調湿装置
【課題】低外気条件下においても、室外空気を確実に加湿して室内へ供給できる調湿装置を提供する。
【解決手段】調湿装置(10)は、ケーシング(11)内に取り込んだ室外空気が吸着熱交換器(51,52)をバイパスして室内へ送られるようにケーシング(11)に形成されるバイパス通路(81)と、バイパス通路(81)を流れる空気の量を変更するためのバイパス量可変機構(83)とを備える。加湿運転中には、ケーシング(11)に取り込んだ室外空気を全て加熱側の吸着熱交換器(51,52)に通過させて室内へ供給する通常動作と、ケーシング(11)に取り込んだ室外空気の一部を加熱側の吸着熱交換器(51,52)に通過させて室内へ供給すると同時に室外空気の残りをバイパス通路(81)を通じて室内へ供給するバイパス動作とが切り換えて行われる。
【解決手段】調湿装置(10)は、ケーシング(11)内に取り込んだ室外空気が吸着熱交換器(51,52)をバイパスして室内へ送られるようにケーシング(11)に形成されるバイパス通路(81)と、バイパス通路(81)を流れる空気の量を変更するためのバイパス量可変機構(83)とを備える。加湿運転中には、ケーシング(11)に取り込んだ室外空気を全て加熱側の吸着熱交換器(51,52)に通過させて室内へ供給する通常動作と、ケーシング(11)に取り込んだ室外空気の一部を加熱側の吸着熱交換器(51,52)に通過させて室内へ供給すると同時に室外空気の残りをバイパス通路(81)を通じて室内へ供給するバイパス動作とが切り換えて行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の湿度を調節する調湿装置に関し、特に吸着熱交換器を有する冷媒回路を備え、吸着熱交換器で空気を加湿する加湿運転を行う調湿装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気の湿度を調湿する調湿装置が知られている。この種の調湿装置として、特許文献1には、吸着剤が担持された吸着熱交換器を用いて空気を調湿するものが開示されている。
【0003】
特許文献1の調湿装置は、冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる冷媒回路を有している。冷媒回路には、圧縮機と、第1吸着熱交換器と、第2吸着熱交換器と、膨張弁と、四方切換弁とが接続されている。圧縮機は、ケーシング内の所定の収容室に設けられている。また、第1吸着熱交換器と第2吸着熱交換器とは、ケーシング内の第1熱交換器室及び第2吸着熱交換器室にそれぞれ設けられている。
【0004】
冷媒回路では、四方切換弁の設定に応じて冷媒の循環方向が可逆に切り換え可能となっている。具体的に、冷媒回路では、四方切換弁の設定が所定時間おきに切り換わることで、第1吸着熱交換器を高圧冷媒が流れて第2吸着熱交換器を低圧冷媒が流れる第1の動作と、第1吸着熱交換器を低圧冷媒が流れて第2吸着熱交換器を高圧冷媒が流れる動作とが交互に行われる。
【0005】
低圧冷媒が流れる方の吸着熱交換器(蒸発器)では、吸着剤が冷媒によって冷却されるとともに、吸着剤に空気中の水分が吸着される。高圧冷媒が流れる方の吸着熱交換器(凝縮器、あるいは放熱器)では、吸着剤が冷媒によって加熱されるとともに、水分が吸着剤から脱離して空気に付与される。このように、各吸着熱交換器では、四方切換弁の切り換えに伴い、水分を吸着する動作(吸着動作)と水分を脱離する動作(再生動作)とが交互に行われる。
【0006】
この調湿装置の加湿運転では、ケーシング内に室外空気と室内空気とが取り込まれる。ケーシング内に取り込まれた室内空気は、低圧冷媒で冷却される側の吸着熱交換器に送られる。この冷却側の吸着熱交換器では、上記の吸着動作によって空気中の水分が吸着剤に吸着される。ケーシング内に取り込まれた室外空気は、高圧冷媒で加熱される側の吸着熱交換器に送られる。加熱側の吸着熱交換器では、上記の再生動作によって吸着剤から脱離した水分が空気に付与される。以上のようにして水分が付与された空気は、室内に供給される。これにより、室内の加湿が行われる。
【0007】
加湿運転時には、上記の第1動作と第2動作の切換に応じて、室外空気が加熱側の吸着熱交換器を流れて室内空気が冷却側の吸着熱交換器を流れるように、空気の流路がダンパによって切り換えられる。これにより、特許文献1の調湿装置の加湿運転では、室外空気が連続的に加湿されて室内に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−291532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示の調湿装置では、加熱側の吸着熱交換器に室外空気を通過させることで、この空気を加湿している。ところが、このような加湿運転を例えば寒冷地等で冬季に行う場合には、極端に低い温度の室外空気が加熱側の吸着熱交換器を流れることがある。このため、加熱側の吸着熱交換器では、高圧冷媒によって吸着剤を充分な温度まで昇温できず、これにより吸着剤から放出される水分量が大幅に減少してしまうことがある。
【0010】
以上のように、特許文献1に開示の調湿装置では、室外空気の温度が極端に低くなることで、加熱側の吸着熱交換器の吸着剤から放出される水分の量が大幅に減少してしまい、ひいては加湿性能が損なわれてしまう。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、低外気条件下においても、室外空気を確実に加湿して室内へ供給できる調湿装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、ケーシング(11)と、圧縮機(53)及び2つの吸着熱交換器(51,52)を有して一方の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を高圧冷媒で加熱すると同時に他方の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を低圧冷媒で冷却する冷凍サイクルが行われる冷媒回路(50)とを備え、上記ケーシング(11)内に室外空気を取り込み、取り込んだ室外空気を加熱側の吸着熱交換器(51,52)に通過させて室内へ供給すると同時に、上記ケーシング(11)内に室内空気を取り込み、取り込んだ室内空気を冷却側の吸着熱交換器(51,52)に通過させて室外へ排出する加湿運転を行う調湿装置を対象とする。そして、この調湿装置は、上記ケーシング(11)内に取り込んだ室外空気が上記吸着熱交換器(51,52)をバイパスして室内又は室外へ送られるように該ケーシング(11)に形成されるバイパス通路(81)と、該バイパス通路(81)を流れる空気の量を変更するためのバイパス量可変機構(83)と、上記加湿運転中に、上記ケーシング(11)に取り込んだ室外空気を全て上記加熱側の吸着熱交換器(51,52)に通過させて室内へ供給する通常動作と、上記ケーシング(11)に取り込んだ室外空気の一部を上記加熱側の吸着熱交換器(51,52)に通過させて室内へ供給すると同時に該室外空気の残りを上記バイパス通路(81)を通じて室内へ供給するバイパス動作とを切り換えて行うように上記バイパス量可変機構(83)を制御する制御部(100)とを備えていることを特徴とする。
【0013】
第1の発明の調湿装置において、加湿運転時の冷媒回路(50)では、圧縮機(53)から吐出された冷媒が循環することで冷凍サイクルが行われる。即ち、圧縮機(53)で圧縮された冷媒は、高圧冷媒として一方の吸着熱交換器(51,52)を流れて放熱する。放熱後の冷媒は、減圧機構等によって減圧された後に、低圧冷媒として他方の吸着熱交換器(51,52)を流れて蒸発する。蒸発した冷媒は、圧縮機(53)に吸入されて圧縮される。
【0014】
同時に加湿運転では、室内空気と室外空気との双方がケーシング(11)内に取り込まれる。ケーシング(11)内に取り込まれた室内空気は、低圧冷媒によって冷却されている冷却側(蒸発器側)の吸着熱交換器(51,52)を流れる。この冷却側の吸着熱交換器(51,52)では、空気中の水分が吸着剤に吸着される。この吸着剤の吸着熱は、冷媒の蒸発に利用される。以上のようにして冷却側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤に水分を付与した空気は、室外へ排出される。
【0015】
一方、ケーシング(11)内に取り込まれた室外空気は、高圧冷媒によって加熱されている加熱側(凝縮器側)の吸着熱交換器(51,52)を流れる。この加熱側の吸着熱交換器(51,52)では、吸着剤が所定温度まで加熱されることにより、吸着剤中の水分が空気中へ放出される。以上のようにして、加熱側の吸着熱交換器(51,52)で加湿された空気は、室内へ供給される。
【0016】
本発明の調湿装置では、上記のような加湿運転時において、制御部(100)がバイパス量可変機構(83)を制御することで、通常動作とバイパス動作とが切換可能となっている。通常動作では、ケーシング(11)内に取り込まれた室外空気の全量が、加熱側の吸着熱交換器(51,52)を流れる。つまり、この通常動作では、取り込んだ室外空気の全量が加湿されて室内へ供給される。
【0017】
ところで、室外空気の温度が極端に低い条件下において、加湿運転の通常動作を行ったとする。この場合には、加熱側の吸着熱交換器(51,52)が室外空気によって冷やされることで、この吸着熱交換器(51,52)を流れる冷媒の凝縮温度が低下し、更には冷却側の吸着熱交換器(51,52)を流れる冷媒の蒸発温度も低下してしまう。その結果、加熱側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を冷媒によって所望とする温度まで昇温させることができず、これにより吸着剤から放出される水分量が減少してしまう虞がある。
【0018】
そこで、本発明の調湿装置では、このような不具合を解消するために、加湿運転時にバイパス動作を実行可能としている。このバイパス動作では、ケーシング(11)に取り込まれた室外空気の一部のみが加熱側の吸着熱交換器(51,52)を流れ、残りの空気はバイパス通路(81)を通じて室内又は室外へ送られる。これにより、加熱側の吸着熱交換器(51,52)では、冷媒の凝縮温度を上昇できるので、吸着剤の温度低下を防止できる。従って、このようなバイパス動作を行うことで、室外空気の温度が極端に低い条件下においても、加熱側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を所望とする温度まで昇温させることができる。その結果、吸着剤から放出される水分量を充分に確保できる。
【0019】
第2の発明は、第1の発明において、上記バイパス通路(81)は、室外空気が上記吸着熱交換器(51,52)をバイパスして室内へ送られるように上記ケーシング(11)に形成されることを特徴とする。
【0020】
第2の発明では、上記のバイパス動作において、ケーシング(11)に取り込まれた室外空気の一部が加熱側の吸着熱交換器(51,52)で加湿されて室内へ供給されると同時に、加熱側の吸着熱交換器(51,52)をバイパスした残りの空気も室内へ供給される。つまり、本発明では、ケーシング(11)に取り込まれた室外空気の量の全てが最終的に室内へ供給されることになる。
【0021】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、室外空気の温度を検出するための外気温度検出部(101)を備え、上記制御部(100)は、上記加湿運転において、上記外気温度検出部(101)で検出した室外空気の温度が所定温度よりも低くなると、上記バイパス動作を行うように上記バイパス量可変機構(83)を制御することを特徴とする。
【0022】
第3の発明の調湿装置では、加湿運転において、外気温度検出部(101)が室外空気の温度を検出する。ここで、検出された外気温度が比較的低い場合、加熱側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を充分に昇温できず、吸着剤の再生効率が低下してしまうことが想定される。そこで、本発明では、外気温度検出部(101)で検出された外気温度が所定温度よりも低くなると、上記のバイパス動作が行われる。その結果、加熱側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤から放出される水分量が減少してしまうことが未然に回避される。
【0023】
第4の発明は、第1又は第2の発明において、上記冷媒回路(50)の高圧冷媒の凝縮温度を検出するための凝縮温度検出部(51a,52a)を備え、上記制御部(100)は、上記加湿運転において、上記凝縮温度検出部(51a,52a)で検出した凝縮温度が所定温度よりも低くなると、上記バイパス動作を行うように上記バイパス量可変機構(83)を制御することを特徴とする。
【0024】
第4の発明では、加湿運転において、凝縮温度検出部(51a,52a)が、冷媒回路(50)の高圧冷媒の凝縮温度を検出する。つまり、凝縮温度検出部(51a,52a)は、加熱側の吸着熱交換器(51,52)で凝縮する冷媒の温度を検出する。なお、凝縮温度検出部(51a,52a)は、必ずしも冷媒の温度を直接的に検知して凝縮温度を検出するものでなくても良く、例えば高圧冷媒の圧力から凝縮温度を間接的に求めるものであっても良い。ここで、検出された凝縮温度が比較的低い場合、加熱側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を充分に昇温できず、吸着剤の再生効率が低下してしまうことが想定される。そこで、本発明では、凝縮温度検出部(51a,52a)で検出された冷媒の凝縮温度が所定温度よりも低くなると、バイパス動作が行われる。その結果、加熱側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤から放出される水分量が減少してしまうことが未然に回避される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、加湿運転時において、ケーシング(11)内に取り込んだ室外空気の一部のみを加熱側の吸着熱交換器(51,52)に送り、残りの空気は加熱側の吸着熱交換器(51,52)をバイパスさせて室内又は室外へ送るバイパス動作を実行可能としている。このため、室外空気の温度が極端に低い条件下において、加熱側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を充分に昇温できなくなることを回避でき、これにより加熱側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤から放出される水分量を充分に確保できる。従って、このような低外気条件下において、調湿装置の加湿能力が大幅に低下してしまうことを防止でき、この調湿装置の信頼性を確保できる。つまり、この調湿装置の加湿運転では、処理可能な潜熱量を増大できるため、比較的低い顕熱比(顕熱量/全熱量)での調湿を行うことができる。
【0026】
また、このような低外気条件下において、室外空気によって加熱側の吸着熱交換器(51,52)が極端に冷やされてしまうと、この吸着熱交換器(51,52)を流れる冷媒の凝縮温度が低下すると同時に、冷却側(蒸発器)側の吸着熱交換器(51,52)を流れる冷媒の蒸発温度も低下してしまう。これにより、冷却側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤が凍結してしまったり、結露水が多量に発生したりする、という不具合が生じる。
【0027】
しかしながら、本発明のバイパス動作を行うことで、このような不具合も回避できる。具体的には、バイパス動作によって加熱側の吸着熱交換器(51,52)へ送る室外空気の量を減らすことで、加熱側の吸着熱交換器(51,52)を流れる冷媒の凝縮温度を上昇でき、ひいては冷却側(蒸発器側)の吸着熱交換器(51,52)を流れる冷媒の蒸発温度を上昇できる。その結果、冷却側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤の凍結や、冷却側の吸着熱交換器(51,52)の近傍での結露水の発生を回避することができる。
【0028】
また、第2の発明によれば、バイパス動作時において、加熱側の吸着熱交換器(51,52)をバイパスした室外空気を室内へ供給するようにしている。このため、バイパス動作において、室内からケーシング(11)内に取り込まれて室外へ排出される空気の量(排気量)と比べて、室外からケーシング(11)内に取り込まれて室内へ供給される空気の量(給気量)が相対的に少なくなってしまうことを回避できる。従って、バイパス動作において、調湿装置による加湿性能だけでなく、室内の換気性能も充分に確保できる。
【0029】
第3の発明では、外気温度検出部(101)の検出温度が所定温度よりも低くなることで、バイパス動作を実行するようにしている。従って、低外気条件下において、確実にバイパス動作を行うことができるので、室外空気の温度低下に起因する加湿性能の低下を確実に回避できる。
【0030】
また、第4の発明では、凝縮温度検出部(51a,52a)の検出温度が所定温度よりも低くなることで、バイパス動作を実行するようにしている。従って、高圧冷媒の凝縮温度の低下に起因する加湿性能の低下を確実に回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、前面側から見た調湿装置をケーシングの一部および電装品箱を省略して示す斜視図である。
【図2】図2は、調湿装置の一部を省略して示す概略の平面図、右側面図、及び左側面図である。
【図3】図3は、冷媒回路の構成を示す配管系統図であって、(A)は第1動作を示すものであり、(B)は第2動作を示すものである。
【図4】図4は、実施形態の空調システムの全体構成を模式的に表した構成図であり、加湿運転時のバイパス動作の空気流れを表したものである。
【図5】図5は、除湿換気運転の第1動作における空気の流れを示す調湿装置の概略の平面図、右側面図、及び左側面図である。
【図6】図6は、除湿換気運転の第2動作における空気の流れを示す調湿装置の概略の平面図、右側面図、及び左側面図である。
【図7】図7は、加湿換気運転の第1動作における空気の流れを示す調湿装置の概略の平面図、右側面図、及び左側面図である。
【図8】図8は、加湿換気運転の第2動作における空気の流れを示す調湿装置の概略の平面図、右側面図、及び左側面図である。
【図9】図9は、単純換気運転における空気の流れを示す調湿装置の概略の平面図、右側面図、及び左側面図である。
【図10】図10は、バイパス率と、冷媒の凝縮温度/蒸発温度との関係を表したグラフである。
【図11】図11は、バイパス率と、吸着剤から放出される水分量との関係を表したグラフである。
【図12】図12は、変形例1の空調システムの全体構成を模式的に表した構成図であり、加湿運転時のバイパス動作の空気流れを表したものである。
【図13】図13は、変形例2の空調システムの全体構成を模式的に表した構成図であり、加湿運転時のバイパス動作の空気流れを表したものである。
【図14】図14は、変形例3の空調システムの全体構成を模式的に表した構成図であり、加湿運転時のバイパス動作の空気流れを表したものである。
【図15】図15は、その他の実施形態の空調システムについての、冷媒回路の構成を示す配管系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本実施形態の調湿装置(10)は、取り込んだ室外空気(OA)の湿度を調節して室内へ供給するものである。また、調湿装置(10)は、室外空気(OA)を室内へ供給すると同時に室内空気(RA)を室外へ排出することで、室内の換気を行う。また、調湿装置(10)は、詳細は後述する空調システム(110)に含まれており、空調機(120)によって空調される室内の湿度を調節するように構成されている。
【0033】
〈調湿装置の全体構成〉
まず、調湿装置(10)について、図1,図2を適宜参照しながら説明する。なお、ここでの説明で用いる「上」「下」「左」「右」「前」「後」「手前」「奥」は、特にことわらない限り、調湿装置(10)を前面側から見た場合の方向を意味している。
【0034】
調湿装置(10)は、ケーシング(11)を備えている。また、ケーシング(11)内には、冷媒回路(50)が収容されている。この冷媒回路(50)には、第1吸着熱交換器(51)、第2吸着熱交換器(52)、圧縮機(53)、四方切換弁(54)、及び電動膨張弁(55)が接続されている。冷媒回路(50)の詳細は後述する。
【0035】
ケーシング(11)は、やや扁平で高さが比較的低い直方体状に形成されている。図1に示すケーシング(11)では、左手前の側面(即ち、前面)が前面パネル部(12)となり、右奥の側面(即ち、背面)が背面パネル部(13)となり、右手前の側面が第1側面パネル部(14)となり、左奥の側面が第2側面パネル部(15)となっている。
【0036】
ケーシング(11)には、外気吸込口(24)と、内気吸込口(23)と、給気口(22)と、排気口(21)とが形成されている。外気吸込口(24)及び内気吸込口(23)は、背面パネル部(13)に開口している。外気吸込口(24)は、背面パネル部(13)の下側部分に配置されている。内気吸込口(23)は、背面パネル部(13)の上側部分に配置されている。給気口(22)は、第1側面パネル部(14)における前面パネル部(12)側の端部付近に配置されている。排気口(21)は、第2側面パネル部(15)における前面パネル部(12)側の端部付近に配置されている。
【0037】
ケーシング(11)の内部空間には、上流側仕切板(71)と、下流側仕切板(72)と、中央仕切板(73)と、第1仕切板(74)と、第2仕切板(75)とが設けられている。これらの仕切板(71〜75)は、何れもケーシング(11)の底板に立設されており、ケーシング(11)の内部空間をケーシング(11)の底板から天板に亘って区画している。
【0038】
上流側仕切板(71)及び下流側仕切板(72)は、前面パネル部(12)及び背面パネル部(13)と平行な姿勢で、ケーシング(11)の前後方向に所定の間隔をおいて配置されている。上流側仕切板(71)は、背面パネル部(13)寄りに配置されている。下流側仕切板(72)は、前面パネル部(12)寄りに配置されている。
【0039】
第1仕切板(74)及び第2仕切板(75)は、第1側面パネル部(14)及び第2側面パネル部(15)と平行な姿勢で設置されている。第1仕切板(74)は、上流側仕切板(71)と下流側仕切板(72)の間の空間を右側から塞ぐように、第1側面パネル部(14)から所定の間隔をおいて配置されている。第2仕切板(75)は、上流側仕切板(71)と下流側仕切板(72)の間の空間を左側から塞ぐように、第2側面パネル部(15)から所定の間隔をおいて配置されている。
【0040】
中央仕切板(73)は、上流側仕切板(71)及び下流側仕切板(72)と直交する姿勢で、上流側仕切板(71)と下流側仕切板(72)の間に配置されている。中央仕切板(73)は、上流側仕切板(71)から下流側仕切板(72)に亘って設けられ、上流側仕切板(71)と下流側仕切板(72)の間の空間を左右に区画している。
【0041】
ケーシング(11)内において、上流側仕切板(71)と背面パネル部(13)の間の空間は、上下2つの空間に仕切られており、下側の空間が外気吸込通路(34)を構成し、上側の空間が内気吸込通路(32)を構成している。外気吸込通路(34)は、外気吸込口(24)と連通し、内気吸込通路(32)は、内気吸込口(23)と連通している。外気吸込通路(34)には、外気フィルタ(28)と外気湿度センサ(97)とが設置されている。内気吸込通路(32)には、内気フィルタ(27)と内気湿度センサ(96)とが設置されている。
【0042】
ケーシング(11)内における上流側仕切板(71)と下流側仕切板(72)の間の空間は、中央仕切板(73)によって左右に区画されており、中央仕切板(73)の右側の空間が第1熱交換器室(37)を構成し、中央仕切板(73)の左側の空間が第2熱交換器室(38)を構成している。第1熱交換器室(37)には、第1吸着熱交換器(51)が収容されている。第2熱交換器室(38)には、第2吸着熱交換器(52)が収容されている。また、図示しないが、第1熱交換器室(37)には、冷媒回路(50)の電動膨張弁(55)が収容されている。
【0043】
各吸着熱交換器(51,52)は、いわゆるクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器の表面に吸着剤を担持させたものであって、全体として長方形の厚板状あるいは扁平な直方体状に形成されている。各吸着熱交換器(51,52)は、その前面及び背面が上流側仕切板(71)及び下流側仕切板(72)と平行になる姿勢で、熱交換器室(37,38)内に立設されている。各吸着熱交換器(51,52)は、空気中の水分を吸着する吸着動作と、吸着した水分を空気中へ放出する再生動作(脱着動作)とが行われる吸着部材を構成している。
【0044】
ケーシング(11)の内部空間において、下流側仕切板(72)の前面に沿った空間は、上下に仕切られており、この上下に仕切られた空間のうち、上側の部分が給気側通路(31)を構成し、下側の部分が排気側通路(33)を構成している。
【0045】
上流側仕切板(71)には、開閉式のダンパ(41〜44)が4つ設けられている。各ダンパ(41〜44)は、概ね横長の長方形状に形成されている。具体的に、上流側仕切板(71)のうち内気吸込通路(32)に面する部分(上側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1内気側ダンパ(41)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2内気側ダンパ(42)が取り付けられる。また、上流側仕切板(71)のうち外気吸込通路(34)に面する部分(下側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1外気側ダンパ(43)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2外気側ダンパ(44)が取り付けられる。
【0046】
下流側仕切板(72)には、開閉式のダンパ(45〜48)が4つ設けられている。各ダンパ(45〜48)は、概ね横長の長方形状に形成されている。具体的に、下流側仕切板(72)のうち給気側通路(31)に面する部分(上側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1給気側ダンパ(45)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2給気側ダンパ(46)が取り付けられる。また、下流側仕切板(72)のうち排気側通路(33)に面する部分(下側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1排気側ダンパ(47)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2排気側ダンパ(48)が取り付けられる。
【0047】
ケーシング(11)内において、給気側通路(31)及び排気側通路(33)と前面パネル部(12)との間の空間は、仕切板(77)によって左右に仕切られており、仕切板(77)の右側の空間が給気ファン室(36)を構成し、仕切板(77)の左側の空間が排気ファン室(35)を構成している。
【0048】
給気ファン室(36)には、給気ファン(26)が収容されている。また、排気ファン室(35)には排気ファン(25)が収容されている。給気ファン(26)及び排気ファン(25)は、何れも遠心型の多翼ファン(いわゆるシロッコファン)である。給気ファン(26)は、下流側仕切板(72)側から吸い込んだ空気を給気口(22)へ吹き出す。排気ファン(25)は、下流側仕切板(72)側から吸い込んだ空気を排気口(21)へ吹き出す。
【0049】
給気ファン室(36)には、冷媒回路(50)の圧縮機(53)と四方切換弁(54)とが収容されている。圧縮機(53)及び四方切換弁(54)は、給気ファン室(36)における給気ファン(26)と仕切板(77)との間に配置されている。
【0050】
圧縮機(53)は、圧縮機モータの回転数が可変(即ち、容量が可変)なインバータ式の圧縮機で構成されている。また、圧縮機(53)は、固定スクロールと可動スクロールとが噛み合わされて、可動スクロールが固定スクロールに対して偏心回転して冷媒を圧縮する、スクロール式の圧縮機で構成されている。また、圧縮機(53)は、後述する運転動作において、基本的には冷媒回路(50)の低圧(蒸発圧力)と高圧(凝縮圧力)との間の差圧(いわゆる高低差圧)が所定の圧力となるように、圧縮機(53)の運転周波数が制御される。
【0051】
ケーシング(11)内において、第1仕切板(74)と第1側面パネル部(14)の間の空間は、第1バイパス通路(81)を構成している。第1バイパス通路(81)の始端は、外気吸込通路(34)だけに連通しており、内気吸込通路(32)からは遮断されている。第1バイパス通路(81)の終端は、仕切板(78)によって、給気側通路(31)、排気側通路(33)、及び給気ファン室(36)から区画されている。仕切板(78)のうち給気ファン室(36)に臨む部分には、第1バイパス用ダンパ(83)が設けられている。
【0052】
第1バイパス用ダンパ(83)が開放状態になると、第1バイパス通路(81)の終端と給気側通路(31)とが連通する。つまり、第1バイパス通路(81)は、外気吸込通路(34)と給気側通路(31)とを連通可能としている。第1バイパス通路(81)は、ケーシング(11)内に取り込んだ室外空気が各吸着熱交換器(51,52)をバイパスして室内へ送るための、本発明のバイパス流路を構成している。また、第1バイパス用ダンパ(83)は、開度が多段階に変更可能に構成され、第1バイパス通路(81)を流れる空気の量を変更するためのバイパス量可変機構を構成している。更に、調湿装置(10)は、第1バイパス用ダンパ(83)の開度を制御する制御部(100)を有している(図4を参照)。
【0053】
ケーシング(11)内において、第2仕切板(75)と第2側面パネル部(15)の間の空間は、第2バイパス通路(82)を構成している。第2バイパス通路(82)の始端は、内気吸込通路(32)だけに連通しており、外気吸込通路(34)からは遮断されている。第2バイパス通路(82)の終端は、仕切板(79)によって、給気側通路(31)、排気側通路(33)、及び排気ファン室(35)から区画されている。仕切板(79)のうち排気ファン室(35)に臨む部分には、第2バイパス用ダンパ(84)が設けられている。
【0054】
〈冷媒回路の構成〉
図3に示すように、冷媒回路(50)は、第1吸着熱交換器(51)、第2吸着熱交換器(52)、圧縮機(53)、四方切換弁(54)、及び電動膨張弁(55)が設けられた閉回路である。この冷媒回路(50)は、充填された冷媒を循環させることによって、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。
【0055】
冷媒回路(50)において、圧縮機(53)は、その吐出側が四方切換弁(54)の第1のポートに、その吸入側が四方切換弁(54)の第2のポートにそれぞれ接続されている。また、冷媒回路(50)では、第1吸着熱交換器(51)と電動膨張弁(55)と第2吸着熱交換器(52)とが、四方切換弁(54)の第3のポートから第4のポートへ向かって順に接続されている。
【0056】
四方切換弁(54)は、第1のポートと第3のポートが連通して第2のポートと第4のポートが連通する第1状態(図3(A)に示す状態)と、第1のポートと第4のポートが連通して第2のポートと第3のポートが連通する第2状態(図3(B)に示す状態)とに切り換え可能となっている。このような四方切換弁(54)の設定の切り換えに応じて、冷媒回路(50)での冷媒の循環方向が反転する。即ち、四方切換弁(54)は、冷媒の循環方向を可逆に切り換える冷媒流路切換機構を構成している。そして、冷媒回路(50)では、四方切換弁(54)の切り換えに応じて、第1吸着熱交換器(51)を高圧冷媒が流れて第2吸着熱交換器(52)を低圧冷媒が流れる動作と、第1吸着熱交換器(51)を低圧冷媒が流れて第2吸着熱交換器(52)を高圧冷媒が流れる動作とが交互に行われる。
【0057】
〈空調システムの全体構成〉
図4に模式的に示すように、空調システム(110)は、上記の調湿装置(10)と空調機(120)とを備えている。空調システム(110)では、調湿装置(10)と空調機(120)とが、同一の室内空間(S)を処理対象としている。
【0058】
調湿装置(10)は、例えば室内空間(S)の天井裏に設けられる。空調システム(110)は、外気吸込ダクト(111)と内気吸込ダクト(112)と給気ダクト(113)と排気ダクト(114)とを備えている。外気吸込ダクト(111)は、一端が外気吸込口(24)と接続して他端が室外と連通している。内気吸込ダクト(112)は、一端が内気吸込口(23)と接続して他端が室内空間(S)と連通している。給気ダクト(113)は、一端が給気口(22)と接続して他端が室内空間(S)と連通している。排気ダクト(114)は、一端が排気口(21)と接続して他端が室外と連通している。
【0059】
調湿装置(10)は、制御部(100)と外気温度センサ(101)とを備えている。制御部(100)は、第2バイパス用ダンパ(84)の開度(即ち、ダンパ角度)を調整するための制御手段を構成している。外気温度センサ(101)は、例えば外気吸込ダクト(111)の内部に配置されている。外気温度センサ(101)は、室外空気(OA)の温度を検出するための外気温度検出部を構成している。なお、外気温度センサ(101)を外気吸込通路(34)や室外に配置するようにしても良い。
【0060】
空調機(120)は、室内空間(S)の冷房や暖房を行うものである。空調機(120)は、例えば天井埋込式に構成されている。空調機(120)は、そのケーシング内に室内熱交換器(121)を備えている。室内熱交換器(121)は、冷凍サイクルが行われる冷媒回路(図示省略)に接続されている。室内熱交換器(121)では、冷媒と空気とが熱交換することで、この空気が冷却又は加熱される。
【0061】
−運転動作−
空調システム(110)の運転動作について説明する。空調システム(110)では、空調機(120)と調湿装置(10)とが同時に運転可能となっている。空調機(120)は、冷房運転と暖房運転とを切り換えて行う。即ち、空調機(120)の冷房運転では、室内熱交換器(121)が蒸発器となり、この室内熱交換器(121)によって室内空気が冷却される。また、空調機(120)の暖房運転では、室内熱交換器(121)が凝縮器となり、この室内熱交換器(121)によって室内空気が加熱される。
【0062】
また、調湿装置(10)は、除湿運転と加湿運転と単純換気運転とを切り換えて行う。また、調湿装置(10)の加湿運転では、通常動作とバイパス動作との2種類の運転が実行可能となっている。以下に、調湿装置(10)の各運転について詳細に説明する。
【0063】
〈除湿運転〉
本実施形態の除湿運転は、室外空気(OA)を除湿し、除湿後の空気を供給空気(SA)として室内へ供給すると同時に、室内空気(RA)を排出空気(EA)として室外へ排出する。即ち、除湿運転では、室内の除湿と室内の換気とが同時に行われる。
【0064】
除湿運転では、給気ファン(26)及び排気ファン(25)が運転状態となる。また、除湿運転では、複数のダンパの開閉状態が切り換わることで、後述する第1動作と第2動作とが交互に繰り返される。なお、第1動作と第2動作とは、所定の設定時間(例えば3分間)置きに切り換えられる。また、除湿運転において、第1バイパス用ダンパ(83)及び第2バイパス用ダンパ(84)は、常に閉状態となる。
【0065】
給気ファン(26)が運転されると、室外空気(OA)が外気吸込ダクト(111)を経由して調湿装置(10)の外気吸込口(24)へ流入する。また、排気ファン(25)が運転されると、室内空気(RA)が内気吸込ダクト(112)を経由して調湿装置(10)の内気吸込口(23)へ流入する。
【0066】
除湿運転の第1動作では、図5に示すように、第1内気側ダンパ(41)、第2外気側ダンパ(44)、第2給気側ダンパ(46)、及び第1排気側ダンパ(47)が開状態となり、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第1給気側ダンパ(45)、及び第2排気側ダンパ(48)が閉状態となる。また、この第1動作中の冷媒回路(50)では、四方切換弁(54)が第1状態(図3(A)に示す状態)に設定され、第1吸着熱交換器(51)が凝縮器となって第2吸着熱交換器(52)が蒸発器となる。つまり、第1動作では、第1吸着熱交換器(51)の吸着剤が高圧冷媒で加熱され、第2吸着熱交換器(52)の吸着剤が低圧冷媒で冷却される。その結果、加熱側となる第1吸着熱交換器(51)では、吸着した水分を空気中へ放出する再生動作が行われ、冷却側となる第2吸着熱交換器(52)では、空気中の水分を吸着する吸着動作が行われる。
【0067】
除湿運転の第1動作では、外気吸込口(24)へ流入した室外空気(OA)が、第2熱交換器室(38)へ流入し、蒸発器側の第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、空気中の水分が吸着剤に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。第2吸着熱交換器(52)で除湿された空気は、給気口(22)から調湿装置(10)の外部へ流出し、給気ダクト(113)を経由して室内へ供給される。
【0068】
また、内気吸込口(23)へ流入した室内空気(RA)は、第1熱交換器室(37)へ流入し、凝縮器側の第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、冷媒で加熱された吸着剤から水分が脱離し、この脱離した水分が空気に付与される。第1吸着熱交換器(51)で水分を付与された空気は、排気口(21)から調湿装置(10)の外部へ流出し、排気ダクト(114)を経由して室外へ排出される。
【0069】
除湿運転の第2動作では、図6に示すように、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第1給気側ダンパ(45)、及び第2排気側ダンパ(48)が開状態となり、第1内気側ダンパ(41)、第2外気側ダンパ(44)、第2給気側ダンパ(46)、及び第1排気側ダンパ(47)が閉状態となる。また、この第2動作中の冷媒回路(50)では、四方切換弁(54)が第2状態(図3(B)に示す状態)に設定され、第1吸着熱交換器(51)が蒸発器となって第2吸着熱交換器(52)が凝縮器となる。つまり、第2動作では、第1吸着熱交換器(51)の吸着剤が低圧冷媒で冷却され、第2吸着熱交換器(52)の吸着剤が高圧冷媒で加熱される。その結果、冷却側の第1吸着熱交換器(51)で吸着動作が行われ、加熱側の第2吸着熱交換器(52)で再生動作が行われる。
【0070】
第2動作では、外気吸込口(24)へ流入した室外空気(OA)が、第1熱交換器室(37)へ流入し、蒸発器側の第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、空気中の水分が吸着剤に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。第1吸着熱交換器(51)で除湿された空気は、給気口(22)から調湿装置(10)の外部へ流出し、給気ダクト(113)を経由して室内へ供給される。
【0071】
また、内気吸込口(23)へ流入した室内空気(RA)は、第2熱交換器室(38)へ流入し、凝縮器側の第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、冷媒で加熱された吸着剤から水分が脱離し、この脱離した水分が空気に付与される。第2吸着熱交換器(52)で水分を付与された空気は、排気口(21)から調湿装置(10)の外部へ流出し、排気ダクト(114)を経由して室外へ排出される。
【0072】
〈加湿運転〉
本実施形態の加湿運転は、室外空気(OA)を加湿し、加湿後の空気を供給空気(SA)として室内へ供給すると同時に、室内空気(RA)を排出空気(EA)として室外へ排出する。即ち、加湿運転では、室内の加湿と室内の換気とが同時に行われる。まず、加湿運転の通常動作について説明する。
【0073】
〔通常動作〕
加湿運転の通常動作では、給気ファン(26)及び排気ファン(25)が運転状態となる。また、加湿運転では、複数のダンパの開閉状態が切り換わることで、後述する第1動作と第2動作とが交互に繰り返される。なお、第1動作と第2動作とは、所定の設定時間(例えば4分間)置きに切り換えられる。また、加湿運転において、第1バイパス用ダンパ(83)及び第2バイパス用ダンパ(84)が、常に閉状態となる。
【0074】
給気ファン(26)が運転されると、室外空気(OA)が外気吸込ダクト(111)を経由して調湿装置(10)の外気吸込口(24)へ流入する。また、排気ファン(25)が運転されると、室内空気(RA)が内気吸込ダクト(112)を経由して調湿装置(10)の内気吸込口(23)へ流入する。
【0075】
加湿運転の第1動作では、図7に示すように、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第1給気側ダンパ(45)、及び第2排気側ダンパ(48)が開状態となり、第1内気側ダンパ(41)、第2外気側ダンパ(44)、第2給気側ダンパ(46)、及び第1排気側ダンパ(47)が閉状態となる。また、この第1動作中の冷媒回路(50)では、四方切換弁(54)が第1状態(図3(A)に示す状態)に設定され、第1吸着熱交換器(51)が凝縮器(加熱側)となって第2吸着熱交換器(52)が蒸発器(冷却側)となる。
【0076】
加湿運転の第1動作では、内気吸込口(23)へ流入した室内空気(RA)が、第2熱交換器室(38)へ流入し、蒸発器側の第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、空気中の水分が吸着剤に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。第2吸着熱交換器(52)の吸着剤へ水分を付与した空気は、排気口(21)から調湿装置(10)の外部へ流出し、排気ダクト(114)を経由して室外へ排出される。
【0077】
また、外気吸込口(24)へ流入した室外空気(OA)は、第1熱交換器室(37)へ流入し、凝縮器側の第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、冷媒で加熱された吸着剤から水分が脱離し、この脱離した水分が空気に付与される。第1吸着熱交換器(51)で加湿された空気は、給気口(22)から調湿装置(10)の外部へ流出し、給気ダクト(113)を経由して室内へ供給される。
【0078】
加湿運転の第2動作では、図8に示すように、第1内気側ダンパ(41)、第2外気側ダンパ(44)、第2給気側ダンパ(46)、及び第1排気側ダンパ(47)が開状態となり、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第1給気側ダンパ(45)、及び第2排気側ダンパ(48)が閉状態となる。また、この第2動作中の冷媒回路(50)では、四方切換弁(54)が第2状態(図3(B)に示す状態)に設定され、第1吸着熱交換器(51)が蒸発器(冷却側)となって第2吸着熱交換器(52)が凝縮器(加熱側)となる。
【0079】
加湿運転の第2動作では、内気吸込口(23)へ流入した室内空気(RA)が、第1熱交換器室(37)へ流入し、蒸発器側の第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、空気中の水分が吸着剤に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。第1吸着熱交換器(51)の吸着剤へ水分を付与した空気は、排気口(21)から調湿装置(10)の外部へ流出し、排気ダクト(114)を経由して室外へ排出される。
【0080】
また、外気吸込口(24)へ流入した室外空気(OA)は、第2熱交換器室(38)へ流入し、凝縮器側の第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、冷媒で加熱された吸着剤から水分が脱離し、この脱離した水分が空気に付与される。第2吸着熱交換器(52)で加湿された空気は、給気口(22)から調湿装置(10)の外部へ流出し、給気ダクト(113)を経由して室内へ供給される。
【0081】
〔バイパス動作〕
上述した加湿運転は、空気が乾燥し易い冬季に行われることが多い。このため、加湿運転では、室外空気(OA)の温度が比較的低くなり易い。従って、室外空気(OA)の温度が極端に低い条件下において上述の加湿運転を行うと、凝縮器側(加熱/再生側)の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤から放出される水分量が減少してしまうことがある。
【0082】
即ち、吸着熱交換器(51,52)では、水分を充分に放出させるために吸着剤を所定の温度まで昇温する必要がある。ところが、上述した加湿運転の第1動作や第2動作において、室外空気(OA)の温度が極端に低くなると、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)が室外空気によって冷やされてしまい、ひいては吸着熱交換器(51,52)を流れる冷媒の温度(凝縮温度)も低くなってしまう。その結果、吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を充分に昇温することができないため、吸着剤から放出される水分量が減少し、加湿運転での加湿性能が大幅に低下してしまう虞がある。
【0083】
そこで、本実施形態では、所定の条件が成立することで以下のようなバイパス動作を行うようにしている。
【0084】
加湿運転の起動時には、上記の通常動作が行われるが、この際、外気温度センサ(101)によって外気温度が検出される。制御部(100)は、外気温度センサ(101)の検出温度Toと、予め設定された所定の基準温度Tsとを比較する。ここで、例えば室外空気(OA)の温度が極めて低い温度(例えば−15℃)であり、検出温度Toが基準温度Tsよりも低くなったとする。この場合には、制御部(100)が、閉状態であった第1バイパス用ダンパ(83)を開放状態とし、この第1バイパス用ダンパ(83)を所定開度で保持する。その結果、上記の通常動作からバイパス動作へと移行する。なお、バイパス動作での加湿運転は、第1バイパス用ダンパ(83)が開放状態となることを除けば、上記通常動作と同様である。従って、バイパス動作における各ダンパ(41〜48)や四方切換弁(54)の切換え動作や、室内空気(RA)の流れの詳細についての説明は省略する。
【0085】
バイパス動作では、外気吸込口(24)から外気吸込通路(34)に取り込まれた室外空気の一部が第1バイパス通路(81)に分流する。つまり、バイパス動作では、室外空気(OA)の一部のみが凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)へ送られ、残りの空気は第1バイパス通路(81)を流れて吸着熱交換器(51,52)をバイパスする(例えば図4を参照)。これにより、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)を通過する室外空気の流量が減少するため、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)での冷媒の放熱量も減少する。その結果、バイパス動作中の冷媒回路(50)では、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)の冷媒の凝縮温度(凝縮圧力)が上昇していく。
【0086】
以上のようにして凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)を流れる冷媒の温度が高くなると、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤の温度も上昇し易くなる。このため、バイパス動作では、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を所望とする温度まで加熱でき、これにより、吸着剤から放出される水分量も増大する。
【0087】
以上のようにして、水分が付与された空気は給気ファン室(36)に流出する。また、第1バイパス通路(81)に分流した空気も給気ファン室(36)に流出する。給気ファン室(36)で合流した空気は、給気ダクト(113)を経由して室内へ供給される。
【0088】
なお、このようにバイパス動作を行うと、第1バイパス通路(81)を流出した比較的低温の空気が室内へ供給されてしまう。しかしながら、空調システム(110)には、調湿装置(10)の処理対象となる室内空間(S)と同一の空間の空調を行う空調機(120)が設けられている。このため、調湿装置(10)のバイパス動作時において、空調機(120)で加熱した空気を室内へ供給することで、室内の温度が低くなってしまうことを防止できる。即ち、調湿装置(10)のバイパス動作に連動して空調機(120)で暖房運転を行うことで、室内の温度の低下を防止つつ、室内の加湿を確実に行うことができる。
【0089】
〈単純換気運転〉
本実施形態の単純換気運転は、室外空気(OA)をそのまま供給空気(SA)として室内へ供給すると同時に、室内空気(RA)を排出空気(EA)として室外へ排出する。即ち、単純換気運転では、室内の調湿は行われず、室内の換気だけが行われる。
【0090】
単純換気運転では、図9に示すように、第1バイパス用ダンパ(83)及び第2バイパス用ダンパ(84)が開状態となり、第1内気側ダンパ(41)、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第2外気側ダンパ(44)、第1給気側ダンパ(45)、第2給気側ダンパ(46)、第1排気側ダンパ(47)、及び第2排気側ダンパ(48)が閉状態となる。また、単純換気運転中において、冷媒回路(50)の圧縮機(53)は停止状態となる。
【0091】
単純換気運転では、室外空気(OA)が外気吸込ダクト(111)を経由して調湿装置(10)の外気吸込口(24)へ流入する。この空気は、第1バイパス通路(81)から第1バイパス用ダンパ(83)を通って給気ファン室(36)へ流入し、その後に給気口(22)及び給気ダクト(113)を経由して室内へ供給される。
【0092】
同時に、室内空気(RA)が内気吸込ダクト(112)を経由して調湿装置(10)の内気吸込口(23)へ流入する。この空気は、第2バイパス通路(82)から第2バイパス用ダンパ(84)を通って排気ファン室(35)へ流入し、その後に排気口(21)及び排気ダクト(114)を経由して室外へ排出される。
【0093】
−バイパス動作の検証結果−
次に、上述したバイパス動作による加湿性能の向上効果について図10及び図11を参照しながら説明する。
【0094】
図10は、加湿運転におけるバイパス率と、冷媒の凝縮温度Tc及び蒸発温度Teとの関係を表したものである。ここで、図10及び図11に示すバイパス率は、調湿装置(10)のケーシング(11)内に取り込まれる室外空気(OA)の全流量をQとし、第1バイパス通路(81)に分流した空気(バイパス空気)の流量をQbとした場合に、全流量Qに占めるバイパス空気の流量Qbの割合である((Qb/Q)×100[%])。従って、例えば“バイパス率=0%”の動作は、第1バイパス通路(81)を空気が流れず、室外空気(OA)の全量が凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)へ送られることを意味する(即ち、上記の通常動作を意味する)。また、図11における水分放出量は、例えば単位時間あたりに、再生動作中の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤から放出される水分の量を示すものであり、通常動作(バイパス率=0%)の水分放出量を基準(100%)として、バイパス率の異なる他の動作の水分放出量を相対的に表したものである。
【0095】
まず、通常動作(バイパス率=0%)での加湿運転では、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)での冷媒の凝縮温度Tc及び蒸発温度Teが比較的低くなる(図10を参照)。従って、通常動作では、上述のように凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)で吸着剤を充分に昇温することができず、吸着剤からの水分放出量も少なくなっている(図11を参照)。これに対し、バイパス率の増大に伴い凝縮温度Tcも徐々に増大する。その結果、バイパス率の増大に伴って吸着剤をより高い温度まで加熱できるので、バイパス率が増大するほど、吸着剤からの水分放出量も大きくなる。
【0096】
なお、上述したバイパス動作では、バイパス率が約40%となるように第1バイパス用ダンパ(83)の開度が保持されるが、運転条件等に併せて他のバイパス率でバイパス動作を行うようにしても良い。また、例えば室外温度の低下に伴ってバイパス率を徐々に増大させる、というように第1バイパス用ダンパ(83)の開度を多段階に調節し、第1バイパス通路(81)を流れる空気の量を細かく制御するようにしても良い。
【0097】
−実施形態の効果−
上記実施形態では、加湿運転において、ケーシング(11)内に取り込んだ室外空気の一部のみを凝縮器側(加熱側)の吸着熱交換器(51,52)に送り、残りの空気は凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)をバイパスさせて室内へ送るバイパス動作を実行可能としている。このため、室外空気(OA)の温度が極端に低い条件下において、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を充分に昇温できなくなることを回避でき、これにより凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤から充分な量の水分を放出できる。従って、このような低外気条件下において、調湿装置(10)の加湿性能が大幅に低下してしまうことを防止でき、調湿装置(10)の信頼性を確保できる。
【0098】
また、上述したバイパス動作を行うことで、低外気条件下において、蒸発器側(冷却側)の吸着熱交換器(51,52)での吸着剤の凍結や結露水の発生を防止できる。具体的には、例えば上述した通常動作での加湿運転において、室外空気(OA)の温度が極端に低くなって凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)の冷媒の凝縮温度Tcが低下すると、これに伴い蒸発器側の吸着熱交換器(51,52)での冷媒の蒸発温度Teも低下してしまう。その結果、吸着熱交換器(51,52)の吸着剤が凍結してしまい、例えば吸着剤の剥離を招いてしまったり、吸着剤による水分の吸着性能が低下してしまったりする虞がある。また、室内空気(RA)が蒸発器側の吸着熱交換器(51,52)によって急激に冷やされることで、吸着熱交換器(51,52)の近傍で結露水が発生してしまう虞もある。
【0099】
ところが、上述のようにして低外気条件下でバイパス動作を行うことで、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)での冷媒の凝縮温度Tcを上昇できるため、これに伴い蒸発器側の吸着熱交換器(51,52)での冷媒の蒸発温度Teも上昇できる(図10を参照)。その結果、蒸発器側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤の凍結や、この吸着熱交換器(51,52)での結露水の発生を防止でき、調湿装置(10)の信頼性を確保できる。
【0100】
また、上記実施形態の加湿運転では、外気温度センサ(101)で検出した室外空気(OA)の温度が所定温度よりも低くなると、通常動作からバイパス動作へ移行するようにしている。このため、低外気条件下において、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を確実に昇温でき、調湿装置(10)の信頼性を一層確実に確保できる。
【0101】
−実施形態の変形例−
上記実施形態について、以下のような各変形例の構成としても良い。
【0102】
〈変形例1〉
図12に示すように、変形例1の空調システム(110)では、バイパス動作での加湿運転において、調湿装置(10)の第1バイパス通路(81)を流出した室外空気(OA)が、空調機(120)で加熱されてから室内へ供給される。即ち、変形例1では、調湿装置(10)の第1バイパス通路(81)の流出端に、中継ダクト(115)の始端が接続されている。中継ダクト(115)の終端は、空調機(120)の流入側の通路(室内熱交換器(121)の上流側の通路)に接続されている。
【0103】
変形例1の空調システム(110)の加湿運転において、上記実施形態と同様にしてバイパス動作が行われると、室外空気(OA)の一部が凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)を流れ、残りの空気が第1バイパス通路(81)を流れる。凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)では、冷媒の放熱量の低下に伴い吸着剤が昇温され、吸着剤からの水分の放出量が増大する。以上のようにして、多量の水分を含んだ空気は、給気ダクト(113)を経由して室内へ供給される。
【0104】
一方、第1バイパス通路(81)を流れる空気は、中継ダクト(115)を経由して空調機(120)の室内熱交換器(121)を通過する。これにより、室内熱交換器(121)では、比較的低温であった空気が、所定温度まで加熱される。加熱された空気は、室内へ供給されて暖房に利用される。
【0105】
〈変形例2〉
図13に示すように、変形例2の空調システム(110)では、バイパス動作の加湿運転において、調湿装置(10)の第1バイパス通路(81)を流出した室外空気(OA)が、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)を通過した空気と合流せずに、室内へ供給される。即ち、変形例2では、調湿装置(10)の第1バイパス通路(81)の流出端に、バイパス用ダクト(116)の始端が接続されている。バイパス用ダクト(116)の終端は、室内空間(S)に臨んでいる。
【0106】
変形例2の空調システム(110)の加湿運転時において、上記実施形態と同様にしてバイパス動作が行われると、室外空気(OA)の一部が凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)を流れ、残りの空気が第1バイパス通路(81)を流れる。凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)では、冷媒の放熱量の低下に伴い吸着剤が昇温され、吸着剤からの水分の放出量が増大する。以上のようにして、多量の水分を含んだ空気は、給気ダクト(113)を経由して室内へ供給される。一方、第1バイパス通路(81)を流れる空気は、バイパス用ダクト(116)を経由して室内へ供給される。
【0107】
〈変形例3〉
図14に示すように、上記変形例2のバイパス用ダクト(116)の終端を室外空間に臨ませるようにしても良い。即ち、変形例3の空調システム(110)の加湿運転時において、バイパス動作が行われると、ケーシング(11)内に取り込んだ室外空気の一部が、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)に通過して室内へ供給すると同時に、残りの空気が第1バイパス通路(81)を通じて室外へ排出される。これにより、第1バイパス通路(81)を流出した比較的低温の室外空気が、室内へ供給されることにより、空調機(120)の暖房負荷が増大してしまうことを防止できる。
【0108】
《その他の実施形態》
上記実施形態(その変形例も含む)については、以下のような構成としてもよい。
【0109】
上記実施形態では、加湿運転時において、室外空気の温度に基づいてバイパス動作の実行の判定をしている。しかしながら、他の指標に基づいてバイパス動作の実行の判定を行うようにしても良い。具体的には、加湿運転時において、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)を流れる冷媒の凝縮温度を検出し、この凝縮温度に基づいてバイパス動作の実行の判定を行っても良い。
【0110】
具体的には、例えば図15に示すように、冷媒回路(50)に第1冷媒温度センサ(51a)と第2冷媒温度センサ(52a)とを設ける。第1冷媒温度センサ(51a)は、第1吸着熱交換器(51)を流れる冷媒の凝縮温度を検出する第1凝縮温度検出部を構成し、第2冷媒温度センサ(52a)は、第2吸着熱交換器(52)を流れる冷媒の凝縮温度を検出する第2凝縮温度検出部を構成している。
【0111】
例えば第1吸着熱交換器(51)を凝縮器として加湿運転を行う場合には、第1冷媒温度センサ(51a)によって第1吸着熱交換器(51)を流れる冷媒の凝縮温度を検出する。ここで、この凝縮温度Tc1が所定温度よりも低い場合、通常動作からバイパス動作へ移行する。これにより、第1吸着熱交換器(51)の吸着剤から放出される水分量の低下を未然に回避できる。
【0112】
同様に、第2吸着熱交換器(52)を凝縮器として加湿運転を行う場合には、第2冷媒温度センサ(52a)によって第2吸着熱交換器(52)を流れる冷媒の凝縮温度を検出する。ここで、この凝縮温度Tc2が所定温度よりも低い場合、通常動作からバイパス動作へいこうする。これにより、第2吸着熱交換器(52)の吸着剤から放出される水分量の低下を未然に回避できる。
【0113】
なお、図15の例では、温度センサ(51a,52a)によって冷媒の凝縮温度を検出している。しかしながら、例えば冷媒回路(50)の高圧側(圧縮機(53)の吐出側)の圧力を検出し、この圧力に相当する飽和温度を冷媒の凝縮温度として用いるようにしても良い。即ち、凝縮温度検出部として、高圧側の圧力センサを用いるようにしても良い。
【0114】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0115】
以上説明したように、本発明は、室内の湿度を調節する調湿装置に関し、特に吸着熱交換器を有する冷媒回路を備え、吸着熱交換器で空気を加湿する加湿運転を行う調湿装置について有用である。
【符号の説明】
【0116】
10 調湿装置
11 ケーシング
50 冷媒回路
51 第1吸着熱交換器(吸着熱交換器)
51a 第1冷媒温度センサ(凝縮温度検出部)
52 第2吸着熱交換器(吸着熱交換器)
52a 第2冷媒温度センサ(凝縮温度検出部)
53 圧縮機
81 第1バイパス通路(バイパス通路)
83 第1バイパス用ダンパ(バイパス量可変機構)
100 制御部
101 外気温度センサ(外気温度検出部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の湿度を調節する調湿装置に関し、特に吸着熱交換器を有する冷媒回路を備え、吸着熱交換器で空気を加湿する加湿運転を行う調湿装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気の湿度を調湿する調湿装置が知られている。この種の調湿装置として、特許文献1には、吸着剤が担持された吸着熱交換器を用いて空気を調湿するものが開示されている。
【0003】
特許文献1の調湿装置は、冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる冷媒回路を有している。冷媒回路には、圧縮機と、第1吸着熱交換器と、第2吸着熱交換器と、膨張弁と、四方切換弁とが接続されている。圧縮機は、ケーシング内の所定の収容室に設けられている。また、第1吸着熱交換器と第2吸着熱交換器とは、ケーシング内の第1熱交換器室及び第2吸着熱交換器室にそれぞれ設けられている。
【0004】
冷媒回路では、四方切換弁の設定に応じて冷媒の循環方向が可逆に切り換え可能となっている。具体的に、冷媒回路では、四方切換弁の設定が所定時間おきに切り換わることで、第1吸着熱交換器を高圧冷媒が流れて第2吸着熱交換器を低圧冷媒が流れる第1の動作と、第1吸着熱交換器を低圧冷媒が流れて第2吸着熱交換器を高圧冷媒が流れる動作とが交互に行われる。
【0005】
低圧冷媒が流れる方の吸着熱交換器(蒸発器)では、吸着剤が冷媒によって冷却されるとともに、吸着剤に空気中の水分が吸着される。高圧冷媒が流れる方の吸着熱交換器(凝縮器、あるいは放熱器)では、吸着剤が冷媒によって加熱されるとともに、水分が吸着剤から脱離して空気に付与される。このように、各吸着熱交換器では、四方切換弁の切り換えに伴い、水分を吸着する動作(吸着動作)と水分を脱離する動作(再生動作)とが交互に行われる。
【0006】
この調湿装置の加湿運転では、ケーシング内に室外空気と室内空気とが取り込まれる。ケーシング内に取り込まれた室内空気は、低圧冷媒で冷却される側の吸着熱交換器に送られる。この冷却側の吸着熱交換器では、上記の吸着動作によって空気中の水分が吸着剤に吸着される。ケーシング内に取り込まれた室外空気は、高圧冷媒で加熱される側の吸着熱交換器に送られる。加熱側の吸着熱交換器では、上記の再生動作によって吸着剤から脱離した水分が空気に付与される。以上のようにして水分が付与された空気は、室内に供給される。これにより、室内の加湿が行われる。
【0007】
加湿運転時には、上記の第1動作と第2動作の切換に応じて、室外空気が加熱側の吸着熱交換器を流れて室内空気が冷却側の吸着熱交換器を流れるように、空気の流路がダンパによって切り換えられる。これにより、特許文献1の調湿装置の加湿運転では、室外空気が連続的に加湿されて室内に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−291532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示の調湿装置では、加熱側の吸着熱交換器に室外空気を通過させることで、この空気を加湿している。ところが、このような加湿運転を例えば寒冷地等で冬季に行う場合には、極端に低い温度の室外空気が加熱側の吸着熱交換器を流れることがある。このため、加熱側の吸着熱交換器では、高圧冷媒によって吸着剤を充分な温度まで昇温できず、これにより吸着剤から放出される水分量が大幅に減少してしまうことがある。
【0010】
以上のように、特許文献1に開示の調湿装置では、室外空気の温度が極端に低くなることで、加熱側の吸着熱交換器の吸着剤から放出される水分の量が大幅に減少してしまい、ひいては加湿性能が損なわれてしまう。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、低外気条件下においても、室外空気を確実に加湿して室内へ供給できる調湿装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、ケーシング(11)と、圧縮機(53)及び2つの吸着熱交換器(51,52)を有して一方の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を高圧冷媒で加熱すると同時に他方の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を低圧冷媒で冷却する冷凍サイクルが行われる冷媒回路(50)とを備え、上記ケーシング(11)内に室外空気を取り込み、取り込んだ室外空気を加熱側の吸着熱交換器(51,52)に通過させて室内へ供給すると同時に、上記ケーシング(11)内に室内空気を取り込み、取り込んだ室内空気を冷却側の吸着熱交換器(51,52)に通過させて室外へ排出する加湿運転を行う調湿装置を対象とする。そして、この調湿装置は、上記ケーシング(11)内に取り込んだ室外空気が上記吸着熱交換器(51,52)をバイパスして室内又は室外へ送られるように該ケーシング(11)に形成されるバイパス通路(81)と、該バイパス通路(81)を流れる空気の量を変更するためのバイパス量可変機構(83)と、上記加湿運転中に、上記ケーシング(11)に取り込んだ室外空気を全て上記加熱側の吸着熱交換器(51,52)に通過させて室内へ供給する通常動作と、上記ケーシング(11)に取り込んだ室外空気の一部を上記加熱側の吸着熱交換器(51,52)に通過させて室内へ供給すると同時に該室外空気の残りを上記バイパス通路(81)を通じて室内へ供給するバイパス動作とを切り換えて行うように上記バイパス量可変機構(83)を制御する制御部(100)とを備えていることを特徴とする。
【0013】
第1の発明の調湿装置において、加湿運転時の冷媒回路(50)では、圧縮機(53)から吐出された冷媒が循環することで冷凍サイクルが行われる。即ち、圧縮機(53)で圧縮された冷媒は、高圧冷媒として一方の吸着熱交換器(51,52)を流れて放熱する。放熱後の冷媒は、減圧機構等によって減圧された後に、低圧冷媒として他方の吸着熱交換器(51,52)を流れて蒸発する。蒸発した冷媒は、圧縮機(53)に吸入されて圧縮される。
【0014】
同時に加湿運転では、室内空気と室外空気との双方がケーシング(11)内に取り込まれる。ケーシング(11)内に取り込まれた室内空気は、低圧冷媒によって冷却されている冷却側(蒸発器側)の吸着熱交換器(51,52)を流れる。この冷却側の吸着熱交換器(51,52)では、空気中の水分が吸着剤に吸着される。この吸着剤の吸着熱は、冷媒の蒸発に利用される。以上のようにして冷却側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤に水分を付与した空気は、室外へ排出される。
【0015】
一方、ケーシング(11)内に取り込まれた室外空気は、高圧冷媒によって加熱されている加熱側(凝縮器側)の吸着熱交換器(51,52)を流れる。この加熱側の吸着熱交換器(51,52)では、吸着剤が所定温度まで加熱されることにより、吸着剤中の水分が空気中へ放出される。以上のようにして、加熱側の吸着熱交換器(51,52)で加湿された空気は、室内へ供給される。
【0016】
本発明の調湿装置では、上記のような加湿運転時において、制御部(100)がバイパス量可変機構(83)を制御することで、通常動作とバイパス動作とが切換可能となっている。通常動作では、ケーシング(11)内に取り込まれた室外空気の全量が、加熱側の吸着熱交換器(51,52)を流れる。つまり、この通常動作では、取り込んだ室外空気の全量が加湿されて室内へ供給される。
【0017】
ところで、室外空気の温度が極端に低い条件下において、加湿運転の通常動作を行ったとする。この場合には、加熱側の吸着熱交換器(51,52)が室外空気によって冷やされることで、この吸着熱交換器(51,52)を流れる冷媒の凝縮温度が低下し、更には冷却側の吸着熱交換器(51,52)を流れる冷媒の蒸発温度も低下してしまう。その結果、加熱側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を冷媒によって所望とする温度まで昇温させることができず、これにより吸着剤から放出される水分量が減少してしまう虞がある。
【0018】
そこで、本発明の調湿装置では、このような不具合を解消するために、加湿運転時にバイパス動作を実行可能としている。このバイパス動作では、ケーシング(11)に取り込まれた室外空気の一部のみが加熱側の吸着熱交換器(51,52)を流れ、残りの空気はバイパス通路(81)を通じて室内又は室外へ送られる。これにより、加熱側の吸着熱交換器(51,52)では、冷媒の凝縮温度を上昇できるので、吸着剤の温度低下を防止できる。従って、このようなバイパス動作を行うことで、室外空気の温度が極端に低い条件下においても、加熱側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を所望とする温度まで昇温させることができる。その結果、吸着剤から放出される水分量を充分に確保できる。
【0019】
第2の発明は、第1の発明において、上記バイパス通路(81)は、室外空気が上記吸着熱交換器(51,52)をバイパスして室内へ送られるように上記ケーシング(11)に形成されることを特徴とする。
【0020】
第2の発明では、上記のバイパス動作において、ケーシング(11)に取り込まれた室外空気の一部が加熱側の吸着熱交換器(51,52)で加湿されて室内へ供給されると同時に、加熱側の吸着熱交換器(51,52)をバイパスした残りの空気も室内へ供給される。つまり、本発明では、ケーシング(11)に取り込まれた室外空気の量の全てが最終的に室内へ供給されることになる。
【0021】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、室外空気の温度を検出するための外気温度検出部(101)を備え、上記制御部(100)は、上記加湿運転において、上記外気温度検出部(101)で検出した室外空気の温度が所定温度よりも低くなると、上記バイパス動作を行うように上記バイパス量可変機構(83)を制御することを特徴とする。
【0022】
第3の発明の調湿装置では、加湿運転において、外気温度検出部(101)が室外空気の温度を検出する。ここで、検出された外気温度が比較的低い場合、加熱側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を充分に昇温できず、吸着剤の再生効率が低下してしまうことが想定される。そこで、本発明では、外気温度検出部(101)で検出された外気温度が所定温度よりも低くなると、上記のバイパス動作が行われる。その結果、加熱側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤から放出される水分量が減少してしまうことが未然に回避される。
【0023】
第4の発明は、第1又は第2の発明において、上記冷媒回路(50)の高圧冷媒の凝縮温度を検出するための凝縮温度検出部(51a,52a)を備え、上記制御部(100)は、上記加湿運転において、上記凝縮温度検出部(51a,52a)で検出した凝縮温度が所定温度よりも低くなると、上記バイパス動作を行うように上記バイパス量可変機構(83)を制御することを特徴とする。
【0024】
第4の発明では、加湿運転において、凝縮温度検出部(51a,52a)が、冷媒回路(50)の高圧冷媒の凝縮温度を検出する。つまり、凝縮温度検出部(51a,52a)は、加熱側の吸着熱交換器(51,52)で凝縮する冷媒の温度を検出する。なお、凝縮温度検出部(51a,52a)は、必ずしも冷媒の温度を直接的に検知して凝縮温度を検出するものでなくても良く、例えば高圧冷媒の圧力から凝縮温度を間接的に求めるものであっても良い。ここで、検出された凝縮温度が比較的低い場合、加熱側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を充分に昇温できず、吸着剤の再生効率が低下してしまうことが想定される。そこで、本発明では、凝縮温度検出部(51a,52a)で検出された冷媒の凝縮温度が所定温度よりも低くなると、バイパス動作が行われる。その結果、加熱側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤から放出される水分量が減少してしまうことが未然に回避される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、加湿運転時において、ケーシング(11)内に取り込んだ室外空気の一部のみを加熱側の吸着熱交換器(51,52)に送り、残りの空気は加熱側の吸着熱交換器(51,52)をバイパスさせて室内又は室外へ送るバイパス動作を実行可能としている。このため、室外空気の温度が極端に低い条件下において、加熱側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を充分に昇温できなくなることを回避でき、これにより加熱側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤から放出される水分量を充分に確保できる。従って、このような低外気条件下において、調湿装置の加湿能力が大幅に低下してしまうことを防止でき、この調湿装置の信頼性を確保できる。つまり、この調湿装置の加湿運転では、処理可能な潜熱量を増大できるため、比較的低い顕熱比(顕熱量/全熱量)での調湿を行うことができる。
【0026】
また、このような低外気条件下において、室外空気によって加熱側の吸着熱交換器(51,52)が極端に冷やされてしまうと、この吸着熱交換器(51,52)を流れる冷媒の凝縮温度が低下すると同時に、冷却側(蒸発器)側の吸着熱交換器(51,52)を流れる冷媒の蒸発温度も低下してしまう。これにより、冷却側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤が凍結してしまったり、結露水が多量に発生したりする、という不具合が生じる。
【0027】
しかしながら、本発明のバイパス動作を行うことで、このような不具合も回避できる。具体的には、バイパス動作によって加熱側の吸着熱交換器(51,52)へ送る室外空気の量を減らすことで、加熱側の吸着熱交換器(51,52)を流れる冷媒の凝縮温度を上昇でき、ひいては冷却側(蒸発器側)の吸着熱交換器(51,52)を流れる冷媒の蒸発温度を上昇できる。その結果、冷却側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤の凍結や、冷却側の吸着熱交換器(51,52)の近傍での結露水の発生を回避することができる。
【0028】
また、第2の発明によれば、バイパス動作時において、加熱側の吸着熱交換器(51,52)をバイパスした室外空気を室内へ供給するようにしている。このため、バイパス動作において、室内からケーシング(11)内に取り込まれて室外へ排出される空気の量(排気量)と比べて、室外からケーシング(11)内に取り込まれて室内へ供給される空気の量(給気量)が相対的に少なくなってしまうことを回避できる。従って、バイパス動作において、調湿装置による加湿性能だけでなく、室内の換気性能も充分に確保できる。
【0029】
第3の発明では、外気温度検出部(101)の検出温度が所定温度よりも低くなることで、バイパス動作を実行するようにしている。従って、低外気条件下において、確実にバイパス動作を行うことができるので、室外空気の温度低下に起因する加湿性能の低下を確実に回避できる。
【0030】
また、第4の発明では、凝縮温度検出部(51a,52a)の検出温度が所定温度よりも低くなることで、バイパス動作を実行するようにしている。従って、高圧冷媒の凝縮温度の低下に起因する加湿性能の低下を確実に回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、前面側から見た調湿装置をケーシングの一部および電装品箱を省略して示す斜視図である。
【図2】図2は、調湿装置の一部を省略して示す概略の平面図、右側面図、及び左側面図である。
【図3】図3は、冷媒回路の構成を示す配管系統図であって、(A)は第1動作を示すものであり、(B)は第2動作を示すものである。
【図4】図4は、実施形態の空調システムの全体構成を模式的に表した構成図であり、加湿運転時のバイパス動作の空気流れを表したものである。
【図5】図5は、除湿換気運転の第1動作における空気の流れを示す調湿装置の概略の平面図、右側面図、及び左側面図である。
【図6】図6は、除湿換気運転の第2動作における空気の流れを示す調湿装置の概略の平面図、右側面図、及び左側面図である。
【図7】図7は、加湿換気運転の第1動作における空気の流れを示す調湿装置の概略の平面図、右側面図、及び左側面図である。
【図8】図8は、加湿換気運転の第2動作における空気の流れを示す調湿装置の概略の平面図、右側面図、及び左側面図である。
【図9】図9は、単純換気運転における空気の流れを示す調湿装置の概略の平面図、右側面図、及び左側面図である。
【図10】図10は、バイパス率と、冷媒の凝縮温度/蒸発温度との関係を表したグラフである。
【図11】図11は、バイパス率と、吸着剤から放出される水分量との関係を表したグラフである。
【図12】図12は、変形例1の空調システムの全体構成を模式的に表した構成図であり、加湿運転時のバイパス動作の空気流れを表したものである。
【図13】図13は、変形例2の空調システムの全体構成を模式的に表した構成図であり、加湿運転時のバイパス動作の空気流れを表したものである。
【図14】図14は、変形例3の空調システムの全体構成を模式的に表した構成図であり、加湿運転時のバイパス動作の空気流れを表したものである。
【図15】図15は、その他の実施形態の空調システムについての、冷媒回路の構成を示す配管系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本実施形態の調湿装置(10)は、取り込んだ室外空気(OA)の湿度を調節して室内へ供給するものである。また、調湿装置(10)は、室外空気(OA)を室内へ供給すると同時に室内空気(RA)を室外へ排出することで、室内の換気を行う。また、調湿装置(10)は、詳細は後述する空調システム(110)に含まれており、空調機(120)によって空調される室内の湿度を調節するように構成されている。
【0033】
〈調湿装置の全体構成〉
まず、調湿装置(10)について、図1,図2を適宜参照しながら説明する。なお、ここでの説明で用いる「上」「下」「左」「右」「前」「後」「手前」「奥」は、特にことわらない限り、調湿装置(10)を前面側から見た場合の方向を意味している。
【0034】
調湿装置(10)は、ケーシング(11)を備えている。また、ケーシング(11)内には、冷媒回路(50)が収容されている。この冷媒回路(50)には、第1吸着熱交換器(51)、第2吸着熱交換器(52)、圧縮機(53)、四方切換弁(54)、及び電動膨張弁(55)が接続されている。冷媒回路(50)の詳細は後述する。
【0035】
ケーシング(11)は、やや扁平で高さが比較的低い直方体状に形成されている。図1に示すケーシング(11)では、左手前の側面(即ち、前面)が前面パネル部(12)となり、右奥の側面(即ち、背面)が背面パネル部(13)となり、右手前の側面が第1側面パネル部(14)となり、左奥の側面が第2側面パネル部(15)となっている。
【0036】
ケーシング(11)には、外気吸込口(24)と、内気吸込口(23)と、給気口(22)と、排気口(21)とが形成されている。外気吸込口(24)及び内気吸込口(23)は、背面パネル部(13)に開口している。外気吸込口(24)は、背面パネル部(13)の下側部分に配置されている。内気吸込口(23)は、背面パネル部(13)の上側部分に配置されている。給気口(22)は、第1側面パネル部(14)における前面パネル部(12)側の端部付近に配置されている。排気口(21)は、第2側面パネル部(15)における前面パネル部(12)側の端部付近に配置されている。
【0037】
ケーシング(11)の内部空間には、上流側仕切板(71)と、下流側仕切板(72)と、中央仕切板(73)と、第1仕切板(74)と、第2仕切板(75)とが設けられている。これらの仕切板(71〜75)は、何れもケーシング(11)の底板に立設されており、ケーシング(11)の内部空間をケーシング(11)の底板から天板に亘って区画している。
【0038】
上流側仕切板(71)及び下流側仕切板(72)は、前面パネル部(12)及び背面パネル部(13)と平行な姿勢で、ケーシング(11)の前後方向に所定の間隔をおいて配置されている。上流側仕切板(71)は、背面パネル部(13)寄りに配置されている。下流側仕切板(72)は、前面パネル部(12)寄りに配置されている。
【0039】
第1仕切板(74)及び第2仕切板(75)は、第1側面パネル部(14)及び第2側面パネル部(15)と平行な姿勢で設置されている。第1仕切板(74)は、上流側仕切板(71)と下流側仕切板(72)の間の空間を右側から塞ぐように、第1側面パネル部(14)から所定の間隔をおいて配置されている。第2仕切板(75)は、上流側仕切板(71)と下流側仕切板(72)の間の空間を左側から塞ぐように、第2側面パネル部(15)から所定の間隔をおいて配置されている。
【0040】
中央仕切板(73)は、上流側仕切板(71)及び下流側仕切板(72)と直交する姿勢で、上流側仕切板(71)と下流側仕切板(72)の間に配置されている。中央仕切板(73)は、上流側仕切板(71)から下流側仕切板(72)に亘って設けられ、上流側仕切板(71)と下流側仕切板(72)の間の空間を左右に区画している。
【0041】
ケーシング(11)内において、上流側仕切板(71)と背面パネル部(13)の間の空間は、上下2つの空間に仕切られており、下側の空間が外気吸込通路(34)を構成し、上側の空間が内気吸込通路(32)を構成している。外気吸込通路(34)は、外気吸込口(24)と連通し、内気吸込通路(32)は、内気吸込口(23)と連通している。外気吸込通路(34)には、外気フィルタ(28)と外気湿度センサ(97)とが設置されている。内気吸込通路(32)には、内気フィルタ(27)と内気湿度センサ(96)とが設置されている。
【0042】
ケーシング(11)内における上流側仕切板(71)と下流側仕切板(72)の間の空間は、中央仕切板(73)によって左右に区画されており、中央仕切板(73)の右側の空間が第1熱交換器室(37)を構成し、中央仕切板(73)の左側の空間が第2熱交換器室(38)を構成している。第1熱交換器室(37)には、第1吸着熱交換器(51)が収容されている。第2熱交換器室(38)には、第2吸着熱交換器(52)が収容されている。また、図示しないが、第1熱交換器室(37)には、冷媒回路(50)の電動膨張弁(55)が収容されている。
【0043】
各吸着熱交換器(51,52)は、いわゆるクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器の表面に吸着剤を担持させたものであって、全体として長方形の厚板状あるいは扁平な直方体状に形成されている。各吸着熱交換器(51,52)は、その前面及び背面が上流側仕切板(71)及び下流側仕切板(72)と平行になる姿勢で、熱交換器室(37,38)内に立設されている。各吸着熱交換器(51,52)は、空気中の水分を吸着する吸着動作と、吸着した水分を空気中へ放出する再生動作(脱着動作)とが行われる吸着部材を構成している。
【0044】
ケーシング(11)の内部空間において、下流側仕切板(72)の前面に沿った空間は、上下に仕切られており、この上下に仕切られた空間のうち、上側の部分が給気側通路(31)を構成し、下側の部分が排気側通路(33)を構成している。
【0045】
上流側仕切板(71)には、開閉式のダンパ(41〜44)が4つ設けられている。各ダンパ(41〜44)は、概ね横長の長方形状に形成されている。具体的に、上流側仕切板(71)のうち内気吸込通路(32)に面する部分(上側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1内気側ダンパ(41)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2内気側ダンパ(42)が取り付けられる。また、上流側仕切板(71)のうち外気吸込通路(34)に面する部分(下側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1外気側ダンパ(43)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2外気側ダンパ(44)が取り付けられる。
【0046】
下流側仕切板(72)には、開閉式のダンパ(45〜48)が4つ設けられている。各ダンパ(45〜48)は、概ね横長の長方形状に形成されている。具体的に、下流側仕切板(72)のうち給気側通路(31)に面する部分(上側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1給気側ダンパ(45)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2給気側ダンパ(46)が取り付けられる。また、下流側仕切板(72)のうち排気側通路(33)に面する部分(下側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1排気側ダンパ(47)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2排気側ダンパ(48)が取り付けられる。
【0047】
ケーシング(11)内において、給気側通路(31)及び排気側通路(33)と前面パネル部(12)との間の空間は、仕切板(77)によって左右に仕切られており、仕切板(77)の右側の空間が給気ファン室(36)を構成し、仕切板(77)の左側の空間が排気ファン室(35)を構成している。
【0048】
給気ファン室(36)には、給気ファン(26)が収容されている。また、排気ファン室(35)には排気ファン(25)が収容されている。給気ファン(26)及び排気ファン(25)は、何れも遠心型の多翼ファン(いわゆるシロッコファン)である。給気ファン(26)は、下流側仕切板(72)側から吸い込んだ空気を給気口(22)へ吹き出す。排気ファン(25)は、下流側仕切板(72)側から吸い込んだ空気を排気口(21)へ吹き出す。
【0049】
給気ファン室(36)には、冷媒回路(50)の圧縮機(53)と四方切換弁(54)とが収容されている。圧縮機(53)及び四方切換弁(54)は、給気ファン室(36)における給気ファン(26)と仕切板(77)との間に配置されている。
【0050】
圧縮機(53)は、圧縮機モータの回転数が可変(即ち、容量が可変)なインバータ式の圧縮機で構成されている。また、圧縮機(53)は、固定スクロールと可動スクロールとが噛み合わされて、可動スクロールが固定スクロールに対して偏心回転して冷媒を圧縮する、スクロール式の圧縮機で構成されている。また、圧縮機(53)は、後述する運転動作において、基本的には冷媒回路(50)の低圧(蒸発圧力)と高圧(凝縮圧力)との間の差圧(いわゆる高低差圧)が所定の圧力となるように、圧縮機(53)の運転周波数が制御される。
【0051】
ケーシング(11)内において、第1仕切板(74)と第1側面パネル部(14)の間の空間は、第1バイパス通路(81)を構成している。第1バイパス通路(81)の始端は、外気吸込通路(34)だけに連通しており、内気吸込通路(32)からは遮断されている。第1バイパス通路(81)の終端は、仕切板(78)によって、給気側通路(31)、排気側通路(33)、及び給気ファン室(36)から区画されている。仕切板(78)のうち給気ファン室(36)に臨む部分には、第1バイパス用ダンパ(83)が設けられている。
【0052】
第1バイパス用ダンパ(83)が開放状態になると、第1バイパス通路(81)の終端と給気側通路(31)とが連通する。つまり、第1バイパス通路(81)は、外気吸込通路(34)と給気側通路(31)とを連通可能としている。第1バイパス通路(81)は、ケーシング(11)内に取り込んだ室外空気が各吸着熱交換器(51,52)をバイパスして室内へ送るための、本発明のバイパス流路を構成している。また、第1バイパス用ダンパ(83)は、開度が多段階に変更可能に構成され、第1バイパス通路(81)を流れる空気の量を変更するためのバイパス量可変機構を構成している。更に、調湿装置(10)は、第1バイパス用ダンパ(83)の開度を制御する制御部(100)を有している(図4を参照)。
【0053】
ケーシング(11)内において、第2仕切板(75)と第2側面パネル部(15)の間の空間は、第2バイパス通路(82)を構成している。第2バイパス通路(82)の始端は、内気吸込通路(32)だけに連通しており、外気吸込通路(34)からは遮断されている。第2バイパス通路(82)の終端は、仕切板(79)によって、給気側通路(31)、排気側通路(33)、及び排気ファン室(35)から区画されている。仕切板(79)のうち排気ファン室(35)に臨む部分には、第2バイパス用ダンパ(84)が設けられている。
【0054】
〈冷媒回路の構成〉
図3に示すように、冷媒回路(50)は、第1吸着熱交換器(51)、第2吸着熱交換器(52)、圧縮機(53)、四方切換弁(54)、及び電動膨張弁(55)が設けられた閉回路である。この冷媒回路(50)は、充填された冷媒を循環させることによって、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。
【0055】
冷媒回路(50)において、圧縮機(53)は、その吐出側が四方切換弁(54)の第1のポートに、その吸入側が四方切換弁(54)の第2のポートにそれぞれ接続されている。また、冷媒回路(50)では、第1吸着熱交換器(51)と電動膨張弁(55)と第2吸着熱交換器(52)とが、四方切換弁(54)の第3のポートから第4のポートへ向かって順に接続されている。
【0056】
四方切換弁(54)は、第1のポートと第3のポートが連通して第2のポートと第4のポートが連通する第1状態(図3(A)に示す状態)と、第1のポートと第4のポートが連通して第2のポートと第3のポートが連通する第2状態(図3(B)に示す状態)とに切り換え可能となっている。このような四方切換弁(54)の設定の切り換えに応じて、冷媒回路(50)での冷媒の循環方向が反転する。即ち、四方切換弁(54)は、冷媒の循環方向を可逆に切り換える冷媒流路切換機構を構成している。そして、冷媒回路(50)では、四方切換弁(54)の切り換えに応じて、第1吸着熱交換器(51)を高圧冷媒が流れて第2吸着熱交換器(52)を低圧冷媒が流れる動作と、第1吸着熱交換器(51)を低圧冷媒が流れて第2吸着熱交換器(52)を高圧冷媒が流れる動作とが交互に行われる。
【0057】
〈空調システムの全体構成〉
図4に模式的に示すように、空調システム(110)は、上記の調湿装置(10)と空調機(120)とを備えている。空調システム(110)では、調湿装置(10)と空調機(120)とが、同一の室内空間(S)を処理対象としている。
【0058】
調湿装置(10)は、例えば室内空間(S)の天井裏に設けられる。空調システム(110)は、外気吸込ダクト(111)と内気吸込ダクト(112)と給気ダクト(113)と排気ダクト(114)とを備えている。外気吸込ダクト(111)は、一端が外気吸込口(24)と接続して他端が室外と連通している。内気吸込ダクト(112)は、一端が内気吸込口(23)と接続して他端が室内空間(S)と連通している。給気ダクト(113)は、一端が給気口(22)と接続して他端が室内空間(S)と連通している。排気ダクト(114)は、一端が排気口(21)と接続して他端が室外と連通している。
【0059】
調湿装置(10)は、制御部(100)と外気温度センサ(101)とを備えている。制御部(100)は、第2バイパス用ダンパ(84)の開度(即ち、ダンパ角度)を調整するための制御手段を構成している。外気温度センサ(101)は、例えば外気吸込ダクト(111)の内部に配置されている。外気温度センサ(101)は、室外空気(OA)の温度を検出するための外気温度検出部を構成している。なお、外気温度センサ(101)を外気吸込通路(34)や室外に配置するようにしても良い。
【0060】
空調機(120)は、室内空間(S)の冷房や暖房を行うものである。空調機(120)は、例えば天井埋込式に構成されている。空調機(120)は、そのケーシング内に室内熱交換器(121)を備えている。室内熱交換器(121)は、冷凍サイクルが行われる冷媒回路(図示省略)に接続されている。室内熱交換器(121)では、冷媒と空気とが熱交換することで、この空気が冷却又は加熱される。
【0061】
−運転動作−
空調システム(110)の運転動作について説明する。空調システム(110)では、空調機(120)と調湿装置(10)とが同時に運転可能となっている。空調機(120)は、冷房運転と暖房運転とを切り換えて行う。即ち、空調機(120)の冷房運転では、室内熱交換器(121)が蒸発器となり、この室内熱交換器(121)によって室内空気が冷却される。また、空調機(120)の暖房運転では、室内熱交換器(121)が凝縮器となり、この室内熱交換器(121)によって室内空気が加熱される。
【0062】
また、調湿装置(10)は、除湿運転と加湿運転と単純換気運転とを切り換えて行う。また、調湿装置(10)の加湿運転では、通常動作とバイパス動作との2種類の運転が実行可能となっている。以下に、調湿装置(10)の各運転について詳細に説明する。
【0063】
〈除湿運転〉
本実施形態の除湿運転は、室外空気(OA)を除湿し、除湿後の空気を供給空気(SA)として室内へ供給すると同時に、室内空気(RA)を排出空気(EA)として室外へ排出する。即ち、除湿運転では、室内の除湿と室内の換気とが同時に行われる。
【0064】
除湿運転では、給気ファン(26)及び排気ファン(25)が運転状態となる。また、除湿運転では、複数のダンパの開閉状態が切り換わることで、後述する第1動作と第2動作とが交互に繰り返される。なお、第1動作と第2動作とは、所定の設定時間(例えば3分間)置きに切り換えられる。また、除湿運転において、第1バイパス用ダンパ(83)及び第2バイパス用ダンパ(84)は、常に閉状態となる。
【0065】
給気ファン(26)が運転されると、室外空気(OA)が外気吸込ダクト(111)を経由して調湿装置(10)の外気吸込口(24)へ流入する。また、排気ファン(25)が運転されると、室内空気(RA)が内気吸込ダクト(112)を経由して調湿装置(10)の内気吸込口(23)へ流入する。
【0066】
除湿運転の第1動作では、図5に示すように、第1内気側ダンパ(41)、第2外気側ダンパ(44)、第2給気側ダンパ(46)、及び第1排気側ダンパ(47)が開状態となり、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第1給気側ダンパ(45)、及び第2排気側ダンパ(48)が閉状態となる。また、この第1動作中の冷媒回路(50)では、四方切換弁(54)が第1状態(図3(A)に示す状態)に設定され、第1吸着熱交換器(51)が凝縮器となって第2吸着熱交換器(52)が蒸発器となる。つまり、第1動作では、第1吸着熱交換器(51)の吸着剤が高圧冷媒で加熱され、第2吸着熱交換器(52)の吸着剤が低圧冷媒で冷却される。その結果、加熱側となる第1吸着熱交換器(51)では、吸着した水分を空気中へ放出する再生動作が行われ、冷却側となる第2吸着熱交換器(52)では、空気中の水分を吸着する吸着動作が行われる。
【0067】
除湿運転の第1動作では、外気吸込口(24)へ流入した室外空気(OA)が、第2熱交換器室(38)へ流入し、蒸発器側の第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、空気中の水分が吸着剤に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。第2吸着熱交換器(52)で除湿された空気は、給気口(22)から調湿装置(10)の外部へ流出し、給気ダクト(113)を経由して室内へ供給される。
【0068】
また、内気吸込口(23)へ流入した室内空気(RA)は、第1熱交換器室(37)へ流入し、凝縮器側の第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、冷媒で加熱された吸着剤から水分が脱離し、この脱離した水分が空気に付与される。第1吸着熱交換器(51)で水分を付与された空気は、排気口(21)から調湿装置(10)の外部へ流出し、排気ダクト(114)を経由して室外へ排出される。
【0069】
除湿運転の第2動作では、図6に示すように、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第1給気側ダンパ(45)、及び第2排気側ダンパ(48)が開状態となり、第1内気側ダンパ(41)、第2外気側ダンパ(44)、第2給気側ダンパ(46)、及び第1排気側ダンパ(47)が閉状態となる。また、この第2動作中の冷媒回路(50)では、四方切換弁(54)が第2状態(図3(B)に示す状態)に設定され、第1吸着熱交換器(51)が蒸発器となって第2吸着熱交換器(52)が凝縮器となる。つまり、第2動作では、第1吸着熱交換器(51)の吸着剤が低圧冷媒で冷却され、第2吸着熱交換器(52)の吸着剤が高圧冷媒で加熱される。その結果、冷却側の第1吸着熱交換器(51)で吸着動作が行われ、加熱側の第2吸着熱交換器(52)で再生動作が行われる。
【0070】
第2動作では、外気吸込口(24)へ流入した室外空気(OA)が、第1熱交換器室(37)へ流入し、蒸発器側の第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、空気中の水分が吸着剤に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。第1吸着熱交換器(51)で除湿された空気は、給気口(22)から調湿装置(10)の外部へ流出し、給気ダクト(113)を経由して室内へ供給される。
【0071】
また、内気吸込口(23)へ流入した室内空気(RA)は、第2熱交換器室(38)へ流入し、凝縮器側の第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、冷媒で加熱された吸着剤から水分が脱離し、この脱離した水分が空気に付与される。第2吸着熱交換器(52)で水分を付与された空気は、排気口(21)から調湿装置(10)の外部へ流出し、排気ダクト(114)を経由して室外へ排出される。
【0072】
〈加湿運転〉
本実施形態の加湿運転は、室外空気(OA)を加湿し、加湿後の空気を供給空気(SA)として室内へ供給すると同時に、室内空気(RA)を排出空気(EA)として室外へ排出する。即ち、加湿運転では、室内の加湿と室内の換気とが同時に行われる。まず、加湿運転の通常動作について説明する。
【0073】
〔通常動作〕
加湿運転の通常動作では、給気ファン(26)及び排気ファン(25)が運転状態となる。また、加湿運転では、複数のダンパの開閉状態が切り換わることで、後述する第1動作と第2動作とが交互に繰り返される。なお、第1動作と第2動作とは、所定の設定時間(例えば4分間)置きに切り換えられる。また、加湿運転において、第1バイパス用ダンパ(83)及び第2バイパス用ダンパ(84)が、常に閉状態となる。
【0074】
給気ファン(26)が運転されると、室外空気(OA)が外気吸込ダクト(111)を経由して調湿装置(10)の外気吸込口(24)へ流入する。また、排気ファン(25)が運転されると、室内空気(RA)が内気吸込ダクト(112)を経由して調湿装置(10)の内気吸込口(23)へ流入する。
【0075】
加湿運転の第1動作では、図7に示すように、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第1給気側ダンパ(45)、及び第2排気側ダンパ(48)が開状態となり、第1内気側ダンパ(41)、第2外気側ダンパ(44)、第2給気側ダンパ(46)、及び第1排気側ダンパ(47)が閉状態となる。また、この第1動作中の冷媒回路(50)では、四方切換弁(54)が第1状態(図3(A)に示す状態)に設定され、第1吸着熱交換器(51)が凝縮器(加熱側)となって第2吸着熱交換器(52)が蒸発器(冷却側)となる。
【0076】
加湿運転の第1動作では、内気吸込口(23)へ流入した室内空気(RA)が、第2熱交換器室(38)へ流入し、蒸発器側の第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、空気中の水分が吸着剤に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。第2吸着熱交換器(52)の吸着剤へ水分を付与した空気は、排気口(21)から調湿装置(10)の外部へ流出し、排気ダクト(114)を経由して室外へ排出される。
【0077】
また、外気吸込口(24)へ流入した室外空気(OA)は、第1熱交換器室(37)へ流入し、凝縮器側の第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、冷媒で加熱された吸着剤から水分が脱離し、この脱離した水分が空気に付与される。第1吸着熱交換器(51)で加湿された空気は、給気口(22)から調湿装置(10)の外部へ流出し、給気ダクト(113)を経由して室内へ供給される。
【0078】
加湿運転の第2動作では、図8に示すように、第1内気側ダンパ(41)、第2外気側ダンパ(44)、第2給気側ダンパ(46)、及び第1排気側ダンパ(47)が開状態となり、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第1給気側ダンパ(45)、及び第2排気側ダンパ(48)が閉状態となる。また、この第2動作中の冷媒回路(50)では、四方切換弁(54)が第2状態(図3(B)に示す状態)に設定され、第1吸着熱交換器(51)が蒸発器(冷却側)となって第2吸着熱交換器(52)が凝縮器(加熱側)となる。
【0079】
加湿運転の第2動作では、内気吸込口(23)へ流入した室内空気(RA)が、第1熱交換器室(37)へ流入し、蒸発器側の第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、空気中の水分が吸着剤に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。第1吸着熱交換器(51)の吸着剤へ水分を付与した空気は、排気口(21)から調湿装置(10)の外部へ流出し、排気ダクト(114)を経由して室外へ排出される。
【0080】
また、外気吸込口(24)へ流入した室外空気(OA)は、第2熱交換器室(38)へ流入し、凝縮器側の第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、冷媒で加熱された吸着剤から水分が脱離し、この脱離した水分が空気に付与される。第2吸着熱交換器(52)で加湿された空気は、給気口(22)から調湿装置(10)の外部へ流出し、給気ダクト(113)を経由して室内へ供給される。
【0081】
〔バイパス動作〕
上述した加湿運転は、空気が乾燥し易い冬季に行われることが多い。このため、加湿運転では、室外空気(OA)の温度が比較的低くなり易い。従って、室外空気(OA)の温度が極端に低い条件下において上述の加湿運転を行うと、凝縮器側(加熱/再生側)の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤から放出される水分量が減少してしまうことがある。
【0082】
即ち、吸着熱交換器(51,52)では、水分を充分に放出させるために吸着剤を所定の温度まで昇温する必要がある。ところが、上述した加湿運転の第1動作や第2動作において、室外空気(OA)の温度が極端に低くなると、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)が室外空気によって冷やされてしまい、ひいては吸着熱交換器(51,52)を流れる冷媒の温度(凝縮温度)も低くなってしまう。その結果、吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を充分に昇温することができないため、吸着剤から放出される水分量が減少し、加湿運転での加湿性能が大幅に低下してしまう虞がある。
【0083】
そこで、本実施形態では、所定の条件が成立することで以下のようなバイパス動作を行うようにしている。
【0084】
加湿運転の起動時には、上記の通常動作が行われるが、この際、外気温度センサ(101)によって外気温度が検出される。制御部(100)は、外気温度センサ(101)の検出温度Toと、予め設定された所定の基準温度Tsとを比較する。ここで、例えば室外空気(OA)の温度が極めて低い温度(例えば−15℃)であり、検出温度Toが基準温度Tsよりも低くなったとする。この場合には、制御部(100)が、閉状態であった第1バイパス用ダンパ(83)を開放状態とし、この第1バイパス用ダンパ(83)を所定開度で保持する。その結果、上記の通常動作からバイパス動作へと移行する。なお、バイパス動作での加湿運転は、第1バイパス用ダンパ(83)が開放状態となることを除けば、上記通常動作と同様である。従って、バイパス動作における各ダンパ(41〜48)や四方切換弁(54)の切換え動作や、室内空気(RA)の流れの詳細についての説明は省略する。
【0085】
バイパス動作では、外気吸込口(24)から外気吸込通路(34)に取り込まれた室外空気の一部が第1バイパス通路(81)に分流する。つまり、バイパス動作では、室外空気(OA)の一部のみが凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)へ送られ、残りの空気は第1バイパス通路(81)を流れて吸着熱交換器(51,52)をバイパスする(例えば図4を参照)。これにより、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)を通過する室外空気の流量が減少するため、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)での冷媒の放熱量も減少する。その結果、バイパス動作中の冷媒回路(50)では、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)の冷媒の凝縮温度(凝縮圧力)が上昇していく。
【0086】
以上のようにして凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)を流れる冷媒の温度が高くなると、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤の温度も上昇し易くなる。このため、バイパス動作では、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を所望とする温度まで加熱でき、これにより、吸着剤から放出される水分量も増大する。
【0087】
以上のようにして、水分が付与された空気は給気ファン室(36)に流出する。また、第1バイパス通路(81)に分流した空気も給気ファン室(36)に流出する。給気ファン室(36)で合流した空気は、給気ダクト(113)を経由して室内へ供給される。
【0088】
なお、このようにバイパス動作を行うと、第1バイパス通路(81)を流出した比較的低温の空気が室内へ供給されてしまう。しかしながら、空調システム(110)には、調湿装置(10)の処理対象となる室内空間(S)と同一の空間の空調を行う空調機(120)が設けられている。このため、調湿装置(10)のバイパス動作時において、空調機(120)で加熱した空気を室内へ供給することで、室内の温度が低くなってしまうことを防止できる。即ち、調湿装置(10)のバイパス動作に連動して空調機(120)で暖房運転を行うことで、室内の温度の低下を防止つつ、室内の加湿を確実に行うことができる。
【0089】
〈単純換気運転〉
本実施形態の単純換気運転は、室外空気(OA)をそのまま供給空気(SA)として室内へ供給すると同時に、室内空気(RA)を排出空気(EA)として室外へ排出する。即ち、単純換気運転では、室内の調湿は行われず、室内の換気だけが行われる。
【0090】
単純換気運転では、図9に示すように、第1バイパス用ダンパ(83)及び第2バイパス用ダンパ(84)が開状態となり、第1内気側ダンパ(41)、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第2外気側ダンパ(44)、第1給気側ダンパ(45)、第2給気側ダンパ(46)、第1排気側ダンパ(47)、及び第2排気側ダンパ(48)が閉状態となる。また、単純換気運転中において、冷媒回路(50)の圧縮機(53)は停止状態となる。
【0091】
単純換気運転では、室外空気(OA)が外気吸込ダクト(111)を経由して調湿装置(10)の外気吸込口(24)へ流入する。この空気は、第1バイパス通路(81)から第1バイパス用ダンパ(83)を通って給気ファン室(36)へ流入し、その後に給気口(22)及び給気ダクト(113)を経由して室内へ供給される。
【0092】
同時に、室内空気(RA)が内気吸込ダクト(112)を経由して調湿装置(10)の内気吸込口(23)へ流入する。この空気は、第2バイパス通路(82)から第2バイパス用ダンパ(84)を通って排気ファン室(35)へ流入し、その後に排気口(21)及び排気ダクト(114)を経由して室外へ排出される。
【0093】
−バイパス動作の検証結果−
次に、上述したバイパス動作による加湿性能の向上効果について図10及び図11を参照しながら説明する。
【0094】
図10は、加湿運転におけるバイパス率と、冷媒の凝縮温度Tc及び蒸発温度Teとの関係を表したものである。ここで、図10及び図11に示すバイパス率は、調湿装置(10)のケーシング(11)内に取り込まれる室外空気(OA)の全流量をQとし、第1バイパス通路(81)に分流した空気(バイパス空気)の流量をQbとした場合に、全流量Qに占めるバイパス空気の流量Qbの割合である((Qb/Q)×100[%])。従って、例えば“バイパス率=0%”の動作は、第1バイパス通路(81)を空気が流れず、室外空気(OA)の全量が凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)へ送られることを意味する(即ち、上記の通常動作を意味する)。また、図11における水分放出量は、例えば単位時間あたりに、再生動作中の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤から放出される水分の量を示すものであり、通常動作(バイパス率=0%)の水分放出量を基準(100%)として、バイパス率の異なる他の動作の水分放出量を相対的に表したものである。
【0095】
まず、通常動作(バイパス率=0%)での加湿運転では、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)での冷媒の凝縮温度Tc及び蒸発温度Teが比較的低くなる(図10を参照)。従って、通常動作では、上述のように凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)で吸着剤を充分に昇温することができず、吸着剤からの水分放出量も少なくなっている(図11を参照)。これに対し、バイパス率の増大に伴い凝縮温度Tcも徐々に増大する。その結果、バイパス率の増大に伴って吸着剤をより高い温度まで加熱できるので、バイパス率が増大するほど、吸着剤からの水分放出量も大きくなる。
【0096】
なお、上述したバイパス動作では、バイパス率が約40%となるように第1バイパス用ダンパ(83)の開度が保持されるが、運転条件等に併せて他のバイパス率でバイパス動作を行うようにしても良い。また、例えば室外温度の低下に伴ってバイパス率を徐々に増大させる、というように第1バイパス用ダンパ(83)の開度を多段階に調節し、第1バイパス通路(81)を流れる空気の量を細かく制御するようにしても良い。
【0097】
−実施形態の効果−
上記実施形態では、加湿運転において、ケーシング(11)内に取り込んだ室外空気の一部のみを凝縮器側(加熱側)の吸着熱交換器(51,52)に送り、残りの空気は凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)をバイパスさせて室内へ送るバイパス動作を実行可能としている。このため、室外空気(OA)の温度が極端に低い条件下において、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を充分に昇温できなくなることを回避でき、これにより凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤から充分な量の水分を放出できる。従って、このような低外気条件下において、調湿装置(10)の加湿性能が大幅に低下してしまうことを防止でき、調湿装置(10)の信頼性を確保できる。
【0098】
また、上述したバイパス動作を行うことで、低外気条件下において、蒸発器側(冷却側)の吸着熱交換器(51,52)での吸着剤の凍結や結露水の発生を防止できる。具体的には、例えば上述した通常動作での加湿運転において、室外空気(OA)の温度が極端に低くなって凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)の冷媒の凝縮温度Tcが低下すると、これに伴い蒸発器側の吸着熱交換器(51,52)での冷媒の蒸発温度Teも低下してしまう。その結果、吸着熱交換器(51,52)の吸着剤が凍結してしまい、例えば吸着剤の剥離を招いてしまったり、吸着剤による水分の吸着性能が低下してしまったりする虞がある。また、室内空気(RA)が蒸発器側の吸着熱交換器(51,52)によって急激に冷やされることで、吸着熱交換器(51,52)の近傍で結露水が発生してしまう虞もある。
【0099】
ところが、上述のようにして低外気条件下でバイパス動作を行うことで、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)での冷媒の凝縮温度Tcを上昇できるため、これに伴い蒸発器側の吸着熱交換器(51,52)での冷媒の蒸発温度Teも上昇できる(図10を参照)。その結果、蒸発器側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤の凍結や、この吸着熱交換器(51,52)での結露水の発生を防止でき、調湿装置(10)の信頼性を確保できる。
【0100】
また、上記実施形態の加湿運転では、外気温度センサ(101)で検出した室外空気(OA)の温度が所定温度よりも低くなると、通常動作からバイパス動作へ移行するようにしている。このため、低外気条件下において、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を確実に昇温でき、調湿装置(10)の信頼性を一層確実に確保できる。
【0101】
−実施形態の変形例−
上記実施形態について、以下のような各変形例の構成としても良い。
【0102】
〈変形例1〉
図12に示すように、変形例1の空調システム(110)では、バイパス動作での加湿運転において、調湿装置(10)の第1バイパス通路(81)を流出した室外空気(OA)が、空調機(120)で加熱されてから室内へ供給される。即ち、変形例1では、調湿装置(10)の第1バイパス通路(81)の流出端に、中継ダクト(115)の始端が接続されている。中継ダクト(115)の終端は、空調機(120)の流入側の通路(室内熱交換器(121)の上流側の通路)に接続されている。
【0103】
変形例1の空調システム(110)の加湿運転において、上記実施形態と同様にしてバイパス動作が行われると、室外空気(OA)の一部が凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)を流れ、残りの空気が第1バイパス通路(81)を流れる。凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)では、冷媒の放熱量の低下に伴い吸着剤が昇温され、吸着剤からの水分の放出量が増大する。以上のようにして、多量の水分を含んだ空気は、給気ダクト(113)を経由して室内へ供給される。
【0104】
一方、第1バイパス通路(81)を流れる空気は、中継ダクト(115)を経由して空調機(120)の室内熱交換器(121)を通過する。これにより、室内熱交換器(121)では、比較的低温であった空気が、所定温度まで加熱される。加熱された空気は、室内へ供給されて暖房に利用される。
【0105】
〈変形例2〉
図13に示すように、変形例2の空調システム(110)では、バイパス動作の加湿運転において、調湿装置(10)の第1バイパス通路(81)を流出した室外空気(OA)が、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)を通過した空気と合流せずに、室内へ供給される。即ち、変形例2では、調湿装置(10)の第1バイパス通路(81)の流出端に、バイパス用ダクト(116)の始端が接続されている。バイパス用ダクト(116)の終端は、室内空間(S)に臨んでいる。
【0106】
変形例2の空調システム(110)の加湿運転時において、上記実施形態と同様にしてバイパス動作が行われると、室外空気(OA)の一部が凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)を流れ、残りの空気が第1バイパス通路(81)を流れる。凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)では、冷媒の放熱量の低下に伴い吸着剤が昇温され、吸着剤からの水分の放出量が増大する。以上のようにして、多量の水分を含んだ空気は、給気ダクト(113)を経由して室内へ供給される。一方、第1バイパス通路(81)を流れる空気は、バイパス用ダクト(116)を経由して室内へ供給される。
【0107】
〈変形例3〉
図14に示すように、上記変形例2のバイパス用ダクト(116)の終端を室外空間に臨ませるようにしても良い。即ち、変形例3の空調システム(110)の加湿運転時において、バイパス動作が行われると、ケーシング(11)内に取り込んだ室外空気の一部が、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)に通過して室内へ供給すると同時に、残りの空気が第1バイパス通路(81)を通じて室外へ排出される。これにより、第1バイパス通路(81)を流出した比較的低温の室外空気が、室内へ供給されることにより、空調機(120)の暖房負荷が増大してしまうことを防止できる。
【0108】
《その他の実施形態》
上記実施形態(その変形例も含む)については、以下のような構成としてもよい。
【0109】
上記実施形態では、加湿運転時において、室外空気の温度に基づいてバイパス動作の実行の判定をしている。しかしながら、他の指標に基づいてバイパス動作の実行の判定を行うようにしても良い。具体的には、加湿運転時において、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)を流れる冷媒の凝縮温度を検出し、この凝縮温度に基づいてバイパス動作の実行の判定を行っても良い。
【0110】
具体的には、例えば図15に示すように、冷媒回路(50)に第1冷媒温度センサ(51a)と第2冷媒温度センサ(52a)とを設ける。第1冷媒温度センサ(51a)は、第1吸着熱交換器(51)を流れる冷媒の凝縮温度を検出する第1凝縮温度検出部を構成し、第2冷媒温度センサ(52a)は、第2吸着熱交換器(52)を流れる冷媒の凝縮温度を検出する第2凝縮温度検出部を構成している。
【0111】
例えば第1吸着熱交換器(51)を凝縮器として加湿運転を行う場合には、第1冷媒温度センサ(51a)によって第1吸着熱交換器(51)を流れる冷媒の凝縮温度を検出する。ここで、この凝縮温度Tc1が所定温度よりも低い場合、通常動作からバイパス動作へ移行する。これにより、第1吸着熱交換器(51)の吸着剤から放出される水分量の低下を未然に回避できる。
【0112】
同様に、第2吸着熱交換器(52)を凝縮器として加湿運転を行う場合には、第2冷媒温度センサ(52a)によって第2吸着熱交換器(52)を流れる冷媒の凝縮温度を検出する。ここで、この凝縮温度Tc2が所定温度よりも低い場合、通常動作からバイパス動作へいこうする。これにより、第2吸着熱交換器(52)の吸着剤から放出される水分量の低下を未然に回避できる。
【0113】
なお、図15の例では、温度センサ(51a,52a)によって冷媒の凝縮温度を検出している。しかしながら、例えば冷媒回路(50)の高圧側(圧縮機(53)の吐出側)の圧力を検出し、この圧力に相当する飽和温度を冷媒の凝縮温度として用いるようにしても良い。即ち、凝縮温度検出部として、高圧側の圧力センサを用いるようにしても良い。
【0114】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0115】
以上説明したように、本発明は、室内の湿度を調節する調湿装置に関し、特に吸着熱交換器を有する冷媒回路を備え、吸着熱交換器で空気を加湿する加湿運転を行う調湿装置について有用である。
【符号の説明】
【0116】
10 調湿装置
11 ケーシング
50 冷媒回路
51 第1吸着熱交換器(吸着熱交換器)
51a 第1冷媒温度センサ(凝縮温度検出部)
52 第2吸着熱交換器(吸着熱交換器)
52a 第2冷媒温度センサ(凝縮温度検出部)
53 圧縮機
81 第1バイパス通路(バイパス通路)
83 第1バイパス用ダンパ(バイパス量可変機構)
100 制御部
101 外気温度センサ(外気温度検出部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(11)と、圧縮機(53)及び2つの吸着熱交換器(51,52)を有して一方の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を高圧冷媒で加熱すると同時に他方の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を低圧冷媒で冷却する冷凍サイクルが行われる冷媒回路(50)とを備え、上記ケーシング(11)内に室外空気を取り込み、取り込んだ室外空気を加熱側の吸着熱交換器(51,52)に通過させて室内へ供給すると同時に、上記ケーシング(11)内に室内空気を取り込み、取り込んだ室内空気を冷却側の吸着熱交換器(51,52)に通過させて室外へ排出する加湿運転を行う調湿装置であって、
上記ケーシング(11)内に取り込んだ室外空気が上記吸着熱交換器(51,52)をバイパスして室内又は室外へ送られるように該ケーシング(11)に形成されるバイパス通路(81)と、
上記バイパス通路(81)を流れる空気の量を変更するためのバイパス量可変機構(83)と、
上記加湿運転中に、上記ケーシング(11)に取り込んだ室外空気を全て上記加熱側の吸着熱交換器(51,52)に通過させて室内へ供給する通常動作と、上記ケーシング(11)に取り込んだ室外空気の一部を上記加熱側の吸着熱交換器(51,52)に通過させて室内へ供給すると同時に該室外空気の残りを上記バイパス通路(81)へ送るバイパス動作とを切り換えて行うように上記バイパス量可変機構(83)を制御する制御部(100)とを備えていることを特徴とする調湿装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記バイパス通路(81)は、室外空気が上記吸着熱交換器(51,52)をバイパスして室内へ送られるように上記ケーシング(11)に形成されることを特徴とする調湿装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
室外空気の温度を検出するための外気温度検出部(101)を備え、
上記制御部(100)は、上記加湿運転において、上記外気温度検出部(101)で検出した室外空気の温度が所定温度よりも低くなると、上記バイパス動作を行うように上記バイパス量可変機構(83)を制御することを特徴とする調湿装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、
上記冷媒回路(50)の高圧冷媒の凝縮温度を検出するための凝縮温度検出部(51a,52a)を備え、
上記制御部(100)は、上記加湿運転において、上記凝縮温度検出部(51a,52a)で検出した凝縮温度が所定温度よりも低くなると、上記バイパス動作を行うように上記バイパス量可変機構(83)を制御することを特徴とする調湿装置。
【請求項1】
ケーシング(11)と、圧縮機(53)及び2つの吸着熱交換器(51,52)を有して一方の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を高圧冷媒で加熱すると同時に他方の吸着熱交換器(51,52)の吸着剤を低圧冷媒で冷却する冷凍サイクルが行われる冷媒回路(50)とを備え、上記ケーシング(11)内に室外空気を取り込み、取り込んだ室外空気を加熱側の吸着熱交換器(51,52)に通過させて室内へ供給すると同時に、上記ケーシング(11)内に室内空気を取り込み、取り込んだ室内空気を冷却側の吸着熱交換器(51,52)に通過させて室外へ排出する加湿運転を行う調湿装置であって、
上記ケーシング(11)内に取り込んだ室外空気が上記吸着熱交換器(51,52)をバイパスして室内又は室外へ送られるように該ケーシング(11)に形成されるバイパス通路(81)と、
上記バイパス通路(81)を流れる空気の量を変更するためのバイパス量可変機構(83)と、
上記加湿運転中に、上記ケーシング(11)に取り込んだ室外空気を全て上記加熱側の吸着熱交換器(51,52)に通過させて室内へ供給する通常動作と、上記ケーシング(11)に取り込んだ室外空気の一部を上記加熱側の吸着熱交換器(51,52)に通過させて室内へ供給すると同時に該室外空気の残りを上記バイパス通路(81)へ送るバイパス動作とを切り換えて行うように上記バイパス量可変機構(83)を制御する制御部(100)とを備えていることを特徴とする調湿装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記バイパス通路(81)は、室外空気が上記吸着熱交換器(51,52)をバイパスして室内へ送られるように上記ケーシング(11)に形成されることを特徴とする調湿装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
室外空気の温度を検出するための外気温度検出部(101)を備え、
上記制御部(100)は、上記加湿運転において、上記外気温度検出部(101)で検出した室外空気の温度が所定温度よりも低くなると、上記バイパス動作を行うように上記バイパス量可変機構(83)を制御することを特徴とする調湿装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、
上記冷媒回路(50)の高圧冷媒の凝縮温度を検出するための凝縮温度検出部(51a,52a)を備え、
上記制御部(100)は、上記加湿運転において、上記凝縮温度検出部(51a,52a)で検出した凝縮温度が所定温度よりも低くなると、上記バイパス動作を行うように上記バイパス量可変機構(83)を制御することを特徴とする調湿装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−281502(P2010−281502A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134942(P2009−134942)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]