説明

質量分析データ解析方法

【課題】
質量分析装置取得データにおいて、複数成分由来のMSn スペクトルが隣接して混在した領域では、隣接する当該MSn スペクトルを同時にMSn+1 分析する可能性があり、価数判定が複雑になる場合がある。そこで本発明では、MSn+1 (nは、n≧1の整数)スペクトル及びMSn スペクトルの価数の再判定を行うことにより、より信頼性の高いデータを提供することを目的とする。
【解決手段】
隣接してMSn+1 スペクトルが混在する領域を抽出し、価数の再判定を行う領域を決定する。その後、抽出された所定の混在領域のスペクトル強度をスキャン毎にリスト化し、この当該スキャン毎のリスト間のスペクトル強度変動を算出して、同一の変動をしているスペクトル群をグループ化する。このグループ化されたデータに基づいて、価数の再判定を行うステップを含む質量分析データの解析を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析データ解析方法に関する。例えば、特に液体クロマトグラフ質量分析装置から得られるMSnスペクトルから目的成分の価数判定を行う際に好適な質量分析データ解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特開2005−91344号公報記載のように、リアルタイムで質量分析を行いながら、MSn+1 分析を行う際のターゲットとなる親マスの価数判定を行うことが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−91344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、質量分析装置でデータを取得するにあたり、リアルタイムでMSnスペクトルデータの価数判定を行い、ターゲットとなるMSnスペクトルを選択し、その後MSn+1分析を行っていた。
【0005】
しかし、複数成分由来のMSn スペクトルが隣接して混在した場合、複数成分由来の
MSnスペクトルを同時にMSn+1分析する可能性がある。その結果、複数成分の混在したMSn+1 スペクトルが検出されることがあり、スペクトル解析が複雑になる可能性がある。
【0006】
本発明の一つの目的は、MSn+1 (nは、n≧1の整数)スペクトル及びMSnスペクトルの価数の再判定を行うことにより、より信頼性の高いデータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの特徴は、質量分析装置で取得したMSn (nは、n≧1の整数)スペクトルデータにおいてMSnスペクトルの価数判定を行う際に、混在する複数成分を切り分け、価数の再判定を行う質量分析データ解析方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、これまで価数判定が複雑であった複数成分由来のスペクトルが隣接して混在する領域で、同位体スペクトルの価数再判定を行うことにより、より信頼性の高いデータを提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
具体的な実施の一例を挙げると、質量分析装置で取得したMSnデータ及びMSn+1データをデータ処理部にて価数判定する。ここで、隣接して複数成分由来のMSスペクトルが混在する領域を抽出して、価数の再判定を行う領域を決定する。次に、抽出した範囲内のMSnデータ及びMSn+1データの全スペクトルを最低3スキャン以上抽出し、スキャン毎の差を算出するために、1スキャン目から2スキャン目の全スペクトル間において、同一質量数毎のスペクトル強度の差を求め、同様に2スキャン目から3スキャン目の全スペクトル間において同一質量数毎のスペクトル強度の差を求め、以降、スキャン間毎にスペクトル強度の変動を求める。ここで求めたスペクトル強度毎の差の変動が増加方向もしくは減少方向のどちらか一方に属するスペクトル群をグループ化するか、またはスペクトル強度毎の比の変動が一定許容範囲以内であるスペクトル群をグループ化する。もしくは、差と比の変動の両方を求め、差の増減が同方向、且つ、比の変動が一定許容範囲内であるスペクトル群をグループ化する。この際、グループ化に用いたスペクトル群の強度を抽出した全スキャン分を積算し、積算されたスペクトル群に基づいて価数の再判定を行うものとする。さらに、このMSn+1 データにおいて求めた変動値と、同様の手順で求めた抽出範囲のMSnデータのみの変動値を比較し、同一変動をしているものをターゲットMSnスペクトル、及び当該MSnスペクトル由来のMSn+1スペクトルとする。なお、前記同一質量数とは±0.1m/z (mは質量数、zは電荷)の範囲内のこととし、前記一定許容範囲とは通常0〜25%程度の誤差範囲とすることが望ましい。以下、本発明に係る一実施例を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施例で用いる液体クロマトグラフ質量分析方法全体の流れの概略である。本実施例では、試料としてタンパク質を酵素消化処理したものに代表されるペプチド混合試料である試料1を用いて、液体クロマトグラフ2により試料1を分離する処理を行う。分離後の試料をイオン源3によりイオン化する処理を行う。イオン源から導入されたイオンを質量分析部4により質量分析する処理を行う。イオンを検出する検出部5を備えた液体クロマトグラフ質量分析装置を使用し、取得したMSデータをデータ処理部6にて解析する処理を行う。ここで、イオン化した試料の質量をそのまま質量分析することをMS1分析ということとする。さらに質量分析部4でMSnのイオンをターゲットとして選択し、解離が可能な質量分析装置を用いて、MSn+1段階に解離することをMSn+1分析とする。この際、MS1分析(MSn分析のn=1の場合)されたイオンをMS1 スペクトルといい、このMS1スペクトルを選択、解離したイオンをMS2 スペクトルという。通常、データ取得後にデータ処理部6にてMS1スペクトルデータ、及びMS2スペクトルデータの確認を行い、価数判定を行う。
【0011】
図2は、本発明の実施例に使用される液体クロマトグラフ質量分析装置において取得されたデータ中のm/zで一マス中に複数成分が混在しているMSnスペクトルの検出データの一例である。更に、図2(a)は、質量分析装置にて取得したMSスペクトルデータの一例で、m/zで1マス分の領域に同位体スペクトルでない2価(図中では(2+)と表示する)の成分由来のスペクトルと3価(図中では(3+)と表示する)の成分由来のスペクトルが隣接して混在していることを示している。図2(a)では、スペクトル上に正確な価数表示をしているが、実測データ中ではこのように隣接して複数成分が混在している領域では、隣り合うスペクトルを同位体スペクトルであると誤判定する可能性がある。その結果、複数成分由来のMSスペクトルを同時にMS2 分析する可能性があり、複数成分の混在したMS2 スペクトルが検出され、スペクトル解析が複雑になる可能性がある。なお、隣接して複数成分由来のスペクトルが混在している箇所とは、m/zで2マス以内に複数の同位体スペクトルが存在している箇所を示す。また、比較例として図2(b)に価数が誤判定された場合のスペクトルデータを示す。これは、図2(a)のように異なる価数のスペクトルが混在しているのに2価と3価を正確に判定しているのと違い、隣り合う3価と2価を同位体スペクトル(この場合は5価(図中では(5+)と表示する))として判定した一例を示してある。
【0012】
図3は、本発明による液体クロマトグラフ質量分析装置方法における、取得データ中のMSスペクトルの価数判定を修正する解析方法のフローチャートである。この方法では、まず質量分析装置で、質量分析データを取得する処理(ステップa)7を行う。次に、データ処理部を用いて、当該質量分析データの価数判定処理(ステップb)8を行う。次に、所定の混在領域の抽出処理(ステップc)9により、そのMSデータ中の隣接して複数成分由来のスペクトルが混在する領域を抽出する。この価数判定処理8にて価数判定を行った際には、まだ誤判定された価数表示のMSスペクトルが含まれている。
【0013】
その後、スキャン毎のスペクトル強度のリスト化処理(ステップd)10により、抽出された混在領域のMSスペクトル強度、及びMS2 スペクトル強度をスキャン毎にリスト化する。次に、当該スキャン毎のリスト間変動を算出する処理(ステップe)11により、この当該スキャン毎のリスト間のスペクトル強度変動を算出する。次に、ピーク群のグループ化処理(ステップf)12により、同一の変動をしているスペクトル群をグループ化する。次に、スペクトル群の積算処理(ステップg)13により、グループ化に用いたスペクトル群の強度を抽出した全スキャン分を積算する。次に、価数の再判定処理(ステップh)14として、積算されたスペクトル群に基づいて、データ処理部にて価数の再判定を行う。
【0014】
図4,図5,図6は、MS2 スペクトルデータにおいて、スキャン毎の全スペクトル強度の変動を算出する手順を示した一例である。すなわち、図4は、本発明の実施例に使用される液体クロマトグラフ質量分析装置において取得されたMSスペクトルデータ、及びMS2 スペクトルデータの差、及び比の変動を算出する手順の一例である。図5は、本発明の実施例に使用される液体クロマトグラフ質量分析装置において取得されたMSスペクトルデータ、及びMS2 スペクトルデータのスキャン毎の差、及び比のリストの一例である。更に、図6は、図4,図5でスペクトル変動をスキャン毎にリスト化し、その後グループ化されたスペクトルを積算した一例である。以下、更に具体的に説明する。
【0015】
図4は、連続した3スキャンのMS2 スペクトルであり、(MS2−1)〜(MS2−3)では、それぞれスキャン毎の差を算出するために、同一質量数毎に1スキャン目(図中
(MS2−1))から2スキャン目(図中(MS2−2)、以下同様。)の全スペクトル強度差、2スキャン目から3スキャン目の全スペクトル強度差を求める。同様にして、同一質量数毎に1スキャン目から2スキャン目の全スペクトル強度比、2スキャン目から3スキャン目の全スペクトル強度比を求める。ここで、連続した4スキャン以上のデータがある場合は、以降同様の操作を繰り返す。
【0016】
図5は、本発明の実施例に使用される液体クロマトグラフ質量分析装置において取得されたMSスペクトルデータ、及びMS2スペクトルデータのスキャン毎の差、及び比のリストの一例であり、図4のスペクトル強度をもとに、スキャン毎のスペクトル強度差、及びスペクトル強度比をリスト化した結果である。
【0017】
まず、図5(a)のスキャン毎の差のリストでは、スペクトルb,スペクトルd,スペクトルeが同様の差の変動を示している。また、スペクトルa,スペクトルc,スペクトルfが同様の差の変動を示している。つまり、スペクトルb,スペクトルd,スペクトルeにおいて、(MS2−1)−(MS2−2)ではスペクトル強度が増加方向(ここではスキャン1回目からスキャン2回目の差はマイナスとなるので図5(b)では表記上「−」とする。以下同様。)、(MS2−2)−(MS2−3)では減少方向(+)の変動を示している。さらにスペクトルa、スペクトルc,スペクトルfにおいて、(MS2−1)−(MS2−2)では増加方向(−),(MS2−2)−(MS2−3)でも増加方向(−)の変動を示している。
【0018】
また、図5(c)のスキャン毎の比のリストにおいても、スペクトルb,スペクトルd,スペクトルeが同様の比の変動を示し、スペクトルa,スペクトルc,スペクトルfが同様の比の変動を示している。また図5(c)の、スペクトルb,スペクトルd,スペクトルeにおいて、(MS2−1)/(MS2−2)では0.1 、(MS2−2)/(MS2−3)では5の変動を示し、スペクトルa,スペクトルc,スペクトルfにおいて、(MS2−1)/(MS2−2)では30、(MS2−2)/(MS2−3)では1.5の変動を示している。このリストの結果からスキャン間毎の差の増減、及び強度比が同様の変動を示すスペクトル群、この場合はスペクトルbとスペクトルdとスペクトルeとの一群と、スペクトルaとスペクトルcとスペクトルfとの一群を各々グループ化する。なお、図5(a)〜(c)では、スペクトルb,スペクトルd,スペクトルeは同様の変動を示すスペクトル群なので、スペクトルaとスペクトルcとスペクトルfの一群と識別するために太字アンダーラインで表記した。
【0019】
その後、同じグループ群であるものを抽出して、クペクトル強度を演算したものが図6である。図6に示すように、グループ化に用いたスペクトル群の強度を抽出した全スキャン分(図6では、(MS2−1)〜(MS2−3)で示される連続した3スキャンのMS2スペクトルである。)を積算し、この積算されたスペクトル群に対して価数の再判定を行うものとする。図6では、図5のリストより変動を求めグループ化したスペクトルb,スペクトルd,スペクトルeのスキャン1〜スキャン3までのスペクトル強度を積算した。そして、この積算したスペクトルをもとにデータ処理部6にて価数の再判定を行う。そして、最終的に再判定の前後で価数が異なる場合、再判定後の価数を用いて質量分析データの修正を行う。さらに、このMS2 データにおいて求めた変動値と、同様の手順で求めた抽出範囲のMSデータのみの変動値を比較し、同様の変動をしているものをターゲット
MSスペクトル、及び当該MSスペクトル由来のMS2スペクトルとする。
【0020】
以上では、液体クロマトグラフ質量分析装置への適用例を示したが、この他にもガスクロマトグラフ質量分析装置への適用など技術思想の範囲内で種々適用範囲の変形が可能である。
【0021】
また、本明細書の開示の一例を列挙すると次の通りである。
(1)被測定用の試料をイオン化し、そのイオンを質量分析し、当該イオンを検出し、検出データを解析する質量分析データ解析方法であって、取得したMSn (nは、n≧1の整数)スペクトルデータにおいて、MSn スペクトルの価数判定を行う際に、混在する複数成分を切り分け、価数の再判定を行う質量分析データ解析方法。
(2)上記(1)において、
a)イオン化した試料を分析したMSn(nは、n≧1の整数) スペクトルデータ、及び当該MSnスペクトルをターゲットとして選択,解離したMSn+1スペクトルデータを取得するステップと、
b)上記ステップ(a)で取得したMSnスペクトルデータを、価数判定するステップと、
c)上記ステップ(b)で予め価数判定を行ったMSnスペクトルデータにおいて、所定の領域を抽出するステップと、
d)上記ステップ(c)で抽出された領域に対応したMSn スペクトルデータ、及び
MSn+1スペクトルデータをデータ取得スキャン毎にリスト化するステップと、
e)当該スキャン毎のMSn スペクトルデータ、及びMSn+1 スペクトルデータ毎にスペクトル強度の変動を算出するステップと、
f)上記ステップ(e)のスペクトル強度の変動に基づいて、MSn スペクトルデータ、及びMSn+1 スペクトルデータ毎にスペクトル群をグループ化するステップと、
g)上記ステップ(f)でグループ化したスペクトル群の抽出スキャン分のスペクトル強度を積算するステップと、
h)上記ステップ(g)でグループ化し、積算したMSnスペクトルデータ、及びMSn+1スペクトルデータに対して、価数の再判定を行うステップとを有し、
MSn スペクトルデータに関して、上記各ステップを行うことにより、複数成分が混在するMSn+1 スペクトルデータを成分毎にグループ化することを特徴とする質量分析データ解析方法。
(3)上記(1)において、上記ステップ(e)、及び上記ステップ(f)ではスキャン毎のスペクトル強度差の変動を求めることとし、同一質量数のスペクトルの差が増加方向もしくは減少方向のどちらか一方に変動するスペクトル群をグループ化することを特徴とする質量分析データ解析方法。
(4)上記(1)において、上記ステップ(e)、及び上記ステップ(f)ではスキャン毎のスペクトル強度比の変動を求めることとし、同一質量数のスペクトル比の変動が一定許容範囲内にあるスペクトル群をグループ化することを特徴とする質量分析データ解析方法。
(5)上記(1)において、上記ステップ(e)、及び上記ステップ(f)ではスキャン毎の差と比の変動を両方求めることとし、同一質量数のスペクトルの変動が増加方向もしくは減少方向のどちらか一方に変動し、且つ、この変動が一定許容範囲内にあるスペクトル群をグループ化することを特徴とする質量分析データ解析方法。
(6)上記(1)において、上記ステップ(h)に基づいて親イオンの価数判定を行うステップを有することを特徴とする質量分析データ解析方法。
(7)上記(1)において、上記ステップ(d)では最低3スキャン以上スペクトル強度の変動を求めることを特徴とする質量分析データ解析方法。
(8)イオン源と、質量分析部と、検出部と、データ処理部とを有する質量分析装置を用い、被測定物を上記イオン源でイオン化し、そのイオンを上記質量分析部にて分析し、上記検出部にてイオンを検出し、上記データ処理部にて取得されたデータを解析する質量分析データ解析方法であって、a)質量分析装置よりイオン化した試料を分析したMSn
(nは、n≧1の整数)スペクトルデータ、及び当該MSn スペクトルをターゲットとして選択,解離したMSn+1スペクトルデータを取得するステップと、b)上記ステップ
(a)で取得したMSnスペクトルデータを質量分析装置のデータ処理部にて価数判定を行うステップと、c)上記ステップ(b)で予め価数判定を行ったMSn スペクトルデータにおいて、所定の混在領域を抽出するステップと、d)上記ステップ(c)で抽出された混在領域に対応したMSnスペクトルデータ、及びMSn+1スペクトルデータをデータ取得スキャン毎にリスト化するステップと、e)当該スキャン毎のMSn スペクトルデータ、及びMSn+1 スペクトルデータ毎に全スペクトル強度の変動を算出するステップと、
f)上記ステップ(e)のスペクトル強度の変動に基づいて、ある一定の変動をしているMSn スペクトルデータ、及びMSn+1 スペクトルデータ毎にスペクトル群をグループ化するステップと、上記ステップ(f)でグループ化したスペクトル群の抽出スキャン分のスペクトル強度を積算するステップと、上記ステップ(g)でグループ化し、積算した
MSn スペクトルデータ、及びMSn+1 スペクトルデータに対して、価数の再判定を行うステップとを有し、MSn スペクトルデータに関して、上記各ステップを行うことにより、複数成分が混在するMSn+1 スペクトルデータを成分毎にグループ化することを特徴とする質量分析データ解析方法。
【0022】
以上のように、質量分析装置取得データにおいて、複数成分由来のMSn スペクトルが隣接して混在した領域では、隣接する当該MSn スペクトルを同時にMSn+1 分析する可能性があり、価数判定が複雑になる場合がある。そこで、MSn+1 (nは、n≧1の整数)スペクトル及びMSn スペクトルの価数の再判定を行うことにより、より信頼性の高いデータを提供する。すなわち、隣接してMSn+1 スペクトルが混在する領域を抽出し、価数の再判定を行う領域を決定する。その後、抽出された所定の混在領域のスペクトル強度をスキャン毎にリスト化し、この当該スキャン毎のリスト間のスペクトル強度変動を算出して、同一の変動をしているスペクトル群をグループ化する。このグループ化されたデータに基づいて、価数の再判定を行うステップを含む質量分析データの解析を行うことが開示される。
【0023】
また、本明細書において、質量分析部4は、独立した単体の質量分析装置でも、液体クロマトグラフ質量分析装置に内蔵された質量分析計でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例で使用される液体クロマトグラフ質量分析方法全体の流れの概略図である。
【図2】本発明の実施例に使用される液体クロマトグラフ質量分析装置において取得されたデータ中一マス中に複数成分が混在しているMSnスペクトルの検出データの一例である。
【図3】本発明の実施例におけるMSnスペクトルデータ、及びMSn+1 スペクトルデータの解析を行う際の操作手順例である。
【図4】本発明の実施例に使用される液体クロマトグラフ質量分析装置において取得されたMSスペクトルデータ、及びMS2 スペクトルデータの差、及び比の変動を算出する手順の一例である。
【図5】本発明の実施例に使用される液体クロマトグラフ質量分析装置において取得されたMSスペクトルデータ、及びMS2スペクトルデータのスキャン毎の差、及び比のリストの一例である。
【図6】図4,図5でスペクトル変動をスキャン毎にリスト化し、その後グループ化されたスペクトルを積算した一例である。
【符号の説明】
【0025】
1 試料
2 液体クロマトグラフ
3 イオン源
4 質量分析部
5 検出部
6 データ処理部
7 質量分析データの取得(ステップa)
8 当該データの価数判定(ステップb)
9 所定の混在領域の抽出(ステップc)
10 スキャン毎のスペクトル強度のリスト化(ステップd)
11 当該スキャン毎のスペクトル強度変動の算出(ステップe)
12 スペクトル群のグループ化(ステップf)
13 グループ化したスペクトル群の積算(ステップg)
14 価数の再判定(ステップh)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定用の試料をイオン化し、そのイオンを質量分析し、当該イオンを検出し、検出データを解析する質量分析データ解析方法であって、取得したMSn (nは、n≧1の整数)スペクトルデータにおいて、MSn スペクトルの価数判定を行う際に、混在する複数成分を切り分け、価数の再判定を行う質量分析データ解析方法。
【請求項2】
請求項1において、
a)イオン化した試料を分析したMSn (nは、n≧1の整数)スペクトルデータ、及び当該MSn スペクトルをターゲットとして選択、解離したMSn+1 スペクトルデータを取得するステップと、
b)上記ステップ(a)で取得したMSnスペクトルデータを、価数判定するステップと、
c)上記ステップ(b)で予め価数判定を行ったMSn スペクトルデータにおいて、所定の領域を抽出するステップと、
d)上記ステップ(c)で抽出された領域に対応したMSn スペクトルデータ、及び
MSn+1 スペクトルデータをデータ取得スキャン毎にリスト化するステップと、
e)当該スキャン毎のMSn スペクトルデータ、及びMSn+1 スペクトルデータ毎にスペクトル強度の変動を算出するステップと、
f)上記ステップ(e)のスペクトル強度の変動に基づいて、MSn スペクトルデータ、及びMSn+1 スペクトルデータ毎にスペクトル群をグループ化するステップと、
g)上記ステップ(f)でグループ化したスペクトル群の抽出スキャン分のスペクトル強度を積算するステップと、
h)上記ステップ(g)でグループ化し、積算したMSnスペクトルデータ、及びMSn+1スペクトルデータに対して、価数の再判定を行うステップとを有し、
MSn スペクトルデータに関して、上記各ステップを行うことにより、複数成分が混在するMSn+1 スペクトルデータを成分毎にグループ化することを特徴とする質量分析データ解析方法。
【請求項3】
請求項1において、上記ステップ(e)、及び上記ステップ(f)ではスキャン毎のスペクトル強度差の変動を求めることとし、同一質量数のスペクトルの差が増加方向もしくは減少方向のどちらか一方に変動するスペクトル群をグループ化することを特徴とする質量分析データ解析方法。
【請求項4】
請求項1において、上記ステップ(e)、及び上記ステップ(f)ではスキャン毎のスペクトル強度比の変動を求めることとし、同一質量数のスペクトル比の変動が一定許容範囲内にあるスペクトル群をグループ化することを特徴とする質量分析データ解析方法。
【請求項5】
請求項1において、上記ステップ(e)、及び上記ステップ(f)ではスキャン毎の差と比の変動を両方求めることとし、同一質量数のスペクトルの変動が増加方向もしくは減少方向のどちらか一方に変動し、且つ、比の変動が一定許容範囲内にあるスペクトル群をグループ化することを特徴とする質量分析データ解析方法。
【請求項6】
請求項1において、上記ステップ(h)に基づいて親イオンの価数判定を行うステップを有することを特徴とする質量分析データ解析方法。
【請求項7】
請求項1において、上記ステップ(d)では最低3スキャン以上スペクトル強度の変動を求めることを特徴とする質量分析データ解析方法。
【請求項8】
イオン源と、質量分析部と、検出部と、データ処理部とを有する質量分析装置を用い、被測定物を上記イオン源でイオン化し、そのイオンを上記質量分析部にて分析し、上記検出部にてイオンを検出し、上記データ処理部にて取得されたデータを解析する質量分析データ解析方法であって、
a)質量分析装置よりイオン化した試料を分析したMSn (nは、n≧1の整数)スペクトルデータ、及び当該MSn スペクトルをターゲットとして選択,解離したMSn+1スペクトルデータを取得するステップと、
b)上記ステップ(a)で取得したMSnスペクトルデータを質量分析装置のデータ処理部にて価数判定を行うステップと、
c)上記ステップ(b)で予め価数判定を行ったMSn スペクトルデータにおいて、所定の混在領域を抽出するステップと、
d)上記ステップ(c)で抽出された混在領域に対応したMSn スペクトルデータ、及びMSn+1 スペクトルデータをデータ取得スキャン毎にリスト化するステップと、
e)当該スキャン毎のMSn スペクトルデータ、及びMSn+1 スペクトルデータ毎に全スペクトル強度の変動を算出するステップと、
f)上記ステップ(e)のスペクトル強度の変動に基づいて、ある一定の変動をしているMSn スペクトルデータ、及びMSn+1 スペクトルデータ毎にスペクトル群をグループ化するステップと、
g)上記ステップ(f)でグループ化したスペクトル群の抽出スキャン分のスペクトル強度を積算するステップと、
h)上記ステップ(g)でグループ化し、積算したMSnスペクトルデータ、及びMSn+1スペクトルデータに対して、価数の再判定を行うステップとを有し、
MSn スペクトルデータに関して、上記各ステップを行うことにより、複数成分が混在するMSn+1 スペクトルデータを成分毎にグループ化することを特徴とする質量分析データ解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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