説明

貯水空間形成ブロック

【課題】耐震性に優れた貯水空間形成ブロックを提供する。
【解決手段】水平面内で縦横に延びるリブ14a,14bを組み合わせて平面形状が正方形で且つ各コーナ部の内側に支柱部配置用の開口部となる格子目15を備えた格子構造となるように形成した水平構造部13の各格子目15の内側に、水平断面八角形の角錐台状の支柱部16の基端部を配置し、その外壁部の1つ置きの頂点と、水平構造部13の格子目15のコーナ部のリブ14a,14bとを、水平構造部13のリブ14a,14bよりも低剛性の接続部17を介し一体に接続して、貯水空間形成ブロック12を構成する。支柱部16同士を突き合わせて上下に配置した2つの貯水空間形成ブロックの各水平構造部に水平方向に相対変位させるような力が作用する場合は、接続部17が撓んで支柱部16を傾けることで、支柱部16同士の繋がりを保持したまま、水平構造部13同士を水平方向に相対変位可能とさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平方向に縦横に隣接配置すると共に垂直方向に積層配置して地下貯水槽(雨水貯留浸透施設)等の貯水空間を形成するために用いる貯水空間形成ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、地下に貯水槽(雨水貯留浸透施設)を設けて、降雨時に雨水を一時的に貯留できるようにし、この貯留した雨水を徐々に下水に流したり、周囲の地中に徐々に浸透させるようにすることで、洪水の発生を抑制することが行われている。
【0003】
又、上記地下貯水槽に貯留した雨水を、防火用水や、花壇や畑の散水等に利用することも考えられている。
【0004】
上記のような地下貯水槽は、当初、孔の明いたコンクリートブロックで枠を作る構成が採られていた。
【0005】
しかし、近年では、図6に示すように、地面1を掘り下げて平面形状が矩形(正方形を含む)の凹部2を形成し、該凹部2内にて、骨格となる樹脂製の貯水空間形成用のブロック3を、水平方向に縦横に配列すると共に上下方向に多段に積層して直方体(立方体を含む)形状に組み立てて、その内部に貯水空間を形成し、その後、外周部に壁4を設けると共に上面に天板5を取り付け、更に、その周囲を、雨水の貯留や浸透の目的に応じて遮水シートや透水シートや保護シートを適宜選択あるいは組み合わせて用いるシート材6で覆った後、上側から土を埋め戻すことにより、地下貯水槽Iを構築するようにしてある。2aは上記凹部2の底部に設けた平坦な基礎である。
【0006】
この種の地下貯水槽Iを構築するために用いられる上記樹脂製の貯水空間形成ブロック(ユニット部材)3は、たとえば、図7(イ)(ロ)に示すように、平面形状が正方形で上下方向に所要寸法立ち上がる枠状の縁部8と、その内側で、該縁部8の正方形の各辺と平行な2方向に沿って配置された互いに交差する縦横のリブ9a及び9bと、該各リブ9aと9bによって囲まれた区画に形成された透口10を備えた水平なプレート状の基盤部7に、該基盤部7の上面側に突き出して上端部(天壁)が塞がり且つ基盤部7の下面側で開口する截頭円錐状の中空の突出部(支柱部)11を、1つ又は所要の間隔をあけて複数設けた構成として、ブロック全体を樹脂により一体成型してある。なお、図7(イ)(ロ)では突出部11を一つとした場合が示してある(たとえば、特許文献1参照)。
【0007】
上記構成としてある貯水空間形成ブロック3を用いて図6に示したような地下貯水槽Iを構築する場合、上記貯水空間形成ブロック3を水平方向に縦横に配列して組み立てるときには、隣接する貯水空間形成ブロック3同士で、上記平面形状を正方形としてある基盤部7の外周端面を互いに突合せ、この状態で基盤部7同士の突合せ部分を、図示しない連結手段(固定手段)により連結するようにしてある。これにより、構築された地下貯水槽I(図6参照)では、或る高さ位置の水平面内に、上記各貯水空間形成ブロック3の基盤部7が連続して配置されるようにして、該地下貯水槽Iに対して周囲に存在する土より作用する土圧による水平方向の荷重を、上記各貯水空間形成ブロック3の各基盤部7に作用する圧縮荷重、より具体的には、該各基盤部7の各リブ9a及び9bに対して長手方向に沿って作用する圧縮荷重として受けて支持することができるようにしてある。
【0008】
又、上記図6に示した如き地下貯水槽Iを構築するために、上記貯水空間形成ブロック3を上下方向に多段に積層して配置するときには、最も下段の貯水空間形成ブロック3を、突出部11が上向きとなる通常姿勢に配置すると共に、その上側に、上下を反転させた姿勢の別の貯水空間形成ブロック3を配置して、上下方向に対向配置される両者の突出部11同士を突き合わせた状態で、突合せ部分を図示しない連結手段(固定手段)を用いてで連結するようにしてある。更に、その真上に、上記と同様に通常姿勢と上下反転姿勢で突出部11同士を付き合わせた状態で連結することにより上下に組み合わせた貯水空間形成ブロック3の組を、地下貯水槽Iに所望される高さ寸法に応じた段数で順次重ねて配置するようにしてある。これにより、構築された地下貯水槽Iでは、上記水平面内で縦横に配列された各貯水空間形成ブロック3の突出部11の位置毎に、上下方向に積層配置されている各貯水空間形成ブロック3の突出部11が上下に連続して配置されるようにして、該地下貯水槽Iに対して天板5(図6参照)の上方より作用する埋め戻した部分に存在する土、及び、地下貯水槽Iの真上の地面に配置される物体の鉛直方向の荷重を、上記上下方向に連続配置された上記各貯水空間形成ブロック3の突出部11の圧縮荷重として受けて支持することができるようにしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4084437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上記従来の貯水空間形成ブロック3では、基盤部7に設けてある縦横のリブ9a,9bを、突出部11の基端部となる下端部の対応する個所に繋げて、該突出部11の下端側を上記基盤部7に堅固に結合した構成としてあるため、耐震性能に劣るというのが実状である。
【0011】
すなわち、図6に示した地下貯水槽Iは、地震時には、その周囲に存在する土砂と共に動くようになるが、この動きに伴って周囲に存在する土より作用する土圧が周方向で不均等になると、該地下貯水槽Iに、たとえば、図6に二点鎖線で示すように、上部と下部が水平方向に相対変位して側面形状が平行四辺形となるような変形が生じる虞がある。
【0012】
このような変形が地下貯水槽Iに生じると、該地下貯水槽Iにて通常姿勢と上下反転姿勢で突出部11同士を突き合わせて連結した状態で上下に隣接配置されている貯水空間形成ブロック3同士では、土圧による水平方向の荷重を受ける双方の基盤部7が水平方向に相対変位しようとする。
【0013】
しかし、従来の貯水空間形成ブロック3では、基盤部7に対して突出部11が垂直方向に突出する状態で堅固に結合されているため、上記したように突出部11同士を突き合わせて連結した状態で上下に隣接配置されている貯水空間形成ブロック3同士では、この連結された突出部11によって互いの基盤部7の水平方向の相対変位が強く拘束されるようになる。
【0014】
そのため、上記地下貯水槽Iを構築している各貯水空間形成ブロック3の突出部11には、鉛直方向の荷重を支持するための鉛直力に加えて、該各貯水空間形成ブロック3における基盤部7の水平方向の変位に抗するための水平力が働くようになるため、該突出部11に局部的な強度の低下が生じる虞が生じてしまうというのが実状である。
【0015】
なお、従来の貯水空間形成ブロック3では、上記したような地震時に突出部11に鉛直力と水平力が同時に作用するようになっても該突出部11に局部的な強度の低下が生じないようするための対策として、突出部11と基盤部7を繋ぐリブ9a,9bの数を増やしたり、突出部11に繋がる部分でリブ9a,9bの上下寸法を増大させる等して突出部11と基盤部7の堅固な結合をより強固に行うようにする方向の対策が採られることが多いが、この手法では貯水空間形成ブロック3の全体重量の増加を招くという問題や、上記貯水空間形成ブロック3を樹脂により一体成型するときの型が複雑化するという問題が生じ、更には、材料コストや製造コストが嵩むため、上記突出部11と基盤部7との結合部の剛性を高めることにも限界がある。
【0016】
そこで、本発明は、土圧による水平力を支持するための水平構造部と、上下方向の荷重を支持するための支柱部とを接合する部分を、地震時等に作用する外力により撓ませることができるようにして、上記支柱部の上記水平構造部に垂直な方向からの傾きを許容でき、これにより、地震時における上記水平構造部の水平方向の変位に抗するために上記支柱部に働く水平力を抑えることが可能な貯水空間形成ブロックを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、水平面内で直交する2方向に延びるリブを縦横に組み合わせて、支柱部配置用開口部を備えた水平構造部を形成し、且つ上下方向に延びる支柱部の基端部を、上記水平構造部の支柱部配置用開口部の内側に配置すると共に、該支柱部の基端部の外壁面における複数個所と、その外側に位置する上記水平構造部の支柱部配置用開口部の周縁の対応する個所とを、上記水平構造部を形成するリブの剛性よりも低剛性の接続部を介して一体に接続してなる構成を有する貯水空間形成ブロックとする。
【0018】
又、上記構成において、支柱部を、水平断面の外形が多角形の角錐台形状とした構成とする。
【0019】
更に、上記構成において、支柱部の水平断面の外形を八角形とした構成とする。
【0020】
更に又、上記構成において、外形を八角形とした支柱部の基端部の外形の頂点となる個所を、接続部を介して水平構造部の支柱部配置用開口部の周縁に接続するようにした構成とする。
【0021】
上述の各構成において、水平構造部を方形とし、支柱部配置用開口部を、上記水平構造部の各辺と平行な辺を備えた正方形とし、支柱部の基端部と水平構造部とを接続する接続部を、上記支柱部配置用開口部の対角線に沿う配置とした構成とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の貯水空間形成ブロックによれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)水平面内で直交する2方向に延びるリブを縦横に組み合わせて、支柱部配置用開口部を備えた水平構造部を形成し、且つ上下方向に延びる支柱部の基端部を、上記水平構造部の支柱部配置用開口部の内側に配置すると共に、該支柱部の基端部の外壁面における複数個所と、その外側に位置する上記水平構造部の支柱部配置用開口部の周縁の対応する個所とを、上記水平構造部を形成するリブの剛性よりも低剛性の接続部を介して一体に接続してなる構成としてあるので、水平構造部と支柱部の先端部に水平方向に相対変位させるような力が作用すると、水平構造部や支柱部に過大な加重が作用する前に上記接続部が撓んで、上記支柱部を、水平構造部に垂直な方向から傾けることができる。
(2)よって、本発明の貯水空間形成ブロックを用いて地下貯水槽を形成した状態で、地震発生時に、該地下貯水槽にその上部と下部が水平方向に相対変位して側面形状が平行四辺形となるような変形が生じる場合であっても、上下方向に積層配置された各段の貯水空間形成ブロックの支柱部の上下方向に連続する配置構造を保持したまま、該各段の貯水空間形成ブロックの水平構造部を水平方向へ相対変位させることが可能になるため、地震発生時であっても、上記支柱部に水平構造部の水平方向の変位に抗するために作用する水平力を大幅に抑制することができる。
(3)したがって、本発明の貯水空間形成ブロックでは、水平方向の荷重を受ける上記水平構造部と、鉛直方向の荷重を受ける支柱部について、それぞれの機能を明確に分離することができるようになることから、該水平構造部と支柱部について、地下貯水槽の構築時に作用する水平方向の荷重の許容値と、鉛直方向の荷重の許容値を別々に定めて設計できるようになり、従来の貯水空間形成ブロックに比してブロック全体での重量の軽減化を図ることが可能になると共に、耐震性に優れたものとすることができる。
(4)支柱部を、水平断面の外形が多角形の角錐台形状とした構成とすることにより、該支柱部を中空の筒状とする場合に、周壁の周方向等間隔個所に屈曲個所(折り目)を設けることができるため、支柱部を円筒状とする場合に比して座屈に対する強度を高めることができる。
(5)更に、支柱部の水平断面の外形を八角形とした構成とすることにより、該支柱部を、上記水平構造部が配置してある水平面内で周方向を八分した各方位より作用する外力に対して均等な剛性を有するものとすることができる。したがって、上記支柱部を、該支柱部を中心として上記水平構造部の各リブが延びる方向となる四方はもとより、周方向のいかなる方位より作用する外力に対しても、ほぼ均等な剛性を有するものとすることができる。このため、本発明の貯水空間形成ブロックの水平方向の力に対する強度に、水平方向の力が作用する方位の違いによってばらつきが生じることを抑制することができる。
(6)外形を八角形とした支柱部の基端部の外形の頂点となる個所を、接続部を介して水平構造部の支柱部配置用開口部の周縁に接続するようにした構成とすることにより、上記支柱部における上記接続部との取り合い部分を、該支柱部の基端部の外壁面における八角形の外形の頂点となる屈曲個所(折り目)とすることができるため、該支柱部の接続部との取り合い部分の剛性を高めることができる。更に、支柱部の基端部の外壁面における八角形の外形の8つの頂点のうち、1つ置きとなる4つの頂点に上記接続部を接続するようにすれば、該支柱部の基端部の外壁面における周方向の均等な位置に、局部的な強度を弱めることなく上記接続部を接続した構成を容易に実現することができる。
(7)水平構造部を方形とし、支柱部配置用開口部を、上記水平構造部の各辺と平行な辺を備えた正方形とし、支柱部の基端部と水平構造部とを接続する接続部を、上記支柱部配置用開口部の対角線に沿う配置とした構成とすることにより、接続部の長さ寸法を長く設定することができて、該接続部の強度を確保しつつその撓み変形を許容するのに有利な構成とすることができる。又、地震時に地下貯水槽に生じる変形は、該地下貯水槽の矩形の平面形状の各辺に直交する方向に生じ易いが、このような変形に追随する場合に支柱部を水平構造部に垂直な方向から傾ける方向と、上記接続部の位置をずらすことができて、該接続部の強度を確保しつつ上記支柱部の傾動を担保するのに有利な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の貯水空間形成ブロックの実施の一形態を示す概略斜視図である。
【図2】図1の貯水空間形成ブロックにおける1つの支柱部とその周辺を拡大して示すもので、(イ)は平面図、(ロ)は(イ)のA−A方向矢視図である。
【図3】図1の貯水空間形成ブロックを、支柱部が上方に突出する通常姿勢と、上下を反転させた姿勢で上下2段に積層配置して、該上下の各貯水空間形成ブロックの支柱部の先端部同士を突き合わせて連結した状態を示すもので、(イ)は平常状態を、(ロ)は上下の各貯水空間形成ブロックの水平構造部に水平方向に相対変位させる力が作用した状態をそれぞれ示す概略側面図である。
【図4】本発明の実施の他の形態として、接続部の別の例を示すもので、(イ)は貯水空間形成ブロックにおける1つの支柱部とその周辺を示す平面図、(ロ)は(イ)のB−B方向矢視図である。
【図5】本発明の実施の更に他の形態として、接続部の更に別の例を示すもので、(イ)は接続部を水平な平板状とした場合を、(ロ)は接続部を水平な平板とリブからなる逆T字状断面とした場合を、(ハ)は接続部の断面形状を十字状とした場合をそれぞれ示す図4(ロ)に対応する図である。
【図6】地下貯留槽の概要を示す切断側面図である。
【図7】従来の貯水空間形成ブロックの一例を示すもので、(イ)は概略平面図、(ロ)は概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0025】
図1乃至図3(イ)(ロ)は本発明の貯水空間形成ブロックの実施の一形態を示すもので、以下のようにしてある。
【0026】
すなわち、本発明の貯水空間形成ブロックは、図1及び図2(イ)(ロ)に符号12で示すように、水平面内で互いに直交する2方向に延びるリブ14aと14bを縦横に組み合わせて、支柱部配置用開口部としての格子目15を有する構造(格子構造)の水平構造部13を備え、且つ該水平構造部13における上記格子目15の内側に、上下方向に或る高さ寸法で延びる支柱部16の下端部となる基端部を配置して、該支柱部16の基端部の外壁面における複数個所と、その外側に位置する上記水平構造部13の格子目15の周縁を形成しているリブ14a,14bの所要個所とを、該各リブ14a,14bの剛性よりも低い剛性の接続部17を介して一体に接続してなる構成とする。
【0027】
詳述すると、上記水平構造部13を構成するための各リブ14a,14bは、上下方向に或る高さ寸法を有し且つ或る厚み寸法を備えた上下に長い矩形断面としてある。
【0028】
又、上記水平構造部13は、平面形状を正方形として、図1に示すように、その正方形の各辺に沿う外周部位置に、或る間隔で平行に配置した2本ずつのリブ14aと14bを備えると共に、上記正方形の2組の対辺の中間部同士を結ぶ位置に、或る間隔で平行に配置した3本ずつのリブ14aと14bを備え、該各リブ14aと14bを同一平面内で縦横に組み合わせて一体にした構成としてあり、これにより、上記正方形の各コーナの内側となる4個所に、上記リブ14aと14bによって囲まれた正方形の格子目15が、上記支柱部16の基端部の平面形状よりもやや大きなサイズで形成してある。
【0029】
更に、上記各格子目15の各辺の中間位置の外側面にも、縦方向と横方向の短いリブ14aと14bを直角方向に一体に組み合わせて設けるようにしてある。
【0030】
なお、上記縦横の各リブ14a,14bにより囲まれた上記格子目15以外の区画には、水を通過させるための透口18が設けてある。
【0031】
上記支柱部16は、筒状としてあり、その水平断面の外形を、一例として、多角形状としての八角形状とするようにしてある。これにより、周壁の周方向等間隔個所に屈曲個所(折り目)を設けることで、円筒に比して座屈に対する強度を高めることができるようにしてある。更には、該支柱部16を、水平面内で周方向を八分した各方位より作用する外力に対して均等な剛性を有するものとすることができることから、上記支柱部16を、該支柱部16を中心として上記水平構造部の各リブ14a,14bが延びる方向となる四方はもとより、周方向のいかなる方位より作用する外力に対しても、ほぼ均等な剛性を有するものとすることができるようにしてある。
【0032】
更に、上記筒状としてある支柱部16は、下端部(基端部)より上端部(先端部)に向けて徐々に平面形状が小さくなる角錐台形状とすると共に、基端側の開口19が、該支柱部16の先端部の外径寸法よりも大きくなるようにして、1つの貯水空間形成ブロック12の各支柱部16の内側に、その基端側の開口19を通して、別の貯水空間形成ブロック12の各支柱部16における水平構造部13の上端より上方へ突出する部分を収容することができるようにしてある。これにより、本発明の貯水空間形成ブロック12は、各支柱部16の突出する向きを同じ方向に揃えた状態で複数個スタックすることができるようにしてある。よって、使用前の貯水空間形成ブロック12をスタックしておくようにすることで、その保管や運搬に要するスペースを小さくすることができるようにしてある。
【0033】
上記各支柱部16の先端部は、天板20で閉塞させるようにしてある。更に、該各支柱部16の天板20には、図1及び図2(イ)に示すように、上記水平構造部13の平面形状である正方形の中央を中心とする同心円上で、且つ該正方形の対角線を中心軸とする対称位置に、上向きに突出する係合用突部21と、該係合用突部21を挿入するための係合穴22がそれぞれ設けてある。これにより、支柱部16を上向きとした通常姿勢の貯水空間形成ブロック12の上側に、上下を反転させた姿勢の別の貯水空間形成ブロック12を配置して、上下方向に対向配置される双方の支柱部16の先端同士を突き合わせるときに、一方の係合用突部21を他方の係合穴22に挿入させると共に、他方の係合用突部21を一方の係合穴22に挿入させることができるようにしてあり、よって、上記上下に突き合せた支柱部16の先端部同士を、水平方向への相対変位を拘束した状態で繋ぐことができるようにしてある。
【0034】
上記支柱部16は、基端部の外壁面における八角形の外形の8つの頂点のうち、1つ置きとなる4つの頂点が、上記水平構造部13に設けた正方形の格子目15の対角線上に位置するようにした姿勢で該格子目15の中央に配置してあり、この状態で、該支柱部16の基端部の上記4つの頂点と、該4つの頂点が対向する上記水平構造部13の格子目15の対角線に沿う4個所のリブ14a,14bとの間に個別の接続部17を配置して、該各接続部17の外側端部を、上記格子目15の各コーナ部を形成しているリブ14a及び14bにそれぞれ一体に接続すると共に、該各接続部17の内側端部を、上記支柱部16の基端部の上記4つの頂点に、それぞれ一体に接続する。これにより、上記支柱部16における上記接続部17との取り合い部分を、該支柱部16の基端部の外壁面における八角形の外形の4つの頂点、すなわち、周壁の屈曲個所(折り目)とすることができるため、該支柱部16の接続部17との取り合い部分の剛性を高めることができるようにしてある。よって、上記支柱部16の基端部の外壁面における周方向の均等な位置に、局部的な強度を弱めることなく上記接続部17を介して水平構造部13の格子目15の対応するコーナ部を一体に接続することができるようにしてある。
【0035】
上記支柱部16の基端部と、水平構造部13における上記格子目15の周縁に存在するリブ14a,14bとを接続するための接続部17は、たとえば、図2(イ)(ロ)に示すように、その断面形状を、上記水平構造部13を形成している各リブ14a,14bと同様の厚み寸法で且つ該各リブ14a,14bに比して高さ寸法が小さい矩形断面形状とすることで、上記各リブ14a,14bに比して断面積を低減させるようにしてあり、これにより、該接続部17と上記各リブ14a,14bを同一の樹脂により形成した場合に、該接続部17の剛性が、上記各リブ14a,14bの剛性よりも低くなるようにしてある。
【0036】
なお、上記本発明の貯水空間形成ブロック12は、上記水平構造部13、各支柱部16及び各接続部17を、樹脂により一体成型するようにしてあるものとする。
【0037】
以上の構成としてある本発明の貯水空間形成ブロック12は、上記支柱部16の基端部を、上記水平構造部13の格子目15の内側に、該水平構造部13を形成しているリブ14a,14bに比して剛性が低い接続部17を介して接続した構成としてあるため、上記支柱部16の先端部と、上記水平構造部13に、水平方向に相対変位させるような力が作用すると、上記水平構造部13や支柱部16に過大な荷重が作用する以前に、先ず、上記支柱部16の基端部と水平構造部13を繋いでいる各接続部17に撓みが生じ、この接続部17の撓み変形により、上記支柱部16が、上記水平構造部13の垂直方向から傾くようになる。この際、上記支柱部16を上記水平構造部13と接続する上記接続部17は、支柱部16の周方向に均等配置されているため、上記支柱部16を、上記水平構造部13の垂直方向から全方位に傾けることが可能になる。
【0038】
したがって、上記本発明の貯水空間形成ブロック12により、図3(イ)に示す如く、図6に示したような地下貯水槽Iを構築する場合と同様に、支柱部16を上向きとした通常姿勢の貯水空間形成ブロック12の上側に、上下を反転させた姿勢の別の貯水空間形成ブロック12を配置して、上下方向に対向配置される双方の支柱部16の先端同士を突き合わせて繋いだ構造を形成した状態で、上下の各貯水空間形成ブロック12の水平構造部13同士に、水平方向に相対変位させるような力、たとえば、図3(イ)に矢印fで示すように、下側の貯水空間形成ブロック12の水平構造部13の位置を基準として、上側の貯水空間形成ブロック12の水平構造部13に水平方向左向きの力が作用すると、図3(ロ)に示すように、個々の貯水空間形成ブロック12では、前述したような接続部17(図1及び図2(イ)(ロ)参照)の撓み変形による水平構造部13に対する各支柱部16が相対的に傾く変形が許容されるため、上記上下の各貯水空間形成ブロック12の支柱部16同士の突き合せ部分が保持されたまま、下側の貯水空間形成ブロック12の水平構造部13に対し、上側の貯水空間形成ブロック12の水平構造部13の上記力が作用する方向(図では左側)への変位が生じるようになる。
【0039】
よって、本発明の貯水空間形成ブロック12では、図6に示した貯水空間形成ブロック3と同様にして地下貯水槽Iを形成した状態で、地震発生時に、その周囲に存在する土砂より作用する土圧が周方向で不均等になることに伴って、図6に二点鎖線で示したような上部と下部が水平方向に相対変位して側面形状が平行四辺形となるような変形が生じる場合には、上記図3(イ)(ロ)に示したと同様の作用により、上下方向に積層配置された各段の貯水空間形成ブロック12における各支柱部16の上下方向に連続する配置構造を保持したまま、該各段の貯水空間形成ブロック12の水平構造部13を水平方向へ相対変位させることが可能になる。これにより、地震発生時であっても、上記支柱部16に水平構造部13の水平方向の変位に抗するために作用する水平力を大幅に抑制することができる。
【0040】
以上により、本発明の貯水空間形成ブロック12は、図6に示した貯水空間形成ブロック3と同様に地下貯水槽Iを構築すると、該地下貯水槽Iの周囲に存在する土砂より作用する土圧による水平方向の荷重を受ける水平構造部13と、地下貯水槽Iに対して天板5(図6参照)の上方より作用する該地下貯水槽Iを埋め戻した部分に存在する土、及び、地下貯水槽Iの真上の地面に配置された物体の鉛直方向の荷重を受ける支柱部16とについて、それぞれの機能を明確に分離することができるようになることから、上記水平構造部13と支柱部16について、上記地下貯水槽I(図6参照)構築時に作用する水平方向の荷重の許容値と、鉛直方向の荷重の許容値を別々に定めて設計できるようになるため、従来の貯水空間形成ブロックに比してブロック全体での重量の軽減化を図ることが可能になると共に、耐震性に優れたものとすることができる。
【0041】
しかも、上記本発明の貯水空間形成ブロック12では、支柱部16の基端部と水平構造部13とを繋ぐ各接続部17を、該水平構造部13に設けた格子目15の対角線方向に沿って配置してあることから、該各接続部17の長さ寸法を長く設定することができて、該各接続部17の強度を確保しつつその撓み変形を許容するのに有利な構成とすることができる。又、上記図6に示したと同様の地下貯水槽Iを構築した場合、地震時に該地下貯水槽Iに生じる変形は、地下貯水槽Iの矩形の平面形状の各辺に直交する方向に生じ易いため、このような変形に追随するには、個々の貯水空間形成ブロック12にて、支柱部16を水平構造部13の正方形の平面形状の各辺の中央部の方向へ傾ける必要が生じるが、この際、上記各接続部17が、支柱部16の傾く方向からずれた位置に配置されているため、該各接続部17のいずれもが突っ張る虞がなく、よって、該各接続部17の強度を確保しつつ上記支柱部16の傾動を担保するのに有利な構成とすることができる。
【0042】
上記においては、支柱部16の基端部と水平構造部13とを繋ぐ接続部17を、該水平構造部13を構築するリブ14a,14bと同じ厚みで、高さ寸法を減少させた断面形状を備えたものとして示したが、図4(イ)(ロ)に示すように、上記リブ14a,14bと同じ高さ寸法で、且つ該リブ14a,14bに比して厚み寸法を低減させた断面形状の接続部17aとしてもよい。
【0043】
以上の構成としてある図4に示す貯水空間形成ブロック12においても、上記接続部17aの剛性を、上記リブ14a,14bの剛性に比して低減させることができるため、上記水平構造部13と、支柱部16の先端部に水平方向に相対変位させるような力が作用すると、上記水平構造部13や支柱部16に過大な荷重が作用する以前に、先ず、上記支柱部16の基端部と水平構造部13を繋いでいる各接続部17aに撓みが生じ、この接続部17aの撓み変形により、上記支柱部16が、上記水平構造部13の垂直方向から傾くようになる。
【0044】
よって、図4(イ)(ロ)の実施の形態においても、図1乃至図3(イ)(ロ)の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0045】
又、上記接続部の剛性を、上記リブ14a,14bの剛性に比して低減させることができるようにしてあれば、図5(イ)に示すような水平方向に扁平した断面形状の接続部17b、図5(ロ)に示すような断面形状逆T字状の接続部17c、図5(ハ)に示すような断面形状十字状の接続部17dを採用してもよい。更には、接続部の剛性を、上記水平構造部13のリブ14a,14bの剛性に比して低減させることができ、且つ該接続部を、上記水平構造部13及び支柱部16と一体成型が可能となるようにしてあれば、任意の断面形状を採用してよい。
【0046】
図4(イ)(ロ)及び図5(イ)(ロ)(ハ)において、図1及び図2に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0047】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、上記各実施の形態では、4つの支柱部16を備えた構成について説明したが、支柱部16の数は、水平構造部13の平面形状が正方形である場合は、全方位の剛性を均等化するという観点から考えると、該水平構造部13の水平面内での寸法に応じて、自然数を二乗した数に設定することが望ましいが、上記水平構造部13の平面形状が正方形以外の矩形である場合、あるいは、正方形の場合であっても、支柱部16の数を適宜変更してもよい。
【0048】
本発明の貯水空間形成ブロック12にて、支柱部16を単数とする場合は、水平構造部13を、格子構造ではなく、平面形状の中央に1つの支柱部配置用開口部を備えた形状とすればよい。
【0049】
支柱部16は、水平断面の外形が八角形のものとして示したが、八角形以外の多角形状としてもよい。更には、支柱部16として、水平断面の外形が円形のものを採用してもよい。この場合は、支柱部16を円錐台形状とすれば、本発明の貯水空間形成ブロック12を、支柱部16の突出する向きを同じ方向に揃えた状態で複数個スタックする場合に有利な構成とすることができる。
【0050】
支柱部16は、本発明の貯水空間形成ブロック12をスタックできるようにするという観点から考えると角錐台形状や円錐台形状とすることが望ましいが、基端部から先端部までの断面寸法が同一となる形状のものとしてもよい。
【0051】
接続部17,17a,17b,17c,17dは、上記支柱部16の基部の外壁面における周方向等間隔の複数個所と、その外側に位置する水平構造部13の格子目15又は支柱部配置用開口部の周縁を形成するリブ14a,14bの対応する個所とを接続できるようにしてあれば、支柱部16の周りに配置する接続部17,17a,17b,17c,17dの数を、2、3又は5以上としてもよい。又、水平断面の外形を多角形状としてある支柱部16と該接続部17,17a,17b,17c,17dとの取り合い部分の剛性を高めるという観点から考えると、接続部17,17a,17b,17c,17dの内側端部は、支柱部16の基端部における外形の頂点となる個所に接続することが望ましいが、上記取り合い部分に所望する剛性に応じて頂点以外の個所に接続するようにしてもよい。更に、接続部17,17a,17b,17c,17dを、水平構造部13のリブ14a,14bと平行な方向に延びるように配置する等、水平構造部13の格子目15又は支柱部配置用開口部の対角線方向以外の方向に配置した構成としてもよい。
【0052】
水平構造部13における格子目15や支柱部配置用開口部は、その内側に支柱部16の基端部を接続部17,17a,17b,17c,17dを介して接続できるようにしてあれば、上記支柱部16の基端部の形状に応じて、正方形以外の平面形状としてもよい。
【0053】
水平構造部13の外周縁部に、水平方向や上下方向に隣接して配置される別の貯水空間形成ブロック12の水平構造部13との接続を行うためのジョイントを装備してなる構成としてもよい。この場合、上記ジョイントの形式が、たとえば、水平方向に凹凸を有する形式であること等に伴って、水平構造部13の最外周に縦横に連続するリブ14a,14bを設けることができない場合は、該水平構造部13の最外周部の厚み寸法を、縦横に連続するリブ14a,14bの上下寸法よりも減少させるようにしてもよい。
【0054】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
12 貯水空間形成ブロック
13 水平構造部
14a,14b リブ
15 格子目(支柱部配置用開口部)
16 支柱部
17,17a,17b,17c,17d 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面内で直交する2方向に延びるリブを縦横に組み合わせて、支柱部配置用開口部を備えた水平構造部を形成し、且つ上下方向に延びる支柱部の基端部を、上記水平構造部の支柱部配置用開口部の内側に配置すると共に、該支柱部の基端部の外壁面における複数個所と、その外側に位置する上記水平構造部の支柱部配置用開口部の周縁の対応する個所とを、上記水平構造部を形成するリブの剛性よりも低剛性の接続部を介して一体に接続してなる構成を有することを特徴とする貯水空間形成ブロック。
【請求項2】
支柱部を、水平断面の外形が多角形の角錐台形状とした請求項1記載の貯水空間形成ブロック。
【請求項3】
支柱部の水平断面の外形を八角形とした請求項2記載の貯水空間形成ブロック。
【請求項4】
外形を八角形とした支柱部の基端部の外形の頂点となる個所を、接続部を介して水平構造部の支柱部配置用開口部の周縁に接続するようにした請求項3記載の貯水空間形成ブロック。
【請求項5】
水平構造部を方形とし、支柱部配置用開口部を、上記水平構造部の各辺と平行な辺を備えた正方形とし、支柱部の基端部と水平構造部とを接続する接続部を、上記支柱部配置用開口部の対角線に沿う配置とした請求項1、2、3又は4記載の貯水空間形成ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−158864(P2012−158864A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17158(P2011−17158)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(509338994)株式会社IHIインフラシステム (104)
【Fターム(参考)】