説明

警報器及び監視システム

【課題】電池電圧が正常で且つ火災等の異状を検知した場合に、連動信号の送信能力を高めて連動動作を迅速且つ確実に行えるようにする。
【解決手段】警報器10−1は電池電源40で動作し、警報処理部60で火災を検知した場合に連動元を示す警報を報知部36から出力すると共に送信制御部62が他の警報器に火災連動信号を送信して連動先を示す警報を出力させる。警報処理部60により電源電圧が正常な状態で火災を検知した場合、送信制御部62は火災以外の事象の連動信号送信する第1送信モードよりも消費電力の大きい第2送信モード(高消費電力送信モード)を設定して他の警報器に火災連動信号を送信して迅速且つ確実に連動警報を出力させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池電源で動作し、自己の監視領域における火災等の異状を検知した場合に、自分自身で警報を出力すると共に他の警報器に異状を示す連動信号を送信して警報させる連動型の警報器及び監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等における火災やガス漏れなどの異状を検知して警報する警報器が普及している。このうち、住宅用火災警報器を住警器と言う。
【0003】
このような住警器にあっては、電池電源で動作し、住警器内に火災を検知するセンサ部と火災を警報する警報部を一体に備え、センサ部の検知信号から火災を検知すると警報部から所定パターンの火災警報音を出力するようにしており、専用の受信設備等を必要とせず住警器単体で火災監視と警報報知ができることから、設置が簡単でコスト的にも安価であり、一般住宅での設置義務化に伴い広く普及している。
【0004】
また、複数の住警器間で通信を行うことによって、任意の住警器で火災警報音が出力されると、他の住警器でも連動して火災警報音を出力させる連動型の住警器も提案されている。
【0005】
このような連動型の住警器では、住警器で火災を検知した場合、火災を検知した連動元の住警器は、例えば「ウーウー 火事です 火事です」を出力すると共に他の住警器に連動信号を送信し、一方、連動信号を受信することで連動先となる他の住警器では例えば「ウーウー 別の警報器が作動しました」といった火災警報音を出力するようにしている。
【0006】
また、近年、住警器の低消費電力化が推し進められた結果、例えば10年以上といった長期の電池寿命が保証されており、その間、電池交換は不要である。
【0007】
住警器の低消費電力化は、住警器に設けている各種回路の消費電力を低下させると共に、特に無線信号の間欠受信方式を採用することで実現されている。間欠受信方式は、所定の周期毎に所定の受信可能時間を設定して受信部を動作してキャリアセンスを行い、キャリアセンスにより受信出力が得られたら受信動作を継続して他の住警器からの連動信号を受信する。
【0008】
住警器を長期間使用して電池寿命に近づいて電池電圧(残り電源容量)の低下が検知されると、電池切れ予告警報(以下、「ローバッテリー障害警報」と云う)を出力して電池交換を促すようにしている。
【0009】
このローバッテリー障害状態では、電池電圧正常時に比べて低消費の動作(例えば間欠受信周期を長くする等)を行わせて、電池切れにより動作停止に至るまでの時間を所定以上確保するように工夫したものもあり、このようにして利用者がローバッテリー障害に気づいて電池交換を行う等の対処に猶予期間を得られるようにしている。或いは、予定の所定猶予期間(例えば72時間)を確保したうえで、それ以前の動作期間(ローバッテリー障害状態となるまでの動作期間)を延ばすようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−094719号公報
【特許文献2】実用新案登録第3143139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、このような従来の連動型の住警器にあっては、火災や火災以外の事象を検知した場合、通信規格に従って、所定の休止時間を挟んで所定時間の送信を複数回繰り返す送信動作を行い、連動信号を断続的に複数回送信することで火災連動信号や火災以外の連動信号を、間欠受信を行っている他の住警器に受信させて連動警報を出せるようにしている。
【0012】
しかしながら、火災を検知した場合の連動は、火災以外の事象を検知した場合の連動に比べ重要性が高く、電波環境等に影響されることなく、より確実に送受信する必要があるが、従来の住警器にあっては、火災の連動と火災以外の事象をの連動について同じ送受信方式としている。ここで少なくとも、上述の通り重要度の高い火災連動については送受信の迅速性と確実性を更に高めていくことが望まれる。
【0013】
本発明は、電池電圧の正常で且つ火災等の異状を検知した場合に、連動信号の送信能力を高めて連動動作を迅速且つ確実に行えるようにする連動型の警報器を提供することを目的とする。
【0014】
また本発明の他の目的は、送信能力を高めるための送信動作に係る消費電力の増加に対応して受信動作に係る消費電力を減少させることで、総合的な電力の増加を抑制して電池寿命への影響を低減する、連動型の警報器及び監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、電池電源で動作する警報器に於いて、
電池電圧に関わらず、所定の異状を検知した場合には、送信モードを検知前に比べて送信能力の高いモードとすることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、電池電源で動作し、監視領域における所定の事象を検知した場合に連動元を示す警報を出力すると共に他の警報器に所定の事象を示す連動信号を送信部から送信し、他の警報器から所定の事象を示す連動信号を受信部で受信した場合に連動先を示す警報を出力する警報器に於いて、
送信部は、電源電圧が所定レベル以上で且つ所定の事象以外の事象を検知した場合、所定の第1送信モードを設定して他の警報器に連動信号を送信し、電源電圧が所定レベル以上で且つ所定の事象を検知した場合、第1送信モードよりも送信能力の高い所定の第2送信モードを設定して他の警報器に連動信号を送信することを特徴とする。
【0017】
ここで、送信部は、所定の事象又はそれ以外の事象を検知した場合、所定の休止時間と所定の送信時間を組み合わせた送信を複数回繰り返しており、第2送信モードは送信回数を前記第1送信モードより多く設定する。
【0018】
第2送信モードは、第1送信モードに対し送信電力をより増加させる。
【0019】
第2送信モードは、第1送信モードに対し送信電波強度を高くするか、或いは送信頻度を高くする。
【0020】
受信部は、
電源電圧が前記所定レベル以上で且つ所定の事象以外の事象を検知した場合、所定の第1受信モードを設定して他の警報器からの連動信号を受信し、
電源電圧が所定レベル以上で且つ所定の事象を検知した場合、第1受信モードより消費電力の小さい第2受信モードを設定して他の警報器からの連動信号を受信する。
【0021】
受信部は、
電源電圧が所定レベル以上で且つ所定の事象又は他の事象を未検知の場合は所定周期毎に所定の受信可能時間を設定する間欠受信を行っており、
第1受信モードは、所定の事象以外の事象検知状態の継続中は間欠受信を常時受信に切替え、事象検知状態が解除されたことを条件として事象検知前の間欠受信に戻し、
第2受信モードは、送信部による所定事象を示す連動信号の送信中は間欠受信を常時受信に切替え、その後の所定の事象の事象検知状態の継続中は周期を長くした間欠受信に切替え、事象検知状態が解除されたことを条件として事象検知前の間欠受信に戻す。
【0022】
電源電圧が所定レベル以上で且つ所定の事象又は他の事象を未検知の場合は所定周期毎に所定の受信可能時間を設定する間欠受信を行っており、
第1受信モードは、所定の事象以外の事象検知状態の継続中は間欠受信を常時受信に切替え、事象検知状態が解除されたことを条件として事象検知前の間欠受信に戻し、
第2受信モードは、送信部による所定事象を示す連動信号の送信中は間欠受信を常時受信に切替え、その後の所定の事象の事象検知状態の継続中は受信可能時間を短くした間欠受信に切替え、事象検知状態が解除されたことを条件として事象検知前の間欠受信に戻す。
【0023】
受信部で他の警報器から連動信号を有効受信した場合、正常受信を示すACK信号を送信部で送信し、
送信部から連動信号を送信した後に他の住警器からのACK信号を受信部で受信し、ACK信号を受信しない警報器を検知した場合、ACK信号を受信した他の警報器に対し記連動信号に中継要求を示す符号を含む連動信号を送信して、連動信号の内容を中継送信させる。
【0024】
本発明の別の形態にあっては、電池電源で動作し、監視領域における所定の事象を検知した場合に連動元を示す警報を出力すると共に他の警報器に所定の事象を示す連動信号を送信部から送信し、他の警報器から前記所定の事象を示す連動信号を受信部で受信した場合に連動先を示す警報を出力し、更に他の警報器から受信した連動信号を中継する警報器に於いて、
送信部は、電源電圧が前記所定レベル以上で且つ所定の事象以外の事象を検知した場合、所定の第1送信モードを設定して他の警報器に連動信号を送信し、電源電圧が前記所定レベル以上で且つ所定の事象を検知した場合、第1送信モードよりも送信能力の高い所定の第2送信モードを設定して他の警報器に連動信号を送信することを特徴とする。
【0025】
本発明の別の形態にあっては、電池電源で動作し、監視領域における所定の事象を検知した場合に連動元を示す警報を出力すると共に他の警報器に所定の事象を示す連動信号を送信部から送信し、他の警報器から所定の事象を示す連動信号を受信部で受信した場合に連動先を示す警報を出力し、更に他の警報器から受信した連動信号を中継する警報器を設けた監視システムに於いて、
警報器の送信部は、電源電圧が前記所定レベル以上で且つ所定の事象以外の事象を検知した場合、所定の第1送信モードを設定して他の警報器に連動信号を送信し、電源電圧が前記所定レベル以上で且つ所定の事象を検知した場合、第1送信モードよりも送信能力の高い所定の第2送信モードを設定して他の警報器に連動信号を送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の警報器によれば、火災等の異状を検知した場合は、火災以外の事象を検知した場合に連動信号を送信する第1送信モードに対し消費電力の大きい第2送信モード、例えば送信回数や送信電力(電波強度等)を増大させた第2送信モードを設定して火災連動信号を送信するため、連動信号の送信能力が高められ、他の事象に対し比較的重要性の高い火災等の異状検知に伴う連動信号を迅速且つ確実に他の警報器に送信して連動先でも連動警報を出すことができ、連動警報の信頼性を向上することができる。
【0027】
また送信能力を高めるための第2送信モードによる高消費電力の送信は電池消耗を促進することになるが、火災等の異状を検知した場合、この第2送信モードに対応して、火災以外の事象を検知した場合に他の警報器からの連動信号を受信する第1受信モードに対し消費電力の小さい第2受信モードを設定するため、自己の火災検知に基づく高消費電力の送信で促進される電池の消耗が、低消費電力の受信により緩和することができる。
【0028】
ここで、消費電力を低減する第2受信モードでは受信機能を低下させており、他の警報器との連動機能が損なわれる可能性が考えられる。
【0029】
しかしながら、例えば3台以上の警報器で連動システムを構成する場合(一般的な住宅の住警器システムではそうなる)、各警報器が連動信号の中継機能を実行できるときには、他の警報器から送信された連動信号は更に別の警報器でも中継送信されることで全体として所定の送信数が確保できるので、受信機会が高まることで、連動機能が損なわれることが防止される。このように、自己が連動元として火災などの異状警報を出力している間、受信機能を低下させても実質的には問題にならない。
【0030】
更には、自己が連動元として火災などの異状警報を出力しているときは、そもそも他の警報器からの連動信号を処理する必要性が相対的に低いため、受信機能を低下させても実質的には問題にならない。このため、第2受信モードとして、最も消費電力の低い受信動作パターンである「受信停止」を設定することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の連動型の住警器による監視システムを設置した住宅を示した説明図
【図2】本発明による住警器の外観を示した説明図
【図3】本発明による住警器の実施形態を示したブロック図
【図4】図3の実施形態で使用する連動信号のフォーマットを示した説明図
【図5】電池電圧が正常な状態で火災以外の事象を検知した場合の本発明の住警器による送受信動作を示したタイムチャート
【図6】電池電圧が正常な状態で火災を検知した場合の本発明の住警器による送受信動作を示したタイムチャート
【図7】本発明の住警器による送受信処理を示したタイムチャート
【図8】本発明の住警器による監視処理を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は住宅に対する本発明の警報器として連動型住警器を用いた監視システムの設置状態例を示した説明図である。図1の例にあっては、住宅24に設けられている台所、居間、子供部屋、主寝室、階段室のそれぞれの警戒エリア(監視領域)に、火災を検知して連動警報する無線式の住警器(住宅用火災警報器)10−1〜10−6が設置されている。以下、住警器10−1〜10−6をそれぞれ区別せず総称する場合は住警器10という。
【0033】
住警器10は、連動信号を無線により相互に送受信する機能を備え、住宅各所の、それぞれ対応する監視領域について火災発生有無の監視を行っている。いま住宅24の台所で万一、火災が発生したとすると、住警器10−1が火災を検知して警報を開始する。この火災を検知して警報を開始することを、住警器における「発報」という。
【0034】
住警器10−1が発報するとき、住警器10−1は連動元として機能し、連動先となる他の住警器10−2〜10−6に対し、火災連動信号を無線送信する。他の住警器10−2〜10−6は、連動元の住警器10−1からの火災連動信号を有効受信した場合に、警報音と警報表示により連動先としての警報動作を行う。
【0035】
ここで、住警器10は、受信した連動信号に含まれるグループ符号がメモリに登録しているグループ符号に一致し、且つ信号内容を正常認識したときに、この連動信号を有効受信したことを検知するようにしている。また住警器10から送信する連動信号には、送信元の住警器を示す識別情報として例えばシリアル番号等を利用した送信元符号が含まれている。さらに、連動信号を有効受信した住警器10は必要に応じて連動信号の中継送信を行う。
【0036】
連動元となった住警器10−1の警報動作としては、例えば「ウーウー 火災警報器が作動しました 確認してください」といった音声メッセージによる火災警報音を出力する。一方、連動先の住警器10−2〜10−6にあっては、警報動作として例えば「ウーウー 別の火災警報器が作動しました 確認してください」といった音声メッセージによる火災警報音を出力する。
【0037】
また連動元となった住警器10−1の火災警報に伴う警報表示としては、例えばLEDを点灯する。一方、連動先の住警器10−2〜10−6にあっては、LEDを点滅する。これによって、連動元警報と連動先警報におけるLEDによる警報表示を区別できるようにしている。
【0038】
図2は本発明による無線連動型の煙式住警器の外観を示した説明図であり、図2(A)に正面図を、図2(B)に側面図を示している。なお、取付フック15を設けているほうを上側とする。
【0039】
図2において、本実施形態の住警器10の筐体はカバー12と本体14で構成されている。カバー12の中央には突出部を設け、突出部の周囲に複数の煙流入口を開口し、その内部には検煙部16が配置され、火災に伴う煙が流入口を介し検煙部16に流入して所定濃度に達したときに火災を検知するようにしている。検煙部16としては、散乱光式の煙検知器等の検煙機構が適用できる。
【0040】
カバー12の左下側には音響孔18が設けられ、この背後にブザーやスピーカを内蔵し、警報音や音声メッセージを出力できるようにしている。カバー12の下側には警報停止スイッチ20が設けられている。
【0041】
警報停止スイッチ20は、半透明部材で形成されたスイッチカバーを押圧操作すると、内蔵のプッシュスイッチ(図示せず)が押圧されるようになっている。スイッチカバー内部のプッシュスイッチ近傍には、警報等の表示を行うLED22が配置されている。
【0042】
また本体14の裏側上部にはその略中央部に挿通孔を有する取付フック15が設けられており、設置する部屋の壁にビスなどをねじ込み、この取付フック15の挿通孔にビスを通して引っかけることで、壁面に住警器10を所謂壁掛け状に固定設置することができる。
【0043】
図3は本発明による住警器10−1の要部構成を示したブロック図である。これは一例であり、各機能の分離、統合は任意に行うことができる。また各機能のそれぞれの一部または全部は、ソフトウェア(プログラム)によって実行されるものであっても、ハードウェアによって実行されるものであっても良い。また図3では、台所に設置した住警器10−1について示しているが、他の住警器10−2〜10−6についても同様の構成となる。
【0044】
住警器10−1はワンチップCPUとして知られたプロセッサ28を備え、プロセッサ28に対してはアンテナ31を備えた無線通信部30、メモリ32、センサ部34、報知部36、操作部38及び電池電源40を設けている。
【0045】
無線通信部30には送信回路42と受信回路44が設けられ、他の住警器10−2〜10−6との間で連動信号を無線により送受信できるようにしている。無線通信部30としては、日本国内の場合には、例えば400MHz帯の特定小電力無線局の標準規格として知られたSTD−30(小電力セキュリティシステム無線局の無線設備標準規格)またはSTD−T67(特定小電力無線局テレメータ用、テレコントロール用及びデータ伝送用無線設備の標準規格)に準拠した構成を備える。
【0046】
もちろん無線通信部30としては、日本国内以外で使用する場合は、その地域の割当無線局の標準規格に準拠した内容を持つことになる。
【0047】
ここで、アンテナ31、送信回路42及び送信制御部62を併せて送信部として機能し、アンテナ31、受信回路44及び受信制御部64を併せて受信部として機能する。
【0048】
メモリ32には、連動信号の生成順或いは送信順番を示す連続番号である連番48、各住警器を特定する住警器識別情報となる例えばシリアル番号等を利用した送信元符号50、図1のように住宅に設置した各住警器10で連動警報を行う連動グループを構成するためのグループ符号52が格納されている。
【0049】
センサ部34には、散乱光式の煙検知原理によって煙を観測(検出)して煙濃度に応じた検出信号を出力する検煙部16を設けている。
【0050】
報知部36には警報音等を出力する音響出力器であるスピーカ56と警報表示等を行うLED22が設けられている。スピーカ56は、後述する警報処理部60の制御により図示しない駆動回路で駆動されて、住警器10−1がメモリ等に保持している各種のデータ等に基づいて音声メッセージや警報音等を出力する。LED22は点滅や明滅、点灯などにより、火災などの異状その他を表示する。
【0051】
操作部38には警報停止スイッチ20が設けられ、警報停止スイッチ20は住警器10−1の機能の自己点検を指示する点検スイッチとしての機能を兼ねている。例えば、利用者等により火災警報出力中に警報停止スイッチ20が操作されると火災警報を停止し、通常状態で警報停止スイッチ20が操作されると所定の機能点検を実施して結果を報知する。ここで通常状態とは、少なくとも火災警報出力中または障害警報出力中でない状態を指す。
【0052】
電池電源40は、例えば所定セル数のリチウム電池やアルカリ乾電池を使用しており、電池容量としては住警器10−1における無線通信部30を含む回路部全体の低消費電力化により、例えば10年の電池寿命を保証している。
【0053】
プロセッサ28にはプログラムの実行により実現される機能として、警報処理部60、送信制御部62、受信制御部64の機能が設けられる。
【0054】
警報処理部60は、センサ部34に設けた検煙部16からの検出信号出力に基づく火災の有無、操作部38の操作による警報停止指示入力の有無や点検指示入力の有無、センサ部34に設けた検煙部16からの検出信号出力が低下して火災検知状態が解消される火災復旧の有無の他、必要に応じ各種の監視回路(図示省略)を介してセンサ障害やローバッテリー障害有無等の事象を検知する。また警報処理部60は他の住警器10−2〜10−6からの連動信号の解読結果として得られた連動信号有効受信の有無およびその連動内容を検知する。
【0055】
また警報処理部60は、センサ部34に設けた検煙部16の煙検出信号に基づき火災を検知した場合に、報知部36に対しスピーカ56から連動元を示す警報音例えば「ウーウー 火事です 火事です 確認して下さい」の音声メッセージを繰り返し出力させる制御を行うと共に、LED22を点灯させて連動元を示す警報表示を行わせる制御を行い、更に、送信制御部60および送信回路42を介して火災連動信号をアンテナ31から他の住警器10−2〜10−6に向けて送信させる。
【0056】
また警報処理部60は、無線通信部30の受信回路44及び受信制御部64を介して他の住警器10−2〜10−6の何れかから火災連動信号を有効受信したことを検知した場合に、報知部36のスピーカ56から連動先を示す警報音例えば「ウーウー 別の火災警報器が作動しました 確認してください」となる音声メッセージを繰り返し出力させると共にLED22を例えば点滅させて連動先を示す警報表示を行わせる。
【0057】
また警報処理部60は、連動元を示す火災警報音の出力中に警報停止スイッチ20の操作を検知した場合、報知部36を制御してスピーカ56からの音声メッセージとLED22の警報表示による火災警報の出力を停止させる。なお、連動元を示す火災警報音の出力中に他の住警器10−2〜10−6の何れかからの警報停止連動信号の有効受信を検知した場合、火災警報は停止せずに連動元が分かるようにする。
【0058】
また警報処理部60は、連動先を示す警報音の出力中に警報停止スイッチ20の操作又は他の住警器10−2〜10−6の何れかからの警報停止連動信号の有効受信を検知した場合、報知部36を制御してスピーカ56からの音声メッセージとLED22の警報表示による火災警報の出力を停止させる。
【0059】
また警報処理部60には、電池電源40の電源電圧が所定レベル未満となるローバッテリー障害の監視機能が設けられ、ビルトインテストとしてバックグラウンドで定期的に自動実行されている。
【0060】
ローバッテリー障害監視は、具体的には、所定の測定時間間隔、例えば図示しない電圧監視回路を介して4時間間隔で電池電源40から供給される電池電圧を読み込んで所定の閾値電圧と比較するビルトインテストを実施し、この閾値電圧未満の時にローバッテリー障害を予備判定して結果をカウント記憶し、更にローバッテリー障害の予備判定が連続して所定回数続いたときにローバッテリー障害と判定(確定)して検知し、ローバッテリー障害フラグをセットしてメモリ32に更新記憶する。
【0061】
また警報処理部60には、センサ部34の障害を監視するセンサ障害監視機能が設けられ、同じくビルトインテストとしてバックグラウンドで自動実行されている。センサ障害監視は、具体的には、所定の測定時間間隔、例えば1秒間隔でセンサ部34の検煙部16から出力される煙検出信号を読み込んでメモリ32に保持し、所定の時間間隔、例えば10分毎に、メモリ32に保持している直近10分間ぶんの検出データの平均値を求め、この平均値が所定の基準レベル(零点レベルという)を下回った場合に、出力停止状態である等としてセンサ部34の障害と判定して検知し、センサ障害フラグをセットしてメモリ32に更新記憶する。
【0062】
また警報処理部60は、通常状態で点検スイッチとして機能する警報停止スイッチ20の操作による点検指示操作(点検指示入力)を検知した場合、メモリ32にローバッテリー障害フラグ又はセンサ障害フラグがセット記憶されていることを判別検知した場合には、報知部36からローバッテリー障害警報又はセンサ障害警報を出力させ、更に、ローバッテリー障害連動信号又はセンサ障害連動信号を他の住警器10−2〜10−6に送信して障害連動先を示すローバッテリー障害警報又はセンサ障害警報を出力させる。
【0063】
送信制御部62は、警報処理部60により検煙部16からの煙検出信号に基づく火災検知、操作部38による警報停止入力や点検指示入力、検煙部16からの煙検出信号出力が低下して火災検知状態が解消される火災復旧等、ローバッテリー障害やセンサ障害等の自己の事象が検知された場合に、検知した事象内容を示す連動信号を、無線通信部30の送信回路42、アンテナ31を介して連動先の住警器に送信する。また送信制御部62は他の住警器から有効受信した連動信号を、必要に応じて中継送信する。
【0064】
また送信制御部62は、警報処理部60において電源電圧が所定レベル以上(ローバッテリー障害未検知)となっている状態で自己において火災以外の事象が検知された場合、火災以外の事象を示す連動信号を、所定の第1送信モードを設定して他の住警器に送信する。
【0065】
この第1送信モードは、図4(A)に示すように、時刻t1で、自己において火災以外の事象が検知された場合に、図4(B)に示す通り、所定時間T1、例えばT1=3秒に亘り連動信号を送信する送信動作70を、所定時間T2、例えばT2=2秒の休止時間を空けて例えば4回繰り返している。このT1=3秒送信、T=2秒休止は特定小電力無線局の標準規格に準拠したものである。
【0066】
またT1=3秒の送信動作70は、その内の最初から例えば2.8秒はダミー信号送信動作72であり、残り0.2秒の時間に連動信号の反復送信動作74を行うようにしている。ダミー信号は他の住警器において間欠受信のキャリアセンスで検知されて当該他の住警器の受信動作を開始させ、これに続く連動信号の受信を可能とする。
【0067】
受信制御部64は、他の住警器10−2〜10−6からの連動信号を、アンテナ31、無線通信部30の受信回路44を介して受信し解読する。ここで、受信制御部64は、警報処理部60において電源電圧が所定レベル以上(ローバッテリー障害未検知)となっている状態では間欠受信により他の住警器からの連動信号を受信しており、この状態で自己において火災以外の事象が検知された場合は、所定の第1受信モードを設定して他の住警器からの連動信号を受信する。
【0068】
間欠受信は図4(C)の時刻t1の事象検知前に示すように、周期T3毎に受信可能時間T4のあいだ受信動作を繰り返しており、例えば周期T3=7秒、受信可能時間T4=100ミリ秒としている。受信可能時間T4の間にキャリアセンスにより他の住警器からの送信ダミー信号を検知すると所定時間のあいだ常時受信に切替えてダミー信号に続く連動信号を受信する。
【0069】
第1受信モードは、図4(A)の時刻t1で自己により火災以外の事象が検知された場合、図4(C)に示すように、それまでの周期T3の間欠受信を常時受信動作80に切替え、他の住警器からの連動信号(例えば後述するACK信号)を迅速に受信できるようにする。火災以外の事象発生中(検知状態継続中)は常時受信動作80を継続し、事象検知状態が解除された場合には、常時受信動作80を停止して事象検知前の間欠受信動作に戻す。
【0070】
ここで、送受信の無線チャンネル周波数を同じとしているため、常時受信動作80中、並行して行っている送信動作70の送信時間T1については、他の住警器からの連動信号は受信できず、送信休止時間T2に対応した部分及び送信終了後の部分を有効受信動作82としている。
【0071】
また受信制御部64は、自己が連動信号を送信した場合、他の住警器10−2〜10−6から当該連動信号を正常に受信したことを示す確認応答信号(以下「ACK信号」と云う)が有効受信されるか否か監視している。
【0072】
他の住警器の中にACK信号が受信されない(ACK信号の返信を確認できない)ものを検知した場合、ACK信号の受信が確認された(ACK信号の返信が確認された)他の住警器に対し送信制御部62により中継要求有りを示す符号を付加した連動信号(中継要求有りの連動信号と云う)を送信し、中継要求有りの連動信号を受信したACK応答確認済みの住警器からAKC信号未応答の住警器へこれを中継送信させる。ここで中継された連動信号を受信したAKC信号未応答の住警器はこの受信に基づいて警報処理等を行うと共にこの受信に対するACK信号を返信し、更にこの返信について他の住警器の中継送信を経て連動元の住警器10−1で受信される。
【0073】
また送信制御部62及び受信制御部64は、ローバッテリー障害が未検知となる電池電圧の正常状態で火災が検知された場合、消費電力を増加させた所定の第2送信モードを設定して火災連動信号の送信能力を高めると共に消費電力を低減した所定の第2受信モードを設定して他の住警器10−2〜10−6からの連動信号を受信する。
【0074】
図5は電池電圧が正常な状態で火災が検知された場合の送受信動作を示したタイムチャートである。図5(A)に示すように、時刻t1で火災が検知されたとすると、送信制御部62により、図5(B)に示すように、第2送信モードを設定して火災連動信号の送信動作を行う。
【0075】
第2送信モードは、図4(B)の第1送信モードと同様、T1=3秒に亘り連動信号を送信する送信動作70を、T2=2秒の休止時間を空けて例えば6回繰り返す。このように第2送信モードは第1送信モードに対し送信回数が2回増加することで消費電力が増加することになるが、他の住警器10−2〜10−6に対する送信能力が向上し、火災連動を迅速且つ確実に行うことができる。
【0076】
第2送信モードとしては、これ以外に送信電力(電波強度)を増加させても良く、これにより同様に消費電力が増加することになるが、他の住警器10−2〜10−6に対する送信機能が向上し、火災連動を迅速且つ確実に行うことができる。
【0077】
一方、受信制御部64により設定される第2受信モードは、図5(C)(D)に示すいずれかの低消費電力モードとする。
【0078】
図5(C)の第2受信モードは、時刻t1で火災を検知した場合の図5(B)の送信動作70に対応し、それまでの間欠受信を常時受信動作80に切替えており、常時受信動作80は送信動作70による送信繰り返し中に亘り継続し、一連の繰り返し送信を終了すると事象検知前の間欠受信に戻す。なお、常時受信動作80は繰り返し送信の終了から適宜の遅延時間を経過してから(所定時間の経過後に)終了するようにしても良い。
【0079】
ここで常時受信動作80は、図4(C)と同様、送受信の無線チャンネル周波数が同一なため、並行して行っている送信動作70の送信時間T1については他の住警器からの連動信号は受信できず、送信休止時間T2に対応した部分を有効受信動作82としている。
【0080】
また、図4(C)の第1受信モードに対し図5(C)の第2受信モードは、一連の繰り返し送信が終了した時点で、或いはその後所定時間が経過した時点で常時受信動作80を事象検知前の間欠受信に戻しているため受信動作80の時間が短くなっており、受信機能は低下するものの、その分、消費電力を低減でき、第2送信モードの設定で増加する消費電力を相殺するか又は抑制することができる。
【0081】
図5(D)の第2受信モードは概ね図5(C)と同様であるが、図5(A)の送信モードに対応した常時受信動作80を終了した後に、t1以前よりも消費電力を低下した間欠受信に切替える。具体的には、時刻t1までの間欠受信の周期T3を、それより短い周期T5の間欠受信とし、更に、受信周期T5毎の受信可能時間T6を時刻t1までの間欠受信の受信可能時間T4より短くしており、図5(C)に比べ更に消費電力を低減できる。なお、間欠受信の周期を長くすることと受信可能時間を短くすることは、両方とする以外にいずれか一方としても良い。
【0082】
このように消費電力を小さくするために第2受信モードを設定した場合、受信機能も低下することになるが、他の住警器10−2〜10−6からの連動信号については、必要に応じて更に他の住警器から中継送信されることで送信数が所定以上確保されるため、第2受信モードの設定により常時受信帯を短くしたり、間欠受信の受信周期を長くしたり、或いは受信可能時間を短くして受信機能を低下させても実質的には問題にならない。
【0083】
また住警器10−1自身が連動元として火災などの異状警報の出力中は、他の警報器10−2〜10−6からの連動信号を処理する必要性が低いため、受信機能を低下させても実質的には問題にならない。
【0084】
なお、上記以外に、第2受信モードとして、図示の常時受信80に対応する受信動作も適宜の間欠動作としたり、送信動作70の繰り返し期間中や火災検知状態継続中、或いはそれらに適宜の遅延時間を加えた期間中に亘り受信動作を停止するようにしても良い。
【0085】
また、火災を検知して第2送信モードと第2受信モードによる送受信を行った後に、火災以外の事象として火災復旧や警報停止を検知した場合は、第1送信モードにより火災復旧連動信号や警報停止連動信号を送信すると共に第1受信モードによる常時受信動作に切替え、火災復旧連動信号や警報停止連動信号に対する他の住警器からのACK信号等を受信し、ACK信号受信が確認された場合に、また更に必要に応じACK信号確認後更に適宜の遅延時間を経た場合に、火災検知前の間欠受信に戻すようにする。
【0086】
即ち、火災が復旧した場合には、すぐに火災検知前の間欠受信には戻らず、その間に第1送信モードと第1受信モードによる火災復旧連動信号や警報停止連動信号の送信とACK信号の受信を行った後に、火災検知前の間欠受信に戻ることになる。つまり、例えば火災復旧等の事象検知状態解除は火災以外の事象である。
【0087】
また、電池電圧が低下したローバッテリー障害状態で火災又は火災以外の事象を検知した場合については、図4と同じ第1送受信モードとしても良いし、更なる低消費電力の送受信モードとしても良い。このようにローバッテリー障害状態での第1送受信モードを電池電圧正常状態での第1送受信モードよりも低消費とする場合にも、この状態において、第2送信モードは第1送信モードよりも消費電力が大きいが送信能力を高めた動作とし、また第2受信モードは第1受信モードよりも消費電力を小さくした動作とする。
【0088】
図6は本実施形態で連動警報に使用する連動信号のフォーマットを概略的に示した説明図である。図6において、連動信号46は連番48、送信元符号50、グループ符号52及び事象符号54で構成されている。なお、中継送信する連動信号に対しては、連動元の送信元符号と、中継送信元としての自己の送信元符号の両方を付加する。また必要に応じ、これとは別に中継要求有りを示す符号を付加するようにする。
【0089】
ここで、事象符号54は、火災などの事象内容を表す符号であり、本実施形態にあっては4ビット符号を使用しており、例えば
0001=火災
0010=ACK
0011=警報停止
0100=復旧
0101=センサ障害
0110=ローバッテリー障害
としている。
【0090】
図7は本発明の住警器10における送受信処理の概略例を示したフローチャートである。これは電池電圧正常状態におけるフローチャートであるが、前述の通り、ローバッテリー障害状態においても同様とすることができる。図7において、送受信処理はステップS1で初期モードとして周期T3、受信可能時間T4とした間欠受信モードを設定し、続いてステップS2で火災検知の有無を判別し、火災を検知していない場合はステップS3に進んで火災以外の事象検知の有無を判別している。
【0091】
ステップS3で火災以外の事象検知があった場合はステップS4に進み、図4(B)に示した送信動作70を4回繰り返す第1送信モードを設定し、同時に、図4(B)に示した第1受信モードを設定し、ステップS3で判別した事象検知状態が、復旧等によって終了(解除)したことを検知するまで第1受信モードを継続し、事象の終了を検知するとステップS1に戻って再び事象検知前の間欠受信モードを設定する。
【0092】
一方、ステップS2で火災検知を判別した場合はステップS6に進み、例えば図5(B)に示した第2送信モードを設定して送信能力を高めすると共に、例えば図5(C)又は(D)に示した第2受信モードを設定し、第2送信モードの設定で消費電力が大きくなった影響を小さくする。
【0093】
続いてステップS7で火災復旧検知等による火災検知状態解消の有無を判別しており、火災復旧を検知するとステップS1に戻って再び事象検知前の間欠受信モードを設定する。ステップS7からステップS1に戻る際は、必要に応じ所定の遅延時間経過を条件としても良い。もちろん、ステップS5からステップS1に戻る際にも、同様に適宜の遅延時間経過条件判定ステップを挿入しても良い。
【0094】
図8は本発明による住警器の監視処理の概略例を示したフローチャートである。図8において、住警器10の電池電源40による電源供給が開始されると、ステップS11で初期化、自己診断、送受信モードの設定を含む各種設定の読み込み等を実行し、異常がなければステップS12に進み、火災の有無を検知している。ステップS11で初期化異常があった場合には報知部36からその旨を報知したうえで動作を途中停止するか、或いは再度ステップS11の処理を行うようにしているが、図示を省略している。
【0095】
ステップS12において、センサ部34に設けた検煙部16から出力された煙検出信号が所定の火災レベルを超えると火災が検知されてステップS13に進み、火災連動信号を他の住警器に無線送信すると共に、報知部36のスピーカ56から音声メッセージ等による警報音とLED22の例えば点灯による警報表示とにより連動元を示す火災警報を出力する。
【0096】
なお、ステップS13で火災が検知された場合、高消費電力モードとなる第2送信モードの設定により火災連動信号を送信すると共に間欠受信から第2受信モードによる低消費電力受信モードに切替えて他の住警器からACK信号等の連動信号を受信する。
【0097】
続いて、ステップS14で検煙部16からの煙検知信号が低下して火災検知状態が解消する火災復旧検知の有無を判別しており、火災復旧検知を判別するとステップS15で火災復旧連動信号を他の住警器に送信すると共に、スピーカ56からの警報音とLED22の点灯による連動元を示す火災警報を停止する。
なお、LED22による警報表示は警報音の停止から所定時間経過後に消灯しても良い。また、ステップS14で火災復旧を検知した場合、それまで継続していた第2受信モードを終了する。
【0098】
続いてステップS16で警報停止スイッチ20の警報停止指示操作検知の有無を判別し、スイッチ操作検知が判別されるとステップS17に進んで警報停止連動信号を他の住警器に送信し、スピーカ56からの連動元を示す警報音出力を停止し、LED22の点灯による警報表示を消灯する。なお、LED22による警報表示は警報音の停止からは所定時間経過後に消灯しても良い。
【0099】
ステップS25、S27における復旧連動信号送信、警報停止連動信号を送信した場合の受信モードは、火災継続中に火災復旧又は警報停止を検知した時点で第2受信モードを終了して第1受信モードとするが、受信モードを第2受信モードから第1受信モードに切り替えた場合にACK信号等を受信し、ACK信号受信が確認された場合に、また更に必要に応じACK信号確認後更に適宜の遅延時間を経た場合に、火災検知前の間欠受信に戻すようにする。
【0100】
続いてステップS18に進み、他の住警器から送信または中継送信された火災連動信号有効受信検知の有無を判別している。他の住警器からの火災連動信号の有効受信検知を判別すると、ステップS19に進んで連動先を示す火災警報として自己のスピーカ56から警報音を出力し、例えばLED22の点滅による警報表示を行う。
【0101】
次にステップS20で他の住警器から送信または中継送信された火災復旧連動信号有効受信検知の有無を判別しており、火災復旧連動信号の有効受信検知を判別すると、ステップS21に進んで連動先の警報として行っているスピーカ56からの警報音出力とLED22の点滅による警報表示を停止する。
【0102】
次にステップS22で他の住警器から送信または中継送信された警報停止連動信号の有効受信の有無を検知しており、警報停止連動信号の有効受信を検知すると、ステップS23に進んで連動先としての警報音出力を停止し、警報表示も停止させる。
【0103】
ステップS18、ステップS20、ステップ22で他の住警器から連動信号を受信した場合に、当該連動信号に中継要求符号が含まれていときは必要に応じ中継送信とそれに伴う処理を行うが、説明の簡単のため図示を省略している。
【0104】
また、これも図示を省略しているが、例えばローバッテリーや故障等の障害発生その他、図示以外の事象についても適宜監視しており、これらを検知した場合には、必要に応じ連動元としてそれを報知し、対応する連動信号を他の住警器に送信する。また他の住警器からこれら事象を示す連動信号を受信した場合には、連動先としての報知等、対応する処理を行うと共に、必要に応じ連動信号の中継送信を行う。
【0105】
なお、第2送信モードとして消費電力を増加させて送信能力を高める方式は、上記の実施形態に限定されず、適宜の方式をとることができる。同様に第2受信モードとして消費電力を小さくする方式も上記の実施形態に限定されず、適宜の方式をとることができる。要するに、少なくとも火災を検知した際に、少なくとも火災連動信号の送信については他の事象に比べて連動の確実性を高めることができれば良い。このとき、受信モードを低消費モードへ切り替えることも必須ではない。
【0106】
また上記の実施形態は監視領域の異状として火災を検知して警報する住警器を例にとるものであったが、住警器以外の火災警報器、ガス漏れ警報器、CO警報器、各種の防犯用警報器を配置した警報システムやそれら各種の警報器を混在させて配置した警報システムについても同様に適用できる。
【0107】
また、本発明の警報器による監視システムは、一部に本発明による上記の送信モード切替機能を備えない従来の警報器を含むものであっても良い。この場合でも、全体として少なくとも部分的には本発明の目的を達成することができる。
【0108】
また図3の住警器10−1(および10−2〜10−6)にあっては、検煙部16を備え、火災に伴い発生する煙を観測して監視領域の火災を検知する煙式住警器(警報器)を例に取っているが、これ以外に火災に伴う熱を検知するサーミスタ等の温度検知素子を備えた熱式住警器(警報器)や火災に伴うその他の環境変化を検知する住警器(警報器)、火災以外にガス漏れを検知する警報器、侵入者や地震その他の異状を検知する各種の警報器、これらを組み合わせて成る警報器についても、本発明の対象に含まれる。
【0109】
また、上記実施例では所定の事象として火災を検知した場合に送信モードを切り替えて送信能力を高める例を示したが、他の事象を異状の対象とする警報器では、その事象を検知した場合、例えばガス漏れ警報器ではガス漏れを検知した場合に送信モードを切り替える事になる。
【0110】
また、火災等、その警報器が本来監視対象とする監視領域の異状以外にも、例えば重要な障害事象等について、上記同様に送信モードを切り替えるようにしても良い。
【0111】
また、警報器の各連携は無線通信によるものでなくても良く、有線通信によっても、また有線と無線を適宜混在させるものであっても良い。
【0112】
また、上記の実施形態で警報停止スイッチ20として示した操作手段は、必ずしもスイッチである必要は無く、リモコン装置等を使用して外部からの通信によって警報履歴出力を指示するもの等、どのような手段や方法を適用しても良い。
【0113】
また上記の実施形態におけるフローチャートは処理の概略例を説明したもので、処理の順番等はこれに限定されない。必要に応じ他の処理を追加、挿入等する等ができる。
【0114】
また、上記実施の形態で示した住警器のプロセッサは、その機能の一部又は全部を、例えばワイヤードロジック等による他の手段に代えることができる。プロセッサを含め他の電気的、機能的構成は適宜に統廃合することもできる。
【0115】
また、上記の実施形態は住宅用に限らずビルやオフィス用など各種用途の警報器にも適用できる。
【0116】
また本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0117】
10,10−1〜10−6:住警器
12:カバー
14:本体
15:取付フック
16:検煙部
18:音響孔
20:警報停止スイッチ
22:LED
24:住宅
28:プロセッサ
31:アンテナ
30:無線通信部
32:メモリ
34:センサ部
36:報知部
38:操作部
40:電池電源
42:送信回路
44:受信回路
46:連動信号
48:連番
50:送信元符号
52:グループ符号
54:事象符号
56:スピーカ
60:警報処理部
62:送信制御部
64:受信制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池電源で動作する警報器に於いて、
電池電圧に関わらず、所定の異状を検知した場合には、送信モードを検知前に比べて送信能力の高いモードとすることを特徴とする警報器。
【請求項2】
電池電源で動作し、監視領域における所定の事象を検知した場合に連動元を示す警報を出力すると共に他の警報器に前記所定の事象を示す連動信号を送信部から送信し、他の警報器から前記所定の事象を示す連動信号を受信部で受信した場合に連動先を示す警報を出力する警報器に於いて、
前記送信部は、前記電源電圧が前記所定レベル以上で且つ前記所定の事象以外の事象を検知した場合、所定の第1送信モードを設定して他の警報器に連動信号を送信し、前記電源電圧が前記所定レベル以上で且つ前記所定の事象を検知した場合、前記第1送信モードよりも送信能力の高い所定の第2送信モードを設定して他の警報器に連動信号を送信することを特徴とする警報器。
【請求項3】
請求項1記載の警報器に於いて、前記送信部は、前記所定の事象又はそれ以外の事象を検知した場合、所定の休止時間と所定の送信時間を組み合わせた送信を複数回繰り返しており、前記第2送信モードは前記送信回数を前記第1送信モードより多く設定することを特徴とする警報器。
【請求項4】
請求項1記載の警報器に於いて、前記第2送信モードは、第1送信モードに対し送信電力をより増加させることを特徴とする警報器。
【請求項5】
請求項1記載の警報器に於いて、前記第2送信モードは、前記第1送信モードに対し送信電波強度を高くするか、或いは送信頻度を高くすることを特徴とする警報器。
【請求項6】
請求項1記載の警報器に於いて、
前記受信部は、
前記電源電圧が前記所定レベル以上で且つ前記所定の事象以外の事象を検知した場合、所定の第1受信モードを設定して他の警報器からの連動信号を受信し、
前記電源電圧が前記所定レベル以上で且つ前記所定の事象を検知した場合、前記第1受信モードより消費電力の小さい第2受信モードを設定して他の警報器からの連動信号を受信する、
ことを特徴とする警報器。
【請求項7】
請求項6記載の警報器に於いて、
前記受信部は、
前記電源電圧が前記所定レベル以上で且つ前記所定の事象又は他の事象を未検知の場合は所定周期毎に所定の受信可能時間を設定する間欠受信を行っており、
前記第1受信モードは、前記所定の事象以外の事象検知状態の継続中は前記間欠受信を常時受信に切替え、事象検知状態が解除されたことを条件として事象検知前の間欠受信に戻し、
前記第2受信モードは、前記送信部による前記所定事象を示す連動信号の送信中は前記間欠受信を常時受信に切替え、その後の前記所定の事象の事象検知状態の継続中は前記周期を長くした間欠受信に切替え、事象検知状態が解除されたことを条件として事象検知前の間欠受信に戻す、
ことを特徴とする警報器。
【請求項8】
請求項6記載の警報器に於いて、
前記電源電圧が前記所定レベル以上で且つ前記所定の事象又は他の事象を未検知の場合は所定周期毎に所定の受信可能時間を設定する間欠受信を行っており、
前記第1受信モードは、前記所定の事象以外の事象検知状態の継続中は前記間欠受信を常時受信に切替え、事象検知状態が解除されたことを条件として事象検知前の間欠受信に戻し、
前記第2受信モードは、前記送信部による前記所定事象を示す連動信号の送信中は前記間欠受信を常時受信に切替え、その後の前記所定の事象の事象検知状態の継続中は前記受信可能時間を短くした間欠受信に切替え、事象検知状態が解除されたことを条件として事象検知前の間欠受信に戻す、
ことを特徴とする警報器。
【請求項9】
請求項1記載の警報器に於いて、
前記受信部で他の警報器から連動信号を有効受信した場合、正常受信を示すACK信号を前記送信部で送信し、
前記送信部から連動信号を送信した後に他の住警器からのACK信号を前記受信部で受信し、前記ACK信号を受信しない警報器を検知した場合、ACK信号を受信した他の警報器に対し前記連動信号に中継要求を示す符号を含む連動信号を送信して、前記連動信号の内容を中継送信させることを特徴とする警報器。
【請求項10】
電池電源で動作し、監視領域における所定の事象を検知した場合に連動元を示す警報を出力すると共に他の警報器に前記所定の事象を示す連動信号を送信部から送信し、他の警報器から前記所定の事象を示す連動信号を受信部で受信した場合に連動先を示す警報を出力し、更に他の警報器から受信した連動信号を中継する警報器に於いて、
前記送信部は、前記電源電圧が前記所定レベル以上で且つ前記所定の事象以外の事象を検知した場合、所定の第1送信モードを設定して他の警報器に連動信号を送信し、前記電源電圧が前記所定レベル以上で且つ前記所定の事象を検知した場合、前記第1送信モードよりも送信能力の高い所定の第2送信モードを設定して他の警報器に連動信号を送信することを特徴とする警報器。
【請求項11】
電池電源で動作し、監視領域における所定の事象を検知した場合に連動元を示す警報を出力すると共に他の警報器に前記所定の事象を示す連動信号を送信部から送信し、他の警報器から前記所定の事象を示す連動信号を受信部で受信した場合に連動先を示す警報を出力し、更に他の警報器から受信した連動信号を中継する警報器を設けた監視システムに於いて、
前記警報器の送信部は、前記電源電圧が前記所定レベル以上で且つ前記所定の事象以外の事象を検知した場合、所定の第1送信モードを設定して他の警報器に連動信号を送信し、前記電源電圧が前記所定レベル以上で且つ前記所定の事象を検知した場合、前記第1送信モードよりも送信能力の高い所定の第2送信モードを設定して他の警報器に連動信号を送信することを特徴とする監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−190225(P2012−190225A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52799(P2011−52799)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】