説明

調整装置を有する、繊維スライバの合糸およびドラフトのための練条機構を有する練条機における装置

【課題】1つまたは複数の練条区間の長さを調整するために必要とされる作業と時間を大きく削減することを可能にする練条機における装置を提供する。
【解決手段】繊維スライバの合糸およびドラフトのための練条機構を有する練条機における装置であって、少なくとも1つのプーリ車(40、41、42、43、44、45、46)と、張力がかかった駆動要素47は、取付装置(33a、34a、35a、36a)を調整するために使用され、プーリ車または駆動要素47に対して加えられる移動力が、取付装置(33a、34a、35a、36a)のための調整移動の形に変換させられることが可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部ローラと下部ローラとを各々が備える少なくとも2対のローラを有する練条機構を収容するための練条機構フレームを有し、別の下部ローラに対する少なくとも1つの下部ローラの間隔を調整する手段を有し、各々の場合に下部ローラを収容する取付装置を有し、下部ローラは、プーリ車の周りをエンドレスで回転する少なくとも1つの駆動要素によって駆動されるようになっている、繊維スライバの合糸およびドラフトのための練条機構を有する練条機における装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公知の装置(DE−OS 20 44 996)では、入口下部ローラと中間下部ローラとの取付台が、練条区間の長さが特定の繊維ステープルに適合させられるようにその機械のフレーム上で移動することが可能である。機械のフレームのすべり溝の中を移動可能なテンションプーリ車が、入口ローラの移動によって引き起こされる中間ローラの軸線と案内プーリ車の軸線との間の間隔の変化に応じて歯付きベルトの長さが変更されることを可能する。中間ローラは別の歯付きベルトによって駆動される。この後者の歯付きローラは、機械フレームに固定されておりかつ1つの軸を中心として旋回することが可能なテンションプーリ車によって張力がかかった状態に保たれている。この結果として、この歯付きベルトも、入口ローラの軸線と中間ローラの軸線との間の間隔の変化に適合させられることが可能である。入口ローラと中間ローラとを移動させるための移動装置と、これらのローラの移動作業の後で歯付きローラを再び張力がかかった状態にするための追加の引張装置とが必要であり、したがって高い製造コストが必要となるということが不利である。さらに、こうした移動作業とその後の再引張作業とのために幾つかの作業段階が必要とされるということも不利である。ベルトの張力はこの移動作業によって消失することになる。ローラの移動を手作業で行う場合には、取付台と取付台との間にスペーサを挿入して取付台をスペーサに押し付けるが、この場合も、段取り作業の量はかなり多い。最後に、こうした移動作業と再引張作業は、間隔とベルト張力とを設定する時に、潜在的な誤りの発生原因が倍増することを結果的に引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】DE−OS2044996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の根底にある課題は、上述の欠点を回避し、きわめて単純な構造であり、かつ、1つまたは複数のスライダと、したがって、1つまたは複数の練条区間の長さとを調整するために必要とされる作業と時間を大きく削減することを可能にする、冒頭で説明した種類の装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によって、上部ローラと下部ローラとを各々が備える少なくとも2対のローラを有する練条機構を収容するための練条機構フレームを有し、別の下部ローラに対する少なくとも1つの下部ローラの間隔を調整する手段を有し、各々の場合に下部ローラを収容する取付装置を有し、下部ローラは、プーリ車の周りをエンドレスで回転する少なくとも1つの駆動要素によって駆動されるようになっている、繊維スライバの合糸とドラフトのための練条機構を有する練条機における装置であって、少なくとも1つのプーリ車と張力がかかった駆動要素とが取付装置を調整するために使用され、プーリ車または駆動要素に加えられる移動力が、取付装置のための調整移動に変換されることが可能であることを特徴とする装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明による対策が、単純な手段によって、取付台と、したがって練条区間の長さ(ニップライン間隔)とを短時間で調整することを可能にする。練条区間の長さを調整するために、練条機中に含まれていなければならない既存の構造要素、すなわち、プーリ車と駆動ベルトとが巧妙に使用される。調整のための別個の装置は必要ではない。調整前と調整中と調整後に駆動ベルトが張力がかかった状態にあるので、調整後に駆動ベルトを張力がかかった状態に再び戻すための別の装置が不要であり、したがって、構造的にきわめて単純な手段によって練条機の練条区間の長さを短時間の内に変更することが可能になる。
【0007】
請求項2から請求項58は、本発明がもたらす有利な進歩を含む。
【0008】
以下では、図面に示す例示的な具体例を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】概略的な回路図を伴う、本発明による装置のためのオートレベラ練条機を示す略側面図である。
【図2】入口下部ローラと中間下部ローラとの移動可能な取付けを示す斜視図である。
【図3a】図1による練条機のための入口下部ローラと中間下部ローラの駆動装置を示す側面図である。
【図3b】図1による練条機のための入口下部ローラと中間下部ローラの駆動装置を示す平面図である。
【図3c】歯付きベルトの断面図である。
【図4a】予備ドラフト区間と主ドラフト区間とを短縮する連続的な手順の第1の段階を示す略図である。
【図4b】予備ドラフト区間と主ドラフト区間とを短縮する連続的な手順の第2の段階を示す略図である。
【図4c】予備ドラフト区間と主ドラフト区間とを短縮する連続的な手順の第3の段階を示す略図である。
【図4d】予備ドラフト区間と主ドラフト区間とを短縮する連続的な手順の第4の段階を示す略図である。
【図5a】移動前の入口下部ローラと中間下部ローラを示す略図である。
【図5b】移動後の入口下部ローラと中間下部ローラを示す略図である。
【図6a】歯付きベルト車のための電磁制動装置を示す略図である。
【図6b】歯付きベルト車のための電磁制動装置を示す略図である。
【図7】スライダのための固着装置を示す略図である。
【図8】2つのスライダを結合する結合要素(ブリッジ)を示す略図である。
【図9】各ローラがそれ自体の駆動モータを有する3つのローラの組合せを有する練条機構を備える実施形態を示す略図である。
【図10】練条機構におけるニップライン間隔を変更するための調整値の手作業による入力および/または記憶装置を利用した入力のための入力装置を示す略図である。
【図11】下部ローラから持ち上げられて分離されている上部ローラを示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1では、例えばツリュツラー(Truetzschler)HSR練条機のような練条機1が練条機構2を有し、この練条機構2の上流には練条機構の入口3が設けられており、練条機構2の下流には、練条機構からの出口4が設けられている。缶(図示していない)から供給される繊維スライバ5が、スライバガイド6の中に入り、抜取りローラ7、8によって抜き取られる形で移動させられ、測定要素9を通過させられる。練条機構2は、4/3線式の練条機構として設計されており、すなわち、この練条機構は、3つの下部ローラI、II、III(ローラIは送出下部ローラであり、ローラIIは中間下部ローラであり、ローラIIIは入口下部ローラである)と4つの上部ローラ11、12、13、14とから成る。複数の繊維スライバ5からの繊維スライバ組合せ5′のドラフトが、練条機構2の中で行われる。ドラフトは予備ドラフトと主ドラフトとから構成されている。ローラ対14/IIIとローラ対13/IIが予備ドラフト区間を形成し、ローラ対13/IIとローラ11とローラ対12/Iとが主ドラフト区間を形成する。
【0011】
細くされた複数の繊維スライバ5が練条機構からの出口4の中のウェブガイド10に達し、さらに、抜取りローラ15、16によってスライバファネル(sliver funnel)17の中を通して抜き取られ、このスライバファネルの中で複数の繊維スライバが1つの繊維スライバ18を形成するように組み合わされ、その後で缶の中に入れられる。照合記号Aが加工の方向を示す。
【0012】
例えば歯付きベルトによって、互いに機械的に結合されている抜取りローラ7、8と入口下部ローラIIIと中間下部ローラIIは、制御モータ19によって駆動され、加工中に所望の値が指定されることが可能である。(関連付けられている上部ローラ14、13はそれぞれに下部ローラの運動によって回転する)。送出下部ローラIと抜取りローラ15、16は主モータ20によって駆動される。制御モータ19と主モータ20の各々はそれ自体の制御装置21、22をそれぞれに有する。制御(回転速度の制御)がクローズド制御ループによって各々の場合に行われ、タコジェネレータ23が制御モータ19に関連付けられおり、タコジェネレータ24が主モータ20に関連付けられている。練条機構の入口3では、送り込まれる繊維スライバ5の質量に比例した変数、例えば、繊維スライバの断面積が、例えばDE−A− 44 04 326から公知である、入口測定要素9によって測定される。練条機構からの出口4では、送出される繊維スライバ18の断面積が、DE−A− 195 37 983から公知である、スライバファネル17に関連付けられている出口測定要素25によって確認される。中央コンピュータユニット26(制御および調節装置)、例えば、マイクロプロセッサを有するマイクロコンピュータが、制御モータ19に関する所望の値のための設定を制御装置21に送る。これら2つの測定要素9、25の測定値が、練条加工中に中央コンピュータユニット26に送られる。制御モータ19のための所望の値は、入口測定要素9の測定値と、送出される繊維スライバ18の断面積に関する所望の値とから、中央コンピュータユニット26内で求められる。出口測定要素25の測定値は、送出される繊維スライバ18の監視のために使用される(送出スライバ監視)。この制御システムを用いて練条加工を適切に調節することによって、送り込まれる繊維スライバ5の断面積の変動が補正されることが可能であり、繊維スライバがより均一にされることが可能である。照合番号27は表示モニタを示し、照合番号28はインタフェースを示し、照合番号29は入力装置を示し、照合番号30は圧力棒を示し、照合番号31は記憶装置を示す。
【0013】
図2では、下部ローラI、II、IIIのトラニオンIa、IIa、IIIa(図3bを参照されたい)が、取付台32a、33a、34a内で回転することが可能であるように取り付けられている(32b、33b、34bは練条機構の反対側に位置しており、この図には示していない)。取付台33a、34aは、棒37aに沿ってそれぞれに矢印C、Dと矢印E、Fの方向に移動可能であるスライダ35a、36a上にそれぞれボルト留めされている。棒37aの両端部が、機械のフレーム39に取り付けられている取付ブロック38′(38″は図示していない)の中に固定されている。
【0014】
スライダ35a、35bおよびスライダ36a、36bの移動は、同時に、取付台33a、33bおよび取付台34a、34bと、したがって、下部ローラII、IIIとがそれぞれに矢印C、Dと矢印E、Fの方向に移動させられることを引き起こす。これらに関連した上部ローラ13、14は、これに対応する形で(図に示していない形で)方向C、Dと方向E、Fとにそれぞれ移動させられる。こうして、ローラの組合せの間のニップライン間隔が変更され設定される。
【0015】
スライダ35a、35bとスライダ36a、36bとの固着は、キャッチ装置や停止装置など(図7を参照されたい)によって実現される。
【0016】
図3aでは、下部ローラII、IIIは、歯付きベルト車40、41と歯付きベルト47との形である共通ループ機構によって、材料の流れの方向Aで見た場合に練条機の右側から駆動される。下部ローラII、IIIの互いに異なる回転速度が、互いに異なる数の歯を備えている駆動トラニオンIIa、IIIaの換え歯車によって得られる。歯付きベルト47は、サーボモータ19の形である制御駆動装置上に方向B(すなわち、加工の方向とは反対の方向)に進む。下部ローラIは、歯付きベルト車と歯付きベルト47′との形であるループ機構によって、練条機の左側から駆動される。このために、歯付きベルト47′は、下部ローラIにおける歯付きベルト円板40からサーボモータ20上へ方向Gに左側を通過する。
【0017】
動作時、すなわち、繊維スライバが方向Aに進んでいる時には、歯付きベルト47が方向Gに動く。駆動モータ19上に配置されている歯付きベルト車47から開始して、歯付きベルト47は、歯付きベルト車45と、平滑案内プーリ車46と、歯付きベルト車40(下部ローラIIIのためのローラ駆動プーリ車)と、歯付きベルト車41(下部ローラIIのためのローラ駆動プーリ車)と、平滑案内プーリ車42と、歯付きベルト車43とを連続して通過する。歯付きベルト47は、その歯によって、歯付きベルト車40、41、43、44、45と確実に係合した状態にある。歯付きベルト47の歯付きの側面とは反対側の平滑な側面(裏側)が、平滑案内プーリ車46、42と接触して係合した状態にある。歯付きベルト47は、プーリ車40−46のすべての周りに掛けられている。動作時(繊維スライバがドラフト中に方向Aに通過している時)に、歯付きベルト車40、41、43、44、45は時計回りに回転し、案内プーリ車42、46は反時計回りに回転する。
【0018】
歯付きベルト車40、41はそれぞれに取付台34a、33aに関連付けられており、一方、案内プーリ車42、46はそれぞれに回転自在にスライダ35a、36aに取り付けられている。取付台34aとスライダ36aとの間と、取付台33aとスライダ35aとの間における(例えば、ボルトによる)剛結合によって、下部ローラII、IIIの各々に対して、歯付きベルト車40、41の一方と案内プーリ車46、42の一方とがそれぞれに関連付けられている。歯付きベルト47は、一方では、プーリ車40、46の周りを通過し、他方では、鏡像配置の形でプーリ車41、42の周りを通過する(図3bを参照されたい)。
【0019】
ローラ対13/IIとローラ対14/IIIとの間の区間をVV(予備ドラフト)と表し、ローラ対12/Iとローラ対13/IIとの間の区間をHV(主ドラフト)と表す(図4aを参照されたい)。図3aでは、ローラ対14/IIIとローラ対13/IIとの間のニップライン間隔を拡げなければならない場合には、少なくとも一方のローラ対をそれぞれの他方のローラ対から引き離さなければならない。このために、スライダ35aを右方向に移動させてもよく、この移動は次の2つの方法で行うことが可能である。 (a)スライダ35aの固着が解除される。プーリ車、例えば、歯付きベルト車47が回転不可能であるように停止させられる。この停止は、例えば機械的手段または電磁的手段によって実現できる。この結果として、歯付きベルト47が静止しており、動かされることが不可能である。その次に、歯付きベルト車41が、例えばクランク等を使用して手動で、反時計回りに回転させられ、この時に同様に案内プーリ車42が必然的に時計回りに回転させられる。この過程において、歯付きベルト車41の回転運動が、方向Cのスライダ35aの縦方向移動に変換され、歯付きベルト車41と案内プーリ車42とが、静止している歯付きベルト47の互いに反対側の面に沿って巻き付き、それによって、一方のプーリ車において歯付きベルト47をいわば「短くし」、他方のプーリ車において歯付きベルト47を「長くする」ことになる。歯付きベルト車41におけるこの「巻き付き」の際に必要になるベルトの長さは、案内プーリ車42において提供される。それによって、下部ローラIIはスライダ35aと取付台33aとによって方向Cに移動させられる。 (b)スライダ35aの固着が解除される。歯付きベルト41が回転不可能であるように停止させられる。この結果として、案内プーリ車42も必然的に停止させられる。その次に、時計回りの回転が駆動モータ19によって生じさせられる。歯付きベルト47が方向Gに進み、この場合も同様に一方のプーリ車においてベルト47を「短くし」、他方のプーリ車においてベルト47を「長くする」。歯付きベルト車40と歯付きベルト車41との間で実際に必要になるベルトの長さは、歯付きベルト車43とプーリ車42との間において提供される。それによって、歯付きベルト車44の回転運動と、歯付きベルト47の移動とが、スライダ35aの方向Cの縦方向移動に変換される。この結果として、取付台33a内に取り付けられている(スライダ35aに剛結合されている)下部ローラIIも同様に方向Cに移動させられる。
【0020】
図4aから図4dに示す通りに、実際には、最初に予備ドラフト区間VVが変更され、その次に主ドラフト区間HVが変更される場合が多い。ドラフト区間VV、HVを短縮する場合には、スライダ36aが、図4aに示されている位置から図4bに示されている位置へと矢印Eの方向に移動させられる。この結果として、予備ドラフト区間VVにおけるニップライン間隔が「a」から「a′」に短縮される。その次に、図4cに示す通りに、スライダ36a、35aがブリッジ50によって互いに剛結合される。最後に、図4dに示す通りに、互いに剛結合されているスライダ36a、35aが、図4cに示されている位置から、図4dに示されている位置に、矢印Eの方向と矢印Cの方向に動かされている。この結果として、主ドラフト区間HVのニップライン間隔が「b」から「b′」に短縮される。予備ドラフト区間と主ドラフト区間とを長くする場合にも、これと同じ手順が使用され、すなわち、互いに結合されているスライダ35a、36aが矢印Fと矢印Dの方向に移動させられ(図2を参照されたい)、この結果として、主ドラフト区間HVが長くなる。その次に、スライダ35a、36aがブリッジ50から分離される。最後に、スライダ36aは矢印Fの方向に動かされ(図2を参照されたい)、この結果として予備ドラフト区間VVが長くなる。
【0021】
練条機構2内の繊維スライバ5に関しては、ドラフト区間VV、HVを短くする場合に、図4aと図4bに示す通りに、ローラ対14/IIIの上流において繊維スライバ5IVが方向Bにわずかに伸長することが移動の際に生じる可能性があるが、しかし、輸送ローラ7、8とローラ対14/IIIとの間の間隔の長さ(約1.5m)のために、この伸長は全く重要な意味を持たない。短くする場合には、弛みによる輪が予備ドラフト区間VV内で生じないが、これは、ローラ対14/IIIとローラ対13/IIとに関する移動の場合にこれらのローラ対の両方に対する駆動装置が歯付きベルト47によって互いに結合されているので、その一方または両方のローラ対が回転可能であるからである。これとは対照的に、主ドラフト区間HVを短くする場合には、弛みによる輪が繊維スライバ5″において形成され、この弛みによる輪は、主モータ20によって加工方向Aにローラ対12/Iが回転することによって引き伸ばされ、すなわち、直線状に引っ張られる。ドラフト区間VV、HVを長くする場合には、ローラ対12/Iが、第1の段階において方向Bに逆方向に回転させられ、この時に、弛みによる輪が繊維スライバ5″に故意に生じさせられる。その後で、互いに結合されているスライダ35a、36aを方向Dと方向Fに移動させることによって主ドラフト区間HVが長くされる時には、その故意に形成された輪が、この過程において再び引き伸ばされ、すなわち、再び直線状に引き延ばされる。最後に、ブリッジ50を分離した後に、スライダ36aが方向Fに移動させられる。歯付きベルト47によって入口下部ローラ対と中間下部ローラ対とに対して駆動装置を上述のように結合させることによって、予備ドラフト区間VV内の繊維スライバ5′の長さは影響を受けないままである。ローラ対14/IIIの上流において繊維スライバ5IVに生じる可能性があるわずかな圧縮は、繊維スライバ5IVのドラフトと構造とに関しては重要な意味を持たない。
【0022】
図5aと図5bは、スライダ36a、35aの移動を生じさせる構造を示している。予備ドラフト区間VV内のニップライン間隔は「a」(図5a)から「a″」(図5b)に延長される。スライダ36a、35aはそれぞれに矢印Eと矢印Cとにしたがって逐次的に移動させられる。この移動は、歯付きベルト車40を停止させることによって、または、抑速ブレーキなどによって歯付きベルト車40を不動にすることによって、および、その次に駆動モータ19を起動することによって行われ、その結果として歯付きベルト47が動く。これを続けることによって、スライダ36a、35aは、図4a、4bに示すように移動させられ、さらにその後で図4c、4dに示すように移動させられる。
【0023】
図6aでは、電磁抑速ブレーキが設けられており、この電磁抑速ブレーキは、プランジャコイル54によって周りを囲まれている棒状の鉄芯53を有する。例えばプラスチック材料などで作られているブレーキシュー55が鉄芯53の一方の端面の表面上に取り付けられている。鉄芯53は、矢印Mと矢印Nの方向に移動可能である。プランジャコイル54を通って電流が流れると、図6bに示すように鉄心53が方向Mに動かされ、したがってブレーキ片55が歯付きベルト車44の軸44aの滑らかな円筒形表面に押し付けられる。この結果として、電圧がプランジャコイル54に印加されている限り、歯付きベルト車44が回転できないように固定される(停止させられる)。
【0024】
図7では、ピストン棒61を有する空気圧シリンダ60がスライダ36aに取り付けられている。空気圧シリンダ60から圧力を受けると、ピストン棒61が矢印Pの方向に動かされて、機械フレーム61に対して大きな接触圧で押し当られることになる。圧縮空気が空気圧シリンダ60に加えられている限りは、スライダ36aは、棒37aに対して相対的に移動させられることが不可能なように固定されている(停止させられている)。
【0025】
図8では、スライダ35aとスライダ36aとの間のブリッジ50として平らな金属片(プレート)が設けられており、この金属片は、例えばボルトを使用して、その金属片の一方の端部50aの領域内においてスライダ36aに固定されている。この平らな金属片は、スライダ35aに面する領域50bに、細長い穴50cを有し、この穴50cを通ってボルト62がスライダ35aのねじ山付き穴(図示していない)の中に係合することが可能である。このブリッジ50によって、スライダ35aとスライダ36aは、互いに様々な間隔を置いて、互いに釈放自在に剛結合させられることが可能である。
【0026】
図9では、図1とは対照的に、下部ローラI、II、IIIの各々は、例えばDE−OS 38 01 880に開示されているように、それ自体の駆動モータ20、52、19によってそれぞれに駆動される。モータ20は、歯付きベルト56によって下部ローラIの歯付きベルト車55を駆動し、モータ52は、歯付きベルト57によって下部ローラIIの歯付きベルト車41を駆動し、モータ19は、歯付きベルト47によって下部ローラIIIの歯付きベルト車40を駆動する。平滑案内プーリ車46に加えて、さらに別の平滑案内プーリ車51がスライダ36aに取り付けられている。エンドレス歯付きベルト47は、プーリ車44、46、40、51、43の周りを連続して通っている。歯付きベルト車44、40、43は歯付きベルト47の歯と係合しており、一方、平滑案内プーリ車46、51は歯付きベルト47の平滑な裏面と係合している。スライダ35a、36aは、ブリッジ50によって互いに釈放自在に剛結合されている。スライダ35a、36aは、ブリッジ50によって結合されていない時には、互いに無関係に移動することが可能であり、一方、ブリッジ50によって結合されている時には、一体となって移動することが可能である。
【0027】
図10では、下部ローラII、IIIのための駆動モータ19が電子制御および調整装置26と通信している。ドラフト区間VV、HV(すなわち、練条区間の長さ)の変更のための調整値が、入力装置29によって手作業で入力されることも、繊維材料の個々のカテゴリに関して記憶装置31から呼び出されることも可能である。
【0028】
繊維スライバ5が挿入されている状態で、予備ドラフト区間VVおよび/または主ドラフト区間HVにおけるニップライン間隔の調整が行われることが可能である。
【0029】
上部ローラ11−14が装着されている状態でも、移動が行われることが可能である。図1と図10は、挿入されている繊維スライバ5と、装着されている上部ローラ11−14とを示す。繊維スライバ5が挿入されており、かつ、上部ローラ11−14が装填されている状態で、スライダ35a、36aまたは下部ローラII、IIIの少なくとも一方のローラの取付台が固着を解除され、これらのスライダまたは取付台が、例えば図3a、3bと図5a、5bとに示すように、移動装置によって所望のニップライン間隔a、a′とニップライン間隔b、b′に設定され、その後で、これらのスライダ35a、36aまたは取付台が(例えば、図7に示すように)再び固着させられる。
【0030】
上部ローラ11−14が持ち上げられて分離されている状態でも、移動が行われることが可能である。上部ローラ11−14は、DE−OS 197 04 815に示されている仕方で下部ローラI、II、IIIから持ち上げられて完全に分離させられることが可能であり、上部ローラ14はピボット取付台59を中心としてポータル58上で旋回させられる。しかし、ドラフト区間VV、HVの移動中に繊維スライバ5がローラ対によって捕らえられずに、悪影響を受けることなしにローラのニップの中を通ってスライドすることを可能にするためには、上部ローラ11−14の装着を解除して、これらの上部ローラを下部ローラI−IIIから少しだけ持ち上げることで充分だろう。
【0031】
練条機の練条機構のニップライン間隔の調整を例として使用しながら、本発明を説明してきた。本発明は、同様に、例えば梳綿機、梳毛機、粗紡機、および、リング精紡機のような他の機械の練条機構の調整もその範囲内に含む。
【符号の説明】
【0032】
1 練条機
2 練条機構
3 入口
4 出口
5 繊維スライバ
6 スライバガイド
7、8 抜取りローラ
9 測定要素
11、12、13、14 上部ローラ
19 制御モータ
20 主モータ
21、22 制御装置
23、24 タコジェネレータ
26 中央コンピュータユニット
I、II、III 下部ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部ローラと下部ローラとを各々が備える少なくとも2対のローラを有する練条機構を収容するための練条機構フレームを有し、別の前記下部ローラに対する少なくとも1つの前記下部ローラの間隔を調整する手段を有し、各々の場合に前記下部ローラを収容する取付装置を有し、前記下部ローラは、プーリ車の周りをエンドレスで回転する少なくとも1つの駆動要素によって駆動されるようになっている、繊維スライバの合糸およびドラフトのための練条機構を有する練条機における装置において、少なくとも1つのプーリ車(40、41、42、43、44、45、46、51)と、前記張力がかかった駆動要素(47)は、前記取付装置(33a、33b、34a、34b、35a、35b、36a、36b)を調整するために使用され、前記プーリ車(40、41、42、43、44、45、46、51)または前記駆動要素(47)に対して加えられる移動力が、前記取付装置(33a、33b、34a、34b、35a、35b、36a、36b)のための調整移動の形に変換させられることが可能であることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記駆動要素(47)は静止しており、および、前記プーリ車(40、41、42、43、44、45、46、51)は回転させられることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プーリ車(40、41、42、43、44、45、46、51)は静止しており、および、前記駆動要素(47)は移動させられることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記プーリ車の回転または前記駆動要素の移動はスライダの調整移動の形に変換されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
少なくとも1つの案内プーリ車が各スライダ(取付台)に取り付けられており、1つまたは複数の前記ローラ駆動プーリ車すなわち案内プーリ車は、各々の場合に逐次的に、前記張力がかかった駆動要素の両面に作用することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記プーリ車の回転または前記駆動要素の移動が手作業で行われることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記スライダは直線移動可能であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記駆動要素は歯付きベルトであることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
エンドレスの可橈性歯付きベルトが存在していることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記プーリ車は歯付きベルト車を備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記プーリ車は案内プーリ車を備えることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
少なくとも1つの駆動プーリ車が設けられていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
駆動されるプーリ車が存在していることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記駆動要素は前記プーリ車の周りをループ状に巻いていることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記駆動要素と前記プーリ車は互いに係合していることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記スライダの調整のための前記プーリ車は、前記下部ローラの前記駆動プーリ車(ローラ駆動プーリ車)であることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記スライダは調整中に移動可能であることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記スライダは停止させられるようになっていることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記停止機構は釈放自在であることを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記スライダの位置に関する表示装置が存在していることを特徴とする請求項1から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
駆動モータが前記プーリ車の回転のために使用されることを特徴とする請求項1から20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記駆動モータは前記駆動要素の動作のために使用されることを特徴とする請求項1から21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記駆動モータは前記下部ローラのために使用されることを特徴とする請求項1から22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
別個の駆動モータが使用されることを特徴とする請求項1から23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
ベルトの短縮またはベルトの伸長が調整中に自動的に均等化されるようになっていることを特徴とする請求項1から24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
ベルトの均等化が2つの案内プーリ車によってスライダにおいて行われることを特徴とする請求項1から25のいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
前記下部ローラは、互いに無関係に単独で調整されるようになっていることを特徴とする請求項1から26のいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
ローラ駆動プーリ車と案内プーリ車とが前記入口ローラの前記スライダに取り付けられており、および、ローラ駆動プーリ車と案内プーリ車が前記中間ローラの前記スライダに取り付けられていることを特徴とする請求項1から27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項29】
前記駆動要素は前記入口ローラの前記スライダにおいて前記プーリ車の周りを通過し、および、鏡像の配置の形で前記中間ローラの前記スライダにおいて前記プーリ車の周りを通過することを特徴とする請求項1から28のいずれか一項に記載の装置。
【請求項30】
前記駆動要素は前記移動の前と前記移動の最中と前記移動の後とにおいて張力がかかった状態にあることを特徴とする請求項1から29のいずれか一項に記載の装置。
【請求項31】
前記駆動モータは電子制御および調節装置と通信していることを特徴とする請求項1から30のいずれか一項に記載の装置。
【請求項32】
測定要素が前記制御および調節装置に接続されていることを特徴とする請求項1から31のいずれか一項に記載の装置。
【請求項33】
前記測定要素は、繊維に関連した測定変数および/または機械装置に関連した測定変数を記録することが可能であることを特徴とする請求項1から32のいずれか一項に記載の装置。
【請求項34】
前記スライダの調整は、前記練条機が動作中である時に行われることを特徴とする請求項1から33のいずれか一項に記載の装置。
【請求項35】
前記スライダの調整は、前記練条機が休止中である時に行われることを特徴とする請求項1から34のいずれか一項に記載の装置。
【請求項36】
前記スライダの調整は、缶の交換中に行われることを特徴とする請求項1から35のいずれか一項に記載の装置。
【請求項37】
前記練条機は自己調整式であることを特徴とする請求項1から36のいずれか一項に記載の装置。
【請求項38】
前記スライダの調整は、調整変数を入力することによって行われることを特徴とする請求項1から37のいずれか一項に記載の装置。
【請求項39】
前記調整変数は手作業で入力可能であることを特徴とする請求項1から38のいずれか一項に記載の装置。
【請求項40】
前記調整変数のための記憶装置が前記制御および調節装置に接続されていることを特徴とする請求項1から39のいずれか一項に記載の装置。
【請求項41】
前記入口ローラのための前記スライダと前記中間ローラのためのスライダは、剛結合要素によって結合されるようになっていることを特徴とする請求項1から40のいずれか一項に記載の装置。
【請求項42】
前記結合要素は釈放自在に結合されていることを特徴とする請求項1から41のいずれか一項に記載の装置。
【請求項43】
前記ローラ対の互いの間隔が繊維材料なしで調整されることが可能であることを特徴とする請求項1から42のいずれか一項に記載の装置。
【請求項44】
前記ローラ対の互いの間隔が繊維材料を伴って調整されることが可能であることを特徴とする請求項1から43のいずれか一項に記載の装置。
【請求項45】
予備ドラフト区間の長さが調整可能であることを特徴とする請求項1から44のいずれか一項に記載の装置。
【請求項46】
主ドラフト区間の長さが調整可能であることを特徴とする請求項1から45のいずれか一項に記載の装置。
【請求項47】
前記予備ドラフト区間の長さと前記主ドラフト区間の長さは調整可能であることを特徴とする請求項1から46のいずれか一項に記載の装置。
【請求項48】
前記下部ローラの各々はそれ自体の関連付けられた駆動モータを有することを特徴とする請求項1から47のいずれか一項に記載の装置。
【請求項49】
前記入口下部ローラと前記中間下部ローラは1つの駆動モータによって駆動されるようになっていることを特徴とする請求項1から48のいずれか一項に記載の装置。
【請求項50】
ブレーキや停止装置などが前記静止しているプーリ車に関連付けられていることを特徴とする請求項1から49のいずれか一項に記載の装置。
【請求項51】
機械式ブレーキや停止装置などが存在していることを特徴とする請求項1から50のいずれか一項に記載の装置。
【請求項52】
電気ブレーキや停止装置などが存在していることを特徴とする請求項1から51のいずれか一項に記載の装置。
【請求項53】
前記駆動モータは自己制動モータであることを特徴とする請求項1から52のいずれか一項に記載の装置。
【請求項54】
電磁ブレーキや停止装置などが存在していることを特徴とする請求項1から53のいずれか一項に記載の装置。
【請求項55】
前記駆動モータは、フリーホイール機構などを有するさらに別の駆動機構列を駆動することを特徴とする請求項1から54のいずれか一項に記載の装置。
【請求項56】
取付装置が、前記取付台(33a、33b、34a、34b)と前記スライダ(35a、35b、36a、36b)とから成ることを特徴とする請求項1から55のいずれか一項に記載の装置。
【請求項57】
前記取付台(33a、33b、34a、34b)と前記スライダ(35a、35b、36a、36b)は、例えばボルトによって、互いに固定されていることを特徴とする請求項1から56のいずれか一項に記載の装置。
【請求項58】
前記取付台(33a、33b、34a、34b)と前記スライダ(35a、35b、36a、36b)は一体状の構造であることを特徴とする請求項1から57のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−100986(P2010−100986A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280500(P2009−280500)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【分割の表示】特願2003−321001(P2003−321001)の分割
【原出願日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【出願人】(590002323)ツリュツラー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (85)
【Fターム(参考)】