説明

調湿内装材の製造方法

【課題】自律的な室内の調湿機能を有する非焼成タイプの内装材の製造方法を提供する。
【解決手段】稚内層珪藻土(珪質頁岩)に代表される自律的調湿機能を有する無機質原料粉体に遊離のカルシウムイオンを含む粉体を均一に混合した後,コロイダルシリカ水溶液を添加することにより,焼成することなく硬化させることを特徴とする調湿内装材の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,住宅などの建造物の内装材として使用される調湿機能を有する壁材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年,快適な居住空間環境が求められている中で,室内の湿度をコントロールする,いわゆる調湿材料の開発が進められてきた。この調湿材料のうち,特許文献1に記される稚内層珪藻土(珪質頁岩)は,その優れた調湿機能により,調湿内装材として,多くの使用実績がある。
【特許文献1】特許第2652593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら,これまで使用されている調湿材の多くは,粘土などのバインダ成分を加えタイル状に成形し,800℃以上の高温で焼成するため,調湿機能の発現に寄与するメソポア領域の細孔が減少するなど材料が本来持っている調湿機能を十分に発揮できないという欠点があった。
【0004】
また,古くからある土壁の手法を応用し,調湿原料に繊維質やバインダを加え混練し,コテなどで施工する塗り壁材としての利用も数多くなされてきた。この手法は,非焼成であるものの材料強度が小さく,また,バインダなどの添加量が多く必要となるため,やはり,調湿原料本来の機能を十分に発揮できるものではなかった。
【0005】
本発明は前記の事情に鑑みてなされ,非焼成で調湿原料本来の機能を十分に発現できる内装材の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは,調湿原料の特性を十分に発揮させるために,メソポア領域の細孔を焼結により減少させることなく,また,塗膜や樹脂などで細孔を塞ぐことのない手段を鋭意検討した。その結果,無水珪酸(SiO)を水に分散させたコロイド液であるコロイダルシリカを硬化剤として使用できることを見いだした。
【0007】
ここでいうコロイダルシリカは,無水珪酸(SiO)の100mμ以下の微粒子を水に分散させたコロイド溶液で,通常,無水珪酸含有量が20〜40%のものが上市されている。
【0008】
これまでコロイダルシリカは耐火物や鋳造用のバインダ,研磨剤,あるいは,塗料組成物などに利用されてきた。特に,特許文献2に記されるように通気性撥水性塗料の材料として珪藻土の調湿性を損なわないような利用法も検討されてきた。また,特許文献3には,コロイダルシリカの分散媒である水の蒸発を利用した使い方も記されている。
【特許文献2】特開平11−106681号公報(1頁)
【特許文献3】特開平10−259322号公報(3頁,4頁)
【0009】
本発明者らは,コロイダルシリカがコンクリートの劣化抑制材として使われていることに着目した。この用途においては,コロイダルシリカが遊離のアルカリ,主にカルシウムイオンと反応してコンクリートを緻密化させる。本発明では,調湿原料である珪藻土自体に遊離のカルシウムイオンがほとんどないため,外部から遊離のカルシウムイオンを含む物質を調湿原料の調湿機能を損なわない程度に添加することで,内装材としての強度を有する製造方法を完成させた。
【発明の効果】
【0010】
本発明は,遊離カルシウムイオンを含む調湿原料に,コロイダルシリカ水溶液を硬化剤として加えることを特徴とし,これによって,従来の方法ではできなかった非焼成タイプでありながら高強度,高調湿機能を有する内装材の製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における自律的調湿機能を有する物質として,珪藻土(珪質頁岩)のほか,アロフェン,ゼオライトなどの天然無機鉱物や木炭などがあげられるが,同様の機能を有していれば,これらに限定されるものではない。前記物質を少なくとも1種類以上含む原料粉体100部に石膏に代表される遊離カルシウムイオンを含む粉体20部〜50部を均一に混合した後,硬化剤としてコロイダルシリカ水溶液を適量加えて混合した。この混合試料を適当な成形方法を用いて成形し,室温で乾燥し,調湿内装材を得た。成形方法については,押出,プレス,鋳込みなど様々な方法があるが,どの成形方法を用いてもかまわない。
【0012】
遊離カルシウムイオンを含む原料粉体として,消石灰(Ca(OH)),石膏(CaSO4・nHO,0≦n≦2)などがあげられるが,これらのうち,少なくとも1種類以上を自律的調湿機能を有する原料粉体100部に対して,20部〜50部添加する必要がある。20部未満だと内装材として必要な強度(12N/cm;JIS A 5209の7.9曲げ試験)を得ることができない。また,50部を超えると,強度は十分だが,調湿機能の低下が顕著となるため,本発明の趣旨にそぐわず適当ではない。
【実施例】
【0013】
以下に本発明による調湿内装材の製造方法についての実施例及び比較例を記載する。以下の実施例は本発明の形態や効果についての理解を深めるためのものであり,本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0014】
0.5mm以下に粉砕した稚内層珪藻土100部に石膏ボード微粉砕物20部を加え,均一に混合した後,コロイダルシリカ50%水溶液を50部添加,混合し,室内に放置してからタイル成形用金型に充填し,200kgf/cmでプレス成形した。その結果,得られた調湿材の3点曲げ強さは16N/cmであり,陶磁器質内装タイルの規格(JIS A 5209)をクリアするものであった。また,調湿機能(25℃における50%RH−90%RHの24時間毎の吸放湿量変化)も500g/mと高い値を示した。
【実施例2】
【0015】
実施例1と同様に珪藻土と石膏ボード微粉砕物を混合した後,コロイダルシリカ50%水溶液70部を添加,混合したスラリー状配合物を樹脂型に流し込み,室内に放置して硬化させた。型から取りだした後,実施例1と同様に曲げ強さと調湿機能を測定した。その結果,曲げ強さは20N/cmであり,JIS A 5209をクリアした。また,調湿機能も実施例1とほぼ同じ値が得られた。
【比較例1】
【0016】
石膏ボード微粉砕物を添加しない以外は,実施例1と同じ条件で,試料を得た。この試料の曲げ強さは8N/cmであり,JIS A 5209をクリアすることはできなかった。
【比較例2】
【0017】
実施例1と同じ製造方法で,コロイダルシリカの代わりに水を添加し,試料を得た。この試料の曲げ強さは8N/cmであり,JIS A 5209をクリアすることはできなかった。
【比較例3】
【0018】
実施例1と同じ製造方法で,石膏ボード微粉砕物の代わりに炭酸カルシウムを主成分とするホタテ貝殻微粉砕物(カルシウムイオンとして遊離していないもの)を添加し,試料を得た。この試料の曲げ強さは10N/cmであり,JIS A 5209をクリアすることはできなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
稚内層珪藻土に代表される自律的調湿機能を有する無機質原料粉体に遊離のカルシウムイオンを含む粉体を均一に混合した後,コロイダルシリカ水溶液を添加することにより,焼成することなく硬化させることを特徴とする調湿内装材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記される調湿原料粉体100部に対して,遊離カルシウムイオンを含む粉体20部〜50部を混合することを特徴とする調湿内装材の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記される遊離カルシウムイオンを含む粉体の硬化剤としてコロイダルシリカ水溶液を用いることを特徴とする調湿内装材の製造方法

【公開番号】特開2007−245132(P2007−245132A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109177(P2006−109177)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(591190955)北海道 (121)
【出願人】(503044330)有限会社加賀谷ブリック (2)
【Fターム(参考)】