説明

警報音生成装置および警報音生成方法

【課題】車室内で聴き取りやすい警報音を出力する。
【解決手段】検知センサ10は車両40の運転に必要な情報を検知する。警報音生成部20は検知センサ10が検知した情報を用いて複数の周波数の正弦波が合成された警報音を生成する。複数の警報音出力部30は警報音生成部20で生成された警報音を車両40の車室内に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内で聴き取りやすい警報音が出力できる警報音生成装置および警報音生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転中、警報音により運転者に危険を知らせる技術の開発が進んでいる。
【0003】
たとえば特許文献1には、車両に取り付けたセンサを用いて自車に対して他車がどの方向にいるのか、自車と他車との距離がどの程度離れているのかを認識し、自車と他車との走行状態を警報音で表現する車両用警報装置が開示されている。
【0004】
この車両用警報装置は、車室内の左右にフロントスピーカーとリヤスピーカーを配置する。自車に対して他車がどの方向にいるのかは、これらのスピーカーから出力される警報音の音量バランスで表現する。自車と他車との距離がどの程度離れているのかは、警報音の音量バランスとディレイ音のディレイ時間で表現する。
【0005】
運転者は、警報音とディレイ音とによって、他車がどの方向にどの程度の距離離れて走行しているのかを聴覚的に認識できる。このため、注意をしなければならない場所をいち早く知ることができ、危険な走行状態となることが未然に防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−219227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の車両用警報装置は、単一周波数の正弦波を用いて警報音を生成し、その警報音の音量バランスとディレイ音とによって運転者に危険を知らせる。このため、車室内に発生する定在波により警報音が運転席付近で打ち消され音量が低下して警報音が極端に聴き難くなることがある。また、定在波の影響により警報音がどの方向から出力されているのかが認識できないこともある。
【0008】
また、運転席は車室内の右側前方または左側前方に位置され、車室の中央からは偏って配置されている。一方、警報音を出力するスピーカーは車室内の4隅を利用して配置されている。したがって、運転者の着座位置と各スピーカーの取り付け位置との間の距離は同一ではない。このため、運転者の両耳に対して警報音の音量バランスを前後左右対称となるように制御することは難しい。
【0009】
このように、定在波の影響と警報音の音量バランスの制御の困難性から、運転者が警報音を聴き取れなくなる恐れおよび警報音が出力されている方向を認識できなくなる恐れがある。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、車室内に定在波が発生したとしても、運転者から各スピーカーまでの距離が同一でなくても、車室内で聴き取りやすい警報音が出力できる警報音生成装置および警報音生成方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための警報音生成装置は、検知センサ、警報音生成部および警報音出力部を有する。
【0012】
検知センサは車両の運転に必要な情報を検知する。警報音生成部は検知センサが検知した情報を用いて複数の周波数の正弦波が合成された警報音を生成する。警報音出力部は警報音生成部で生成された警報音を車両の車室内に出力する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る警報音生成装置によれば、運転者は複数の周波数の正弦波が合成された警報音を聴くことになる。このため、車室内に定在波が発生したとしても、運転者から複数の警報音出力部までの距離が同一でなくても、運転者は警報音を確実に聴き取ることができ、その警報音が出力されている方向を確実に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1から実施形態3に係る警報音生成装置の概略構成図である。
【図2】実施形態1における警報音生成装置の動作フローチャートである。
【図3】実施形態2における警報音生成装置の動作フローチャートである。
【図4】実施形態3における警報音生成装置の動作フローチャートである。
【図5】実施形態1から実施形態3に係る警報音生成装置による危険認識時間の短縮効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る警報音生成装置および警報音生成方法の実施形態を[実施形態1]から[実施形態3]に分けて説明する。図1は実施形態1から実施形態3に係る警報音生成装置の概略構成図である。
【0016】
図1に示す警報音生成装置100は、車室内に生じる定在波の影響を受け難くなるように複数の周波数の正弦波が合成された警報音を出力する。また、運転者に注意すべき方向を認識させるために複数のスピーカーの音量バランスを考慮して警報音を出力する。さらに、運転者に注意すべき方向を確実に認識させるために警報音をスピーカーのそれぞれから同一の出力タイミングではなく、異なる出力タイミングで出力する。このような工夫をして警報音を出力すると、運転者は警報音を確実に聴き取ることができるようになり、その警報音が出力されている方向を確実に認識することができるようになる。
【0017】
図1に示すように、警報音生成装置100は、検知センサ10、警報音生成部20および警報音出力部30を有する。
【0018】
検知センサ10は、車両の運転に必要な情報を検知するためのセンサである。具体的には、車両の前後の障害物を検知する障害物検知センサ、車両の前後を走行する他車両の接近距離を測定する測距センサ、走行車線からの逸脱を検知する車線逸脱センサである。
【0019】
障害物検知センサは車両の前後のバンパーに取り付けて超音波を用いて障害物を検知する。測距センサは車両のボディーの前後に取り付けて超音波やレーザーを用いて他車両との距離を測定する。車線逸脱センサは車両のフロントガラス上部にビューカメラを取り付け、撮像された画像を画像解析ユニットで解析して車線の逸脱を検知する。
【0020】
検知センサ10には、これら以外にも次のような事象を検知するセンサが含まれる。例えば、車輪がスリップしたことを検知するセンサ、車両が追突しそうになっていることを検知するセンサ、車両が追突されそうになっていることを検知するセンサ、十字路で左右のいずれかの方向から他車が接近してきていることを検知するセンサなどである。
【0021】
警報音生成部20は、検知センサ10が検知した情報を用いて複数の周波数の正弦波が合成された警報音を生成する。警報音生成部20は、単一周波数ではなく、複数の周波数の正弦波を合成し、その合成した正弦波を警報音とする。複数の周波数の正弦波を合成すると、1つの周波数の正弦波により定在波が生じたとしても、他の周波数の正弦波はその定在波の影響を受け難くなる。このため、運転者は警報音を確実に聴き取ることができるようになる。
【0022】
警報音生成部20は、検知センサ10が検知した情報から、運転者にどの方向を注意させなければならないのかを認識する。運転者に注意させる方向から警報音が聞こえるように、警報音出力部30の音量バランスを演算する。また、警報音が出力されている方向を運転者に確実に認識させるために、最初の警報音とそれより少しの時間遅れて2番目の警報音を出力する。このように、警報音を遅らせて2回出力すると、警報音が出力されている方向が認識しやすくなるからである。
【0023】
警報音出力部30は、警報音生成部20で生成された警報音を車室内に出力する。警報音出力部30は、車室内に複数配置されているスピーカーを用いる。たとえば、車室内の前方の左右および後方の左右の4箇所に配置してあるオーディオ用のスピーカー30a〜30dを用いる。なお、警報音出力部30は、オーディオやラジオが取り付けられていない車両では、複数の音色の音が同時に出力できる後付のブザーを車室内に複数配置しても良い。
【0024】
図1に示すように、警報音生成部20は、走行状態認識部21、警報音出力情報メモリ22、警報音設定部23、音色情報メモリ24、警報音作成部25、増幅アンプ26を有する。
【0025】
走行状態認識部21は、検知センサ10が検知した車両の運転に必要な情報から車両の走行状態を認識する。例えば、検知センサ10が車両の前後の障害物を検知する障害物検知センサであるとき、車両の右後ろに障害物があれば、バンパーの右後ろに配置した障害物検知センサから信号が出力され、他の障害物検知センサからは信号が出力されない。走行状態認識部21は、これらの障害物検知センサから出力される信号によって車両の右後ろに障害物があるということ(走行状態)を認識する。走行状態認識部21は、認識した車両の走行状態を警報音設定部23に出力する。
【0026】
警報音出力情報メモリ22は、車両の車種、グレード及び内装ごとに、警報音の音量バランスと遅延時間を記憶する。音量バランスは、走行状態認識部21が認識する車両の走行状態ごとに設定してある。音量バランスは、スピーカー30a〜30dのそれぞれが出力する警報音の音量の割合である。音量バランスと遅延時間との設定は、運転者が、警報音が出力されている方向を確実に認識できるように、人間工学を駆使して設定する。
【0027】
たとえば、上記の例のように、車両の右後ろに障害物があるという走行状態の場合、音量バランスはスピーカー30a〜30cが0%、スピーカー30dが100%である。また、例えば車両の真後ろに障害物があるという走行状態の場合、音量バランスはスピーカー30a、30bが0%、スピーカー30cが60%、30dが40%である。車両の真後ろに障害物があるのに、スピーカー30cと30dの音量が異なるのは、運転者に対して警報音の音像を車両の真後ろに設定するためである。音量バランスは、このように車両の走行状態ごとに設定してある。
【0028】
遅延時間は、最初の警報音を出力してから少しの時間遅れて2番目の警報音を出力するために設定する時間である。遅延時間が0.1秒に設定されている場合、1回目の警報音が出力され、次に0.1秒遅れて2回目の警報音が出力される。
【0029】
たとえば、上記の例のように、車両の右後ろに障害物があるという走行状態の場合、スピーカー30dが1回目の警報音を出力し0.1秒遅れて2回目の警報音を出力する。また、例えば車両の真後ろに障害物があるという走行状態の場合、スピーカー30cと30dが1回目の警報音を出力し0.1秒遅れて2回目の警報音を出力する。なお、1回目の警報音と2回目の警報音の出力バランスは同一でも良いし変化させても良い。
【0030】
車両の車種、グレード及び内装ごとに警報音の音量バランスと遅延時間とを記憶させるときには、車種、グレード及び内装が異なる車両の運転席に人間の形をしたダミー人形を座らせる。このダミー人形の両耳にマイクを付け、マイクが捕らえる警報音を分析し、その車両に最適な音量バランスと遅延時間とを求める。求めた音量バランスと遅延時間は、車種、グレード及び内装の異なる車両ごとに警報音出力情報メモリ22に記憶させる。このように、車両の車種、グレード及び内装ごとに警報音の音量バランスと遅延時間を求めるのは、車室内で形成される音場が車室内の容量、形状、車室内の装備の材質によって異なるからである。
【0031】
警報音設定部23は、走行状態認識部21が認識した車両の走行状態を入力し、警報音出力情報メモリ22から、その車両の車種、グレード及び内装に適合し、さらに、その走行状態に適合する警報音の音量バランスと遅延時間とを読み込む。警報音設定部23は、読み込んだ警報音の音量バランスと遅延時間を警報音作成部25に出力する。
【0032】
音色情報メモリ24は、周波数の異なる正弦波を作成するための音色情報を記憶する。車両前方の障害物の注意を喚起させるための音色情報は、基本周波数(800Hz)の正弦波を作成するためのデータ、基本周波数の奇数倍音(3倍音(2400Hz)の正弦波を作成するためのデータ、5倍音(4000Hz)、7倍音(5600Hz)…)の正弦波を作成するためのデータである。車両後方の障害物の注意を喚起させるための音色情報は、基本周波数(1200Hz)の正弦波を作成するためのデータ、基本周波数の奇数倍音(3倍音(3600Hz)の正弦波を作成するためのデータ、5倍音(6000Hz)、7倍音(8400Hz)…)の正弦波を作成するためのデータである。このように、音色情報メモリ24には、車両の走行状態ごとに異なる音色が作成されるように、種々の基本周波数及びその倍音の周波数のデータを音色情報として記憶させている。このため、より危険度の高い走行状態の警報音は危険を感じやすい鬼気迫る音色にすることもできる。
【0033】
警報音作成部25は、警報音設定部23が出力した警報音の音量バランスと遅延時間を入力し、音色情報メモリ24から音色情報を読み込んで、複数の周波数の正弦波を合成した警報音を作成する。警報音作成部25は、走行状態に応じて異なる音色が作成できるようにしてある。
【0034】
警報音作成部25は、車両前方の障害物の注意を喚起させる場合には、例えば、基本周波数(800Hz)、3倍音(2400Hz)、5倍音(4000Hz)、7倍音(5600Hz)の音色情報を合成する。したがって、800Hz、2400Hz、4000Hz、5600Hzの4種類の周波数の正弦波を合成した警報音が作成される。
【0035】
警報音作成部25は、車両後方の障害物の注意を喚起させる場合には、基本周波数(1200Hz)、3倍音(3600Hz)、5倍音(6000Hz)、7倍音(8400Hz)の音色情報を合成する。したがって、1200Hz、3600Hz、6000Hz、8400Hzの4種類の周波数の正弦波を合成した警報音が作成される。
【0036】
警報音作成部25は、作成した警報音を警報音設定部23が出力した音量バランスと遅延時間にしたがって増幅アンプ26に出力する。
【0037】
増幅アンプ26は、警報音作成部25から出力される警報音を一定の倍率で増幅し、スピーカー30a〜30dに出力する。
【0038】
以上のように、図1に示す警報音生成装置100は、走行状態認識部21と警報音設定部23とを有しているので、車両の走行状態に応じて音量バランスと遅延時間の異なる警報音を生成することができる。このため、運転者は、どの方向でどのような危険が迫りつつあるのかを警報音によって的確に認識できる。
【0039】
また、図1に示す警報音生成装置100は、警報音出力情報メモリ22を有しているので、警報音の音量バランスと遅延時間とを、前記車両の車種、グレード及び内装に応じて設定することができる。このため、警報音生成装置100に汎用性を持たせることができ、車種、グレード及び内装が異なる車両であっても警報音生成装置100の使用が可能である。
【0040】
さらに、図1に示す警報音生成装置100は、音色情報メモリ24を有しているので、車両の走行状態に応じてさまざまな音色の警報音を生成することができる。このため、運転者は、どの方向でどのような危険が迫りつつあるのかを警報音によって認識できるだけでなく、音色の変化によっても認識できる。
【0041】
[実施形態1]
実施形態1は、本発明に係る警報音生成装置及び警報音生成方法を、前方又は後方の障害物を検知するシステムに適用したものである。
【0042】
実施形態1の場合、検知センサ10には障害物検知センサを用いる。障害物検知センサは車両の前後のバンパーに取り付けられる。障害物検知センサは超音波を用いて障害物を検知する。
【0043】
図2は、実施形態1における警報音生成装置の動作フローチャートである。なお、この動作フローチャートは警報音生成方法の手順を示す。
【0044】
障害物検知センサ(検知センサ10)は、車両の前後のバンパー付近に障害物が存在するか否かを検知する。走行状態認識部21は、障害物検知センサからの信号を常時入力し、車両の走行状態を認識する(S1)。
【0045】
障害物検知センサが障害物を検知していなければ(S1:NO)、障害物が存在するか否かを一定時間ごとに監視し続ける。一方、障害物検知センサが障害物を検知したときには(S1:YES)、走行状態認識部21は、障害物検知センサから出力される信号により走行状態を認識する。例えば、障害物検知センサが車両の左前方に障害物があることを検知したときには、車両の左前方に障害物があることを走行状態として認識する。また、障害物検知センサが車両の左後方に障害物があることを検知したときには、車両の左後方に障害物があることを走行状態として認識する(S2)。
【0046】
警報音設定部23は、警報音出力情報メモリ22にアクセスし、認識した走行状態とその車両の車種、グレード及び内装とに合致した、音量バランスと遅延時間とを読み込む。例えば、車両の左前方に障害物がある場合には、音量バランスはスピーカー30b〜30dが0%、スピーカー30aが100%、遅延時間は0.1秒という情報を読み込む。また、車両の左後方に障害物がある場合には、音量バランスはスピーカー30a、30b、30dが0%、スピーカー30cが100%、遅延時間は0.1秒という情報を読み込む。警報音設定部23は、読み込んだ音量バランスと遅延時間とを設定し、設定した音量バランスと遅延時間とを警報音作成部25に出力する(S3)。
【0047】
警報音作成部25は、音色情報メモリ24にアクセスし、音色情報メモリ24に記憶させてある音色情報を読み込んで、走行状態に適した音色の警報音を作成する。例えば、車両の左前方に障害物がある場合には、警報音作成部25は、基本周波数(800Hz)、3倍音(2400Hz)、5倍音(4000Hz)、7倍音(5600Hz)の音色情報を合成して警報音を作成する。また、車両の左後方に障害物がある場合には、警報音作成部25は、基本周波数(1200Hz)、3倍音(3600Hz)、5倍音(6000Hz)、7倍音(8400Hz)の音色情報を合成して警報音を作成する。なお、警報音作成部25は、走行状態を、警報音設定部23から入力した音量バランスと遅延時間によって認識する(S4)。
【0048】
警報音作成部25は、作成した警報音を、警報音設定部23から入力した音量バランスと遅延時間にしたがって増幅アンプ26に出力する。増幅アンプ26は、警報音作成部25から出力される警報音を一定の倍率で増幅し、スピーカー30a〜30dに出力する(5)。
【0049】
このように、実施形態1に係る警報音生成装置及び警報音生成方法は、バンパー付近の障害物が検知された場合に、その障害物が存在する方向から警報音が聞こえて来るように、各スピーカー30a〜30dの音量を制御する。また、警報音が聞こえて来る方向が確実に認識できるように、1回目の警報音と2回目の警報音の出力タイミングをずらしている。警報音の音量バランスと遅延時間を設定しているため、障害物のある方向に音像を形成させることができる。なお、上記の例では、左後方に障害物がある場合には、左後方のスピーカー30cだけに2回の警報音を出力させた。これ以外に、1回目の警報音は左後方のスピーカー30cが出力し、2回目の警報音は1回目の警報音よりも音量を下げて右後方のスピーカー30dが出力するようにしても良い。結果的に運転者が障害物のある方向を認識できれば良いからである。
【0050】
また、この警報音は、車室内で聴き取りやすい音色となるように、複数の周波数の正弦波を合成して生成している。したがって、車室内の運転席において、ある周波数の正弦波で定在波が発生しその周波数の音圧が低下しても、その他の周波数の正弦波により警報音を明瞭に聴き取ることができる。
【0051】
さらに、警報音の音量バランスや警報音を出力するタイミングは、車両の車種、グレード、仕様ごとに変えることができる。したがって、同じ車両の車種において装備品の材質が変更された場合でも、最適な音場で警報音を聞くことができる。
【0052】
[実施形態2]
実施形態2は、本発明に係る警報音生成装置及び警報音生成方法を、後側方の障害物を検知するシステムに適用したものである。
【0053】
実施形態2の場合、検知センサ10には測距センサ、障害物検知センサ又は画像解析ユニットを備えるビューカメラを用いる。検知センサ10は車両の後のバンパーに取り付けられる。実施形態2における警報音生成装置及び警報音生成方法の動作は、実施形態1の場合とほぼ同じである。
【0054】
図3は、実施形態2における警報音生成装置の動作フローチャートである。
【0055】
障害物検知センサ(検知センサ10)は、車両の後側方に他車両や障害物が存在するか否かを検知する。走行状態認識部21は、障害物検知センサからの信号を常時入力し、車両の走行状態を認識する(S11)。
【0056】
障害物検知センサが障害物を検知していなければ(S11:NO)、障害物が存在するか否かを一定時間ごとに監視し続ける。一方、障害物検知センサが障害物を検知したときには(S11:YES)、走行状態認識部21は、障害物検知センサから出力される信号により走行状態を認識する。例えば、障害物検知センサが車両の左側後方に車両が走行していることを検知したときには、車両の左側後方に車両があることを走行状態として認識する(S12)。
【0057】
警報音設定部23は、警報音出力情報メモリ22にアクセスし、認識した走行状態とその車両の車種、グレード及び内装とに合致した、音量バランスと遅延時間とを読み込む。例えば、車両の左側後方に障害物がある場合には、音量バランスはスピーカー30b、30dが0%、スピーカー30aが20%、スピーカー30cが80%、遅延時間は0.1秒という情報を読み込む。警報音設定部23は、読み込んだ音量バランスと遅延時間とを設定し、設定した音量バランスと遅延時間とを警報音作成部25に出力する(S13)。
【0058】
警報音作成部25は、音色情報メモリ24にアクセスし、音色情報メモリ24に記憶させてある音色情報を読み込んで、走行状態に適した音色の警報音を作成する。例えば、車両の左側後方に障害物がある場合には、警報音作成部25は、基本周波数(1200Hz)、3倍音(3600Hz)、5倍音(6000Hz)、7倍音(8400Hz)の音色情報を合成して警報音を作成する。なお、警報音作成部25は、走行状態を、警報音設定部23から入力した音量バランスと遅延時間によって認識する(S14)。
【0059】
警報音作成部25は、作成した警報音を、警報音設定部23から入力した音量バランスと遅延時間にしたがって増幅アンプ26に出力する。増幅アンプ26は、警報音作成部25から出力される警報音を一定の倍率で増幅し、スピーカー30a〜30dに出力する(15)。
【0060】
このように、実施形態2に係る警報音生成装置及び警報音生成方法は、車両の後側方に障害物が検知された場合に、その障害物が存在する方向から警報音が聞こえて来るように、各スピーカー30a〜30dの音量を制御する。これによって、運転者の死角となる車両の後側方の車両や障害物の存在を聴覚的に認識できるようになる。
【0061】
なお、検知センサ10として測距センサ又は画像解析ユニットを備えるビューカメラを用いた場合には、車両の後側方に検知された障害物と車両との距離が測定できる。その場合には、運転者が聴覚的に距離を感じることができるように、測定された距離に応じて間欠的に出力する警報音の出力間隔を変化させる。障害物と車両とが離れていれば警報音の出力間隔を長くし、障害物と車両とが近づくにつれて警報音の出力間隔を短くする。
【0062】
[実施形態3]
実施形態3は、本発明に係る警報音生成装置及び警報音生成方法を、走行車線からの逸脱を検知するシステムに適用したものである。
【0063】
実施形態3の場合、検知センサ10には車線逸脱センサを用いる。車線逸脱センサは画像解析ユニットを備えるビューカメラで構成する。ビューカメラは車両のフロントガラス上部に取り付ける。実施形態3における警報音生成装置及び警報音生成方法の動作は、実施形態1、2の場合とほぼ同じである。
【0064】
図4は、実施形態3における警報音生成装置の動作フローチャートである。
【0065】
車線逸脱センサ(検知センサ10)は、車両前方の道路を撮像し、車両の左右に引かれている車線の間を車両が走行しているか否か、換言すれば、車両が走行車線を逸脱しているか否かを検知する。走行状態認識部21は、車線逸脱センサからの信号を常時入力し、車両の走行状態を認識する(S21)。
【0066】
車線逸脱センサが走行車線からの逸脱を検知していなければ(S21:NO)、車両が走行車線から逸脱したか否かを一定時間ごとに監視し続ける。一方、車線逸脱センサが走行車線からの逸脱を検知したときには(S11:YES)、走行状態認識部21は、車線逸脱センサから出力される信号により走行状態を認識する。例えば、車線逸脱センサによって、車両が左側の車線をはみ出して走行しているか、または、車両が右側の車線をはみ出して走行しているかを走行状態として認識する(S22)。
【0067】
警報音設定部23は、警報音出力情報メモリ22にアクセスし、認識した走行状態とその車両の車種、グレード及び内装とに合致した、音量バランスと遅延時間とを読み込む。例えば、車両が左側の車線をはみ出して走行している場合には、音量バランスはスピーカー30b、30dが0%、スピーカー30aが40%、スピーカー30cが60%、遅延時間は0.1秒という情報を読み込む。また、車両が右側の車線をはみ出して走行している場合には、音量バランスはスピーカー30a、30cが0%、スピーカー30bが40%、スピーカー30dが60%、遅延時間は0.1秒という情報を読み込む。警報音設定部23は、読み込んだ音量バランスと遅延時間とを設定し、設定した音量バランスと遅延時間とを警報音作成部25に出力する(S23)。
【0068】
警報音作成部25は、音色情報メモリ24にアクセスし、音色情報メモリ24に記憶させてある音色情報を読み込んで、走行状態に適した音色の警報音を作成する。例えば、車両が左側の車線をはみ出して走行している場合には、警報音作成部25は、基本周波数(1200Hz)、3倍音(3600Hz)、5倍音(6000Hz)、7倍音(8400Hz)の音色情報を合成して警報音を作成する。また、車両が右側の車線をはみ出して走行している場合には、警報音作成部25は、基本周波数(800Hz)、3倍音(2400Hz)、5倍音(4000Hz)、7倍音(5600Hz)の音色情報を合成して警報音を作成する。なお、警報音作成部25は、走行状態を、警報音設定部23から入力した音量バランスと遅延時間によって認識する(S24)。
【0069】
警報音作成部25は、作成した警報音を、警報音設定部23から入力した音量バランスと遅延時間にしたがって増幅アンプ26に出力する。増幅アンプ26は、警報音作成部25から出力される警報音を一定の倍率で増幅し、スピーカー30a〜30dに出力する(25)。
【0070】
走行車線の逸脱は居眠り運転が原因で起こる場合があり、非常に危険である。したがって、実施形態3の場合の警報音は、他の実施形態の場合と比較して音量を大きく設定し、音色を刺激的にするなどの工夫をしても良い。
【0071】
[実施形態1から実施形態3の効果]
次に、図5を参照して、実施形態1から実施形態3の効果を説明する。図5は、本発明の実施形態に係る警報音場表現装置の効果を示す図である。
【0072】
このグラフは、運転者が事象(危険)を検知した方向と、運転者がその事象を認知するまでの時間を、音声表現がある場合と音声表現がない場合とで比較した結果を示す。
【0073】
この効果の検証は、右ハンドル車の運転模擬装置を用いて、高速道路の走行状態を再現し、車両前方を向いて時速100kmで巡航運転しているという状況で行った。この巡航運転中において、車両周辺の障害物や車線逸脱等の事象の検知や、認知するまでの反応時間を計測した。
【0074】
その検証の結果は、図5に示すように、本発明に係る警報音生成装置および警報音生成方法を用いた場合(音声表現がある場合)では、用いない場合(音声表現がない場合)に比較して、事象の検知が20%以上短縮された。具体的には、運転者が危険を認知するまでの時間が実に0.3秒程度短縮できた。
【0075】
危険を検知下方向が、車両の左前方、車両の右前方、車両の左後方の3方向で運転者が危険を認知するまでの時間が短縮できた。車両の右後方で生じた危険を認知するまでの時間は短縮できていないが、これは、運転者が視覚的に認識しやすい方向だからと考えられる。
【0076】
以上のように、本発明に係る警報音生成装置および警報音生成方法は、車両の安全な運転に大きく寄与できることがわかる。
【符号の説明】
【0077】
10 検知センサ、
20 警報音生成部、
21 走行状態認識部、
22 警報音出力情報メモリ、
23 警報音設定部、
24 音色情報メモリ、
25 警報音作成部、
26 増幅アンプ、
30 警報音出力部、
30a〜30d スピーカー、
40 車両、
100 警報音生成装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転に必要な情報を検知する検知センサと、
前記検知センサが検知した情報を用いて複数の周波数の正弦波が合成された警報音を生成する警報音生成部と、
前記警報音生成部で生成された警報音を前記車両の車室内に出力する複数の警報音出力部と、
を有することを特徴とする警報音生成装置。
【請求項2】
前記警報音生成部は、
前記検知センサが検知した情報から前記車両の走行状態を認識する走行状態認識部と、
前記走行状態認識部が認識した前記車両の走行状態から前記複数の警報音出力部が出力する警報音の音量バランスと当該警報音の遅延時間とを設定する警報音設定部と、を有し、
前記複数の周波数の正弦波が合成された警報音は、前記警報音設定部が設定した音量バランスと遅延時間とにしたがって前記複数の警報音出力部から出力されることを特徴とする請求項1に記載の警報音生成装置。
【請求項3】
前記車両の車種、グレード及び内装ごとに、前記警報音の音量バランスと遅延時間とを記憶する警報音出力情報メモリをさらに有し、
前記警報音設定部は、前記警報音出力情報メモリが記憶する警報音の音量バランスと遅延時間とを、前記車両の車種、グレード及び内装に応じて読み込み、前記複数の警報音出力部が出力する警報音の音量バランスと当該警報音の遅延時間とを設定することを特徴とする請求項2に記載の警報音生成装置。
【請求項4】
前記警報音生成部は、
周波数の異なる正弦波を作成するための音色情報を記憶する音色情報メモリを有し、
前記音色情報メモリから前記音色情報を読み込み、前記複数の周波数の正弦波が合成された警報音を生成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の警報音生成装置。
【請求項5】
検知センサにより車両の運転に必要な情報を検知する段階と、
前記検知センサが検知した情報を用いて警報音生成部により複数の周波数の正弦波が合成された警報音を生成する段階と、
前記警報音生成部で生成された警報音を複数の警報音出力部により前記車両の車室内に出力する段階と、
を含むことを特徴とする警報音生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−15969(P2013−15969A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147434(P2011−147434)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】