説明

貯水槽

【課題】貯水槽の設備点検を容易に行うことができるようにする。
【解決手段】貯水槽10は、槽本体12、ケース16および点検蓋を含み、給水系管路に設けられて、非常時に飲料水として用いられ得る清潔な水を貯留する。ケース16は、槽本体12をその内部に収納し、ケース16には点検蓋が設けられる。点検蓋を利用することで、槽本体をケースに収納したまま、貯水槽10の設備点検を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は貯水槽に関し、特にたとえば、建築物内部の給水系管路に設けられて、非常時に飲料水として用いられ得る清潔な水を貯留する、貯水槽に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模地震等の自然災害への懸念の高まりから、断水状態を想定して、各家庭における飲料水の備蓄が推奨されている。そこで、本願発明者らは、給水系管路に設けられる貯水槽を特許文献1に提案した。特許文献1の貯水槽は、槽本体を含み、槽本体には、水道水が供給される第1給水管、および通常取水栓へとつながる複数の第2給水管が接続される。生活用水として槽本体内の水道水を通常取水栓から取り出すと、それに伴い水道水が第1給水管から槽本体内へ供給される。このため、槽本体内の水道水は、生活用水を使用する度に入れ替わり、常に清潔に維持される。したがって、特許文献1の技術によれば、特別なメンテナンス等を必要とすることなく、非常時に飲料水として用いられ得る清潔な水を貯留しておくことができる。
【特許文献1】特開2006−160368号[E03B 11/02]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のような貯水槽は、槽本体内の水道水が清潔に維持されるため、特別なメンテナンス等を必要としない。しかし、台風や地震などの影響で、貯水槽が破損する場合や、貯水槽に供給される水道水の水質が悪くなる場合がある。したがって、貯水槽の設備点検を容易に行うことができることが望ましい。しかし、特許文献1には、貯水槽の具体的な点検方法が記載されていない。
【0004】
それゆえに、この発明の主たる目的は、設備点検を容易に行うことができる、貯水槽を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、建築物内部の給水系管路に設けられる貯水槽であって、槽本体、槽本体を収容するケース、およびケースに開閉可能に設けられる点検蓋を備える、貯水槽である。
【0006】
請求項1の発明では、貯水槽(10)は、槽本体(12)、ケース(16)および点検蓋(60,62,64)を備え、給水系管路に設けられて、非常時に飲料水として用いられ得る清潔な水を貯留する。槽本体は、水を貯留する部位であり、ケースの内部に収容される。また、ケースには点検蓋が開閉可能に設けられ、点検蓋を利用して、槽本体をケースに収容したまま、貯水槽のケース内部の設備点検を行う。
【0007】
請求項1の発明によれば、貯水槽の設備点検を容易に行うことができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明に従属し、槽本体に設けられて、槽本体に第1給水管からの水道水を供給する導入管、導入管と第1給水管とを接続する第1接続部、槽本体に設けられて、槽本体の水道水を第2給水管に供給する導出管、および導出管と第2給水管とを接続する第2接続部および第3接続部をさらに備え、導入管、導出管および各接続部はケースに収容され、点検蓋は、点検蓋開口時に、各接続部を外部から点検可能な位置に配置される。
【0009】
請求項2の発明では、貯水槽(10)は、導入管(28)、第1接続部(30)、導出管(34,38)、第2接続部(36)および第3接続部(40)をさらに備える。導入管は貯水槽に設けられ、第1接続部を介して第1給水管に接続される。導出管は貯水槽に設けられ、第2接続部または第3接続部を介して第2給水管に接続される。第1接続部、第2接続部および、第3接続部はケース(16)内部に収容される。また、点検蓋(60,62,64)は、点検蓋開口時に、各接続部を外部から点検可能な位置に配置され、たとえば各接続部の近傍に設けられる。
【0010】
請求項2の発明によれば、各接続部の設備点検を容易に行うことができる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明に従属し、導入管に設けられるバルブをさらに備え、バルブはケースに収容され、点検蓋は、点検蓋開口時に、バルブを外部から点検可能な位置に配置される。
【0012】
請求項3の発明では、導入管(28)にバルブ(32)が設けられ、バルブはケース(16)内部に収容される。たとえば、台風や地震などの影響で貯水槽に供給される水道水の水質が悪くなる場合には、バルブを閉めて、貯水槽への水道水の供給を止める。点検蓋(60,62,64)は、点検蓋開口時に、バルブを外部から点検可能な位置に配置され、たとえばバルブの近傍に設けられる。
【0013】
請求項3の発明によれば、バルブの開閉を容易に行うことができる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1ないし3にいずれかの発明に従属し、導出管に設けられる吸気弁をさらに備え、吸気弁はケースに収容され、点検蓋は、点検蓋開口時に、吸気弁を外部から点検可能な位置に配置される。
【0015】
請求項4の発明では、導出管(34,38)に吸気弁(42)が設けられ、サイフォン現象を防止する。吸気弁はケース(16)内部に収容されるが、吸気弁は貯水槽(10)の他の部位と比較して破損しやすい。点検蓋(60,62,64)は、点検蓋開口時に、吸気弁を外部から点検可能な位置に配置され、たとえば点検蓋は吸気弁の近傍に設けられる。
【0016】
請求項4の発明によれば、吸気弁の設備点検を容易に行うことができる。
【0017】
請求項5の発明は、請求項2ないし4のいずれかの発明に従属し、各接続部、バルブおよび吸気弁の全てがケース内の近傍に設けられ、点検蓋は、点検蓋開口時に、各接続部、バルブおよび吸気弁の全てを外部から点検可能な位置に配置される。
【0018】
請求項5の発明では、各接続部(30,36,40)、バルブ(32)および吸気弁(42)の全てがケース(16)内の近傍に設けられ、点検蓋(60,62,64)は、点検蓋開口時に、各接続部、バルブおよび吸気弁の全てを外部から点検可能な位置に配置される。
【0019】
請求項5の発明では、点検蓋を利用して、各接続部、バルブおよび吸気弁の全ての設備点検を容易に行うことができる。
【0020】
請求項6の発明は、建築物内部の給水系管路に設けられる貯水槽の設置方法であって、(a)槽本体、槽本体を収容するケース、およびケースに開閉可能に設けられる点検蓋を備える、貯水槽を用意し、(b)少なくとも各接続部、バルブおよび吸気弁のいずれか1つが、ケースの外部から点検可能な位置に点検蓋を配置し、(c)貯水槽の設置される空間を外部から確認可能に建築物に設けられる点検口の位置と、点検蓋の位置とが近傍になるように貯水槽の設置位置を決定し、(d)建築物の躯体に前記貯水槽を設置する、貯水槽の設置方法である。
【0021】
請求項6の発明では、ステップ(a)において、槽本体(12)、槽本体を収容するケース(16)、およびケースに開閉可能に設けられる点検蓋(60,62,64)を備える、貯水槽(10)を用意する。ステップ(b)において、少なくとも各接続部(30,36,40)、バルブ(32)および吸気弁(42)のいずれか1つを外部から点検可能な位置に点検蓋を配置する。ステップ(c)において、貯水槽(10)の設置される空間、たとえば、天井裏を外部から確認可能なように、天井(104)に設けられる点検口(106)の位置と、点検蓋の位置とが近傍になるように貯水槽の設置位置を決定する。ステップ(d)において、建築物の躯体、たとえば天井裏のコンクリートスラブ(100)に吊りボルト(102)を設けて吊り下げ、貯水槽を設置する。
【0022】
請求項6の発明によれば、貯水槽設置後の設備点検を容易に行うことができる。
【0023】
請求項7の発明は、請求項6記載の設置方法で取り付けられた貯水槽の点検方法であって、(a)点検口を開いて、(b)点検蓋を開けて、(c)建築物から貯水槽を取り外さずに、ケース内部に収容したまま、少なくとも各接続部、バルブおよび吸気弁のいずれか1つの設備点検を行う、貯水槽の点検方法である。
【0024】
請求項7の発明では、ステップ(a)において、たとえば天井(104)に設けられた点検口(106)を開く。ステップ(b)において、点検蓋(60,62,64)を、たとえば摺動させることでケース(16)から取り外して、開ける。ステップ(c)において、建築物から貯水槽(10)を取り外さずに、ケース(16)内部に収容したまま、たとえばバルブ(32)の開閉および吸気弁(42)の取替えなど、少なくとも各接続部(30,36,40)、バルブおよび吸気弁のいずれか1つの設備点検を行う。
【0025】
請求項7の発明によれば、貯水槽の設備点検を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、貯水槽の設備点検を容易に行うことができる。
【0027】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1を参照して、この発明の一実施例である貯水槽10は、槽本体12、フレーム14、ケース16および第1点検蓋60を含み、マンションおよび戸建などの一般住宅に設置されて、非常時に飲料水として用いられ得る清潔な水を貯留する。貯水槽10は、水道管からの水道水を宅内に供給する第1給水管と、第1給水管によって供給される水道水を各給水栓に配水する複数の第2給水管とを接続する。つまり、貯水槽10は、給水系管路に設けられて、清潔な水を貯留すると共に、給水ヘッダとしても機能する。貯水槽10の内容量は、たとえば36リットルであり、この量は4人家族の3日間の飲料用水使用量に相当する。この実施例では、貯水槽10は、2つの槽本体12を備える。
【0029】
図1−図3に示すように、槽本体12は、水を貯留する部位であって、硬質塩化ビニルおよびポリエチレンなどの合成樹脂によって形成され、管部18およびキャップ部20を含む。管部18は、両端開口の円管、つまり汎用の合成樹脂製パイプであり、その両端のそれぞれにキャップ部20が設けられる。管部18の内径および長さは、貯留したい水の量によって適宜設定される。たとえば、この実施例では、内径が146mmの円管を用いて管部18を形成し、その長さを約1.1mとすることによって、1つの槽本体12に18リットルの水が貯留される。
【0030】
キャップ部20は、管部18の両端部外面のそれぞれにTS接合法で接続され、管部18の一方端側に接続される第1キャップ部20a、および他端側に接続される第2キャップ部20bを含む。キャップ部20は、短円筒状の側壁22および側壁22の一方端を封止する円板状の円板部24を有する。側壁22の内面は、管部18の内面より外側に位置し、円板部24と管部18の端面との間には、空間が形成される。また、円板部24には、管部18から遠ざかる方向に、軸方向と平行に突出する2つの受口26が形成される。2つの受口26は、円板部24の上部および下部のそれぞれに形成され、上部に位置する第1受口26aの内面上部は、側壁22の内面上部と滑らかに繋がり、下部に位置する第2受口26bの内面下部は、側壁22の内面下部と滑らかに繋がる。つまり、第1受口26aは、管部18の内面最上部よりも高い位置で、また、第2受口26bは、管部18の内面最下部よりも低い位置で、円板部24と管部18の端面との間に形成された空間に連通する。
【0031】
そして、第1キャップ部20aの第1受口26aは、導入口として機能し、導入管28と接続される。導入管28は、他の槽本体12からの導入管28と連結されて、その高さを維持したまま2つの槽本体12の間を通って第2キャップ部20b側に延びる。導入管28の端部、たとえばケース16の端面16dの近傍には、第1給水管(図示せず)と接続される第1接続部30が設けられる。また、導入管28の、たとえばケース16の端面16dの近傍には、バルブ32およびバルブ32に内蔵された逆止弁が設けられ、たとえば、台風や地震などの影響で貯水槽に供給される水道水の水質が悪くなる場合には、バルブを閉めて、導入管を介した貯水槽への水道水の供給を止める。
【0032】
第1キャップ部20aの第2受口26bは、給水口として機能し、第1導出管34と接続される。第1導出管34は、他の槽本体12からの第1導出管34と連結されて、その高さを維持したまま2つの槽本体12の間を通って第2キャップ部20b側に延びる。第1導出管34の端部、たとえばケース16の端面16dの近傍には、非常用第2給水管(図示せず)と接続される第2接続部36が設けられる。非常用第2給水管は、通常時には通常取水栓として使用されると共に、非常時(断水時)には非常取水栓として使用される給水栓、たとえば台所の給水栓に繋がる。
【0033】
第2キャップ部20bの第1受口26aは、給水口として機能し、第2導出管38と接続される。この第2導出管38は、その高さを維持したまま第2キャップ部20bから離れる方向に延びる。第2導出管38の端部、たとえばケース16の端面16dの近傍には、通常用第2給水管(図示せず)と接続される第3接続部40が設けられる。通常用第2給水管は、非常取水栓として使用されるものを除く各給水栓、たとえばトイレや浴室の給水栓に繋がる。
【0034】
第2キャップ部20bの第2受口26bは、第2キャップ部20bの第1受口26aと同様に、給水口として機能し、第2導出管38と接続される。第2受口26bに接続される第2導出管38は、上方に屈曲して、第1受口26aに接続される第2導出管38と同じ高さになり、第2キャップ部20bから離れる方向に延びる。また、第2受口26bに接続される第2導出管38の、たとえばケース16の端面16dの近傍には吸気口が形成され、この吸気口には吸気弁42が設けられる。吸気弁42は、サイフォン現象を防止するが、貯水槽10の他の部位と比較して破損しやすい。
【0035】
また、槽本体12には、連結体44が設けられる。連結体44は、槽本体12とフレーム14とを連結して固定するための部材である。また、この実施例では、貯水槽10は2つの槽本体12を備えるので、連結体44は、槽本体12同士を連結する部材としても機能する。具体的には、連結体44は、ステンレス鋼などの金属によって形成され、その両端が外側に向かって屈曲する短半円筒状の連結体部材を組み合わせることによって、槽本体12を挟み込んで連結する略眼鏡状に形成される。この実施例では、2つの連結体44が、キャップ部20近傍の管部18外面にそれぞれ取り付けられる。また、連結体44の両端部44aには、槽本体12の高さ範囲内で、上下方向に形成される間隔が設けられる。この間隔に後述する第1フレーム48を嵌め込み、ボルト止めすることによって、連結体44とフレーム14とが接続される。
【0036】
なお、管部18に連結体44を取り付ける際には、管部18と連結体44との間に、ウレタン等によって形成される断熱材46が挟み込まれる。管部18内の温度と連結体44の温度とに差が生じた場合、管部18と連結体44が直接触れていると、その接触部に結露が発生する恐れがあるため、断熱材46によってそれを防止する。
【0037】
フレーム14は、ステンレス鋼などの金属によって、2つの槽本体12を囲繞する平面矩形形状に形成される。フレーム14は、上述の連結体44などを介して槽本体12を支持すると共に、貯水槽10を建築物に取り付ける際の取付具として機能する。フレーム14を形成する際には、溝形鋼などの汎用の形鋼を用いることができる。
【0038】
具体的には、フレーム14は、第1フレーム48および第2フレーム50を含み、第1フレーム48は、連結体44の両端部44aのそれぞれに、2つの連結体44を結ぶように接続される。つまり、第1フレーム48は、槽本体12の高さ範囲内で、槽本体12の両側のそれぞれに設けられて、槽本体12の長さ方向に延びる。第1フレーム48は、外方に向かって開口する溝形の断面形状を有し、槽本体12よりも長い長さを有する。たとえば、第1フレーム48の長さは1360mmであり、その幅は30mmであり、その高さは60mmである。
【0039】
また、第1フレーム48には、貯水槽10を建築物に取り付ける際に利用される取付部52が形成される。取付部52は、たとえば、第1フレーム48を鉛直方向に連通する略楕円形状の孔であり、この孔に後述する吊ボルト102等が挿通される。取付部52は、貯水槽10を建築物に取り付けた際の重量バランスを考慮した位置に形成され、この実施例では、連結体44の端部近傍のそれぞれに計4つの取付部52が形成される。
【0040】
第2フレーム50は、槽本体12の端面より外側で、2つの第1フレーム48を連結し、フレーム14の強度、延いては貯水槽10の強度を高める。第2フレーム50は、Lアングル等の金具を介して第1フレーム48にボルト止めされて固定される。第2フレーム50の長さ、つまり2つの第1フレーム48の間の間隔は、たとえば475mmである。また、槽本体12の第2キャップ部20b側の第2フレーム48は、上述の導入管28および第2導出管38と第1導出管34との間を通るように形成され、その幅は、導入管28および第2導出管38と第1導出管34との間の間隔に相当する大きさに設定される。つまり、第2キャップ部20b側の第2フレーム50の上面に、導入管28および第2導出管38が乗るように沿い、その下面に、第1導出管34が沿う。したがって、第2キャップ部20b側の第2フレーム50に、各管28,34,38を容易に固定することができ、各管28,34,38に各給水管を接続した場合にも、各管28,34,38の撓み等による破損を防止することができる。
【0041】
このような槽本体12を備える貯水槽10では、日常生活において各給水栓から水道水が使用される度に、槽本体12内の水が自動的に入れ替わるため、常に清潔な水を確保できる。また、上述のようなキャップ構造を槽本体12に採用することによって、槽本体12内に空気や異物などが万一混入したとしても、それらの排出が促され、貯水槽10のメンテナンスフリーを実現できる。しかし、台風や地震などの影響で、貯水槽が破損する場合や、貯水槽に供給される水道水の水質が悪くなる場合があるがあるため、貯水槽10は、設備点検を容易に行えることが望ましい。そこで、貯水槽10では、以下に詳細を示すように、ケース16に第1点検蓋100を設ける構造を採用した。
【0042】
図4−図6に示すように、貯水槽10はケース16を備える。ケース16は、槽本体12、導入管28および導出管34,38などを収容し、埃などから保護する。また、各接続部30,36,40、バルブ32および吸気弁42は、たとえばケース16内の端面16dの近傍にまとめて設けられている。
【0043】
ケース16は、難燃性の発泡スチロールおよびウレタン等の保温材によって形成され、槽本体12を一定温度に保温する。ケース16は、上面および下面が平面である扁平形状の箱形に形成される。ケース16は、たとえば、その上部16aと下部16bとが別体として形成され、槽本体12などをその内部に収納した後、粘着テープを用いる等して、上部16aと下部16bとが一体化されて箱形となる。たとえば、ケース16の長さは1600mmであり、その幅は535mmであり、その高さは240mmである。
【0044】
ケース16の両側面16cには、第1フレーム48の外形に相当する大きさの窪み部54が形成される。第1フレーム48は、この窪み部54に嵌り込むようにしてケース16の両側面16cから露出し、ケース16の両端面16dの近傍まで延びる。また、ケース16の両側面16cには、第1フレーム48の各取付部52の上方および下方を連通する切欠部56が形成される。
【0045】
また、ケース16の、各接続部30,36,40、バルブ32および吸気弁42が設けられる一方端の端面16dには、複数(この実施例では6つ)の接続口58が形成され、この接続口58を介して各接続部30,36,40に各給水管が接続される。
【0046】
図7および図8に示すように、ケース16には、第1点検蓋60が開閉可能に設けられる。第1点検蓋60は、自身の開口時に、少なくとも各接続部30,36,40、バルブ32および吸気弁42のいずれか1つを外部から点検可能な位置に配置され、この実施例では、各接続部30,36,40、バルブ32および吸気弁42の全てが端面16dの近傍に設けられ、端面16dを端とした、ケース16の下面の中央が取り外し可能に形成されて、第1点検蓋60となる。
【0047】
第1点検蓋60は、端部60a、側部60bおよび突起部60cを含み、端面16dの一部からなる端部60aから、側部60bが水平方向に突き出し、また、突起部60cが貯水槽10の幅方向の両側にそれぞれ突き出している。たとえば、端部60aの高さは30mmであり、その幅は150mmである。また、たとえば、側部60bの長さは110mmであり、突起部60cは20mm突き出している。
【0048】
側部60bの、端部60aと反対側の端には、第1点検蓋60とケース16との水平方向での接合面60dが形成され、たとえば、その上部が15mm程度突出して、接合面60dは段差状に形成される。ケース16の接合面16eは、上述の接合面60dに対応して、その下側が窪む段差状に形成され、接合面60dと嵌まり合って当接する。また、突起部60cとケース16との接合面16fも、突起部60cの形状に対応して窪み、接合面16fと突起部60cは嵌まり合って当接する。
【0049】
つまり、第1点検蓋60は、接合面60dと接合面16eとの段差、および突起部60cと接合面16fとの形状を嵌め込むことで、ケース16に固定される。
【0050】
図9に示すように、このような貯水槽10を設置する場合には、先ず、少なくとも各接続部30,36,40、バルブ32および吸気弁42のいずれか1つをケース16の外部から点検可能な位置に、第1点検蓋60配置する。そして、貯水槽10の設置される空間を外部から確認可能に建築物に設けられる点検口、たとえば天井104に形成される点検口106の位置と、第1点検蓋60の位置とが近傍になるように貯水槽の設置位置を決定する。そして、建築物の躯体、たとえば、建築物の天井裏のコンクリートスラブ100に吊ボルト102を設け、貯水槽10を吊り下げて、貯水槽10を設置する。
【0051】
また、このように設置された貯水槽10の設備点検を行う場合は、先ず、点検口106を開けて、貯水槽10の下面に設けられた第1点検蓋60を端面16dの方向に摺動させてケース16から取り外す。そして、貯水槽10を取り外さずに、ケース16に収容したまま、たとえば各接続部30,36,40の確認、バルブ32の開閉および吸気弁42の取替えなど、貯水槽10の設備点検を行う。
【0052】
具体的には、作業員が点検口106から貯水槽10の点検箇所を目視して、直接設備点検を行う方法がある。この場合には、第1点検蓋60の配置位置としては、目視可能であってかつ点検可能な位置であることが条件となる。
【0053】
また、点検箇所を直接目視できない場合は、鏡、カメラ或いはロボット(点検具)などを用いて貯水槽10の点検箇所に接近し、設備点検を行ってもよい。この場合には、点検具が点検箇所に接近できればよく、第1点検蓋60の配置位置の条件としては、点検可能性だけでよく、目視可能性は必ずしも必要ではない。
【0054】
このように、貯水槽10は、ケース16に第1点検蓋60を設けたため、建築物に設置している貯水槽10を取り外さず、ケース16内部に収納したままで、容易に設備点検をすることができる。
【0055】
また、各接続部30,36,40、バルブ32および吸気弁42の全ては、第1点検蓋60開口時に、外部から点検可能な位置、この実施例ではケース16内の端面16d近傍にまとめて設けられ、その端面16dに第1点検蓋60を設けるため、各接続部30,36,40、バルブ32および吸気弁42の全ての設備点検をまとめて行うことができる。
【0056】
さらに、第1点検蓋60は、ケース16の接着面以外の方向から取外し可能な構造であるため、ケース16を設置した際に、たとえばケース16が、コンクリートスラブ100などの建築物の躯体に密着しても、その躯体から貯水槽10を取り外さずに、そのまま設備点検することができる。
【0057】
図10および図11に示すこの発明の他の実施例である貯水槽10は、ケース16の端面16d側の下部が取り外し可能に形成されて、第2点検蓋62となる。以下、図1に示す貯水槽10と同様である部分に関しては、詳細な説明は省略する。
【0058】
第2点検蓋62は、端部62aおよび側部62bを含み、端面16dの下半分によって形成される端部62aから、ケース16の両側面16cおよびケース16の下面によって略コ字型に形成される側部62bが水平方向に突き出す。たとえば、端部62aの幅は535mmであり、その高さは120mmである。また、側部62bの上部は、ケース16に形成される窪み部54を一部含むため、方形状に欠ける。たとえば、側部62bの長さは260mmである。側部62bには、第2点検蓋62とケース16との水平方向での接合面62cが形成される。接合面62cは、たとえば、その内側が水平方向に15mm程度突出して、段差状に形成される。ケース16の接合面16gは、上述の接合面62cの段差に対応して、その内側が窪む段差状に形成され、接合面62cと嵌まり合って当接する。また、第2点検蓋62の上端には、第2点検蓋62とケース16との鉛直方向の接合面62dが形成される。接合面62dは、たとえば、その内側が鉛直方向に15mm程度突出して、段差状に形成される。ケース16の接合面16hは、上述の接合面62dの段差に対応して、その内側が窪む段差状に形成され、接合面62dと嵌まり合って当接する。つまり、第2点検蓋62は、接合面62cと接合面16gとの段差、および接合面62dと接合面16hとの段差を嵌め込むことで、ケース16に固定される。
【0059】
なお、第2点検蓋62に、第1点検蓋60を併合させて設けることも可能であり、その場合は、設備点検をする範囲に応じて、第1点検蓋60および第2点検蓋62のどちらを利用するかを選択する。
【0060】
このように、貯水槽10では、ケース16に、第1点検蓋60と比べて大きな、第2点検蓋62を設けたことで、設備点検が可能な範囲が広がり、より精度の高い設備点検をすることができる。
【0061】
図12および図13に示すこの発明の他の実施例である貯水槽10は、ケース16の端面16d側が取り外し可能に形成されて、第3点検蓋64となる。つまり、第3点検蓋64は、前述の第2点検蓋62を上部16a側にも形成して、その2つを併合したような形状である。以下、図1に示す貯水槽10と同様である部分に関しては、詳細な説明は省略する。
【0062】
第3点検蓋64は、端部64aおよび側部64bを含み、端面16dによって形成される端部64aから、ケースの上面、下面および両側面16cによって方形筒状に形成される側部64bが水平方向に突き出す。たとえば、端部64aの幅は535mmであり、その高さは240mmである。また、側部64bの両側面16c側の中央は、ケース16に形成される窪み部54を一部含むため、方形状に欠ける。たとえば、側部64bの長さは260mmである。
【0063】
側部64bには、第3点検蓋64とケース16との水平方向での接合面64cが形成される。接合面64cは、たとえば、その内側が水平方向に15mm程度突出して、段差状に形成される。ケース16の接合面16iは、上述の接合面64cの段差に対応して、その内側が窪む段差状に形成され、接合面64cと嵌まり合って当接する。つまり、第3点検蓋64は、接合面64cと接合面16iとの段差を嵌め込むことで、ケース16に固定される。
【0064】
なお、第3点検蓋64に、第2点検蓋62および第1点検蓋60を併合させて設けることも可能であり、その場合は、設備点検をする範囲に応じて、第1点検蓋60、第2点検蓋62および第3点検蓋のいずれを利用するかを選択する。
【0065】
このように、貯水槽10では、ケース16に、第1点検蓋60および第2点検蓋62に比べて大きな、第3点検蓋64を設けたことで、設備点検が可能な範囲が広がり、各接続部30,36,40、バルブ32および吸気弁42が端面16dの下部側にまとめて設けられていない場合、たとえば、端面16dの上部側に配置されていても、設備点検が可能である。
【0066】
なお、上述の各実施例ではいずれも、点検蓋60,62,64をケース16内部の端面16d付近に設けたが、これに限定されない。点検蓋60,62,64は、各接続部30,36,40、バルブ32および吸気弁42のいずれか1つを外部から点検可能な位置に配置されていればよく、たとえばケース16の中央などにも設けることができる。また、各接続部30,36,40、バルブ32および吸気弁42の全てをケース16の内部に設けたが、これに限定されず、たとえ外部に露出していても、点検蓋60,62,64の近傍に設けていれば、点検口104から設備点検することができる。
【0067】
また、上述の各実施例ではいずれも、貯水槽10を建築物の天井裏などに設置したが、これに限定されない。貯水槽10は、床下や屋上に置いて設置することもできる。この場合には、点検蓋60,62,64を、たとえばケース16の上面に設けることで、同様に設備点検をすることができる。さらに、点検蓋60,62,64をケース16の上面および下面の両方に設けた場合、貯水槽10は、天井と床下のどちらに設置しても、設置したまま点検可能である。さらに、点検蓋60,62,64をケース16の四方の面全てに設けておけば、貯水槽10の設置の自由度は増して、柱などの側面、或いは建築物の躯体の隅角部に設置することもできる。
【0068】
なお、上述の各実施例ではいずれも、ケース16と第1点検蓋60,第2点検蓋62および第3点検蓋64との各接合面の段差形状を嵌め込むことで開閉可能に固定したが、これに限定されず、取り外しが簡単にできる固定方法であればよい。たとえば、凹凸形状を形成して、嵌め込むことで固定してもよい。また、ケース16の下部16bを取り外し可能な方法で上部16aと固定して、下部16bを点検蓋とすることもできる。
【0069】
また、上述の実施例では、2つの槽本体12を備えるようにしたが、これに限定されず、槽本体12は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0070】
なお、上で上げた寸法の具体的な数字はいずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】この発明の一実施例である貯水槽の内部構成を示す平面図である。
【図2】図1の貯水槽の内部構成を示す側面図である。
【図3】図1の貯水槽の内部構成を示す端面図である。
【図4】図1の貯水槽の外観を示す平面図である。
【図5】図1の貯水槽の外観を示す側面図である。
【図6】図1の貯水槽の外観を示す端面図である。
【図7】この発明の一実施例である貯水槽に第1点検蓋を設けた様子を示す図解図である。
【図8】第1点検蓋の外観を示す斜視図である。
【図9】この発明の一実施例である貯水槽を建物に設置した様子を示す平面図である。
【図10】この発明の他の一実施例である貯水槽に第2点検蓋を設けた様子を示す図解図である。
【図11】第2点検蓋の外観を示す斜視図である。
【図12】この発明の他の一実施例である貯水槽に第3点検蓋を設けた様子を示す図解図である。
【図13】第3点検蓋の外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0072】
10 …貯水槽
12 …槽本体
14 …フレーム
16 …ケース
28 …導入管
34 …第1導出管
38 …第2導出管
44 …連結体
48 …第1フレーム
50 …第2フレーム
52 …取付部
60 …第1点検蓋
62 …第2点検蓋
64 …第3点検蓋
100 …コンクリートスラブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物内部の給水系管路に設けられる貯水槽であって、
槽本体、
前記槽本体を収容するケース、および
前記ケースに開閉可能に設けられる点検蓋を備える、貯水槽。
【請求項2】
前記槽本体に設けられて、前記槽本体に第1給水管からの水道水を供給する導入管、
前記導入管と第1給水管とを接続する第1接続部、
前記槽本体に設けられて、前記槽本体の水道水を第2給水管に供給する導出管、および
前記導出管と前記第2給水管とを接続する第2接続部および第3接続部をさらに備え、
前記導入管、前記導出管および前記各接続部は前記ケースに収容され、
前記点検蓋は、前記点検蓋開口時に、前記各接続部を外部から点検可能な位置に配置される、請求項1記載の貯水槽。
【請求項3】
前記導入管に設けられるバルブをさらに備え、
前記バルブは前記ケースに収容され、
前記点検蓋は、前記点検蓋開口時に、前記バルブを外部から点検可能な位置に配置される、請求項2記載の貯水槽。
【請求項4】
前記導出管に設けられる吸気弁をさらに備え、
前記吸気弁は前記ケースに収容され、
前記点検蓋は、前記点検蓋開口時に、前記吸気弁を外部から点検可能な位置に配置される、請求項2または3に記載の貯水槽。
【請求項5】
前記各接続部、前記バルブおよび前記吸気弁の全てが前記ケース内の近傍に設けられ、
前記点検蓋は、前記点検蓋開口時に、前記各接続部、前記バルブおよび前記吸気弁の全てを外部から点検可能な位置に配置される、請求項2ないし4のいずれかに記載の貯水槽。
【請求項6】
建築物内部の給水系管路に設けられる貯水槽の設置方法であって、
(a)槽本体、前記槽本体を収容するケース、および前記ケースに開閉可能に設けられる点検蓋を備える、貯水槽を用意し、
(b)少なくとも各接続部、バルブおよび吸気弁のいずれか1つが、前記ケースの外部から点検可能な位置に前記点検蓋を配置し、
(c)前記貯水槽の設置される空間を外部から確認可能に建築物に設けられる点検口の位置と、前記点検蓋の位置とが近傍になるように前記貯水槽の設置位置を決定し、
(d)建築物の躯体に前記貯水槽を設置する、貯水槽の設置方法。
【請求項7】
請求項6記載の設置方法で取り付けられた貯水槽の点検方法であって、
(a)前記点検口を開いて、
(b)前記点検蓋を開けて、
(c)前記躯体から前記貯水槽を取り外さずに、前記ケース内部に収容したまま、少なくとも前記各接続部、前記バルブおよび前記吸気弁のいずれか1つの設備点検を行う、貯水槽の点検方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−13614(P2009−13614A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174455(P2007−174455)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【Fターム(参考)】