説明

貫通配線基板の製造方法

【課題】貫通配線基板の両面に実装するデバイスの電極配置が多様で且つ高密度である小型のデバイスであっても、実装するデバイス間の電極を自由度高く電気的に接続することが可能な貫通配線基板の製造方法の提供。
【解決手段】第1面と第2面とを有する基板11と;第1面1及び第2面2の間を貫通する貫通孔内に、導電性物質27を充填又は成膜して形成された複数の貫通配線12a,12bと;を備え、貫通配線同士は、互いに離間し、且つ基板の平面視において、重なり部分を少なくとも1つ備え、基板の第1面側又は第2面側からレーザー照射して、貫通孔を形成する領域を改質する工程Aと;前記改質された領域を除去して、貫通孔を形成する工程Bと;を含み、工程Aにおいて、複数の貫通孔形成領域のうち、レーザーの入射面から遠い方の重なり部分をレーザー照射した後に、レーザーの入射面から近い方の重なり部分をレーザー照射する貫通配線基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の内部を貫通する貫通配線を有する貫通配線基板の製造方法に関する。
本願は、2009年07月10日に、日本に出願された特願2009−164001号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板の一方の面である第1面に実装された第1デバイスと、他方の面である第2面に実装された第2デバイスとの間を電気的に接続する方法として、基板の内部を貫通する貫通配線を設ける方法が用いられている。
貫通配線基板の一例として、特許文献1には、基材の厚み方向とは異なる方向に延びる部分を有する微細孔に導電性物質を充填してなる貫通配線を備えた貫通配線基板が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、積層型半導体モジュールが記載されている。チップ本体の一方の面である第1面から他方の面である第2面へ貫通する複数の貫通配線が埋め込み形成された半導体チップの実装において、貫通配線に充填された導電性物質が、貫通孔を形成する基材から抜け落ちることを防止するために、特許文献2に係る積層型半導体モジュールの貫通孔が、チップ本体の主平面と垂直な方向に対して傾けて形成されている。この貫通孔の第1面側の開口と第2面側の開口とが、チップ本体の基板の厚み方向の投影に対して、貫通孔のピッチαの整数倍(N≧1)のずれを持って形成され、隣接する半導体チップ同士で、電極がずれの方向Xに沿ってN個分だけずれて電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特開2006−303360号公報
【特許文献2】日本国特許第3896038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板の一方の面である第1面と他方の面である第2面とに実装されるデバイスが異なるデバイスである場合、デバイスごとの電極配置が異なる。したがって、基板中の貫通配線には、自由度の高い配線設計が求められている。また、各デバイスが基板と対向する面に有する電極の数が多い場合、デバイスの小型化に伴って電極同士の間隔が狭くなる。このとき、貫通配線が複数設けられた貫通配線基板において、貫通配線同士の短絡や電気信号の干渉を避けるために、貫通配線同士の空間的な距離を離す必要がある。このように、電極配置の多様化に加えて、電極の高密度化が一層進みつつある今日、貫通配線基板には、自由度の高い配線設計を実現するための従来にはない貫通配線技術の開発が望まれている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、貫通配線基板の両面に実装するデバイスの電極配置が多様で且つ高密度である小型のデバイスであっても、実装するデバイス間の電極を自由度高く電気的に接続することが可能な貫通配線基板およびその製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の請求項1に記載の貫通配線基板の製造方法は、第1面と第2面とを有する基板と;前記第1面及び前記第2面の間を貫通する貫通孔内に、導電性物質を充填又は成膜することにより形成された複数の貫通配線と;を備え、前記貫通配線同士は、互いに離間し、且つ前記基板の平面視において、重なり部分を少なくとも1つ備える貫通配線基板の製造方法であって、互いに離間し且つ前記基板の平面視において重なり部分を有する複数の貫通孔形成領域を、前記基板の前記第1面側または第2面側からレーザー照射して、前記貫通孔形成領域を改質する工程(A)と;前記改質された貫通孔形成領域を除去して、貫通孔を形成する工程(B)と;を含み、前記工程(A)において、レーザー光は前記基板の表面を透過して該基板の内部に焦点を結び、前記複数の貫通孔形成領域のうち、前記レーザー光の入射面から遠い方の前記重なり部分をレーザー照射して改質した後に、前記レーザー光の入射面から近い方の前記重なり部分をレーザー照射して改質することを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の貫通配線基板の製造方法は、請求項1において、前記第1面側からレーザー照射する場合は、前記貫通孔形成領域において、前記第2面側から前記第1面側へ前記焦点を走査し、前記第2面側からレーザー照射する場合は、前記貫通孔形成領域において、前記第1面側から前記第2面側へ前記焦点を走査することを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の貫通配線基板の製造方法は、請求項1又は2において、前記レーザー光の焦点を、前記入射面を基準として遠い側から近い側へ、一筆書きで走査することを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の貫通配線基板の製造方法は、請求項1〜3の何れか一項において、前記工程(A)において、前記レーザーの入射面から遠い方の前記重なり部分を有する前記貫通孔形成領域の全部をレーザー照射した後に、前記レーザーの入射面から近い方の前記重なり部分を有する貫通孔形成領域の全部をレーザー照射することを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の貫通配線基板の製造方法は、請求項1〜4の何れか一項において、前記貫通孔の形状が、前記基板の断面方向に見て、クランク形状であることを特徴とする。
本発明の請求項6に記載の貫通配線基板の製造方法は、請求項1又は2において、前記貫通孔の形状が、前記基板の断面方向に見て、略Y字形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、互いに離間し且つ基板の平面視において重なり部分を有する複数の貫通配線を備える貫通配線基板の製造方法を提供することができる。
本発明の貫通配線基板内に設けられた前記貫通配線は、例えば、この貫通配線基板の各面に実装する個々のデバイスの電極の位置に合わせて基板内で自由に配することができるので、電極が高密度に配置された小型のデバイスであっても自由に接続することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】本発明の第1実施形態に係る貫通配線基板を示す平面図である。
【図1B】図1Aのa−a線に沿う貫通配線基板の断面図である。
【図1C】図1Aのb−b線に沿う貫通配線基板の断面図である。
【図2A】本発明の第2実施形態に係る貫通配線基板を示す平面図である。
【図2B】図2Aのa−a線に沿う貫通配線基板の断面図である。
【図2C】図2Aのb−b線に沿う貫通配線基板の断面図である。
【図3A】本発明の第3実施形態に係る貫通配線基板を示す平面図である。
【図3B】図3Aのa−a線に沿う貫通配線基板の断面図である。
【図3C】図3Aのb−b線に沿う貫通配線基板の断面図である。
【図4A】本発明の第4実施形態に係る貫通配線基板を示す平面図である。
【図4B】図3Aのa−a線に沿う貫通配線基板の断面図である。
【図4C】図3Aのb−b線に沿う貫通配線基板の断面図である。
【図5A】本発明の第5実施形態に係る貫通配線基板を示す平面図である。
【図5B】図5Aのa−a線に沿う貫通配線基板の断面図である。
【図5C】図5Aのb−b線に沿う貫通配線基板の断面図である。
【図6A】本発明の第6実施形態に係る貫通配線基板を示す平面図である。
【図6B】図6Aのa−a線に沿う貫通配線基板の断面図である。
【図6C】図6Aのb−b線に沿う貫通配線基板の断面図である。
【図7A】本発明にかかる貫通配線基板の製造方法を示す平面図である。
【図7B】図7Aのa−a線に沿う断面図である。
【図7C】図7Aのb−b線に沿う断面図である。
【図8A】本発明にかかる貫通配線基板の製造方法を示す平面図である。
【図8B】図8Aのa−a線に沿う断面図である。
【図8C】図8Aのb−b線に沿う断面図である。
【図9A】本発明にかかる貫通配線基板の製造方法を示す平面図である。
【図9B】図9Aのa−a線に沿う断面図である。
【図9C】図9Aのb−b線に沿う断面図である。
【図10A】本発明に係る貫通配線基板の製造方法を示す平面図である。
【図10B】図10Aのa−a線に沿う断面図である。
【図10C】図10Aのb−b線に沿う断面図である。
【図11A】本発明に係る貫通配線基板の製造方法を示す平面図である。
【図11B】図11Aのa−a線に沿う断面図である。
【図11C】図11Aのb−b線に沿う断面図である。
【図12A】本発明に係る貫通配線基板の製造方法を示す平面図である。
【図12B】図12Aのa−a線に沿う断面図である。
【図12C】図12Aのb−b線に沿う断面図である。
【図13A】本発明にかかる貫通配線基板の製造方法を示す平面図である。
【図13B】図13Aのa−a線に沿う断面図である。
【図13C】図13Aのb−b線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1A〜図6Cは、本発明の実施形態にかかる貫通配線基板19を示す平面図および断面図である。各図面に示すように、本発明の実施形態に係る貫通配線基板19はいずれも、単一の基板11を構成する面のうち、2面以上を貫通する貫通配線を複数備えている。さらに、各貫通配線基板19は、前記基板11の表裏をなす2つの面(第1面及び第2面)の重なり方向から見て、前記貫通配線同士が互いに離間しつつ重なっている重なり部分13(交差部)を少なくとも1つ備えている。すなわち、貫通配線基板19の貫通配線は、お互いに離間し、且つ基板の平面視において重なり部分13を少なくとも一つ備えている。
すなわち、本発明の実施形態に係る貫通配線基板19はいずれも、前記基板11の表裏をなす2つの面の重なり方向から見て、立体的に交差するか又は立体的に重なる複数の貫通配線を備えている。ここで、「立体的に重なる」場合は、「立体的に交差する」場合を含む概念である。なお、「立体的に重なるが、立体的に交差しない」場合としては、例えば、この複数の貫通配線が立体的に平行して配された場合が挙げられる。また、前記表裏をなす2つの面は、基板11を構成する複数の面のうち、最大の面積をもつ第1面1および第2面2を指す。
前記複数の貫通配線を基板11内に配することにより、貫通配線基板19の各面に実装するデバイスの電極の位置に合わせた自由度の高い配線設計が可能となる。このため、電極が高密度に配置された、互いに異なる電極配置を有するデバイス間を、本発明にかかる貫通配線基板19を介して電気的に接続することが可能となる。
【0011】
また、本発明にかかる貫通配線基板19は、その内部に流路を有することが好ましい。この流路は、例えば、冷却用流体を流通させる流路として用いられる。この場合、実装されるデバイスが発熱量の大きいデバイスであっても、これらを効果的に冷却することができる。この流路は、基板11の全体に亘って設けられてもよく、また、実装されるデバイスの発熱部と重なる位置に集中的に設けられてもよい。
【0012】
なお、本発明の実施形態にかかる貫通配線基板19に配された貫通配線及び流路の形状は特に制限されず、例えば直線部、曲線部、屈曲部、折り返し部等を含む形状が挙げられる。これらの貫通配線及び流路の形状は、適宜組み合わせることができる。
【0013】
図1A〜図1Cに、本発明の第1実施形態に係る貫通配線基板19A(19)を示す。図1Aは、貫通配線基板19Aの平面図である。図1Bは、図1Aの平面図のa−a線に沿う貫通配線基板19Aの断面図である。図1Cは、図1Aの平面図のb−b線に沿う貫通配線基板19Aの断面図である。
この貫通配線基板19Aは、基板11に配された貫通配線12aおよび12bを備える。貫通配線12aおよび12bは、第1面1と第2面2との重なり方向から見て、前記貫通配線同士が互いに離間しつつ重なっている重なり部分13を有する。ここで、第1面とは、図1Aの紙面手前側の面(表面)を示し、第2面とは、紙面奥側の面(裏面)を示す。これを言い換えると、貫通配線12aおよび12bは、基板11の厚み方向に見て、互いに離間しつつ重なっている重なり部分13を有する。ここで、基板11の厚み方向とは、前記基板11の表裏をなす第1面1から第2面2への方向(又はその逆方向)を示す。なお、図1Aでは便宜上、この重なり部分13を円で示したが、より厳密にいえば、この重なり部分13は、基板11の厚み方向に見て、貫通配線12aと貫通配線12bとの交点のみを指す。これらのことは、後述する図2A〜13Cにおいても同様である。
【0014】
図1A〜図1Cに示すように、前記貫通配線12aおよび12bは共にクランク形状である。
図1A及び図1Bに示すように、貫通配線12aの一端は、第1面1に露呈する第1導電部112aである。なお、貫通配線12aの他端は、第2面2に露呈する第2導電部112bである。その中、貫通配線12aを構成する直線部が、貫通配線12aの上記一端(第1導電部)から基板11の厚み方向に延びて、略直角の第1屈曲部に達する。この略直角の第1屈曲部から基板11の両面(第1面及び第2面)に平行して、この直線部が継続して延びて略直角の第2屈曲部に達する。この略直角の第2屈曲部から基板11の厚み方向に、この直線部が継続して延びて、第2面2に露呈する第2導電部に達する。
図1A及び図1Cに示すように、貫通配線12bの形状も貫通配線12aと同様のクランク形状である。貫通配線12bの第1導電部は、第1面1において、貫通配線12aの第1導電部と異なる位置に設けられている。また、貫通配線12bの略直角の第1屈曲部は、貫通配線12aの略直角の第1屈曲部よりも、第1面1から、より近い位置(より表面側)に設けられている。さらに、貫通配線12bの略直角の第1屈曲部から略直角の第2屈曲部へと直線部が伸びる方向が、貫通配線12aの略直角の第1屈曲部から略直角の第2屈曲部への延びる方向とは90度異なる。このため、貫通配線12aと貫通配線12bとは、互いに接触して干渉することなく、基板11の2つの面の重なり方向から見て(平面視で)、互いに離間しつつ重なっている重なり部分13において立体的に交差して重なる。
【0015】
図2A〜図2Cに、本発明の第2実施形態に係る貫通配線基板19B(19)を示す。図2Aは貫通配線基板19Bの平面図である。図2Bは、図2Aの平面図のa-a線に沿う貫通配線基板19Bの断面図である。図2Cは、図2Aの平面図のb-b線に沿う貫通配線基板19Bの断面図である。
この貫通配線基板19Bは、基板11に配された貫通配線31および32を備える。貫通配線31および32は、図2Aに示すように、前記基板11の表裏をなす第1面1と第2面2との重なり方向(基板11の厚み方向)から見て、互いに離間しつつ重なっている重なり部分13を有する。
【0016】
図2B及び図2Cに示すように、前記貫通配線31は略Y字形状であり、前記貫通配線32はクランク形状である。
貫通配線31は、第1面1に露呈する第1導電部と第1面1に露呈する第2導電部と、第2面2に露呈する第3導電部とを有する。貫通配線31を構成する直線部は、この第1導電部から基板11の厚み方向に延びて、略直角の第1屈曲部に達する。この略直角の第1屈曲部から基板11の両面に平行して、直線部が継続して延びて分岐部に達し、この分岐部を越えてさらに延びて略直角の第2屈曲部に達する。また、この貫通配線31を構成する直線部が、第2導電部から基板11の厚み方向に延びて、この略直角の第2屈曲部に達する。さらに、この分岐部から基板11の厚み方向に直線部が延びて第2面2に露呈する第3導電部に達する。
貫通配線32の一端は、第1面1に露呈する第1導電部である。貫通配線32を構成する直線部が、この一端から基板11の厚み方向に延びて略直角の第1屈曲部に達する。この略直角の第1屈曲部から基板11の両面に平行して、直線部が継続して延びて略直角の第2屈曲部に達し、この略直角の第2屈曲部から基板11の厚み方向に、直線部が継続して延びて第2面2に露呈する第2導電部に達する。この第2導電部は、貫通配線32の他端である。
貫通配線31の第1導電部および第2導電部は、第1面1において、貫通配線32の第1導電部と異なる位置に設けられている。また、貫通配線31の略直角の第1屈曲部は、貫通配線32の略直角の第1屈曲部よりも、第1面1からより遠い位置(より奥側)に設けられている。さらに、貫通配線32の略直角の第1屈曲部から略直角の第2屈曲部へと直線部が伸びる方向が、貫通配線31の略直角の第1屈曲部から略直角の第2屈曲部への延びる方向とは90度異なる。このため、貫通配線31と貫通配線32とは、互いに接触して干渉することなく、基板11の2つの面の重なり方向から見て、重なり部分13において立体的に交差して重なる。
【0017】
図3A〜図3Cに、本発明の第3実施形態に係る貫通配線基板19C(19)を示す。図3Aは貫通配線基板19Cの平面図である。図3Bは、図3Aの平面図のa-a線に沿う貫通配線基板19Cの断面図である。図3Cは、図3Aの平面図のb-b線に沿う貫通配線基板19Cの断面図である。
この貫通配線基板19Cは、基板11に配された貫通配線41a、41b、および41cを備える。貫通配線41a、41b、および41cは、図3Aに示すように、前記基板11の表裏をなす第1面1と第2面2との重なり方向(基板11の厚み方向)から見て、互いに離間しつつ重なっている重なり部分13を有する。
【0018】
図3B及び図3Cに示すように、前記貫通配線41a、41b、および41cは全てクランク形状である。
貫通配線41aの一端は、第1面1に露呈する第1導電部である。貫通配線41aを構成する直線部が、この一端(第1導電部)から基板11の厚み方向に延びて、略直角の第1屈曲部に達する。この略直角の第1屈曲部から基板11の両面に平行して、この直線部が継続して延びて、略直角の第2屈曲部に達する。この略直角の第2屈曲部から基板11の厚み方向に、この直線部が継続延びて第2面2に露呈する第2導電部に達する。この第2の導電部は、貫通配線41aの他端である。
貫通配線41bの形状も貫通配線41aと同様のクランク形状である。この貫通配線41bの第1導電部は、第1面1において、貫通配線41aおよび41cのそれぞれの第1導電部とは異なる位置に設けられている。また、貫通配線41bの略直角の第1屈曲部は、貫通配線41aの略直角の第1屈曲部よりも、第1面1から、より遠い位置(より奥側)に設けられている。さらに、貫通配線41bの略直角の第1屈曲部から略直角の第2屈曲部へと直線部が伸びる方向が、貫通配線41aおよび41cの略直角の第1屈曲部から略直角の第2屈曲部への伸びる方向とは45度異なる。このため、貫通配線41aおよび41cと貫通配線41bとは、互いに接触して干渉することなく、基板11の2つの面の重なり方向から見て、重なり部分13において立体的に交差して重なる。
貫通配線41cの形状も貫通配線41aおよび41bと同様のクランク形状である。貫通配線41cの第1導電部は、第1面1において、それぞれ貫通配線41aおよび41bの第1導電部と異なる位置に設けられている。また、貫通配線41cの略直角の第1屈曲部は、貫通配線41bの略直角の第1屈曲部よりも、第1面1からより遠い位置(より奥側)に設けられている。さらに、貫通配線41cの略直角の第1屈曲部から略直角の第2屈曲部へと直線部が伸びる方向が、貫通配線41aおよび41bの略直角の第1屈曲部から略直角の第2屈曲部への伸びる方向とは90度および45度それぞれ異なる。このため、貫通配線41aおよび41bと貫通配線41cとは、互いに接触して干渉することなく、基板11の2つの面の重なり方向から見て、重なり部分13において立体的に交差して重なる。
【0019】
図4A〜図4Cに、本発明の第4実施形態に係る貫通配線基板19D(19)を示す。図4Aは貫通配線基板19Dの平面図である。図4Bは、図4Aの平面図のa-a線に沿う貫通配線基板19Dの断面図である。図4Cは、図4Aの平面図のb-b線に沿う貫通配線基板19Dの断面図である。
この貫通配線基板19Dは、基板11に配された貫通配線51a、51b、および52を備える。貫通配線51aおよび52は、図4Aに示すように、前記基板11の表裏をなす第1面1と第2面2との重なり方向(基板11の厚み方向)から見て、互いに離間しつつ重なっている重なり部分13a(13)を有する。また、貫通配線51bおよび52は、図4Aに示すように、第1面1と第2面2との重なり方向(基板11の厚み方向)から見て、互いに離間しつつ重なっている重なり部分13b(13)を有する。
【0020】
図4B及び図4Cに示すように、前記貫通配線51aおよび51bは共にクランク形状であり、前記貫通配線52は直線状である。
貫通配線51aの一端は、第1面1に露呈する第1導電部である。貫通配線51aを構成する直線部が、この一端(第1導電部)から基板11の厚み方向に延びて略直角の第1屈曲部に達する。この略直角の第1屈曲部から基板11の両面に平行して、この直線部が継続して延びて、略直角の第2屈曲部に達する。この略直角の第2屈曲部から基板11の厚み方向に、この直線部が継続して延びて、第2面2に露呈する第2導電部に達する。この第2導電部は、貫通配線51aの他端である。
貫通配線51bの形状も貫通配線51aと同様のクランク形状である。貫通配線51bの第1導電部は、第1面1において、貫通配線51aの第1導電部とは異なる位置に設けられている。また、貫通配線51bの略直角の第1屈曲部と貫通配線51aの略直角の第1屈曲部とは、第1面1から同じ位置(距離)に設けられている。さらに、貫通配線51bの略直角の第1屈曲部から略直角の第2屈曲部へと伸びる直線部の方向および距離が、貫通配線51aの略直角の第1屈曲部から略直角の第2屈曲部へと伸びる直線部の方向および距離と同じである。このため、貫通配線51aと51bとは、互いに接触して干渉することがない。
また、貫通配線52の一端は、第1面1に露呈する第1導電部である。貫通配線52を構成する直線部が、この一端(第1導電部)から基板11の厚み方向と傾斜する方向に延びて、第2面2に露呈する第2導電部に達する。この第2導電部は、貫通配線52の他端である。貫通配線52の第1導電部および第2導電部は、第1面1または第2面2において、貫通配線51aおよび51bのそれぞれの第1導電部および第2導電部とは異なる位置に設けられている。また、貫通配線52の重なり部分13aは、貫通配線51aの重なり部分13aよりも、第1面1から近い距離に位置し(図4C)、貫通配線52の重なり部分13bは、貫通配線51bの重なり部分13bよりも、第1面1から遠い距離に位置している(図4C)。このため、貫通配線51aおよび51bと貫通配線52とは、互いに接触して干渉することなく、第1面1と第2面2との重なり方向(基板11の厚み方向)から見て、重なり部分13aおよび13bにおいて、それぞれ立体的に交差して重なる。
【0021】
図5A〜図5Cに、本発明の第5実施形態に係る貫通配線基板19E(19)を示す。図5Aは、貫通配線基板19Eの平面図である。図5Bは、図5Aの平面図のa-a線に沿う貫通配線基板19Eの断面図である。図5Cは、図5Aの平面図のb-b線に沿う貫通配線基板19Eの断面図である。
この貫通配線基板19Eは、基板11に配された貫通配線12aおよび12b、ならびにランド部61および62を備える。
貫通配線12aおよび12bは、図5Aに示すように、前記基板11の表裏をなす第1面1と第2面2との重なり方向(基板11の厚み方向)から見て、互いに離間しつつ重なっている重なり部分13を有する。
【0022】
図5B及び図5Cに示すように、前記貫通配線12aおよび12bは共にクランク形状であり、その形状の説明は、前記図1A〜図1Cに示した貫通配線基板19Aにおける貫通配線12aおよび12bの説明と同様である。
貫通配線12aの第1導電部および第2導電部上には、円形のランド部61が設けられている。貫通配線12bの第1導電部および第2導電部上には、円形のランド部62が設けられている。
前記ランド部61および62を設けることにより、はんだバンプ等を用いて基板11の2つの面にデバイス等を実装することができる。
【0023】
前記ランド部61および62は、一層以上の導電性薄膜からなる。このランド部を形成する材料は特に限定されず、例えば金(Au)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)等が挙げられる。これらを用いて、所望の形状のランド部を公知の方法によって形成することができる。
【0024】
図6A〜図6Cに、本発明の第6実施形態に係る貫通配線基板19F(19)を示す。図6Aは貫通配線基板19Fの平面図である。図6Bは、図6Aの平面図のa-a線に沿う貫通配線基板19Fの断面図である。図6Cは、図6Aの平面図のb-b線に沿う貫通配線基板19Fの断面図である。
この貫通配線基板19Fは、基板11に配された貫通配線12aおよび12b、ならびに流路71aおよび71bを備える。
貫通配線12aおよび12bは、図6Aに示すように、前記基板11の表裏をなす第1面1と第2面2との重なり方向(基板11の厚み方向)から見て、互いに離間しつつ重なっている重なり部分13を有する。
【0025】
図6A〜図6Cに示すように、前記貫通配線12aおよび12bは共にクランク形状であり、その形状の説明は、前記図1A〜図1Cに示した貫通配線基板19Aにおける貫通配線12aおよび12bの説明と同様である。
前記流路71aおよび71bは共に直線状であり、基板11の両面(第1面及び第2面)に平行して、貫通配線12aに沿って配され、基板11の側面(基板11の厚み方向の断面)を貫通している。
前記流路71aおよび71bは、例えば冷却用流体を流通させる流路として用いられることができる。その他、前記流路71aおよび71bは、DNA(核酸)、タンパク質、脂質などの生体溶液を流通させる流路として用いることもできる。例えば、前記流路71aおよび71bを冷却用流体の流路として用いられる場合、貫通配線基板19Fを液冷することができ、熱発生の大きいデバイスを基板上に実装した場合であっても、このデバイスを効果的に冷却することができる。なお、冷却用冷媒としては、例えば水(HO)、空気等が挙げられる。
本実施形態に係る貫通配線基板は、電極が高密度に配置された小型のデバイスであっても、例えばその内部に冷却用流体の流路を有する場合、温度上昇を効果的に低減することが可能になる。
前記流路71aおよび71bを基板内11に形成する方法は、後述するように、前記貫通配線12aおよび12bとなる貫通孔を形成する方法と同様の方法で行うことができる。
なお、図6Cに示すように、前記流路71aおよび71bは、前記貫通配線12aより、前記基板11の第1面1から近い位置に設けられているが、これに限定されない。前記流路71aおよび71bは、前記貫通配線12aと同じ位置、すなわち前記基板11の第1面1から同じ位置に設けられることも可能である。なお、本実施形態において、前記流路71aおよび71bは、前記基板11の両面に平行して、前記貫通配線12aに沿って設けられている。しかしながら、前記流路71aおよび71bは、前記基板11の両面に平行して、前記貫通配線12bに沿って設けられることも可能である。
【0026】
以上で示した、本発明の貫通配線基板19における基板11の材料としては、例えばガラス、サファイア、プラスチック、セラミックス等の絶縁体や、シリコン(Si)等の半導体が挙げられる。これらの材料のなかでも、絶縁性の石英ガラスが好ましい。基板材料が石英ガラスであると、後述する貫通孔の内壁に絶縁層を形成する必要がなく、浮遊容量成分の存在等による高速伝送の阻害要因がなく、冷却用液体の流路の安定性が高い、等の利点がある。
この基板の両面に実装されるデバイスとして、シリコン基板に素子を形成した電子デバイスが考えられる。この際に、この電子デバイスとこの基板との間の線膨張係数差が大きい場合、実装時の温度による両者の伸び量が大きく異なる場合がある。その結果、デバイスの端子と基板のパッドとの間に位置ずれが生じ、精度の高い接続が困難となり、場合によっては接続そのものが困難となる。本実施形態に係る基板は、シリコンやガラスを用いることができるため、この電子デバイスとこの基板との間の線膨張係数差を小さくすることができる。従って、デバイス端子と基板のパッドとの位置ずれを抑制することができ、高精度の接続を実現することができる。
基板11の厚さ(第1面1から第2面2までの距離)としては、約150μm〜1mmの範囲で適宜設定できる。
【0027】
本発明の貫通配線基板に備えられる貫通配線のパターンや断面形状は、以上の例示に限定されるものではなく、適宜設計することが可能である。また、本発明の貫通配線基板に備えられる冷却用液体の流路のパターン(経路)や断面形状は、以上の例示に限定されるものではなく、適宜設計することが可能である。
【0028】
次に、貫通配線基板19を製造する方法の一例として、図7A〜図10C、および図11A〜13Cに、貫通配線基板19Aを製造する方法を示す。
ここで、図7A〜10Cおよび図11A〜13Cは、貫通配線基板19Aを製造する基板11の平面図および断面図である。その中、図7A、図8A、図9A、図10A、図11A、図12A、図13Aは基板11の平面図であり、図7B、図8B、図9B、図10B、図11B、図12B、図13Bは、それぞれの平面図のa-a線に沿う基板11の断面図であり、図7C、図8C、図9C、図10C、図11C、図12C、図13Cは、それぞれの平面図のb-b線に沿う基板11の断面図である。
【0029】
<工程A>
まず、図7A〜図7Cに示すように、基板11にレーザー光21を照射して、基板11内に基板11の材料が改質されてなる改質部23aを形成する。改質部23aは、貫通配線12aを形成する貫通孔26a(図9A)となる領域(貫通孔形成領域)に設けられる。
【0030】
基板11の材料としては、例えばガラス、サファイア、プラスチック、セラミックス等の絶縁体や、シリコン(Si)等の半導体が挙げられる。これらの材料のなかでも、絶縁性の石英ガラスが好ましい。基板材料が石英ガラスであると、後述する貫通孔の内壁に絶縁層を形成する必要がなく、浮遊容量成分の存在等による高速伝送の阻害要因がなく、冷却用液体の流路の安定性が高い、等の利点がある。
基板11の厚さ(第1面1から第2面2までの距離)としては、約150μm〜1mmの範囲で適宜設定できる。
【0031】
レーザー光21は基板11の第1面1側から照射され、基板11内の所望の位置で焦点22を結ぶ。焦点22を結んだ位置で、この基板11の材料が改質される。したがって、レーザー光21を照射しながら焦点22の位置を順次ずらして移動(走査)して、貫通孔26aとなる領域の全部に対して、焦点22を結ぶことにより、改質部23aを形成することができる。
【0032】
レーザー光21の光源としては、例えばフェムト秒レーザーを挙げることができる。このレーザー光21を照射することによって、例えば径が数μm〜数十μmである改質部23a(23b)を得ることができる。また、基板11の内部におけるレーザー光21の焦点22を結ぶ位置を制御することにより、所望の形状を有する改質部23a(23b)を形成することができる。なお、一般に、改質された部分のレーザーの透過率は、改質されていない部分のレーザーの透過率と異なり、改質された部分を透過させたレーザー光の焦点位置を制御することは通常困難である。
【0033】
図7Bの断面図に示した矢印は、レーザー光21の焦点22を走査する向きを表す。すなわち、矢印αは、第2面2(第2面における開口部)から略直角の第2屈曲部(第2の略直角部)までこの焦点22を走査することを表す。矢印βは、この略直角の第2屈曲部から略直角の第1屈曲部までこの焦点22を走査することを表す。矢印γは、この略直角の第1屈曲部から第1面1(第1面における開口部)までこの焦点22を走査することを表す。このとき、矢印α、β、γの順で一筆書きの走査を行うことが、製造効率上好ましい。
【0034】
なお、一筆書きの走査を行わない場合は、矢印βに関しては、走査する向きを逆方向にすることができる。一方、矢印αおよびγで表した走査の向きは逆方向にしない方が好ましい。逆方向に走査した場合、基板11の厚み方向に見て、第1面1側(手前)から第2面2側(奥)に向けて走査することになるが、手前で改質された部分をレーザー光21が透過して奥側で焦点22を結ぶことが困難になることがある。これは改質部のレーザー透過率が変化してレーザー光21を散乱することがあるためである。従って、基板11の第1面1側からレーザー光21が入射される場合、奥側の第2面2側から手前側の第1面1側への順に、焦点22を結びながら走査することが可能である。基板11の第2面2側からレーザー光21が入射される場合、第1面1側が奥側になり、この第1面1側から第2面2側への順に、焦点22を結びながら走査することが可能である。
【0035】
次に、図8A〜図8Cに示すように、基板11にレーザー光21を照射して、基板11内に基板11の材料が改質されてなる改質部23bを形成する。改質部23bは、貫通孔26bとなる領域に設けられる。
レーザー光21を照射しながら焦点22の位置を順次ずらして移動(走査)して、貫通孔26bとなる領域の全部に対して、焦点22を結ぶことにより、改質部23bを形成することができる。
【0036】
図8Cの断面図に示した矢印は、レーザー光21の焦点22を走査する向きを表す。すなわち、矢印αは、第2面2(第2面における開口部)から略直角の第2屈曲部(第2の略直角部)までこの焦点22を走査することを表す。矢印βは、この略直角の第2屈曲部から略直角の第1屈曲部(第1の略直角部)までこの焦点22を走査することを表す。矢印γは、この略直角の第1屈曲部から第1面1(第1面における開口部)までこの焦点22を走査することを表す。このとき、矢印α、β、γの順で一筆書きの走査を行うことが、製造効率上好ましい。なお、一筆書きの走査を行わない場合は、矢印βだけに関しては、走査する向きを逆方向にすることができる。一方、矢印αおよびγで表した走査の向きは逆方向にしない方が好ましい。基板11の第2面2側からレーザー光21が入射される場合、この第1面1側から第2面2側への順に、焦点22を結びながら走査することも可能である。
【0037】
このように改質部23aおよび23bが形成された基板11を、その厚み方向に見たとき、改質部23aと改質部23bとが互いに離間しつつ重なっている重なり部分13において、改質部23aが第1面1から遠い方の重なり部分を有し、改質部23bが第1面1から近い方の重なり部分を有する。
【0038】
前記改質部23aおよび23bを形成する方法は、改質部23aの重なり部分13を先に形成して、改質部23bの重なり部分13を後に形成する方法であれば特に制限されない。すなわち、基板11の第1面1側からレーザー光21が入射される場合、第1面1(レーザー光21の入射側)から遠い方に重なり部分を有する改質部を形成した後、第1面1(レーザー光21の入射側)から近い方に重なり部分を有する改質部を形成すればよい。
例えば、図7A〜図8Cを示して前述したように、前記基板11の厚み方向に見て互いに離間しつつ重なっている重なり部分13を有する貫通孔26aおよび貫通孔26bとなる領域のうち、レーザーが入射する第1面1から遠い方の重なり部分を有する貫通孔26aとなる領域(貫通配線形成領域)に対応する改質部23aの全部を先にレーザー照射して改質する。その後、前記第1面1から近い方の重なり部分を有する貫通孔26bとなる領域(貫通配線形成領域)に対応する改質部23bの全部を後でレーザー照射して改質する方法が挙げられる。
【0039】
また、図11A〜13Cを示して後述するように、改質部23bの重なり部分13を除いた部分(改質部23b−1および改質部23b−2)を先に形成し、つづいて改質部23aの全部を形成し、最後に改質部23bの重なり部分13を形成することによって、改質部23aおよび改質部23bを形成する方法も挙げられる。この方法は、前記基板11の厚み方向に見て互いに離間しつつ重なっている重なり部分13を有する貫通孔26aおよび貫通孔26bとなる領域のうち、レーザーが入射する第1面1から遠い方の重なり部分(貫通孔26aの重なり部分13)を先にレーザー照射して改質し、前記第1面1から近い方の重なり部分(貫通孔26bの重なり部分13)を後でレーザー照射して改質する方法の一例である。
他の一例としては、改質部23aの重なり部分13を先に形成し、つづいて改質部23bの重なり部分13を形成し、その後、改質部23aの重なり部を除いた部分及び改質部23bの重なり部を除いた部分を形成する方法が挙げられる。すなわち、入射するレーザー光が改質した部分を透過しない限り、改質部23a及び23bを形成する順番を適宜調整することができる。言い換えると、レーザー光が入射される面から遠い重なり部分さえ先に形成すれば、他の部分の形成の順番には特に限定がない。
【0040】
以下に、図11A〜13Cに示す方法を説明する。まず、図11A〜図11Cにおいて、基板11にレーザー光21を照射して、基板11内に基板11の材料が改質されてなる改質部23b−1および改質部23b−2を形成する。改質部23b−1および改質部23b−2は、貫通孔26bとなる領域のうち、下記の部分にそれぞれ形成される。
改質部23b−1は、貫通孔26bとなる領域のうちの、第2面2(第2面における開口部)から略直角の第2屈曲部までの部分と、この略直角の第2屈曲部から位置25aまでの部分とからなる部分に形成される。改質部23b−2は、貫通孔26bとなる領域のうちの、位置25bから略直角の第1屈曲部までの部分と、この略直角の第1屈曲部から第1面1(第1面における開口部)までの部分とからなる部分に形成される。位置25aから位置25bまでの部分は、貫通孔26bの重なり部分13に対応する。
【0041】
図11Cの断面図に示した矢印は、レーザー光21の焦点22を走査する向きを表す。すなわち、矢印αは、第2面2(第2面における開口部)から略直角の第2屈曲部までこの焦点22を走査することを表す。矢印β1は、この略直角の第2屈曲部から位置25aまでこの焦点22を走査することを表す。矢印β2は、位置25bから略直角の第1屈曲部まで、この焦点22を走査することを表す。矢印γは、この略直角の第1屈曲部から第1面1(第1面における開口部)まで、この焦点22を走査することを表す。このとき、矢印α、β1、β2、γの順で走査を行うことが、製造効率上好ましい。なお、矢印β1およびβ2だけに関しては、走査する向きを逆方向にすることができる。一方、矢印αおよびγで表した走査の向きは逆方向にしない方が好ましい。
【0042】
次に、図12A〜12Cに示すように、基板11にレーザー光21を照射して、基板11内に基板11の材料が改質されてなる改質部23aを形成する。改質部23aは、貫通孔26aとなる領域に形成される。
レーザー光21を照射しながら焦点22の位置を順次ずらして移動(走査)して、貫通孔26aとなる領域の全部に対して、焦点22を結ぶことにより、改質部23aを形成することができる。このとき、貫通孔26bの重なり部分13となる部分に対応する改質部23bの重なり部分13は未だ形成されていない。したがって、レーザー光21は、この改質前の改質部23bの重なり部分13を透過して、貫通孔26aの重なり部分13となる部分に対応する改質部23aの重なり部分13に焦点22を結ぶことができる。
【0043】
図12Bの断面図に示した矢印は、レーザー光21の焦点22を走査する向きを表す。すなわち、矢印αは、第2面2(第2面における開口部)から略直角の第2屈曲部まで、この焦点22を走査することを表す。矢印βは、この略直角の第2屈曲部から略直角の第1屈曲部まで、この焦点22を走査することを表す。矢印γは、この略直角の第1屈曲部から第1面1(第1面における開口部)まで、この焦点22を走査することを表す。このとき、矢印α、β、γの順で一筆書きの走査を行うことが、製造効率上好ましい。なお、一筆書きの走査を行わない場合は、矢印βだけに関しては、走査する向きを逆方向にすることができる。一方、矢印αおよびγで表した走査の向きは逆方向にしない方が好ましい。
【0044】
つづいて、図13A〜13Cに示すように、基板11にレーザー光21を照射して、基板11内に基板11の材料が改質されてなる改質部23bの重なり部分13を形成する。改質部23bの重なり部分13は、貫通孔26bとなる領域のうちの、位置25aから位置25bまでの部分に形成される。
レーザー光21を照射しながら焦点22の位置を順次ずらして移動(走査)して、貫通孔26bとなる領域のうち、位置25aから位置25bまでの部分に焦点22を結ぶことにより、改質部23bの重なり部分13を形成することができる。このとき、既に形成されている前記改質部23b−1および改質部23b−2と、改質部23bの重なり部13とをスムーズに繋ぐようにレーザー光21を照射することによって、貫通孔26bとなる領域の全部に対応する改質部23bを形成することができる。
【0045】
図13Cの断面図に示した矢印は、レーザー光21の焦点22を走査する向きを表す。すなわち、矢印β3は、位置25aから位置25bまで、この焦点22を走査することを表す。なお、矢印β3で表した走査の向きは、逆方向にすることができる。
【0046】
以上のように、図7A〜図8Cで示した方法、または図11A〜13Cで示した方法によって、改質部23aおよび23bを形成した基板11を得ることができる。
【0047】
上述した本発明にかかる貫通配線基板19の製造方法の工程(A)においては、基板11の厚み方向に見て重なり部分13を有する貫通孔26aおよび貫通孔26bとなる領域の全部を、基板11の第1面1側からレーザー照射することにより改質して、改質部23aおよび23bを形成した。しかし、所望に応じて、基板11の第2面2側からもレーザー照射して、改質部23aおよび23bを形成することができる。この場合、改質部23bの重なる部分13については第1面1側からレーザー照射すればよく、改質部23aの重なる部分13については第2面2側からレーザー照射すればよい。すなわち、この基板11の厚み方向に見て互いに離間しつつ重なっている重なり部分13を有する複数の貫通孔26aおよび貫通孔26bとなる領域のうち、任意の部分について、第1面1に近い部分には第1面1側からレーザーを照射し、第2面2に近い部分には第2面2側からレーザーを照射して改質することによって、改質部23aおよび23bを形成することができる。この場合、レーザー装置を基板11の2つの面側にそれぞれ1機ずつ設置することが可能である。あるいは、1機のレーザー装置を基板11の第1面1側と第2面2側とで往来させることにより、照射することも可能である。あるいは、1機のレーザー装置を固定して、基板11の表裏を返して、第1面1と第2面2との位置関係を入れ換えれることによって、照射することもできる。
【0048】
<工程B>
図9A〜図9Cに示すように、前記改質部23aおよび23bを形成した基板11をエッチング液(薬液)25に浸漬して、改質部23aおよび23bをエッチング(ウエットエッチング)することにより基板11から除去する。その結果、改質部23aおよび23bが存在した部分に、貫通孔26aおよび26bが形成される。本実施形態では基板11の材料として石英ガラスを用い、エッチング液25としてフッ酸(HF)を主成分とする溶液を用いた。このエッチングは、基板11の改質されていない部分に比べて改質部23aおよび23bが非常に速くエッチングされる現象を利用するものであり、結果として改質部23aおよび23bの形状に応じた貫通孔26aおよび26bを形成することができる。この段階で、貫通孔26aの一端は、基板の第1面に露呈する第1開口部226aである。貫通孔26aの他端は、基板の第2面に露呈する第2開口部226bである。この貫通孔26aに導電性物質を充填又は成膜することによって、この第1開口部226aに第1導電部112aが形成され、第2開口部226bに第2導電部112bが形成される。
【0049】
前記エッチング液25は特に限定されず、例えばフッ酸(HF)を主成分とする溶液、フッ酸に硝酸等を適量添加したフッ硝酸系の混酸等を用いることができる。また、基板11の材料に応じて、他の薬液を用いることもできる。
【0050】
基板11内に形成された貫通孔は、後述の工程(C)において、この貫通孔に導電性物質を充填又は成膜することによって、貫通配線を形成することができる。また、基板11内に形成された貫通孔に冷媒を流すことによって、冷却用の流路とすることができる。
【0051】
<工程C>
図10A〜図10Cに示すように、前記貫通孔26aおよび26bが形成された基板11において、貫通孔26aおよび26bに導電性物質27を充填又は成膜して貫通配線12aおよび12bを形成する。この導電性物質27としては、例えば金錫(Au−Sn)、銅(Cu)等が挙げられる。この導電性物質27を作成する方法としては、溶融金属吸引法、超臨界成膜法などを適宜用いることができる。
この基板11に前記流路を形成する場合には、この流路内に導電性物質が侵入しないよう、この流路の開口部にレジスト等の保護層を設けて、一時的にこの開口部を閉じることが好ましい。このレジストは、例えば樹脂レジストや無機系材料の薄膜などを用いることができる。この保護層を設けることにより、この流路内に導電性物質が侵入することを防ぐことができる。この保護層は、貫通孔への導電性物質の充填または成膜が終わった後に、除去されることができる。
【0052】
さらに必要に応じて、図5A〜図5Cに示すように、貫通配線12aおよび12bの開口部上にランド部61および62をそれぞれ形成してもよい。ランド部61および62の形成方法は、めっき法、スパッタ法などを適宜用いることができる。
【0053】
前記工程(B)によって形成された貫通孔に流す冷媒としては、水、空気等が挙げられる。冷媒が空気である場合は、この基板11を空冷することができ、冷媒が水である場合は、この基板11を液冷することができる。
冷媒である空気を貫通孔に流す方法は、ポンプ等を適宜外部に接続することにより、水等を流通することができる。
【0054】
流路を基板内に備える貫通配線基板の製造方法として、図6A〜図6Cに示した流路71aおよび71bを有する貫通配線基板19Fを製造する方法を例示する。
まず、基板11にレーザー光21を照射して、基板11内に基板11の材料が改質されてなる改質部を形成する。この改質部は、貫通配線12a及び12b、並びに流路71a及び71bとなる領域にそれぞれ形成される。
レーザー光21を照射しながら焦点22の位置を順次ずらして移動(走査)して、貫通配線12a及び12b、並びに流路71a及び71bとなる領域の全部に対して、焦点22を結ぶことにより、この改質部を形成することができる。このとき、このレーザー照射は、基板11の第1面1側から行なわれる。前述したように、このレーザー光は、必要に応じて、第2面2側、又は第1面1と第2面2との両側から照射することも可能である。
【0055】
その第1面1側だけからレーザーを照射する方法を、図6A〜図6Cに示した貫通配線基板19Fを例として、以下に説明する。
まず、基板11の厚み方向に見たとき、流路71aおよび71bと貫通配線12aとは、互いに離間しつつ重なっている重なり部分を有さない。したがって、貫通配線12aとなる改質部と流路71aおよび71bとなる改質部とは、その形成の順番に特に限定がなく、どちらを先に形成してもよい。
つぎに、基板11の厚み方向に見たときの貫通配線12bとなる改質部と、貫通配線12a、流路71a、及び流路71bとなる各改質部との、互いの重なり部分の位置関係に着目して、第1面1からより遠い位置にこの重なり部分を有する貫通配線12aとなる改質部、流路71a、及び流路71bとなる各改質部を先に形成し、第1面1からより近い位置にこの重なり部分を有する貫通配線12bとなる改質部を後で形成する。この順序で第1面1側からレーザー照射することにより、各改質部を形成することができる。
【0056】
つぎに、前記各改質部が形成された基板11を、前記エッチング液(薬液)に浸漬して、各改質部をエッチング(ウエットエッチング)することにより基板11から除去する。その結果、各改質部が存在した部分に、貫通配線12aおよび12bとなる貫通孔がそれぞれ形成され、同時に流路71aおよび71bとなる貫通孔がそれぞれ形成される。
このように、貫通配線となる貫通孔と流路となる貫通孔とを同時に形成すれば、製造工程が簡略化でき、コストを低減することができる。
前記貫通配線となる貫通孔には、前述の工程(C)によって、導電性物質を充填又は成膜して貫通配線12a及び12bとすることができる。
以上のような方法によって、目的の流路を備えた貫通配線基板を製造することができる。
【0057】
なお、本発明の貫通配線基板の製造方法では、前記工程(A)において、前記重なり部分の第1面からの遠近を判断する際、互いに離間しつつ重なる部分同士のみで第1面からの相対的な遠近が判断される。
なお、本発明の説明において、「基板の2つの面の重なり方向から見て、貫通配線同士が互いに離間しつつ重なる部分のうち、一方の貫通配線のこの重なる部分」を、単に「重なり部分」ということがある。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の貫通配線基板は、例えば、電気的に接続された2つの面にデバイスを実装する3次元実装や、複数のデバイスを一つのパッケージ内でシステム化するシステムインパッケージ(SiP)など、各種デバイスの高密度実装に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 第1面
2 第2面
11 基板
12 貫通配線
13 重なり部
16 貫通配線
21 レーザー光
23 改質された領域(改質部)
25 エッチング液
27 導電性物質
31 貫通配線
32 貫通配線
41 貫通配線
51 貫通配線
52 貫通配線
61 ランド部
62 ランド部
71 流路
19F 流路付き貫通配線基板
19,19A,19B,19C,19D,19E 貫通配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と第2面とを有する基板と;前記第1面及び前記第2面の間を貫通する貫通孔内に、導電性物質を充填又は成膜することにより形成された複数の貫通配線と;を備え、前記貫通配線同士は、互いに離間し、且つ前記基板の平面視において、重なり部分を少なくとも1つ備える貫通配線基板の製造方法であって、
互いに離間し且つ前記基板の平面視において重なり部分を有する複数の貫通孔形成領域を、前記基板の前記第1面側または第2面側からレーザー照射して、前記貫通孔形成領域を改質する工程(A)と;
前記改質された貫通孔形成領域を除去して、貫通孔を形成する工程(B)と;
を含み、
前記工程(A)において、レーザー光は前記基板の表面を透過して該基板の内部に焦点を結び、前記複数の貫通孔形成領域のうち、前記レーザー光の入射面から遠い方の前記重なり部分をレーザー照射して改質した後に、前記レーザー光の入射面から近い方の前記重なり部分をレーザー照射して改質することを特徴とする貫通配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記第1面側からレーザー照射する場合は、前記貫通孔形成領域において、前記第2面側から前記第1面側へ前記焦点を走査し、
前記第2面側からレーザー照射する場合は、前記貫通孔形成領域において、前記第1面側から前記第2面側へ前記焦点を走査することを特徴とする請求項1に記載の貫通配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記レーザー光の焦点を、前記入射面を基準として遠い側から近い側へ、一筆書きで走査することを特徴とする請求項1又は2に記載の貫通配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記工程(A)において、前記レーザーの入射面から遠い方の前記重なり部分を有する前記貫通孔形成領域の全部をレーザー照射した後に、前記レーザーの入射面から近い方の前記重なり部分を有する貫通孔形成領域の全部をレーザー照射することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の貫通配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記貫通孔の形状が、前記基板の断面方向に見て、クランク形状であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の貫通配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記貫通孔の形状が、前記基板の断面方向に見て、略Y字形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の貫通配線基板の製造方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図9C】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図10C】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図11C】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図12C】
image rotate

【図13A】
image rotate

【図13B】
image rotate

【図13C】
image rotate


【公開番号】特開2012−134540(P2012−134540A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−48597(P2012−48597)
【出願日】平成24年3月5日(2012.3.5)
【分割の表示】特願2011−239706(P2011−239706)の分割
【原出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】