説明

貨物用上段ラックおよび貨物用下段ラック

【課題】 小さめの自動車等の貨物をコンテナ内に多数収容するのに都合がよく、しかも昇降フレームやラック全体の取り扱いが容易であるといった特徴のある貨物用上段ラック等を提供する。
【解決手段】 貨物用上段ラック10は、コンテナCの床板上に載るベースフレーム11と、そのベースフレーム11上で後端部が上昇することにより傾斜面を形成する昇降フレーム12とを有し、自動車Aを昇降フレーム12に載せてコンテナC内の上部位置に支持するものである。ベースフレーム11の前端部付近に、起立状態と水平状態との間で変化し得るピラー13を設け、昇降フレーム12を、そのピラー13を介して常にベースフレーム11と接続しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
請求項に係る発明は、コンテナによる貨物輸送に使用すべく、貨物を載せてコンテナ内に配置される貨物用ラック(貨物用上段ラックおよび貨物用下段ラック)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶や車両等にコンテナを積載して行う貨物輸送を効率的に行う目的で、ラックと呼ばれる貨物支持手段がコンテナ内に使用されることがある。一般にラックには、貨物を載せる棚状の部分があり、車輪やコロなどを含むベースフレームが付属している。棚状の部分があるのは、コンテナの内部にできるだけたくさんの貨物を収容して効率的な輸送が行えるようにするためである。車輪等を含むベースフレームを有するのは、天井板を含むボックス状のコンテナの中に、クレーン等を使用せずに貨物を搬入できるようにしたものである。
【0003】
下記の特許文献1・2には、コンテナを用いる自動車輸送に使用する自動車用ラックが記載されている。
図9は、当該文献1に記載されたラック10’・20’と、それを用いて自動車Aを収容した状態のコンテナCとについての概要を示す図である。左側にある2台のラック(上段ラック)10’は、コンテナCの床板上に載るベースフレーム11’と、そのベースフレーム11’から後端部が上昇することによって傾斜面を形成する昇降フレーム12’とを有し、昇降フレーム12’の傾斜面上に自動車Aを載せて支えている。
また図10(a)・(b)は特許文献2に記載されたものであり、ラック(上段ラック)10”はやはりベースフレーム11”と昇降フレーム12”とを有し、昇降フレーム12”上に自動車Aを載せて支持する。昇降フレーム12”は、図(a)のように車輪13a”付きの接続部材13”を介してベースフレーム11”に接続されるが、ラック10”がコンテナC内に搬入され終わるまでは、図(b)のようにその接続部材13”とも分離している。
【特許文献1】特許第3881369号公報
【特許文献2】特表平9−507188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9(特許文献1)に示すラック10’では、昇降フレーム12’の傾斜面がベースフレーム11’と同じ高さから形成されている。そのため、たとえば、コンテナC内に収容しようとする自動車Aが図示のものより小さい場合でも、自動車A間の前後の間隔を図示以上に詰めることがほとんどできず、したがって収容する自動車Aの台数を増やすことが難しい。
【0005】
その点、図10(a)のラック10”のように接続部材13”を用いて昇降フレーム12”を接続し、ベースフレーム11”の前端部付近における上方の箇所から昇降フレーム12”の傾斜面が形成されるようにすれば、図示のように自動車Aの前後間隔を詰めて収容台数を増やすことができる。しかし、図10(特許文献2)の例では、接続部材13”と昇降フレーム12”とが常に接続されているわけではない。車輪13a”を利用してラック10”がコンテナC内の所定位置まで運び込まれた後に、その車輪13a”の付いた接続部材13”を図10(b)のように立て、さらに昇降フレーム12”を前方へ移動させたうえ、ロックピン12a”によって昇降フレーム12”の前端部と接続部材13”とを接続するのである。
【0006】
昇降フレーム12”の前端部がベースフレーム11”や接続部材13”に対して常には接続されておらず、コンテナC内にラック10”が搬入された後に初めて接続されるとすると、つぎのような課題がともなう。すなわち、a)搬入されたラック10”のその接続部分はコンテナCの奥の方(入口から遠い部分)に位置し、しかもベースフレーム11”や昇降フレーム12”がその手前に存在することから、作業者が接続部分に接近して当該接続を行うことが難しいほか、遠隔操作等で接続を行うとしてもその接続状態を確認することが容易でない。b)昇降フレーム12”の前端部が接続されていない通常の状態では、ベースフレーム11”や昇降フレーム12”を含むラック10”を一体的に取り扱うことが難しく、コンテナC内、またはその入口付近までラック10”を移動させることが容易でない。
【0007】
また、図10(a)のように間隔を詰めて上下に自動車Aを配置する場合、下段に入れるラック(下段ラック)20”をスムーズに所定位置まで移動させることが実は容易でない。コンテナCの左右側壁に沿う寸法に形成されている上段のラック10”とは違って、上段ラック10”のベースフレーム11”の開放部に入る必要のある下段ラック20”はコンテナCの左右側壁の間隔よりも幅寸法が小さい。そのため、コンテナCの左右いずれかの側壁に沿わせて下段ラック20”を進めても、そのまま上段ラック10”のベースフレーム11”(開放部)の間に入れることはできない。もし下段ラック20”がコンテナCの中央線から外れたり曲がったりして進入すると、上段ラック10”のベースフレーム11”等に当たってそれ以上の移動ができなくなり、下段ラック20”は、一たん引き戻して移動させ直す必要が生じるなど、能率的な搬入を行えない。
【0008】
請求項に係る発明は、以上のような課題を解決するものである。すなわち、小さめの自動車等の貨物をコンテナ内に多数収容するのに都合がよく、しかも昇降フレームやラック全体の取り扱いが容易であるといった特徴のある貨物用上段ラック、ならびに、コンテナ内の所定位置までスムーズかつ能率的に移動させることの可能な貨物用下段ラックを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項に係る発明の貨物用上段ラックは、コンテナの床板上に載るベースフレームと、そのベースフレーム上で後端部が上昇することにより傾斜面を形成する昇降フレームとを有し、貨物を昇降フレームの傾斜面に載せてコンテナ内の上部位置に支持するというラックにおいて、起立状態と水平状態との間で変化し得るピラー(短支柱)をベースフレームの前端部付近に設け、上記の昇降フレームを、そのピラーを介して常に(したがってこのラックがコンテナ内に入れられる前から)ベースフレームと接続していることを特徴とする。
【0010】
この貨物用上段ラックでは、ピラーを起立状態にしたとき、昇降フレームの傾斜面がベースフレームの前端部付近における上方の箇所から形成されるため、たとえば図1のように上段の自動車のすぐ下に下段の自動車を配置するなど、前後の間隔を詰めて多数の貨物をコンテナ内に収容できるようになる。つまり、図9のように昇降フレームの傾斜面がベースフレームと同じ高さから形成されている場合にはない利点がある。
また上記のピラーは水平状態にも変化することができるため、発明の上段ラックは、昇降フレームの後端部を下降させるとともにそのピラーを水平にすることにより、ベースフレームからの高さ寸法を小さくすることができる。そのため、たとえば図4のように折り畳んだ状態でコンパクトに積み上げることが可能であり、保管または移送するのに好都合である。
ピラーを介し昇降フレームを常にベースフレームと接続していることから、発明の上段ラックにはさらにつぎのような利点がある。すなわち、a)昇降フレームとピラー等との接続状態が安定的に維持されるため、コンテナの奥の方に位置することとなり接近することが難しい当該接続部分について、接続・解除の操作および接続状態の確認が不要になる。また、b)昇降フレームが当該接続部分でベースフレームと常に接続されているため、ラックを一体的に取り扱うことが容易であり、したがってコンテナ付近までのラックの移動やコンテナ内へのラックの搬入(またはそれらと逆向きの取扱い)等を行いやすい。
【0011】
発明の貨物用上段ラックは、上記の昇降フレームに、後端部、前端部および全体をそれぞれ持ち上げるための力を受ける被操作部を設けるとともに、上記ピラーが起立状態にあるときにも水平状態にあるときにも、当該昇降フレームをベースフレームと(直接に)連結し、かつその連結を解除し得るよう構成するのが好ましい。
【0012】
そのように構成した上段ラックでは、昇降フレームの操作およびラック全体の移動をきわめて容易に行うことができる。たとえば、ベースフレームに設けた前記ピラーを起立状態にする際には、昇降フレームとベースフレームとの上記の連結を解除したうえ、上記の被操作部(のいずれか)に力を及ぼして昇降フレームの前端部を持ち上げればよい。昇降フレームの後端部を上昇させる際には、同様にベースフレームとの連結を解除したうえ、上記被操作部(のいずれか)を操作して昇降フレームの後端部を持ち上げる。そしてラックの全体を移動させる際には、昇降フレームとベースフレームとを連結したうえ上記の被操作部(のいずれか)に力を及ぼして昇降フレームを持ち上げることとすれば、ピラーおよび上記の連結部分を介してベースフレーム等をも一体的に持ち上げることができ、持ち上げた状態で全体をコンテナの入口付近等にまで容易に移動させることができる。たとえばフォークリフトのフォークを用いて操作部に力を及ぼすことにすると、起重機等がない場所ででも必要な操作を行うことができ、しかも迅速で能率的な取扱いが可能である。
【0013】
上記のピラーとして、ベースフレームとの接続部から昇降フレームとの接続部までの長さを変更可能なものを採用するのが好ましい。
【0014】
そのようにすると、ピラーを起立状態にしたうえ昇降フレームを上昇させて(図1を参照)貨物を上部に支持するとき、ピラーの高さを調節して昇降フレームの傾斜面の位置や角度を適切にすることができる。貨物がコンテナの内壁に当たったり貨物同士が強く接触したりしないようにうまくコンテナ内に貨物を収容するためには、貨物(上段ラックまたは隣接の下段ラックが支持する貨物)の大きさ等に合わせて昇降フレームの傾斜面の位置・角度を調節する必要があるが、上記のようにピラーの長さを変更可能にすると、起立状態にしたときのピラーの高さを変更できて上記の調節が可能となり、貨物に合わせた適切な収容状態を実現できるわけである。
【0015】
請求項に係る発明の貨物用下段ラックは、コンテナ内を前後に(つまり長手方向に)移動して上記昇降フレームの下に入る低位フレームを有し、当該低位フレーム上に貨物を載せ、上記した貨物用上段ラックとともにコンテナ内で使用される貨物用下段ラックにおいて、低位フレームにおける前端部付近の左右両側に、幅方向(コンテナの幅方向)への位置が変更可能なように移動案内部材を設けたことを特徴とする。移動案内部材は、コンテナの内部で下段ラックがコンテナの中央線に沿って移動するよう案内するもので、ローラやボール、滑り材(スライドプレート)などを含めて構成するとよい。
【0016】
幅方向位置が変更可能な移動案内部材を設けたことから、この発明によれば、下段ラックを、たとえば貨物とともにコンテナの入口から搬入して上段ラックの下の所定位置まで移動する作業をスムーズに行うことができる。コンテナの入口付近では、左右の移動案内部材をコンテナの左右側壁に沿わせた状態で下段ラックを移動させ、上段ラックの下でベースフレームの開放部内に進める際には左右の移動案内部材をベースフレーム(の開放部の内側)に沿わせることとすれば、下段ラックはコンテナの中央線に沿って真っ直ぐに移動し、円滑かつ能率的に所定位置におさまるのである。上段ラックとして上記のように昇降フレームの傾斜面がベースフレームの上方の箇所から形成されるものを使用し、前後の間隔を詰めて貨物をコンテナ内に収容する場合には、コンテナ内への下段ラックの進入距離が長くなる(たとえば図1と図9とを比較参照)ため、上記移動案内部材が重要な役目を果たすことになる。
【0017】
上記の移動案内部材として上下向きの軸を中心に回転自在なローラを使用し、上記した幅方向位置を、コンテナの左右側壁間寸法、および上記貨物用上段ラックにおけるベースフレームの開放部寸法にそれぞれ対応づけた位置に設定されるようにすると、とくに好ましい。
【0018】
移動案内部材をそのような位置に設定されるようにしておくと、コンテナの左右側壁に沿わせたのち上記ベースフレームに沿わせるという移動案内部材の位置調整を、短時間で容易に行うことができる。そうすると、コンテナ内での下段ラックの移動作業をさらに能率的に行えることになる。コンテナの左右側壁間寸法は規格によって所定の値にされていることが多く、また上段ラックを同一仕様に構成すればそのベースフレームの開放部寸法を一定にすることができるので、移動案内部材の幅方向位置を上記のようにあらかじめ対応づけて設定することは難しくない。なお、移動案内部材として上記のようなローラを採用すると、構成が簡単でコストが抑制されるという利点がある。
【発明の効果】
【0019】
請求項に係る発明の貨物用上段ラックによれば、小さめの自動車等の貨物を前後の間隔を詰めてコンテナ内に多数収容するのに都合がよく、また、昇降フレームやラック全体の取り扱いが容易になる。高さ寸法を小さくするように折り畳むことができるため、保管や移送のためにも有利である。
昇降フレームに持上げのための被操作部を設けるとともに、昇降フレームとベースフレームとの間を適切に連結・解除し得るよう構成すると、昇降フレームの操作およびラック全体の移動をきわめて容易に行うことが可能になる。
上記のピラーとして長さ変更可能なものを採用すると、貨物の大きさに合わせたさらに適切な収容状態を実現できる。
【0020】
請求項に係る発明の貨物用下段ラックによれば、それをコンテナの入口から搬入して上段ラックの下の所定位置まで移動する作業をスムーズに行うことができる。
移動案内部材としてローラを使用し、その幅方向位置を適切に設定されるようにあらかじめしておくと、同部材の位置調整を容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1〜図8に発明の実施形態を紹介する。図1は、貨物としての自動車Aの4台を、各2台の貨物用上段ラック10と貨物用下段ラック20とを用いてコンテナC内に収容した状態を示す側面図(断面にてコンテナCの内部を示したもの)である。図2は上段ラック10を示すもので、図2(a)は平面図(同(c)におけるa−a矢視図)であり、同(b)は正面図、同(c)は側面図である。図3は平面状に折り畳まれた状態の上段ラック10を示すもので、図3(a)は平面図、同(b)は正面図、同(c)は側面図である。図4は、平面状に折り畳まれた上段ラック10と下段ラック20とを積み重ねた状態を示す側面図である。図5は図2(a)のV−V矢視によってピラー13を示す側面図で、図5(a)〜(d)はその長さ(起立状態での高さ寸法)を変更し、または水平にした状態を示す図である。図6は、昇降フレーム12の各被操作部を示すとともに、フォークリフトによるその操作要領を説明する図であって、図6(a)は昇降フレーム12の全体を持ち上げるときの、同(b)は昇降フレーム12の後端部を持ち上げるときの、また同(c)は昇降フレーム12の前端部(図3におけるVI部の付近)を持ち上げるときの要領を示している。図7は、コンテナCの奥に入れた上段ラック10の下まで下段ラック20を進入させる過程を示すもので、図7(a)は平面図、同(b)は側面図である。そして図8は、下段ラック20に付設した移動案内部材23を示す図で、図8(a)・(b)は案内ローラ23の幅方向への突出量を小さくした状態の正面図および平面図、同(c)・(d)は当該突出量を大きくした状態の正面図および平面図である(図8(b)・(d)は図7におけるVIIIa・VIIIdの各詳細図である)。
【0022】
上段ラック10と下段ラック20とを含む図示の自動車用ラックは、形鋼などの鋼材を材料として構成したもので、全体的な構造と使用形態は図1に示すとおりである。すなわち、まず上段ラック10は、コンテナCの床板上に載って前後方向に移動可能なベースフレーム11と、そのベースフレーム11上で後端部が上昇して傾斜面を形成する昇降フレーム12とを結合したもので、その傾斜面上に自動車Aを載せ、昇降フレーム12の後端部付近を縦フレーム14によって支持させる。一方、下段ラック20は、平面状に構成した低位フレーム21を前後方向へ移動可能にしたもので、その低位フレーム21上に自動車Aを載せ、コンテナC内で上段ラック10の昇降フレーム12の下に配置する。なお、本書では、コンテナCの奥の方(図示左方)を「前」といい(「前端部」等を含む)、入口Caに近い方(図示右方)を「後」という(「後端部」等を含む)。また、コンテナCの前後と直角の方向を「左右」または「幅方向」という。
【0023】
上段ラック10は、詳細には図2〜図6のように構成している。図2に示すように、まずベースフレーム11には移動用のコロ11aを複数箇所に配置し、その後部には、上記のように昇降フレーム12の後端部付近を支持するための縦フレーム14を取り付けている。縦フレーム14は、ベースフレーム11上の複数の(軸心の異なる)連結ピン14aを用いて鉛直に立てるが、一部の連結ピン14aを抜き取ることによりベースフレーム11上に倒すことができる。縦フレーム14は左右両側の柱と上部水平部材とを剛結した門形のもので、その上部には、伸縮性を有する長さ可変の押上げ部材14cを取り付けている。押上げ部材14cをコンテナCの上部左右の隅に押し付けることにより、上段ラック10とコンテナCとの一体性を高めて、双方の機械的強度を向上させることができる。縦フレーム14の左右両側の柱は、一部を筒に差し込んで留める形式等を採用して長さ可変の構造にし、高さ寸法の異なるコンテナに対応できるようにするのもよい。なお、ベースフレーム11の前端部には、衝撃吸収等のためのゴムダンパー15を設けるとともに、その前後方向への位置を調節可能にしている。また、ベースフレーム11の左右各外側の複数箇所には、低摩擦性の樹脂でできたガイドプレート11dを取り付け、コンテナCの内壁に沿った移動を円滑化するとともに当該内壁面に傷が付くことを防止している。ベースフレーム11の先端部左右には、同様の目的で、鉛直軸を中心に回転自在なガイドローラ11eを取り付けてもいる。
【0024】
昇降フレーム12は、後端部から自動車Aを乗り込ませ、かつ所定の位置でその自動車Aの車輪を保持することのできる左右一体のフレームである。図3(a)に示す前方寄りのスペース12aに、前後への位置調整を可能にして一対のタイヤ支持アンカー12bを取り付けている。このタイヤ支持アンカー12bの間に自動車Aの車輪を置き、かつ昇降フレーム12上の多数箇所に設けたフックおよび他のロープ等を利用してその車輪を固縛する。自動車Aの他の車体部分も、同様のフック等を利用して昇降フレーム12に固縛するのがよい。なお、フックとしては、固縛の対象(車体のどこを固定するか)や固縛手段(ベルトかワイヤか等)の相違に対応し得るように、種々の形態のものを多数設けておくのがよい。
【0025】
図1・図2に示すように、上段ラック10のベースフレーム11の前端部付近には、角筒と角柱等でできた長さ数十センチのピラー13を接続しており、昇降フレーム12はそのピラー13を介してベースフレーム11に接続している。ピラー13は、鉛直の起立状態と水平状態との間で姿勢を変えることができ、またその長さを変更することができる(後述の図5を参照)。ピラー13を起立状態にしたうえ昇降フレーム12の後端部を上昇させた状態で使用することにより、図1のように、それに載せる自動車Aと下段の自動車Aとを、前後間隔を詰めてコンテナC内に効率的に収容できるというメリットがもたらされる。図2のようにピラー13を起立状態にしたとき、後端部を上昇させた昇降フレーム12は、後端部付近を縦フレーム14に対しピン14bにより連結して支持させ、後端部を下降させた場合には、その後端部付近をベースフレーム11に対しピン11bによって連結する。
【0026】
昇降フレーム12の後端部を下降させるとともに上記のピラー13を水平状態にし、さらに縦フレーム14を倒すことにより、上段ラック10は図3のように平面状に折り畳むことができる。その状態では、昇降フレーム12の後端部付近は、ピン11cによってベースフレーム11と連結する。そうして平面状に折り畳んだ上段ラック10は、本来的に平面状である下段ラック20と重ねることにより、図4のようにコンパクトに積み上げることができ、ラックの返送・転送等の際にコンテナ内にそれらを収容したり取り出したりする作業を行いやすい。上段ラック10のベースフレーム11と縦フレーム14の一部(折り畳んだとき上を向く部分)に段積み用ポスト16を設け、下段ラック20の低位フレーム21の上面の一部にも段積み用ポスト26を設けているので、その積み上げ状態はとくに安定する。また、折り畳んだ状態の上段ラック10をフォークリフト車両で運搬しやすいよう、ベースフレーム11の下部には、図2(c)のように、側方からフォークを挿入することのできる凹部(サイドフォークポケット)11fを複数形成している。同様の凹部は下段ラック20の低位フレームにも設けている。
【0027】
前記したピラー13は、ベースフレーム11と昇降フレーム12とを常に(点検・調整等の場合を除いて)接続状態に保つもので、構造の詳細は図5に示すとおりである。まず図5(a)に示すように、ピラー13は、角筒13aの中にスライド可能に角柱13cを挿入し、取付け部材13eによってその角筒13aをベースフレーム11に取り付けたものである。角柱13cに設けた複数(図では3個)の穴のいずれかと角筒13aの穴との間に留めピン13bを通すことにより、長さを可変にしながら角筒13aと角柱13cとを一体化する。取付け部材13eとベースフレーム11とは二つのピン13f・13gによって接続し、角柱13cの先端の接続孔13dは、別のピン(図示省略)によって昇降フレーム12と接続する。
【0028】
ピラー13は、図5(a)〜(c)に示すように、角柱13cのうちいずれの穴に留めピン13bを通すかによって長さ(ベースフレーム11との接続部から昇降フレーム12との接続部までの長さ)を変更することができる。長さを変更すれば、起立状態での高さを変更することができ、自動車Aの大きさ等に応じて昇降フレーム12の傾斜状態を変更することが可能である。また図5(d)のように、取付け部材13eにおける前記のピン13gを一たん抜き取り、ピン13fを中心にピラー13を倒して水平にしたうえ、ベースフレーム11上の別の箇所との間にピン13hを通すこととすれば、ピラー13を水平状態に保持することが可能である。
【0029】
図6のように、上段ラック10の昇降フレーム12は、フォークリフト車両のフォークFによって昇降・移動等の操作を行うようにしている。まず第6図(a)(および図3)に示すように、昇降フレーム12の後端部付近に、フォークリフトによる第一の被操作部として、前後に長い鋼製の中空枠12gを二つ平行に設けている。それぞれの12gは後端を開放していて、大型のフォークリフトがフォークFを根元まで挿入することができ、しかもフォークFと中空枠12gの内面との間に大きな隙間が発生しないようにする。上段ラック10を図3のとおり平面状にし、ベースフレーム11と昇降フレーム12との間をピン11cで連結したとき、図6(a)のように中空枠12gにフォークFを挿入して上昇させれば、上段ラック10の全体をフォークリフトにて持ち上げ、任意の箇所に移動することができる。十分な能力のあるフォークリフトを使用すれば、自動車Aを載せた状態で上段ラック10を持ち上げてコンテナCの入口付近に搬入することが可能である。
【0030】
昇降フレーム12の後端部をフォークリフトにて上昇・下降させるため、第二の被操作部として、図6(b)のとおり、昇降フレーム12の後端部付近であって各中空枠12gの下部に接触片12iを溶接にて一体化するとともに、その接触片12iの前方に、上方への進入スペースをもつ空洞部12hを設けている。接触片12iは、鋼製の角棒とその前方につづく曲面部材とからなり、昇降フレーム12および自動車Cの荷重を受けても変形しない強度をもつ。また、前方に曲面を有するので、フォークFが上昇して昇降フレーム12の傾斜が進む際にもフォークFとの接触面積が維持され接触箇所が滑らかに移動する。ベースフレーム11と昇降フレーム12との間を連結するピン11c(図3)を抜き取ったうえ、この接触片12iの下にフォークFを差し入れて持ち上げれば、図のように昇降フレーム12の後端部を上昇させることが(逆に下降させることも)できる。図2のように昇降フレーム12を上昇させると、その状態でピン14bによって縦フレーム14に連結する。
【0031】
さらに第三の被操作部として、昇降フレーム12の前端部付近には、図6(c)のように左右間に、前記した平行な中空枠12gの各延長部分に掛け渡してワイヤロープ12kを取り付けている。前記のピン11c(図3)を抜き取ったうえ、ワイヤロープ12kの下に図示のようにフォークリフトのフォークFを挿入して持ち上げれば、図2のように昇降フレーム12の前端部を持ち上げてピラー13を起立状態にすることが(逆にすることも)できる。ピラー13を起立状態にして、それによる移動後の昇降フレーム12をピン11bによってベースフレーム11に連結しておく。
【0032】
ピラー13を起立状態にし、自動車Aを載せたうえ昇降フレーム12の後端部を上昇させ、さらにその上段ラック10をコンテナCの奥へ搬入した後は、図7のように、その昇降フレーム12の下に下段ラック20を進入させる。下段ラック20の低位フレーム21は、平面的で昇降機能のないフレームであり、後端部から自動車Aを乗り込ませるとともに所定の位置にその自動車Aの車輪等を保持することができる。
【0033】
低位フレーム21のうち図7(a)に示す前方寄りのスペース21aに、前後への位置調整を可能にして一対のタイヤ支持アンカー21bを取り付けている。このタイヤ支持アンカー21bの間に自動車Aの車輪を置いたうえ、低位フレーム21上の多数箇所に設けた多形態のフック等を利用してその車輪と車体部分を固縛・固定する。なお、低位フレーム21の後端部付近にも、昇降フレーム12における中空枠12g(図6(a)参照)と同様の中空枠を設けているので、そこにフォークリフトのフォークFを挿入し、自動車Aとともに下段ラック20の全体を持ち上げて移動させることが可能である。
【0034】
低位フレーム21にはコンテナCの入口Ca付近で自動車Aを載せて上記のように固縛し、そうした下段ラック20を前方へ押し進めて上段ラック10の下に入れる。その間、下段ラック20がコンテナCの中央を真っ直ぐに進み、上段ラック10の下(図2(a)に示すベースフレーム11の間)にスムーズに入るよう、下段ラック20にはつぎの構成を付加している。すなわち、図7(a)のように前端部付近の左右両側に、幅方向位置を変更可能にして移動案内部材23を設けている。移動案内部材23は図8に示す構成のもので、軸心を鉛直にした回転自在なローラ23aを先端に取り付け、左右方向へのその位置(突出量)を2段階に変更できるようにしたものである。図8(a)・(b)は左右への突出量を小さくした状態を示し、同(c)・(d)は突出量を大きくした状態を示している。突出量が大きい状態では、左右のローラ23aがコンテナCの左右の壁に極めて接近し、突出量を小さくしたときは、図2(a)に示すように間に大きな開放部を有していて外側に平行に延びたベースフレーム11の内側面に、左右のローラ23aが極めて接近するようになる。図8(a)〜(d)に示すように、移動案内部材23は構造的には、ローラ23aを支持する角柱23cを、低位フレーム21に固定した角筒23b内にスライド可能に挿入し、両者間を留めピン23dで連結することにより突出量を定めるものである。
【0035】
図7(a)に示すように、下段ラック20を前方へ移動させる間、移動案内部材23はつぎのとおり使用する。まずコンテナCの入口Ca付近では、左右の突出量を大きくし、ローラ23aをコンテナCの左右側壁に沿わせた状態にし、その状態で下段ラック20を前方へ押し進める。下段ラック20の前端部が上段ラック10のベースフレーム11に近づいたとき、留めピン23d(図8)を差し換えて左右への突出量を小さくし、ローラ23aをベースフレーム11の内側面に沿うようにする。そのようにしてさらに下段ラック20を押し進めると、下段ラック20をスムーズに移動させて、図示のように上段ラック10の昇降フレーム12の下(ベースフレーム11の間)へ入れることができる。なお、低位フレーム21の前端部および後端部には、前後方向の位置調節を可能にして、衝撃吸収等のためのゴムダンパー25を設けている。下段ラック20を上段ラック10の下に入れたとき、このゴムダンパー25を上段ラック10のベースフレーム11の一部に押し当てる。
【0036】
以上のように構成した上段ラック10と下段ラック20とを用いて図1のようにコンテナC内に自動車Aを収容する際の手順は、概ねつぎのとおりである。
1) 平面状に折り畳まれて(図3を参照)コンテナCの外にある上段ラック10について、まずは縦フレーム14を鉛直にして複数のピン14aによりその状態を保持させ(図2(c)の一部を参照)、つづいてピラー13を起立状態にする(同参照)。ピラー13を起立させるには、昇降フレーム12とベースフレーム11との連結を一たん解いたうえで昇降フレーム12の前端部付近(ワイヤロープ12k)をフォークリフトのフォークFで持ち上げ(図6(c))、その状態で再び昇降フレーム12をベースフレーム11に連結する。
【0037】
2) 昇降フレーム12の中空部12gにフォークFを挿入し(図6(a))、ベースフレーム11とともに上段ラック10の全体を持ち上げて、ベースフレーム11の前端部をコンテナCの入口Caに入れる。そうした状態の上段ラック10における昇降フレーム12上に自動車Aを乗り込ませ、そのタイヤ等をフレーム12に固縛・固定したうえ、上記と同様にフォークFを使用して上段ラック10をコンテナC内に入れる。上記のとおり前端部をコンテナCの入口Caに入れたときは、図2(a)(の引出し図)のようにベースフレーム11の前端部付近に取り付けたスライドピン11gを左右外方に突出させ、その先端を、コンテナCの入口CaにあるコーナーポストCc(の横の凹部)に掛け留めるのがよい。そうすると、自動車Aを乗り込ませるときにも上段ラック10が移動しない。
3) 昇降フレーム12の後端部の接触片12iにフォークFを当てて持ち上げる(図6(b))ことにより昇降フレーム12を傾斜状態にし、その状態でピン14bにより縦フレーム14に連結固定する(図2(c))。
4) 上段ラック10を作業員が押し動かしてコンテナCの奥にまで運び入れる。そのうえで、縦フレーム14上の押上げ部材14cをコンテナCの上部左右の隅に押し付ける。
【0038】
5) つぎに、図6(a)と同様にフォークFを用いることにより下段ラック20の全体を持ち上げて運搬し、その前端部をコンテナCの入口Caに運び入れる。そうした下段ラック20の低位フレーム21上に自動車Aを乗り込ませ、タイヤ等をフレーム21に固縛・固定したうえ、同様にフォークFを使用して下段ラック20をコンテナC内に入れる。
6) 下段ラック20を作業員が前方に押し進め、上段ラック10の昇降フレーム12の下へ運び入れる(図7)。この間、下段ラック20の移動案内部材23において、当初はローラ23aの左右突出量を大きくし、下段ラック20が上段ラック10のベースフレーム11に接近したときその突出量を小さくする(図7・図8)。
【0039】
7) 上記1)〜4)と同様の手順を繰り返すことにより、2台目の上段ラック10を自動車AとともにコンテナCの中ほど(ゴムダンパー15が下段ラック20に当たる位置)まで運び入れる。
8) 上記5)〜6)と同様の手順を繰り返すことにより、2台目の下段ラック20を自動車AとともにコンテナC内に運び入れる(図1)。入口CaのドアCbを閉じたときドアCbの内側面がゴムダンパー25に接触するように、各ラック10・20のゴムダンパー15・25の前後方向位置をあらかじめ調節しておくのがよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】発明の実施形態を示す図で、貨物としての自動車Aの4台を、各2台の貨物用上段ラック10と貨物用下段ラック20とを用いてコンテナC内に収容した状態を示す側面図である。
【図2】上段ラック10を示す図で、図2(a)は平面図(同(c)におけるa−a矢視図)であり、同(b)は正面図、同(c)は側面図である。
【図3】平面状に折り畳まれた状態の上段ラック10を示す図で、図3(a)は平面図、同(b)は正面図、同(c)は側面図である。
【図4】平面状に折り畳まれた上段ラック10と下段ラック20とを積み重ねた状態を示す側面図である。
【図5】図2(a)のV−V矢視によってピラー13を示す側面図で、図5(a)〜(d)のそれぞれはその長さを変更し、または水平にした状態を示すものである。
【図6】フォークリフトによる昇降フレーム12の操作要領を示す図であって、図6(a)は昇降フレーム12の全体を持ち上げるときの、同(b)は昇降フレーム12の後端部を持ち上げるときの、同(c)は昇降フレーム12の前端部(図3におけるVI部の付近)を持ち上げるときの要領を示している。
【図7】コンテナCの奥に入れた上段ラック10の下まで下段ラック20を進入させる過程を示すもので、図7(a)は平面図、同(b)は側面図である。
【図8】下段ラック20に付設した移動案内部材23を示す図で、図8(a)・(b)は幅方向への案内ローラ23の突出量を小さくした状態の正面図および平面図、同(c)・(d)は当該突出量を大きくした状態の正面図および平面図である(図8(b)・(d)は図7におけるVIIIa・VIIIdの詳細図である)。
【図9】特許文献1に記載されたラック10’・20’と、それを用いて自動車Aを収容した状態のコンテナCとについての概要を示す側面図である。
【図10】特許文献2に記載された図で、図10(a)はコンテナC内で自動車Aを載せた状態のラックを示す側面図、同(b)は自動車Aを載せる前のラックを示す側面図である。
【符号の説明】
【0041】
10 貨物用上段ラック
11 ベースフレーム
12 昇降フレーム
13 ピラー
14 縦フレーム
20 貨物用下段ラック
21 低位フレーム
23 移動案内部材
23a ローラ
A 自動車(貨物)
C コンテナ
F (フォークリフトの)フォーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナの床板上に載るベースフレームと、そのベースフレーム上で後端部が上昇することにより傾斜面を形成する昇降フレームとを有し、貨物を昇降フレームの傾斜面に載せてコンテナ内の上部位置に支持する貨物用上段ラックであって、
起立状態と水平状態との間で変化し得るピラーがベースフレームの前端部付近に設けられ、上記の昇降フレームが、そのピラーを介して常にベースフレームと接続されていることを特徴とする貨物用上段ラック。
【請求項2】
上記の昇降フレームが、後端部、前端部および全体をそれぞれ持ち上げるための力を受ける被操作部を有するとともに、上記ピラーが起立状態にあるときにも水平状態にあるときにも、当該昇降フレームがベースフレームと連結され、かつその連結を解除され得るよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の貨物用上段ラック。
【請求項3】
上記のピラーが、ベースフレームとの接続部から昇降フレームとの接続部までの長さを変更可能なものであることを特徴とする請求項1または2に記載の貨物用上段ラック。
【請求項4】
コンテナ内を前後に移動して上記昇降フレームの下に入る低位フレームを有し、当該低位フレーム上に貨物を載せ、請求項1〜3のいずれかに記載した貨物用上段ラックとともにコンテナ内で使用される貨物用下段ラックであって、
低位フレームにおける前端部付近の左右両側に、幅方向位置が変更可能なように移動案内部材が設けられていることを特徴とする貨物用下段ラック。
【請求項5】
上記の移動案内部材が、上下向きの軸を中心に回転自在なローラであって、上記した幅方向位置が、コンテナの左右側壁間寸法、および、上記貨物用上段ラックにおけるベースフレームの開放部寸法に対応づけた位置に設定されることを特徴とする請求項4に記載の貨物用下段ラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−120202(P2009−120202A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292603(P2007−292603)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(501172084)株式会社ロッコーエンジニアリング (6)
【Fターム(参考)】