説明

貫入試験機のロッドチャック

【課題】作業者が迅速かつ正確に貫入ロッドを装着できる貫入試験機のロッドチャックの提供。
【解決手段】側面に係合溝を有する貫入ロッド4と、貫入ロッドが挿通可能な内孔を有する中空のチャック軸11と、このチャック軸11に沿って往復移動可能かつ常時チャック軸11先端側に付勢されたスリーブと、このスリーブのチャック軸11先端側への移動を規制するとともに、必要に応じて上面が打撃されるスリーブ押さえ14と、チャック軸11に配置されて常時前記スリーブによりチャック軸11の内孔に突出した状態に支持され、貫入ロッド4の係合溝に嵌合してこれを保持する鋼球17a,17b,17cとを備えて成る貫入試験機のロッドチャックにおいて、チャック軸11の先端面には、鋼球17a,17b,17cの配置位置を示す目印18a,18b,18cが設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に貫入ロッドを貫入して試験を行う貫入試験機において、貫入ロッドを
保持するロッドチャックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動貫入試験のロッドチャックとしては、特許文献1に示すものがある。こ
のロッドチャックは、貫入ロッドが挿通可能な内孔を有する中空のチャック軸と、このチ
ャック軸に沿って往復移動可能かつ常時チャック軸端側に付勢されたスリーブと、このス
リーブのチャック軸端側への移動を規制するスリーブ押さえと、前記チャック軸に配置さ
れて常時前記スリーブによりチャック軸の内孔に突出した状態に支持される鋼球とを備え
て成る。
【0003】
前記チャック軸には、その外周から内周へ貫通する貫通穴が円周方向へ所定の間隔をお
いて3箇所に穿設されている。また、これら貫通穴にはそれぞれ、前記鋼球が動作可能に
収納されている。さらに、スリーブの先端近傍においては、その内周面がチャック軸の外
径よりも大きく形成された収納溝が穿設されている。この構成により、スリーブを下方に
押下げると、貫通穴と収納溝とが連通して鋼球が収納溝に納まり、貫通穴から抜け落ちな
い程度に動作することができる。
【0004】
また、貫入ロッドの側面には当該鋼球を嵌合する係合溝が穿設されている。そこで、貫
入ロッドをチャック軸に装着するには、前記スリーブ下方に押下げた状態で、下方から貫
入ロッドをチャック軸に挿入する。そして、作業者が貫入ロッドを回転させて鋼球を係合
溝に嵌合させて装着を完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4287704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記ロッドチャックでは、貫入ロッドを装着する際、作業者は手探りで
回転させながら鋼球を係合溝に嵌合させる。これでは、装着作業に手間が掛かり、作業者
の負担となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の貫入試験機のロッドチャックは、上記課題に鑑みて創成されたものであり、側
面に係合溝を有する貫入ロッドと、貫入ロッドが挿通可能な内孔を有する中空のチャック
軸と、このチャック軸に沿って往復移動可能かつ常時チャック軸先端側に付勢されたスリ
ーブと、このスリーブのチャック軸先端側への移動を規制するとともに、必要に応じて上
面が打撃されるスリーブ押さえと、前記チャック軸に配置されて常時前記スリーブにより
チャック軸の内孔に突出した状態に支持され、前記貫入ロッドの係合溝に嵌合してこれを
保持する保持部材とを備えて成る貫入試験機のロッドチャックにおいて、前記チャック軸
の先端面には、前記保持部材の配置位置を示す目印が設けてある。
【0008】
前記スリーブ押さえは、前記チャック軸の先端がスリーブ押さえの上面から突出しない
程度の厚みに設定されているが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、チャック軸の先端面には、前記保持部材の配置位置を示す目印が設けてあ
る。そのため、貫入ロッドを回転させながらの手探りによる貫入ロッドの装着作業が不要
となる。したがって、作業者は、当該目印を目視して、迅速かつ正確に貫入ロッドを装着
できる。
【0010】
また、スリーブ押さえは、前記チャック軸の先端がスリーブ押さえの上面から突出しな
い程度の厚みに設定されている。そのため、スリーブ押さえの上面を打撃しても、チャッ
ク軸の先端に設けられた刻印が消える虞がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】貫入試験機を示す斜視図である。
【図2】貫入試験機を示す側面図である。
【図3】図2のA−A線拡大断面図である。
【図4】貫入試験機のロッドチャックを示す拡大断面図である。
【図5】貫入試験機のロッドチャックを示す拡大平面図である。
【図6】図4のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において、1は貫入試験機
であり、スェーデン式サウンディング試験を自動で行うものである。その構成としては、
支柱2に沿って昇降可能な昇降台3を有しており、この昇降台3には、所定重量の錘3a
と、先端にスクリューポイント4dを備える貫入ロッド4を回転可能に保持するロッドチ
ャック10と、昇降台3を昇降動作するための昇降ユニット20とが載荷されている。そ
して、昇降台3は、図2に示すように、支柱2に沿って垂直に配された案内チェーン2a
に沿って回転するスプロケット5が案内チェーン2aに沿って回転することで昇降するよ
うに構成されている。この昇降台3および昇降台3に載荷された総重量により、前記貫入
ロッド4には1KNの荷重が負荷できるように構成されている。
【0013】
前記昇降ユニット20においては、図3に示すように、前記昇降用モータ21の正逆転
可能な駆動軸21aには、駆動歯車22、中間歯車23および伝達歯車24が当該昇降用
モータ21の駆動に伴い回転自在に設けられている。そして、これら歯車列および一方向
クラッチ25を介して伝達軸26が連結されている。
【0014】
具体的には、前記伝達歯車24は、円柱を成し、その外周面に外歯を備える構成である
。そして、伝達歯車24は、内部に一方向クラッチ25を圧入して当該伝達歯車24と一
体に回転するとともに、伝達軸26に回転自在に支持されている。この一方向クラッチ1
3の作用によって、スプロケット5には、昇降台3を上昇させる方向にのみ昇降用モータ
21の駆動が伝達される。一方、下降時には一方向クラッチ25がスプロケット5の伝達
軸26に対して空転する方向に駆動する。このため、スプロケット5の伝達軸26は一方
向クラッチ25の回転数以下の範囲内で回転自在となって、案内チェーン2aに沿って回
転して昇降台3を自重により支柱2に沿って下降させる。
【0015】
また、前記昇降ユニット20の伝達軸26の先端には、ロータリエンコーダ27が設け
てあり、スプロケット5の回転に伴うパルス信号を出力できるように構成されている。そ
して、制御装置(図示せず)が当該ロータリエンコーダ27の発するパルス信号を処理し
、貫入ロッド4の貫入量、貫入速度等を求めるとともに、昇降台3が所定の高さまで上昇
あるいは下降するよう昇降用モータ21に指令信号を発するように構成されている。
【0016】
前記ロッドチャック10は、図4に示すように、貫入ロッド4が挿通可能な中空のチャ
ック軸11を有する。このチャック軸11の下部には、スプロケット8が取り付けられて
いる。そして、図2に示すように、このスプロケット8と、チャック用モータ6の駆動に
伴って回転するスプロケット7とには、無端チェーン9が巻け掛けられている。この構成
により、チャック軸11はチャック用モータ6の駆動に伴い回転することができる。
【0017】
また、前記チャック軸11は、アンギュラ玉軸受30a,30bおよび円筒ころ軸受3
1a,31bに支持されている。さらに、チャック軸11にはワッシャ型ロードセル32
が挿入されており、貫入ロッド4にかかる荷重を検出するように構成されている。
【0018】
また、前記チャック軸11には、マシンキー(図示せず)を介してスリーブ12が挿入
されており、チャック軸11に沿って往復移動可能、かつ一体に回転可能に構成されてい
る。また、このスリーブ12は、常時チャック軸11の先端側へばね13によって付勢さ
れている。そこで、チャック軸11の先端には抜け止めとしてスリーブ押さえ14が取り
付けられている。
【0019】
前記スリーブ押さえ14は、抜け止めの他に、被打撃部材の目的で取り付けられている
。その理由としては、貫入試験中、貫入ロッド4の先端が地中の岩石等に当接すると、貫
入試験を続行することができない。そこで、スリーブ押さえ14の上面を作業者がハンマ
等で打撃し、岩石を粉砕することで、貫入試験を続行する。
【0020】
前記スリーブ押さえ14およびチャック軸11には、図6に示すように、当該チャック
軸11に直交する方向に延び、かつこれらに分割形成された係合穴15a,15bが穿設
されている。そして、これら係合穴15a,15bには、係止ピン16a,16bが挿入
され、抜け止めとして弾性リング17が嵌め合わせてある。このようにして、スリーブ押
さえ14は、チャック軸11に取り付けられている。また、係止ピン16a,16bは、
チャック軸11の軸線と直角を成す方向に延びて平行に配置されており、その外周面で前
述したハンマによる打撃を受けられるように構成されている。
【0021】
ところで、打撃により、スリーブ押さえ14あるいはチャック軸11に変形が生じると
、前記係止ピン16a,16bが抜けなくなる虞がある。これでは、スリーブ押さえ14
を取り外すことができず、交換作業に手間がかかる。
【0022】
そこで、前記スリーブ押さえ14には、その上面の外周縁に45度面取りを施すことに
より、面取傾斜部14aが形成されている。これにより、スリーブ押さえ14の打撃時に
、ハンマが面取斜面部14aを滑り落ちるので、スリーブ押さえ14、チャック軸11は
、過大な衝撃を受けることなく、変形を免れる。
【0023】
また、ワッシャ型ロードセル32は、その本体に生じる歪みを電気信号として荷重を検
出するものであるから、衝撃により変形してしまうと、荷重検出精度を低下させてしまう
問題がある。本発明においては、前記スリーブ押さえ14あるいはチャック軸11への衝
撃が低減されるとともに、前記ワッシャ型ロードセル32への衝撃も低減されるから、当
該ワッシャ型ロードセル32の変形を防止できる。
【0024】
さらに、前記スリーブ押さえ14は、前記チャック軸11の後端が当該スリーブ押さえ
14の上面から突出しない程度の厚みに設定されている。そのため、ハンマによる打撃に
対する耐久性に優れたものとなるとともに、詳細を後述するチャック軸11の先端面に刻
印された目印18a,18b,18cが、打撃によって消えてしまう虞を防ぐことになる

【0025】
前記チャック軸11の先端付近には、その外周から内周へ貫通する貫通穴11aが円周
方向へ所定の間隔をおいて3箇所に穿設されている。また、これら貫通穴11aにはそれ
ぞれ、保持部材の一例である鋼球17a,17b,17cが動作可能に収納されている。
さらに、スリーブ12の先端近傍においては、その内周面がチャック軸11の外径よりも
大きく形成された収納溝12aが穿設されている。この構成により、ばね13の付勢に逆
らってフランジ形状の把手部12bを下方に押下げると、貫通穴11aと収納溝12aと
が連通して鋼球17a,17b,17cが収納溝12aに納まり、貫通穴11aから抜け
落ちない程度に動作することができる。
【0026】
また、図4に示すように、前記スリーブ押さえ14の面取傾斜部14aの延長線により
指定される領域内に、前記スリーブ12の把手部12bが納まるように、把持部12bの
直径、面取傾斜部14aの高さ位置、あるいは面取傾斜部14aの傾斜角が設定されてい
る。この構成により、打撃の勢いにより、ハンマが面取傾斜部14aを滑り落ちても、把
手部12bを破壊することがなくなる。
【0027】
以下、貫入ロッド4をロッドチャック10に装着する方法を説明する。この貫入ロッド
4の周面には、3箇所に係合溝4a,4bが穿設されており、それぞれの係合溝4a,4
bに前記鋼球17a,17b,17cと嵌合するように構成されている。そこで、前述の
とおり、スリーブ12を下方に押下げると、鋼球17a,17b,17cが収納溝12a
に納まるから、チャック軸11に貫入ロッド4を挿入可能となる。このようにスリーブ1
2を押下げた状態で、作業者は、下方から貫入ロッド4を挿入する。このとき、作業者は
、貫入ロッド4の係合溝4a,4bと鋼球17a,17b,17cとを嵌合させるべく、
上方から目視により、位置合わせをする。しかしながら、スリーブ12を押下げた状態で
は、鋼球17a,17b,17cが収納溝12aに収納されているため、上方から鋼球1
7a,17b,17cを確認することができず、装着作業が困難であった。
【0028】
そこで、チャック軸11の先端面には、鋼球17a,17b,17cが位置する箇所に
、位置決め目印18a,18b,18cが刻印されている。これにより、貫入ロッド4の
係合溝4a,4bと鋼球17a,17b,17cとの位置合わせが容易になり、貫入ロッ
ド4を正確かつ迅速に装着することができる。
【0029】
なお、図5に示すように、貫入ロッド4の後端にも、係合溝4a,4bが位置する箇所
に位置決め目印19a,19b,19cを刻印するとよい。このようにすれば、図4に一
点鎖線で示した貫入ロッド4のように、作業者が係合溝4a,4bを上方から確認可能な
位置まで貫入ロッドを持ち上げなくても、係合溝4a,4bの位置を確認することができ
る。そのため、係合溝4a,4bがチャック軸11の内部に位置する高さで位置合わせが
可能となり、さらに貫入ロッド4の装着作業が容易になる。
【符号の説明】
【0030】
1 貫入試験機
2 支柱
2a 案内チェーン
3 昇降台
3a 錘
4 貫入ロッド
4a,4b 係合溝
4d スクリューポイント
5 スプロケット
6 チャック用モータ
7 スプロケット
8 スプロケット
9 無端チェーン
10 ロッドチャック
11 チャック軸
11a 貫通穴
12 スリーブ
12a 収納溝
12b 把手部
13 ばね
14 スリーブ押さえ
14a 面取傾斜面
15a,15b 係合穴
16a,16b 係止ピン
17 弾性リング
17a,17b,17c 鋼球
18a,18b,18c 位置決め目印
19a,19b,19c 位置決め目印
20 昇降ユニット
21 昇降用モータ
21a 駆動軸
22 駆動歯車
23 中間歯車
24 伝達歯車
25 一方向クラッチ
26 伝達軸
27 ロータリエンコーダ
30a,30b アンギュラ玉軸受
31a,31b 円筒ころ軸受
32 ワッシャ型ロードセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に係合溝を有する貫入ロッドと、貫入ロッドが挿通可能な内孔を有する中空のチャ
ック軸と、このチャック軸に沿って往復移動可能かつ常時チャック軸先端側に付勢された
スリーブと、このスリーブのチャック軸先端側への移動を規制するとともに、必要に応じ
て上面が打撃されるスリーブ押さえと、前記チャック軸に配置されて常時前記スリーブに
よりチャック軸の内孔に突出した状態に支持され、前記貫入ロッドの係合溝に嵌合してこ
れを保持する保持部材とを備えて成る貫入試験機のロッドチャックにおいて、
前記チャック軸の先端面には、前記保持部材の配置位置を示す目印が設けてあることを
特徴とする貫入試験機のロッドチャック。
【請求項2】
前記スリーブ押さえは、前記チャック軸の先端がスリーブ押さえの上面から突出しない
程度の厚みに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の貫入試験機のロッドチャ
ック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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