説明

貯水装置及びその設置方法

【課題】
災害時であっても電力等を必要とすることなく、常に新鮮な水を確保し、災害発生時においても確実に取水することができる貯水装置を提供する。
【解決手段】管材が渦巻き状に捲き回されて積層され、その内部に水を貯留させる管材積層部6と、管材積層部6の一端に接続される流入口4と、管材積層部6の他端に接続される流出口5と、流入口4に設けられ、管材積層部6内の水圧により、水の逆流を抑える逆止弁7と、逆止弁7の管材積層部6側に設けられ、管材積層部6内の水を流出させる取水口8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、水道水を貯水容器に直結して常に新鮮な水を確保しておける貯水装置及びその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、災害発生時に備えて飲用水を確保するためには、容器や受水槽などに水を貯えておくのが一般的であった。ところが、従来のタンクや容器は、藻、細菌などが発生し腐敗するため、タンクや容器に蓄えた水を定期的に交換し、タンクを掃除しなければならないという問題があった。
【0003】
このような問題を解決する技術として、例えば特許文献1に開示された貯水装置がある。この特許文献1に開示された貯水装置は、内部に中空を有する収納体と、収納体内に捲き回された状態で収納され、その内部に水を貯留させるホース部と、ホース部の一端に接続される流入口と、ホース部の他端に接続される流出口と、流入口4側に設けられてホース部内の水を流出させる取水口とを備える。
【0004】
このような特許文献1に開示された貯水装置によれば、普段の貯水は、水道水の圧力により、流入口から流出口へ水を流し、非常時にあっては、装置内に貯められた水を取水口から取り出すことができ、災害発生時においても給水することができる。
【特許文献1】特許第4040667号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術では、収納体の内部にホースを捲き回して収納するものであるため、収納体が必須であるため、収納体分の体積が嵩み、設置場所に制約があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような問題を解決するものであり、電力等を必要とすることなく、常に新鮮な水を確保し、取水することができるとともに、装置の体積を低減して、設置可能な場所を拡大することのできる貯水装置及びその設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、管材が渦巻き状に捲き回されて積層され、その内部に水を貯留させる管材積層部と、管材積層部の一端に接続される流入口と、管材積層部の他端に接続される流出口と、流入口に設けられ、管材積層部内の水圧により、水の逆流を抑える逆止弁と、逆止弁の管材積層部側に設けられ、管材積層部内の水を流出させる取水口とを備える。
【0008】
このような本発明によれば、普段の貯水は、水道水の圧力により、流入口から流出口へ水を流し、非常時にあっては、装置内に貯められた水を取水口から取り出すことができ、災害発生時においても給水することができる。また、取水口の上流には逆止弁が設けられているため、ホース部内の水が逆流することなく、装置内には常に新鮮な水が蓄えられることとなる。そして、特に、本発明では、管材を渦巻き状に捲き回して積層した構成とし、管材積層部を収納する容器を必要としないため、装置全体の体積を縮小することができ、設置場所の制約を低減することができる。
【0009】
なお、上記発明において管材としては、例えば、ステンレスや鉄材、銅等の金属や、塩ビ管、硬化プラスチック、高強度の樹脂など、積層した際に自立する程度の硬度を有することが望ましい。
【0010】
上記発明において、管材積層部は、管材を渦巻き状に捲き回して円盤状とした積層単位を積み上げて構成され、管材は、各積層単位において、渦巻き状に捲き回された外端と内端とが上下反対に傾斜され、管材積層部は、各積層単位を、その表裏が交互に反対となるように積み上げ、上下に位置する積層単位の内端同士、又は外端同士を接続して積層されることが好ましい。
【0011】
なお、このような管材積層部を備えた貯水装置は、以下の手順を有する設置方法により設置することができる。
(1)複数の管材をそれぞれ渦巻き状に捲き回して円盤状とするとともに、各管材の外端と内端とを上下反対に傾斜させて、複数の積層単位を形成し、
(2)前記各積層単位を、その表裏が交互に反対となるように積み上げ、上下に位置する積層単位の内端同士、又は外端同士を接続しつつ積層して前記管材積層部を構成する
【0012】
このような発明によれば、管材積層部を積層単位に分解して運搬することができ、設置現場にて組立てることができるため、設置場所の制約をより低減することができる。また、この場合には、同一形状の渦巻きを形成し、それを表裏に交互に反転させて積み上げることができるため、積層単位の形状を一種類とすることができ、製造コストを低減することができるうえ、現場作業における汎用性・利便性を高めることができる。
【0013】
さらに、上記発明において、上下に位置する積層単位の間にそれぞれ介在され、管材が載置される渦巻き状の溝を有する積層容器をさらに備え、上下に位置する積層容器は、上下に連結するための係合部を有することが好ましい。
【0014】
このような管材積層部の設置方法は、前記積層単位を積み上げる際に、前記管材が載置される渦巻き状の溝を有する積層容器を、上下に位置する前記積層単位の間にそれぞれ介在させ、係合部により、上下に位置する前記積層容器を上下に連結することにより行う。
【0015】
このような発明によれば、積層容器内に管材を収納することから、管材に柔軟性のある素材を用いつつ積層させることができ、現場での作業性を高めることができるとともに、装置全体の軽量化を図ることができ、設置箇所の拡大を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように、この発明によれば、電力等を必要とすることなく、常に新鮮な水を確保し、取水することができるとともに、装置の体積を低減して、設置可能な場所を拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下に添付図面を参照して、本発明に係る貯水装置の第1実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る貯水装置1の全体構成を示す斜視図であり、図2は、貯水装置1の垂直断面図であり、図3は、貯水装置1の上面図である。
【0018】
(貯水装置の構成)
図1〜図3に示すように、貯水装置1は、管材を渦巻き状に捲き回して積層することによって構成される。管材積層部6には、その上部に流出口5、下部に流入口4が配設されている。詳述すると、流入口4は、捲き回されて積層された管材積層部6の一端に接続され、流出口5は、管材積層部6の他端に接続されている。そして、図10(a)に示すように、流入口4には、住宅10の外部から引き込まれた水道管12が接続されており、流出口5には、住宅10内に敷設される配管11に接続されている。
【0019】
管材積層部6は、その内部に水を貯留させる1本、又は複数本を連結して1本とした管状の部材を渦巻き状に捲き回し、積層して構成することができる。本実施形態では、管材積層部6は、図4に示すような、管材を渦巻き状に捲き回して円盤状とした積層単位61を積み上げて構成され、各積層単位61において、管材は、渦巻き状に捲き回された外端61aと内端61bとが上下反対に滑らかに屈曲されて傾斜されている。なお、図4において、(a)及び(b)は、同一の積層単位の表裏を表している。
【0020】
そして、管材積層部6は、各積層単位61,61…を、その表裏が交互に反対となるように積み上げ、上下に位置する積層単位の内端61b,61b同士、又は外端61a,61a同士を、接合部61cで接続して積層される。この内端61b,61b又は外端61a,61aは、上下に傾斜されて接続されており、接続部において一定の動水勾配が形成される。このように、上下の管材同士を、滑らかに屈曲させて、或いは自在管などによって、滑らかに傾斜させて接続することにより、内部の水流における摩擦損失を最小とすることができる。なお、この上下の管材同士のつなぎは、本実施形態のように、各積層単位の内縁又は外縁において、管材端部を滑らかに屈曲させる代わりに、図2(b)に示すように、上下に位置する積層単位61,61間において、管材の外端同士及び内端同士を滑らかに傾斜させて接続する自在管61d及び61eを配設するようにしてもよい。
【0021】
また、捲き回されて積層された管材は、ベルトや針金、その他の治具により相互に緊結したり、溶接などで固定して、型くずれを防止してもよく、特に、管材が軟質の素材で形成されている場合には、後述する積層容器を用いることが望ましい。
【0022】
この管材積層部6の全長は、例えば、一般の建築物における配管で必要とされる動水勾配を確保できるように、全損失水頭から、住宅10側での損失水頭及び余裕水頭を差し引き、その残余部分の損失水頭の範囲内で設計される。なお、この管材積層部6は、例えば、ステンレスや鉄材等の金属や、軟質塩化ビニル材、ポリエチレン樹脂等で形成することができる。
【0023】
また、管材積層部6の底部は、図2(a)に示すように、すり鉢状の螺旋部62となっており、渦巻きの外方から内方へ下降する螺旋形状により動水勾配が確保され、管材の内端を下方へ引き出すことにより、管材積層部6の外方において流入口4を接続している。この螺旋部62は、本実施形態では、階段状に高さが変化した同士円状の支持金物63を用いて形成されている。この支持金物63には、必要に応じて、管材を支持金物の中央から外部へ挿通するための挿通孔を設けておく。なお、この第63に代えて、例えば、管材の捲き回し径に対応したすり鉢状の凹部が形成された円盤部材としてもよく、管同士を溶接で固定してもよい。
【0024】
なお、この管材積層部6底部の構成としては、例えば、図5(a)に示すような、渦巻きの内方から外方へ下降する螺旋形状としてもよいし、同図(b)に示すように、螺旋部を設けないで、直接際下段の積層単位61の外端を下方へ引き出してもよく、逆に同図(c)に示すように、螺旋部を設けないで、際下段の積層単位61の内端を、下方へ引き出すように構成してもよい。これらの場合には、それぞれ底部の形状に合わせた支持金物63を設置してもよく、支持金物がなくても管同士を溶接で固定してもよい。管同士を溶接で固定した場合には、見た目は空中での固定配管となる。
【0025】
前記流入口4の内部には、管材積層部6内の水圧により、流入口4から水が逆流するのを抑える逆止弁7が設けられている。この逆止弁7によって、流入口4を通じて管材積層部6内に流入した水道水が、流入口4から逆流せずに、管材積層部6内に貯められることとなる。
【0026】
また、この流入口4には、分岐管41が設けられている。この分岐管41は、逆止弁7の管材積層部6側(収納体側)に位置されており、この分岐管41から、管材積層部6内の水を流出させる取水口8が分岐されている。この取水口8は、バルブ81により開閉され、平常時にこのバルブ81を閉止しておくことにより、上記逆止弁7で逆流が抑止され、管材積層部6内に貯水される。一方、非常時に、バルブ81を開放することにより、管材積層部6内の水頭差によって、管材積層部6内の水を取水口8から取り出すことができる。
【0027】
前記流出口5には、バルブ51が設けられており、流出口5の水流を遮断可能となっている。このバルブ51は、平常時にあっては開放しておき、管材積層部6を通じて水道管12から供給される水道水を住宅10内の配管11側に流出させる。そして、災害時にあっては、このバルブ51を閉止し、災害により住宅10側で発生した汚水が流出口5から管材積層部6内に流入するのを防止することができる。なお、本実施形態では、このバルブ51に連動して開閉する通気口53が、バルブ51の管材積層部6側に設けられている。すなわち、この通気口53を介して、バルブ51を閉止した状態で管材積層部6内への通気を行い、管材積層部6内の流水を促し、下方の取水口8からの取水を促進させることができる。
【0028】
本実施形態では、さらに、収納体2の上部に配置された流出口5に、当該流出口5より下流側の水圧が変動すると止水する緊急止水弁52が設けられている。この緊急止水弁52によれば、災害時に装置下流(建物内)側において配管11が損傷し、水圧が下がるような場合に、装置内の水が流出口5から噴出するのを防止することができ、一方、災害時に下流側の水圧が上がるような場合には、汚水などが逆流して装置内に流入するのを防止することができる。そして、このように緊急止水弁52により下流側が止水されても、本実施形態では、収納体2下方の流入口には逆止弁7が設けられており、さらには、装置内の水頭差によって水は下方(流入口4側)へ流れようとすることから、災害時においても、貯水の流出や汚水の流入を防止しつつ、下方の取水口8から無電力で水を取り出すことができる。
【0029】
なお、上記緊急止水弁52としては、図6に示すような、連結可能な一対のバルブ52a,52bで構成されたものを用いることができる。詳述すると、下流側のバルブ52aの連結端は、径が細くなるようにくびれ形状が形成されているとともに、その先端に凸部52dが設けられている。このくびれ形状の先端は、凸部52dの周囲から、水の流通が可能となっている。一方、上流側のバルブ52bの連結端もは、バルブ52aのくびれ形状に合致し、その上流側で拡径されたボトルネック部が形成されており、ボトルネック部上流の拡径部には、球状の逆止弁が進退可能に封入されている。
【0030】
そして、同図(a)に示すように、バルブ52a,52bが連結されると、バルブ52a側の凸部52dにより、バルブ52b内部の逆止弁52cが、上流側へ押し戻されて通水が可能となり、同図(b)に示すように、バルブ52a,52bが外れると、逆止弁52cが上流側の水圧により、くびれ形状の細径部分に押しつけられて止水するようになっている。これによれば、平常時には、一対のバルブ52a,52bが連結され通水状態となり、災害時などに下流側で急激な水圧の変化が生じた場合には、下流側のバルブ52aが外れ、装置外方からの汚水の流入が遮断されるとともに、上流側の逆止弁52cにより装置内の水が噴出するのを防止することができる。
【0031】
さらに、このような緊急止水弁52は、流入口4側に設けてもよい。この場合の緊急止水弁52は逆止弁7の上流側に設け、上流(水道管12)側の水圧の変動により止水するようにする。これによれば、災害時に水道管12の上流側が破損し、水圧が変動したときに止水することができ、上流側で発生した汚水が流入口4を通じて装置内に流入するのを防止することができる。
【0032】
(貯水装置の設置方法)
以上の構成を有する貯水装置は、本発明の設置方法により設置することができる。
【0033】
先ず、管材積層部6を構成する管材を複数に分割し、各管材をそれぞれ渦巻き状に捲き回して円盤状とするとともに、各管材の外端と内端とを上下反対に傾斜させて、複数の積層単位61,61…を形成する。この積層単位の製作作業は、予め工場などで行ってもよく、現場にて逐次行ってもよい。
【0034】
次いで、本実施形態では、最下段の積層単位を、図2(a)に示すような、すり鉢状螺旋部62として形成する。この場合には、積層単位を、渦巻きの外方から内方へ下降するように変形させ、支持金物63上に設置し、内縁の管材を、螺旋部62の下方から、支持金物63内の挿通孔を通して外方へ引き出しておく。
【0035】
そして、各積層単位61,61…を、その表裏が交互に反対となるように積み上げ、上下に位置する積層単位の内端61b,61b同士、又は外端61a,61a同士を接続しつつ積層して管材積層部6を構築する。この積層の際には、必要に応じて、溶接により管材同士を固着したり、緊結線や治具等で相互に緊結するようにしてもよい。
【0036】
その後、積み上げられた積層単位61,61…を、ベルトや針金、その他の治具により緊結するとともに、管材積層部6の上端或いは下端に流入口4を接続し、他端に流出口5を接続する。なお、必要に応じて、断熱材や緩衝材等により寒剤積層部6を覆ってもよい。
【0037】
(本実施形態による作用・効果)
以上説明した本実施形態に係る貯水装置によれば、平常時の貯水は、水道水の圧力により、下方の流入口4から上方の流出口5へ水を流すとともに、逆止弁7によって管材積層部6内の水が逆流しないため、管材積層部6内には常に新鮮な水が蓄えられることとなる。そして、災害発生等の非常時にあっては、上方のバルブ51を閉止し、下方のバルブ81を開放することによって、管材積層部6内に貯水された水頭差によって、無電力により下方の取水口8から取水することができる。
【0038】
そして、特に、本実施形態では、管材を渦巻き状に捲き回して積層した構成としたことから、管材積層部6を収納する容器を必要としないため、装置全体の体積を縮小することができ、設置場所の制約を低減することができる。
【0039】
また、このように装置全体の体積を縮小することにより、例えば、図11に示すように、本装置をビル13等の屋上に設置されている貯水タンク14内に設置することができる。詳述すると、ビル等の屋上に設置された既存の貯水タンク14の内部に、そのまま本装置の貯水装置1を設置し、揚水用の水道管12と、ビル内への配管11とを接続する。これにより、既存の設備、及びスペースをそのまま利用して、地下の揚水ポンプ15でくみ上げられた水を管材中に貯水することができるとともに、従来、タンク内において水が空気に接触していたのを回避することができ、衛生環境を改善することができる。その結果、従来、水道管とは切離されて管理されていた貯水槽を、水道管の一部に含ませることができ、水道管と統合した水質管理を行うことができ、メンテナンスを軽減することができる。
【0040】
また、本実施形態では、管材積層部6を、管材を渦巻き状に捲き回して円盤状とした積層単位61を積み上げて構成するため、管材積層部6を積層単位に分解して運搬することができ、設置現場にて組立て積層させることができ、設置場所の制約をより低減することができる。さらに、本実施形態では、各積層単位61を同一形状(同一の巻き方向)の渦巻きとするとともに、各管材の渦巻きの外端61aと内端61bとを上下反対に傾斜させ、管材積層部6は、各積層単位を、その表裏が交互に反対となるように積み上げ、上下に位置する積層単位61の内端61b,61b同士、又は外端61a,61a同士を接続して積層するため、積層単位の形状を一種類とすることができ、製造コストを低減することができるうえ、現場作業における汎用性・利便性を高めることができる。
【0041】
なお、本実施形態では、流入口4を収納体2の下部に配置し、流出口5を収納体2の上部に配置したが、図10(b)に示すように、水道管12が接続される流入口4を収納体2の上部に配置し、建物内側の配管11が接続される流出口5を収納体2の下部に配置してもよい。この場合、流出口側に取水口8を設けてもよく、上記緊急止水弁52を流入口4又は流出口5、或いはこれらの両方に設けてもよい。緊急止水弁を流入口4側に設ける場合には、上流側の水圧が急激に変動したときに上流側のバルブが外れ、装置内への水の流入を防止するようにすることが好ましい。
【0042】
[第2実施形態]
次いで、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態において、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その機能等は特に言及しない限り同一であり、その説明は省略する。
【0043】
(貯水装置の構成)
本実施形態では、上下に位置する前記積層単位61,61の間に、図8及び図9に示すような、積層容器21及び22をそれぞれ介在させることを特徴とする。この積層容器21及び22は、管材が載置される渦巻き状の溝20を有し、容器の外縁と内縁に、溝20の開口端2a及び2bが形成されている。この溝20は、図8(a)に示すように、積層容器21では左巻きとなっており、同図(b)に示すように、積層容器22では右捲となっており、表裏を交互に反転されて積層される積層単位61の表裏の向きに合わせて、図9(a)に示すように、積層容器21と22とを適宜選択して、交互に使用する。
【0044】
また、この溝20の内縁及び外縁の開口端2a及び2bでは、溝20内に載置され、渦巻き状に捲き回された管材の外端と内端とが、それぞれ上方又は下方に傾斜されるように開口されている。そして、図9(b)に示すように、上下に配置される積層容器21及び22の開口端2a,2bは、上段の管材の外端61aと、下段の管材の外端61aとが、十分な傾斜を確保して接合できるように、所定の間隔Dをもって、上下に対向配置されている。
【0045】
また、この積層容器21,22は、図8(c)に示すように、左右に分離可能となっており、管材積層部6を組立てる際には、図9に示すように、適宜分離され、積層単位61の積み上げに合わせて左右結合される。さらに、この積層容器21,22には、上下に位置するそれぞれの対応箇所に、上下に連結するための係合部2cが取付けられており、上下の積層容器21,22を係合させる用になっている。本実施形態において、積層容器21、22は、管材の全部が収納される程度の深さを有しており、積層容器21,22を積み上げることにより、図7に示すような、収納体2が構成される。なお、この係合部2cとしては、上下に嵌合される凹部と凸部を有するような簡単な構成でもよく、また、上下に強固に連結される治具等でもよい。
【0046】
詳述すると、下段の積層単位の上に上段の積層単位を積み上げる際に、積層単位61の内端61b,61b同士若しくは外端61a,61a同士を接続するとともに、その上段の積層単位の下方において、左右から分離された積層容器を挟み込むようにして挿入する。そして、分離された接合容器を結合することによって形成された溝20内に、捲き回された状態の積層単位61を載置して、上下の積層容器を係合させる。これにより、図7(a)に示すような、収納体2を構築することができる。この収納体2では、例えば、蓋体3により上部開口を閉止するようにしてもよい。
【0047】
さらに、この第2実施形態では、収納体2を構成することから、支持金物63に代えて、図7(b)に示すような、この収納体2の底部として、管材の捲き回し径に対応したすり鉢状の凹部が形成された円盤部材23を設置するようにしてもよい。
【0048】
(貯水装置の設置方法)
以上の構成を有する貯水装置は、本発明の設置方法により設置することができる。設置場所としては、上述した第1実施形態と同様、住宅10内やビル13の屋上とすることができる。なお、本実施形態では、ステンレス製の管材を複数に分割する場合を例に説明する。
【0049】
先ず、管材積層部6を構成する管材を複数に分割し、各管材をそれぞれ渦巻き状に捲き回して円盤状とするとともに、各管材の外端と内端とを上下反対に傾斜させて、複数の積層単位61,61…を形成する。この積層単位の製作作業は、予め工場などで行ってもよく、現場にて逐次行ってもよい。
【0050】
次いで、本実施形態では、最下段の積層単位を、図2(a)に示すような、すり鉢状螺旋部62として形成する。この場合には、積層単位を、渦巻きの外方から内方へ下降するように変形させ、支持金物63上に設置し、内縁の管材を、螺旋部62の下方から、支持金物63内の挿通孔を通して外方へ引き出しておく。なお、本実施形態では、収納体2を構成することから、支持金物63に代えて、この収納体2の底部として、管材の捲き回し径に対応したすり鉢状の凹部が形成された円盤部材23を設置する。
【0051】
そして、各積層単位61,61…を、その表裏が交互に反対となるように積み上げ、上下に位置する積層単位の内端61b,61b同士、又は外端61a,61a同士を接続しつつ積層して管材積層部6を構築する。この積層単位61,61…を積み上げる際、上下に位置する積層単位の間に積層容器21,22を交互に介在させ、各積層容器21,22の溝20に管材を載置する。その後、係合部2cにより、上下に位置する積層容器を上下に連結して、収納体2を構成する。なお、必要に応じて、収納体2の内外に断熱材や緩衝材を配置してもよい。
【0052】
その後、積み上げられた積層単位61,61…を、ベルトや針金、その他の治具により緊結するとともに、管材積層部6の上端或いは下端に流入口4を接続し、他端に流出口5を接続する。
【0053】
なお、本実施形態では、ステンレス製の管材を複数に分割する場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、軟質のホースを螺旋状に巻き回しつつ積み上げる際にも、上記手順により積層容器を介在させることができる。
【0054】
(本実施形態による作用・効果)
以上説明した第2実施形態によれば、上下に位置する積層単位61,61の間にそれぞれ積層容器21,22を介在させ、積層容器21,22内に管材を収納することから、管材に柔軟性のある素材を用いることができ、現場での作業性を高めることができるとともに、装置全体の軽量化を図ることができ、設置箇所の拡大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第1実施形態に係る貯水装置1の全体構成を示す斜視図である。
【図2】(a)は、第1実施形態に係る貯水装置1の垂直断面図であり、(b)は、管材の接続構造の変更例である。
【図3】第1実施形態に係る貯水装置1の上面図である。
【図4】第1実施形態に係る積層単位61の斜視図である。(a)は表面を示し、(b)はその裏面を示している。
【図5】第1実施形態に係る貯水装置の底部の変更例を示す垂直断面図である。
【図6】第1及び第2実施形態に係る緊急止水弁を示す断面図である。
【図7】(a)は、第2実施形態に係る貯水装置1の全体構成を示す斜視図であり、(b)は、その底部の構成例を示す断面図である。
【図8】第2実施形態に係る積層容器21,22を示す斜視図である。
【図9】第2実施形態に係る積層容器21,22を用いた積層方法を示す説明図である。
【図10】第1及び第2実施形態に係る貯水装置1を住宅内に設置した状況を示す模式図である。
【図11】第1及び第2実施形態に係る貯水装置1をビル屋上の貯水槽内に設置した状況を示す模式図である。
【符号の説明】
【0056】
1…貯水装置
2…収納体
2a,2b…開口端
2c…係合部
3…蓋体
4…流入口
5…流出口
6…管材積層部
7…逆止弁
8…取水口
10…住宅
11…配管
12…水道管
13…ビル
14…貯水タンク
15…揚水ポンプ
20…溝
21,22…積層容器
23…円盤部材
41…分岐管
51…バルブ
52…緊急止水弁
52a,52b…バルブ
52c…逆止弁
52d…凸部
53…通気口
61,61…積層単位
61a…外端
61b…内端
61c…接合部
62…螺旋部
63…支持金物
81…バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管材が渦巻き状に捲き回されて積層され、その内部に水を貯留させる管材積層部と、
前記管材積層部の一端に接続される流入口と、
前記管材積層部の他端に接続される流出口と、
前記流入口に設けられ、前記管材積層部内の水圧により、水の逆流を抑える逆止弁と、
前記逆止弁の管材積層部側に設けられ、該ホース部内の水を流出させる取水口と
を備えることを特徴とする貯水装置。
【請求項2】
前記管材積層部は、管材を渦巻き状に捲き回して円盤状とした積層単位を積み上げて構成され、
前記管材は、各積層単位において、渦巻き状に捲き回された外端と内端とが上下反対に傾斜され、
前記管材積層部は、前記各積層単位を、その表裏が交互に反対となるように積み上げ、上下に位置する積層単位の内端同士、又は外端同士を接続して積層される
ことを特徴とする請求項1に記載の貯水装置。
【請求項3】
上下に位置する前記積層単位の間にそれぞれ介在され、前記管材が載置される渦巻き状の溝を有する積層容器をさらに備え、
上下に位置する前記積層容器は、上下に連結するための係合部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の貯水装置。
【請求項4】
管材が渦巻き状に捲き回されて積層され、その内部に水を貯留させる管材積層部を備える貯水装置の設置方法であり、
複数の管材をそれぞれ渦巻き状に捲き回して円盤状とするとともに、各管材の外端と内端とを上下反対に傾斜させて、複数の積層単位を形成し、
前記各積層単位を、その表裏が交互に反対となるように積み上げ、上下に位置する積層単位の内端同士、又は外端同士を接続しつつ積層して前記管材積層部を構成する
ことを特徴とする貯水装置の設置方法。
【請求項5】
前記積層単位を積み上げる際に、前記管材が載置される渦巻き状の溝を有する積層容器を、上下に位置する前記積層単位の間にそれぞれ介在させ、
係合部により、上下に位置する前記積層容器を上下に連結する
ことを特徴とする請求項4に記載の貯水装置の設置方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−293195(P2009−293195A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145025(P2008−145025)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【特許番号】特許第4208053号(P4208053)
【特許公報発行日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(507080536)
【Fターム(参考)】