説明

貯湯式給湯装置

【課題】排水弁の弁固着防止動作を給湯の使い勝手を損ねることなく実行する。
【解決手段】湯水を貯湯する貯湯タンク2と、貯湯タンク2下部に接続された給水管3と、給水管3の途中に設けられた止水弁5と、貯湯タンク2から給湯する給湯管6と、貯湯タンク2底部に接続された排水管13と、排水管13の途中に設けられた排水弁14と、所定の時間帯に貯湯タンク2内の湯水を加熱する加熱手段16と、貯湯タンク2内の過圧を逃がすための過圧逃し弁12と、を備え、加熱手段16による加熱動作の開始後に止水弁5を閉じて排水弁14を開く弁固着防止動作を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯タンク内の湯水を自動で排水できるようにした貯湯式給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の貯湯式給湯装置においては、湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク下部に接続された給水管と、前記給水管の途中に設けられた止水弁と、前記貯湯タンクから給湯する給湯管と、前記貯湯タンク底部に接続された排水管と、前記排水管の途中に設けられた排水弁と、前記貯湯タンク内の湯水を加熱する加熱手段と、前記貯湯タンク内の過圧を逃がすための過圧逃し弁とを備え、遠隔操作によって止水弁を閉じると共に排水弁を開いて貯湯タンク内の湯水を自動排水できるようにしたものがあった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−98639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この従来のものでは、排水弁が固着しないように定期的に開弁することが求められるが、排水弁を開くと大きな排水音が発生すると共に、排水が飛散してしまうことがあるため、止水弁を閉じた上で排水弁を開く必要がある。
【0005】
しかし、給湯が行われている最中に弁固着防止動作が行われると、止水弁を閉じた上で排水弁を開く必要があるため、給湯が一時的に停止されてしまうこととなり使い勝手に問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するため、湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク下部に接続された給水管と、前記給水管の途中に設けられた止水弁と、前記貯湯タンクから給湯する給湯管と、前記貯湯タンク底部に接続された排水管と、前記排水管の途中に設けられた排水弁と、所定の時間帯に前記貯湯タンク内の湯水を加熱する加熱手段と、前記貯湯タンクの上部にこの貯湯タンク内の過圧を逃がすための過圧逃し弁と、を備え、前記加熱手段による加熱動作の開始後に前記止水弁を閉じて前記排水弁を開く弁固着防止動作を行うようにした。
【0007】
また、前記加熱手段による加熱動作の開始から一定時間経過後に前記弁固着防止動作を行うようにした。
【0008】
また、前記加熱手段による加熱動作の開始後、加熱後の湯水の温度が所定温度以上となったことを検知したら前記弁固着防止動作を行うようにした。
【0009】
また、前記給湯管に給湯流量センサと、前記給湯流量センサの検出結果に応じて給湯が行われない可能性の高い時間帯を記憶する非給湯時間帯記憶手段とを設け、非給湯時間帯記憶手段の記憶する給湯が行われない可能性の高い時間帯に前記弁固着防止動作の実行を許可するようにした。
【発明の効果】
【0010】
このように本発明によれば、弁固着防止のために排水弁を開いた際の排水音の発生と排水の飛散を抑制することができると共に、給湯が行われている可能性が低い所定の時間帯の加熱開始後に弁固着防止動作を行うため、給湯の使い勝手を損ねない。
【0011】
しかも、加熱動作の開始後に排水弁を開いて弁固着防止動作を行うこととしているため、加熱による貯湯タンク内の圧力上昇が起こってから排水弁を開いて内圧を排水管から逃がすこととなり、過圧逃し弁から排出される加熱された膨張水を減少させることができ、熱ロスを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態のシステム図。
【図2】同一実施形態の作動を説明するフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
1は湯水を貯湯する貯湯タンク2を有した貯湯ユニット、3は貯湯タンク2の下部へ給水する給水管、4は給水管途中に設けられ給水圧を第1所定圧力にまで減圧する減圧弁、5は減圧弁より上流側に設けられ電気的な指令によって給水を遮断する止水弁である。この止水弁5は閉駆動パルスを受けると開弁状態から閉弁状態に切り換わると共に、閉駆動パルスと逆極性の開駆動パルスを受けると閉弁状態から開弁状態に切り換わり、開状態あるいは閉状態を永久磁石により保持するラッチング型の給水遮断弁により構成されているものである。
【0014】
6は貯湯タンク2の上部の湯を給湯栓7へ給湯する給湯管、8は給水管3から分岐されて給湯管6途中へ接続された給水バイパス管、9は給湯管6と給水バイパス管8との合流点に設けられ貯湯タンク1からの湯と給水管6からの水を任意の混合比率に調節する混合弁、10は混合弁9の下流に設けられ給湯流量を検出する給湯流量センサ、11は給湯流量センサ10の下流に設けられ給湯温度を検出する給湯温度センサ、12は給湯管6の貯湯タンク2に近い位置で接続されこの貯湯タンク内の圧力が第1所定圧力より高い第2所定圧力を超過すると開弁して過圧を逃がす過圧逃し弁である。
【0015】
13は貯湯タンク2の底部に接続された排水管、14は排水管13途中に設けられ電気的な指令によって開いて貯湯タンク2の排水を行う排水弁、15は排水弁14に並列に設けられた手動の排水栓である。ここで、排水管13は給水管3から分岐する形態で貯湯タンク2の底部に接続されていると共に、排水弁14の下流と排水栓15の下流とは一つの排水管に合流して排水される形態としている。ここで、排水弁14は弁体が開位置あるいは閉位置にあることをホールICにより検知可能なモータバルブ式の電動弁により構成されているものである。
【0016】
16は貯湯タンク2内の湯水を加熱するヒートポンプ式の加熱手段で、貯湯タンク2の下部から取り出した水を加熱して貯湯タンク2の上部へ戻すように循環回路17で貯湯タンク2と接続されている。なお、このヒートポンプ式の加熱手段16の内部には、図示しない圧縮機、水冷媒熱交換器、膨張弁、蒸発器が環状に接続されていると共に、水冷媒熱交換器の水側には循環ポンプを介して循環回路17と貯湯タンク2内の湯水が循環可能に接続されている。
【0017】
18は貯湯タンク2の側面上下に複数設けられ貯湯タンク2内の湯水の温度を検出する貯湯温度センサ、19は給湯設定温度を設定可能であると共に自動排水の指示を行うリモートコントローラ、20はマイクロコンピュータを有してこの貯湯式給湯装置全体の制御を行う制御部である。
【0018】
この制御部20には、給湯流量センサ10の検出結果と時計機能で計時する時刻とを対応付けて、給湯が行われていない時間帯を学習し、これを元に給湯が行われない可能性の高い時間帯(非給湯時間帯)を記憶する非給湯時間帯記憶手段21が設けられている。
【0019】
そして、制御部20は、深夜時間帯になり演算されたピークシフト時刻になると加熱手段16を駆動して翌朝までに翌日に必要な分の熱量を沸き上げると共に、給湯流量センサ10が給湯を検知すると、給湯温度センサ11で検出する給湯温度がリモートコントローラ19で設定された給湯設定温度に一致するように混合弁9の混合比率を制御する。さらに、過圧逃し弁12が開放された後に、制御部20は、リモートコントローラ19から自動排水の指示を受けると、止水弁5を閉じると共に排水弁14を開き、自動排水を行うようにしている。
【0020】
次に、この一実施形態の作動について図2のフローチャートに基づいて説明する。
まず、電力料金単価が安価に設定されている所定の時間帯(深夜時間帯)となり(ステップS1)、ピークシフト時刻となって加熱手段16による加熱動作が開始して沸き上げ開始されると(ステップS2)、沸き上げ開始からの時間をカウントする。
【0021】
そして、沸き上げ開始からの時間が予め定めた一定時間に到達すると(ステップS3)、制御部20は、非給湯時間帯記憶手段21の記憶する非給湯時間帯と現在時刻を比較し、現在時刻が非給湯時間帯内であると(ステップS4)、弁固着防止動作を開始するために、ステップS5で止水弁5を閉じ、その後、ステップS6で排水弁14を開く。このとき、過圧逃し弁12は閉じられたままであるため、排水弁14を開いても貯湯タンク2内には新たに給水されてこないと共に給気もされないため、排水量が少なくなり排水音の発生と排水の飛散を抑制できる。
【0022】
排水弁14を開いた後に、ステップS7では排水弁14に内蔵されているホールICによって弁体が開位置にまで回動したかどうかを判断する。そして、開状態を検知したらステップS8で排水弁14を閉じ、ステップS9で弁体が閉位置にまで回動したかどうかを判断する。閉状態を検知したら、ステップS10で止水弁5を閉じ、弁固着防止動作を終了する。
【0023】
なお、ステップS7で開検知できなかった場合、およびステップS9で閉検知できなかった場合は、排水弁14の異常状態であるとしてエラー報知を行うようにしている(ステップS11)。このようにして弁固着防止動作によって排水弁14の固着異常を防止できると共に、排水弁14が異常状態である場合はエラー報知されるため、異常を早く外部へ報知することができる。ここで、万が一排水弁14の閉検知ができない場合は、給水が排水され続ける恐れがあるため、エラー報知すると同時に止水栓5の閉弁を継続して無駄な排水を行わせないようにしている。
【0024】
このように、一日一回づつ定期的に沸き上げ開始後に止水弁5を閉じて排水弁14を開く弁固着防止動作を行うようにしているため、加熱手段16の加熱動作に伴う貯湯タンク2内の湯水の膨張による内圧上昇が起こってから排水弁14が開かれ、貯湯タンク2の内圧が一時的に低下する。そのため、過圧逃し弁12から排出される加熱された膨張水の量を減少させることができ、熱ロスを低減できるものである。
【0025】
しかも、沸き上げ開始から一定時間が経過するのを待ってから弁固着防止動作を行うようにしているため、過圧逃し弁12が作動する第2所定圧力付近まで貯湯タンク2の内圧が上昇した適切なタイミングで排水弁14が開かれ、過圧逃し弁12から排出する膨張水の量を減少させることが可能となる。ここで、この一定時間は沸き上げ開始から過圧逃し弁12より膨張水が排出されるまでの時間を試験的に求め、この時間に基づいて予め定めるようにすればよい。
【0026】
また、深夜時間帯の加熱手段による沸き上げが開始される時刻ごろは、給湯がほとんど行われない時間帯であるため、弁固着防止動作を行っても給湯の使い勝手をほとんど損ねることがないものである上に、非給湯時間帯記憶手段が給湯が行われない可能性の高い時間帯である非給湯時間帯を記憶しており、この非給湯時間帯に限り弁固着防止動作の実行を許可するようにしているため、給湯中に止水弁5が閉弁されてしまうような事態の発生を未然に防げるものである。
【0027】
なお、沸き上げ開始から一定時間が経過するのを待つ代わりに、沸き上げ後の湯温が所定温度を超えたことを検知したら弁固着防止動作を行うようにしてもよい。このようにして、加熱手段16による沸き上げ開始によって実際に湯温が上昇したタイミングで排水弁14が開かれ、過圧逃し弁12から排出する膨張水の量を減少させることが可能となる。なお、この場合、沸き上げ後の湯温の判断に、貯湯温度センサ18で検出した温度や、加熱手段16内部の水冷媒熱交の水側出口温度を用いてもよい。
【0028】
また、加熱手段16として貯湯タンク2に外部接続されたヒートポンプ式加熱手段を用いて説明したが、これに限られず、貯湯タンク2内に電熱ヒータを配置して加熱手段を構成してもよい。
【符号の説明】
【0029】
2 貯湯タンク
3 給水管
5 止水弁
6 給湯管
9 混合弁
10 給湯流量センサ
12 過圧逃し弁
13 排水管
14 排水弁
16 加熱手段
21 非給湯時間帯記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク下部に接続された給水管と、前記給水管の途中に設けられた止水弁と、前記貯湯タンクから給湯する給湯管と、前記貯湯タンク底部に接続された排水管と、前記排水管の途中に設けられた排水弁と、所定の時間帯に前記貯湯タンク内の湯水を加熱する加熱手段と、前記貯湯タンク内の過圧を逃がすための過圧逃し弁と、を備え、前記加熱手段による加熱動作の開始後に前記止水弁を閉じて前記排水弁を開く弁固着防止動作を行うようにしたことを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項2】
前記加熱手段による加熱動作の開始から一定時間経過後に前記弁固着防止動作を行うようにしたことを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯装置。
【請求項3】
前記加熱手段による加熱動作の開始後、加熱後の湯水の温度が所定温度以上となったことを検知したら前記弁固着防止動作を行うようにしたことを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯装置。
【請求項4】
前記給湯管に給湯流量センサと、前記給湯流量センサの検出結果に応じて給湯が行われない可能性の高い時間帯を記憶する非給湯時間帯記憶手段とを設け、非給湯時間帯記憶手段の記憶する給湯が行われない可能性の高い時間帯に前記弁固着防止動作の実行を許可するようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の貯湯式給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−12911(P2011−12911A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158482(P2009−158482)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【Fターム(参考)】