説明

貯留槽用遮水シート

【課題】接合部の接合状態が良好か否かを肉眼で確認することが可能であり、その接合部の検査を必要とせず接合状態の良好な貯留槽用遮水シートを提供すること。
【解決手段】顔料が添加されていない透明遮水シート14の端部と顔料が添加されている黒色遮水シート12の端部とを黒色遮水シート12を下側に重ね合わせて熱融着を施すと、両遮水シートは溶けて一体となり、熱融着を施した部分は熱融着された下側の黒色遮水シートの色が明確に帯び又は筋16となって確認できる。したがって、この帯又は筋16を確認することで熱融着が途切れなく施されたか否か視認できることとなる。また、この帯又は筋16の幅、すなわち熱融着の幅が例えば15mm以上であれば接合状態は良好であり漏水等が起こらないことを予め実験等で確認してあれば、熱融着した遮水シートの接合部16の接合状態は良好であることが保証され検査は不要となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留槽用遮水シート、特に槽空間に充填配置された槽空間保護部材を覆うための貯留槽用遮水シートに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の理由により地下に水を貯留して活用することが行われており、例えば雨水を有効利用するため、地下に雨水貯留用の槽空間を構築して、この雨水貯留槽に雨水を貯留する技術が実用化されている。ここで、雨水の有効利用としては、例えば花壇に貯めた雨水を散水すること、火事が発生したときに消火のために放水すること等が挙げられる。
【0003】
雨水貯留槽は、まず雨水貯留槽を構築する場所が掘削され、基礎に砕石、砂等が敷かれ、底面が平坦にされる。そして、雨水貯留槽の側面から貯留した雨水が漏れないようにするために、熱融着又は接着剤等で所望の大きさに接合された遮水シートが敷かれ、雨水貯留槽の槽空間を保持するため雨水貯留槽内に槽空間保護部材を上記の遮水シート上に設置することが行われている。この槽空間保護部材は、プラスチック成形体ユニットを雨水貯留槽内で所定の段数組み上げて設置される。
【0004】
すなわち、雨水貯留槽の槽空間は槽空間保護部材で充填され、その形状が保持される。そして、その槽空間保護部材の外側面を遮水シートで覆い、必要に応じて槽空間保護部材の上面(天井面)を保護するため、槽空間保護部材の上部に保護ボード等が置かれる。その後、遮水性或いは透水性のあるシート類で槽空間保護部材の上部が覆われ、その上に土砂等を埋め戻して雨水貯留槽の構築が終了する。なお、適宜、雨水の流入、流出に必要な付帯設備が設けられる。こうして、複数のプラスチック成型体ユニットで組み立てられた槽空間保護部材により槽空間が保護された雨水貯留槽が完成し、そこに雨水が貯留される。
【0005】
ここで、貯留槽用遮水シートは、所定の大きさの遮水シートが槽空間保護部材の大きさに合わせて必要な枚数だけ熱融着又は接着剤にて接合されるが、この接合部で漏水等が生じないように、遮水シート間の接合は細心の注意が払われて行われる。必要に応じて、接合部の接合状態の検査が行われる。その他にも、遮水シートと付帯設備との接着不良や、施行終了後の埋め戻し時の転圧による埋め戻し土に含まれる角の鋭い礫或いは木の根等による遮水シートの破損にも細心の注意が払われる(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
上述した遮水シートの接合部の接合状態を検査する方法として、負圧検査法と加圧検査法とがある。図3は、負圧検査法についての説明図である。所定の大きさの2枚の遮水シート24、24が熱融着又は接着剤により接合され接合部20を形成している。ここで、接合部20上に石鹸水を塗布しておく。そして、負圧カプセル50を所定長さの接合部20上に被せ、負圧カプセル50と遮水シート24とを接着剤60で接合し、遮水シート24と負圧カプセル50との間に密閉空間を形成する。なお、負圧カプセル50にはその内部が観察できるように透視窓56が設けられている。また、負圧カプセル50には、弁52及び真空計58が設けられており、この弁52を介して真空ポンプ54により密閉空間が負圧にされる。検査は、真空計58を見ながら密閉空間が所定の負圧状態になったら、弁52を閉じ、透視窓56から接合部20を観察することにより行われる。ここで、予め塗布した石鹸水が発泡しなければ接合は良好であり、発泡すれば不良であると判断する。
【0007】
次に加圧検査法について説明する。図4(a)は接合された遮水シートの断面図であり、図4(b)は、加圧検査法の説明図である。図4(a)に示すように、所定の大きさの2枚の遮水シート24、24は、熱融着又は接着剤により接合され接合部20を形成している。ここで、遮水シート24、24は近接した2箇所で接合され、接合部20と接合部20との間には検査用の空間22が形成されている。遮水シート24の接合部20、20の両端部は端部閉塞用締め具64により締められ、2列の接合部20間の検査用空間22は密閉空間とされる。このとき、完璧な密閉空間とするため必要に応じて補助部材64aを用いても良い。検査は、ノズル62を検査用空間22に挿入し、ポンプ68等で検査用空間22を加圧状態とすることにより行われる。ノズル62には圧力計62aが設けられており、検査用空間22内が所定の加圧状態になったら加圧を止め、圧力計62aを所定時間観察する。ここで圧力が所定時間維持されていれば接合部20、20の接合の状態は良好と判断する。
【0008】
【特許文献1】特開2004−204576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の貯留層用遮水シートは、所定の大きさの遮水シートが必要な枚数だけ熱融着又は接着剤にて接合される。その接合部の接合状態は肉眼では良好か否か判断し難く、必要に応じて負圧検査法又は加圧検査法による検査を行うことが要求される。しかし、これらの検査法は両検査法とも破壊試験であり、検査ための装置や治具を要し、検査時間は段取りの期間を含めて長時間となる。
【0010】
したがって、貯留空間保護部材を覆う遮水シートは、その接合部の接合状態が良好であることを直接視覚的に確認することが難しく、間接的に保証していたに過ぎなかった。このため、接合状態が不良である接合部が看過され漏水事故が発生する危険性が増大していた。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、接合部の接合状態が良好か否かを肉眼で確認することが可能であり、その接合部の検査を必要とせず接合状態の良好な貯留槽用遮水シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の貯留槽用遮水シートは、
掘削形成した槽空間に充填設置された槽空間保護部材を覆うためのシートであって所定大きさの遮水シートが複数枚接合されて成る貯留槽用遮水シートにおいて、前記遮水シートは顔料が添加されていない透明遮水シートと顔料が添加されている有色遮水シートとの2種類であってそれらが交互に並べて配置され、前記透明遮水シートと前記有色遮水シートとは、それらの端部において前記透明遮水シートを上にして重ね合わされ、該重ね合わせ部の全長に亘って所定幅で熱融着を施したことを特徴とする。
【0013】
透明遮水シートと有色遮水シートとの端部の重なり部分では、下側に有色遮水シート、上側に透明遮水シートがある。熱融着する前は、上側の遮水シートが透明であるため下側の有色遮水シートが透けて見える。熱融着を施すと両遮水シートは溶けて一体となり下側の有色遮水シートの顔料が熱融着部に拡散するため、この熱融着を施した部分は下側の有色遮水シートの色の帯び又は筋となって明確に視認できることとなる。したがって、この帯又は筋を視認することで熱融着が途切れなく施されたか否かを判定することができる。また、この帯又は筋の幅、すなわち熱融着の幅について、予め実験等で漏水等が起こらない所定の幅を求めておくことで、熱融着した遮水シートの接合部の接合状態が保証され検査は不要となる。したがって、接合部の接合状態が良好か否かを肉眼で確認することが可能であり、その接合部の検査を必要とせず接合状態の良好な貯留槽用遮水シートが提供できることとなる。
【0014】
請求項2に記載の貯留槽用遮水シートは、請求項1に記載の貯留槽用遮水シートにおいて、
前記有色遮水シートの顔料は黒色であることを特徴とする。有色遮水シートが黒色である場合には、色変化を肉眼で判別し易くなり、熱融着を施した跡、帯又は筋がより明確に肉眼で確認できることとなる。したがって、より確実に接合部の状態の良好な貯留槽用遮水シートを提供することができる。これにより、貯留槽用遮水シートの品質が保証されることとなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の貯留槽用遮水シートによれば、顔料が添加されていない透明遮水シートの端部と顔料が添加されている有色遮水シートの端部を、有色遮水シートを下側に重ね合わせて所定幅で熱融着するので、熱融着を施すと両遮水シートは溶けて一体となり、熱融着を施した部分は熱融着された下側の有色遮水シートの色の帯び又は筋となって明確に視認できる。したがって、接合部の接合状態が良好か否かを肉眼で確認することが可能であり、その接合部の検査を必要とせず接合状態の良好な貯留槽用遮水シートが提供できることとなる。また、貯留槽用遮水シートの品質も保証される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態を、以下図面を参照しながら詳述する。なお、本実施の形態では、地面等を掘削して構築された雨水貯留槽に充填配置される槽空間保護部材を覆う貯留槽用遮水シートを想定している。この貯留槽用遮水シートは、所定大きさの遮水シートを槽空間保護部材の大きさに合わせて複数枚接合して構成される。
【0017】
図1は、本発明の貯留槽用遮水シートの実施の形態に係り、顔料が添加されている有色遮水シート12と顔料が添加されていない透明遮水シート14のそれぞれの端部の部分斜視図である。顔料が添加されている有色遮水シート12と顔料が添加されていない透明遮水シート14とが交互に並べて配置されている。有色遮水シート12の端部と透明遮水シート14との端部は図1に示すように、有色遮水シート12が下側、透明遮水シート14が上側になるように、所定の幅(重ね合わせ部)18を持って重ね合わされている。本実施の形態では、有色遮水シート12は黒の顔料を使用している。
【0018】
ここで、熱融着は未だ施していない状態であり、重ね合わせた部分(重ね合わせ部)18では、上側には透明遮水シート14があるので、下側の有色遮水シート12が透けて見えることとなる。なお、重ね合わせ部18の幅Wは、少なくとも後述する熱融着を行うことができるような幅であれば良い。
【0019】
図2は、図1で示した重ね合わせ部18に、所定幅で熱融着を施した後の平面図である。熱融着は通常の走行式自動融着機で行い、熱融着の条件等は融着の幅を除いて従来と同じとした。本実施の形態では、通常よりも広い幅で熱融着を行っており、具体的に熱融着の幅は約15mmとした。なお、熱融着は重ね合わせ部18の全長に亘って行われている。
【0020】
上述した熱融着を施すと、熱融着を施すと両遮水シートは溶けて一体となり下側の有色遮水シート12の顔料が熱融着部に拡散するため、この熱融着を施した部分は下側の有色遮水シート12の色の帯び又は筋となって明確に視認できることとなる。
【0021】
すなわち、熱融着する前は、上側の遮水シート14が透明であるため下側の有色遮水シート12が単に透けて見えていたものが、熱融着を施すと両遮水シートは溶けて一体となり、この熱融着を施した部分が有色遮水シート12の色、すなわち黒の帯又は筋16として肉眼ではっきりと視認できることとなる。
【0022】
この帯又は筋16が途切れなく形成されていれば、熱融着が途切れなく施された証拠となる。ここで、有色遮水シート12の色は黒色としたが、有色遮水シート12が黒色である場合には、熱融着した部分が黒い帯又は筋となるので、それらをより確実に視認できることとなる。しかし、黒色に限らず他の色であっても、熱融着した部分が当該他の色の帯又は筋となって確認できるので、当該他の色が強調して見える手段を講じれば色は特に拘らなくても良い。
【0023】
上記の熱融着の幅に関して、本実施の形態では一例としてこの帯又は筋16の幅、すなわち熱融着の幅を約15mmとした。本実施の形態で使用した透明遮水シート14及び有色遮水シート12については、熱融着の幅が15mm以上であれば、接合状態は良好であり漏水等が起こらないことを予め実験等で確認してある。したがって、熱融着の幅を約15mmとすることで、結合部16の結合状態は良好であり、漏水等が起こらないことが保証される。そして、熱融着後の透明遮水シート14と有色遮水シート12との接合部16の検査は不要となる。
【0024】
また、上記の熱融着の幅は、明確に確認できるため、この熱融着の幅を自動で読み取るように構成することも可能である。すなわち、自動融着機により熱融着を行い、直後にその熱融着の幅をカメラ等で読み取り、15mm以下であれば接合が不良であるとして警報を発するシステムを構築することも可能である。
【0025】
本実施の形態によれば、顔料が添加されていない透明遮水シートの端部と顔料が添加されている黒色遮水シートの端部とを、黒色遮水シートを下側にして重ね合わせ、その重ね合わせ部に熱融着を施している。すると、両遮水シートは溶けて一体となり、熱融着を施した部分は熱融着された下側の黒色遮水シートの色が明確に帯び又は筋となって確認できる。したがって、この帯又は筋を確認することで熱融着が途切れなく施されたか否か視認できる。また、この帯又は筋の幅、すなわち熱融着の幅が例えば15mm以上であれば接合状態は良好であり漏水等が起こらないことを予め実験等で確認してあれば、熱融着した遮水シートの接合部の接合状態は良好であると保証され、接合部の検査は不要となる。したがって、貯留槽用遮水シートの品質が保証されることとなる。
【0026】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、本実施の形態では熱融着の幅を一例として約15mmとしたが、使用する遮水シートに応じて適宜決めることができる。また、接合部における熱融着は1列としているが、2列としてより確実な結合状態を確保するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の貯留槽用遮水シートに係り、顔料が添加されている有色遮水シートと顔料が添加されていない透明遮水シートのそれぞれの端部の部分斜視図である。
【図2】本発明の貯留槽用遮水シートに係り、重ね合わせ部に熱融着を施した後の平面図である。
【図3】従来の貯留槽用遮水シートに係り、接合部を検査する負圧検査法の説明図である。
【図4】従来の貯留槽用遮水シートに係り、接合部を検査する加圧検査法の説明図である。
【符号の説明】
【0028】
10 貯留槽用遮水シート
12 有色遮水シート
14 透明遮水シート
16 接合部(熱融着の跡、帯又は筋)
18 重ね合わせ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削形成した槽空間に充填設置された槽空間保護部材を覆うためのシートであって所定大きさの遮水シートが複数枚接合されて成る貯留槽用遮水シートにおいて、
前記遮水シートは顔料が添加されていない透明遮水シートと顔料が添加されている有色遮水シートとの2種類であってそれらが交互に並べて配置され、
前記透明遮水シートと前記有色遮水シートとは、それらの端部において前記透明遮水シートを上にして重ね合わされ、
該重ね合わせ部の全長に亘って所定幅で熱融着を施したことを特徴とする貯留槽用遮水シート。
【請求項2】
前記有色遮水シートの顔料は黒色であることを特徴とする請求項1に記載の貯留槽用遮水シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−83558(P2010−83558A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255946(P2008−255946)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】