説明

負極活物質、その製造方法及びこれを採用した負極とリチウム電池

【課題】負極活物質、その製造方法及びこれを採用した負極とリチウム電池を提供する。
【解決手段】モリブデン系材料を含むコアと、コア表面の少なくとも一部に形成されたコーティング層とを含み、コーティング層がモリブデン窒酸化物及び/またはモリブデン窒化物を含む負極活物質、その製造方法、及びこれを含む負極とリチウム電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
負極活物質、その製造方法及びこれを採用した負極とリチウム電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム系化合物が負極に使われた非水電解質2次電池は、高電圧及び高エネルギー密度を持つため多様な用途に使われる。電気自動車(HEV、PHEV)などの分野は、多量の電気を充電または放電せねばならず、長時間使われねばならないので、高容量及び寿命特性の優秀なリチウム電池が要求される。
【0003】
リチウム金属は、高い電池容量のため負極素材として多くの研究の対象になる。しかし、リチウム金属は不安定で反応性が高くて熱または衝撃に敏感であり、爆発の恐れがある。リチウム金属が使われた負極は、充電時にリチウム表面に多くの樹枝状リチウムが析出して、充放電効率が低下するか、または正極と短絡が発生しうる。
【0004】
炭素系負極は、電解液に存在するリチウムイオンが炭素電極の結晶面の間に吸蔵/放出されつつ酸化/還元反応が行われるロッキングチェア(rocking−chair)方式で作動する。炭素系負極は多孔性であって、充放電時の体積変化が少なくて安定している。しかし、炭素系負極は炭素の多孔性構造によって電池容量が低い。例えば、結晶性の高い黒鉛の理論的な容量は、LiC組成で372mAh/gである。これは、リチウム金属の理論的な容量である3860mAh/gに比較すれば、10%ほどである。また、炭素系負極は、充電時の平坦電圧がリチウム金属対比0Vに近づくので、負極表面にリチウム金属が析出されうる。
【0005】
モリブデン系酸化物負極(MoOなど)は、充放電電位が比較的低く(約1.5V vs.Li)、単位体積当り電気容量及び単位重量当り電気容量が大きい。しかし、モリブデン系酸化物電極は充放電時の体積変化が大きいので、寿命特性が劣化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面は、窒化物及び/または窒酸化物コーティング層を持つ負極活物質を提供することである。
本発明の他の一側面は、前記活物質の製造方法を提供することである。
本発明のさらに他の一側面は、前記負極活物質を含む負極を提供することである。
本発明のさらに他の一側面は、前記負極を採用したリチウム電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によって、モリブデン系材料を含むコアと、前記コア表面の少なくとも一部に形成されたコーティング層と、を含み、前記コーティング層が、モリブデン窒酸化物及びモリブデン窒化物からなる群から選択された一つ以上を含む負極活物質が提供される。
本発明の他の一側面によって、モリブデン系材料を窒素前駆体ガスと混合させる段階を含む負極活物質の製造方法が提供される。
本発明のさらに他の一側面によって、前記負極活物質を含む負極が提供される。
本発明のさらに他の一側面によって、前記負極を採用したリチウム電池が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面によれば、窒化物及び/または窒酸化物コーティング層が形成されたモリブデン系材料コアを含む負極活物質を含むことで、リチウム電池の寿命特性が向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例2で製造された負極活物質粉末に対するXPS(X−ray photoelectron spectroscopy)実験結果を示すグラフである。
【図2】比較例1で製造された負極活物質粉末に対するXPS実験結果を示すグラフである。
【図3】本発明の一具現例によるリチウム電池の模式図である。
【図4】実施例2で製造された負極活物質粉末に対するTEM(透過電子顕微鏡)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、例示的な具現例による負極活物質、その製造方法及びこれを含む負極及びリチウム電池についてさらに詳細に説明する。
【0011】
一具現例による負極活物質は、モリブデン系材料を含むコア;及び前記コア表面の少なくとも一部に形成されたコーティング層を含み、前記コーティング層は、モリブデン窒酸化物及びモリブデン窒化物からなる群から選択された一つ以上を含む。前記モリブデン系材料コアの表面に形成されたモリブデン窒化物及び/またはモリブデン窒酸化物は電気伝導度が高く、かつ堅くて熱安定性に優れる。したがって、前記モリブデン系材料コアの表面電気伝導性を改善でき、充放電時にコアの体積変化を抑制できる。前記負極活物質が電池に使われれば、電池の寿命特性が向上できる。本明細書においてモリブデン系材料はモリブデンを含み、リチウムイオンを吸蔵放出できる材料を意味する。
【0012】
前記モリブデン窒化物及び/またはモリブデン窒酸化物を含むコーティング層は、前記モリブデン系材料コア表面の一部または全部に形成されうる。前記モリブデン窒化物及び/またはモリブデン窒酸化物が前記コア表面の全体に形成されれば、前記コアは、前記モリブデン窒化物及び/またはモリブデン窒酸化物からなるコーティング層により完全に被覆されうる。
【0013】
前記コーティング層の平均厚さは5ないし60nmでありうる。例えば、前記コーティング層の平均厚さは10ないし40nmでありうる。前記コーティング層の平均厚さが5nm未満ならば、コーティング層の効果が微小であり、前記コーティング層の平均厚さが60nm超過ならば、リチウムイオンの挿入の障害となり得る。すなわち、前記コーティング層が形成された活物質は、所定範囲のコーティング層の厚さでさらに向上した寿命特性を表すことができる。
【0014】
他には、前記コーティング層は、XPS(X−ray photoelectron spectroscopy)スペクトルの結合エネルギー397ないし398eVの間でピークを示し、前記ピークは、モリブデンの3p軌道と窒素の1s軌道との結合エネルギーを意味するものであって、活物質の表面にモリブデン窒化物及び/またはモリブデン窒酸化物としてコーティング層が存在することが分かる。また前記ピークは、前記活物質内に存在するモリブデン6+がイオンの397ないし396eV間の結合エネルギーと重なってみえて、非対称型ピークを表すことが分かる。
【0015】
前記モリブデン系材料は、モリブデン酸化物及びモリブデンを含む合金からなる群から選択された一つ以上であるが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、当業界で使われうるモリブデン系材料ならばいずれも使用できる。具体的に、前記モリブデン系材料は、MoO、MoO、W−Mo合金及びWO−MoO複合物体からなる群から選択された一つ以上でありうる。
【0016】
前記モリブデン系材料を含むコアの平均粒径は100nmないし10μmでありうる。例えば、前記コアの平均粒径は500nmないし5μmでありうる。前記コアは、粒子状の粉末でありうる。前記コアの平均粒径が100nm未満ならば、界面抵抗による副反応が発生し、前記コアの平均粒径が10μm超過ならば、粒子間の接触が困難になる。
【0017】
前記モリブデン窒化物は、下記化学式1で表示できる。
<化学式1>
MoN
前記式で、0.5<x<1である。
【0018】
前記モリブデン窒酸化物は下記化学式2で表示できる。
<化学式2>
MoO
前記式で、1<y<2、0<z<1である。
【0019】
他の具現例による前記負極活物質の製造方法は、モリブデン系材料を窒素前駆体ガスと接触させる段階を含む。前記段階で、前記接触によって前記モリブデン系材料表面の少なくとも一部にモリブデン窒酸化物及び/またはモリブデン窒化物コーティング層が形成される。前記モリブデン系窒化物及び/またはモリブデン窒酸化物コーティング層は、前記モリブデン系材料表面の一部または全部に形成されうる。
【0020】
前記窒素前駆体ガスはアンモニア機体を含むことができるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、当業界で窒素供給ガスとして使われうるものならばいずれも使用できる。
【0021】
前記モリブデン系材料は、モリブデン酸化物、モリブデン合金、及びモリブデン酸化物と他の金属酸化物との複合体からなる群から選択された一つ以上でありうるが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、当業界で使われうるモリブデン系材料ならばいずれも使われうる。前記他の金属酸化物はMn、Fe、Co、Ni、Wなどの酸化物である。具体的に、前記モリブデン系材料は、MoO、MoO、W−Mo合金及びWO−MoO複合物からなる群から選択された一つ以上でありうる。
【0022】
前記モリブデン系材料と窒素前駆体ガスとの接触が行われる温度は、200ないし800℃でありうる。例えば、前記温度は350〜650℃であるが、必ずしも前記温度範囲に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内で適切に選択されうる。
【0023】
前記モリブデン系酸化物と窒素前駆体ガスとの接触時間は10〜60分でありうる。前記接触時間が10分未満ならば、モリブデン系材料コアの表面に形成されるモリブデン窒化物及び/またはモリブデン窒酸化物を含むコーティング層の厚さが過度に薄くてコーティング層の効果が微少であり、前記接触時間が60分超過ならば、前記コーティング層の厚さが過度に厚くてリチウムイオンの挿入の障害となる。すなわち、前記負極活物質の製造方法で、所定範囲の接触時間でさらに向上した寿命特性を持つリチウム電池を具現できる負極活物質が製造されうる。
【0024】
他の具現例による負極は前記負極活物質を含む。前記負極は、例えば、前記負極活物質及び結着剤を含む負極活物質組成物が一定の形状に成形されるか、または前記の負極活物質組成物が銅箔などの集電体に塗布される方法で製造されうる。
【0025】
具体的に、前記負極活物質、導電材、結合材及び溶媒が混合された負極活物質組成物が用意される。前記負極活物質組成物が金属集電体上に直接コーティングされて負極板が製造される。他には、前記負極活物質組成物が別途の支持体上にキャスティングされた後、前記支持体から剥離されたフィルムが金属集電体上にラミネーションされて負極板が製造されうる。前記負極は、前記で列挙した形態に限定されるものではなく前記形態以外の形態でありうる。
【0026】
前記導電材としては、カーボンブラック、黒鉛微粒子などが使われうるが、これらに限定されず、当業界で導電材として使われうるものならばいずれも使用できる。
【0027】
前記結合材としては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン及びその混合物またはスチレンブタジエンゴム系ポリマーなどが使われうるが、これらに限定されず、当業界で結合材として使われうるものならばいずれも使用できる。
【0028】
前記溶媒としては、N−メチルピロリドン、アセトンまたは水などが使われうるが、これらに限定されず、当業界で使われうるものならばいずれも使用できる。
【0029】
前記負極活物質、導電材、結合材及び溶媒の含有量は、リチウム電池で通例的に使われるレベルである。リチウム電池の用途及び構成によって前記導電材、結合材及び溶媒のうち一つ以上が省略されうる。
【0030】
さらに他の具現例によるリチウム電池は、前記負極活物質を含む負極を採用する。前記リチウム電池は次のような方法で製造できる。
【0031】
先ず、前記負極製造方法によって負極が用意される。
次いで、正極活物質、導電材、結合材及び溶媒が混合された正極活物質組成物が用意される。前記正極活物質組成物が金属集電体上に直接コーティング及び乾燥されて、正極板が製造される。他には、前記正極活物質組成物が別途の支持体上にキャスティングされた後、前記支持体から剥離されたフィルムが金属集電体上にラミネーションされて正極板が製造されうる。
【0032】
前記正極活物質としては、リチウム含有金属酸化物であって、当業界で通例的に使われうるものならばいずれも使用できる。例えば、LiCoO、LiMn2x(x=1,2)、LiNi1−xMn(0<x<1)またはLiNi1−x−yCoMn(0≦x≦0.5,0≦y≦0.5)などである。具体的に、LiMn、LiCoO、LiNiO、LiFeO、V、TiSまたはMoSなどのリチウムの吸蔵/放出の可能な化合物である。
【0033】
正極活物質組成物で導電材、結合材及び溶媒は、前記負極活物質組成物の場合と同じものを使用できる。一方、前記正極活物質組成物及び/または負極活物質組成物に可塑剤をさらに加えて電極板の内部に気孔を形成することもできる。
【0034】
前記正極活物質、導電材、結合材及び溶媒の含有量は、リチウム電池で通例的に使用するレベルである。リチウム電池の用途及び構成によって、前記導電材、結合材及び溶媒のうち一つ以上が省略されうる。
【0035】
次いで、前記正極と負極との間に挿入されるセパレータが用意される。前記セパレータは、リチウム電池で通例的に使われるものならばいずれも使用できる。電解質のイオン移動に対して低抵抗であり、かつ電解液含湿能の優秀なものが使用できる。例えば、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはこれらの調合物から選択されたものであって、不織布でも、または織布形態でもよい。例えば、リチウムイオン電池にはポリエチレン、ポリプロピレンなどの巻き取り可能なセパレータが使われ、リチウムイオンポリマー電池には、有機電解液含浸能の優秀なセパレータが使われうる。例えば、前記セパレータは下記の方法によって製造できる。
【0036】
高分子樹脂、充填剤及び溶媒を混合してセパレータ組成物が用意される。前記セパレータ組成物が電極上部に直接コーティング及び乾燥されてセパレータが形成されうる。または、前記セパレータ組成物が支持体上にキャスティング及び乾燥された後、前記支持体から剥離させたセパレータフィルムが電極上部にラミネーションされてセパレータが形成されうる。
【0037】
前記セパレータの製造に使われる高分子樹脂は特別に限定されず、電極板の結合材に使われる物質がいずれも使用できる。例えば、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートまたはこれらの混合物などが使われうる。
【0038】
次いで、電解質が用意される。
例えば、前記電解質は有機電解液でありうる。また、前記電解質は固体でありうる。例えば、ボロン酸化物、酸窒化リチウムなどであるが、これらに限定されるものではなく当業界で固体電解質として使われうるものならばいずれも使用できる。前記固体電解質は、スパッタなどの方法で前記負極上に形成できる。
【0039】
例えば、有機電解液が用意されうる。有機電解液は、有機溶媒にリチウム塩が溶解されて製造できる。
前記有機溶媒は、当業界で有機溶媒として使われうるものならばいずれも使用できる。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジエチルレングリコール、ジメチルエーテルまたはこれらの混合物などである。
【0040】
前記リチウム塩も、当業界でリチウム塩として使われうるものならばいずれも使用できる。例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ただし、x、yは自然数)、LiCl、LiIまたはこれらの混合物などである。
【0041】
図3に示したように、前記リチウム電池1は正極3、負極2及びセパレータ4を備える。前述した正極3、負極2及びセパレータ4がワインドされるか、または折り畳まれて電池ケース5に収容される。次いで、前記電池ケース5に有機電解液が注入され、かつキャップアセンブリー6で密封されてリチウム電池1が完成される。前記電池ケースは、円筒形、角形、薄膜型などでありうる。例えば、前記リチウム電池は薄膜型電池でありうる。前記リチウム電池はリチウムイオン電池でありうる。
【0042】
前記正極及び負極の間にセパレータが配されて電池構造体が形成されうる。前記電池構造体がバイセル構造に積層された後、有機電解液に含浸されて得られた結果物がポーチに収容されて密封されれば、リチウムイオンポリマー電池が完成される。
【0043】
また、前記電池構造体は複数積層されて電池パックを形成し、かかる電池パックは高容量及び高出力が要求されるあらゆる機器に使われうる。例えば、ノート型パソコン、スマートフォン、電気車両などに使われうる。
【0044】
特に、前記リチウム電池は寿命特性及び熱安定性に優れて電気車両(electric vehicle、EV)に適している。例えば、プラグインハイブリッド車両(plug−in hybrid electric vehicle、PHEV)などのハイブリッド車両に適している。
【0045】
以下の実施例及び比較例を通じて本発明がさらに詳細に説明される。ただし、実施例は本発明を例示するためのものであって、これらのみで本発明の範囲が限定されるものではない。
【0046】
(負極活物質の製造)
[実施例1]
常温で平均粒径1μmの自体合成したMoO1gをシリカチューブ炉に入れて、アルゴンガス(99.99%)を供給して酸素と水分とを除去した。ガスのフローを安定化させるために30分間アルゴンガスを供給した後、炉を7.5℃/分の速度で常温から400℃まで加熱した後、400℃で30分間維持し、再び5℃/分の速度で600℃まで加熱した。次いで、アンモニアガス(99.98%)に交換して500sccm(standard cubic centimeters per minute)の流速で10分間供給して窒化反応を行った。反応終了後、アルゴンガスを供給しながら炉を冷却させた。
前記窒化反応によって形成されたコーティング層の厚さは、TEMで分析した結果5nm〜10nmの範囲であり、平均厚さは7.5nmであった。
【0047】
[実施例2]
アンモニアガスの供給時間を20分に変更したことを除いては、実施例1と同じ方法で負極活物質を製造した。
前記窒化反応によって形成されたコーティング層の厚さは10nm〜20nmの範囲であり、平均厚さは15nmであり、その結果を図4に示した。図4でコーティング層の厚さを矢印で表示した。
【0048】
[実施例3]
アンモニアガスの供給時間を40分に変更したことを除いては、実施例1と同じ方法で負極活物質を製造した。
前記窒化反応によって形成されたコーティング層の厚さは20nm〜40nmの範囲であり、平均厚さは30nmであった。
【0049】
[実施例4]
アンモニアガスの供給時間を60分に変更したことを除いては、実施例1と同じ方法で負極活物質を製造した。
前記窒化反応によって形成されたコーティング層の厚さは40nm〜60nmの範囲であり、平均厚さは50nmであった。
【0050】
[比較例1]
窒化処理されていない平均粒径1μmの自体合成したMoOを、負極活物質としてそのまま使用した。
【0051】
(負極及びリチウム電池の製造)
[実施例5]
前記実施例1で製造された活物質粉末、炭素導電剤(Super P)、及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を8:1:1の重量比で混合した混合物をN−メチルピロリドン(NMP)と共にメノー乳鉢で混合してスラリーを製造した。前記スラリーを、ドクターブレードを使用して銅集電体上に約20μm厚さに塗布して常温で乾燥した後、真空、120℃の条件でさらに乾燥して負極板を製造した。
前記負極板を使用してリチウム金属を対極とし、PTFE隔離膜(セパレータ)と1.3M LiPFとが、EC(エチレンカーボネート)+DEC(ジエチレンカーボネート)+FEC(フルオロエチレンカーボネート)(2:6:2体積比)に溶けている溶液を電解質として使用してCR−2016規格のコインセルを製造した。
【0052】
[実施例6]
前記実施例1で製造された負極活物質の代りに前記実施例2で製造された負極活物質を使用したことを除いては、前記実施例7と同じ方法で製造した。
【0053】
[実施例7]
前記実施例1で製造された負極活物質の代りに前記実施例3で製造された負極活物質を使用したことを除いては、前記実施例7と同じ方法で製造した。
【0054】
[実施例8]
前記実施例1で製造された負極活物質の代りに前記実施例4で製造された負極活物質を使用したことを除いては、前記実施例7と同じ方法で製造した。
【0055】
[比較例2]
前記実施例1で製造された負極活物質の代りに前記比較例1の負極活物質を使用したことを除いては、前記実施例7と同じ方法で製造した。
【0056】
[評価例1:XPS実験]
前記実施例1及び比較例1で製造された負極活物質粉末それぞれに対してXPS実験を行って、その結果を図1及び図2にそれぞれ示した。
【0057】
図1に示したように、表面にモリブデン窒化物及び/またはモリブデン窒酸化物コーティング層が形成された負極活物質は、結合エネルギー397ないし398eVの間でピークを示し、前記ピークは、モリブデンの3p軌道と窒素の1s軌道との結合エネルギーを意味するものであって、活物質の表面にモリブデン窒化物及び/またはモリブデン窒酸化物としてコーティング層が存在することが分かる。また前記ピークは、前記活物質内に存在するモリブデン6+がイオンの396ないし397eVの間の結合エネルギーと重なってみえて、非対称型ピークを示すことが分かる。
【0058】
また、アンモニアガスの供給時間によって粒子の表面に生成されるモリブデン窒化物及び/またはモリブデン窒酸化物のコーティング層の厚さが、実施例1の負極活物質に比べて供給時間が増加するにつれて増大した。
【0059】
実施例1ないし4で得られた負極活物質の表面に形成されたモリブデン窒化物及び/またはモリブデン窒酸化物コーティング層の平均厚さを、下記表1にまとめた。
【0060】
【表1】

【0061】
[評価例2:充放電実験]
前記実施例5ないし8及び比較例2で製造された前記コインセルを、電圧がリチウム金属対比0.7Vに到達するまで、負極活物質1g当り30mAの電流で定電流充電した。前記充電後、前記コインセルをリチウム金属対比3.0Vに到達するまで負極活物質1g当り30mAの電流で定電流放電した。次いで、同じ電流と電圧区間とで充電及び放電を50回繰り返した。その結果を下記の表2に表した。常温での容量維持率は、下記数式1で表示される。
【0062】
<数式1>
容量維持率[%]=[50回目のサイクルでの放電容量/1回目のサイクルでの放電容量]×100
【0063】
【表2】

【0064】
前記表2から分かるように、実施例5ないし8のリチウム電池は比較例2のリチウム電池に比べて寿命特性が向上した。またモリブデン窒化物及び/またはモリブデン窒酸化物のコーティング層の平均厚さが10〜40nmである実施例6及び7のリチウム電池は、実施例5、実施例8のリチウム電池に比べても顕著に向上した寿命特性を表した。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、リチウム電池関連の技術分野に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0066】
1 リチウム電池
2 負極
3 正極
4 セパレータ
5 電池ケース
6 キャップアセンブリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデン系材料を含むコアと、
前記コア表面の少なくとも一部に形成されたコーティング層と、を含み、
前記コーティング層が、モリブデン窒酸化物及びモリブデン窒化物からなる群から選択された一つ以上を含む負極活物質。
【請求項2】
前記コーティング層の平均厚さが10ないし40nmである請求項1に記載の負極活物質。
【請求項3】
前記コーティング層が、XPSスペクトルの結合エネルギー397ないし398eVでピークを表す請求項1に記載の負極活物質。
【請求項4】
モリブデン系材料が、モリブデン酸化物、モリブデン合金、及びモリブデン酸化物と異なる金属酸化物の複合体からなる群から選択された一つ以上である請求項1に記載の負極活物質。
【請求項5】
前記モリブデン系材料が、MoO、MoO、W−Mo合金及びWO−MoO複合体からなる群から選択された一つ以上である請求項1に記載の負極活物質。
【請求項6】
前記コアの平均粒径が100nmないし10μmである請求項1に記載の負極活物質。
【請求項7】
前記モリブデン窒化物が下記化学式1で表示されることを特徴とする請求項1に記載の負極活物質:
<化学式1>
MoN
前記式で、0.5<x<1である。
【請求項8】
前記モリブデン窒酸化物が下記化学式2で表示されることを特徴とする請求項1に記載の負極活物質:
<化学式2>
MoO
前記式で、1<y<2、0<z<1である。
【請求項9】
モリブデン系材料を窒素前駆体ガスと混合させる段階を含む負極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記モリブデン系材料を窒素前駆体ガスと混合させることで、前記モリブデン系材料表面の少なくとも一部に、モリブデン窒酸化物及びモリブデン窒化物からなる群から選択された一つ以上を含むコーティング層を形成する請求項9に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記窒素前駆体ガスがアンモニアを含むことを特徴とする請求項9に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記モリブデン系材料がMoO、MoO、W−Mo合金及びWO−MoO複合体からなる群から選択された一つ以上である請求項9に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項13】
前記モリブデン系材料と窒素前駆体ガスとの混合が行われる温度が200ないし800℃である請求項9に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項14】
前記モリブデン系材料と窒素前駆体ガスとの混合が持続される時間が10ないし60分である請求項9に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項15】
請求項1ないし8のうちいずれか1項に記載の負極活物質を含む負極。
【請求項16】
請求項15に記載の負極を採用したリチウム電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−233524(P2011−233524A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101196(P2011−101196)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】