説明

負電源制御回路

【課題】CMOSプロセスで構成される負電源制御回路を提供すること。
【解決手段】負電源制御回路100は、正電圧の制御電圧入力端子VcontとGND接続端子との間に接続された抵抗Rと、ソースを正電圧の制御電圧入力端子Vcontに接続し、ゲートをGND接続端子に接続し、かつ、バックゲートをソース電位に接続するPMOSトランジスタM1とを備える。また、負電源制御回路100は、ドレインをPMOSトランジスタM1のドレインに接続し、ゲート及びソースを負電圧入力端子Vinに接続するNMOSトランジスタM2と、PMOSトランジスタM1のドレインとNMOSトランジスタM2のドレインの接続点aとGND接続端子及び負電圧入力端子Vinとの間に接続され、前記接続点aの電位をほぼGND電位にクランプするクランプ回路130とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の負電源を制御する負電源制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器は、機器内の各部に安定な電源電圧を生成する電源装置を備える。電源電圧は1つとは限らず、LCD(Liquid Crystal Display)やCCD(Charge Coupled Device)の駆動用電源には、正負2種類の電源電圧が必要である。携帯電話などの携帯端末機器は、電池などの単一電源であるため、負電源電圧を生成するには負電源回路が用いられる。例えば、電圧反転型のDC/DCコンバータによって負電圧を生成し、負電源を必要とするデバイスを駆動している。
【0003】
このような負電圧を生成するための技術として、充電コンデンサと出力コンデンサ間で電荷の転送を繰り返す、電圧反転型のチャージポンプ回路が広く用いられている。
【0004】
通常、負電源回路が単独で電源装置として構成されることはなく、他の正電圧の電源電圧を出力する降圧コンバータや昇圧コンバータのような電源回路とともに、多出力電源装置に内蔵される場合がほとんどである。なぜなら、単一電源電圧で動作する負荷回路に対し、わざわざ入力電源を逆極性に構成する必要がないからである。また、負電圧の電源電圧は、CPUなどの論理回路部等に電源供給し、初期状態を確定させた後に起動される場合が多い。
【0005】
特許文献1には、負電源回路が起動前に正電圧を出力することのない、安全性に優れた負電源回路を有する電源装置が記載されている。特許文献1記載の負電源回路を有する電源装置は、正電圧の入力電圧から負電圧の出力電圧を出力する電圧変換部と、正電圧の基準電圧源と第1のスイッチと複数の抵抗との直列回路からなり前記出力電圧を検出する検出回路と、前記複数の抵抗の接続点電位及び接地電位をそれぞれ入力し、前記電圧変換部を制御する信号を出力する誤差増幅器とを備える。
【0006】
図1は、負電源を制御する負電源制御回路のブロック図である。
【0007】
図1に示すように、負電源を制御する負電源制御回路10は、負電圧入力端子Vin、制御端子Vcont、GND接続端子、及び負電圧出力端子Voを備える。
【0008】
上記負電源は、スイッチのスイッチング動作によりインダクタに発生する逆起電圧をダイオード及び出力コンデンサで整流平滑して出力する一般的な負電源回路である。また、上記負電源は、フライングコンデンサを同相/逆相でスイッチングする反転型チャージポンプである。
【0009】
以上の構成において、負電源制御回路10は、負電圧入力端子Vinに負電圧が入力され、負電圧出力端子Voから負電圧を出力する。また、制御端子Vcontも負電圧の制御電圧が入力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−86135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような従来の負電源制御回路は、負電圧の制御電圧によりコントロールされるので、正電圧の制御電圧のマイクロコンピュータ等では、直接コントロールすることはできないという課題がある。
【0012】
また、コントロール端子そのものがない場合には、電源Vinのみによる動作とならざるを得ない。コントロール端子がないため、立上げシーケンスの制御が難しい課題がある。
【0013】
本発明の目的は、CMOSプロセスで構成される負電源制御回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の負電源制御回路は、負電源を正電圧の制御信号で制御する負電源制御回路であって、ソースを正電圧の制御電圧入力端子に接続し、ゲートをGND接続端子に接続し、かつ、バックゲートをソース電位に接続するPMOSトランジスタと、ドレインを前記PMOSトランジスタのドレインに接続し、ゲート及びソースを負電圧入力端子に接続するNMOSトランジスタと、前記PMOSトランジスタのドレインと前記NMOSトランジスタのドレインの接続点と前記GND接続端子及び前記負電圧入力端子との間に接続され、前記接続点の電位をGND電位にクランプするクランプ回路と、を備える構成を採る。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、CMOSプロセスで構成された正電圧制御の負電源制御回路を実現することできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来の負電源を制御する負電源制御回路のブロック図
【図2】本発明の実施の形態に係る負電源制御回路の構成を示す回路図
【図3】上記実施の形態の負電源制御回路のコントロール特性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
(実施の形態)
図2は、本発明の一実施の形態に係る負電源制御回路の構成を示す回路図である。本実施の形態は、CMOSプロセスにより構成された負電源制御回路に適用した例である。
【0019】
図2に示すように、負電源制御回路100は、正電圧の制御電圧入力端子Vcont、GND接続端子、負電圧入力端子Vin、及び負電圧出力端子Voを備える。
【0020】
負電源制御回路100は、入力端子VcontとGND接続端子との間に接続された抵抗Rと、バックゲートをソース電位とし、ソースを抵抗R1を介して入力端子Vcontに接続し、ゲートをGND接続端子に接続し、ドレインをデプレッションNチャネルMOSトランジスタM2(NMOSトランジスタM2という)のドレインに接続するPチャネルMOSトランジスタM1(PMOSトランジスタM1という)と、ドレインをPMOSトランジスタM1のドレインに接続し、ゲート及びソースを負電圧入力端子Vinに接続するNMOSトランジスタM2と、PMOSトランジスタM1のドレインとNMOSトランジスタM2のドレインの接続点aとGND接続端子及び負電圧入力端子Vinとの間に接続され、前記接続点aの電位をほぼGND電位にクランプするクランプ回路130と、前記接続点aの電位を安定化して負電圧出力端子Voに出力するレギュレータアンプ140とを備える。
【0021】
抵抗Rは、制御電圧Vcontをオフしたとき、負電圧入力端子Vinの負電圧にVcontが引き込まれることを防止する。また、抵抗Rは、PMOSトランジスタM1を安定動作させる。
【0022】
抵抗R1及びPMOSトランジスタM1は、GND電位以上の電圧において、制御電圧Vcontを電流I1に変換するV−I変換回路110を構成する。抵抗R1及びPMOSトランジスタM1は、制御電圧Vcontにほぼ比例した制御電流I1を流す。
【0023】
PMOSトランジスタM1は、ソースを正電圧である入力端子Vcontに接続し、ゲートをGND接続端子に接続し、ドレインをNMOSトランジスタM2のドレインに接続する。また、PMOSトランジスタM1は、バックゲートをソース電位とすることで、GND電位以上の電圧で動作させても寄生がおきない。言い換えれば、PMOSトランジスタM1は、バックゲートをソース電位とすることで、寄生ダイオードが形成されず、GND電位以上の電圧で動作させることができる。
【0024】
NMOSトランジスタM2は、PMOSトランジスタM1と直列に接続され、ゲートとソースを接続し、ドレイン電流I2を流してドレインの前記接続点aに電位を現すI−V変換回路120を構成する。前記接続点aの電位は、制御信号Vとしてクランプ回路130に入力されるとともに、レギュレータアンプ140に供給される。
【0025】
クランプ回路130は、共通ゲートに制御信号Vが入力されるPMOSトランジスタM3とNMOSトランジスタM4からなるインバータ131と、ゲートとソースを接続し、インバータ131を駆動する定電流を流すデプレッションNチャネルMOSトランジスタM5(NMOSトランジスタM5という)と、インバータ131の出力信号Vを基に、PMOSトランジスタM1のソース−ドレイン電圧をGND電位にクランプするPMOSトランジスタM6及びM7(第2のPMOSトランジスタ)とを備える。
【0026】
インバータ131を構成するPMOSトランジスタM3のソースは、GND接続端子に接続され、ゲートはNMOSトランジスタM4のゲートと共通ゲートに接続され、ドレインはNMOSトランジスタM4のドレイン接続点bとなる。また、NMOSトランジスタM4のソースは、NMOSトランジスタM5のドレインに接続され、ゲートはPMOSトランジスタM3のゲートと共通ゲートに接続され、ドレインはPMOSトランジスタM3のドレイン接続点bとなる。
【0027】
インバータ131は、GNDとNMOSトランジスタM5のドレイン間の動作電圧で、共通ゲートに接続された制御信号Vを前記ドレイン接続点bに反転出力する。前記ドレイン接続点bの出力信号Vは、PMOSトランジスタM6のドレインとPMOSトランジスタM7との共通ゲートに接続される。
【0028】
NMOSトランジスタM5は、ドレインをインバータ131に接続し、ゲートとソースを負電圧入力端子Vinに接続し、インバータ131を動作させる。
【0029】
PMOSトランジスタM6のソースは、GND接続端子に接続され、ゲートはPMOSトランジスタM7のゲートと共に出力信号Vに接続され、ドレインは出力信号Vに接続される。PMOSトランジスタM6のゲート−ソース電圧をVGS6とする。
【0030】
PMOSトランジスタM7のソースは、PMOSトランジスタM1のドレインに接続され、ゲートはPMOSトランジスタM6のゲートと共に出力信号Vに接続され、ドレインは負電圧入力端子Vinに接続される。PMOSトランジスタM7のゲート−ソース電圧をVGS7とする。
【0031】
以下、上述のように構成された負電源制御回路100の動作を説明する。
【0032】
PMOSトランジスタM1のソース−ドレイン電流I1、NMOSトランジスタM2のソース−ドレイン電流I2とする。PMOSトランジスタM1のドレインとNMOSトランジスタM2のドレインの接続点aの制御信号Vは、クランプ回路130のインバータ131の入力、及びクランプ回路130のPMOSトランジスタM7のゲートに接続され、かつレギュレータアンプ140に供給される。
【0033】
[Vcont=Lowの場合]
I1<I2となり、V=Lowとなる。
【0034】
インバータ131(PMOSトランジスタM3及びNMOSトランジスタM4)は、PMOSトランジスタM3オンにより、PMOSトランジスタM3のスレッショルド電圧を無視すると、出力信号V=GNDとなる。
【0035】
=GNDにより、クランプ回路130のPMOSトランジスタM6及びM7はオフとなり、スタンバイ時の消費電流をゼロにすることができる。
【0036】
[Vcont=Highの場合]
I1≧I2となり、V=Highとなる。
【0037】
インバータ131(PMOSトランジスタM3及びNMOSトランジスタM4)は、PMOSトランジスタM4オンにより、V=GND−VGS6となる。VGS6は、NMOSトランジスタM5の定電流により決まる。
【0038】
制御信号Vは、Highになる。そして、制御信号Vは、V=V+VGS7でクランプされる。
【0039】
ここで、VGS6≒VGS7に設定すると、V=V+VGS7=GND−VGS6+VGS7≒GNDとなる。
【0040】
は、ほぼGND電位にクランプされるため、各素子の標準耐圧を超えることなく動作する。
【0041】
図3は、負電源制御回路100の入出特性を示す図である。図3に示すように、正電圧のコントロール電圧から負電源をコントロールするコントロール出力電圧を線形に得ることができる。
【0042】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、負電源制御回路100は、正電圧の制御電圧入力端子VcontとGND接続端子との間に接続された抵抗Rと、ソースを正電圧の制御電圧入力端子Vcontに接続し、ゲートをGND接続端子に接続し、かつ、バックゲートをソース電位に接続するPMOSトランジスタM1とを備える。また、負電源制御回路100は、ドレインをPMOSトランジスタM1のドレインに接続し、ゲート及びソースを負電圧入力端子Vinに接続するNMOSトランジスタM2を備える。また、負電源制御回路100は、PMOSトランジスタM1のドレインとNMOSトランジスタM2のドレインの接続点aとGND接続端子及び負電圧入力端子Vinとの間に接続され、前記接続点aの電位をほぼGND電位にクランプするクランプ回路130と、前記接続点aの電位を安定化して負電圧出力端子Voに出力するレギュレータアンプ140とを備える。
【0043】
これにより、以下の効果を得ることができる。
【0044】
(1)CMOSプロセスを使用した負電源に対して、オンオフのコントロール機能を持たせることができる。
【0045】
(2)負電源に対して、オンオフコントロールは、マイクロコンピュータ等の正電圧で制御可能である。正電圧制御のため、通常のマイコンポートでコントロールすることができる。
【0046】
(3)コントロール電圧のスレッショルドは、TTL(Transistor-Transistor Logic)レベルである。通常のマイコンポート等に汎用に適用することができる。
【0047】
(4)CMOSの標準プロセスで構成できるため、低コスト化を図ることができる。
【0048】
(5)CMOSプロセスで作製するので、低消費電流が可能である。
【0049】
(6)高耐圧の素子を必要とせず、標準的耐圧のCMOSプロセスで構成することができる。特に、クランプ回路130のPMOSトランジスタM6の耐圧を用いることにより、PMOSトランジスタM1の耐圧を特別高く設計する必要がなく、他のMOSトランジスタと同程度の耐圧で構成することができる。これにより、低コスト化を図ることができる。
【0050】
(7)スタンバイ時(図2のVc=0Vの場合)の消費電流をゼロにすることができる。
【0051】
(8)M2とM1の電流を比較するため、Vinの電源変動の影響を受けずにスレッショルドを設定することができる。
【0052】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。
【0053】
例えば、負電源はどのような負電源回路でもよく、同様の効果を得ることができる。
【0054】
また、上記実施の形態では、MOSトランジスタを使用した例について説明したが、どのようなトランジスタでもよい。例えば、MIS(Metal Insulated Semiconductor)トランジスタであってもよい。またこのMISトランジスタは、SOI(Silicon On Insulator)構造のシリコン基板上に形成されたMISトランジスタでもよい。さらに、Bi−CMOS、又はこれらの組み合わせであってもよい。但し、MOSトランジスタが消費電力の点で有利であることは言うまでもない。
【0055】
また、上記実施の形態では負電源制御回路という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、負電源コントロール回路、負電源回路等であってもよいことは勿論である。
【0056】
さらに、上記負電源制御回路を構成する各回路部、例えばクランプ回路のトランジスタ数、素子の種類などは前述した実施の形態に限られない。当然のことながら、本負電源制御回路に、各種補償用のトランジスタを付加してもよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る負電源制御回路は、LCDやCCDなど正負2種類の電源電圧が必要な電子機器の負電源を制御する電源装置全般に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
100 負電源制御回路
110 V−I変換回路
120 I−V変換回路
130 クランプ回路
M1,M3,M6,M7 PチャネルMOSトランジスタ
M2,M5 デプレッションNチャネルMOSトランジスタ
M4 NチャネルMOSトランジスタ
Vcont 正電圧の制御電圧入力端子
GND GND接続端子
Vin 負電圧入力端子
Vo 負電圧出力端子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
負電源を正電圧の制御信号で制御する負電源制御回路であって、
ソースを正電圧の制御電圧入力端子に接続し、ゲートをGND接続端子に接続し、かつ、バックゲートをソース電位に接続するPMOSトランジスタと、
ドレインを前記PMOSトランジスタのドレインに接続し、ゲート及びソースを負電圧入力端子に接続するNMOSトランジスタと、
前記PMOSトランジスタのドレインと前記NMOSトランジスタのドレインの接続点と前記GND接続端子及び前記負電圧入力端子との間に接続され、前記接続点の電位をGND電位にクランプするクランプ回路と、
を備える負電源制御回路。
【請求項2】
前記制御電圧入力端子と前記GND接続端子との間に接続された抵抗を備える、請求項1記載の負電源制御回路。
【請求項3】
前記接続点の電位を安定化して負電圧出力端子に出力するレギュレータアンプを備える、請求項1記載の負電源制御回路。
【請求項4】
前記クランプ回路は、前記GND接続端子と前記負電圧入力端子間の動作電圧で、共通ゲートに接続された制御信号を反転出力するインバータと、
前記インバータの出力信号を基に、前記PMOSトランジスタのソース−ドレイン電圧をGND電位にクランプする第2のPMOSトランジスタとを備える、請求項1記載の負電源制御回路。
【請求項5】
前記NMOSトランジスタは、デプレッションNチャネルMOSトランジスタである、請求項1記載の負電源制御回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−63849(P2012−63849A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205709(P2010−205709)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】