説明

警報器

【課題】電池切れ判定処理時に、警報部が鳴動する際に相当する電流を電圧検出回路に流して、電圧を検出し閾値と比較することで、電池残量が警報器を正常に動作させることが可能であるか確認する。
【解決手段】物理現象に基づく状態変化を検出する状態検出部40,50と、状態検出部の出力信号に基づいて警報部に警報を出力させる制御部10とを備え、電池1を電源とする警報器100において、火災時に正常な動作を行うことができるだけの電池残量があるかを確認する電池切れ判定を行い、電池切れ判定は、電池に試験用抵抗を接続し、警報部60が鳴動する際に相当する電流を流して、電池の電圧を検出し閾値と比較する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池で駆動する警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災検出時や点検異常時(電池電圧低下時やセンサ異常時など)に警報音鳴動を行う警報音鳴動回路を備えた警報器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この種の警報器の警報部は、警報音を増幅する増幅回路と、増幅された警報音を出力するブザーやスピーカなどの音響部とを備えている。そして、例えば住宅用火災警報器の場合、火災検出時には消防法の規格により70dB以上の音圧で火災警報を出力する。
また、この種の警報器では、火災発生時に電池切れで機能が発揮できないということがないように、所定の電池残量以下になると、電池あるいは警報器自体を交換すべきことを報知する機能が設けられている。
この電池残量を測定する方法として、あらかじめ電池電圧の低下を示す所定の標準電圧を電池電圧低下検出部に印加して、その出力値を低下基準値として記憶部に記憶させ、電池切れ判定処理時には使用している電池を電池電圧低下部に接続して、その出力値を低下基準値と比較して電池切れを判断する方法が開示されている。この方法では直列に接続した2個の抵抗で電池電圧を所定の分圧比で分圧し、その分圧点の電圧値を出力値としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−039829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この方法には以下のような問題点がある。
電池の電圧は電流を流す機器の抵抗値によって機器を接続しない状態での電圧よりも低くなる。警報器は警報音を鳴動する際に最も電力を消費するが、引用文献1に記載された方法では電池切れ判定処理時における電池の電圧降下を2個の抵抗分しかみていないことになる。このため、この確認方法で電池切れでないと判定されても、実際に所定の音圧で警報音を鳴動させようとした時には電圧が不足している場合がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、電池切れ判定処理時に警報部が鳴動する際に相当する電流を電圧検出回路に流して電圧を検出し閾値と比較することで、電池残量が警報器を正常に動作させることが可能であるか確認できる警報器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る警報器は、物理現象に基づく状態変化を検出する状態検出部と、前記状態検出部の出力信号に基づいて警報部に警報を出力させる制御部と、を備え、電池を電源とする警報器において、前記制御部が、前記警報器が火災時に正常な動作を行うことができるだけの電池残量があるかを確認する電池切れ判定を行い、前記電池切れ判定は、前記電池に試験用抵抗を接続し、前記警報部が鳴動する際に相当する電流を流して、電圧を検出し閾値と比較することにより行うことを特徴とする。
また、本発明に係る警報器は、前記警報器は、周囲温度を測定する温度検出部を備え、前記試験用抵抗が、前記制御部からの指示によって、抵抗値を変化させる可変抵抗であり、前記制御部は、電池切れ判定を行う前に、前記温度検出部の検出値を入手し、周囲温度に基づいて前記警報部の作動電流を求め、前記可変抵抗の抵抗値を前記警報部が鳴動する際に相当する電流を流す抵抗値に設定し、前記電池切れ判定を行うことを特徴とする。
また、本発明に係る警報器は、前記制御部が、前記電池切れを判断する閾値を、前記温度検出部の検出値によって補正することを特徴とする。
また、本発明に係る警報器は、前記温度検出部は、前記状態検出部の熱検出素子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電池切れ判定は警報部が鳴動する際に相当する電流を試験用抵抗に流して行うため、実際に所定の音圧で警報音を出力することができる電池残量があるかどうかを確認することができる。
また、電池切れ判定時に試験電流を流す試験抵抗の抵抗値を可変とし、周囲温度に基づいて警報部が鳴動する際に相当する電流を流す抵抗値を求めて設定するため、リアルタイムの状況に則した試験電流で、電池残量が所定量以上残っているか確認することができる。試験抵抗の抵抗値を固定値とする場合、試験抵抗の抵抗値を使用環境下において警報部が作動するときの最大値に設定する必要があり、電池切れ判定のために電池を余分に消費してしまうことになる。本発明では試験抵抗の抵抗値を可変とするため、上記の通り、警報器の電池寿命を延ばすことができる。
また、電池切れを判定する閾値を周囲温度に基づいて変更するため、周囲温度によってはまだ使用できる状態で電池切れと判断することなく、リアルタイムの状況に則した電池残量を判断することができるので、電池を無駄なく使い切ることができ、結果的に警報器の製品寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1〜3に係る火災警報器の機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る火災警報器の電池電圧検出回路の回路図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る火災警報器の電池切れ判定処理時のフローチャートである
【図4】本発明の実施の形態2、3に係る火災警報器の電池電圧検出回路の回路図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る火災警報器の電池切れ判定処理時のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1
以下、本実施の形態1では、電池で駆動する火災警報器に本発明を適用した場合を例に説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る火災警報器300の回路構成を示す機能ブロック図である。
図1において、火災警報器300は、電池1と、EEP−ROM302と、点検スイッチ3と、制御部310と、電池電圧検出回路320と、熱検知部40と、煙検知部50と、警報部60と、表示部70とを備える。
【0010】
制御部310は、定電圧回路11と、リセット部12と、発振部13と、AD変換部15と、閾値設定部316と、電池切れ判定部17とを含んでいる。
【0011】
電池電圧検出回路320は、図2に示されるように試験用抵抗324と、2個の電池電圧測定用抵抗25、26とを含んでいる。
試験用抵抗324は、警報部60の抵抗値を代替する。警報部60の抵抗値は周囲温度により上下するため、使用環境下において想定される最大の抵抗値(例えば周囲温度40℃時)とする。
電池電圧測定用抵抗25、26は、直列に接続されており、中間にある分圧点29で電池電圧を分圧している。
試験用抵抗324と電池電圧測定用抵抗25、26は電池に対して並列に接続されている。
電池切れ判定処理を行う際には、制御部310は試験用抵抗324と直列に接続されたFET27および2個の抵抗25、26と直列に接続されたFET28を制御して、通常時はオフになっている電池電圧検出回路320をオン制御する。
電池電圧検出回路320は電池電圧測定用抵抗25、26の分圧点29における電圧検出信号を制御部310に出力し、制御部310は入力された電圧値を電池切れ判定部17にて電池切れかどうか判断する。
【0012】
定電圧回路11は、電池1の電源電圧を所定の定電圧電源(例えば、約2.3Vの電圧)として制御部310等に供給する。
【0013】
リセット部12は、電源投入時に制御部310をリセット状態にし、所定時間後にリセット状態を解除して動作可能な初期状態にさせる。また、制御部310に印加される電圧が制御部310の動作保証電圧より小さくなった場合に、制御部310をリセット状態にする。
発振部13は、制御部310に対してクロック信号を供給する。
【0014】
図2は、電池電圧検出回路320の回路図である。
電池電圧検出回路320は、印加された電圧を分圧点29で検出し、検出した電圧に応じた電圧検出信号を制御部310に出力する。
電池電圧検出回路320の入力側は検出電圧切替スイッチ23に接続されており、検出電圧切替スイッチ23を介して後述する基準電圧供給部200あるいは電池1に接続される。すなわち、電池電圧検出回路320は、基準電圧供給部200あるいは電池1により印加される電圧を検出することができるものである。
【0015】
制御部310は、火災警報器300の全体的な制御を行うものであり、各内部回路からの信号を定期的に取り込み、その信号に応じた処理を行う。例えば、制御部310が煙検知部50の受光アンプ53からの信号(火災検出信号)を取り込んだ場合、この火災検出信号に基づいて警報鳴動が必要か否かを判断する。制御部310が火災検出信号を取り込み、警報鳴動が必要であると判断した場合は、制御部310は警報鳴動の音声データを警報部60に出力する。
制御部310は、制御部310が有するタイマ部(図示しない)が計時している所定の周期で、火災警報器300が火災時に正常な動作を行うことができるだけの電池残量があるかを確認する電池切れ判定処理を行う。電池切れ判定処理時には実際に警報鳴動させると騒音となるため、警報部60が鳴動する際に相当する電流を試験用抵抗324に流して行う。
さらに、制御部310は、AD変換部15と閾値設定部316と電池切れ判定部17とを備える。
【0016】
AD変換部15は、電池電圧検出回路320からの電圧検出信号を、電圧検出値(デジタル信号)に変換する。
【0017】
閾値設定部316は、基準電圧供給部200を電池電圧検出回路320に印加したときの電圧検出値を、電池切れを示す閾値となる電圧(以下、電池切れ閾値と称する)としてEEP−ROM302に格納する。
【0018】
電池切れ判定部17は、電池1により電圧を印加されたときの電池電圧検出回路320の電圧検出値と、EEP−ROM302に格納された電池切れ閾値とを比較し、電池1の電圧が電池切れ閾値以下となった場合に、電池1の電圧切れを検出する。
【0019】
検出電圧切替スイッチ23は、制御部310により制御されて、電池電圧検出回路320の入力側に接続する電圧供給源を切り替える。検出電圧切替スイッチ23の一方の接点は基準電圧入力端子21であり、電池切れ閾値を設定する際に基準電圧供給部200に接続される。また、検出電圧切替スイッチ23の他方の接点は電池電圧入力端子22であり、電池切れ判定処理を行う際に電池1に接続される。なお、電池切れ閾値の設定が済んだ警報器300では、平常時は検出電圧切替スイッチ23は基準電圧入力端子21に接続され、基準電圧入力端子21には基準電圧供給部200が接続されていない状態であり、電池電圧検出回路320に電圧は印加されていない。
【0020】
EEP−ROM302は、制御部310が実行するプログラムや各種データを格納する記憶部である。EEP−ROM302には、電池切れを検出するための閾値となる電圧である電池切れ閾値が記憶される。
【0021】
点検スイッチ3は、居住者等のユーザによる押下操作を受け付け、点検機構を動作させるためのスイッチである。点検スイッチ3が押下されると、制御部310は点検スイッチ3の押下信号を取り込み、そして点検スイッチ3の入力が確定したか否かを判断する。制御部310が、点検スイッチ3の入力が確定したと判断した場合、制御部310から警報音や表示灯などの動作に関する点検を開始させる信号が送信される。
【0022】
熱検知部40および煙検知部50は、本発明の状態検出部に相当するものであり、物理現象に基づく状態変化を検出して検出内容に応じた信号を制御部310に出力する。
【0023】
熱検知部40は、固定抵抗41と、感熱素子42による温度センサで構成されている。固定抵抗41と感熱素子42との間の中間電位が熱検知部40の出力端子であり、その出力端子を介して温度検出信号を制御部310に送信している。感熱素子42は、例えばサーミスタの場合、環境温度に応じてその抵抗が変動する温度特性を有する。補償用の固定抵抗41によりサーミスタの温度特性がリニア化されるため、出力端子には環境温度に応じた検出電圧(温度情報)が入力される。
【0024】
煙検知部50は、発光素子である赤外LED等の発光素子54と、制御部310からの発光制御パルスを受けたときに、発光素子54に電流パルスを供給する発光素子ドライブ回路51とを備えている。さらに煙検知部50は、発光素子54から光学台内部に照射された光が煙粒子によって生じさせる散乱光を受光するフォトダイオード(PD)等の受光素子55を備えており、発光素子54の発光による散乱光を受光する。そして、受光素子電流電圧変換回路52において、受光素子55で受光した散乱光の量に基づいて得られた電流を電圧に変換する。その電圧の出力レベルを、受光アンプ53において所定のゲインで増幅し、制御部310に送信する。
【0025】
警報部60において、制御部310から入力された音声データ(デジタル信号)は、音声用D/A変換器61で音声信号(アナログ信号)に変換され、ローパスフィルタ(図示しない)を介して出力される。そして、制御部310から音量制御信号が音声アンプ62に送信され、音声アンプ62で音声信号(アナログ信号)の増幅度が調整される。スピーカ63では、音声アンプ62で増幅された音声信号が出力される。
【0026】
表示部70は、火災警報器300の状態を、表示灯ドライブ回路71に接続されている表示灯72に表示させるものである。なお、火災警報器300の状態として、正常に火災検出動作している場合(火災を検出しておらず、電池残量やセンサ機器等にも異常がない状態)の他、電池残量の低下による異常や、センサの故障等の機器による異常が発生している場合、火災を検出して警報出力している場合等がある。表示灯72は、火災警報器300の筐体に設けられている。なお、表示灯72として赤色LED等を用いているが、その種類や個数を特に限定するものではない。
【0027】
基準電圧供給部200は、電池切れ閾値を設定する際、検出電圧切替スイッチ23を介して火災警報器300に接続され、電池切れを示す所定の基準電圧を印加する。この電池切れを示す所定の基準電圧としては、電池切れ閾値が火災警報器300が火災検出と警報出力を行うことのできる最小の電圧値となるように設定する。
【0028】
次に、火災警報器300の火災検出動作について説明する。ここでは、煙を検出して火災発生の有無を判断する場合を例に説明する。
火災警報器300は、電池1から供給される電源電圧を定電圧回路11によって安定した所定の定電圧(例えば2.3Vの電圧)にし、制御部310等に定電圧電源が供給される。火災警報器300は、制御部310が有するタイマ部が計時している所定の周期で火災監視動作及び異常監視動作を実行する。次に、制御部310は、発光素子ドライブ回路51に発光制御パルスを供給し、所定のパルス幅及び所定の周期で発光素子54を発光させる。
【0029】
煙検知部50における受光素子55は、発光素子54の光路上には配置されておらず、発光素子54の光が直接受光素子55に到達することはない。しかし、火災等により発生した煙が、受光素子55と発光素子54との間に介在すると、煙の粒子により発光素子54の光が散乱され、その散乱された光を受光素子55が受光することになる。
上記の理由により、煙が発生していない場合は、受光素子55には発光素子54が発光した光がほとんど到達しない。つまり、受光アンプ53で増幅された信号は、所定の基準値(火災発生レベル)未満になっているため、制御部310からは、警報部60及び表示部70を動作させる信号が出力されない。したがって、警報部60では音声警報が鳴動せず、表示部70では表示灯72に火災が発生していることを表示させることはない。
【0030】
煙が発生している場合には、発光素子54により発光された光が、煙の粒子により散乱され、その散乱した光が受光素子55に到達する。つまり、受光アンプ53で増幅された信号は、所定の基準値以上になっているため、制御部310は火災が発生していると判断し、警報部60及び表示部70を動作させる信号を出力する。すると、警報部60は警報音を鳴動させ、表示部70は表示灯72に火災表示させる。
【0031】
制御部310が火災の発生ではないと判断したときは、火災検出動作を終了し、通常の待機状態に復帰する。
【0032】
次に、電池1の電池切れを検出するための電池切れ閾値を設定する処理を説明する。電池切れ閾値の設定は、例えば火災警報器300の組み立て完成時や監視対象領域への設置時など、電池切れ閾値の設定に影響を及ぼす部位の組み立てが終了した後に行う。電池切れ閾値の設定処理は、基準電圧入力端子21に基準電圧供給部200を接続した後、例えば火災警報器300の製造者や設置者が、図示しないモード切替スイッチを操作するなどして、電池切れ閾値設定モードとする指示を制御部310に与えることにより開始される。
【0033】
電池切れ閾値設定モードになると、まず制御部310は、検出電圧切替スイッチ23に信号を出力して基準電圧入力端子21側と電池電圧検出回路320とを接続させる。
次に、制御部310は、FET27、28をオンして、基準電圧供給部200により電池切れを示す所定の基準電圧を試験用抵抗324と2個の電池電圧測定用抵抗25、26に印加する。このとき、電池電圧検出回路320は検出した分圧点29の電圧値に応じた電圧検出信号を制御部310に出力する。
制御部310のAD変換部15は、電池電圧検出回路320から出力された電圧検出信号をAD変換して電圧検出値(デジタル信号)とする。そして、閾値設定部316は、この電圧検出値を電池切れ閾値としてEEP−ROM302に格納させる。
電池切れ設定処理は使用環境下で警報部60が最大の抵抗値となる条件下(例えば周囲温度40℃)で行うと、使用条件の温度範囲内において電池切れと判定されない状態で警報部60が鳴動しないという不具合を避けることができる。または、電池電圧検出回路320から出力された電圧検出値に対して閾値設定部316にて所定の補正値を加えて電池切れ閾値を高めに設定するようにしてもよい。
【0034】
次に本発明の主要部分である、火災警報器300の電池切れ判定処理を説明する。
図3は、電池切れ判定処理を示すフローチャートである。
火災監視中において制御部310は、電池切れ判定処理の実行タイミングになると、検出電圧切替スイッチ23に信号を出力して電池電圧入力端子22側と電池電圧検出回路20とを接続させる(S1)。次に制御部310は、電池電圧検出回路320のFET27、28を接続に切り換え、電池1により電池電圧検出回路320に対して電圧が印加される。試験用抵抗324と2個の電池電圧測定用抵抗25、26に電圧が印加され、電池電圧検出回路320は、検出した分圧点29の電圧値に応じた電圧検出信号を制御部310に出力する(S2)。
【0035】
制御部310のAD変換部15は、電池電圧検出回路320から出力された電圧検出信号をAD変換して電圧検出値(以下、電池電圧現在値と称する)とする(S3)。
【0036】
次に、電池切れ判定部17は、EEP−ROM302に格納されている電池切れ閾値を参照し(S4)、電池切れ閾値と電池電圧現在値とを比較する(S5)。そして、電池電圧現在値が電池切れ閾値以上であれば電池切れではないものとしてそのまま処理を終了する(S9)。
【0037】
一方、ステップS5において電池電圧現在値が電池切れ閾値未満であれば、電池切れ回数をカウントアップする(S6)。そして、電池切れ回数が所定の確定回数に達しているか否か判断し(S7)、達していなければ電池切れの判定を保留状態としてそのまま処理を終了する(S9)。
【0038】
また、ステップS7において電池切れ回数が確定回数に達していれば、電池切れ確定処理を行う(S8)。すなわち、所定時間ごとに行う電池切れ判定処理において電池切れと判定した回数(電池切れ回数)をカウントしておき、電池切れ回数が所定の確定回数に達したところで、電池切れであるとの判断を確定している。
【0039】
電池切れ確定処理では、例えば、「ピ、電池切れです。」等の電池切れを報知するための警報音を出力する。具体的には、制御部310が電池切れを報知するための音声データを音声用D/A変換器61に送信すると、音声用D/A変換器61において音声データが音声信号に変換され、音声信号が音声アンプ62に入力される。次に、制御部310が音声信号の出力音量を調整するための音量制御信号を音声アンプ62に送信すると、音声アンプ62で音声信号の増幅度が調整され、増幅度が調整された音声信号が、スピーカ63から警報音として出力される。
【0040】
以上のように本実施の形態に係る火災警報器300によれば、電池切れ判定処理において警報部60が鳴動する際に相当する電流を試験用抵抗324に流して行うので、電池電圧が実際に警報を発する場合と同様に低下している状態で電池切れ判定を行うため、警報器300が作動したとき所定の音圧で警報音を鳴動できる状態であると確認できる。
【0041】
実施の形態2
本実施の形態2の火災警報器100では、実施の形態1の火災警報器300に対し、試験抵抗324に代えて可変抵抗24を用い、周囲温度に応じて抵抗値を補正して、警報部60が鳴動する際に相当する電流を可変抵抗24に流して電池切れ判定処理を行うものである。なお、実施の形態1と同じ構成機器については同じ符号を付与し、機能も同じであるため説明を省略する。
図1において、火災警報器100は、EEP−ROM2と、制御部10と、電池電圧検出回路20が実施の形態1の火災警報器300と相違している。
制御部10は閾値設定部16が実施の形態1の制御部310と相違している。
【0042】
図4は、電池電圧検出回路20の回路図である。
電池電圧検出回路20は、試験用抵抗として可変抵抗24を使用している点が実施の形態1の電池電圧検出回路320と相違している。
可変抵抗24は、警報部60の抵抗値を代替する。警報部60の抵抗値は周囲温度により上下するため、制御部10からの指示によって抵抗値を補正する。可変抵抗24の周囲温度による抵抗値は後述するEEP−ROM2に予め格納されている。
可変抵抗24と電池電圧測定用抵抗25、26は電池に対して並列に接続されている。
電池切れ判定処理を行う際には、制御部10は可変抵抗24と直列に接続されたFET27および2個の抵抗25、26と直列に接続されたFET28を制御して通常時はオフになっている電池電圧検出回路20をオン制御する。
電池電圧検出回路20は電池電圧測定用抵抗25、26の分圧点29における電圧検出信号を制御部10に出力し、制御部10は入力された電圧値を電池切れ判定部17にて電池切れかどうか判断する。
【0043】
電池電圧検出回路20は、印加された電圧を分圧点29で検出し、検出した電圧に応じた電圧検出信号を制御部10に出力する。
また、電池電圧検出回路20の入力側は検出電圧切替スイッチ23に接続されており、検出電圧切替スイッチ23を介して後述する基準電圧供給部200あるいは電池1に接続される。すなわち、電池電圧検出回路20は、基準電圧供給部200あるいは電池1により印加される電圧を検出することができるものである。
【0044】
制御部10は、火災警報器100の全体的な制御を行うものである。制御部10は、電池切れ閾値設定と電池切れ判定処理に先だって温度検出部(本実施の形態2では、後述する熱検知部40が兼用する。)に周囲温度を測定させ、その結果に基づいて、可変抵抗24の抵抗値を変化させる点が実施の形態1の制御部310と相違する。
【0045】
EEP−ROM2は、電池切れ閾値に加えて可変抵抗24の周囲温度に基づく抵抗値が記憶されている点が実施の形態1のEEP−ROM302と相違する。
【0046】
熱検知部40は、本実施の形態2では、本発明の温度検出部を兼ねている。従って、電池切れ閾値設定および電池切れ判定処理の直前に周囲温度を検出し温度検出信号を制御部10に送信する。
【0047】
次に、本実施の形態2における電池1の電池切れを検出するための電池切れ閾値を設定する処理を説明する。電池切れ閾値の設定は、例えば火災警報器100の組み立て完成時や監視対象領域への設置時など、電池切れ閾値の設定に影響を及ぼす部位の組み立てが終了した後に行う。電池切れ閾値の設定処理は、基準電圧入力端子21に基準電圧供給部200を接続した後、例えば火災警報器100の製造者や設置者が、図示しないモード切替スイッチを操作するなどして、電池切れ閾値設定モードとする指示を制御部10に与えることにより開始される。
【0048】
電池切れ閾値設定モードになると、まず、制御部10は、温度検出部である熱検知部40に周囲温度を測定させる。周囲温度を測定した熱検知部40が検出電圧(温度情報)を制御部10に出力する。制御部10はEEP−ROM2に格納されている可変抵抗設定値を参照し可変抵抗24の抵抗値を補正する信号を電池電圧検出回路20に出力する。これを受信した電池電圧検出回路20は可変抵抗24の抵抗値を補正し、補正が完了したことを制御部10に出力する。
以下は実施の形態1と同様にして、電圧供給部200により電池切れを示す所定の基準電圧を可変抵抗24と2個の電池電圧測定用抵抗25、26に印加し、分圧点29の電圧値を電圧検出値に変換し、閾値設定部16は、この電圧検出値を温度情報とともに電池切れ閾値としてEEP−ROM2に格納させる。
電池切れ設定処理は使用環境下で警報部60が最大の抵抗値となる条件下(例えば周囲温度40℃)で行うと、使用条件の温度範囲内において電池切れと判定されない状態で警報部60が鳴動しないという不具合を避けることができる。または、電池電圧検出回路20から出力された電圧検出値に対して閾値設定部16にて所定の補正値を加えて電池切れ閾値を高めに設定するようにしてもよい。
【0049】
次に本発明の主要部分である、火災警報器100の電池切れ判定処理を説明する。
図5は、電池切れ判定処理を示すフローチャートである。
火災監視中において制御部10は、電池切れ判定処理の実行タイミングになると、熱検知部40に周囲温度を測定させる。
【0050】
熱検知部40により周囲温度が測定されると(S10)、検出電圧(温度情報)として、制御部10に出力される(S11)。制御部10は、電池電圧検出回路20に温度情報を送出する。電池電圧検出回路20は、EEP−ROM2に格納されている可変抵抗設定値を参照し可変抵抗24の抵抗値を設定し、設定が完了したことを制御部10に出力する(S12)。
【0051】
次に制御部10は、検出電圧切替スイッチ23に信号を出力して電池電圧入力端子22側と電池電圧検出回路20とを接続させる(S13)。次に制御部10は、電池電圧検出回路20のFET27、28をオンにして、電池1により電池電圧検出回路20に対して電圧が印加される。このとき、可変抵抗24と2個の電池電圧測定用抵抗25、26に電圧が印加され、電池電圧検出回路20は、検出した分圧点29の電圧値に応じた電圧検出信号を制御部10に出力する(S14)。
【0052】
制御部10のAD変換部15は、電池電圧検出回路20から出力された電圧検出信号をAD変換して電圧検出値(以下、電池電圧現在値と称する)とする(S15)。
【0053】
次に、電池切れ判定部17は、EEP−ROM2に格納されている電池切れ閾値を参照する(S16)。
ステップ17以降は、実施の形態1のステップ5以降と同じ処理を行う。
【0054】
以上のように本実施の形態2に係る火災警報器100によれば、電池切れ判定処理において周囲温度を測定し、その周囲温度において警報部60が鳴動する際に相当する電流を流す抵抗値に可変抵抗24を設定するので、周囲温度に見合った電池切れ判定処理を実施することができるので過剰な電流を流すことがなく、電池寿命を延ばすことができる。
【0055】
実施の形態3
次に、本実施の形態3では、実施の形態2に示した電池切れ判定処理において、電池残量の目安となる電池切れ閾値も周囲温度によって決定するものである。実施の形態3の火災警報器400では、実施の形態2の火災警報器100に対し、図1においてEEP−ROM402と、制御部410と、電池電圧検出回路420が相違しており、電池切れ閾値を設定する処理と電池切れ判定処理において相違点が生じるので、その相違点を中心に説明する。
【0056】
本実施の形態3では、電池切れ閾値を設定する処理では、EEP−ROM402に記憶する電池切れ閾値を温度と関連付けて複数記憶する。なお、EEP−ROM402には、あらかじめ電池1の温度特性を記憶しておく。
【0057】
まず、制御部410は、温度検出部(本実施の形態3では熱検知部40)によって周囲温度を測定させる。
次に基準電圧入力端子21に基準電圧供給部200を接続した後、検出電圧切替スイッチ23に信号を出力して基準電圧入力端子21側と電池電圧検出回路420とを接続させる。
【0058】
次に、基準電圧供給部200により電池切れを示す所定の基準電圧が印加されると、電池電圧検出回路420は検出した電圧に応じた電圧検出信号を制御部410に出力する。制御部410は、AD変換部15で電圧検出信号をAD変換して電圧検出値とする。閾値設定部416は、この電圧検出値と、温度検出部40によって測定された周囲温度とを関連付けて、電池切れ閾値としてEEP−ROM402に格納させる。
次に制御部410は、EEP−ROM402に格納された電池1の温度特性に、電圧検出信号(電圧検出値)と周囲温度の実測値をあてはめて、周囲温度毎(例えば、−10度〜40度の範囲で1度毎)の電池切れ閾値を設定して、EEP−ROM402に格納する。
【0059】
電池切れ判定処理では、図5のステップ10、12、17、21が異なるので、相違点のみを以下に詳細に説明する。
電池切れ判定処理では、電池切れ判定処理開始時にまず、温度検出部により周囲温度を検出し(図5のステップ10)、制御部410は、周囲温度の測定値に近い電池切れ閾値(例えば、測定値より低い温度のうち最も高い温度の閾値)をEEP−ROM402から読み出す(図5のステップ12)。
【0060】
制御部410は、読み出した電池切れ閾値と、電池電圧現在値とを比較する(図5のステップ17)。そして、電池電圧現在値が電池切れ閾値以上であれば電池切れではないものとしてそのまま処理を終了する(図5のステップ21)。
【0061】
以上のように本実施の形態3に係る火災警報器400によれば、電池切れ判定処理において周囲温度を測定し、その周囲温度において警報部60が鳴動する際に相当する電流を流す抵抗値に可変抵抗24を設定するとともに、その周囲温度における電池の状態に即した電池切れ閾値を用いるので、周囲温度に対して精度の高い電池切れ判定処理が行えるため、結果として電池寿命を長くすることができる。
【0062】
なお、以上の実施の形態2および3では、電池切れ判定処理時の温度検出部を熱検知部40が兼用しているが、別途温度検出部を有してもよい。
また、実施の形態2および3では、試験用の抵抗に可変抵抗24を用いて周囲温度に応じた抵抗値に設定して電池切れ判定処理を行うが、可変抵抗24に変えて、抵抗値の異なる複数の抵抗を選択可能に備え、周囲温度に応じて抵抗を選択する方法としてもよい。
また、実施の形態2および3では、制御部10が熱検知部40の測定した温度情報をもとにEEP−ROM2に格納された可変抵抗設定値を読み出しているが、制御部10は温度情報を電池電圧検出回路20に送出し、電池電圧検出回路20がEEP−ROM2に格納された可変抵抗設定値を読み出す構成としてもよい。
また、実施の形態1、2および3の火災警報器300、100、400では、熱検知部40と煙検知部50とを備えているが、熱検知部40と煙検知部50のいずれか一方を備える構成としてもよい。なお、実施の形態2および3において熱検知部40のみを備える構成の場合は、温度検出部を熱検知部40が兼用する構成でも別途備える構成としてもよいが、煙検知部50のみを備える構成の場合は、温度検出部を別途備える構成となる。
また、実施の形態1、2および3の火災警報器300、100、400では、電池切れ判定処理時に電池切れ回数をカウントアップするが、1回の電池切れで電池切れ判定処理を行う構成としてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 電池、2、302、402 EEP−ROM、3 点検スイッチ、4 熱検知部、5 煙検知部、6音声警報部、7 表示部、10、310、410 制御部、11 定電圧回路、12 リセット部、13 発振部、15 AD変換部、16、316、416 閾値設定部、17 電池切れ判定部、20、320、420 電池電圧検出回路、21 基準電圧入力端子、22 電池電圧入力端子、23 検出電圧切替スイッチ、24 可変抵抗、25、26 電池電圧測定用抵抗、27、28 FET、29 分圧点、40 熱検知部、41 固定抵抗、42 感熱素子、50 煙検知部、51 発光素子ドライブ回路、52 受光素子電流電圧変換回路、53 受光アンプ、54 発光素子、55 受光素子、60 警報部、61 音声用D/A変換器、62 音声アンプ、63 スピーカ、70 表示部、71 表示灯ドライブ回路、72 表示灯、100、300、400 火災警報器、200 基準電圧供給部、324 試験用抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理現象に基づく状態変化を検出する状態検出部と、
前記状態検出部の出力信号に基づいて警報部に警報を出力させる制御部と、
を備え、電池を電源とする警報器において、
前記制御部が、前記警報器が火災時に正常な動作を行うことができるだけの電池残量があるかを確認する電池切れ判定を行い、前記電池切れ判定は、前記電池に試験用抵抗を接続し、前記警報部が鳴動する際に相当する電流を流して、前記電池の電圧を検出し閾値と比較することにより行うことを特徴とする警報器。

【請求項2】
前記警報器は、周囲温度を測定する温度検出部を備え、
前記試験用抵抗が、前記制御部からの指示によって、抵抗値を変化させる可変抵抗であり、
前記制御部は、電池切れ判定を行う前に、前記温度検出部の検出値を入手し、周囲温度に基づいて前記警報部の作動電流を求め、前記可変抵抗の抵抗値を前記警報部が鳴動する際に相当する電流を流す抵抗値に設定し、
前記電池切れ判定を行うことを特徴とする請求項1に記載の警報器。

【請求項3】
前記制御部が、前記電池切れを判断する閾値を、前記温度検出部の検出値によって補正することを特徴とする請求項1または2に記載の警報器。

【請求項4】
前記温度検出部は、前記状態検出部の熱検出素子であることを特徴とする請求項1乃至3に記載の警報器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−33414(P2013−33414A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169788(P2011−169788)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】