説明

調理用容器

【課題】
本体の軽量化を図り、加熱効率を高めて調理することができ、調理後の食材の味を低下させない調理用容器を提供する。
【解決手段】
有底円筒状の本体2の底部5の内面4に銑鉄の平板3を配設する。すなわち、銑鉄の平板3は本体2の底部5の内面4に積層されて設けられる。銑鉄は、炭素を多く含み、それ自体が軽量で、しかも人体に無害の素材である。これにより、加熱箇所となる本体2の底部5に銑鉄の平板3が占めることになり、本体2の軽量化が図れる。また、銑鉄の平板3は、油を吸いこみやすく、また加熱時の熱伝導率および熱保持率にすぐれている。よって、本願発明の調理用容器1を使用すれば、食品の加熱効率を高めるとともに、食品を美味しく調理できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は調理用容器、詳しくは電磁調理器を用いて食品を調理する調理用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、さまざまな食材の料理に使用される調理用容器は、食材を挿入して調理する本体と、この本体を支持する取っ手とを備えている。このように構成された調理用容器は、例えば、フライパンまたは鍋などが挙げられる。一般的に、これらの調理用容器は、ダイキャスティング(die casting)鋳造法、プレス成形法により製造される。
上記調理用容器は、本体の素材としてアルミニウムまたはステンレス鋼板が使用されている。そして、このアルミニウムの本体には、本体のさびまたは加熱した食品の焦げ付きを防止するために、フッ素樹脂加工処理が施されている。例えば、特許文献1には、アルミニウムの本体に、フッ素樹脂加工が施された調理器が開示されている。
【0003】
【特許文献1】実開平7−042309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フッ素樹脂は、プラスチックの一種であり、環境ホルモンを発生させる。また、フッ素自体も発癌性物質である。調理時の加熱により、調理用容器から有害なフッ素が出て、人体に悪影響を及ぼすという問題がある。
一方、鉄を用いた調理用容器では、鉄自体が重い金属であるため、鉄製の調理用容器の全体が重いものになってしまう。このため、鉄を用いた調理用容器を、長時間手に持って調理すれば、疲労が生じ調理しにくいという問題があった。また、一度クラック(割れ)や腐食が調理用容器の本体に発生すれば、これ以上調理用容器として使用できずにこれを廃棄しなければならない問題があった。
【0005】
そこで、本願発明者は鋭意努力の結果、調理用容器の本体に人体に無害の銑鉄を配設することで、調理用容器の軽量化が図れ、加熱した食品の味の低下を防止できることを知見し、この発明を完成させた。
【0006】
この発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本体の軽量化を図る調理用容器を提供することを目的とする。
また、この発明は、加熱効率を高めて調理することができ、調理後の食材の味を低下させない調理用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、有底円筒状の本体を有する調理用容器において、上記本体の底部の内面に銑鉄の平板が配設された調理用容器である。
有底円筒状の本体の大きさは限定されない。有底円筒形状の本体を有する調理用容器とは、例えば、フライパン、鍋などである。
本体の素材は限定されない。例えば、アルミニウム板でもよいし、鉄板でもよいし、ステンレス鋼板でもよい。
本体の底部の内面に配設される銑鉄(pig iron)は、炭素が1.7%以上を含む鉄である。
【0008】
請求項1に記載の調理用容器にあっては、有底円筒状の本体の底の内面に銑鉄の平板を配設する。すなわち、銑鉄の平板は本体の底部の内面に積層されて設けられる。銑鉄は、炭素を多く含み、また軽量で、しかも人体に無害の素材である。これにより、加熱箇所となる本体の底部に銑鉄の平板が占めることになり、本体の軽量化が図れる。また、銑鉄の平板は、油を吸いこみやすく、また加熱時の熱伝導率および熱保持率にすぐれている。よって、本願発明の調理用容器を使用して食品を調理すると、食品の加熱効率を高めることができ、食品を美味しく調理することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、上記平板は、その直径が上記底部の内面の直径より小さい凹部に固着された請求項1に記載の調理用容器である。
本体の凹部は、本体底部の内面の直径よりも小さい範囲内であれば、その大きさは限定されない。
【0010】
請求項2に記載の調理用容器にあっては、本体には大きさが上記底部の内面の直径よりも小さい凹部が形成され、この凹部に上記平板が配設される。具体的には、1次プレス工程により有底円筒状の本体を形成し、2次プレス工程により大きさが本体底部の内面より小さい凹部を形成する。そして、この凹部に、高周波熱融着により銑鉄の平板を配設する。これにより、銑鉄の平板は本体から分離することはなく、本体の底部の凹部に固着される。
【0011】
請求項3に記載の発明は、上記平板の厚みは1〜3mmである請求項1または請求項2に記載の調理用容器である。
【0012】
請求項3に記載の調理用容器にあっては、上記平板の厚みは1〜3mmである。厚みが1mm未満であると、銑鉄の平板が簡単に壊れやすくなる。また、厚みが3mmを越えれば、これを製造する製造時間が長くなるという問題が生じる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、上記底部には、周縁部に突起が設けられた円形の磁性板が配設された請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の調理用容器である。
磁性体の素材は限定されない。例えば、銑鉄でもよいし、鉄でもよいし、ステンレス430でもよい。磁性板の磁力も限定されない。
【0014】
請求項4に記載の調理用容器にあっては、周縁部に突起が設けられた円形の磁性板が本体の底部に設けられる。これにより、インダクションレンジ(電磁調理器)で食材を調理すると、電磁調理器から生じる磁力を本体の底部においてうず電流として誘導させることにより、本体の底部の熱伝導率を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、有底円筒状の本体の底の内面に銑鉄の平板を配設する。すなわち、銑鉄の平板は本体の底部の内面に積層されて設けられる。銑鉄は、炭素を多く含み、また軽量で、しかも人体に無害の素材である。これにより、加熱箇所となる本体の底部に銑鉄の平板が占めることになり、本体の軽量化が図れる。また、銑鉄の平板は、油を吸いこみやすく、また加熱時の熱伝導率および熱保持率にすぐれている。よって、本願発明の調理用容器を使用すると、食品の加熱効率を高めることができる。
【実施例】
【0016】
以下、この発明の一実施例を、図1から図6を参照して説明する。
まず、フライパン(調理用容器)1の構成について図1を参照して説明する。本願発明のフライパン1は、底部5と側板で構成された有底円筒状の本体2を有している。本体2の側板には、本体2を支持する取っ手が配設されている。また、本体2の底部5の内面4には、この底部5の内面4の直径よりも小さい大きさを有する凹部6が形成されている。
そして、この凹部6には、厚さ3mm程度の銑鉄の平板3が配設される。銑鉄(pig iron)は、炭素を1.7%以上含む合金である。銑鉄は、それ自体が軽量である。これにより、従来の鉄製の本体2を有する調理用容器に比べて、本体2を軽量化することができる。また、鉄に炭素を含んだ銑鉄なので、加熱中にはその炭素が油をよく吸い込むとともに、鉄分が食べ物を美味しくする。さらに、銑鉄は熱伝導率および熱保持率が高い合金であるため、調理時の加熱効果を高めることができる。
【0017】
次に、フライパン1を製造する方法について説明する。
まず、鋼板3の表裏面に所定厚さのアルミニウムがめっきされた板材を準備する。そして、この板材を用いて、プレス成形により本体2を形成する。すなわち、図2に示すように、1次プレス(1次ドローイング)工程により、底部5と側板部とで構成された有底円筒状の本体2が形成される。
次いで、図3に示すように、2次プレス(2次ドローイング)工程により、本体2の底部5の内面4に円形の凹部6を形成する。この凹部6の大きさは、本体2の底部5の内面4の直径よりも小さい。次に、この円形の凹部6の表面に、アルミニウムの溶接剤であるKAlF、KAlF・HOをそれぞれ塗布する。
図4に示すように、この後、凹部6の表面に銑鉄の平板3が配設される。そして、図5に示すように高周波熱融着により、本体2の凹部6に上記平板3を固設する。高周波熱融着の加熱温度は、550℃〜650℃であり、加熱時間は50〜70秒間程度である。上記加熱時間は通常の調理用容器の製造時のそれよりも長く、また加熱温度も通常の調理用容器の製造時のそれよりも高い。しかしながら、上記加熱時間および加熱温度に比べて、加熱時間が短く、また加熱温度が低いと本体2と平板3との結合強度が弱くなってしまう。また、あまり加熱温度が高くなると、本体2が溶解してしまうおそれがある。さらに、凹部6に銑鉄の平板3を配設するときは、本体2の底面が平行となるようにしなければならない。しゃもじ、へらなどを使って食べ物を料理するときの引っ掛かりを防止するためである。
最後に、本体2の側板にこれを支持する取っ手を設けて、調理用容器の製造を完成させる。
【0018】
また、この発明の第2の実施例を図6を参照して説明する。
本実施例に係る発明は、上記実施例1に係る調理用容器に以下の変更を加えたものである。上記実施例1の本体2の底部5に磁性板7を設けたことである。他の構成については実施例1と同じである。すなわち、本体2の底部5の外面に周縁部に突起を有する円形の磁性板7を複数個設けるものである。この磁性板7の素材は、磁性を有する金属であれば限定されない。例えば、銑鉄でもよいし、通常の鉄でもよいし、ステンレス430でもよい。
磁性板7は以下のようにして配設される。まず、周縁部に突起を有する磁性体を準備する。次いで、強圧プレスの台に本体2の底部5の外面を上方に向け、この本体2を載置する。この後、磁性板7の突起部を本体2の底部5の外面に位置させる。そして、プレス圧着により磁性体を本体2に固着させる。これにより、本体2の底部5が下面から順に磁性板7、アルミニウム板、銑鉄の平板3が積層された調理用容器とすることができる。
上記調理用容器を使用してインダクションレンジ(電磁調理器)で食材を調理する。すると、電磁調理器の加熱コイルが高周波磁界を発生させる。次いで、フライパンの底部5には、上記高周波磁界による磁束が通過し、うず電流が発生する。このうず電流と底部5の電気抵抗によって発生するジュール損により、本体2の底部5が自己発熱をする。そして、熱伝導により、本体2の全体が加熱する。
よって、本体2の底部5に磁性体を設ければ、インダクションレンジから発生する磁力をより早くうず電流にて誘導させて熱伝導率を高めることができる。そして、食品の加熱効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施例1に係る調理用容器の全体構成を示す斜視図である。
【図2】この発明の実施例1に係る本体を有底円筒状に形成した状態を示す断面図である。
【図3】この発明の実施例1に係る本体の底部に凹部を形成した状態を示す断面図である。
【図4】この発明の実施例1に係る本体の底部の凹部に平板を配設する前の状態を示す断面図である。
【図5】この発明の実施例1に係る本体の底部の凹部に平板を配設した後の状態を示す断面図である。
【図6】この発明の実施例2に係る本体の底部に磁性板を配設した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 フライパン(調理用容器)、
2 本体、
3 銑鉄の平板、
4 底部の内面、
5 底部、
6 凹部、
7 磁性板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底円筒状の本体を有する調理用容器において、
上記本体の底部の内面に銑鉄の平板が配設された調理用容器。
【請求項2】
上記平板は、その直径が上記底部の内面の直径より小さい凹部に固着された請求項1に記載の調理用容器。
【請求項3】
上記平板の厚みは1〜3mmである請求項1または請求項2に記載の調理用容器。
【請求項4】
上記底部には、周縁部に突起が設けられた円形の磁性板が配設された請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の調理用容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−312007(P2006−312007A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213444(P2005−213444)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(505278573)
【氏名又は名称原語表記】Son,Wan Ho
【Fターム(参考)】