説明

貯蔵石炭内部の温度測定方法、貯蔵石炭の自然発火防止方法、および貯蔵石炭内部の温度測定システム

【課題】ばら積みされた石炭パイルの内部の温度を精度よく測定できる貯蔵石炭内部の温度測定方法を提供する。
【解決手段】石炭パイル1を層状にばら積みする際、層状貯蔵石炭を形成しつつ、タグ識別情報があらかじめ既知の温度検出器2を、所定の間隔で順次設置し、さらに層状貯蔵石炭を積層させ、石炭パイル1内に温度検出器2を埋設する。計算機4に、温度検出器2のタグ識別情報と、埋設した埋設位置とを関連付けてタグ埋設情報を生成し、これらタグ埋設情報を記憶させて埋設位置データベースを構築する。温度検出器2のRFIDタグ間通信により、タグ識別情報および温度情報を周囲の他のRFIDタグに伝達し、石炭パイル1の外部の受信器3で受信する。受信器3で受信したタグ識別情報と埋設位置データベースとを照合し、石炭パイル1の自然発熱部位を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ばら積みされた貯蔵石炭の内部の温度を測定する貯蔵石炭内部の温度測定方法、貯蔵石炭の自然発火防止方法、および貯蔵石炭内部の温度測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高品位炭(無煙炭・瀝青炭)は世界中で広く使用されているが、世界のエネルギー需要の増加に伴い、高品位炭の需要が逼迫し始めている。そのため、高品位炭に比べ含水率が高く、発熱量の低い亜瀝青炭の利用が増加し始めている。
しかし、亜瀝青炭は乾燥すると自然発熱しやすく、自然発火する危険性が高いため、自然発火防止対策を行う必要がある。これに対して自然発熱防止剤なども開発されてはいるが、コストがかかるというのが現状である。このため、屋外で貯蔵している貯蔵石炭の最も安価な自然発火防止方法として貯蔵石炭の温度を監視し、自然発熱部位の切り崩しや放水などを行うことが知られている。
【0003】
具体的には、貯蔵石炭の温度測定方法として、貯蔵石炭中に熱電対を挿し込み直接温度を測定する方法が知られている(特許文献1参照)。
また、貯蔵石炭へ電波を発信し、水分分布により変化する電波を捉えることにより貯蔵石炭の高温になった部分を検知する方法も知られている(特許文献2参照)。
さらに、赤外線により貯蔵石炭に直接触れずに温度を監視する技術が知られている(特許文献3参照)。
また、貯蔵石炭へ温度センサーを備え電波により測定した温度を無線通信するRFID(Radio Frequency Identification)を利用する技術も知られている(特許文献4参照)。具体的には、タグを貯蔵石炭内の所定の高さで水平方向および垂直方向へ埋設し、門形クレーンのリーダーを座標走行させ、貯蔵石炭の発熱する位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−68954号公報
【特許文献2】特開平8−67315号公報
【特許文献3】特開平8−285693号公報
【特許文献4】東ドイツ特許第156449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、自然発熱部位を探索するには、一点ずつ熱電対を挿し込まなければならず、作業が煩雑となり労力がかかる。
また、貯蔵石炭に熱電対を挿入して温度を測定するので、通常、測定範囲が貯蔵石炭表層から数m(例えば2m)程度に制限される。このため、高さが10mを超えてばら積みされる貯蔵石炭では、内部の温度を測定できないという問題が挙げられる。
また、特許文献2に記載の技術では、石炭の種類により含水率が大きく変化するため、水分量により自然発熱部位を捉える手法では、自然発熱部位の正確な温度を測定することはできない。さらに、貯蔵石炭内部から発熱が進行する場合、電波の透過性から貯蔵石炭が巨大になるほど中心部の状態を精度良く観測することが難しくなるという問題が挙げられる。
さらに、特許文献3に記載の技術では、貯蔵石炭の表層全体を監視することは可能であるが、熱電対と同様、貯蔵石炭内部の温度を測定することが困難であるという問題が挙げられる。
同様に、特許文献4に記載の技術では、リーダーにて読取可能な貯蔵石炭の表層へ電波が届く位置にタグを埋設する必要がある。このため、電波が透過しにくい貯蔵石炭の内部の温度を検出することは困難である。一方、電波の透過性を高めるために電波強度を強くする場合、消費電力が大きくなり、長期間の温度検出ができなくなるとともに、外部機器との電波干渉による通信障害などが生じるおそれがある問題が挙げられる。
【0006】
上記従来の方法では、特に広くかつ高くばら積みされた貯蔵石炭の内部温度を検出することは困難であり、表面温度の温度から内部の温度を推測することとなる。このように、貯蔵石炭の内部が自然発熱した場合、発熱していると思われる部位を十分に特定できないことから、発熱しているかどうか随時様子を確認しながら切り崩さなければならないため効率が悪くなる。
自然発熱部位が特定できないので、貯蔵石炭全体を切り崩し若しくは撹拌したり、貯蔵石炭全面に放水したりすることになり、無駄が多くなる。
また、放水する場合は、貯蔵石炭の内部の自然発熱部位が冷却されたことを確認することが困難であるため、過剰に放水しなければならない。
総じて、貯蔵石炭の自然発熱は内部から進むため、効率良く自然発火防止対策を行うには、貯蔵石炭表層だけでなく、貯蔵石炭内部の自然発熱部位を迅速かつ正確に特定する技術が切望されている。
【0007】
本発明の目的は、ばら積みされた貯蔵石炭の内部の温度を精度よく測定できる貯蔵石炭内部の温度測定方法、貯蔵石炭の自然発火を効率よく防止する方法、および貯蔵石炭内部の温度測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の貯蔵石炭内部の温度測定方法は、ばら積みされた貯蔵石炭の内部の温度を測定する貯蔵石炭内部の測定方法であって、電源、温度センサー、および前記温度センサーで測定された温度情報を自己のタグ識別情報とともに周波数1GHz以下の電波により発信可能で、かつ自己のタグ識別情報とは異なる他のタグ識別情報および温度情報を受信すると自己のタグ識別情報および温度情報とともに前記電波により送信可能なRFIDタグを備えた温度検出器と、前記タグ識別情報および前記温度情報を受信する受信器とを用い、前記温度検出器を貯蔵石炭中に複数埋設する埋設工程と、前記貯蔵石炭中に埋設された各RFIDタグのタグ識別情報と埋設位置とを関連付けて1つのデータ構造のタグ埋設情報を生成させて複数記録しデータベースを生成する入力工程と、前記受信器で受信された前記タグ識別情報および温度情報と、前記データベースのタグ埋設情報とを照合し、各RFIDタグが埋設された位置と温度とを関連付け、出力手段から前記RFIDタグが埋設された位置における温度を報知する測定工程と、を実施することを特徴とする。
【0009】
この発明では、温度センサーおよびRFIDタグを備えた温度検出器を貯蔵石炭中に複数埋設する。そして、埋設された各RFIDタグのタグ識別情報と埋設位置とを関連付けて1つのデータ構造のタグ埋設情報を生成させ、これらタグ埋設情報を複数記録したデータベースを構築する。埋設された温度検出器のRFIDタグは、自己のタグ識別情報および温度情報を発信するとともに、自己のタグ識別情報とは異なる他のタグ識別情報および温度情報を受信すると自己のタグ識別情報および温度情報とともに発信する。すなわち、RFIDタグ間で、タグ識別情報と温度情報とを送受信する。このRFIDタグ間通信されているタグ識別情報および温度情報を受信器により受信し、データベースのタグ埋設情報と照合し、RFIDタグが埋設された位置における温度を関連付けて報知する。
このことにより、RFIDタグが貯蔵石炭の内部深くまで埋設されて外部へ電波を透過できない場合でも、隣接するRFIDタグにタグ識別情報と温度情報が順次伝送され、外部の受信器で受信できる。したがって、貯蔵石炭の内部の温度でも、RFIDタグの電波強度を強くすることなく、確実に精度よく測定できる。
【0010】
本発明では、前記埋設工程は、隣接する前記温度検出器の間隔が10m以下の条件で前記温度検出器を埋設することが好ましい。
このことにより、貯蔵石炭内の発熱する部位を精度良く測定できるとともに、RFIDタグの電波を消費電力が比較的に小さくかつ外部との電波障害を生じない強度に設定できる。このため、長期間安定して効率よく高精度に貯蔵石炭内部の温度を測定できる。
【0011】
本発明では、前記埋設工程は、前記貯蔵石炭1万トン当たり前記温度検出器が25個以上の割合で前記温度検出器を埋設することが好ましい。
このことにより、温度検出器は、水平面における縦および横方向で約10m間隔、鉛直方向で約5m間隔に配設される割合と同等またはより狭い間隔で配設される。このため、貯蔵石炭内の発熱する部位を精度良く測定できるとともに、RFIDタグの電波を消費電力が比較的に小さくかつ外部との電波障害を生じない強度に設定できる。したがって、長期間安定して効率よく高精度に貯蔵石炭内部の温度を測定できる。
【0012】
本発明では、前記埋設工程は、前記貯蔵石炭6万トン当たり前記温度検出器が1000個以下の割合で前記温度検出器を埋設することが好ましい。
このことにより、温度検出器は、水平面における縦および横方向で約5m間隔、鉛直方向で約3m間隔に配設される割合と同等またはより広い間隔で配設される。このため、より間隔を狭く配設しても、貯蔵石炭内部の温度の精度があまり向上することなく、使用する温度検出器の量が多くなり、測定コストが増大するなどの不都合を防止でき、効率よく貯蔵石炭内部の温度を測定できる。
【0013】
本発明では、前記埋設工程は、前記貯蔵石炭を所定の高さ寸法で層状に複数層積み上げる状態でばら積みする際に、1層分積み上げた層状貯蔵石炭の上面に基準位置から所定間隔で前記温度検出器を載置する載置工程と、前記層状貯蔵石炭の上面に前記貯蔵石炭を1層分積み上げる積み上げ工程とを繰り返すことが好ましい。
この発明では、貯蔵石炭を所定の高さ寸法で層状に複数層積み上げる状態でばら積みする際に、1層分積み上げた層状貯蔵石炭の上面に基準位置から所定間隔で前記温度検出器を載置する。この層状貯蔵石炭の上面に貯蔵石炭をさらに1層分積み上げ、この2層目の層状貯蔵石炭の上面にさらに温度検出器を載置することを繰り返すことで、ばら積みの貯蔵石炭内の所定位置に温度検出器が埋設される。このことにより、ばら積みする際に、貯蔵石炭の内部へ空気が流入することを抑制して自然発火を抑制する目的で、重機などを利用して締め固め、層状貯蔵石炭を順次積み上げる従来の作業工程中に、温度検出器を載置する作業を実施するのみでよい。このため、従来の作業工程の途中で温度検出器を載置する簡単な作業を実施するのみで、貯蔵石炭の内部の温度を長期間安定して効率よく高精度に測定できる。
【0014】
本発明では、前記貯蔵石炭をばら積みする貯蔵領域の上方に位置して移動可能に設けられ、前記貯蔵石炭を前記貯蔵領域へ搬送するコンベヤーと、該コンベヤーの搬送する先端位置を移動させるコンベヤー移動手段と、前記コンベヤーの先端位置を検出する位置検出手段と、前記コンベヤーにて搬送する前記貯蔵石炭の量を検出する搬送量検出手段と、前記コンベヤーの先端位置に配設され前記搬送する貯蔵石炭とともに搬送される前記温度検出器が前記コンベヤーの先端位置を通過する際に前記タグ識別情報を読み取るタグ搬出検出器と、を用い、前記入力工程は、前記搬送量検出手段により検出した搬送量と、前記位置検出手段により検出した前記コンベヤーの先端位置とに基づいて、前記貯蔵領域の水平面に対する前記貯蔵石炭のばら積み高さを逐次演算する高さ演算工程と、前記タグ搬出検出器によりタグ識別情報を読み取った時、前記位置検出手段により検出した前記コンベヤーの先端位置に基づき、前記タグ識別情報に対応する温度検出器の埋設位置を平面座標として認識して前記タグ識別情報に関連付けるとともに、前記タグ識別情報を読み取った時の前記高さ演算工程で演算したばら積み高さを、前記タグ識別情報に対応する温度検出器の高さ方向における埋設位置として認識して前記タグ識別情報に関連付ける埋設位置認識工程と、を実施することが好ましい。
この発明では、貯蔵領域の上方に設けられたコンベヤーから貯蔵領域へ貯蔵石炭および温度検出器を搬送する。位置検出手段により検出したコンベヤーの先端位置と、コンベヤーで搬送した貯蔵石炭の搬送量とに基づき、貯蔵領域の水平面の各位置における貯蔵石炭のばら積み高さを逐次演算する。そして、コンベヤーの先端位置に配設したタグ搬出検出器により、タグ識別情報を読み取ると、コンベヤーの先端位置を温度検出器が通過して貯蔵領域に投入されたと認識する。このタグ識別情報を読み取った際、コンベヤーの先端位置を位置検出手段により検出し、この検出した位置に基づいて、貯蔵領域に投入された温度検出器の埋設位置における水平面の位置を認識し、読み取ったタグ識別情報と関連付ける。さらに、タグ識別情報を読み取った際の高さ演算工程で演算したばら積み高さを、検出した水平面の位置における温度検出器の高さ方向の埋設位置と認識し、タグ識別情報と関連付け、タグ埋設情報を生成させる。このため、作業者が貯蔵する貯蔵石炭の所定の位置に埋設する作業や、埋設位置とタグ識別情報とを関連付ける入力作業を実施しなくても、自動的にタグ埋設情報を生成でき、貯蔵石炭内部の温度を測定するための作業がより容易となる。
【0015】
本発明の貯蔵石炭の自然発火防止方法は、本発明の貯蔵石炭内部の温度測定方法により測定した前記貯蔵石炭内部の温度が、一定以上の温度を示す部位を認識した場合、ばら積みされた前記貯蔵石炭の少なくともその部位を含む周辺部に、注水、切り崩し、撹拌のうちの少なくともいずれかの操作の実施を促す報知をすることが好ましい。
この発明では、貯蔵石炭内部の自然発熱部位を確認し、その箇所に注水したり、切り崩したり、撹拌したりするので、自然発火する前に自然発熱部位を冷却することができる。このため、自然発火を未然に防ぐことができる。さらに、自然発熱部位を選択的に冷却するので、自然発火を効率よく防止することができる。
【0016】
本発明の貯蔵石炭内部の温度測定システムは、ばら積みされた貯蔵石炭の内部の温度を測定する貯蔵石炭内部の温度測定システムであって、電源、温度センサー、および前記温度センサーで測定された温度情報を自己のタグ識別情報とともに周波数1GHz以下の電波により発信可能で、かつ自己のタグ識別情報とは異なる他のタグ識別情報および温度情報を受信すると自己のタグ識別情報および温度情報とともに前記電波により送信可能なRFIDタグを備えた温度検出器と、前記タグ識別情報および前記温度情報を受信する受信器と、前記貯蔵石炭中に複数埋設された各RFIDタグのタグ識別情報と埋設位置とを関連付けた1つのデータ構造のタグ埋設情報を複数記録したデータベースと、前記受信器で受信された前記タグ識別情報および前記温度情報と、前記データベースのタグ埋設情報とを照合し、各RFIDタグが埋設された位置と温度とを関連付ける演算をする演算手段と、この演算手段により演算した前記RFIDタグが埋設された位置における温度を報知する出力手段と、を具備したことを特徴とする。
【0017】
この発明では、温度センサーおよびRFIDタグを備えた温度検出器を貯蔵石炭中に複数埋設する。そして、埋設された各RFIDタグのタグ識別情報と埋設位置とを関連付けて1つのデータ構造のタグ埋設情報を生成させ、これらタグ埋設情報を複数記録したデータベースを構築する。この状態で、埋設された温度検出器のRFIDタグは、自己のタグ識別情報および温度情報を発信するとともに、自己のタグ識別情報とは異なる他のタグ識別情報および温度情報を受信すると自己のタグ識別情報および温度情報とともに発信する。すなわち、RFIDタグ間で、タグ識別情報と温度情報とを送受信する。そして、RFIDタグ間通信されているタグ識別情報および温度情報を受信器により受信し、演算手段によりデータベースのタグ埋設情報と照合してRFIDタグが埋設された位置と温度とを関連付け、出力手段によりRFIDタグが埋設された位置における温度を報知する。
このことにより、RFIDタグが貯蔵石炭の内部深くまで埋設されて外部へ電波を透過できない場合でも、隣接するRFIDタグにタグ識別情報と温度情報が順次伝送され、外部の受信器で受信できる。したがって、貯蔵石炭の内部の温度でも、RFIDタグの電波強度を強くすることなく、確実に精度よく測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明おける貯蔵石炭内部の温度測定システムの第1実施形態の概略構成を示す概念図。
【図2】同上温度測定システムを構成する温度検出器を示す一部を省略した斜視図。
【図3】同上温度測定システムにおける計算機の概略構成を記すブロック図。
【図4】同上温度測定システムにおける埋設位置データベースのデータ構造を示す概念図。
【図5】同上温度測定システムにおける温度検出器の埋設位置を説明する説明図。
【図6】同上温度測定システムにおける温度検出器の埋設位置を説明する説明図。
【図7】本発明おける貯蔵石炭内部の温度測定システムの第2実施形態の概略構成を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態について説明する。
本発明の第1実施形態を図1から図5までに基づいて説明する。
【0020】
[温度測定システムの構成]
図1において、Aは、貯蔵石炭である石炭パイル1の内部の温度を測定する温度測定システムである。この温度測定システムAは、石炭パイル1の内部に埋設され周辺の石炭パイルの1の温度を測定し電波2Aを発信する温度検出器2と、この温度検出器2が発信した電波2Aを受信する受信アンテナ31を有した受信器3と、この電波2Aを受信した受信器から出力される信号を計算処理する計算機4とを備えて構成されている。
ここで、石炭パイル1としては、石炭を貯蔵するために貯蔵領域である石炭貯蔵場Sなどに野積み、すなわちばら積みされるものが上げられる。他にも石炭積み出し用タンカーのバルクコンテナや、発電所などの大容量貯蔵のドーム方式石炭貯蔵システムあるいは貯蔵サイロなどに積載される石炭の集合体に適用することができる。
【0021】
温度検出器2は、図2に示すように、容器21と、この容器21内に収容された電源22と、この電源22から電力が供給されて動作するRFIDタグ23とを備えている。
容器21は、高い強度を示し耐熱性および防水性を備えたいずれの容器を利用できる。
電源22は、乾電池や蓄電池など、各種電源を利用できる。
RFIDタグ23は、電源22に電源線24を介して接続されるアクティブ型である。このRFIDタグ23は、温度センサー23Aおよびアンテナ23Bを有している。そして、RFIDタグ23は、温度センサー23Aで測定した温度に関する温度情報と、固有のタグ識別情報とを、1GHz以下の電波2Aに乗せて発信する。発信する電波2Aの周波数が1GHzを越えると石炭パイル1の影響を強く受け、外部で電波2Aを受信し難くなるおそれがあるためである。すなわち、RFIDタグ23は、炭素材料および水分による影響(減衰)の少ない1GHz以下の低周波数帯を採用している。
【0022】
また、RFIDタグ23は、常時測定する手間およびRFIDタグ23の電力消費の抑制の観点から、RFIDタグ23が所定温度に達したら電波2Aを定期的に発信するように設定することが好ましい。
このとき、石炭パイル1の内部が所定温度に達したら、自然発火防止として自然発熱部位の切り崩しや放水などの対策を講じるため、閾値をRFIDタグ23に記録しておく。この閾値は、例えば、自然発熱により石炭に付着する水分が蒸発し始める前の温度である60℃程度に設定するとよい。
さらに、RFIDタグ23は、いわゆるタグ間通信が可能に構成されている。すなわち、RFIDタグは、自己のタグ識別情報と異なるタグ識別情報および温度情報を受信すると、これら異なるタグ識別情報および温度情報を、自己のタグ識別情報および温度情報とともに発信する構成が採られている。
【0023】
受信器3は、計算機4に接続され、石炭パイル1に埋設された温度検出器2のRFIDタグ23から発信される電波2Aを受信すると、受信した電波2Aのタグ識別情報および温度情報を計算機4へ出力する。
受信器3は、石炭パイル1の周囲に複数配設したり、車両などの移動体に搭載されて石炭パイル1の周囲を移動可能としたり、石炭パイル1の外面の各位置から発信される電波2Aを受信可能であれは、配設数や配設状況は適宜設定される。
【0024】
計算機4は、例えばパーソナルコンピューターやPDA(Personal Digital Assistant)などが適用できる。この計算機4は、図3に示すように、出力手段としての表示部41と、出力手段を構成する通信部42と、記憶手段43と、演算手段44と、を備えている。
表示部41は、例えば液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネルなどの表示装置である。表示部41は、演算手段44に接続され、演算手段44の制御により、各種画面を表示し、利用者に各種情報を報知する。
通信部42は、演算手段44に接続され、演算手段44の制御により、設定された各作業者の携帯端末装置へ、石炭パイル1が自然発熱した旨などが記載された電子メールを送信し、報知する。すなわち、作業者の携帯端末装置と通信部42とにより本発明の出力手段が構成される。
【0025】
記憶手段43は、各種情報や計算機4を動作させるOS(Operating System)上に展開される各種プログラムなどを記憶する。この記憶手段43は、記憶領域としてデータベースである埋設位置データベース43Aを有している。
埋設位置データベース43Aは、図4に示すように、タグ埋設情報43A1を複数記憶するテーブル構造に構築されている。タグ埋設情報43A1は、RFIDタグ23の固有の識別情報であるタグ識別情報23Cと、RFIDタグ23の埋設位置に関する埋設位置情報23Eとが、1つのデータ構造に関連付けられて構築されている。なお、図4は、説明の都合上、温度情報23Dも1つのデータ構造に関連付けられた状態を示す。
【0026】
ここで、埋設位置情報23Eは、所定の温度検出器2が石炭パイル1に埋設される位置を特定する情報である。
この埋設位置情報23Eは、例えば図5および図6に示すように、所定の高さでばら積みされた何番目の層状貯蔵石炭1A上の水平面において、基準位置Xに対して横方向で何番目、縦方向で何番目と、埋設位置を特定する。この特定される埋設位置は、例えば水平方向で10m間隔以下、特に5m間隔以上10m間隔以下で、高さ方向では5m間隔以下、好ましくは3m間隔以上5m間隔以下で設定される。すなわち、石炭パイル1が1万トン当たり温度検出器2が25個以上で、石炭パイル1が6万トン当たり温度検出器2が1000個以下の割合で石炭パイル1内に分散配置されていればよい。下限値より少ない割合で配置したのでは、石炭パイル1の内部の温度を精度よく測定できなくなるおそれがある。また、RFIDタグ23間で通信するための電波強度を強くする必要があり、消費電力の増大や外部との電波障害が生じるなどの不都合が生じるおそれがあるためである。また、上限値より多く配置しても、埋設作業が煩雑となり、使用する温度検出器2の数が増えて測定コストが増大するなどの不都合が生じるおそれがあるためである。
【0027】
上記条件の複数の埋設位置に、タグ識別情報23Cがあらかじめ既知の温度検出器2を設置する。そして、詳細は後述するが、各埋設位置情報23Eとそれぞれの埋設位置に設置されたタグ識別情報23Cとを関連付けることでタグ埋設情報43A1が生成される。
なお、埋設位置は、この方法に限らず、例えば緯度経度および標高で表したりするなど、位置が特定できるいずれの方法が利用できる。
【0028】
演算手段44は、OS上に展開されるプログラムとして、図3に示すように、埋設箇所認識手段44Aと、温度認識手段44Bと、を構成する。
埋設箇所認識手段44Aは、例えばキーボードやマウスなどの入力装置にて、埋設された各温度検出器2のタグ識別情報23Cに、埋設位置の埋設位置情報23Eを関連付けて入力し、タグ埋設情報43A1を生成する。そして、埋設箇所認識手段44Aは、生成したタグ埋設情報43A1を埋設位置データベース43Aに順次記憶させ、埋設位置データベース43Aを構築する。
温度認識手段44Bは、受信器3で受信した電波2Aのタグ識別情報23Cおよび温度情報23Dと、埋設位置データベース43Aのタグ埋設情報43A1とを照合する。そして、温度認識手段44Bは、図4に示すように、埋設位置情報23Eと温度情報23Dとを関連付ける。このことにより、所定のタグ識別情報23Cの温度検出器2が埋設された位置における温度が認識されることとなる。
【0029】
[石炭パイル内の温度測定]
次に、上記温度測定システムAを利用した石炭パイル1の内部の温度を測定する動作を説明する。
(温度検出器の設置)
温度の測定に際して、まず所定の埋設位置に温度検出器2を設置する埋設工程を実施する。
この埋設工程では、図5および図6に示すように、サイズが長さ200m×幅70m×高さ20mの石炭パイル1の内部に温度検出器2を埋設する工程を例示する。
まず、温度検出器2の埋設に際して、温度検出器2のRFIDタグ23のタグ識別番号を認識しておく。また、石炭パイル1の自然発熱を検出するための温度の閾値を設定しておく。
そして、石炭パイル1の石炭貯蔵場Sに、所定の高さで石炭をばら積みし、適宜重機5(図1参照)などにて締め固め、1層目の層状貯蔵石炭1Aを形成する。この1層目の層状貯蔵石炭1Aの上面に、タグ識別情報23Cがあらかじめ既知の温度検出器2を、所定の埋設位置に順次設置していく(載置工程)。
この埋設位置は、上述したように、層状貯蔵石炭1Aの上面の外周縁からそれぞれ10m内側の位置で、水平面における横方向および縦方向でそれぞれ10m間隔となる位置である。この設置の際、例えば作業者が、記録紙上で、タグ識別情報23C毎に1層目の横○番目、縦△番目のように、埋設位置を記録しておくとよい。
そして、1層目の層状貯蔵石炭1Aの上面の設定された埋設位置に温度検出器2を設置後、層状貯蔵石炭1Aの上面に再び石炭をばら積みして締め固め、2層目の層状貯蔵石炭1Aを形成する(積み上げ工程)。この2層目の層状貯蔵石炭1Aの上面にも、1層目の層状貯蔵石炭1Aと同様に、温度検出器2を設定された埋設位置に順次設置する。
これら載置工程と積み上げ工程を繰り返し、図5に示すように、温度検出器2が埋設されつつ複数層が積み上げられた石炭パイル1を形成する。
【0030】
(埋設位置データベースの構築)
上記埋設工程の後、埋設した温度検出器2のタグ識別情報23Cと、埋設位置とをそれぞれ関連付けてタグ埋設情報43A1を生成し、埋設位置データベース43Aを構築する入力工程を実施する。
すなわち、作業者が記録紙上に記録したタグ識別情報23Cと、埋設位置とを、キーボードやマウスなどの入力装置で計算機4に入力し、埋設位置データベース43Aを構築する。
この埋設位置データベース43Aの構築により、石炭パイル1の内部の温度測定のための準備が整い、受信器3で温度検出器2からの電波2Aの受信待機状態となる。
【0031】
(温度測定)
上記入力工程後、石炭パイル1の内部の温度を測定する測定工程が実施される。
具体的には、例えば受信器3を搭載した移動体を石炭パイル1の周囲で周回移動させたり、複数の受信器3を石炭パイル1の周囲に配置したりして、石炭パイル1を透過して外部に発信される電波2Aを受信する待機状態とする。
そして、石炭パイル1の内部の温度が、あらかじめ設定された閾値の温度に到達すると、FRIDタグ23はタグ識別情報23Cとともに、検出した温度が所定温度に到達した旨の温度情報23Dが記録された電波2Aを発信する。ここで、発信された電波2Aは、隣接する他の温度検出器2のRFIDタグ23が受信する。この他の温度検出器2のRFIDタグ23でも、検出した温度が所定温度の閾値に到達している場合には、受信したタグ識別情報23Cおよび温度情報23Dとともに、自己のタグ識別情報23Cおよび温度情報23Dを発信する。一方、検出した温度が所定温度の閾値に到達していないことを他の温度検出器2のRFIDタグ23が認識した場合には、受信したタグ識別情報23Cおよび温度情報23Dのみを配信する。
このようにして順次周囲のRFIDタグ23間でタグ識別情報23Cおよび温度情報を通信させて、最終的に外部の受信器3でタグ識別情報23Cおよび温度情報23Dが受信される。
そして、受信器3で受信したタグ識別情報23Cおよび温度情報23Dは、計算機4に入力される。計算機4では、演算手段44の温度認識手段44Bが、入力されたタグ識別情報23Cおよび温度情報23Dと、埋設位置データベース43Aのタグ埋設情報43A1とを照合する。そして、温度認識手段44Bは、埋設位置情報23Eと温度情報23Dとを関連付ける。このことにより、所定のタグ識別情報23Cの温度検出器2が埋設された位置における温度が認識される。
【0032】
(報知工程)
この測定工程の後、演算手段44は表示部41や通信部42などを制御し、作業者に自然発熱を報知する報知工程を実施する。
例えば、演算手段44は、表示部41を制御して、例えば石炭パイル1の画像中に、示される埋設位置のタグ識別情報23Cの埋設位置に対応する埋設位置を他の埋設位置とは異なる表示形態、例えば異なる色やコントラスト、点滅表示などで表示し、作業者に報知する。また、演算手段44は、通信部42を制御して、設定された作業者の携帯端末のメールアドレスへ、所定の埋設位置が自然発熱している旨の電子メールを送信する処理をして、作業者に報知する。その他、例えば出力手段としてのスピーカーなどから警報を再生させたり、出力手段としての回転灯を点灯させたりしてもよい。
【0033】
この報知工程により、作業者は自然発火防止対策を実施する。
この自然発火を防止する対策としては、水の使用量を低減し、効率良く自然発熱部位を冷却するため、特定された自然発熱部位に直接注水する。なお、注水の停止タイミングは、当該自然発熱部位に埋設されたRFIDタグ23により測定される温度が所定温度まで低下したことを計算機4が確認し報知することで、注水を停止すればよい。
また、注水する以外にも自然発熱部位を切り崩す、もしくは撹拌してもよい。この場合でも、自然発熱部位を正確に特定し、当該部位の温度変化を確認できるため、従来の石炭パイル1全体を切り崩したり、撹拌したりする方法より効率が飛躍的に向上する。なお、切り崩しや攪拌の場合には、再度、温度検出器2を埋設する作業が必要となることから、注水する方法が好ましい。
【0034】
〔第1実施形態の作用効果〕
上述したように、上記第1実施形態では、RFIDタグ23が石炭パイル1の内部深くまで埋設されて外部へ電波2Aを透過できない場合でも、RFIDタグ23間通信により、隣接するRFIDタグ23にタグ識別情報23Cと温度情報23Dが順次伝送され、外部の受信器3で受信できる。
したがって、石炭パイル1の内部の温度でも、RFIDタグ23の電波強度を強くすることなく、確実に精度よく測定できる。
【0035】
そして、上記第1実施形態では、隣接する温度検出器2の間隔が10m以下、特に水平面における縦および横方向で10m間隔以下、鉛直方向で5m間隔以下の条件(石炭パイル1が1万トン当たり温度検出器2が25個以上の割合)で温度検出器2を埋設している。
このため、石炭パイル1の内部における発熱部位を精度良く測定できるとともに、RFIDタグ23の電波2Aを消費電力が比較的に小さくかつ外部との電波障害を生じない強度に設定できる。したがって、石炭パイル1の内部の温度を長期間安定して効率よく高精度に測定できる。
さらに、上記第1実施形態では、石炭パイル1が6万トン当たり温度検出器2が1000個以下の割合で石炭パイル1内に分散配置している。
このため、温度検出器2は、水平面における縦および横方向で約5m間隔、鉛直方向で約3m間隔に配設される割合と同等またはより広い間隔で配設されることとなる。この上限値の条件より間隔を狭く配設しても、測定する石炭パイル1の内部の温度の精度があまり向上することなく、使用する温度検出器2の量が多くなり、測定コストが増大するなどの不都合を生じるおそれがある。したがって、上記上限値の割合で分散配置させることで、効率よく石炭パイル1の内部の温度を測定できる。
【0036】
また、上記第1実施形態では、石炭パイル1を所定の高さ寸法で層状に複数層積み上げる状態でばら積みする際に、1層分積み上げた層状貯蔵石炭1Aの上面に基準位置Xから所定間隔で温度検出器2を載置する。この層状貯蔵石炭1Aの上面に石炭をさらに1層分積み上げ、この2層目の層状貯蔵石炭1Aの上面にさらに温度検出器2を載置することを繰り返すことで、ばら積みの石炭パイル1内の所定位置に温度検出器2を埋設している。
このことにより、ばら積みする際に、石炭パイル1の内部へ空気が流入することを抑制して自然発火を抑制する目的で、重機5などを利用して締め固め、層状貯蔵石炭1Aを順次積み上げる従来の作業工程中に、温度検出器2を載置する作業を実施するのみでよい。このため、従来の作業工程の途中で温度検出器2を載置する簡単な作業を実施するのみで、石炭パイル1の内部の温度を長期間安定して効率よく高精度に測定できる。
【0037】
そして、上記第1実施形態では、石炭パイルの内部の自然発熱部位を精度良く確認し、その箇所に注水したり、切り崩したり、撹拌したりして、自然発火する前に自然発熱部位を冷却している。
このため、自然発火を未然に防ぐことができる。さらに、自然発熱部位を選択的に冷却できるので、自然発火を効率よく防止できる。特に、注水により自然発熱部位を冷却することで、温度検出器2は埋設されたままであることから、継続して温度測定でき、作業性がよい。
【0038】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について図7を参照して説明する。
図7は、第2実施形態における温度測定システムの概略構成、特にRFIDタグを石炭に埋設する方法を説明するための概略図である。
第2実施形態は、第1実施形態における石炭貯蔵場Sにばら積みする形態に代えて、貯蔵領域としてのコンテナT内にばら積みする構成で、RFIDタグ23を貯蔵石炭1Bに埋設する方法が異なる以外は第1実施形態と同様である。なお、第2実施形態における第1実施形態と同一または同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
図7において、温度測定システムAの計算機4は、コンテナTへ貯蔵石炭1Bを荷役してコンテナT内に石炭パイル1を構築するコンベヤー6の駆動を制御する制御パネル7に接続されている。
コンベヤー6は、コンテナTの上方に位置して移動可能に設置され、コンテナT内へ貯蔵石炭1Bを搬送する。コンベヤー6は、制御パネル7に接続されて、駆動制御される。
コンベヤー6には、コンベヤー6の貯蔵石炭1Bを投入する先端位置を移動させるコンベヤー移動手段61が設けられている。コンベヤー移動手段61は、制御パネル7に接続されて、駆動制御される。
また、コンベヤー6の先端に位置して、貯蔵石炭1Bとともに搬送されて先端を通過した温度検出器2のタグ識別情報23Cを読み取るタグ搬出検出器8が設けられている。タグ搬出検出器8は、計算機4に接続され、検出したタグ識別情報23Cを計算機4へ送信する。
ここで、コンベヤー6により貯蔵石炭1Bとともに搬送する温度検出器2は、石炭パイル1が1万トン当たり温度検出器2が25個以上で、石炭パイル1が6万トン当たり温度検出器2が1000個以下の割合で、搬送する貯蔵石炭1B中に投入すればよい。
【0040】
制御パネル7は、コンベヤー6およびコンベヤー移動手段61の駆動を制御するコンベヤー駆動制御手段71と、移動されたコンベヤーの先端位置を検出する位置検出手段72と、コンベヤー6の駆動により搬送される貯蔵石炭1Bの搬送量を検出する搬送量検出手段73と、を備えている。
位置検出手段72は、例えば、コンテナTの底面の1つの角を基準位置Xとして、基準位置から水平面で横方向および縦方向の移動距離により平面座標の位置情報を生成する。なお、コンベヤー6の先端位置の特定は、この方法に限らず、例えば緯度経度を利用するなどしてもよい。
搬送量検出手段73は、例えば、コンベヤー駆動制御手段71にて駆動制御するコンベヤー6の駆動状況に基づいて搬送量を演算したり、コンベヤー6に設けられた荷重センサーを用いて搬送中の貯蔵石炭1Bの質量と搬送時間とから搬送量を演算したりするなど、各種方法を利用できる。
【0041】
計算機4の演算手段44における埋設箇所認識手段44Aは、制御パネル7の搬送量検出手段73で検出した搬送量と、搬送期間中のコンベヤー6の先端位置との関係に基づいて、コンテナT内の平面座標に対するばら積みされた石炭パイル1の高さ寸法を逐次演算する。なお、高さ寸法の演算は、例えば、所定位置で所定量の貯蔵石炭1Bを所定の高さから投入した際に円錐形上に積み上がる石炭パイル1の高さ寸法の統計値を利用するなどが例示できる。
そして、埋設箇所認識手段44Aは、タグ搬出検出器8から送信されたタグ識別情報23Cを取得すると、制御パネル7の位置検出手段72で検出したコンベヤー6の先端位置を読み取る。この読み取ったコンベヤー6の先端位置である埋設位置情報23EにおけるコンテナT内での平面座標を、タグ識別情報23Cに関係付ける。さらに、埋設箇所認識手段44Aは、タグ搬出検出器8から送信されたタグ識別情報23Cを取得すると、取得した時点でのコンベヤー6の先端位置に対応するコンテナT内の石炭パイル1の高さ寸法を読み取り、タグ識別情報23Cに埋設位置情報23Eにおける高さ位置を関連付け、タグ識別情報23Cに埋設位置情報23Eが関連付けられたタグ埋設情報43A1を生成する。そして、生成したタグ埋設情報43A1を埋設位置データベース43Aに順次記憶させ、埋設位置データベース43Aを構築する。
【0042】
そして、コンテナTにばら積みされた石炭パイル1内に温度検出器2が適宜分散配置された状態で、上述した第1実施形態と同様に、受信器3によるRFIDタグ23から発信される電波2Aの受信待機状態とする。受信器3で電波2Aを受信すると、計算機4は、受信器3で受信した電波2Aのタグ識別情報23Cと、埋設位置データベース43Aとを照合し、電波2Aに記録された温度情報23Dを照合したタグ埋設情報43A1と関連付け、発熱部位を認識する。
そして、表示部41や通信部42などにより自然発熱部位を報知する。
この報知により、自然発火防止対策が迅速に実施されることとなる。
【0043】
〔第2実施形態の作用効果〕
第2実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
さらに、上記第2実施形態では、コンベヤー6の先端位置と貯蔵石炭1Bの搬送量とから、コンベヤー6の先端から投入された温度検出器2が埋設される位置を自動的に特定し、タグ埋設情報43A1を生成して自動的に埋設位置データベース43Aを構築する。
このため、作業者が貯蔵する石炭パイル1の所定の位置に埋設する作業や、埋設位置とタグ識別情報23Cとを関連付ける入力作業を実施しなくても、自動的にタグ埋設情報43A1を生成でき、石炭パイル1の内部の温度を測定するための作業がより容易にできる。
そして、本発明では、第2実施形態のコンテナTにばら積みした石炭パイル1の内部の温度も測定できることから、石炭船などで搬送する場合なども、測定を継続でき、自然発火対策を適切に講じて、効率よく安定した搬送も実施できる。
【0044】
〔実施形態の変形例〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
具体的には、第1実施形態において、RFIDタグ23で所定の温度の閾値を設定し、閾値の温度に温度センサー23Aで検出する温度が到達した際に、検出した温度が所定温度に到達した旨の温度情報23Dを発信する構成を例示したが、この構成に限られない。例えば、検出した温度を逐次発信したり、電力消費を考慮してRFIDタグ23にタイマーなどの計時手段を設け、所定時間毎に検出した温度の温度情報23Dをタグ識別情報23Cとともに発信したりしてもよい。
また、表示部41で画像表示により報知したり、電子メールにて報知したりする場合に限らず、単に表示部41に配設位置と温度とを数値表示して報知するなど、報知する方法としては、いずれの方法が適用できる。さらに、本発明におけるRFIDタグ23が回折された位置における温度を報知する出力手段の構成としては、作業者に報知する場合に限らず、例えば散水器を制御する制御装置に自然発熱部位に関する情報を出力し、散水器により自然発熱部位から注水させるなどしてもよい。
【0045】
そして、温度検出器2を埋設する埋設位置としては、上述した間隔や割合での分散配置に限られない。例えば電波強度をより弱めて消費電力を抑えるために、上記各実施形態より多くの温度検出器2を埋設させたり、RFIDタグの性能の向上などにより電波強度が強く設定されることで上記各実施形態より少なく埋設させたりしてもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構成に変更するなどしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、例えば火力発電事業や鉄鋼製造事業などで石炭をばら積み貯蔵する貯蔵石炭内部の温度の温度測定に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
A………温度測定システム
S………貯蔵領域としての石炭貯蔵場
T………貯蔵領域としてのコンテナ
X………基準位置
1………貯蔵石炭である石炭パイル
1A……層状貯蔵石炭
1B……貯蔵石炭
2………温度検出器
2A……電波
3………受信器
6………コンベヤー
8………タグ搬出検出器
22………電源
23………RFIDタグ
23A……温度センサー
23C……タグ識別情報
23D……温度情報
23E……埋設位置情報
41………出力手段としての表示部
42………出力手段を構成する通信部
43A……データベースである埋設位置データベース
43A1…タグ埋設情報
44………演算手段
61………コンベヤー移動手段
72………位置検出手段
73………搬送量検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばら積みされた貯蔵石炭の内部の温度を測定する貯蔵石炭内部の測定方法であって、
電源、温度センサー、および前記温度センサーで測定された温度情報を自己のタグ識別情報とともに周波数1GHz以下の電波により発信可能で、かつ自己のタグ識別情報とは異なる他のタグ識別情報および温度情報を受信すると自己のタグ識別情報および温度情報とともに前記電波により送信可能なRFIDタグを備えた温度検出器と、前記タグ識別情報および前記温度情報を受信する受信器とを用い、
前記温度検出器を貯蔵石炭中に複数埋設する埋設工程と、
前記貯蔵石炭中に埋設された各RFIDタグのタグ識別情報と埋設位置とを関連付けて1つのデータ構造のタグ埋設情報を生成させて複数記録しデータベースを生成する入力工程と、
前記受信器で受信された前記タグ識別情報および温度情報と、前記データベースのタグ埋設情報とを照合し、各RFIDタグが埋設された位置と温度とを関連付け、出力手段から前記RFIDタグが埋設された位置における温度を報知する測定工程と、
を実施することを特徴とする貯蔵石炭内部の温度測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の貯蔵石炭内部の温度測定方法において、
前記埋設工程は、隣接する前記温度検出器の間隔が10m以下の条件で前記温度検出器を埋設する
ことを特徴とする貯蔵石炭内部の温度測定方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の貯蔵石炭内部の温度測定方法において、
前記埋設工程は、前記貯蔵石炭1万トン当たり前記温度検出器が25個以上の割合で前記温度検出器を埋設する
ことを特徴とする貯蔵石炭内部の温度測定方法。
【請求項4】
請求項3に記載の貯蔵石炭内部の温度測定方法において、
前記埋設工程は、前記貯蔵石炭6万トン当たり前記温度検出器が1000個以下の割合で前記温度検出器を埋設する
ことを特徴とする貯蔵石炭内部の温度測定方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の貯蔵石炭内部の温度測定方法において、
前記埋設工程は、前記貯蔵石炭を所定の高さ寸法で層状に複数層積み上げる状態でばら積みする際に、1層分積み上げた層状貯蔵石炭の上面に基準位置から所定間隔で前記温度検出器を載置する載置工程と、前記層状貯蔵石炭の上面に前記貯蔵石炭を1層分積み上げる積み上げ工程とを繰り返す
ことを特徴とする貯蔵石炭内部の温度測定方法。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の貯蔵石炭内部の温度測定方法において、
前記貯蔵石炭をばら積みする貯蔵領域の上方に位置して移動可能に設けられ、前記貯蔵石炭を前記貯蔵領域へ搬送するコンベヤーと、該コンベヤーの搬送する先端位置を移動させるコンベヤー移動手段と、前記コンベヤーの先端位置を検出する位置検出手段と、前記コンベヤーにて搬送する前記貯蔵石炭の量を検出する搬送量検出手段と、前記コンベヤーの先端位置に配設され前記搬送する貯蔵石炭とともに搬送される前記温度検出器が前記コンベヤーの先端位置を通過する際に前記タグ識別情報を読み取るタグ搬出検出器と、を用い、
前記入力工程は、
前記搬送量検出手段により検出した搬送量と、前記位置検出手段により検出した前記コンベヤーの先端位置とに基づいて、前記貯蔵領域の水平面に対する前記貯蔵石炭のばら積み高さを逐次演算する高さ演算工程と、
前記タグ搬出検出器によりタグ識別情報を読み取った時、前記位置検出手段により検出した前記コンベヤーの先端位置に基づき、前記タグ識別情報に対応する温度検出器の埋設位置を平面座標として認識して前記タグ識別情報に関連付けるとともに、前記タグ識別情報を読み取った時の前記高さ演算工程で演算したばら積み高さを、前記タグ識別情報に対応する温度検出器の高さ方向における埋設位置として認識して前記タグ識別情報に関連付ける埋設位置認識工程と、を実施する
ことを特徴とする貯蔵石炭内部の温度測定方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の貯蔵石炭内部の温度測定方法により測定した前記貯蔵石炭内部の温度が、一定以上の温度を示す部位を認識した場合、ばら積みされた前記貯蔵石炭の少なくともその部位を含む周辺部に、注水、切り崩し、撹拌のうちの少なくともいずれかの操作の実施を促す報知をする
ことを特徴とする貯蔵石炭の自然発火防止方法。
【請求項8】
ばら積みされた貯蔵石炭の内部の温度を測定する貯蔵石炭内部の温度測定システムであって、
電源、温度センサー、および前記温度センサーで測定された温度情報を自己のタグ識別情報とともに周波数1GHz以下の電波により発信可能で、かつ自己のタグ識別情報とは異なる他のタグ識別情報および温度情報を受信すると自己のタグ識別情報および温度情報とともに前記電波により送信可能なRFIDタグを備えた温度検出器と、
前記タグ識別情報および前記温度情報を受信する受信器と、
前記貯蔵石炭中に複数埋設された各RFIDタグのタグ識別情報と埋設位置とを関連付けた1つのデータ構造のタグ埋設情報を複数記録したデータベースと、
前記受信器で受信された前記タグ識別情報および前記温度情報と、前記データベースのタグ埋設情報とを照合し、各RFIDタグが埋設された位置と温度とを関連付ける演算をする演算手段と、
この演算手段により演算した前記RFIDタグが埋設された位置における温度を報知する出力手段と、
を具備したことを特徴とする貯蔵石炭内部の温度測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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