説明

調湿用モジュールおよび調湿装置

【課題】透湿膜を介して液体吸収剤が空気と水分を授受するための調湿用モジュールにおいて、液体吸収剤の温度変化を抑えることによって調湿用モジュールの小型化を図る。
【解決手段】調湿用モジュール(40)は、仕切り部材(45)と伝熱部材(46)とを備えている。仕切り部材(45)は、空気通路(42)と吸収剤通路(41)を仕切っている。仕切り部材(45)の一部または全部は、透湿膜(62)によって構成されている。吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤は、透湿膜(62)を介して、空気通路(42)を流れる空気と水分の授受を行う。伝熱部材(46)は、吸収剤通路(41)に設けられ、液体吸収剤に囲まれる。伝熱部材(46)を流れる熱媒体は、吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤と熱交換を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吸収剤によって空気の湿度調節を行うために用いられる調湿用モジュールと、それを備えた調湿装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、塩化リチウム水溶液等の液体吸収剤と、液体吸収剤は透過させずに水蒸気だけを透過させる透湿膜とを備えた調湿装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、液体吸収剤が循環する循環路と、冷凍サイクルを行う冷凍装置とを備えた調湿装置が開示されている(特許文献1の段落〔0031〕〜〔0033〕と図8を参照)。この調湿装置は、除湿部と再生部とを備えている。除湿部では、ファン11の設けられた除湿側の空気通路が、透湿膜13によって液体吸収剤の通路から仕切られる。一方、再生部では、ファン10の設けられた再生側の空気通路が、透湿膜13によって液体吸収剤の通路から仕切られる。また、この調湿装置では、除湿部から再生部へ向かって液体吸収剤が流れる通路に冷凍装置の凝縮器18が配置され、再生部から除湿部へ向かって液体吸収剤が流れる通路に冷凍装置の蒸発器20が配置されている。
【0004】
特許文献1の調湿装置において、液体吸収剤は、除湿部と再生部の間を循環する。除湿部において空気中の水蒸気を吸収した液体吸収剤は、凝縮器18において加熱された後に再生部へ流入する。再生部では、液体吸収剤が空気へ水蒸気を放出する。再生部から流出した液体吸収剤は、蒸発器20において冷却された後に除湿部へ流入し、再び空気から水分を吸収する。
【0005】
また、特許文献2には、透湿性シート10と液体吸収剤とを用いて空気を除湿するための調湿エレメント7が開示されている(特許文献2の段落〔0034〕〔0035〕〔0042〕〔0051〕と図1〜5を参照)。この調湿エレメント7は、透湿性エレメント5と熱源体6とを備えている。透湿性エレメント5では、一方の面に透湿性シート10が、他方の面に金属製シート11がそれぞれ配置された袋に、多孔質部材12が封入されている。熱源体6は、冷媒が流れる配管15と、配管15に接合された平板状のフィン部材16とを備えている。調湿エレメント7では、透湿性エレメント5の金属製シート11が熱源体6のフィン部材16に接合される。
【0006】
特許文献2の調湿エレメント7において、多孔質部材12に液体吸収剤を浸透させると、透湿性シート10を透過した水蒸気が液体吸収剤に吸収され、その結果、透湿性シート10の外側を流れる空気が除湿される。その際、多孔質部材12に保持された液体吸収剤は、配管15を流れる冷媒によって冷却される。
【0007】
また、特許文献3には、透湿膜を利用した蒸発冷却器が開示されている。この蒸発冷却器では、流入空気の通路と、液体乾燥剤(液体吸収剤)の通路と、冷却剤(水)の通路と、排出空気の通路とが順に積層されている。流入空気の通路と液体乾燥剤の通路は、透湿膜112で仕切られ、冷却剤の通路と排出空気の通路は、透湿膜118で仕切られる。また、液体乾燥剤の通路と冷却剤の通路は、水蒸気を透過しない分離壁114で仕切られる。流入空気は、液体乾燥剤によって除湿される。冷却剤である水は、その一部が蒸発して排出空気へ放出されることによって、その温度が低下する。また、液体乾燥剤と冷却剤の間では熱交換が行われる。
【0008】
また、特許文献4には、ゼオライト等の吸着剤と冷凍装置を備えた調湿装置が開示されている。この調湿装置が備える吸着ユニット4では、吸着剤23が充填されたメッシュ容器22に冷媒管21が配置され、冷媒管21を流れる冷媒によって吸着剤23が加熱され又は冷却される(引用文献4の段落〔0029〕〔0030〕と図3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平05−146627号公報
【特許文献2】特開2003−232546号公報
【特許文献3】特表2011−511244号公報
【特許文献4】特開平08−189667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、特許文献1に開示された調湿装置では、冷媒によって予め加熱され又は冷却された液体吸収剤が、透湿膜を介して空気と水分の授受を行う。一方、水蒸気が液体吸収剤に吸収される過程では、吸収熱が生じる。また、液体吸収剤が再生される過程では、液体である水が液体吸収剤から熱を奪って気化する。このため、特許文献1の調湿装置では、液体吸収剤に水蒸気が吸収される過程において液体吸収剤の温度が次第に上昇し、液体吸収剤に水蒸気が吸収されにくくなってゆく。また、この調湿装置では、液体吸収剤から水蒸気が放出される過程において液体吸収剤の温度が次第に低下し、液体吸収剤から水蒸気が放出されにくくなってゆく。従って、予め加熱され又は冷却された液体吸収剤が透湿膜を介して空気と水分の授受を行う従来の調湿装置では、充分な調湿性能を得ようとすると、透湿膜を備えた除湿部や再生部が大型化するという問題があった。
【0011】
一方、特許文献2の調湿エレメントや特許文献3の蒸発冷却器では、空気中の水分を吸収しつつある液体吸収剤が、冷媒や水によって冷却される。しかし、特許文献2の調湿エレメントでは、液体吸収剤と冷媒の間にフィン部材や金属製シート等の多くの部材が介在しており、液体吸収剤と冷媒の間における熱抵抗が大きくなる。また、特許文献3の蒸発冷却器では、冷却剤である水の通路の片面だけが液体吸収剤の通路と接しており、水と液体吸収剤が互いに熱交換するための伝熱面の面積を充分に確保できない。
【0012】
このように、液体吸収剤を用いた従来の調湿装置では、空気と水分を授受する過程における液体吸収剤の温度変化を充分に抑えることができず、その結果、透湿膜を介して液体吸収剤が空気と水分を授受するための部材を充分に小型化することができなかった。
【0013】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、透湿膜を介して液体吸収剤が空気と水分を授受するための調湿用モジュールにおいて、液体吸収剤の温度変化を抑えることによって調湿用モジュールの小型化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明は、空気を液体吸収剤によって加湿し又は除湿するための調湿用モジュールを対象とする。そして、上記液体吸収剤は透過させずに水蒸気を透過させる透湿膜(62)によって一部または全部が構成され、空気が流れる空気通路(42)と液体吸収剤が流れる吸収剤通路(41)を仕切る仕切り部材(45)と、加熱用または冷却用の熱媒体が流れる熱媒体通路(43)を形成し、上記吸収剤通路(41)に設置されて周囲を流れる上記液体吸収剤を上記熱媒体と熱交換させる伝熱部材(46)とを備えるものである。
【0015】
第1の発明の調湿用モジュール(40)では、空気通路(42)と吸収剤通路(41)が仕切り部材(45)によって仕切られる。仕切り部材(45)の一部または全部は、透湿膜(62)によって構成される。また、この調湿用モジュール(40)では、熱媒体通路(43)を形成する伝熱部材(46)が、吸収剤通路(41)に設置される。伝熱部材(46)は、熱媒体通路(43)の熱媒体を吸収剤通路(41)の液体吸収剤と熱交換させる。この伝熱部材(46)は、吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤に囲まれている。従って、熱媒体通路(43)を流れる熱媒体が持つ温熱または冷熱は、その殆ど全てが液体吸収剤に付与される。
【0016】
先ず、第1の発明の調湿用モジュール(40)において、空気通路(42)の空気が除湿される過程を説明する。空気通路(42)の空気に含まれる水蒸気は、その一部が透湿膜(62)を透過して液体吸収剤に吸収される。液体吸収剤が水蒸気を吸収する過程では、吸収熱が生じる。その際、熱媒体通路(43)を冷却用の熱媒体が流れると、吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤は、熱媒体通路(43)の熱媒体によって冷却される。上述したように、伝熱部材(46)は、吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤に囲まれている。このため、熱媒体通路(43)を通過する間に熱媒体が吸収する熱は、その殆ど全てが液体吸収剤から放出された熱となる。従って、液体吸収剤が水蒸気を吸収する過程で吸収熱が生じても、吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤の温度上昇が抑えられる。
【0017】
次に、第1の発明の調湿用モジュール(40)において、空気通路(42)の空気が加湿される過程を説明する。熱媒体通路(43)を加熱用の熱媒体が流れると、吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤は、熱媒体通路(43)の熱媒体によって加熱される。加熱された液体吸収剤に含まれる水の一部は、周囲から熱を奪って気化し、水蒸気となって透湿膜(62)を透過する。透湿膜(62)を透過した水蒸気は、空気通路(42)を流れる空気に付与される。上述したように、伝熱部材(46)は、吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤に囲まれている。このため、熱媒体通路(43)を通過する間に熱媒体が放出する熱は、その殆ど全てが液体吸収剤に与えられる。従って、液体吸収剤に含まれる水が気化する過程で周囲から熱を奪っても、吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤の温度低下が抑えられる。
【0018】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記仕切り部材(45)では、平面状に成形された複数の上記透湿膜(62)が、互いに向かい合う姿勢で所定の間隔をおいて配列されており、上記透湿膜(62)の配列方向に上記空気通路(42)と上記吸収剤通路(41)とが交互に形成されるものである。
【0019】
第2の発明では、平面状に形成された複数の透湿膜(62)が仕切り部材(45)に設けられる。複数の透湿膜(62)は、互いに所定の間隔をおいて配列される。そして、隣り合った透湿膜(62)の間に、空気通路(42)または吸収剤通路(41)が形成される。つまり、この発明の調湿用モジュール(40)では、平面状の透湿膜(62)を挟んで、空気通路(42)と吸収剤通路(41)が互いに隣り合っている。
【0020】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記伝熱部材(46)は、上記吸収剤通路(41)を挟んで隣り合う上記透湿膜(62)の間に配置されて上記熱媒体が流れる伝熱管(70)を備えるものである。
【0021】
第3の発明の伝熱部材(46)は、伝熱管(70)を備えている。伝熱管(70)は、熱媒体が流れる熱媒体通路(43)を形成する。この伝熱管(70)は、隣り合う透湿膜(62)の間に配置される。吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤は、吸収剤通路(41)に隣接する透湿膜(62)を介して、空気通路(42)の空気と水分の授受を行う。その際、吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤は、伝熱管(70)を流れる熱媒体によって加熱され又は冷却される。
【0022】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記伝熱部材(46)は、上記伝熱管(70)を複数備えると共に、各伝熱管(70)の一端に接続する第1ヘッダ(71)と、各伝熱管(70)の他端に接続する第2ヘッダ(72)とを備えるものである。
【0023】
第4の発明の伝熱部材(46)は、伝熱管(70)を複数備えている。各伝熱管(70)は、両側を透湿膜(62)に挟まれた吸収剤通路(41)に配置される。また、各伝熱管(70)は、それぞれの一端が第1ヘッダ(71)に接続され、それぞれの他端が第2ヘッダ(72)に接続される。例えば、第1ヘッダ(71)から第2ヘッダ(72)へ向かって熱媒体が流れる場合、第1ヘッダ(71)へ流入した熱媒体は、複数の伝熱管(70)へ分かれて流入し、その後に第2ヘッダ(72)において合流する。
【0024】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記伝熱部材(46)を複数備え、上記各伝熱部材(46)では、複数の上記伝熱管(70)が互いに平行となる姿勢で一列に配置され、複数の上記伝熱部材(46)が互いに向かい合うように配置され、隣り合う二つの上記伝熱部材(46)は、一方の伝熱部材(46)の伝熱管(70)と他方の伝熱部材(46)の伝熱管(70)とが異なる上記吸収剤通路(41)に配置されるものである。
【0025】
第5の発明では、複数の上記伝熱部材(46)が、互いに向かい合うように設置される。また、隣り合う二つの伝熱部材(46)のうちの一方に設けられた伝熱管(70)は、隣り合う二つの伝熱部材(46)のうちの他方に設けられた伝熱管(70)とは別の吸収剤通路(41)に設置される。従って、この発明の調湿用モジュール(40)では、ある伝熱部材(46)の伝熱管(70)を一部の吸収剤通路(41)に配置し、それとは別の伝熱部材(46)の伝熱管(70)を残りの吸収剤通路(41)に配置することが可能となる。
【0026】
第6の発明は、上記第3又は第4の発明において、上記伝熱管(70)は、その内部空間が複数の流路に仕切られた多穴扁平管であるものである。
【0027】
第6の発明では、伝熱管(70)が多穴扁平管によって構成される。この発明の伝熱部材(46)では、伝熱管(70)を構成する多穴扁平管の流路が熱媒体通路(43)を構成する。
【0028】
第7の発明は、上記第1の発明において、上記伝熱部材(46)は、上記熱媒体が流れる伝熱管(70)を備え、上記仕切り部材(45)は、上記伝熱管(70)を囲っており、上記仕切り部材(45)の内側が上記吸収剤通路(41)となり、該仕切り部材(45)の外側が上記空気通路(42)となっているものである。
【0029】
第7の発明では、伝熱部材(46)が伝熱管(70)を備えている。この発明において、仕切り部材(45)の内側は、液体吸収剤が流れる吸収剤通路(41)となっている。伝熱管(70)は、仕切り部材(45)によって囲われている。従って、伝熱管(70)は、仕切り部材(45)の内側の吸収剤通路(41)に位置している。仕切り部材(45)の外側は、空気が流れる空気通路(42)となっている。なお、一つの仕切り部材(45)によって囲われる伝熱管(70)の本数は、一本でもよいし複数本であってもよい。
【0030】
第8の発明は、上記第7の発明において、上記伝熱管(70)は、蛇行するように形成され、上記仕切り部材(45)は、上記伝熱管(70)に沿って蛇行するように形成されるものである。
【0031】
第8の発明では、伝熱部材(46)の伝熱管(70)と、その周囲を囲う仕切り部材(45)とが、共に蛇行する形状となる。
【0032】
第9の発明は、上記第7の発明において、上記仕切り部材(45)は、上記伝熱管(70)に沿って延びる管状に形成されるものである。
【0033】
第9の発明では、伝熱部材(46)の伝熱管(70)と、その周囲を囲う仕切り部材(45)とによって二重管が形成される。
【0034】
第10の発明は、調湿装置を対象とし、上記第1〜第9のいずれか一つの発明の調湿用モジュール(40)と、上記調湿用モジュール(40)の吸収剤通路(41)に接続されて該吸収剤通路(41)へ液体吸収剤を供給する吸収剤回路(30)と、上記調湿用モジュール(40)の熱媒体通路(43)に接続されて該熱媒体通路(43)へ加熱用または冷却用の熱媒体を供給する熱媒体回路(35)と、上記調湿用モジュール(40)の空気通路(42)へ空気を供給するためのファン(27,28)とを備え、上記調湿用モジュール(40)の空気通路(42)を流れる空気を除湿し又は加湿するものである。
【0035】
第10の発明の調湿装置(10)は、第1〜第9のいずれか一つの発明の調湿用モジュール(40)を備える。吸収剤回路(30)は、調湿用モジュール(40)の吸収剤通路(41)に接続し、吸収剤通路(41)へ液体吸収剤を供給する。熱媒体回路(35)は、調湿用モジュール(40)の熱媒体通路(43)に接続し、熱媒体通路(43)へ熱媒体を供給する。
【0036】
第10の発明の調湿装置(10)において、熱媒体回路(35)が調湿用モジュール(40)の熱媒体通路(43)へ加熱用の熱媒体を供給すると、調湿用モジュール(40)の空気通路(42)を流れる空気が加湿される。つまり、調湿用モジュール(40)では、吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤が熱媒体によって加熱され、液体吸収剤から放出された水蒸気が空気通路(42)の空気に付与される。一方、熱媒体回路(35)が調湿用モジュール(40)の熱媒体通路(43)へ冷却用の熱媒体を供給すると、調湿用モジュール(40)の空気通路(42)を流れる空気が除湿される。つまり、調湿用モジュール(40)では、空気中の水蒸気が液体吸収剤に吸収され、その際に生じた吸収熱が熱媒体通路(43)の冷却用の熱媒体に吸収される。
【発明の効果】
【0037】
本発明の調湿用モジュール(40)では、吸収剤通路(41)に伝熱部材(46)が配置され、この伝熱部材(46)が熱媒体通路(43)を形成する。伝熱部材(46)は、吸収剤通路(41)に設置されて液体吸収剤に囲まれている。このため、熱媒体通路(43)を流れる加熱用の熱媒体から放出される熱は、ほぼ全てが吸収剤通路(41)の液体吸収剤に付与される。また、熱媒体通路(43)を流れる冷却用の熱媒体が吸収する熱は、ほぼ全てが吸収剤通路(41)の液体吸収剤から吸収した熱となる。従って、本発明によれば、液体吸収剤が空気と水分を授受する際における液体吸収剤の温度変化を抑えることができ、その結果、調湿用モジュール(40)の小型化を図ることができる。また、本発明によれば、加熱用の熱媒体の温熱を無駄なく液体吸収剤の加熱に利用でき、冷却用の熱媒体の冷熱を無駄なく液体吸収剤の冷却に利用できるため、調湿用モジュール(40)において液体吸収剤に吸湿させ又は放湿させるために必要なエネルギを削減できる。
【0038】
特に、上記第3の発明では、伝熱部材(46)の伝熱管(70)が、吸収剤通路(41)を挟んで隣り合う透湿膜(62)の間に配置される。従って、この発明によれば、液体吸収剤が空気と水分の授受を行う透湿膜(62)の近くに伝熱管(70)を配置することができ、空気と水分の授受を行っている液体吸収剤を、伝熱管(70)を流れる熱媒体と確実に熱交換させることができる。
【0039】
また、上記第7の発明では、伝熱管(70)が仕切り部材(45)によって囲まれ、仕切り部材(45)の内側が液体吸収剤を流すための吸収剤通路(41)となっている。つまり、伝熱部材(46)の伝熱管(70)と、伝熱管(70)の周囲を囲う仕切り部材(45)との間に、吸収剤通路(41)が形成される。また、この発明では、仕切り部材(45)の一部または全部が透湿膜(62)によって構成される。従って、この発明によれば、液体吸収剤が空気と水分の授受を行う透湿膜(62)の近くに伝熱管(70)を配置することができ、空気と水分の授受を行っている液体吸収剤を、伝熱管(70)を流れる熱媒体と確実に熱交換させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、実施形態1の調湿装置の概略構造を示す平面図である。
【図2】図2は、実施形態1の調湿装置に設けられた吸収剤回路と冷媒回路の構成を示す回路図である。
【図3】図3は、実施形態1の調湿用モジュールをその一部を省略して図示した概略斜視図である。
【図4】図4は、実施形態1の調湿用モジュールの水平断面を示す概略断面図である。
【図5】図5は、実施形態1の調湿用モジュールをその一部を省略して図示した概略斜視図である。
【図6】図6は、実施形態1の調湿用モジュールをその一部を省略して図示した概略の分解斜視図である。
【図7】図7は、実施形態1の調湿用モジュールに設けられた内側部材を示す図であって、(A)は概略斜視図であり、(B)はその水平断面を示す概略断面図である。
【図8】図8は、実施形態1の変形例の調湿用モジュールの水平断面を示す概略断面図である。
【図9】図9は、実施形態2の調湿用モジュールの概略斜視図である。
【図10】図10は、実施形態2の調湿用モジュールを示す図であって、(A)は概略正面図であり、(B)は(A)のX−X断面を示す概略断面図である。
【図11】図11は、実施形態2の調湿用モジュールの製造過程で形成される半製品を示す図であって、(A)は概略の分解斜視図であり、(B)は概略の平面図である。
【図12】図12は、実施形態2の変形例の調湿用モジュールの製造過程で形成される半製品を示す概略斜視図である。
【図13】図13は、実施形態3の調湿用モジュールの概略斜視図である。
【図14】図14は、実施形態3の調湿用モジュールの鉛直断面を示す概略断面図である。
【図15】図15は、図14のY−Y断面を示す概略断面図である。
【図16】図16は、実施形態3の変形例1の二重管の構造を示す図であって、(A)は二重管の概略斜視図であり、(B)は伝熱管の概略斜視図である。
【図17】図17は、実施形態3の変形例1の二重管の製造過程を示す断面図である。
【図18】図18は、実施形態3の変形例2の二重管の製造過程を示す断面図である。
【図19】図19は、実施形態3の変形例3の二重管の構造を示す断面図である。
【図20】図20は、実施形態3の変形例4の二重管の構造を示す図であって、(A)は二重管の概略斜視図であり、(B)は伝熱管の概略斜視図である。
【図21】図21は、実施形態4の調湿用モジュールを示す図であって、(A)は調湿用モジュールの概略斜視図であり、(B)は膜ユニットの概略斜視図である。
【図22】図22は、実施形態4の変形例の調湿用モジュールを示す図であって、(A)は調湿用モジュールの概略斜視図であり、(B)は膜ユニットの概略斜視図である。
【図23】図23は、その他の実施形態の調湿装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0042】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。本実施形態は、空気の除湿と加湿を行う調湿装置(10)である。
【0043】
−調湿装置の構成−
本実施形態の調湿装置(10)について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0044】
本実施形態の調湿装置(10)は、ケーシング(20)を備えている。このケーシング(20)には、吸収剤回路(30)と、冷媒回路(35)と、給気ファン(27)と、排気ファン(28)とが収容されている。
【0045】
図1に示すように、ケーシング(20)は、直方体の箱状に形成されている。ケーシング(20)では、その一方の端面に外気吸込口(21)と排気口(24)とが形成され、その他方の端面に内気吸込口(23)と給気口(22)とが形成されている。ケーシング(20)の内部空間は、給気通路(25)と排気通路(26)に仕切られている。給気通路(25)は、外気吸込口(21)及び給気口(22)に連通している。給気通路(25)には、給気ファン(27)と、第1の調湿用モジュールである給気側モジュール(40a)とが配置されている。一方、排気通路(26)は、内気吸込口(23)及び排気口(24)に連通している。排気通路(26)には、排気ファン(28)と、第2の調湿用モジュールである排気側モジュール(40b)とが配置されている。
【0046】
図2に示すように、吸収剤回路(30)は、給気側モジュール(40a)と、排気側モジュール(40b)と、ポンプ(31)とが接続された閉回路である。この吸収剤回路(30)では、ポンプ(31)の吐出側が排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)の入口に、排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)の出口が給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)の入口に、給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)の出口がポンプ(31)の吸入側に、それぞれ接続されている。また、吸収剤回路(30)には、液体吸収剤として塩化リチウム水溶液が充填されている。
【0047】
冷媒回路(35)は、圧縮機(36)と、四方切換弁(37)と、膨張弁(38)と、給気側モジュール(40a)と、排気側モジュール(40b)とが接続された閉回路である。この冷媒回路(35)では、圧縮機(36)の吐出側が四方切換弁(37)の第1のポートに、圧縮機(36)の吸入側が四方切換弁(37)の第2のポートに、それぞれ接続される。また、この冷媒回路(35)では、四方切換弁(37)の第3のポートから第4のポートへ向かって順に、排気側モジュール(40b)の伝熱部材(46b)と、膨張弁(38)と、給気側モジュール(40a)の伝熱部材(46a)とが配置されている。冷媒回路(35)は、充填された冷媒を循環させることによって、蒸気圧縮冷凍サイクルを行う。そして、冷媒回路(35)は、給気側モジュール(40a)及び排気側モジュール(40b)に対して、冷媒を熱媒体として供給する。
【0048】
四方切換弁(37)は、第1状態(図2に実線で示す状態)と、第2状態(同図に破線で示す状態)とに切り換わる。第1状態の四方切換弁(37)では、第1のポートが第3のポートに連通し、第2のポートが第4のポートに連通する。一方、第2状態の四方切換弁(37)では、第1のポートが第4のポートに連通し、第2のポートが第3のポートに連通する。
【0049】
−調湿用モジュールの構成−
給気側モジュール(40a)と排気側モジュール(40b)は、何れも調湿用モジュール(40)によって構成されている。ここでは、調湿用モジュール(40)について、図3〜図7を適宜参照しながら説明する。
【0050】
調湿用モジュール(40)は、液体吸収剤によって空気の湿度を調節するためのものである。この調湿用モジュール(40)は、一つの外側ケース(50)と、複数の内側部材(60)と、二つの伝熱部材(46)とを備えている。内側部材(60)及び伝熱部材(46)は、外側ケース(50)に収容されている。また、外側ケース(50)及び内側部材(60)は、空気が流れる空気通路(42)と液体吸収剤が流れる吸収剤通路(41)を仕切る仕切り部材(45)を構成している。
【0051】
図3に示すように、外側ケース(50)は、中空の直方体状に形成されており、底板(51)と、天板(52)と、一対の側板(53,54)と、一対の端板(55)とを備えている。なお、図3は、天板(52)と手前側の端板(55)とを省略した状態を示している。各側板(53,54)には、側板(53,54)を厚さ方向に貫通する通風孔(56)が複数形成されている。各通風孔(56)は、縦長の長方形状となっている。図4にも示すように、複数の通風孔(56)は、側板(53,54)の長手方向に一定の間隔で一列に配置されている。
【0052】
図5及び図7にも示すように、内側部材(60)は、両端が開口した中空の直方体状に形成されている。この内側部材(60)は、支持枠(61)と、透湿膜(62)とを備えている。支持枠(61)は、その下面と上面が板状に形成されている。つまり、支持枠(61)は、その下面と上面が閉塞されている。透湿膜(62)は、支持枠(61)の側面を覆うように設けられている。従って、内側部材(60)に設けられた透湿膜(62)は、平面状となっている。透湿膜(62)は、液体吸収剤を透過させずに水蒸気を透過させる膜である。この透湿膜(62)としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン、四ふっ化エチレン樹脂)等のふっ素樹脂から成る疎水性多孔膜を用いることができる。
【0053】
外側ケース(50)には、各側板(53,54)に形成された通風孔(56)と同数の内側部材(60)が収容されている。外側ケース(50)の内部において、内側部材(60)は、それぞれの側面を覆う透湿膜(62)が互いに向かい合う姿勢で、外側ケース(50)の長手方向に一列に配列されている。
【0054】
図4に示すように、内側部材(60)の端面の開口部(63)と、外側ケース(50)の側板(53,54)の通風孔(56)とは、形状と大きさが一致している。内側部材(60)は、開口部(63)が側板(53,54)の通風孔(56)と重なるように、外側ケース(50)に固定される。つまり、図4において、内側部材(60)の支持枠(61)の左端面は、左側に配置された側板(53)の内側面における通風孔(56)の周縁部に接合される。また、同図において、内側部材(60)の支持枠(61)の右端面は、右側に配置された側板(54)の内側面における通風孔(56)の周縁部に接合される。
【0055】
図4に示すように、内側部材(60)の内側の空間は、外側ケース(50)の通風孔(56)を介して外部と連通しており、空気が流れる空気通路(42)となっている。空気通路(42)では、調湿装置(10)の給気通路(25)又は排気通路(26)を流れる空気が流通する。また、内側部材(60)の外側で且つ外側ケース(50)の内側の空間は、液体吸収剤が流れる吸収剤通路(41)となっている。吸収剤通路(41)では、吸収剤回路(30)を循環する液体吸収剤が流通する。従って、透湿膜(62)は、その表面が空気通路(42)を流れる空気と接触し、その裏面が吸収剤回路(30)を流れる液体吸収剤と接触する。
【0056】
上述したように、外側ケース(50)に収容された複数の内側部材(60)は、それぞれの側面を覆う透湿膜(62)が互いに向かい合う姿勢で一列に並んでいる。このため、外側ケース(50)と内側部材(60)によって構成された本実施形態の仕切り部材(45)では、平面状の透湿膜(62)が互いに向かい合う姿勢で一定の間隔をおいて配置されており、透湿膜(62)の配列方向(本実施形態では外側ケース(50)の長手方向)に空気通路(42)と吸収剤通路(41)とが交互に形成されている。なお、吸収剤通路(41)において、両側を透湿膜(62)に挟まれた部分は、内側部材(60)の上側と下側の部分を介して互いに連通している。
【0057】
図6に示すように、伝熱部材(46)は、複数本の伝熱管(70)と、一つの第1ヘッダ(71)と、一つの第2ヘッダ(72)とを備えている。
【0058】
各伝熱管(70)は、アルミニウム製の多穴扁平管である(図4を参照)。即ち、伝熱管(70)は、断面が扁平な長円状に形成され、その内部空間が複数の流路に仕切られている。各伝熱管(70)に形成された流路は、冷媒回路(35)の冷媒が流れる熱媒体通路(43)となっている。伝熱部材(46)において、複数の伝熱管(70)は、それぞれの平坦面が互いに向かい合う姿勢で、互いに一定の間隔をおいて一列に配置されている。また、各伝熱管(70)は、それぞれの軸方向が上下方向となっている。
【0059】
第1ヘッダ(71)及び第2ヘッダ(72)のそれぞれは、両端が閉塞された円管状に形成されている。第1ヘッダ(71)は、一列に配置された各伝熱管(70)の上端に接合されている。第2ヘッダ(72)は、一列に配置された各伝熱管(70)の下端に接合されている。第1ヘッダ(71)及び第2ヘッダ(72)の内部空間は、伝熱管(70)内に形成された流路と連通しており、この伝熱管(70)内の流路と共に熱媒体通路(43)を構成している。
【0060】
外側ケース(50)内において、二つの伝熱部材(46)は、その一方が第1の側板(53)寄りに配置され、他方が第2の側板(54)寄りに配置されている。また、各伝熱部材(46)の伝熱管(70)は、隣り合う内側部材(60)の間に一本ずつ配置されている。従って、本実施形態の調湿用モジュール(40)では、隣り合う内側部材(60)の間に、一方の伝熱部材(46)の伝熱管(70)と、他方の伝熱部材(46)の伝熱管(70)とが配置されている。上述したように、隣り合う内側部材(60)の間の空間は、吸収剤通路(41)となっている。従って、伝熱部材(46)の伝熱管(70)は、吸収剤通路(41)に配置され、その表面が吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤と接触する。つまり、伝熱部材(46)の伝熱管(70)は、吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤に囲まれている。
【0061】
調湿用モジュール(40)の各伝熱部材(46)は、冷媒回路(35)に接続される。調湿用モジュール(40)によって構成された給気側モジュール(40a)では、各伝熱部材(46)の第1ヘッダ(71)が四方切換弁(37)の第4のポートに接続され、各伝熱部材(46)の第2ヘッダ(72)が膨張弁(38)に接続される。一方、調湿用モジュール(40)によって構成された排気側モジュール(40b)では、各伝熱部材(46)の第1ヘッダ(71)が四方切換弁(37)の第3のポートに接続され、各伝熱部材(46)の第2ヘッダ(72)が膨張弁(38)に接続される。
【0062】
−調湿装置の運転動作−
調湿装置(10)の運転動作を説明する。調湿装置(10)は、室内への給気を除湿する除湿運転と、室内への給気を加湿する加湿運転とを選択的に実行する。
【0063】
〈除湿運転〉
調湿装置(10)の除湿運転について、図2を参照しながら説明する。
【0064】
除湿運転時には、冷媒回路(35)の四方切換弁(37)が第1状態(即ち、図2に実線で示す状態)に設定される。また、除湿運転時には、圧縮機(36)が運転され、膨張弁(38)の開度が適宜調節される。そして、除湿運転時の冷媒回路(35)では、冷媒が循環することによって蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。また、除湿運転時の冷媒回路(35)では、排気側モジュール(40b)の伝熱部材(46b)が凝縮器となり、給気側モジュール(40a)の伝熱部材(46a)が蒸発器となる。
【0065】
冷媒回路(35)における冷媒の流れを詳細に説明する。圧縮機(36)から吐出された高温高圧のガス冷媒は、四方切換弁(37)を通過し、加熱用の熱媒体として排気側モジュール(40b)へ供給される。排気側モジュール(40b)の伝熱部材(46b)へ流入した冷媒は、吸収剤通路(41b)を流れる液体吸収剤へ放熱して凝縮し、その後に排気側モジュール(40b)から流出する。排気側モジュール(40b)から流出した冷媒は、膨張弁(38)を通過する際に減圧されて気液二相状態の低圧冷媒となり、冷却用の熱媒体として給気側モジュール(40a)へ供給される。給気側モジュール(40a)の伝熱部材(46a)へ流入した冷媒は、吸収剤通路(41a)を流れる液体吸収剤から吸熱して蒸発し、その後に給気側モジュール(40a)から流出する。給気側モジュール(40a)から流出した冷媒は、四方切換弁(37)を通過し、圧縮機(36)へ吸入される。圧縮機(36)は、吸入した冷媒を圧縮してから吐出する。
【0066】
また、除湿運転時には、吸収剤回路(30)のポンプ(31)が運転され、吸収剤回路(30)内を液体吸収剤が循環する。
【0067】
ポンプ(31)から吐出された液体吸収剤は、排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)へ流入する。この吸収剤通路(41b)へ流入した液体吸収剤は、伝熱部材(46b)を流れる冷媒によって加熱される。一方、排気側モジュール(40b)の空気通路(42)では、排気(即ち、室外へ排出される室内空気)が流れている。排気側モジュール(40b)では、液体吸収剤に含まれる水の一部が水蒸気となって透湿膜(62)を透過し、空気通路(42)を流れる排気に付与される。排気に付与された水蒸気は、排気と共に室外へ排出される。このように、排気側モジュール(40b)では、吸収剤通路(41b)の液体吸収剤に含まれる水の一部が、透湿膜(62)を透過して排気に付与される。従って、排気側モジュール(40b)では、吸収剤通路(41b)を通過する間に液体吸収剤の濃度が次第に上昇してゆく。
【0068】
排気側モジュール(40b)から流出した高濃度の液体吸収剤は、給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)へ流入する。この吸収剤通路(41a)へ流入した液体吸収剤は、伝熱部材(46a)を流れる冷媒によって冷却される。一方、給気側モジュール(40a)の空気通路(42)では、給気(即ち、室内へ供給される室外空気)が流れている。給気側モジュール(40a)では、給気に含まれる水蒸気が透湿膜(62)を透過し、吸収剤通路(41a)を流れる液体吸収剤に吸収される。給気側モジュール(40a)の空気通路(42)を通過する間に除湿された給気は、その後に室内へ供給される。このように、給気側モジュール(40a)では、空気通路(42)の給気に含まれる水蒸気の一部が、透湿膜(62)を透過して液体吸収剤に吸収される。従って、給気側モジュール(40a)では、吸収剤通路(41a)を通過する間に液体吸収剤の濃度が次第に低下してゆく。給気側モジュール(40a)から流出した低濃度の液体吸収剤は、ポンプ(31)へ吸い込まれ、排気側モジュール(40b)へ向けて送り出される。
【0069】
〈加湿運転〉
調湿装置(10)の加湿運転について、図2を参照しながら説明する。
【0070】
加湿運転時には、冷媒回路(35)の四方切換弁(37)が第2状態(即ち、図2に破線で示す状態)に設定される。また、加湿運転時には、圧縮機(36)が運転され、膨張弁(38)の開度が適宜調節される。そして、加湿運転時の冷媒回路(35)では、冷媒が循環することによって蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。また、加湿運転時の冷媒回路(35)では、給気側モジュール(40a)の伝熱部材(46a)が凝縮器となり、排気側モジュール(40b)の伝熱部材(46b)が蒸発器となる。
【0071】
冷媒回路(35)における冷媒の流れを詳細に説明する。圧縮機(36)から吐出された高温高圧のガス冷媒は、四方切換弁(37)を通過し、加熱用の熱媒体として給気側モジュール(40a)へ供給される。給気側モジュール(40a)の伝熱部材(46a)へ流入した冷媒は、吸収剤通路(41a)を流れる液体吸収剤へ放熱して凝縮し、その後に給気側モジュール(40a)から流出する。給気側モジュール(40a)から流出した冷媒は、膨張弁(38)を通過する際に減圧されて気液二相状態の低圧冷媒となり、冷却用の熱媒体として排気側モジュール(40b)へ供給される。排気側モジュール(40b)の伝熱部材(46b)へ流入した冷媒は、吸収剤通路(41b)を流れる液体吸収剤から吸熱して蒸発し、その後に排気側モジュール(40b)から流出する。排気側モジュール(40b)から流出した冷媒は、四方切換弁(37)を通過し、圧縮機(36)へ吸入される。圧縮機(36)は、吸入した冷媒を圧縮してから吐出する。
【0072】
また、加湿運転時には、吸収剤回路(30)のポンプ(31)が運転され、吸収剤回路(30)内を液体吸収剤が循環する。
【0073】
ポンプ(31)から吐出された液体吸収剤は、排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)へ流入する。この吸収剤通路(41b)へ流入した液体吸収剤は、伝熱部材(46b)を流れる冷媒によって冷却される。一方、排気側モジュール(40b)の空気通路(42)では、排気(即ち、室外へ排出される室内空気)が流れている。排気側モジュール(40b)では、排気に含まれる水蒸気が透湿膜(62)を透過し、吸収剤通路(41b)を流れる液体吸収剤に吸収される。水蒸気を奪われた排気は、その後に室外へ排出される。このように、排気側モジュール(40b)では、空気通路(42)の排気に含まれる水蒸気の一部が、透湿膜(62)を透過して液体吸収剤に吸収される。従って、排気側モジュール(40b)では、吸収剤通路(41b)を通過する間に液体吸収剤の濃度が次第に低下してゆく。
【0074】
排気側モジュール(40b)から流出した低濃度の液体吸収剤は、給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)へ流入する。この吸収剤通路(41a)へ流入した液体吸収剤は、伝熱部材(46a)を流れる冷媒によって加熱される。一方、給気側モジュール(40a)の空気通路(42)では、給気(即ち、室内へ供給される室外空気)が流れている。給気側モジュール(40a)では、液体吸収剤に含まれる水の一部が水蒸気となって透湿膜(62)を透過し、空気通路(42)を流れる給気に付与される。給気側モジュール(40a)の空気通路(42)を通過する間に加湿された給気は、その後に室内へ供給される。このように、給気側モジュール(40a)では、吸収剤通路(41a)の液体吸収剤に含まれる水の一部が、透湿膜(62)を透過して給気に付与される。従って、給気側モジュール(40a)では、吸収剤通路(41a)を通過する間に液体吸収剤の濃度が次第に上昇してゆく。給気側モジュール(40a)から流出した高濃度の液体吸収剤は、ポンプ(31)へ吸い込まれ、排気側モジュール(40b)へ向けて送り出される。
【0075】
−調湿用モジュールの動作−
給気側モジュール(40a)と排気側モジュール(40b)を構成する調湿用モジュール(40)の動作について説明する。調湿用モジュール(40)は、液体吸収剤に水蒸気を吸収させる吸湿動作と、液体吸収剤から水蒸気を放出させる放湿動作とを選択的に行う。上述した除湿運転時には、給気側モジュール(40a)が吸湿動作を行い、排気側モジュール(40b)が放湿動作を行う。また、上述した加湿運転時には、排気側モジュール(40b)が吸湿動作を行い、給気側モジュール(40a)が放湿動作を行う。
【0076】
〈吸湿動作〉
調湿用モジュール(40)の吸湿動作について、図4を参照しながら説明する。
【0077】
吸湿動作中において、調湿用モジュール(40)の吸収剤通路(41)には、比較的高濃度の液体吸収剤が供給される。そして、空気通路(42)の空気に含まれる水蒸気の一部が、透湿膜(62)を透過して液体吸収剤に吸収される。
【0078】
液体吸収剤が水蒸気を吸収する過程では、吸収熱が生じる。このため、何の対策も講じなければ、生じた吸収熱によって液体吸収剤の温度が次第に上昇し、液体吸収剤に吸収される水蒸気の量が減少してゆく。また、空気通路(42)を流れる空気の温度が液体吸収剤の温度よりも高い場合は、空気との熱交換によって液体吸収剤の温度が上昇する。一方、吸湿動作中の調湿用モジュール(40)では、伝熱部材(46)が蒸発器として機能し、熱媒体通路(43)の冷媒によって吸収剤通路(41)の液体吸収剤が冷却されるため、液体吸収剤の温度上昇が抑えられる。
【0079】
特に、本実施形態の調湿用モジュール(40)では、伝熱部材(46)の伝熱管(70)が液体吸収剤に囲まれている。このため、伝熱管(70)を流れる冷媒は、実質的に液体吸収剤だけから吸熱する。従って、本実施形態の調湿用モジュール(40)では、伝熱管(70)を流れる冷媒によって液体吸収剤が効率よく冷却される。
【0080】
〈放湿動作〉
調湿用モジュール(40)の放湿動作について、図4を参照しながら説明する。
【0081】
放湿動作中において、調湿用モジュール(40)の吸収剤通路(41)には、比較的低濃度の液体吸収剤が供給される。そして、液体吸収剤に含まれる水の一部が、水蒸気となって透湿膜(62)を透過し、空気通路(42)の空気に付与される。
【0082】
液体吸収剤から水が放出される過程では、液体である水が気化する際に周囲から熱を奪う。このため、何の対策も講じなければ、液体吸収剤の温度が次第に低下し、液体吸収剤から放出される水蒸気の量が減少してゆく。また、空気通路(42)を流れる空気の温度が液体吸収剤の温度よりも低い場合は、空気との熱交換によって液体吸収剤の温度が低下する。一方、放湿動作中の調湿用モジュール(40)では、伝熱部材(46)が凝縮器として機能し、熱媒体通路(43)の冷媒によって吸収剤通路(41)の液体吸収剤が加熱されるため、液体吸収剤の温度低下が抑えられる。
【0083】
特に、本実施形態の調湿用モジュール(40)では、伝熱部材(46)の伝熱管(70)が液体吸収剤に囲まれている。このため、伝熱管(70)を流れる冷媒から放出された熱は、実質的に液体吸収剤だけに付与される。従って、本実施形態の調湿用モジュール(40)では、伝熱管(70)を流れる冷媒によって液体吸収剤が効率よく加熱される。
【0084】
−実施形態1の効果−
本実施形態の調湿用モジュール(40)では、吸収剤通路(41)に伝熱部材(46)が配置され、この伝熱部材(46)が熱媒体通路(43)を形成する。伝熱部材(46)は、吸収剤通路(41)に設置されて液体吸収剤に囲まれている。このため、熱媒体通路(43)を流れる高圧冷媒から放出される熱は、ほぼ全てが吸収剤通路(41)の液体吸収剤に付与される。また、熱媒体通路(43)を流れる低圧冷媒が吸収する熱は、ほぼ全てが吸収剤通路(41)の液体吸収剤から吸収した熱となる。
【0085】
従って、本実施形態によれば、液体吸収剤が空気と水分を授受する際における液体吸収剤の温度変化を抑えることができ、その結果、調湿用モジュール(40)の小型化を図ることができる。また、本実施形態によれば、高圧冷媒の温熱を無駄なく液体吸収剤の加熱に利用でき、低圧冷媒の冷熱を無駄なく液体吸収剤の冷却に利用できるため、調湿用モジュール(40)において液体吸収剤に吸湿させ又は放湿させるために必要なエネルギを削減できる。
【0086】
また、本実施形態の調湿用モジュール(40)では、伝熱部材(46)の伝熱管(70)が、吸収剤通路(41)を挟んで隣り合う透湿膜(62)の間に配置される。従って、本実施形態によれば、液体吸収剤が空気と水分の授受を行う透湿膜(62)の近くに伝熱管(70)を配置することができ、空気と水分の授受を行っている液体吸収剤を、伝熱管(70)を流れる冷媒と確実に熱交換させることができる。
【0087】
−実施形態1の変形例−
本実施形態の調湿装置(10)では、給気側モジュール(40a)及び排気側モジュール(40b)として、図8に示す調湿用モジュール(40)が用いられていてもよい。
【0088】
図8に示すように、本変形例の調湿用モジュール(40)は、調湿用モジュール(40)に設けられた伝熱部材(46)の数と、各伝熱部材(46)の構造とが、図3〜6に示す調湿用モジュール(40)と相違する。ここでは、本変形例の調湿用モジュール(40)について、図3〜6に示す調湿用モジュール(40)と異なる点を説明する。
【0089】
本変形例の伝熱部材(46)は、図3〜6に示す伝熱部材(46)と同様に、一列に配置された複数の伝熱管(70)と、各伝熱管(70)の上端に接合された第1ヘッダ(71)と、各伝熱管(70)の下端に接合された第2ヘッダ(72)とを備えている。ただし、本変形例の伝熱部材(46)は、一列に並んだ伝熱管(70)の間隔(即ち、伝熱管(70)のピッチL)が、透湿膜(62)の配列方向に並んだ吸収剤通路(41)の間隔(即ち、吸収剤通路(41)のピッチL)の2倍になっている(L=2L)。
【0090】
本変形例の調湿用モジュール(40)には、四つの伝熱部材(46)が設けられている。四つの伝熱部材(46)は、互いに向かい合うように配置されている。具体的に、四つの伝熱部材(46)は、各伝熱部材(46)の第1ヘッダ(71)が互いに実質的に平行となり、各伝熱部材(46)の第2ヘッダ(72)が互いに実質的に平行となる姿勢で、一方の側板(53)から他方の側板(54)へ向かって一列に配置されている。
【0091】
本変形例の調湿用モジュール(40)において、隣り合う伝熱部材(46)の位置は、透湿膜(62)の配列方向に吸収剤通路(41)のピッチLだけずれている。つまり、図8において、左から奇数番目の伝熱部材(46)の位置と、左から偶数番目の伝熱部材(46)の位置とは、透湿膜(62)の配列方向に吸収剤通路(41)のピッチLだけずれている。従って、図8では、下から奇数番目の吸収剤通路(41)に左から奇数番目の伝熱部材(46)の伝熱管(70)が配置され、下から偶数番目の吸収剤通路(41)に左から偶数番目の伝熱部材(46)の伝熱管(70)が配置される。
【0092】
ここで、調湿用モジュール(40)を小型化するには、吸収剤通路(41)のピッチLをできるだけ短くするのが望ましい。一方、伝熱部材(46)を組み立てる際には、伝熱管(70)とヘッダ(71,72)をロウ付け等によって接合する必要があるため、伝熱管(70)のピッチLを短縮するのには限界がある。そして、図3〜6に示す調湿用モジュール(40)では、吸収剤通路(41)のピッチを伝熱管(70)のピッチと一致させる必要があり、調湿用モジュール(40)の充分な小型化が困難となるおそれがある。
【0093】
これに対し、図8に示す本変形例の調湿用モジュール(40)では、吸収剤通路(41)のピッチLが伝熱管(70)のピッチLの半分となっている。従って、本変形例によれば、伝熱部材(46)を組み立てられる程度の伝熱管(70)のピッチLを確保しながら、吸収剤通路(41)のピッチLを例えば数mm程度に設定することが可能となり、調湿用モジュール(40)の小型化を図ることができる。
【0094】
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。本実施形態の調湿用モジュール(40)は、実施形態1の調湿用モジュール(40)とは異なる構造を有している。ここでは、本実施形態の調湿用モジュール(40)について、図9〜図11を適宜参照しながら説明する。
【0095】
図9及び図10に示すように、本実施形態の調湿用モジュール(40)は、上下に蛇行する厚板状となっている。この調湿用モジュール(40)は、仕切り部材(45)と伝熱部材(46)とを備えている。
【0096】
伝熱部材(46)は、複数本(本実施形態では三本)の伝熱管(70)と、二つのヘッダ(73,74)とを備えている。伝熱管(70)は、銅製またはアルミニウム製の円管である。伝熱部材(46)の伝熱管(70)は、熱媒体である冷媒が流れる熱媒体通路(43)を形成する。各伝熱管(70)は、円管であって、上下に蛇行する形状となっている(図10(A)を参照)。また、複数本の伝熱管(70)は、互いに平行に配置されている(図10(B)を参照)。各伝熱管(70)は、一端が第1ヘッダ(73)に接続され、他端が第2ヘッダ(74)に接続されている。そして、これらのヘッダ(73,74)が、冷媒回路(35)に接続される。
【0097】
仕切り部材(45)は、伝熱管(70)に沿って蛇行する形状となっており、伝熱部材(46)に設けられた全ての伝熱管(70)を囲うように設けられる。仕切り部材(45)は、その上面と下面のそれぞれが透湿膜(62)によって構成されている。また、仕切り部材(45)は、その側部が第1の封止部材(75)によって封止され、その端部が第2の封止部材(76)によって封止されている。各封止部材(75,76)は、上側の透湿膜(62)と下側の透湿膜(62)とに接合されている。伝熱部材(46)の伝熱管(70)は、仕切り部材(45)の端部に配置された封止部材(76)を貫通しており、その端部が仕切り部材(45)の外部に露出している。
【0098】
仕切り部材(45)には、吸収剤通路(41)へ液体吸収剤を流入させるための導入口(77)と、吸収剤通路(41)から液体吸収剤を流出させるための導出口(78)とが形成される。仕切り部材(45)では、その一端寄りに導入口(77)が配置され、その他端寄りに導出口(78)が配置される。そして、導入口(77)と導出口(78)のそれぞれが、吸収剤回路(30)に接続される。
【0099】
本実施形態の調湿用モジュール(40)では、仕切り部材(45)の内側の空間が吸収剤通路(41)となり、仕切り部材(45)の外側の空間が空気通路(42)となっている。また、上述したように、仕切り部材(45)は、伝熱管(70)を囲うように設けられている。従って、伝熱管(70)は、仕切り部材(45)の内側に形成された吸収剤通路(41)に配置され、吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤に囲われる。従って、実施形態1の調湿用モジュール(40)と同様に、伝熱管(70)内を流れる冷媒は、実質的に液体吸収剤だけと熱交換し、空気通路(42)の空気と直接には熱交換しない。
【0100】
本実施形態の調湿用モジュール(40)において、導入口(77)から吸収剤通路(41)へ流入した液体吸収剤は、仕切り部材(45)の一端側から他端側へ向かって流れ、その間に透湿膜(62)を介して空気通路(42)の空気と水蒸気の授受を行い、その後に導出口(78)から流出してゆく。また、伝熱管(70)を流れる冷媒は、伝熱管(70)を囲む液体吸収剤と熱交換し、液体吸収剤を加熱し又は冷却する。
【0101】
本実施形態の調湿用モジュール(40)の作り方について、図11を参照しながら説明する。先ず、細長い長方形状の透湿膜(62)を二枚用意する。次に、一方の透湿膜(62)の上に三本の真っ直ぐな伝熱管(70)を平行に配置すると共に、透湿膜(62)の長辺に沿って第1の封止部材(75)を配置する。次に、他方の透湿膜(62)をその上に配置し、上下の透湿膜(62)を封止部材(75)と接合する。次に、伝熱管(70)を塑性変形させて上下に蛇行する形状とする。伝熱管(70)が塑性変形すると、透湿膜(62)及び封止部材(75)が伝熱管(70)に沿って上下に蛇行する形状となる。次に、透湿膜(62)の両端に第2の封止部材(76)を取り付け、その後に伝熱管(70)の両端にヘッダ(73,74)を取り付ける。
【0102】
−実施形態2の変形例−
本実施形態の調湿用モジュール(40)では、仕切り部材(45)に設けられる第1の封止部材(75)を一つだけにすることも可能である。つまり、図12に示すように、透湿膜(62)の幅を図11(A)に示すものの約2倍とし、この透湿膜(62)を折り畳んで伝熱管(70)を覆う構造にすれば、第1の封止部材(75)を一つだけにすることができる。
【0103】
《発明の実施形態3》
本発明の実施形態3について説明する。本実施形態の調湿用モジュール(40)は、実施形態1の調湿用モジュール(40)とは異なる構造を有している。ここでは、本実施形態の調湿用モジュール(40)について、図13〜図15を適宜参照しながら説明する。
【0104】
本実施形態の調湿用モジュール(40)では、仕切り部材(45)が真っ直ぐな円管状に形成された透湿膜(62)によって構成され、伝熱部材(46)が銅製またはアルミニウム製の真っ直ぐな円管である伝熱管(70)によって構成されている。また、この調湿用モジュール(40)では、伝熱管(70)で構成された伝熱部材(46)が円管状の透湿膜(62)である仕切り部材(45)に挿通されており、伝熱部材(46)と仕切り部材(45)によって二重管(80)が形成されている(図14及び図15を参照)。この二重管(80)では、仕切り部材(45)である透湿膜(62)の外側の空間が空気通路(42)となり、透湿膜(62)と伝熱部材(46)である伝熱管(70)の間の空間が吸収剤通路(41)となり、伝熱管(70)の内側の空間が熱媒体通路(43)となっている。従って、本実施形態の調湿用モジュール(40)では、伝熱部材(46)である伝熱管(70)が、吸収剤通路(41)の液体吸収剤に囲まれる。
【0105】
本実施形態の調湿用モジュール(40)は、多数の二重管(80)を備えている。これらの二重管(80)は、それぞれの軸方向が概ね水平方向となり、それぞれの軸方向が互いに平行となる姿勢で設置されている。調湿用モジュール(40)では、多数の二重管(80)が上下左右に互いに所定の間隔をおいて規則的に配置されている。調湿用モジュール(40)における二重管(80)の配置は、いわゆる千鳥配列となっている。
【0106】
図13及び図15に示すように、調湿用モジュール(40)は、一対の箱形ヘッダ(81,84)を備えている。第1の箱形ヘッダ(81)は、二重管(80)の一端側に配置されている。第2の箱形ヘッダ(84)は、二重管(80)の他端側に配置されている。各箱形ヘッダ(81,84)は、扁平な直方体状に形成されている。各箱形ヘッダ(81,84)の内部は、箱形ヘッダ(81,84)の厚さ方向に二つの空間に仕切られており、一方の空間が吸収剤側空間(82,85)となり、他方の空間が熱媒体側空間(83,86)となっている。各箱形ヘッダ(81,84)は、それぞれの熱媒体側空間(83,86)が二重管(80)側を向くように配置され、二重管(80)と接合されている。各箱形ヘッダ(81,84)の吸収剤側空間(82,85)は、透湿膜(62)と伝熱管(70)の間に形成された吸収剤通路(41)だけと連通する。各箱形ヘッダ(81,84)の熱媒体側空間(83,86)は、伝熱管(70)の内側に形成された熱媒体通路(43)だけと連通する。
【0107】
本実施形態の調湿用モジュール(40)では、仕切り部材(45)である透湿膜(62)が、伝熱部材(46)である伝熱管(70)を囲うように設けられている。従って、伝熱管(70)は、透湿膜(62)の内側に形成された吸収剤通路(41)に配置され、吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤に囲われる。従って、実施形態1の調湿用モジュール(40)と同様に、伝熱管(70)内を流れる冷媒は、実質的に液体吸収剤だけと熱交換し、空気通路(42)の空気と直接には熱交換しない。
【0108】
本実施形態の調湿用モジュール(40)では、各箱形ヘッダ(81,84)の吸収剤側空間(82,85)が吸収剤回路(30)に接続され、各箱形ヘッダ(81,84)の熱媒体側空間(83,86)が冷媒回路(35)に接続される。第1の箱形ヘッダ(81)の吸収剤側空間(82)へ流入した液体吸収剤は、各二重管(80)の吸収剤通路(41)へ分かれて流入する。二重管(80)へ流入した液体吸収剤は、二重管(80)の一端から他端側へ向かって流れ、その間に透湿膜(62)を介して空気通路(42)の空気と水分の授受を行い、その後に第2の箱形ヘッダ(84)の吸収剤側空間(85)へ流入する。また、第1の箱形ヘッダ(81)の熱媒体側空間(83)へ流入した冷媒は、各二重管(80)の伝熱管(70)へ分かれて流入する。伝熱管(70)内の熱媒体通路(43)へ流入した冷媒は、伝熱管(70)の一端から他端側へ向かって流れ、その間に伝熱管(70)を囲む液体吸収剤と熱交換し、液体吸収剤を加熱し又は冷却する。その後、冷媒は、伝熱管(70)から第2の箱形ヘッダ(84)の熱媒体側空間(86)へ流入する。
【0109】
−実施形態3の変形例1−
本実施形態の調湿用モジュール(40)の二重管(80)には、透湿膜(62)と伝熱管(70)の間隔を保持するための支持用リブ(96)が設けられていてもよい。例えば、仕切り部材(45)である透湿膜(62)が薄い場合には、透湿膜(62)が撓んで透湿膜(62)と伝熱管(70)の間隔を保持できないおそれがある。その場合には、本変形例のように二重管(80)に支持用リブ(96)を設け、支持用リブ(96)によって透湿膜(62)を支えるのが望ましい。
【0110】
図16に示すように、本変形例の二重管(80)を構成する伝熱管(70)は、一つの本体管部(95)と、複数の支持用リブ(96)とを備えている。本体管部(95)と各支持用リブ(96)は、一体に形成されている。なお、伝熱管(70)の材質が銅またはアルミニウムである点は、図14,15に示すものと同じである。
【0111】
本体管部(95)は、真っ直ぐな円管である。各支持用リブ(96)は、本体管部(95)の軸方向へ延びる平板状に形成されている。伝熱管(70)では、本体管部(95)の外周面から複数の支持用リブ(96)が放射状に突出している。仕切り部材(45)である透湿膜(62)は、その内側面が支持用リブ(96)の突端と接している。そして、本変形例の二重管(80)では、伝熱管(70)の本体管部(95)の内側の空間が熱媒体通路(43)となり、伝熱管(70)の本体管部(95)と透湿膜(62)の間の空間が吸収剤通路(41)となる。
【0112】
本変形例の二重管(80)の製造工程について、図17を参照しながら説明する。先ず、同図(a)に示すように、複数の支持用リブ(96)が放射状に形成された伝熱管(70)と、四角いシート状の透湿膜(62)とを準備する。次に、同図(b)に示すように、隣り合う一組の支持用リブ(96)の間に樹脂製の接合用部材(97)を埋め込む。この接合用部材(97)の材質は、透湿膜(62)を溶着可能な樹脂、例えばPFEP (パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、四ふっ化エチレン-六ふっ化プロピレン共重合樹脂)である。そして、接合用部材(97)に透湿膜(62)の一方の辺を溶着し、透湿膜(62)を伝熱管(70)に巻き付け、最後に透湿膜(62)の他方の辺を接合用部材(97)に溶着すると、同図(c)に示す二重管(80)が完成する。
【0113】
−実施形態3の変形例2−
変形例1の二重管(80)では、支持用リブ(96)が伝熱管(70)と別体となっていてもよい。この場合は、伝熱管(70)が本体管部(95)だけによって構成される。また、この場合、支持用リブ(96)の材質は、透湿膜(62)を溶着可能な樹脂(例えばPFEP)となる。なお、各支持用リブ(96)の形状は、図16に示すものと同様の細長い平板状である。
【0114】
本変形例の二重管(80)の製造工程について、図18を参照しながら説明する。先ず、同図(a)に示すように、伝熱管(70)と、四角いシート状の透湿膜(62)とを準備する。また、透湿膜(62)の上に複数の支持用リブ(96)を一定の間隔で配置し、各支持用リブ(96)を透湿膜(62)に溶着する。その際、支持用リブ(96)は、起立した姿勢で透湿膜(62)の辺と平行に配置される。次に、同図(b)に示すように、支持用リブ(96)が取り付けられた透湿膜(62)を伝熱管(70)に巻き付けてゆく。その際、支持用リブ(96)は、その突端面の少なくとも一部が、接着剤によって伝熱管(70)の外周面に接着される。そして、透湿膜(62)の巻き終わりの辺を巻き始めの辺に重ねて両者を溶着すると、同図(c)に示す二重管(80)が完成する。
【0115】
−実施形態3の変形例3−
変形例1の二重管(80)では、伝熱管(70)の材質が、透湿膜(62)を溶着可能な樹脂(例えばPFEP)であってもよい。つまり、本変形例の伝熱管(70)では、本体管部(95)と支持用リブ(96)の材質が、透湿膜(62)を溶着可能な樹脂となる。
【0116】
図19に示すように、本変形例の二重管(80)では、変形例1の接合用部材(97)が省略されている。そして、この二重管(80)では、透湿膜(62)が各支持用リブ(96)の突端に溶着される。
【0117】
−実施形態3の変形例4−
変形例1〜3の二重管(80)において、支持用リブ(96)の形状は、平板状には限定されない。例えば、図20に示すように、支持用リブ(96)は、螺旋状の板材で構成されていてもよい。本変形例の支持用リブ(96)は、伝熱管(70)の本体管部(95)とは別体に形成される。そして、支持用リブ(96)は、本体管部(95)の外周面から突出するように本体管部(95)に接合される。本変形例の二重管(80)において、本体管部(95)と透湿膜(62)の間に形成された吸収剤通路(41)は、支持用リブ(96)によって仕切られた螺旋状の通路となる。
【0118】
−実施形態3の変形例5−
変形例1〜4の二重管(80)では、円管状に形成された透湿膜(62)の内面に沿って網状シートが設けられていてもよい。この網状シートの材質は、金属等の比較的剛性の高い材料である。本変形例の二重管(80)では、透湿膜(62)のうち支持用リブ(96)に接していない部分は、網状シートによって支持される。また、吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤は、網状シートを通り抜けて透湿膜(62)と接触する。
【0119】
《発明の実施形態4》
本発明の実施形態4について説明する。本実施形態の調湿用モジュール(40)は、実施形態1の調湿用モジュール(40)とは異なる構造を有している。ここでは、本実施形態の調湿用モジュール(40)について、図21を参照しながら説明する。
【0120】
図21(A)に示すように、本実施形態の調湿用モジュール(40)は、複数の膜ユニット(90)と、一対の吸収剤側ヘッダ(91)と、一対の冷媒側ヘッダ(92)とを備えている。各膜ユニット(90)は、扁平な矩形に形成されている。複数の膜ユニット(90)は、それぞれの側面が互いに対面する姿勢で一定の間隔をおいて左右方向に配列されている。そして、本実施形態の調湿用モジュール(40)では、隣接する膜ユニット(90)の間の空間が空気通路(42)となっている。
【0121】
図21(B)に示すように、膜ユニット(90)は、仕切り部材(45)と伝熱部材(46)とを備えている。仕切り部材(45)は、扁平な直方体状に形成されている。この仕切り部材(45)は、少なくとも左右の側面が透湿膜(62)によって構成されている。仕切り部材(45)には、伝熱部材(46)を構成する伝熱管(70)が収容されている。この伝熱管(70)は、多穴扁平管であって、熱媒体通路(43)を形成する。膜ユニット(90)では、仕切り部材(45)の内側の空間が吸収剤通路(41)となっており、この吸収剤通路(41)に伝熱管(70)が配置されている。
【0122】
本実施形態の調湿用モジュール(40)では、その上端部と下端部のそれぞれに、吸収剤側ヘッダ(91)と冷媒側ヘッダ(92)とが一つずつ配置されている。各吸収剤側ヘッダ(91)は、各膜ユニット(90)の仕切り部材(45)に接合されており、その内部空間が各膜ユニット(90)の吸収剤通路(41)と連通している。各冷媒側ヘッダ(92)は、各膜ユニット(90)の伝熱管(70)に接合されており、その内部空間が各膜ユニット(90)の熱媒体通路(43)と連通している。
【0123】
本実施形態の調湿用モジュール(40)では、仕切り部材(45)の内側の空間が吸収剤通路(41)となり、仕切り部材(45)の外側の空間が空気通路(42)となっている。また、上述したように、仕切り部材(45)は、伝熱管(70)を囲うように設けられている。従って、伝熱管(70)は、仕切り部材(45)の内側に形成された吸収剤通路(41)に配置され、吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤に囲われる。従って、実施形態1の調湿用モジュール(40)と同様に、伝熱管(70)内を流れる冷媒は、実質的に液体吸収剤だけと熱交換し、空気通路(42)の空気と直接には熱交換しない。
【0124】
−実施形態4の変形例−
図22に示すように、本実施形態の調湿用モジュール(40)において、各膜ユニット(90)に設けられる伝熱管(70)は、上下に蛇行する円管であってもよい。この場合も、各膜ユニット(90)では、伝熱管(70)が吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤に囲まれる。従って、伝熱管(70)内を流れる冷媒は、実質的に液体吸収剤だけと熱交換し、空気通路(42)の空気と直接には熱交換しない。
【0125】
《その他の実施形態》
図23に示すように、上記の各実施形態の調湿装置(10)では、給気側モジュール(40a)と排気側モジュール(40b)が別々のユニットに設置されていてもよい。
【0126】
具体的に、本変形例の調湿装置(10)は、室外ユニット(15)と室内ユニット(17)とを備えている。室外ユニット(15)には、吸収剤回路(30)のポンプ(31)と、冷媒回路(35)の圧縮機(36)、四方切換弁(37)、及び膨張弁(38)と、排気側モジュール(40b)とが収容されている。また、室外ユニット(15)には、排気側モジュール(40b)へ室外空気を供給する室外ファン(16)が設けられている。一方、室内ユニット(17)には、給気側モジュール(40a)が収容されている。また、室内ユニット(17)には、給気側モジュール(40a)へ室内空気を供給する室内ファン(18)が設けられている。
【0127】
除湿運転中において、本変形例の調湿装置(10)は、給気側モジュール(40a)において除湿した室内空気を室内へ送り返し、排気側モジュール(40b)において加湿した室外空気を室外へ排出する。一方、加湿運転中において、本変形例の調湿装置(10)は、給気側モジュール(40a)において加湿した室内空気を室内へ送り返し、排気側モジュール(40b)において除湿した室外空気を室外へ排出する。
【0128】
なお、上記の実施形態および変形例は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上説明したように、本発明は、液体吸収剤によって空気の湿度調節を行うために用いられる調湿用モジュールと、それを備えた調湿装置について有用である。
【符号の説明】
【0130】
10 調湿装置
16 室外ファン
18 室内ファン
27 給気ファン(ファン)
28 排気ファン(ファン)
30 吸収剤回路
35 冷媒回路(熱媒体回路)
40 調湿用モジュール
41 吸収剤通路
42 空気通路
43 熱媒体通路
45 仕切り部材
46 伝熱部材
62 透湿膜
70 伝熱管
71 第1ヘッダ
72 第2ヘッダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を液体吸収剤によって加湿し又は除湿するための調湿用モジュールであって、
上記液体吸収剤は透過させずに水蒸気を透過させる透湿膜(62)によって一部または全部が構成され、空気が流れる空気通路(42)と液体吸収剤が流れる吸収剤通路(41)を仕切る仕切り部材(45)と、
加熱用または冷却用の熱媒体が流れる熱媒体通路(43)を形成し、上記吸収剤通路(41)に設置されて周囲を流れる上記液体吸収剤を上記熱媒体と熱交換させる伝熱部材(46)とを備えている
ことを特徴とする調湿用モジュール。
【請求項2】
請求項1において、
上記仕切り部材(45)では、平面状に成形された複数の上記透湿膜(62)が、互いに向かい合う姿勢で所定の間隔をおいて配列されており、
上記透湿膜(62)の配列方向に上記空気通路(42)と上記吸収剤通路(41)とが交互に形成されている
ことを特徴とする調湿用モジュール。
【請求項3】
請求項2において、
上記伝熱部材(46)は、上記吸収剤通路(41)を挟んで隣り合う上記透湿膜(62)の間に配置されて上記熱媒体が流れる伝熱管(70)を備えている
ことを特徴とする調湿用モジュール。
【請求項4】
請求項3において、
上記伝熱部材(46)は、上記伝熱管(70)を複数備えると共に、各伝熱管(70)の一端に接続する第1ヘッダ(71)と、各伝熱管(70)の他端に接続する第2ヘッダ(72)とを備えている
ことを特徴とする調湿用モジュール。
【請求項5】
請求項4において、
上記伝熱部材(46)を複数備え、
上記各伝熱部材(46)では、複数の上記伝熱管(70)が互いに平行となる姿勢で一列に配置され、
複数の上記伝熱部材(46)が互いに向かい合うように配置され、
隣り合う二つの上記伝熱部材(46)は、一方の伝熱部材(46)の伝熱管(70)と他方の伝熱部材(46)の伝熱管(70)とが異なる上記吸収剤通路(41)に配置されている
ことを特徴とする調湿用モジュール。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか一つにおいて、
上記伝熱管(70)は、その内部空間が複数の流路に仕切られた多穴扁平管である
ことを特徴とする調湿用モジュール。
【請求項7】
請求項1において、
上記伝熱部材(46)は、上記熱媒体が流れる伝熱管(70)を備え、
上記仕切り部材(45)は、上記伝熱管(70)を囲っており、
上記仕切り部材(45)の内側が上記吸収剤通路(41)となり、該仕切り部材(45)の外側が上記空気通路(42)となっている
ことを特徴とする調湿用モジュール。
【請求項8】
請求項7において、
上記伝熱管(70)は、蛇行するように形成され、
上記仕切り部材(45)は、上記伝熱管(70)に沿って蛇行するように形成されている
ことを特徴とする調湿用モジュール。
【請求項9】
請求項7において、
上記仕切り部材(45)は、上記伝熱管(70)に沿って延びる管状に形成されている
ことを特徴とする調湿用モジュール。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一つに記載の調湿用モジュール(40)と、
上記調湿用モジュール(40)の吸収剤通路(41)に接続されて該吸収剤通路(41)へ液体吸収剤を供給する吸収剤回路(30)と、
上記調湿用モジュール(40)の熱媒体通路(43)に接続されて該熱媒体通路(43)へ加熱用または冷却用の熱媒体を供給する熱媒体回路(35)と、
上記調湿用モジュール(40)の空気通路(42)へ空気を供給するためのファン(27,28)とを備え、
上記調湿用モジュール(40)の空気通路(42)を流れる空気を除湿し又は加湿する
ことを特徴とする調湿装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−76558(P2013−76558A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−202387(P2012−202387)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】