設けられており、該2基のクリアランスの調整手段の夫々が、残留防止装置に固着され複数のピン孔が縦に配設された調整板と、テールプーリーの回転軸の軸受に固着され、少なくとも1個のピン孔を有する移動板とから構成され、2基のクリアランスの調整手段の夫々において移動板のピン孔と調整板のピン孔を結合用のピンにて結合固定することにより残留防止装置全体がテールプーリーに吊設される構成であることを特徴とする解決手段1に記載の調整手段付残留防止装置であるので、残留防止装置は常に水平状態を保持したままでテールプーリーに吊設されることとなり、動作は極めて安定している。また、結合用のピンの作用により残留防止装置がテールプーリーの回転軸と確実に同期して上下動させられることとなり、この面でも安定性に優れている。さらに、クリアランスの調整においても、結合用のピンを調整板の異なるピン孔に嵌めかえるだけで行えるので、極めて簡単である。そして、一旦ピンが嵌入されると確実に固定される。
【0029】
本発明の解決手段3の発明によれば、結合用のピンの頭部が板状のピン板に固着され、結合用のピンが少なくとも1個のピン孔を有する留板のピン孔を挿通して移動板のピン孔と調整板のピン孔に挿通されており、ピン板と留板が螺着されることによって結合用のピンが安定的に移動板と調整板を結合固定する構成であることを特徴とする解決手段2に記載の調整手段付残留防止装置であるので、移動板と調整板の結合固定状態がより安定的なものとなる。また、クリアランスの設定の変更の必要が生じ、結合用のピンを移動板のピン孔と調整板のピン孔から脱抜したい場合には、ピン板と留板の螺着状態を解除すれば良いだけなので、極めて簡単である。
【0030】
本発明の解決手段3の発明によれば、調整板のピン孔が、水平に2個穿設されたものを1対として、該1対のピン孔が縦に複数対配設され、調整板の中央部分上部にはテールプーリーの回転軸と干渉しないように凹部が設けられており、また移動板のピン孔も調整板のピン孔に対応するように水平に2個穿設されており、さらに留板のピン孔も調整板のピン孔に対応するように水平に2個穿設されており、ピン板に固着された2本の結合用のピンが留板のピン孔を夫々挿通して移動板のピン孔と調整板のピン孔に夫々挿通されていることを特徴とする解決手段3に記載の調整手段付残留防止装置であるので、残留防止装置全体が合計4本のピンにて吊設されていることになり、吊設状態がより安定的である。また、1本のピンに掛かる荷重を少なくすることができるので、夫々のピンの構成を徒に頑強なものとする必要がない。したがって、夫々のピンの嵌入あるいは脱嵌の場合にも過大な力を必要としない。さらに、調整板の中央部分上部に設けられた凹部の作用によって、調整板がテールプーリーの回転軸と干渉するといった不具合の発生を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明を実施するための最良の形態を、以下に図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例1の調整手段付残留防止装置は、解決手段1あるいは解決手段2あるいは解決手段3あるいは解決手段4に記載の発明の1実施例である。
【実施例1】
【0032】
<実施例1の構成>
実施例1の調整手段付調整手段付残留防止装置1を備えたバケットコンベアBCの下端部分の右側面図を図2に示す。また、図1は実施例1の調整手段付調整手段付残留防止装置1を備えたバケットコンベアBCの長手方向の縦断面図、図9は短手方向の縦断面斜視図で、夫々バケットコンベアBCの下端部分の内部の様相を示している。図1、図2において、CSはバケットコンベアBCのケーシングであり、ケーシングCSの背面には搬送対象物(図示せず)を投入する投入口ENが設けられている。なお、WはケーシングCSの正面側に設けられた監視窓である。
【0033】
ケーシングCS内部にはテールプーリーTPが設けられており、テールプーリーTPにはベルトBTが張設されていて、ベルトBTには複数のバケットBA、BA、…が固着されている。テールプーリーTPは矢印の方向Xに回転しており、OBはベルトBTに固着された任意のバケットBAのベルトBTの下端部における最外側の周回軌跡を表現している。
【0034】
テールプーリーTPの回転軸SFは直接ケーシングCSに枢着されておらず、左側面側では長方形状の移動板51に(図1、図9参照)、右側面側では長方形状の移動板52(図2、図9参照)に、夫々軸受BRを介して枢着されている。なお、回転軸SFには図示しないベルトを介して図示しないモーターより駆動力が伝達されている。
【0035】
移動板51(図1、図9参照)はケーシングCSの左側面を掩蔽しており、長尺のボルトb1から成る調節機構53とガイドレールGR、GRによって上下方向に摺動自在に構成されている。すなわち、調節機構53のボルトb1が移動板51の凸部51bとガイドレールGR、GRの上端部に渡設された固定板ASUの双方を連結しており、ボルトb1の調節によって凸部51bと固定板ASUの距離を変化させることにより、移動板51全体を上下方向に摺動させるものである。なお、ASLはガイドレールGR、GRの下端部に渡設された固定板である。
【0036】
移動板52(図2、図9参照)はケーシングCSの右側面を掩蔽しており、長尺のボルトb2から成る調節機構54とガイドレールGR、GRによって上下方向に摺動自在に構成されている。すなわち、調節機構54のボルトb2が移動板52の凸部52bとガイドレールGR、GRの上端部に渡設された固定板ASUの双方を連結しており、ボルトb2の調節によって凸部52bと固定板ASUの距離を変化させることにより、移動板52全体を上下方向に摺動させるものである。なお、ASLはガイドレールGR、GRの下端部に渡設された固定板である。
【0037】
テールプーリーTPの回転軸SFは前記のように移動板51、52に枢着されているので、移動板51、52を同期させて上下動させることにより、テールプーリーTPは回転軸SFの水平状態を保持したままでケーシングCS内部を上下動させることができる。すなわち、テールプーリーTPの位置決めは、移動板51、52を同期させて上下動させることにより行われる(公知技術)。
【0038】
なお、ケーシングCSの左側面の移動板51が掩蔽している部分には、移動板51の幅よりやや狭い幅の長円孔HLが穿設されており、またケーシングCSの右側面の移動板52が掩蔽している部分にも、移動板52の幅よりやや狭い幅の長円孔HRが穿設されているので、テールプーリーTPの回転軸SFはケーシングCSと干渉することなくその上下動を行うことができるものである。
【0039】
次に、テールプーリーTPの下方に設置される調整手段付残留防止装置1の構成を詳細に説明する。図3は調整手段付残留防止装置1の平面図であり、図4は調整手段付残留防止装置1の右側面図、図5は調整手段付残留防止装置1の底面図、図6は調整手段付残留防止装置1の正面図である。また、図7は調整手段付残留防止装置1の上方右前方から見た外観斜視図、図8は調整手段付残留防止装置1の下方右後方から見た外観斜視図である。
【0040】
調整手段付残留防止装置1は、籠状の本体2と、本体2の正面側に主としてL字鋼を用いて架構された前部架構3が一体に固着されて構成されており、本体2も前部架構3も金属製である(但し、本体2の上部を囲繞する弾性体層27を除く)
【0041】
籠状の本体2は、正面側の傾斜前板21a、前板21b、左側面側の左側板22、背面側の傾斜後板24a、後板24b、右側面側の右側板23の全てが一体に固着されて形成され、底部をなす底板25のみは前後方向に摺動自在に構成されている。なお、固着方法は溶接であるが、螺着その他の方法を用いることも可能である。
【0042】
籠状の本体2の正面側は上部が前方に向かって傾斜した長方形状の傾斜前板21aの上端部外側に長方形状の前板21bが垂直に固着されて形成されており、傾斜前板21aの正面下部の左右両端には支持板21c、21dが溶接により固着されている。支持板21c、21dは、傾斜前板21aと左側板22、右側板23を安定的かつ強固に固着するための構成である。なお、支持板21c、21dの前部は前方に延伸されて前部架構3の構成の一部となっている。
【0043】
傾斜前板21aの中間部よりやや下方よりの部分には水平方向に長い長方形状の長孔21eが穿設されていて、長孔21eには7基のエアノズルAN、AN、…が水平方向に配設固着されている。7基のエアノズルAN、AN、…は本体2内部に残留する搬送対象物(図示せず)を攪拌してバケットBA内に収納されやすくするための機構(公知技術)で、7基のエアノズルAN、AN、…は長孔21eに隙間無く配設固着されるので、長孔21eは7基のエアノズルAN、AN、…により完全に掩蔽された状態である。すなわち、長孔21eから搬送対象物(図示せず)が逸脱することができないように構成されている。
【0044】
本体2の左側面側は、左側板22により完全に遮蔽されているが、左側板22は上部中央部にて外側に膨出されて平面視が長方形状の膨出部22aを形成している。これは、図3、図5に見るように、ケーシングCSの左側面側の形状に合わせたものである。したがって、左側面側の形状がフラットなケーシングに用いる場合には、左側板も完全にフラットな形状となる。
【0045】
左側板22の膨出部22aの上辺22bの中央には調整板41が固着されている。固着方法は溶接であるが、螺着その他の方法を用いることも可能である。また、調整板41には移動板51、留板61、ピン板71が固着されているが、その詳細については後述する。
【0046】
本体2の背面側は上部が後方に向かって傾斜した長方形状の傾斜後板24aの上端部外側に長方形状の後板24bが垂直に固着されて形成されており、傾斜後板24aの背面下部の左右両端には支持板24c、24dが溶接により固着されている。支持板24c、24dは、傾斜後板24aと左側板22、右側板23を安定的かつ強固に固着するための構成である。
【0047】
本体2の右側面側は、右側板23により完全に遮蔽されているが、右側板23は上部中央部にて外側に膨出されて平面視が長方形状の膨出部23aを形成している。これは、左側面側同様、図3、図5に見るように、ケーシングCSの右側面側の形状に合わせたものである。したがって、右側面側の形状がフラットなケーシングに用いる場合には、右側板も完全にフラットな形状となる。
【0048】
右側板23の膨出部23aの上辺23bの中央には調整板42が固着されている。固着方法は溶接であるが、螺着その他の方法を用いることも可能である。また、調整板42には移動板52、留板62、ピン板72が固着されているが、その詳細については後述する。
【0049】
また、左側板22の前方下部は下方に延伸されて支持板22cとなり、右側板23の前方下部は下方に延伸されて支持板23cとなっている(図7、図8参照)。支持板21cと支持板23cには梁3bが渡設固着されて、前部架構3の一部をなしている。
【0050】
上記の前板21b、左側板22の上部、膨出部22aの大部分、後板24b、右側板23の上部、膨出部23aの大部分の外側面にはウレタン樹脂からなる弾性体層27が接着されている。すなわち、調整手段付残留防止装置1の本体2の上部は弾性体層27に囲繞されている。弾性体層27は、本体2を構成する各部、即ち傾斜前板21a、前板21b、左側板22、右側板23、傾斜後板24a、後板24bと同程度あるいはそれ以上の厚さを有している。
【0051】
弾性体層27は図3、図5、図6、そして図9にも見るように、調整手段付残留防止装置1の本体2上部とケーシングCSの内側面の間を完全に充填している。すなわち、弾性体層27は、搬送対象物(図示せず)が調整手段付残留防止装置1とケーシングCSの内側面の間に生じる間隙から下方に逸脱するのを防止するための構成である。なお、図3〜図6及び図9においては弾性体層27を実線で示しているが、図7、図8においては調整手段付残留防止装置1の本体2の形状をわかりやすく示すために、弾性体層27を仮想線(2点鎖線)にて表示している。
【0052】
本体2の底部は底板25により遮蔽されているが、底板25は前述のように前後方向に摺動自在に構成されている。すなわち、左側板22の下端部にガイドレール25aが、右側板23の下端部にガイドレール25bが、そして傾斜後板24aの下端部にガイドレール25cが夫々固着されていて、底板25はガイドレール25a、25bにガイドされて前後方向に摺動自在に構成されている。なお、ガイドレール25cは、底板25が本体2の底部を完全に遮蔽しているときに底板25の後端部分を収納する役割を果たすものである。また、ガイドレール25a、25bは前方に延伸されて、前部架構3の一部を構成している。
【0053】
底板25は前部架構3に固着されたシリンダCLのロッドRDにより開閉される。ロッドRDは連結具25dを介して底板25の後端部に固着されており、ロッドRDの伸縮により底板25が前後に摺動し、本体2の底部を開閉するものである。底板25は、常時は最後端に位置(図3〜図9に示す位置)させられるが、調整手段付残留防止装置1の内部に滞留する搬送対象物(図示せず)の残滓を排出する際にのみ前方に摺動させて調整手段付残留防止装置1の底部を開放状態とするものである。なお、シリンダCLは前部架構3の下部中央に位置する基台3aに固着されており、基台3aは、図5、図8に見るように梁3bに固着されている。
【0054】
基台3aの前方の梁3c(図7参照)の上面には架台3d、3d(図4、図6参照)が溶接により固着されていて、架台3d、3dには7基のエアノズルAN、AN、…に圧縮空気を分配するヘッダHAが固着されている(公知技術)。また、TB、TBは圧縮空気を送るチューブである。なお、エアノズルAN、AN、…、ヘッダHA、チューブTB、TBは、前述のように調整手段付残留防止装置1の内部に圧搾空気を送り込んで調整手段付残留防止装置1の内部に滞留する搬送対象物(図示せず)を攪拌し、バケットBAに収納されやすくするための構成(公知技術)である。
【0055】
次に、調整板41、42の構成について詳細に説明する。調整板41は図13aに見るように、略正方形の板状で中央上部に下部が側面視で円弧状となった凹部41dが穿設された本体41aの左側面の上部前方に長方形の板状の凸部41bが、左側面の上部後方に長方形の板状の凸部41cが、夫々一体として固着されている。
【0056】
凸部41bが固着された部分には、本体41aと凸部41bの双方を貫通する状態で下方から順にピン孔411、ピン孔413、ピン孔415が夫々穿設されている。また、凸部41cが固着された部分には、本体41aと凸部41cの双方を貫通する状態で下方から順にピン孔412、ピン孔414、ピン孔416が夫々穿設されている。ピン孔411とピン孔413の間の距離、ピン孔412とピン孔414の間の距離、ピン孔413とピン孔415の間の距離、ピン孔414とピン孔416の間の距離は全て等しくdaである。
【0057】
ピン孔411とピン孔412は水平方向に配設され、ピン孔413とピン孔414は水平方向に配設され、ピン孔415とピン孔416は水平方向に配設されている。また、ピン孔411、ピン孔413、ピン孔415は垂直方向に配設され、ピン孔412、ピン孔414、ピン孔416は垂直方向に配設されている。さらに、ピン孔411とピン孔412の距離、ピン孔413とピン孔414の距離、ピン孔415とピン孔416の距離は全て等しくd1であるが、距離d1は後述のピン板71に固着されたピン71a、ピン71bの距離d7(図15a参照)と同一に構成されている。
【0058】
調整板42は調整板41と左右対称の構成を有する。すなわち、調整板42は図13bに見るように、略正方形の板状で中央上部に下部が側面視で円弧状となった凹部42dが穿設された本体42aの右側面の上部前方に長方形の板状の凸部42bが、右側面の上部後方に長方形の板状の凸部42cが、夫々一体として固着されている。
【0059】
凸部42bが固着された部分には、本体42aと凸部42bの双方を貫通する状態で下方から順にピン孔421、ピン孔423、ピン孔425が夫々穿設されている。また、凸部42cが固着された部分には、本体42aと凸部42cの双方を貫通する状態で下方から順にピン孔422、ピン孔424、ピン孔426が夫々穿設されている。ピン孔421とピン孔423の間の距離、ピン孔422とピン孔424の間の距離、ピン孔423とピン孔425の間の距離、ピン孔424とピン孔426の間の距離は全て等しくdbである。なお、距離dbは調整板41における距離daと等しく構成されている。
【0060】
ピン孔421とピン孔422は水平方向に配設され、ピン孔423とピン孔424は水平方向に配設され、ピン孔425とピン孔426は水平方向に配設されている。また、ピン孔421、ピン孔423、ピン孔425は垂直方向に配設され、ピン孔422、ピン孔424、ピン孔426は垂直方向に配設されている。また、ピン孔421とピン孔422の距離、ピン孔423とピン孔424の距離、ピン孔425とピン孔426の距離は全て等しくd2であるが、距離d2は後述のピン板71に固着されたピン72a、ピン72bの距離d8(図15b参照)と同一に構成されている。
【0061】
調整板41は、凸部41bの下面と凸部41cの下面が本体2の膨出部22a(図7参照)の上辺22bに溶接により固着され、本体41aの左側面下部が本体2の膨出部22a(図7参照)の内側面に溶接により固着されている。また、調整板42は、凸部42bの下面と凸部42cの下面が本体2の膨出部23a(図7参照)の上辺23bに溶接により固着され、本体42aの右側面下部が本体2の膨出部23a(図7参照)の内側面に溶接により固着されている。従って、調整板41、42は調整手段付残留防止装置1の本体2と一体となっており、この点から、調整手段付残留防止装置という呼称が生じるものである。
【0062】
次に、移動板51、52の構成について詳細に説明する。移動板51の本体51aは、図14aに見るように、縦長の長方形の板状で、上部左側面に長方形の板状の凸部51bが本体51aと一体に突設固着されている。そして、凸部51bの中央部には調節機構53のボルトb1が挿通されている。調節機構53については記述であるので、この項での説明は省略する。
【0063】
また、移動板51の略中央部には軸孔51cが穿設されているが、この軸孔51cはテールプーリーの回転軸SFの左端部分を挿通するための構成である。また、軸孔51cのやや下方には、水平方向に並んでピン孔51d、51eが穿設されているが、ピン孔51dは後述のピン板71のピン71a(図15a参照)を挿通するための構成であり、ピン孔51eは後述のピン板71のピン71b(図15a参照)を挿通するための構成である。したがって、ピン孔51dと51eの距離d3はピン71aとピン71bの距離d7に等しく構成されている。
【0064】
移動板52は移動板51と左右対称の構成を有する。すなわち、移動板52の本体52aは、図14bに見るように、縦長の長方形の板状で、上部右側面に長方形の板状の凸部52bが本体52aと一体に突設固着されている。そして、凸部52bの中央部には調節機構54のボルトb2が挿通されている。調節機構54については記述であるので、この項での説明は省略する。
【0065】
また、移動板52の略中央部には軸孔52cが穿設されているが、この軸孔52cはテールプーリーの回転軸SFの右端部分を挿通するための構成である。また、軸孔52cのやや下方には、水平方向に並んでピン孔52d、52eが穿設されているが、ピン孔52dは後述のピン板72のピン72a(図15b参照)を挿通するための構成であり、ピン孔52eは後述のピン板72のピン72b(図15b参照)を挿通するための構成である。したがって、ピン孔52dと52eの距離d4はピン72aとピン72bの距離d8に等しく構成されている。
【0066】
次に、留板61、62の構成について詳細に説明する。留板61は、図15aに見るように、横長の長方形の板状で、右側面の4辺にテーパ加工が施されている。また、前部にはピン孔61aが、後部にはピン孔61bが、水平方向に並んで穿設されているが、ピン孔61aは後述のピン板71のピン71a(図15a参照)を挿通するための構成であり、ピン孔61bは後述のピン板71のピン71b(図15a参照)を挿通するための構成である。したがって、ピン孔61aとピン孔61bの距離d5はピン71aとピン71bの距離d7に等しく構成されている。
【0067】
また、ピン孔61aとピン孔61bの中間、即ち留板61の中央にはネジ溝を有するネジ孔61cが穿設されている。ネジ孔61cは後述のボルトb3(図15a参照)を螺入するための構成である。
【0068】
留板62は留板61と左右対称の構成を有する。すなわち、留板62は、図15bに見るように、横長の長方形の板状で、左側面の4辺にテーパ加工が施されている。また、前部にはピン孔62aが、後部にはピン孔62bが、水平方向に並んで穿設されているが、ピン孔62aは後述のピン板72のピン72a(図15b参照)を挿通するための構成であり、ピン孔62bは後述のピン板72のピン72b(図15b参照)を挿通するための構成である。したがって、ピン孔62aとピン孔62bの距離d6はピン72aとピン72bの距離d8に等しく構成されている。
【0069】
また、ピン孔62aとピン孔62bの中間、即ち留板62の中央にはネジ溝を有するネジ孔62cが穿設されている。ネジ孔62cは後述のボルトb4(図15b参照)を螺入するための構成である。
【0070】
次に、ピン板71、72の構成について詳細に説明する。ピン板71は、図15aに見るように、横長の長方形の板状で、前部には右端部がやや縮径する円柱状のピン71aが溶接により右方に突設固着され、後部には右端部がやや縮径する円柱状のピン71bが同じく溶接により右方に突設固着されており、ピン71a、71bは水平方向に並んで突設されおり、その距離d7は先述のように調整板41における距離d1(図13a)、移動板51における距離d3(図14a)、留板61における距離d5(図15a)に等しい。なお、ピン71a、71bは共にピン板71の左側面にも僅かに突設されている。
【0071】
また、ピン板71のピン71aとピン71bの中間部分にはネジ溝を有するネジ孔71c、71d、71eが水平方向に並んで穿設されている。ネジ孔71cはピン板71の中央に位置し、後述のボルトb3(図15a参照)を螺入するための構成であり、したがって留板61のネジ孔61cと同寸である。ネジ孔71d、71eはネジ孔71cの前後に等間隔で穿設されているが、ネジ孔71d、71eの役割については作用の項にて詳述する。
【0072】
ピン板72はピン板71と左右対称の構成を有する。すなわち、ピン板72は、図15bに見るように、横長の長方形の板状で、前部には左端部がやや縮径する円柱状のピン72aが溶接により左方に突設固着され、後部には左端部がやや縮径する円柱状のピン72bが同じく溶接により左方に突設固着されており、ピン72a、72bは水平方向に並んで突設されおり、その距離d8は先述のように調整板42における距離d2(図13b)、移動板52における距離d4(図14b)、留板62における距離d6(図15b)に等しい。なお、ピン72a、72bは共にピン板72の右側面にも僅かに突設されている。
【0073】
また、ピン板72のピン72aとピン72bの中間部分にはネジ溝を有するネジ孔72c、72d、72eが水平方向に並んで穿設されている。ネジ孔72cはピン板72の中央に位置し、後述のボルトb4(図15b参照)を螺入するための構成であり、したがって留板62のネジ孔62cと同寸である。ネジ孔72d、72eはネジ孔72cの前後に等間隔で穿設されているが、ネジ孔72d、72eの役割については作用の項にて詳述する。
【0074】
以上にて調整手段付残留防止装置1の各部の構成の説明が終えられたので、次に、調整手段付残留防止装置1の要部の組付構成、すなわち、調整板41、移動板51、留板61、ピン板71の組付構成、及び調整板42、移動板52、留板62、ピン板72の組付構成に関して詳細に説明する。関連する主な図面は、図7〜図12である。
【0075】
図7は前述のように調整手段付残留防止装置1の上方右前方から見た外観斜視図、図8は調整手段付残留防止装置1の下方右後方から見た外観斜視図である。また、図9はバケットコンベアBCの下端部分の短手方向の縦断面斜視図であり、図10はバケットコンベアBCの下端部分の左側面の要部拡大図、図11は図10のA−A線断面図であり、図12は図10のB−B線断面図である。
【0076】
まず、調整手段付残留防止装置1の左側面の要部の組付構成を説明する。調整手段付残留防止装置1の本体2の膨出部22aの上辺22bに固着された調整板41には前述のように、ピン孔411〜416の6個のピン孔が設けられているが(図13a参照)、このうち、縦方向の中間に位置するピン孔413とピン孔414を用いるものとする。
【0077】
図12に見るように、ピン板71に固着されたピン71aを留板61のピン孔61aに挿通し、さらに移動板51のピン孔51dに挿通し、さらに調整板41のピン孔413に挿通する。同時にピン71bを留板61のピン孔61bに挿通し、さらに移動板51のピン孔51eに挿通し、さらに調整板41のピン孔414に挿通する。
【0078】
ピン孔61a、ピン孔51d、ピン孔413の内径はピン71aの外径に略等しく構成され、ピン孔61b、ピン孔51e、ピン孔414の内径はピン71bの外径に略等しく構成されているので、ピン71aはピン孔61a、ピン孔51d、ピン孔413に圧入され、ピン71bはピン孔61b、ピン孔51e、ピン孔414に圧入される。したがって、これだけでピン板71、留板61、移動板51、調整板41は相互に強固に固着されるが、さらに、ボルトb3をピン板71のネジ孔71cと留板61のネジ孔61cに螺入し、ピン板71と留板61を完全に固着する。
【0079】
このように、ピン71a、71bを調整板41のピン孔413、414にまで完全に圧入し終えたら、調整板41の右側面に突出したピン71a、71bの余剰分を切断する。図7、図8は組付前でピン71a、71bの余剰分がまだ切断されていない状態を示し、図9、図11、図12は、組付後、ピン71a、71bの余剰分が切断された状態を示している。
【0080】
組付後、ケーシングCSの左側面に穿設された長円孔HLにより、ピン71a、71bがケーシングCSに干渉することがない(図11、図12参照)。また、ピン板71は留板61に密着され、留板61は移動板51に密着される。しかしながら、移動板51と調整板41の間には空隙が生じる。これは、ケーシングCSの厚みに加えて調整手段付残留防止装置1の本体2の上部外周を囲繞する弾性体層27の厚みが存するためである。また、前述のように、弾性体層27はケーシングCSに圧着され、調整手段付残留防止装置1の本体2とケーシングCSの間の空隙を完全に充填する。
【0081】
次に、調整手段付残留防止装置1の右側面の要部の組付構成を説明する。調整手段付残留防止装置1の本体2の膨出部23aの上辺23bに固着された調整板42には前述のように、ピン孔421〜426の6個のピン孔が設けられている(図13b参照)。前述の左側面にては、調整板41の6個のピン孔のうち、縦方向の中間に位置するピン孔413とピン孔414を用いたので、調整板41にても、やはり縦方向の中間に位置するピン孔423とピン孔424を用いる。すなわち、このようにすることにより、調整手段付残留防止装置1全体の水平が確保される。
【0082】
図12に見るように、ピン板72に固着されたピン72aを留板62のピン孔62aに挿通し、さらに移動板52のピン孔52dに挿通し、さらに調整板42のピン孔423に挿通する。同時にピン72bを留板62のピン孔62bに挿通し、さらに移動板52のピン孔52eに挿通し、さらに調整板42のピン孔424に挿通する。
【0083】
ピン孔62a、ピン孔52d、ピン孔423の内径はピン72aの外径に略等しく構成され、ピン孔62b、ピン孔52e、ピン孔424の内径はピン72bの外径に略等しく構成されているので、ピン72aはピン孔62a、ピン孔52d、ピン孔423に圧入され、ピン72bはピン孔62b、ピン孔52e、ピン孔424に圧入されることとなる。したがって、これだけでピン板72、留板62、移動板52、調整板42は相互に強固に固着されるが、さらに、ボルトb4をピン板72のネジ孔72cと留板62のネジ孔62cに螺入し、ピン板72と留板62を完全に固着する。
【0084】
このように、ピン72a、72bを調整板42のピン孔423、424にまで完全に圧入し終えたら、調整板42の左側面に突出したピン72a、72bの余剰分を切断する。図7、図8は組付前でピン72a、72bの余剰分がまだ切断されていない状態を示し、図9、図11、図12は、組付後、ピン72a、72bの余剰分が切断された状態を示している。
【0085】
組付後、ケーシングCSの右側面に穿設された長円孔HRにより、ピン72a、72bがケーシングCSに干渉することがない(図11、図12参照)。また、ピン板72は留板62に密着され、留板62は移動板52に密着される。しかしながら、移動板52と調整板42の間には空隙が生じる。これは、ケーシングCSの厚みに加えて調整手段付残留防止装置1の本体2の上部外周を囲繞する弾性体層27の厚みが存するためである。また、前述のように、弾性体層27はケーシングCSに圧着され、調整手段付残留防止装置1の本体2とケーシングCSの間の空隙を完全に充填する。
【0086】
上記のようにして、調整手段付残留防止装置1の本体2の上部左側面側と上部右側面側にて組付構成が完了し、調整手段付残留防止装置1は、調整板41と移動板51がピン71a、71bにより強固に固着され、調整板42と移動板52がピン72a、72bにより強固に固着されることにより、移動板51、52に吊設される。ところが、移動板51、52には既述のようにテールプーリーTPの回転軸SFが枢着されているので、結果として調整手段付残留防止装置1全体がテールプーリーTPに吊設されている結果となる。
【0087】
その結果、図10に見るように、バケットBAの周回軌跡OBの最低点OBLと調整手段付残留防止装置1の本体2の底板25の上面との間には一定の間隙が生じることとなるが、この際用いられている調整板41のピン孔413、414は下から2番目のピン孔であり、調整板42のピン孔423、424も下から2番目のピン孔であるので、上記間隙をクリアランスc2とする。バケットBAも調整手段付残留防止装置1もテールプーリーTPに吊設されているので、ベルトBTの張り具合が一定である限り、テールプーリーTPの位置にかかわらず、クリアランスc2は一定となる。
【0088】
<実施例1の作用>
次に、実施例1の調整手段付残留防止装置1の作用について、図面を参照しながら詳細に説明する。先述のように、調整板41のピン孔413、414、調整板42のピン孔423、424を用いて調整手段付残留防止装置1をテールプーリーTPから吊設すると、ベルトBTの張り具合が一定である限りクリアランスc2は一定となるのであるが、ベルトBTが交換したばかりの新品の場合には、ベルトBTの緩む速度が速く、2週間〜1ヶ月位のペースでベルトBTの張り具合の調節を行わないとベルトBTが弛んできて、バケットBAの周回軌跡OBの最低点OBLが急速に下がってくる。すなわち、クリアランスc2(図10参照)が急速に狭くなってくる。
【0089】
クリアランスc2が狭くなり、ついにゼロとなるとバケットBAの下端部が調整手段付残留防止装置1の底板25の上面に接触するようになる。このようになると、バケットBAも底板25も損傷を蒙るばかりか、バケットコンベアBC自体の機能不良も引き起こし、最悪の場合には、バケットBAの下端部と調整手段付残留防止装置1の底板25の上面との接触によって発生する火花により粉塵爆発を誘発する危険性さえ生じる。
【0090】
したがって、このような危険を回避し、バケットコンベアBCの円滑な稼動を確保するために、ベルトBTの緩み具合に即応してテールプーリーTPの位置を下げ、常にベルトBTの張り具合を一定に保ってバケットコンベアBCを稼動することができれば理想的である。しかし、テールプーリーTPの位置を下げ、ベルトBTの張り具合を一定に保つ作業はかなりの手間を要するものであり、しかも、その間には当該のバケットコンベアBCを含むシステムは全て稼動を停止しなければならないので、既述のように、バケットコンベアBCが多数設置された現場にては、現実にはベルトBTの緩み具合に即応してテールプーリーTPの位置を下げる作業を頻繁に行うのは中々困難となってくる。
【0091】
したがって、ベルトBTがまだ新しいバケットコンベアBCについては、前述のクリアランスc2を広めに確保して、ベルトBTの張り具合の調整(すなわちテールプーリーTPの位置下げ作業)を頻繁に行わなくても良い状態としたいが、そのためには、テールプーリーTPと調整手段付残留防止装置1の相対的位置関係を図10〜図12の状態から変化させなければならない。そして、これは、結果として、調整板41と移動板51の、また調整板42と移動板52の相対的位置関係を変化させる作業となる。なんとならば、テールプーリーTPの回転軸SFは移動板51、52に枢着されており、調整板41、42は調整手段付残留防止装置1に固着されているからである。
【0092】
したがって、まず、図10〜図12の状態を解除するために、ピン板71のピン71aを調整板41のピン孔413から脱抜し、ピン71bを調整板41のピン孔414から脱抜すると同時にピン板72のピン72aを調整板42のピン孔423から脱抜し、ピン72bを調整板42のピン孔424から脱抜する作業を行わねばならない。
【0093】
そこで、そのための第1工程として、ピン板71を留板61に固着していたボルトb3を羅脱し、ピン板72を留板62に固着していたボルトb4を羅脱する。これにより、ピン板71と留板61の固着状態は解除され、ピン板72と留板62の固着状態も解除される。
【0094】
しかしながら、ピン71aは留板61のピン孔61aに、ピン71bは留板61のピン孔61bに夫々圧入され、ピン72aは留板62のピン孔62aに、ピン72bは留板62のピン孔62bに夫々圧入された状態であるので、ボルトb3、b4が羅脱されただけではピン板71と留板61の固着状態及びピン板72と留板62の固着状態は解除されない。
【0095】
したがって、まず、ピン板71の側においては、ネジ孔71d、71eに夫々適合するボルト(図示せず)をネジ孔71d、71eに同時に螺入する。図示しないボルトの長さをピン板71の厚さより長くしておけば、図示しないボルトの端末がピン板71の厚さを突き抜けてピン板71の右側面側に突出するが、それでもなお図示しないボルトを螺入し続けることにより、ピン板71の右側面は留板61の左側面から離間させられ、ピン板71の右側面と留板61の左側面の間に空隙が生じる。
【0096】
このようにして生じた空隙に、適当な器具(図示せず)を挿入して、梃子の原理によってピン板71のピン71aを移動板51のピン孔51d、調整板41のピン孔413から脱抜すると同時にピン71bを移動板51のピン孔51e、調整板41のピン孔414から脱抜する。あるいは、生じた空隙に、ロープやチェーン(図示せず)を挿通して引き抜いても良い。
【0097】
この状態で、調整板41と移動板51の連結状態は解除され、結果として、左側面側においてテールプーリーTPと調整手段付残留防止装置1の連結状態も解除される。なお、以上の作業を行うにあたっては、当然のことながら、事前に調整手段付残留防止装置1が落下しないように調整手段付残留防止装置1の位置を仮固定する作業が必要となる。
【0098】
次に、右側面側において、ピン板72のピン72aを調整板42のピン孔423から脱抜し、ピン72bを調整板42のピン孔424から脱抜する作業を行う。この作業は、左側面側において、ピン板71のピン71aを調整板41のピン孔413から脱抜し、ピン71bを調整板41のピン孔414から脱抜する作業と同様の手順において行われる。
【0099】
すなわち、まず第1工程として、ピン板72を留板62に固着していたボルトb4を羅脱する。次に、ネジ孔72d、72eに夫々適合するボルト(図示せず)をネジ孔72d、72eに同時に螺入する。図示しないボルトの長さを左側面側と同様にピン板72の厚さより長くしておけば、螺入を続けることにより、ピン板72の左側面は留板62の右側面から離間させられ、ピン板72の左側面と留板62の右側面の間に空隙が生じる。
【0100】
この空隙に、左側面側同様適当な器具(図示せず)を挿入するか、ロープやチェーン(図示せず)を挿通して、ピン板72のピン72aを移動板52のピン孔52d、調整板42のピン孔423から脱抜すると同時にピン72bを移動板52のピン孔52e、調整板42のピン孔424から脱抜する。この状態で、調整板42と移動板52の連結状態は右側面側において解除され、結果として、テールプーリーTPと調整手段付残留防止装置1の連結状態は完全に解除される。
【0101】
作業の目的は、図10におけるクリアランスc2を拡大する点にあるので、そのために、左側面側においてはピン板71のピン71aを調整板41のピン孔413より1段高い位置のピン孔415に挿通し、ピン71bを調整板41のピン孔414より1段高い位置のピン孔416に挿通する。また、右側面側においては、ピン板72のピン72aを調整板42のピン孔423より1段高い位置のピン孔425に挿通し、ピン72bを調整板42のピン孔424より1段高い位置のピン孔426に挿通する。
【0102】
すなわち、具体的には、図16〜図18に見るように、左側面側にては、ピン板71に固着されたピン71aを留板61のピン孔61aに挿通し、さらに移動板51のピン孔51dに挿通し、さらに調整板41のピン孔415に挿通する。同時にピン71bを留板61のピン孔61bに挿通し、さらに移動板51のピン孔51eに挿通し、さらに調整板41のピン孔416に挿通する。
【0103】
また、右側面側にては、ピン板72に固着されたピン72aを留板62のピン孔62aに挿通し、さらに移動板52のピン孔52dに挿通し、さらに調整板42のピン孔425に挿通する。同時にピン72bを留板62のピン孔62bに挿通し、さらに移動板52のピン孔52eに挿通し、さらに調整板42のピン孔426に挿通する。
【0104】
このようにすれば、調整手段付残留防止装置1全体は、図10〜図12に示す状態に比較すると、1段低い位置、すなわち、調整板41における距離da(図13a参照)、調整板42における距離db(図13b参照)だけ下げられた位置にてテールプーリーTPより吊設されることとなり、結果として、バケットBAの周回軌跡OBの最低点OBLと調整手段付残留防止装置1の本体2の底板25の上面との間が図10〜図12に示す状態よりも1段広く開く。すなわち、調整板41における距離da(図13a参照)、調整板42における距離db(図13b参照)だけ広がる。この際に生じる間隙を、クリアランスc3とする(図16、図17参照)。
【0105】
すなわち、この際用いられている調整板41のピン孔415、416は下から3番目のピン孔であり、調整板42のピン孔425、426も下から3番目のピン孔であるので、このクリアランスをクリアランスc3とするものである。図10、図11のクリアランスc2と図16、図17のクリアランスc2を比較してみると、クリアランスc3はクリアランスc2より調整板41における距離da(図13a参照)だけ広くなっているのがわかる。もしくは、調整板42における距離db(図13b参照)だけ広くなっているのがわかる。
【0106】
すなわち、クリアランスc3は、調整板41あるいは42において縦に配設されたピン孔の1段分(距離da、db分)だけ広くなっている。そこで、調整板41あるいは42を設計する際に、このピン孔1段分の距離すなわち距離da、dbを適宜に設定することにより、ベルトBTが新品のうちにベルトBTの張り具合の調整(すなわち、テールプーリーTPの位置調整)を怠ることがあってベルトBTが相当に緩んできても、バケットBAの周回軌跡OBの最低点OBLと調整手段付残留防止装置1の本体2の底板25の上面とが絶対に接触しないだけの距離(クリアランスc3)を確保することができる。
【0107】
この、ピン孔1段分の距離(距離da、db)については、バケットコンベアBCの規模やベルトBTの材質や現場の状況(どのくらいの頻度でベルトBTの張り具合の調整を行えるか)、あるいは搬送対象物の種類等の各種要因がからんでくるので一概には決められないが、実験例からすると、20mm〜80mmくらいが適切であると考えられる。また、実施例1の調整手段付残留防止装置1においては、距離da、dbを50mmとしている。
【0108】
すなわち、バケットコンベアBCにおける調整手段付残留防止装置1のニュートラルな位置を、図10〜図12に見るように調整板41、42のピン孔の中間の位置のピン孔413、414、423、424を用いて調整手段付残留防止装置1をテールプーリーTPから吊設した際の位置とし、このときのバケットBAの周回軌跡OBの最低点OBLと調整手段付残留防止装置1の本体2の底板25の上面との間のクリアランスをc2とするならば、ベルトBTが新品で緩む速度が速いうちは、図16〜図18に見るように調整板41、42にて用いるピン孔の位置を1段分(距離da、db分)上げて、ピン孔415、416、425、426を用いて調整手段付残留防止装置1をテールプーリーTPから吊設する。
【0109】
そうすると、その際のクリアランスc3はクリアランスc2より調整板41、42のピン孔1段分(距離da、db分)広いものとなり、バケットBAが調整手段付残留防止装置1の本体2の底板25の上面に接触するという事態を回避することができる。すなわち、これにより、バケットBAや底板25の損傷を回避できるばかりか、バケットコンベアBC自体の機能不良発生も防止し、さらには、粉塵爆発を誘発する危険性も防止できることになる。
【0110】
ベルトBTが新品で緩む速度が速いうちは、図16〜図18の状態でバケットBAの周回軌跡OBの最低点OBLと調整手段付残留防止装置1の本体2の底板25の上面との間のクリアランスc3を確保し、経時変化によりベルトBTの緩みが落ち着いてきた時点で調整板41、42において用いるピン孔の位置を1段分(距離da、db分)低くする。
【0111】
すなわち、図10〜図12に見るように調整板41、42においてピン孔413、414、423、434を用いて調整手段付残留防止装置1をテールプーリーTPから吊設することにより、バケットBAの周回軌跡OBの最低点OBLと調整手段付残留防止装置1の本体2の底板25の上面との間のクリアランスはc2となり、ニュートラルな状態で稼動することができるようになる。
【0112】
このような状態になれば、これ以降のベルトBTの緩みはほんの僅かとなるので、ベルトBTの張り具合の調整をたまに行うだけで済むようになる。そして、この際には、調整手段付残留防止装置1がテールプーリーTPから吊設されているので、クリアランスc2は一定の値にて確保されるものである。
【0113】
なお、調整手段付残留防止装置1をケーシングCS内部で上下動させる際には、調整手段付残留防止装置1の本体2の上部を囲繞する弾性体層がケーシングCSの内側面を摺動することになるが、弾性体層27は図4に見るように高さ方向に本体2の高さの略半分の延長を有する構成としているために、摺動によりその一部が損傷を蒙っても、本体2とケーシングCSの内面の間の空隙を充填する作用は保持することができる。しかも、調整手段付残留防止装置1をケーシングCS内部で上下動させる機会はさほど多いとはいえないので、現実には弾性体層27の充填作用に影響を与えることは全く無いと考えて良いものである。
【0114】
なお、現場の状況や搬送対象物の種類によっては、クリアランスがc2(図10〜図12)でもまだ広すぎるという場合も生じてくる。このような場合においては、調整板41、42における最下段のピン孔、すなわちピン孔411、412、421、423を用いて調整手段付残留防止装置1をテールプーリーTPから吊設する。この際の状態を示したのが図19〜図21であり、この際のバケットBAの周回軌跡OBの最低点OBLと調整手段付残留防止装置1の本体2の底板25の上面との間のクリアランスはクリアランスc2よりピン孔1段分(距離da、db分)だけ狭いクリアランスc1となる。
【0115】
すなわち、左側面側においてはピン板71のピン71aを調整板41のピン孔413より1段低い位置のピン孔411に挿通し、ピン71bを調整板41のピン孔414より1段低い位置のピン孔412に挿通する。また、右側面側においては、ピン板72のピン72aを調整板42のピン孔423より1段低い位置のピン孔421に挿通し、ピン72bを調整板42のピン孔424より1段低い位置のピン孔422に挿通する。
【0116】
すなわち、具体的には、図19〜図21に見るように、左側面側にては、ピン板71に固着されたピン71aを留板61のピン孔61aに挿通し、さらに移動板51のピン孔51dに挿通し、さらに調整板41のピン孔411に挿通する。同時にピン71bを留板61のピン孔61bに挿通し、さらに移動板51のピン孔51eに挿通し、さらに調整板41のピン孔412に挿通する。
【0117】
また、右側面側にては、ピン板72に固着されたピン72aを留板62のピン孔62aに挿通し、さらに移動板52のピン孔52dに挿通し、さらに調整板42のピン孔421に挿通する。同時にピン72bを留板62のピン孔62bに挿通し、さらに移動板52のピン孔52eに挿通し、さらに調整板42のピン孔422に挿通する。
【0118】
このようにすれば、調整手段付残留防止装置1全体は、図10〜図12に示す状態に比較すると、1段(距離da、db分)高い位置にてテールプーリーTPより吊設されることとなり、結果として、バケットBAの周回軌跡OBの最低点OBLと調整手段付残留防止装置1の本体2の底板25の上面との間が図10〜図12に示す状態よりも狭くなる。この間隙を、クリアランスc1とするものである。
【0119】
すなわち、この際用いられている調整板41のピン孔411、412は下から1番目のピン孔であり、調整板42のピン孔421、422も下から1番目のピン孔であるので、このクリアランスをクリアランスc1とするものである。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、バケットコンベアが用いられるシステムにおいて、バケットコンベアの損傷防止や不良運転の防止、さらには粉塵爆発の防止に大きく役立つものである。
【0121】
特に、バケットコンベアが用いられる現場の状況や搬送対象物の種類に合わせて、調整板のピン孔の数やピン孔の間の縦の間隔をオーダーメイドで調整することにより、どのような現場においても上記効果を上げえるものであり、バケットコンベアが用いられるシステムに対して多大な貢献をなし得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の実施例1の調製手段付残留防止装置を備えたバケットコンベアBCの下端部分の長手方向の縦断面図である。
【図2】本発明の実施例1の調製手段付残留防止装置を備えたバケットコンベアBCの下端部分の右側面図である。
【図3】本発明の実施例1の調製手段付残留防止装置の平面図である。
【図4】本発明の実施例1の調製手段付残留防止装置の右側面図である。
【図5】本発明の実施例1の調製手段付残留防止装置の底面図である。
【図6】本発明の実施例1の調製手段付残留防止装置の正面図である。
【図7】本発明の実施例1の調製手段付残留防止装置の正面上方右側から見た外観斜視図である。
【図8】本発明の実施例1の調製手段付残留防止装置の背面下方右側から見た外観斜視図である。
【図9】本発明の実施例1の調製手段付残留防止装置を備えたバケットコンベアBCの下端部分を短手方向に縦断した状態の外観図である。
【図10】図2の要部拡大図である。
【図11】図10のA−A線断面図である。
【図12】図10のB−B線断面図である。
【図13】(a)本発明の実施例1の調製手段付残留防止装置の左側面側の調整板の外観斜視図である。 (b)本発明の実施例1の調製手段付残留防止装置の右側面側の調整板の外観斜視図である。
【図14】(a)本発明の実施例1の調製手段付残留防止装置の左側面側の移動板の外観斜視図である。 (b)本発明の実施例1の調製手段付残留防止装置の右側面側の移動板の外観斜視図である。
【図15】(a)本発明の実施例1の調製手段付残留防止装置の左側面側のピン板と留板の外観斜視図である。 (b)本発明の実施例1の調製手段付残留防止装置の右側面側のピン板と留板の外観斜視図である。
【図16】本発明の実施例1の調製手段付残留防止装置の作用を説明する説明図である。
【図17】図16のC−C線断面図である。
【図18】図16のD−D線断面図である。
【図19】本発明の実施例1の調製手段付残留防止装置の作用を説明する説明図である。
【図20】図16のE−E線断面図である。
【図21】図16のF−F線断面図である。
【符号の説明】
【0123】
1 調製手段付残留防止装置
2 本体
21a 傾斜前板
21b 前板
21c 支持板
21d 支持板
21e 長孔
22 左側板
22a 膨出部
22b 上辺
22c 支持板
23 右側板
23a 膨出部
23b 上辺
23c 支持板
24a 傾斜後板
24b 後板
24c 支持板
24d 支持板
25 底板
25a ガイドレール
25b ガイドレール
25c ガイドレール
25d 連結具
27 弾性体層
3 前部架構
3a 基台
3b 梁
3c 梁
3d 架台
41 調整板
41a 本体
41b 凸部
41c 凸部
41d 凹部
411 ピン孔
412 ピン孔
413 ピン孔
414 ピン孔
415 ピン孔
416 ピン孔
42 調整板
42a 本体
42b 凸部
42c 凸部
42d 凹部
421 ピン孔
422 ピン孔
423 ピン孔
424 ピン孔
425 ピン孔
426 ピン孔
51 移動板
51a 本体
51b 凸部
51c 軸孔
51d ピン孔
51e ピン孔
52 移動板
52a 本体
52b 凸部
52c 軸孔
52d ピン孔
52e ピン孔
53 調節機構
54 調節機構
61 留板
61a ピン孔
61b ピン孔
61c ネジ孔
62 留板
62a ピン孔
62b ピン孔
62c ネジ孔
71 ピン板
71a ピン
71b ピン
71c ネジ孔
71d ネジ孔
71e ネジ孔
72 ピン板
72a ピン
72b ピン
72c ネジ孔
72d ネジ孔
72e ネジ孔
AN エアノズル
ASL 固定版
ASU 固定版
BA バケット
BC バケットコンベア
BR 軸受
BT ベルト
CL シリンダ
CS ケーシング
EN 投入口
GR ガイドレール
HA ヘッダ
HL 長円孔
HR 長円孔
OB 周回軌跡
OBL 最低点
RD ロッド
SF 回転軸
TB チューブ
TP テールプーリー
W 監視窓
X 方向
b1 ボルト
b2 ボルト
b3 ボルト
b4 ボルト
c1 クリアランス
c2 クリアランス
c3 クリアランス
d1 距離
d2 距離
d3 距離
d4 距離
d5 距離
d6 距離
d7 距離
d8 距離
da 距離
db 距離
















【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物を複数のバケットに収納して上方に連続的に搬送するバケットコンベアの下端に設けられたテールプーリーに吊設された搬送対象物の残留防止装置において、バケットの周回軌跡の最低点と残留防止装置の底板上面との間のクリアランスを変化させることのできるクリアランスの調整手段を有していることを特徴とする調整手段付残留防止装置。
【請求項2】
クリアランスの調整手段が、残留防止装置の2本の長辺の夫々の上端中間部に1基ずつ設けられており、該2基のクリアランスの調整手段の夫々が、残留防止装置に固着され複数のピン孔が縦に配設された調整板と、テールプーリーの回転軸の軸受に固着され、少なくとも1個のピン孔を有する移動板とから構成され、2基のクリアランスの調整手段の夫々において移動板のピン孔と調整板のピン孔を結合用のピンにて結合固定することにより残留防止装置全体がテールプーリーに吊設される構成であることを特徴とする請求項1に記載の調整手段付残留防止装置。
【請求項3】
結合用のピンの頭部が板状のピン板に固着され、結合用のピンが少なくとも1個のピン孔を有する留板のピン孔を挿通して移動板のピン孔と調整板のピン孔に挿通されており、ピン板と留板が螺着されることによって結合用のピンが安定的に移動板と調整板を結合固定する構成であることを特徴とする請求項2に記載の調整手段付残留防止装置。
【請求項4】
調整板のピン孔が、水平に2個穿設されたものを1対として、該1対のピン孔が縦に複数対配設され、調整板の中央部分上部にはテールプーリーの回転軸と干渉しないように凹部が設けられており、また移動板のピン孔も調整板のピン孔に対応するように水平に2個穿設されており、さらに留板のピン孔も調整板のピン孔に対応するように水平に2個穿設されており、ピン板に固着された2本の結合用のピンが留板のピン孔を夫々挿通して移動板のピン孔と調整板のピン孔に夫々挿通されていることを特徴とする請求項3に記載の調整手段付残留防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−62978(P2007−62978A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253354(P2005−253354)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【特許番号】特許第3756177号(P3756177)
【特許公報発行日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(505331823)中部資材株式会社 (4)
【Fターム(参考)】