説明

貯湯式風呂給湯装置

【課題】貯湯タンク内が高温の貯湯状態でも、短時間に温度を低下させて自動的に排水することが出来るようにした貯湯式風呂給湯装置を提供する。
【解決手段】貯湯タンク2に貯湯された湯水温度を検知する複数の貯湯温度センサ35が、排水動作時に排水許可温度以上の高温度を検知している場合には、浴槽6に低温の湯張りを行い、この湯張りは風呂熱交換器19を流通する湯張りとして貯湯タンク2内の湯水温度を排水許可温度まで低下させてから排水するようにしたことにより、排水管48を利用した自動排水を行うことが出来るものであり、使用者の手を煩わすことなく、又給湯で高温水を無駄に捨てるところを使用者に見せることなく、しかも従来より短時間に貯湯タンクの排水が行われ待ち時間も少なく極めて使用勝手が良いものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、湯水を沸き上げて貯湯しこの貯湯した湯水を給湯や風呂に用いる貯湯式風呂給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種のものでは、出張や旅行で長期間家を留守にする時に貯湯タンク内の湯水の凍結防止及び腐敗防止の為に、貯湯タンク内の湯水を自動的に排水するようにしたものであった。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−64581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこの従来のものでは、貯湯タンク内の湯水の排水時に、貯湯タンク内の湯水温度が70℃〜80℃の高温状態であった場合には、そのまま排水路に排水すると、排水後の湯に触れて火傷する危険や、排水路自体が樹脂管などを使用しているので、変形や破損の恐れがあり、高温のままでの排水は出来ず、従来では台所などの混合水洗で水を混ぜて温度を下げて、高温水を先ず排水して貯湯タンク内を給水のみの状態にしてから、排水作業に入るもので、極めて時間がかかり大変な思いをするものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明はこの点に着目し上記課題を解決する為、特にその構成を、湯水を貯湯する貯湯タンクと、該貯湯タンクに給水する給水管と、該給水管を開閉する止水栓と、該貯湯タンク内の湯水を貯湯タンクから出湯する出湯管と、貯湯タンク上部に設けられ貯湯タンク内の過圧を逃がすと共に、該貯湯タンク内を大気と連通させる逃がし弁と、出湯管からの高温水と給水管からの給水とを混合して給湯管に供給する給湯混合弁と、出湯管からの高温水と給水管からの給水とを混合し湯張り管を介して浴槽に設定温度の湯張りを行う風呂混合弁と、前記湯張り管が接続し風呂循環ポンプを備え浴槽内の浴槽水を貯湯タンク内上部に備えた風呂熱交換器に循環させて追い焚きする風呂循環回路と、一端が貯湯タンクの底部に接続され他端が排水路に開口した排水管と、該排水管を開閉する排水栓とを備え、前記止水栓を閉栓し逃がし弁を開放して排水栓を開成することで、貯湯タンク内の湯水を排水するようにしたもにの於いて、前記貯湯タンクに貯湯された湯水温度を検知する複数の貯湯温度センサが、排水動作時に排水許可温度以上の高温度を検知している場合には、浴槽に低温の湯張りを行い、この湯張りは風呂熱交換器を流通する湯張りとして貯湯タンク内の湯水温度を排水許可温度まで低下させてから排水するようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
以上のようにこの発明によれば、長期間に渡って家を空ける時の貯湯タンク内の湯水の排水で、該貯湯タンク内が高温水で満杯の場合には、これを貯湯温度センサで検知して、排水する前に先ず風呂混合弁で低温の湯張り水を造りながら貯湯タンク内の高温水を少しでも減らし、更にこの低温水を風呂熱交換器を通過させながら風呂循環回路を介して浴槽に湯張りすることで、貯湯タンク内の高温水の熱量が低温の湯張り水に吸熱されて温度低下し、排水許可温度まで貯湯温度を下げることにより、排水管を利用した自動排水を行うことが出来るものであり、使用者の手を煩わすことなく、又給湯で高温水を無駄に捨てるところを使用者に見せることなく、しかも従来より短時間に貯湯タンクの排水が行われ待ち時間も少なく極めて使用勝手が良いものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】この発明の一実施形態を示す貯湯式風呂給湯装置の概略説明図。
【図2】同排水運転のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
この貯湯式風呂給湯装置は、時間帯別契約電力の電力単価が安価な深夜時間帯に湯水を沸き上げて貯湯し、この貯湯した湯水を風呂や給湯に用いるもので、更に貯湯缶体内の温水との間接熱交換により浴槽内の浴槽水の追焚き又は保温及び、貯湯缶体内の温水を浴槽内に直接供給する湯張りを行う風呂回路を備えたものである。
【0009】
1は湯水を貯湯する貯湯タンク2を備えた貯湯タンクユニット、3は貯湯タンク2内の湯水を加熱する加熱手段としてのヒートポンプユニット、4は台所や洗面所等に設けられた給湯栓、5はこの給湯栓4の近くに設けられた給湯リモコン、6は浴槽、7は浴室に設けられた風呂リモコンである。
【0010】
前記貯湯タンクユニット1の貯湯タンク2は、上端に出湯管8と、下端に給水管9とが接続され、さらに、下部にヒートポンプ循環回路を構成するヒートポンプ往き管10と、上部にヒートポンプ循環回路を構成するヒートポンプ戻り管11とが接続され、前記ヒートポンプユニット3によってヒートポンプ往き管10から取り出した貯湯タンク2内の湯水を沸き上げてヒートポンプ戻り管11から貯湯タンク2内に戻して貯湯され、給水管9からの給水により貯湯タンク2内の湯水が押し上げられて貯湯タンク2内上部の高温水が出湯管8から押し出されて給湯されるものである。
【0011】
前記ヒートポンプユニット3は、圧縮機12と凝縮器としての冷媒−水熱交換器13と減圧器としての電子膨張弁14と強制空冷式の蒸発器15で構成されたヒートポンプ回路16と、貯湯タンク2内の湯水を前記ヒートポンプ往き管10及びヒートポンプ戻り管11を介して冷媒−水熱交換器13に循環させるヒートポンプ循環ポンプ17と、それらの駆動を制御するヒートポンプ制御部18とを備えており、ヒートポンプ回路16内には冷媒として二酸化炭素が用いられて超臨界ヒートポンプサイクルを構成されているものである。
なお、冷媒に二酸化炭素が用いられているので、低温水を電熱ヒータなしで約90℃の高温まで沸き上げることが可能なものである。
【0012】
ここで、前記冷媒−水熱交換器13は冷媒と被加熱水たる貯湯タンク2内の湯水とが対向して流れる対向流方式を採用しており、超臨界ヒートポンプサイクルでは熱交換時において、冷媒は超臨界状態のまま凝縮されるため効率よく高温まで被加熱水を加熱することが出来、被加熱水の冷媒−水熱交換器13入口温度と冷媒の出口温度との温度差が一定になるように前記電子膨張弁14又は圧縮機12を制御することで、被加熱水の冷媒−水熱交換器13の入口温度が5〜20℃程度の低い温度であると、COP(エネルギー消費効率)がとても良い状態で被加熱水を加熱することが可能なものである。
【0013】
19は前記浴槽6の湯水を加熱するためのステンレス製の蛇管よりなる風呂熱交換器で、貯湯タンク2内の上部に備えられているものであり、又この風呂熱交換器19には風呂往き管20及び風呂循環ポンプ21を備えた風呂戻り管22が接続されて浴槽6の湯水が循環可能にされ、浴槽6内の湯水が貯湯タンク2内の高温水により加熱されて保温或いは追い焚きが行われるのである。
なお、23は風呂戻り管22を循環する浴槽6の湯水の温度を検出する風呂温度センサである。
【0014】
24は出湯管8からの湯水と給水管9から分岐された給水バイパス管25からの低温水を混合する電動ミキシング弁より構成された給湯混合弁であり、その下流の給湯管26に設けた給湯温度センサ27で検出した湯温が給湯リモコン5や風呂リモコン7でユーザーが設定した給湯設定温度になるように混合比率を制御するものである。
【0015】
28は出湯管8から分岐された分岐出湯管29からの湯水と、給水管9から分岐された分岐給水バイパス管30からの低温水とを混合する電動ミキシング弁より構成された風呂混合弁であり、その下流側の風呂戻り管22に連通された湯張り管31の連通部分に設けた湯張り温度センサ32で検出した湯温が給湯リモコン5や風呂リモコン7でユーザーが設定した風呂設定温度になるように混合比率を制御するものである。
【0016】
そして、前記湯張り管31には、浴槽6への湯張りの開始及び停止を行う湯張り弁33と、浴槽6への湯張り量をカウントする風呂流量カウンタ34が設けられているものである。
【0017】
35は貯湯タンク2の上下方向に複数個配置された貯湯温度センサで、この実施形態では5つの温度センサ35a,35b,35c,35d,35eが配置され、この貯湯温度センサ35が検出する温度情報によって、貯湯タンク2内にどれだけの熱量が残っているかを検知し、そして貯湯タンク2内の上下方向の温度分布を検知するものである。
【0018】
前記給湯リモコン5及び風呂リモコン7には、給湯設定温度を設定する給湯温度設定スイッチ36、及び風呂設定温度を設定する風呂温度設定スイッチ37がそれぞれ設けられていると共に、浴槽6への風呂設定温度の湯を風呂リモコン7の湯張り量設定スイッチ(図示せず)で設定された湯張り量だけ湯張りし、所定時間保温させる風呂自動スイッチ38がそれぞれ設けられ、更に風呂リモコン7には約60℃の高温の湯を差し湯させる高温差し湯スイッチ39が設けられているものである。
【0019】
40は貯湯タンクユニット1内の各センサの入力を受け各アクチュエータの駆動を制御するマイコンを有した制御部である。
この制御部40に前記給湯リモコン5が無線又は有線により接続されユーザーが任意の給湯設定温度及び風呂設定温度を設定できるようにしているものである。
【0020】
前記制御部40は、給湯温度センサ27の検出する温度が給湯設定温度になるように給湯混合弁24の弁開度をフィードバック制御するようにしているもので、更に湯張り温度センサ32の検出する温度が風呂設定温度になるように風呂混合弁28の弁開度をフィードバック制御するようにしているものである。
【0021】
又前記制御部40は風呂熱交換器19に連通した風呂往き管20に備えられた風呂往きサーミスタ41の検知温度が、排水時の貯湯温度低下の湯張り運転時、60℃以下の排水許可温度となるように風呂混合弁28の弁開度をフィードバック制御するものである。
【0022】
42は貯湯タンク2内の過圧を逃す逃し弁、43は給水の圧力を減圧する減圧弁、44は給湯する湯水の量をカウントする給湯流量カウンタ、45は浴槽6の湯水が逆流するのを防止するために設けられた逆止弁、46は給水の温度を検出する給水温度センサである。
【0023】
47は給水管9を開閉する給水栓で、給水管9に設けた減圧弁43よりも上流側に設けたものである。
48は、一端が貯湯タンク2の底部に接続し他端を排水路49に開口した排水管で、該排水管48には排水管48を開閉する排水栓50を設け、排水栓50の下流側には排水管48内の排水の有無を検知する流水センサ51を設けたものである。
52は排水スイッチで、給湯リモコン5に設けられ、押圧されると排水運転を実行して、貯湯タンク2及び配管内の排水を行うものである。
【0024】
次に本発明の排水動作について図2に示すフローチャートで説明する。
今排水スイッチ52をON操作して排水運転を開始すると(ステップ53)、先ず貯湯タンク2内に今現在どれだけの温度の貯湯温水がどれだけの量貯湯されているかを、ステップ54で貯湯温度センサ35の検知温度で高温の温水が貯湯されているか否かを判断し、YESでステップ55に進み出湯管8から貯湯タンク2内の高温水が風呂混合弁28に供給され、分岐給水バイパス管30からの低温水とを風呂混合弁28で混合し、低温の湯張り水として湯張り弁33の開弁で湯張り管31から、風呂戻り管22を通ったり、風呂戻り管22から風呂熱交換器19を通って風呂往き管20に達し湯張りされるものである。
【0025】
そして、風呂熱交換器19を低温の湯張り水が流通することにより、貯湯タンク2内の高温水と熱交換して該高温水の温度を順次下げるようにしたものであり、そしてステップ56では風呂往きサーミスタ41による風呂熱交換器19を通過後の湯張り水の検知温度が排水許可温度の60℃以下かを判断し、NOではステップ57に進み風呂混合弁28の出湯側を絞るか、給水側を多くするかして混合比率を調節して所定温度の60℃以下になるようにフィードバック制御するものであり、YESではステップ58に進んで貯湯タンク2内の貯湯温度の変化を貯湯温度センサ35で確認し、即ち貯湯温度センサ35の検知温度が排水許可温度の60℃以下に低下したかを判断し、NOではステップ56に戻り湯張りを継続するものであり、YESではステップ59に進み湯張り弁33を閉弁して湯張りを終了させると共に、風呂混合弁28を通常の待機状態である水側100%の状態に移動させる。
【0026】
これにより、貯湯タンク2内の貯湯温水の温度が下げられたことで、排水が可能となることで、ステップ60に進み給水栓47を閉栓し、逃がし弁42を開弁して排水栓50の開栓を自動的に行うことで、貯湯温度が60℃以下の排水許可温度に低下した貯湯タンク2内の貯湯水を排水出来るものであり、そしてステップ61でこの排水の時間をタイマー等でカウントし所定時間の経過で排水を終了したり、或いはこの排水流量を流量カウンタでカウントし所定流量のカウントで排水を終了として、自動的に排水運伝を終了させるものであり、浴槽6に湯張りされた温水は風呂戻り管22を通り直接浴槽6に供給される湯張り水の温度は元々60℃以下であるので、全体としても60℃以下で浴槽6の排水路49から直接排水されるものである。尚、浴槽6に栓がしてある場合には、排水運転開始前に開栓を促す報知を行うものである。
【0027】
又ここでは例えば、1缶185Lの貯湯タンク2で、ほぼ全量が70℃以上の場合で、先ず16℃の給水と70℃の高温水とを風呂混合弁18で混合して23℃の低温水とし、これを浴槽6に流量15L/minで120L湯張りし、この時185Lの全量貯湯水が排水許可温度の60℃以下になるのに30分かかったものであり、185Lの貯湯タンク2の自動排水に5分かかったとすると、全体で30分+5分=35分が排水運転でかかるものである。
【0028】
このように、貯湯タンク2内の排水が自動的に行われることは勿論、貯湯タンク2が高温水の貯湯状態であっても、使用者の目に触れることかせない浴槽6への湯張りを行いながら風呂熱交換器19の熱交換で、貯湯温度を短時間で排水許可温度まで低下させることが出来、極めて使用勝手が良くしかも経済的で安全な排水運転を行うことが出来るものである。
【符号の説明】
【0029】
2 貯湯タンク
6 浴槽
18 風呂混合弁
19 風呂熱交換器
35 貯湯温度センサ
48 排水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、該貯湯タンクに給水する給水管と、該給水管を開閉する止水栓と、該貯湯タンク内の湯水を貯湯タンクから出湯する出湯管と、貯湯タンク上部に設けられ貯湯タンク内の過圧を逃がすと共に、該貯湯タンク内を大気と連通させる逃がし弁と、出湯管からの高温水と給水管からの給水とを混合して給湯管に供給する給湯混合弁と、出湯管からの高温水と給水管からの給水とを混合し湯張り管を介して浴槽に設定温度の湯張りを行う風呂混合弁と、前記湯張り管が接続し風呂循環ポンプを備え浴槽内の浴槽水を貯湯タンク内上部に備えた風呂熱交換器に循環させて追い焚きする風呂循環回路と、一端が貯湯タンクの底部に接続され他端が排水路に開口した排水管と、該排水管を開閉する排水栓とを備え、前記止水栓を閉栓し逃がし弁を開放して排水栓を開成することで、貯湯タンク内の湯水を排水するようにしたもにの於いて、前記貯湯タンクに貯湯された湯水温度を検知する複数の貯湯温度センサが、排水動作時に排水許可温度以上の高温度を検知している場合には、浴槽に低温の湯張りを行い、この湯張りは風呂熱交換器を流通する湯張りとして貯湯タンク内の湯水温度を排水許可温度まで低下させてから排水するようにした事を特徴とする貯湯式風呂給湯装置。

【図1】
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【図2】
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