説明

負電荷酸素原子発生機能付加湿装置

【課題】従来のイオン発生器は高電圧の電極の放電によって+−のイオンを発生し滅菌効果や人をリラックスさせる効果を果たしていた。しかし同時にオゾンや窒素酸化物も発生しており人体に悪影響を及ぼすことも考えられる。
【解決手段】そこで負電荷酸素原子を発生する12CaO・7Al結晶を水中に投入し、負電荷酸素原子が混入した水を霧状にして散布することによってオゾンや窒素酸化物が発生しない安全な負電荷酸素原子発生装置を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負電荷酸素原子製造装置に関するものである。より詳細には極めて小型の装置により大量の負電荷酸素原子(陰イオン)を発生する、家庭や車内でも実施可能な負電荷酸素原子発生方法及びその装置に関する。負電荷酸素原子は、Oイオンラジカルとも称され、例えば気体中での酸化反応、半導体製造工程におけるシリコン酸化膜の作製、いちご等の果実の防かび、まぐろなどの魚介類の鮮度保持、医療機器や床、エアコンの殺菌・滅菌等の各種の分野において使用可能な極めて有用なものである。
都会においては空気中の陰イオンと陽イオンの比率は通常同程度といわれているが、陰イオンが陽イオンの数十倍から数百倍存する、陰イオンの濃度が高い環境下に身を置くことによって疲労回復効果、精神安定効果、血液の浄化効果、抵抗力の増進効果、自律神経調整効果等の医療効果を得られることが広く知られている。
【背景技術】
【0002】
そのため、人為的に負電荷酸素原子の濃度を高める種々の方法が従来発明されており、大きく分けてこれらは、紫外線を用いるもの、高圧コロナ放電を用いるもの、放射性ベータ粒子を用いるもの、ミストを利用するもの等に分類される。
上記の内の紫外線を用いるもの及び高圧コロナ放電を用いるものの方法は同時に人体に対する影響が未知数な量のオゾンも生成してしまうおそれがあることから、又、放射性ベータ粒子を用いるものの方法は放射能漏れの対策を万全に行わなければならないことから、必ずしも適切な方法とはいえないと思料される場合もある。
さて、上記ミストを利用するものの方法は、より詳細には水が砕けて微細な水滴(ミストもしくは霧)に分裂する時に、空気中のイオンの濃度が高まる現象を利用するものである。この現象は、古代より滝の周辺や、海辺の波打ち際等、自然現象により水が砕けてミストが発生する場所は体に良いという経験的事実として知られている。
【0003】
従来の負電荷酸素原子は、放電などによって発生した酸素原子に低エネルギー電子を付着させることにより製造する方法が知られている。しかしながら、かかる方法には、放電を生じさせるために高真空を必要とするとともに、エネルギー面で問題点があった。
本発明は、高真空や放電エネルギーを必要とせずに、効率的に負電荷酸素原子を製造する、国際公開第WO2003/050037号記載の12CaO・7Al結晶(以下、C12A7とも称す)(特許文献1)を使用することを提案している。
国際公開第WO2003/050037号(特許文献1)には「平均粒径が1μmの炭酸カルシウムと酸化アルミニウムをとを両者のモル比(CaCO:Al)が12:7となるように混合し、乾燥空気中で1350℃で6時間焼成し、焼成粉末を得た。得られた焼成粉末を成形器で9.81MPaにて直径15mm、厚さ1mmの円盤状のペレットを作製した。次にこのペレットを乾燥空気中で1350℃で6時間加熱し、ペレット状の焼成体を得た。」のように製作した焼成体を「焼成体上に取り付けたヒーターによって焼成体の温度を700℃に昇温させ、陽極と陰極との間に500Vの電圧を印加した。その結果、両電極間には、電流計12によって1μA電流が観測された。次に、電圧を印加しながら、二次電子倍増管からの負電荷酸素原子を四重極質量分析計で分析し、その質量分析を行った。その結果を第7図に示す。質量数16にピークが見られ、負電荷酸素原子の発生を確認することができた。」のように加熱することによって負電荷酸素原子が発生すると記載している。
【0004】
更に具体的には国際公開第WO2005/115913号(特許文献2)に記載されている装置等によって作られる酸化物焼成体(以下焼成体と称す)を利用するものである。この焼成体は酸化セリウムと酸化アルミニウムを一定の混合比で焼結したものである。このような焼成体を加熱することによって負電荷酸素原子を発生する。
この焼成体も国際公開第WO2003/050037号(特許文献1)と同様に「酸化セリウム(IV)(試薬特級)の平均粒径1μmのものを、直径10mm、厚さ1mmに成形した後に、乾燥大気中において、1350℃で6時間焼成して酸化セリウム(IV)焼成体を作製した。」の記載のように製作した後、「得られた酸化セリウム(IV)焼成体を飛行時間型質量分析計の測定原理を利用した検出装置に取り付けて負電荷酸素原子を検出した。」と記載しており、量産が可能なことを示唆している。
【0005】
次に前記焼成体をヒーター等によって加熱することで負電荷酸素原子を発生させる方法は国際公開第WO2005/056470号(特許文献3)に記載されている。本文献に記載されている実験結果によれば「今回の結果から、少なくとも、Oの照射により120℃耐熱菌バチルスの殺菌は可能であることが確認できた。なお、バチルス菌は加熱すると芽胞化し、細菌の中では最も強力なものである。従って、120℃耐熱菌バチルスの殺菌ができれば、他の細菌は問題なく死滅する。」のように記載されており、本発明に係る焼成体から発生する負荷酸素原子に殺菌作用があることが示唆されている。
しかしこのような方法では大型で、ヒータの加熱に20分以上もかかる業務用の用途対応のものが主流であった。
【0006】
図4に図示された装置は銀イオン発生加湿器である特開2009−139008(特許文献4)を図示したものである。加湿器本体90に組み込まれた給水タンク91の中に入れられた水は貯水部92に一旦蓄えられる。
貯水部92の下部には電気分解部93が備えられており銀イオンを発生するように構成されている。貯水部92の水分量や電気分解部93の電力等は制御部973、974等で制御される。
電気分解部93によって銀イオンが混入した貯水部92の水は加湿フィルタ94に毛細管現象で吸い上げられる。次にファン96によって加湿フィルタ94に送風を当てると銀イオンを含んだ水気を空気中に発生し、加湿する構成になっている。
またファン96の送風先の一箇所に照射部95を設置し、加湿フィルタ94を照射し、加湿フィルタ94に取り付いた雑菌を紫外線などによって殺菌するように構成されている。
また、これらのファン96及び照射部95は制御部971、972で其々制御されるような構成になっている。
照射部95を放電電極951に変更することによって、通過する酸素を活性化し、イオンを発生することが出来る。
放電電極95によって発生したイオンはファン96によって加湿フィルタ94を通過して加湿器本体90外部に放出することが出来る。従来のイオン発生機能付き加湿器は上記のような構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第WO2003/050037号
【特許文献2】国際公開第WO2005/115913号
【特許文献3】国際公開第WO2005/056470号
【特許文献4】特開2009−139008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図4に図示されたようなイオン発生機能付き加湿器であれば金属イオンであるところの銀イオンが発生する。また、銀イオン発生のために電気分解部93によって電力を必要とする。更には水がなくなったときのために制御部973も設置しなければならない。
【0009】
銀イオンはプラスイオンが多く水に溶けた状態で空気中に散布されるが、金属イオンはアレルギー反応を発生する人がおり、出来るだけ安全な物質を使用することが望ましい。
【0010】
また、放電電極95を用いて酸素を活性化してイオンを放電する構成になっているが、条件によってはオゾンや窒素酸化物を発生することがあり、室内を加湿する場合に人体に害があるとされる物質が放出されることは好ましくない。決してオゾンや窒素酸化物を発生することが無いイオン発生機能付加湿装置の提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで水中で負電荷酸素原子を発生する12CaO・7Al結晶によって作られた結晶体と、水を霧状に散布する噴霧体を備え、結晶体を水中に投入して負電荷酸素原子を発生させた水で霧を散布させるようにしたことを特徴とする負電荷酸素原子発生機能付加湿装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は水中で負電荷酸素原子を発生する12CaO・7Al結晶で作られた結晶体と、水をミスト状(霧状)に散布する噴霧体を備え、負電荷酸素原子を含んだ霧を散布させるようにしたことにより、電極によってイオンを発生させる構成でないのでオゾンや窒素酸化物を発生することが無く安全な負電荷酸素原子発生機能付加湿装置の提供が可能である。
負電荷酸素原子を発生する為の電力も要らないし、制御部も必要ないので安価で経済的である。
【0013】
また、金属イオンを発生しないのでアレルギー反応等が出にくく安全な負電荷酸素原子発生機能付加湿方法である。
【0014】
更に加湿時は霧状に加湿するので負電荷酸素原子が水分と一緒に散布されやすい。また、負電荷酸素原子を含んだ霧を散布させるようにするには霧吹き、高周波振動、加熱など容易で安価な方法で霧状態を発生させれば良く、経済的で安全な加湿器が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】粉末及びペレット状の結晶体を袋に封入する図である。
【図2】結晶体を封入した袋を水タンクに入れ水中に負電荷酸素原子を混入させている図である。
【図3】負電荷酸素原子の混入した水の入った水タンクを加湿器に設置した図である。
【図4】従来の金属イオンを発生する加湿器を図示したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は電流によって電荷を発生させるものでなく12CaO・7Al結晶を水中に浸し、負電荷酸素原子を水中に出し、負電荷酸素原子を含んだ水を加湿用の水分として空気中に霧状に散布する負電荷酸素原子発生機能付加湿装置を提案するものである。
【実施例】
【0017】
本発明に使用される特許文献1(国際公開第WO2003/050037号)に記載されている12CaO・7Al結晶は、特許文献2(国際公開第WO2005/115913号)ないし特許文献3(国際公開第WO2005/056470号)に記載されている結晶を使用する。
【0018】
本発明では12CaO・7Al結晶を粉末状結晶体20にして図1の(1)のように袋10に封入して図2のように水タンク30の水中に投入して使用する。
【0019】
袋10は水は浸透するが粉末状結晶体20は通過しない材質で製作されており、負電荷酸素原子は水中に染み出すが粉末状結晶体20は袋10を通過することは無く、加湿器35や水タンク30の水路に粉末状結晶体20が溜まって不具合を生じることが無いように構成されている。
【0020】
12CaO・7Al結晶は図1の(2)のようにペレット状結晶体21のように焼結体として高温で焼き固めて任意の形状に成形しても良い。
【0021】
ペレット状結晶体21の形状であれば袋10への詰め込み作業が容易であり、ペレット状であることで運搬管理の利便性が向上する。
【0022】
更にペレット状結晶体21の形状であれば袋10に封入して水中に浸したとき、ペレット形状が割れたり欠けたりしても破片が加湿器35の水路内に溜まったり水流を妨害したりすることが無く不具合の発生を防止することが出来る。
【0023】
なお、上記のように水路を妨げるような不具合が生じないのであればペレット状結晶体21の状態のまま、袋10に入れずに水タンク30の水中に投入して負電荷酸素原子を水中に発生させるようにしても良い。
【0024】
以上のような方法で負電荷酸素原子を水中に放出した状態の水分を図3の加湿器35の水タンク30にセットし、霧発生部36から空気中に散布するように構成する。
【0025】
以上のことにより安全な負電荷酸素原子を空気中に散布し特許文献3(国際公開第WO2005/056470号)に記載されるように殺菌作用を働かせ空気中の細菌を殺菌することが出来る。
【0026】
前述したように本発明は水中で負電荷酸素原子を発生する12CaO・7Al結晶で作られた結晶体と、水をミスト状(霧状)に散布する噴霧体を備え、負電荷酸素原子を含んだ霧を散布させるようにしたことにより、電極によってイオンを発生させる構成でないのでオゾンや窒素酸化物を発生することが無く安全な負電荷酸素原子発生機能付加湿装置の提供が可能である
【0027】
更に金属イオンを発生しないのでアレルギー反応等が出にくく安全な負電荷酸素原子発生機能付加湿方法である。
【0028】
そして加湿時は霧状に加湿するので負電荷酸素原子が水分と一緒に散布されやすい。また、負電荷酸素原子を含んだ霧を散布させるようにするには霧吹き、高周波振動、加熱など容易で安価な方法で霧状態を発生させれば良く、経済的で安全な加湿器が提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
マイナスイオンには消臭効果があるとされている。そこで本発明の結晶体を浸した水を噴霧器などに使用してトイレやごみ等のにおいの発生する場所の脱臭・滅菌などの装置に使用することができる。
【符号の説明】
【0030】
10 袋
20 粉末状結晶体
21 ペレット状結晶体
30 水タンク
35 加湿器
36 霧発生部
90 加湿器(従来)
91 給水タンク(従来)
92 貯水部
93 電気分解部
94 加湿フィルタ
95 照射部
951 放電電極
96 ファン
971 制御部
972 制御部
973 制御部
974 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中で負電荷酸素原子を発生する12CaO・7Al結晶によって作られた結晶体と、水を霧状に散布する噴霧体を備え、結晶体を水中に投入して負電荷酸素原子を発生させた水で霧を散布させるようにしたことを特徴とする負電荷酸素原子発生機能付加湿装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−75269(P2011−75269A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242838(P2009−242838)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(506030055)株式会社コスモ・アソシエ (8)
【Fターム(参考)】