説明

赤外光反射板

【課題】液晶性化合物を含む赤外線反射層を有し、赤外線反射層表面の塗布ハジキ欠陥の発生が抑制された赤外光反射板の提供。
【解決手段】多官能重合性化合物、コレステリック液晶性化合物および該液晶性化合物に対して60ppm以上のフッ素系配向制御剤を含む赤外光反射層用組成物を重合して形成された赤外光反射層を有し、該赤外光反射層の少なくとも一方の表面上に、機能層用組成物を塗布した場合の直径5μm以上の大きさの塗布液ハジキ欠陥の個数が10個/m以下であることを特徴とする赤外光反射板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は赤外光反射板に関する。詳しくは、コレステリック液晶性化合物を含む赤外光反射層を有する赤外光反射板であって、主に建造物及び車両等の窓の遮熱に利用される赤外光反射板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境・エネルギーへの関心の高まりから省エネに関する工業製品へのニーズは高く、その一つとして住宅及び自動車等の窓ガラスの遮熱、つまり日光による熱負荷を減少させるのに効果のある、ガラス及びフィルムが求められている。日光による熱負荷を減少させるのには、太陽光スペクトルの可視光領域または赤外領域の太陽光線の透過を防ぐことが必要である。
【0003】
赤外光反射板において、コレステリック液晶相を利用する方法が、提案されている。例えば、特許文献1に開示されているように、一方の方向の円偏光の光を1つのコレステリック液晶層をλ/2板の両面に形成することで、太陽光スペクトル中の700〜1200nm領域の光を選択的に効率よく反射させることができる。
【0004】
このような太陽光スペクトルの広い領域の光を選択的に反射する赤外光反射板を製造するために、多数のコレステリック液晶層を塗布により積層した積層型コレステリック液晶層が一般的に用いられている(特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2には、コレステリック液晶材料と溶剤を含む液晶層形成用コーティング組成物について、特定の組成の溶剤を用いて基板に塗布することで、塗布時に塗膜ムラが発生せず平滑な液晶層を得ることができる組成物が開示されている。また、同文献では、さらに液晶層の物理的性状または化学的性状を高める目的で重合性液晶材料以外の重合性化合物を添加できることも開示されており、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などが例示されている。
【0006】
一方、特許文献3では積層数について言及はないが、特定の棒状液晶化合物を含むコレステリック液晶用の液晶組成物が開示されており、さらに前記特定の棒状液晶化合物とは異なる重合性化合物として、液晶性の重合性化合物や、多官能の重合性化合物などが例示されている。また、同文献実施例では特定の棒状液晶化合物とは異なる重合性化合物を加えることで、表面硬度が高まることが開示されている。
【0007】
一方、近年では、液晶性化合物の配向を制御するために、フッ素系の配向制御剤を添加することも検討されてきている(特許文献4)。しかし、コレステリック液晶性化合物を含む赤外光反射層を有する赤外光反射板用の塗布組成物に、フッ素系の配向制御剤を添加した例はほとんど知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4109914号公報
【特許文献2】特許第4216568号公報
【特許文献3】特許第3900987号公報
【特許文献4】特開2005−99248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明者がコレステリック液晶性化合物にフッ素系の配向制御剤を添加した塗布液を用いて、塗布によりコレステリック液晶層積層型の赤外線反射板を製造したところ、フッ素系の配向制御剤を塗布した次の層を塗布するにあたり、塗布ハジキ欠陥が生じてしまう問題があることが判明した。
本発明が解決しようとする課題は、液晶性化合物を含む赤外線反射層を有し、赤外線反射層表面の塗布ハジキ欠陥の発生が抑制された赤外光反射板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明者が鋭意検討した結果、重合性液晶化合物に対して特定の添加量でフッ素系配向制御剤を加えた場合であっても、多官能の重合性化合物を添加することで、上記課題を解決できることを見出した。本発明者はこの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0011】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 多官能重合性化合物、コレステリック液晶性化合物および該液晶性化合物に対して60ppm以上のフッ素系配向制御剤を含む赤外光反射層用組成物を重合して形成された赤外光反射層を有し、該赤外光反射層の少なくとも一方の表面上に、機能層用組成物を塗布した場合の直径5μm以上の大きさの塗布液ハジキ欠陥の個数が10個/m以下であることを特徴とする赤外光反射板。
[2] 前記機能層用組成物の塗布厚みが硬化後において1〜10μmであることを特徴とする[1]に記載の赤外光反射板。
[3] 前記機能層用組成物が多官能重合性化合物を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の赤外光反射板。
[4] 前記赤外光反射層の表面の接触角(対純水)が85〜100度であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
[5] 前記赤外光反射層の少なくとも一方の表面における表面エネルギーの平均値が40mN/m以下であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
[6] 前記赤外光反射層の少なくとも一方の表面における表面エネルギーのバラツキの標準偏差σが0.5mN/m以下であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
[7] 前記赤外光反射層の少なくとも一方の表面における表面粗さRaが50nm以下であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
[8] 前記多官能重合性化合物の分子量が350〜2000であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
[9] 前記多官能重合性化合物が、少なくとも1つの2価の炭素数6〜30の芳香環基を含み、非液晶性であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
[10] 前記多官能重合性化合物が、2以上の(メタ)アクリロイル基を有することを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
[11] 前記多官能重合性化合物が、下記一般式(1)で表される構造であることを特徴とする[1]〜[10]のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
【化1】

(一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、MおよびMはそれぞれ独立に−(CH−CH−O)−、−(O−CH−CH−、−(CH−CH−CH−O)−、−(O−CH−CH−CH−、−(CH−およびこれらの組合せを表す。n、mおよびpはそれぞれ独立に1〜50の整数を表す。)
[12] 前記赤外光反射層用組成物中における、前記多官能重合性化合物と前記フッ素系配向制御剤の添加量比(質量比)が50:1〜1000:1であることを特徴とする[1]〜[11]のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
[13] 前記赤外光反射層用組成物中における、前記多官能重合性化合物と前記フッ素系配向制御剤の添加量比(質量比)が60:1〜900:1であることを特徴とする[1]〜[11]のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
[14] 前記赤外光反射層用組成物の粘度が0.1〜10mPa・sであることを特徴とする[1]〜[13]のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
[15] 前記赤外光反射層の合計膜厚が10〜60μmであることを特徴とする[1]〜[14]のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
[16] 前記赤外光反射層が2〜12層のコレステリック液晶層を含むことを特徴とする[1]〜[15]のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
[17] 前記2〜12層のコレステリック液晶層を含む前記赤外光反射層が、基板上に積層されており、前記各コレステリック液晶層がそれぞれコレステリック液晶層用組成物を重合して形成され、前記各コレステリック液晶層用組成物中に含まれる前記多官能重合性化合物の添加量が、基板側コレステリック液晶層用組成物から順に多くなることを特徴とする[16]に記載の赤外光反射板。
[18] 前記各コレステリック液晶層用組成物がさらにフッ素系配向制御剤を含み、前記各コレステリック液晶層用組成物中に含まれる前記フッ素系配向制御剤の添加量が、基板側コレステリック液晶層用組成物から順に多くなり、全ての前記各コレステリック液晶層用組成物中に含まれる前記多官能重合性化合物と前記フッ素系配向制御剤の添加量比(質量比)が50:1〜1000:1であることを特徴とする[17]に記載の赤外光反射板。
[19] 前記赤外光反射層が右円偏光の光を反射するコレステリック液晶層及び左円偏光の光を反射するコレステリック液晶層を少なくとも一層ずつ含むことを特徴とする[16]〜[18]のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
[20] 前記赤外光反射層の破断伸度が5%以上であることを特徴とする[1]〜[19]のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
[21] 前記赤外光反射層の破断応力が20MPa以上であることを特徴とする[1]〜[20]のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば液晶性化合物を含む赤外線反射層を有し、赤外線反射層表面の塗布ハジキ欠陥の発生が抑制された赤外光反射板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の赤外光反射板の一例の断面を表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0015】
[赤外光反射板]
本発明の赤外光反射板は、多官能重合性化合物、コレステリック液晶性化合物および該液晶性化合物に対して60ppm以上のフッ素系配向制御剤を含む赤外光反射層用組成物を重合して形成された赤外光反射層を有し、該赤外光反射層の少なくとも一方の表面上に、機能層用組成物を塗布した場合の直径5μm以上の大きさの塗布液ハジキ欠陥の個数が10個/m以下であることを特徴とする。
本発明の赤外光反射板は、このような構成により、赤外光反射層中に特定量のフッ素系配向制御剤を含む場合であっても、赤外光反射層中に多官能重合性化合物を同時に含むことで、塗布液ハジキ欠陥を改善し、表面面状を改善することができる。このような構成によって本発明の効果を奏することができる理由は、いかなる理論に拘泥するものでもないが、コレステリック液晶層を重合・硬化させることによって赤外光反射層を形成させる際に、コレステリック液晶性化合物の重合性基の反応性と多官能重合性化合物の重合性基の反応性の違いによると考えられる。その結果、多官能重合性化合物が形成された赤外光反射層の表面またはその近傍に偏在させることができ、赤外光反射層の表面に偏在するとされているフッ素系配向制御剤の分布を制御し、かつ、赤外光反射層の表面エネルギーを低く抑えることができたことに起因して本発明の効果が得られると想定される。
従来、このような重合性化合物は、特許文献2や3に記載されているように、膜強度の改善を目的として、コレステリック液晶性化合物を含む光反射層に添加されていた。そのため、液晶性化合物に対して60ppm以上のフッ素系配向制御剤を含む場合に、多官能重合性化合物を添加することで本発明の効果を得られることは、予想ができない驚くべき結果であった。
以下、本発明の赤外光反射板について、構成、特性、材料、製造方法、用途などについて順に説明する。
【0016】
<構成>
以下、図面を用いて、本発明の赤外光反射板の好ましい実施形態について説明する。
図1に示す赤外光反射板1は、樹脂基板11の少なくとも一方の側に、赤外光反射層(液晶化合物層、CL層)12を有することが好ましい。
本発明の赤外線反射板1は、前記赤外光反射層12が、赤外光反射層としてコレステリック液晶相を固定してなる光反射層(以下、コレステリック液晶層とも言う)14a及び14bを含むことが好ましい。ただし、本発明においては、光反射層14a及び14bの樹脂基板11からの積層順や積層枚数は、図1に記載される順番に限定されるものではない。
【0017】
前記赤外線反射層12は、前記コレステリック液晶相を固定してなる層が、2層〜12層の積層体であることが好ましい。
光反射層14a、14b、16a及び16bは、コレステリック液晶相を固定してなる層であるので、当該コレステリック液晶相の螺旋ピッチに基づいて、特定の波長の光を反射する光選択反射性を示す。本発明の1つの実施形態では、隣接する光反射層14aと14bは、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であるとともに、その反射中心波長λ14が同一である。また、同様に、隣接する光反射層16aと16bは、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であるとともに、その反射中心波長λ16が同一である。本実施形態では、λ14≠λ16を満足するので、光反射層14aと14bによって所定の波長λ14の左円偏光及右円偏光を選択反射するとともに、光反射層16aと16bによって、波長λ14とは異なる波長λ16の左円偏光及び右円偏光を選択反射しており、全体として、反射特性の広帯域化が図れている。
【0018】
図1に示す赤外光反射板1は、光反射層14aと14bによる選択反射の中心波長λ14が、例えば1010〜1070nmの範囲にあり、光反射層16aと16bによる選択反射の中心波長λ16が、例えば1190〜1290nmの範囲にあるなど、異なっていてもよい。選択反射波長がそれぞれ前記範囲である2組の光反射層を利用することで、赤外線の反射効率を改善できる。太陽光エネルギー強度のスペクトル分布は、短波長であるほど高エネルギーであるという一般的傾向を示すが、赤外光波長域のスペクトル分布には、波長950〜1130nm、及び波長1130〜1350nmに、2つのエネルギー強度のピークが存在する。選択反射の中心波長が、1010〜1070nm(より好ましくは1020〜1060nm)の範囲にある少なくとも一組の光反射層と、選択反射の中心波長が、1190〜1290nm(より好ましく波1200〜1280nm)の範囲にある少なくとも一組の光反射層とを利用することにより、該2つのピークに相当する光をより効率的に反射することができ、その結果、遮熱性をより改善することができる。
【0019】
上記反射中心波長を示すコレステリック液晶相の螺旋ピッチは、一般的には、波長λ14で650〜690nm程度、波長λ16で760nm〜840nm程度である。また、各光反射層の厚みは、1μm〜10μm程度(好ましくは3〜7μm程度)である。但し、これらの範囲に限定されるものではない。層の形成に用いる材料(主には液晶材料及びキラル剤)の種類及びその濃度等を調整することで、所望の螺旋ピッチの光反射層を形成することができる。また層の厚みは、塗布量を調整することで所望の範囲とすることができる。
【0020】
上記した通り、隣接する光反射層14aと14bは、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であり、同様に、隣接する光反射層16aと16bは、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆である。この様に、逆向きのコレステリック液晶相からなり、選択反射の中心波長が同一の光反射層を近くに配置することで、同波長の左円偏光及び右円偏光の双方を反射することができる。この作用は、樹脂基板11の光学特性とは無関係であり、樹脂基板11の光学特性には影響されずに得られる作用である。本発明の赤外光反射板は、前記赤外光反射層が右円偏光の光を反射するコレステリック液晶層及び左円偏光の光を反射するコレステリック液晶層を少なくとも一層ずつ含むことが好ましい。
例えば、光反射層16bを通過した光(波長λ16の右円偏光が反射され、左円偏光のみが透過した光)が、次に通過するのが16bではなく14aや14bのように、選択反射の中心波長がλ16ではない場合、波長λ16の左円偏光成分は螺旋ピッチのサイズが異なるコレステリック液晶層を通過することになる。この場合、波長λ16の左円偏光成分は、他の光反射層中のコレステリック液晶相の旋光性の影響を僅かではあるが受けることになり、左円偏光成分の波長がシフトするなどの変化が生じる。当然のことながら、この現象は、「波長λ16の左円偏光成分」に限って起こるわけではなく、ある波長のある円偏光が、異なる螺旋ピッチのコレステリック液晶相を通過する場合に生じる変化である。経験則的なデータではあるが、所定の螺旋ピッチのコレステリック液晶層によって反射されなかった一方の円偏光成分が、反射されないまま、螺旋ピッチが異なる他のコレステリック液晶層を通過する場合、通過する当該層の数が3以上になると、通過する円偏光成分への悪影響が顕著になり、その後に、当該円偏光を反射可能なコレステリック液晶層に到達しても、当該層による反射率が顕著に低下する。選択反射の中心波長が互いに同一であり、且つ螺旋方向が互いに異なる一組の光反射層は、隣接させて配置しなくてもよいが、当該一組の光反射層の間に配置される、他の光反射層(螺旋ピッチが異なるコレステリック液晶相を固定して形成された、選択反射の中心波長が異なる光反射層)は、2以下であるのが好ましい。勿論、当該一組の光反射層が隣接しているのが好ましい。
【0021】
各光反射層は、種々の方法で形成することができる。一例は、後述する塗布により形成する方法であり、より具体的には、コレステリック液晶相を形成し得る硬化性液晶組成物を、基板、配向層、又は光反射層等の表面に塗布し、当該組成物をコレステリック液晶相とした後、硬化反応(例えば、重合反応や架橋反応等)を進行させることで硬化させて、形成することができる。
【0022】
本発明の赤外光反射板のコレステリック液晶層の態様は、図1に示す態様に限定されるものではない。基板の一方の表面上に、5層以上光反射層積層した構成であってもよいし、また、基板の双方の表面上に、1組以上ずつ(合計で5層以上)光反射層積層した構成であってもよい。また、同一の反射中心波長を示す2組以上の光反射層を有する態様であってもよい。
【0023】
また、本発明の赤外光反射板は、反射波長をより広帯域化することを目的として、他の赤外光反射膜と組み合わせて用いても勿論よい。また、コレステリック液晶相の選択反射特性以外の原理により所定の波長の光を反射する光反射層を有していてもよい。組合せ可能な部材としては、特表平4−504555号公報に記載の複合膜及びそれを構成している各層、並びに特表2008−545556号公報に記載の多層ラミネート等が挙げられる。
【0024】
また、本発明の赤外線反射板は、勿論、上記2山のピークスペクトル以外の赤外線波長領域(例えば、780〜940nm、1400〜2500nm)に対しても、それぞれの波長域に合わせた選択反射特性を有していてもよい。例えば、コレステリック液晶相を固定してなる光反射層を、特には、互いに逆の旋光性(即ち右又は左旋光性)のコレステリック液晶相を固定してなる光反射層の1組をさらに積層することにより、選択反射波長域を広帯域化し、遮熱性能をより向上させることができる。
【0025】
また、本発明の赤外光反射板1は、その他に、有機材料及び/又は無機材料を含む非光反射性の層を有していてもよい。本発明に利用可能な前記非光反射性の層の一例には、他の部材(例えば、ガラス、合わせガラス用中間膜シート、粘着材シート等)と密着するのを容易とするための易接着層22が含まれる。図1は本発明の赤外光反射板1が易接着層22を含む態様の一例を示している。前記易接着層22は、コレステリック液晶相を固定してなる光反射層の最外層16aの上に配置されているのが好ましい。なお、さらに易接着層22の上に粘着材層(非図示)を有していてもよい。例えば、少なくとも4つの光反射層を基板の一方の表面に配置した態様では、最上層の光反射層16aの上に、易接着層22を配置することができる。易接着層の形成に利用される材料は、当該易接着層を光反射層に隣接して形成するか、もしくは基板に隣接して形成するかによって、又は接着する他の部材の材質等によって、種々の材料から選択される。
また、本発明に利用可能な前記非光反射性の層の他の例には、コレステリック液晶相の光反射層と、樹脂基板との密着力を上げる下塗り層24、及び光反射層を形成する際に利用される、コレステリック液晶性化合物の配向方向をより精密に規定する配向層26が含まれる。本発明の赤外光反射板は、前記赤外光反射層が、前記樹脂基板と接している側に下塗り層および配向層の少なくとも一方を含むことが好ましく、すなわち、下塗り層及び配向層は、前記少なくとも1つの光反射層と樹脂基板との間に配置されるのが好ましい。さらに、図1に示すように、樹脂基板11、下塗り層24、配向層26、コレステリック液晶相を固定してなる光反射層12の順で含むことがより好ましい。すなわち、本発明の赤外光反射板は、前記赤外光反射層が、前記樹脂基板と接している側の表面から下塗り層24、配向層26、フッ素系配向制御剤(水平配向剤)と重合性液晶化合物を含む赤外光反射層12の順に積層されていることが好ましい。
また配向層26を、それぞれの光反射層間にそれぞれ配置してもよい(詳細は図示せず)。
【0026】
本発明の赤外光反射板は、前記赤外光反射層の合計膜厚が10〜60μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましく、10〜30μmであることが特に好ましい。
【0027】
<特性>
(1)赤外光反射層
本発明の赤外光反射板は、前記赤外光反射層の少なくとも一方の表面上に、機能層用組成物を塗布した場合の直径5μm以上の大きさの塗布液ハジキ欠陥の個数が10個/m以下であることを特徴とする。
前記機能層としては、コレステリック液晶層を固定した公知の赤外光反射板においてコレステリック液晶層の上に積層可能な機能層を挙げることができ、特に制限されるものではない。その中でも、前記機能層としては易接着層または赤外光反射層であることが好ましい。本発明の赤外光反射板は、これらの機能層を形成することができる機能層塗布液を塗布した場合に、塗布液ハジキ欠陥が少ない。そのため、本発明の赤外光反射板は表面面状や各種物理特性に優れる。ここで、前記機能層を塗布するときの塗布液に好ましく用いられる溶媒の種類としては特に制限はないが、後述の易接着層または赤外光反射層用の塗布液として挙げたものなどを好ましく用いることができる。
前記塗布液ハジキ欠陥の個数は8個/m以下であることより好ましく、3個/m以下であることが特に好ましい。
【0028】
本発明の赤外光反射板は前記機能層用組成物の塗布厚みが、硬化後において1〜10μmであることが好ましく、1〜8μmであることがより好ましく、3〜7μmであることが特に好ましい。なお、ここでいう塗布厚みとは、一層当たりの厚みを意味し、例えば最下層の光反射層の上に、さらに光反射層が3層積層されている場合は、機能層用組成物の合計塗布厚みは3〜30μmであることが好ましいこととなる。
【0029】
本発明の赤外光反射板は、前記機能層用組成物が多官能重合性化合物を含むことが好ましい。前記多官能重合性化合物の好ましい範囲は、前記赤外光反射層に含まれる多官能重合性化合物と同様であり、いずれも後述する。
【0030】
本発明の赤外光反射板は、前記2〜12層のコレステリック液晶層を含む前記赤外光反射層が、基板上に積層されており、前記各コレステリック液晶層がそれぞれコレステリック液晶層用組成物を重合して形成され、前記各コレステリック液晶層用組成物中に含まれる前記多官能重合性化合物の添加量が、基板側コレステリック液晶層用組成物から順に多くなることが、屈曲時の脆性を段階的に各コレステリック液晶層で改善し、赤外光反射板全体としての屈曲時の脆性を改善する観点から、好ましい。前記コレステリック液晶層(光反射層)は、2〜10層であることが好ましく、4〜9層であることがより好ましく、4〜6層であることが特に好ましい。
本発明の赤外光反射板は、前記各コレステリック液晶層用組成物がさらにフッ素系配向制御剤を含み、前記各コレステリック液晶層用組成物中に含まれる前記フッ素系配向制御剤の添加量が、基板側コレステリック液晶層用組成物から順に多くなることが、コレステリック液晶層が積層されていく赤外光反射板全体の配向性を維持させる観点から、好ましい。全ての前記各コレステリック液晶層用組成物中に含まれる前記多官能重合性化合物と前記フッ素系配向制御剤の添加量比(質量比)が50:1〜1000:1であることが好ましく、60:1〜900:1であることがより好ましく、70:1〜500:1であることが、赤外光反射板全体としての屈曲時の脆性と液晶層の配向性、ひいては遮熱性能を向上させる観点から特に好ましい。
【0031】
本発明の赤外光反射板は、前記赤外光反射層の破断伸度が5%以上であることが好ましく、6%以上であることがより好ましく、7%以上であることが特に好ましい。
本発明の赤外光反射板は、前記赤外光反射層の破断応力が20MPa以上であることが好ましく、25MPa以上であることがより好ましく、30MPa以上であることが特に好ましい。
【0032】
本発明の赤外光反射板は、前記赤外光反射層の表面に純水を塗布したときにおける接触角が85〜100度であることが好ましく、88〜96度であることがより好ましい。
本発明の赤外光反射板は、前記赤外光反射層の少なくとも一方の表面における表面エネルギーの平均値が40mN/m以下であることが好ましく、38mN/m以下であることがより好ましく、36mN/m以下であることが特に好ましい。
【0033】
本発明の赤外光反射板は、前記赤外光反射層の少なくとも一方の表面における表面エネルギーのバラツキの標準偏差σが0.5mN/m以下であることが好ましく、0.3mN/m以下であることがより好ましく、0.2mN/m以下であることが特に好ましい。
【0034】
本発明の赤外光反射板は、前記赤外光反射層の少なくとも一方の表面における表面粗さRaが50nm以下であることが好ましく、45nm以下であることがより好ましく、40nm以下であることが特に好ましい。
【0035】
<材料>
次に、本発明の赤外光反射板の作製に用いられる材料及び作製方法の例について詳細に説明する。
1.赤外光反射層
本発明の赤外光反射板では、各光反射層を、多官能重合性化合物、コレステリック液晶性化合物および該液晶性化合物に対して60ppm以上のフッ素系配向制御剤を含む赤外光反射層用組成物を重合して形成する。
【0036】
前記赤外光反射層用組成物の一例は、多官能重合性化合物、コレステリック液晶性化合物、該液晶性化合物に対して60ppm以上のフッ素系配向制御剤、光学活性化合物(キラル剤)、及び重合開始剤を少なくとも含有することが好ましい。各成分を2種以上含んでいてもよい。例えば、重合性の液晶化合物と非重合性の液晶化合物との併用が可能である。また、低分子液晶化合物と高分子液晶化合物との併用も可能である。更に、配向の均一性や塗布適性、膜強度を向上させるために、フッ素系以外の水平配向剤、ムラ防止剤、ハジキ防止剤、及び重合性モノマー等の種々の添加剤から選ばれる少なくとも1種を含有していてもよい。また、前記赤外光反射層用組成物中には、必要に応じて、さらに重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、色材、金属酸化物微粒子等を、光学的性能を低下させない範囲で添加することができる。
【0037】
(1) コレステリック液晶性化合物
本発明に使用可能なコレステリック液晶性化合物は、棒状ネマチック液晶化合物であることが好ましい。前記棒状ネマチック液晶化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
【0038】
本発明に利用するコレステリック液晶性化合物は、重合性であることが好ましい。このような重合性コレステリック液晶性化合物を用いることで赤外光反射層を形成する際に、多官能重合性化合物を赤外光反射層の表面またはその近傍に偏在させやすくすることができる。
重合性棒状液晶化合物は、重合性基を棒状液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、及びアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。重合性基は種々の方法で、棒状液晶化合物の分子中に導入できる。重合性棒状液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶化合物の例は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報などに記載の化合物が含まれる。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
【0039】
(2) 光学活性化合物(キラル剤(カイラル剤))
前記赤外光反射層用組成物は、コレステリック液晶相を示すためには、光学活性化合物を含有しているのが好ましい。但し、上記コレステリック液晶性化合物が不正炭素原子を有する分子である場合には、光学活性化合物を添加しなくても、コレステリック液晶相を安定的に形成可能である場合もある。前記光学活性化合物は、公知の種々のキラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)から選択することができる。光学活性化合物は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もキラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。光学活性化合物(キラル剤)は、重合性基を有していてもよい。光学活性化合物が重合性基を有するとともに、併用するコレステリック液晶性化合物も重合性基を有する場合は、重合性光学活性化合物と重合性コレステリック液晶性化合物との重合反応により、コレステリック液晶性化合物から誘導される繰り返し単位と、光学活性化合物から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性光学活性化合物が有する重合性基は、重合性コレステリック液晶性化合物が有する重合性基と、同種の基であることが好ましい。従って、光学活性化合物の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基又はアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。
また、光学活性化合物は、液晶化合物であってもよい。
【0040】
前記赤外光反射層用組成物中の光学活性化合物は、併用されるコレステリック液晶性化合物に対して、1〜30モル%であることが好ましい。光学活性化合物の使用量は、より少なくした方が液晶性に影響を及ぼさないことが多いため好まれる。従って、キラル剤として用いられる光学活性化合物は、少量でも所望の螺旋ピッチの捩れ配向を達成可能なように、強い捩り力のある化合物が好ましい。この様な、強い捩れ力を示すキラル剤としては、例えば、特開2003−287623公報に記載のキラル剤が挙げられ、本発明に好ましく用いることができる。
【0041】
(3) 重合開始剤
前記赤外光反射層の形成に用いる赤外光反射層用組成物は、重合開始剤を含有しているのが好ましい。本発明では、紫外線照射により硬化反応を進行させることが好ましく、その場合に使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であるのが好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
【0042】
光重合開始剤の使用量は、赤外光反射層用組成物(塗布液の場合は固形分)の0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜8質量%であることがさらに好ましい。
【0043】
(4) フッ素系配向制御剤
本発明では、前記赤外光反射層用組成物中に、安定的に又は迅速にコレステリック液晶相となるのに寄与するフッ素系配向制御剤を、液晶性化合物に対して60ppm以上添加する。前記フッ素系配向制御剤は、水平配向剤であることが好ましい。前記フッ素系配向制御剤の例には、含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、及び下記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物が含まれる。これらから選択される2種以上を含有していてもよい。これらの化合物は、層の空気界面において、コレステリック液晶性化合物の分子のチルト角を低減若しくは実質的に水平配向させることができる。尚、本明細書で「水平配向」とは、液晶分子長軸と膜面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が20度未満の配向を意味するものとする。コレステリック液晶性化合物が空気界面付近で水平配向する場合、配向欠陥が生じ難いため、可視光領域での透明性が高くなり、また赤外領域での反射率が増大する。一方、コレステリック液晶性化合物の分子が大きなチルト角で配向すると、コレステリック液晶相の螺旋軸が膜面法線からずれるため、反射率が低下したり、フィンガープリントパターンが発生してヘイズの増大や回折性を示したりするため好ましくない。
前記フッ素系配向制御剤として利用可能な前記含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマーの例は、特開2007−272185号公報の[0018]〜[0043]等に記載がある。
【0044】
以下、水平配向剤として利用可能な前記フッ素系配向制御剤として、下記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物について、順に説明する。
【0045】
【化2】

【0046】
式中、R1、R2及びR3は各々独立して、水素原子又は置換基(少なくとも1つのフッ素原子を含む)を表し、X1、X2及びX3は単結合又は二価の連結基を表す。R1〜R3で各々表される置換基としては、好ましくは置換もしくは無置換の、アルキル基(中でも、無置換のアルキル基又はフッ素置換アルキル基がより好ましい)、アリール基(中でもフッ素置換アルキル基を有するアリール基が好ましい)、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子である。X1、X2及びX3で各々表される二価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、二価の芳香族基、二価のヘテロ環残基、−CO−、―NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−CO−、−NRa−、−O−、−S−及び−SO2−からなる群より選ばれる二価の連結基又は該群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。二価の芳香族基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
【0047】
【化3】

【0048】
式中、Rは置換基(少なくとも1つのフッ素原子を含む)を表し、mは0〜5の整数を表す。mが2以上の整数を表す場合、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。Rとして好ましい置換基は、R1、R2、及びR3で表される置換基の好ましい範囲として挙げたものと同様である。mは、好ましくは1〜3の整数を表し、特に好ましくは2又は3である。
【0049】
【化4】

【0050】
式中、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は各々独立して、水素原子又は置換基(少なくとも1つのフッ素原子を含む)を表す。R4、R5、R6、R7、R8及びR9でそれぞれ表される置換基は、好ましくは一般式(X1)におけるR1、R2及びR3で表される置換基の好ましいものとして挙げたものと同様である。
【0051】
本発明においてフッ素系配向制御剤として使用可能な、前記式(X1)〜(X3)で表される化合物の例には、特開2005−99248号公報に記載の化合物が含まれる。
なお、本発明では、フッ素系配向制御剤として、前記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物の一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0052】
本発明の赤外線反射板は、前記フッ素系配向制御剤の添加量が、前記コレステリック液晶性化合物に対して60ppm〜1000ppmであることがコレステリック液晶層の配向性を向上させる観点から好ましく、70ppm〜900ppmであることがより好ましく、100ppm(0.01質量%)〜500ppmであることが特に好ましい。
具体的にフッ素系配向制御剤の種類を限定する場合においても、前記赤外光反射層用組成物中における、一般式(X1)〜(X3)のいずれかで表される化合物の添加量は、上記範囲と同様である。
【0053】
前記赤外光反射層用組成物中における、後述の多官能重合性化合物と前記フッ素系配向制御剤の添加量比(質量比)は、50:1〜1000:1であることが赤外光反射層を塗布したときの表面粗さRaを小さくする観点から好ましく、60:1〜900:1であることがより好ましく、70:1〜500:1であることが特に好ましい。
【0054】
また、本発明の赤外線反射板は、前記フッ素系配向制御剤の添加量を上記範囲に抑える観点から、前記フッ素系配向制御剤が、パーフルオロアルキル基を含むことがより好ましく、炭素数3〜10のパーフルオロアルキル基を含むことが特に好ましい。
【0055】
(5) 多官能重合性化合物
本発明の赤外光反射板は、前記多官能重合性化合物を赤外光反射層中に含むことを特徴とする。また、前記多官能重合性化合物は、赤外光反射層以外の機能層に含まれていてもよく、例えば後述の易接着層に含まれていてもよい。
本明細書中、「多官能」の化合物とは、重合に関与する重合性基が、1分子中に2以上含まれている化合物のことを言う。
前記多官能重層性化合物は、多官能のモノマーであっても、ある程度重合が進んだオリゴマーであってもよい。そのなかでも、多官能のモノマーであることが好ましい。
また、前記多官能重合性化合物は、液晶性化合物であっても、非液晶性化合物でもよく、特に制限はない。その中でも、前記多官能重合性化合物は、赤外光反射層の表面またはその近傍に偏在しやすいように、コレステリック液晶相との相溶性を抑えるという観点から非液晶性であることが好ましい。
【0056】
前記多官能重合性化合物が有する前記重合性基としては、特に制限はなく、公知の重合性基を挙げることができる。例えば、不飽和重合性基、エポキシ基又はアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。エチレン性不飽和重合性基の中でも、(メタ)アクリロイル基、を有することが好ましく、本発明の赤外光反射板は、前記多官能重合性化合物が2以上の(メタ)アクリロイル基を有することがより好ましく、2個の(メタ)アクリロイル基を有することが特に好ましく、2個のアクリロイル基を有することがより特に好ましい。なお、本明細書中、(メタ)アクリロイル基とは、メタクリロイル基とアクリロイル基の総称を表す。
【0057】
前記多官能重合性化合物は、重合性基以外の骨格として、少なくとも1つの2価の芳香環基を含むことが好ましく、2価の炭素数6〜30の芳香環基を含むことが好ましい。前記多官能重合性化合物は、2価の芳香環基を2個以上含むことが好ましく、2個含むことが好ましく、さらに2個の2価の芳香環基が、連結基を介して結合した非液晶性の化合物であることが好ましい。
前記2個の2価の芳香環基を連結する連結基としては、例えば、置換または無置換のアルキレン基、アルケニレン基、−CO−、―NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基などを挙げることができ、その中でも炭素数1〜3の置換または無置換のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜3の置換基を有するアルキレン基がより好ましい。前記置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0058】
前記多官能重合性化合物は、2つの前記重合性基と2価の芳香環基(2個であることが好ましい)の間に、それぞれ連結基を有していても有していなくてもよいが、連結基を有していていることが、分子量を好ましい範囲に制御できる観点から好ましい。その中でも、2つの前記重合性基と2価の芳香環基の間の連結基は、前記多官能重合性化合物が非液晶性となる連結基であることが好ましく、例えば、アルキレンオキシ基(またはオキシアルキレン基)、アルキレン基、アルケニレン基、−CO−、―NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−およびこれらの組合せを挙げることができる。その中でも炭素数1〜10のアルキレンオキシ基(またはオキシアルキレン基)が好ましく、炭素数1〜5のアルキレンオキシ基(またはオキシアルキレン基)がより好ましく、炭素数1〜3のアルキレンオキシ基(またはオキシアルキレン基)が特に好ましい。
【0059】
さらに、前記多官能重合性化合物は、下記一般式(1)で表される構造であることが好ましい。
【化5】

一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、MおよびMはそれぞれ独立に−(CH−CH−O)−、−(O−CH−CH−、−(CH−CH−CH−O)−、−(O−CH−CH−CH−、−(CH−およびこれらの組合せを表す。n、mおよびpはそれぞれ独立に1〜50の整数を表す。
【0060】
前記RおよびRは、水素原子であることが好ましい。
前記MおよびMは−(CH−CH−O)−、−(O−CH−CH−、−(CH−CH−CH−O)−、−(O−CH−CH−CH−または−(CH−であることが好ましい。その中でも、前記Mが−(CH−CH−O)−または−(CH−CH−CH−O)−であることがより好ましく、−(CH−CH−O)−であることがより好ましい。一方、前記Mが−(O−CH−CH−または−(O−CH−CH−CH−であることがより好ましく、−(O−CH−CH−であることが特に好ましい。
前記nは1〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜18であることがより好ましい。
前記mは0〜15であることが好ましく、0〜5であることがより好ましく、0であることが特に好ましい。
前記pは、0〜30であることが好ましく、0〜10であることがより好ましく、0であることが特に好ましい。
【0061】
本発明の赤外光反射板は、前記多官能重合性化合物の分子量が350〜2000であることが好ましく、400〜1700であることがより好ましく、500〜1300であることが特に好ましい。
【0062】
2. 基板
本発明の赤外光反射板は、通常好ましくは基板を有するが、前記基板は自己支持性があり、上記光反射層を支持するものであれば、材料及び光学的特性についてなんら限定はない。用途によっては、紫外光に対する高い透明性が要求されるであろう。所定の光学特性を満足するように、生産工程を管理して製造される、λ/2板等の特殊の位相差板であってもよいし、また、面内レターデーションのバラツキが大きく、具体的には、波長1000nmの面内レターデーションRe(1000)のバラツキで表現すれば、Re(1000)のバラツキが20nm以上、また100nm以上であり、所定の位相差板としては使用不可能なポリマーフィルム等であってもよい。また基板の面内レターデーションについても特に制限はなく、例えば、波長1000nmの面内レターデーションRe(1000)が、800〜13000nmである位相差板等を用いることができる。
【0063】
可視光に対する透過性が高いポリマーフィルムとしては、液晶表示装置等の表示装置の部材として用いられる種々の光学フィルム用のポリマーフィルムが挙げられる。前記基板としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム;ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム;ポリイミドフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、などが挙げられる。ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースが好ましい。
【0064】
本発明の赤外光反射板は、合わせガラス等の他の支持部材に一体化させて用いられてもよい。その際に、光反射層とともに基板も、他の支持部材と一体化してもよいし、基板を剥離して、光反射層を支持部材と一体化してもよい。
【0065】
3. 易接着層
本発明の赤外光反射板は、前記赤外光反射層に易接着層を含むことが好ましい。本発明の赤外光反射板は、赤外光反射層の少なくとも一方の表面上に、機能層用組成物を塗布した場合の直径5μm以上の大きさの塗布液ハジキ欠陥の個数が10個/m以下であることを特徴とするが、前記機能層用組成物は易接着層用塗布液であることが好ましい。
本発明の赤外光反射板は、一方又は双方の最外層として、易接着層を有していてもよい。易接着層は、例えば、光反射層と合わせガラス用中間膜シートやガラス板、ガラス貼付用粘着材層等との接着性を改善する機能を有する。易接着層の形成に利用可能な材料としては、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂が挙げられる。ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)とブチルアルデヒドを酸触媒で反応させて生成するポリビニルアセタールの一種であり、下記構造の繰り返し単位を有する樹脂である。
【0066】
【化6】

【0067】
また、前記易接着層は、アクリル樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等からなる層であってもよい。これらの材料からなる易接着層も塗布により形成することができる。さらに、前記易接着層には紫外線吸収剤や帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤などを添加してもよい。
なお、易接着層の厚みは、0.1〜10μmが好ましい。
【0068】
4. 下塗り層
本発明の赤外光反射板は、赤外光反射層と基板との間に下塗り層を有していてもよい。赤外光反射層と基板との密着力が弱いと、赤外光反射層を積層して製造する際の工程で剥離故障や、赤外光反射板としてガラスに貼り合わせた際の強度(耐衝撃性)低下を引き起こす。よって、下塗り層として、赤外光反射層と前記基板との接着性を向上させることができる層を利用することができる。前記基板と下塗り層、又は下塗り層と赤外光反射層との界面には、剥離しない程度の接着性の強さが必要である。一方、赤外光反射層から樹脂基板を剥離しながら別の樹脂基板に転写した態様の赤外光反射板を作製する場合には、光反射層/下塗り層/樹脂基板のいずれかの界面にて、剥離ができる程度の弱さが必要である。
下塗り層の形成に利用可能な材料の例には、アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性ポリエステル等が含まれる。また、下塗り層の表面を中間膜と接着する態様では、下塗り層と中間膜との接着性が良好であるのが好ましく、その観点では、下塗り層は、ポリビニルブチラール樹脂も、前記材料とともに含有しているのが好ましい。また、下塗り層は、上記したように密着力を適度に調節する必要があるので、グルタルアルデヒド、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン等のジアルデヒド類またはホウ酸等の硬膜剤を適宜用いて硬膜させることが好ましい。硬膜剤の添加量は、下塗り層の乾燥質量の0.2〜3.0質量%が好ましい。
下塗り層の厚みは、0.05〜0.5μmが好ましい。
【0069】
5. 配向層
本発明の赤外光反射板は、赤外光反射層と基板との間に配向層を有していてもよい。配向層は、赤外光反射層中のコレステリック液晶性化合物の配向方向をより精密に規定する機能を有する。
配向層は、赤外光反射層と隣接する必要があるので、コレステリック液晶相の赤外光反射層と基板又は下塗り層との間に設けるのが好ましい。但し、下塗り層が配向層の機能を有していてもよい。また、光反射層の間に配向層を有していてもよい。
【0070】
配向層は、隣接する、赤外光反射層、及び下塗り層又は基板のいずれに対しても、ある程度の密着力を有することが好ましい。ただし、赤外光反射層/配向層/下塗り層/基板のいずれかの界面にて、剥離が生じない程度の強さが必要である。一方、赤外光反射層から樹脂基板を剥離しながら別の樹脂基板に転写した態様の赤外光反射板を作製する場合には、赤外光反射層/配向層/下塗り層/基板のいずれかの界面にて、剥離ができる程度の弱さが必要である。
【0071】
配向層として用いられる材料としては、有機化合物のポリマーが好ましく、それ自体が架橋可能なポリマーか、或いは架橋剤により架橋されるポリマーがよく用いられる。当然、双方の機能を有するポリマーも用いられる。ポリマーの例としては、ポリメチルメタクリレ−ト、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコ−ル及び変性ポリビニルアルコ−ル、ポリ(N−メチロ−ルアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロ−ス、ゼラチン、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリカーボネート等のポリマー及びシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリ(N−メチロ−ルアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロ−ス、ゼラチン、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーであり、さらにゼラチン、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが好ましく、特にポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。また、配向層の表面を中間膜と接着する態様では、配向層と中間膜との接着性が良好であるのが好ましく、その観点では、配向層は、ポリビニルブチラール樹脂も、前記材料とともに含有しているのが好ましい。
前記配向層の厚みは、0.1〜2.0μmが好ましい。
【0072】
6. バック層
本発明の赤外光反射板は、前記基板の、前記赤外光反射層が形成されていない側の面に、バック層を有していてもよい。
前記バック層としては、例えば、前記易接着層と同様の構成の層を用いて形成させることができる。
前記バック層の厚みは、0.1〜2.0μmが好ましい。
【0073】
<赤外光反射板の製造方法>
本発明の赤外光反射板は、塗布方法によって作製される。製造方法の一例は、
(1) 樹脂基板の表面に、多官能重合性化合物、重合性(硬化性の)コレステリック液晶性化合物および該液晶性化合物に対して60ppm以上のフッ素系配向制御剤(水平配向剤)を含む赤外光反射層用組成物を塗布して、コレステリック液晶相の状態にすること、
(2) 前記赤外光反射層用組成物に紫外線を照射して硬化反応を進行させ、コレステリック液晶相を固定して光反射層を形成すること、
を少なくとも含む製造方法である。
(1)及び(2)の工程を、基板の一方の表面上で4回繰り返すことで図1に示す構成と同様の構成の赤外光反射板を作製することができる。
【0074】
<下塗り層、配向層、バック層の形成>
前記下塗り層は、塗布により基板の赤外光反射層が形成される側の表面上に形成されることが好ましい。このときの塗布方法については特に限定はなく、公知の方法をもちいることができる。
前記配向層は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成等の手段で設けることができる。さらには、電場の付与、磁場の付与、或いは光照射により配向機能が生じる配向層も知られている。配向層は、ポリマーの膜の表面に、ラビング処理により形成するのが好ましい。前記配向層は基板の赤外光反射層が形成される側の表面上に形成されることが好ましい。
前記バック層は、塗布により基板の赤外光反射層が形成される側の反対側の表面上に形成されることが好ましい。このときの塗布方法については特に限定はなく、公知の方法をもちいることができる。
【0075】
<(1)工程>
前記(1)工程では、まず、基板又は下層の光反射層の表面に、前記赤外光反射層用組成物を塗布する。前記赤外光反射層用組成物は、溶媒に材料を溶解及び/又は分散した、塗布液として調製されるのが好ましい。前記塗布液の塗布は、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法等の種々の方法によって行うことができる。また、インクジェット装置を用いて、赤外光反射層用組成物をノズルから吐出して、塗膜を形成することもできる。
前記溶媒の種類としては、コレステリック液晶性化合物を溶解及び/又は分散できれば特に制限はないが、例えば、主溶媒としてケトン系の溶媒、エステル系の溶媒、アルコール系の溶媒、などを用いることができ、具体的にはメチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、メトキシエチルアセテート、メトキシプロピルアセテート(PGMEA)、エトキシプロピルアセテート、エタノール、イソプロパノール(IPA)、等を好ましく用いることができる。その中でも、本発明では赤外光反射層用組成物の塗布液の溶媒として、ケトン系の溶媒を主溶媒として用いることが好ましい。これらの溶媒は前記赤外光反射層にフッ素系配向制御剤を特定量含有させた場合に、塗布ハジキ欠陥の問題を生じるところ、本発明の構成によればこれらの溶媒を用いて赤外光反射層を塗布により形成するときにこの問題を解決することができる。また、主溶媒以外のその他の溶媒として、同じケトン系溶媒や、ケトン系溶媒ではないエステル系溶媒やアルコール系溶媒などを併用してもよい。なお、本明細書中、主溶媒とは、溶媒の組成の中で最も体積比の大きい溶媒のことを言う。
【0076】
本発明の赤外光反射板は、前記赤外光反射層用組成物の粘度が0.1〜10mPa・sであることが好ましく、1〜8mPa・sであることがより好ましく、2〜5mPa・sであることが特に好ましい。
【0077】
次に、表面に塗布され、塗膜となった赤外光反射層用組成物を、コレステリック液晶相の状態にすることが好ましい。前記赤外光反射層用組成物が、溶媒を含む塗布液として調製されている態様では、塗膜を乾燥し、溶媒を除去することで、コレステリック液晶相の状態にすることができる場合がある。また、コレステリック液晶相への転移温度とするために、所望により、前記塗膜を加熱してもよい。例えば、一旦等方性相の温度まで加熱し、その後、コレステリック液晶相転移温度まで冷却する等によって、安定的にコレステリック液晶相の状態にすることができる。前記赤外光反射層用組成物の液晶相転移温度は、製造適性等の面から10〜250℃の範囲内であることが好ましく、10〜150℃の範囲内であることがより好ましい。10℃未満であると液晶相を呈する温度範囲にまで温度を下げるために冷却工程等が必要となることがある。また200℃を超えると、一旦液晶相を呈する温度範囲よりもさらに高温の等方性液体状態にするために高温を要し、熱エネルギーの浪費、基板の変形、変質等からも不利になる。
【0078】
<(2)工程>
次に、(2)の工程では、コレステリック液晶相の状態となった塗膜に、紫外線を照射して、硬化反応を進行させる。紫外線照射には、紫外線ランプ等の光源が利用される。この工程では、紫外線を照射することによって、前記液晶組成物の硬化反応が進行し、コレステリック液晶相が固定されて、光反射層が形成される。
紫外線の照射エネルギー量については特に制限はないが、一般的には、100mJ/cm2〜800mJ/cm2程度が好ましい。また、前記塗膜に紫外線を照射する時間については特に制限はないが、硬化膜の充分な強度及び生産性の双方の観点から決定されるであろう。
また、多官能重合性化合物の赤外光反射層の表面またはその近傍への偏在の度合いも、硬化反応の条件により多少の影響は受けるが、前記紫外線照射条件であれば本発明の硬化は十分に得られるので、特に制限は無い。
【0079】
硬化反応を促進するため、加熱条件下で紫外線照射を実施してもよい。また、紫外線照射時の温度は、コレステリック液晶相が乱れないように、コレステリック液晶相を呈する温度範囲に維持するのが好ましい。また、雰囲気の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達せず、膜強度が不十分の場合には、窒素置換等の方法により、雰囲気中の酸素濃度を低下させることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、10%以下が好ましく、7%以下がさらに好ましく、3%以下が最も好ましい。紫外線照射によって進行される硬化反応(例えば重合反応)の反応率は、層の機械的強度の保持等や未反応物が層から流出するのを抑える等の観点から、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがよりさらに好ましい。反応率を向上させるためには照射する紫外線の照射量を増大する方法や窒素雰囲気下あるいは加熱条件下での重合が効果的である。また、一旦重合させた後に、重合温度よりも高温状態で保持して熱重合反応によって反応をさらに推し進める方法や、再度紫外線を照射する(ただし、本発明の条件を満足する条件で照射する)方法を用いることもできる。反応率の測定は反応性基(例えば重合性基)の赤外振動スペクトルの吸収強度を、反応進行の前後で比較することによって行うことができる。
【0080】
上記工程では、コレステリック液晶相が固定されて、光反射層が形成される。ここで、液晶相を「固定化した」状態は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持された状態が最も典型的、且つ好ましい態様である。それだけには限定されず、具体的には、通常0℃〜50℃、より過酷な条件下では−30℃〜70℃の温度範囲において、該層に流動性が無く、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を意味するものとする。本発明では、紫外線照射によって進行する硬化反応により、コレステリック液晶相の配向状態を固定する。
なお、本発明においては、コレステリック液晶相の光学的性質が層中において保持されていれば十分であり、最終的に光反射層中の液晶組成物がもはや液晶性を示す必要はない。例えば、液晶組成物が、硬化反応により高分子量化して、もはや液晶性を失っていてもよい。
【0081】
(易接着層の形成)
前記易接着層は、塗布により形成することが好ましい。例えば、赤外光反射層の表面に、塗布により形成してもよい。より具体的には、ポリビニルブチラール樹脂の1種を有機溶媒に溶解して塗布液を調製し、該塗布液を、赤外光反射層の表面及び/又は基板の裏面に塗布して、所望により加熱して乾燥し、易接着層を形成することができる。易接着層用の塗布液の調製に用いる溶媒としては、例えば、主溶媒としてケトン系の溶媒、エステル系の溶媒、アルコール系の溶媒、などを用いることができ、具体的にはメチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、メトキシエチルアセテート、メトキシプロピルアセテート(PGMEA)、エトキシプロピルアセテート、エタノール、イソプロパノール(IPA)、等を好ましく用いることができる。その中でも、本発明では易接着層用の塗布液の溶媒として、ケトン系の溶媒を主溶媒として用いることが好ましい。これらの溶媒は前記赤外光反射層にフッ素系配向制御剤を特定量含有させた場合に、塗布ハジキ欠陥の問題を生じるところ、本発明の構成によればこれらの溶媒を用いて易接着層を塗布により形成するときにこの問題を解決することができる。また、主溶媒以外のその他の溶媒として、同じケトン系溶媒や、ケトン系溶媒ではないエステル系溶媒やアルコール系溶媒などを併用してもよい。塗布方法としては、従来公知の種々の方法を利用することができる。乾燥時の温度は、塗布液の調製に用いた材料によって好ましい範囲が異なるが、一般的には、140〜160℃程度であるのが好ましい。乾燥時間についても特に制限はないが、一般的には、5〜10分程度である。
【0082】
<赤外光反射板の用途>
本発明の赤外光反射板は、遮熱性能に優れ、好ましくは太陽光エネルギーのピークに対応する1010〜1070nm、1190〜1290nmに反射ピークのある選択反射特性を示す。また、本発明の赤外線反射板は、再剥離性にも優れ、ガラスからの再剥離の際に層間剥離が生じにくい。この様な特性の反射板は、住宅、オフィスビル等の建造物、又は自動車等の車両の窓に、日射の遮熱用の部材として貼付される。 本発明の赤外線反射膜は、ガラス窓貼付用であることが好ましい。又は、本発明の赤外光反射板は、日射の遮熱用の部材そのもの(たとえば、遮熱用ガラス、遮熱用フィルム)として、その用途に供することができる。
【0083】
赤外光反射板としてその他の重要な性能は、可視光の透過率とヘイズである。材料の選択及び製造条件等を調整して、用途に応じて、好ましい可視光の透過率及びヘイズを示す赤外光反射板を提供できる。例えば可視光の透過率が高い用途に用いられる態様では、可視光の透過率が90%以上であり、且つ赤外の反射率が上記反応を満足する赤外光反射板とすることができる。
【実施例】
【0084】
以下に実施例と比較例(なお比較例は公知技術というわけではない)を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0085】
[バック層用塗布液の調製]
下記に示す組成のバック層用塗布液(U)を調製した。
バック層用塗布液(U)の組成:
スチレン−アクリル樹脂アロンS−1001
(東亞合成(株)製、固形分濃度50%) 20質量部
メトキシプロピルアセテート(PGMEA) 80質量部
【0086】
[下塗り層用塗布液の調製]
下記に示す組成の下塗り層用塗布液(S)を調製した。
下塗り層用塗布液(S)の組成:
アクリルエステル樹脂ジュリマーET−410
(東亞合成(株)製、固形分濃度30%) 50質量部
メタノール 50質量部
【0087】
[配向層用塗布液の調製]
下記に示す組成の配向層用塗布液(H)を調製した。
配向層用塗布液(H)の組成:
変性ポリビニルアルコールPVA203(クラレ社製) 10質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
【0088】
[易接着層用塗布液の調製]
下記に示す組成の易接着層用塗布液(I)を調製した。
易接着層用塗布液(I)の組成:
ポリビニルブチラール樹脂B1776(長春株式会社(台湾)製)
10質量部
メトキシプロピルアセテート(PGMEA) 100質量部
【0089】
[液晶組成物塗布液の調製]
下記表に示す組成の液晶組成物塗布液(R11)及び(L11)をそれぞれ調製した。それぞれの塗布液の23℃における粘度は、3.7mPa・s、4.1mPa・sであった。
【表1】

【表2】

【0090】
【化7】

【0091】
【化8】

【化9】

【0092】
また、塗布液(R11)のキラル剤LC−756の処方量を0.268質量部から0.225質量部に変更した以外は同様にして塗布液(R12)を調製した。塗布液の23℃における粘度は、3.7mPa・sであった。
【0093】
また、塗布液(L11)のキラル剤化合物2の処方量を0.167質量部から0.140質量部に変更した以外は同様にして塗布液(L12)を調製した。塗布液の23℃における粘度は、4.0mPa・sであった。
【0094】
[実施例1]
バック層用塗布液(U)を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜厚が0.5μmになるようにPETフィルム(富士フイルム(株)製、厚み:188μm)上に塗布した。その後、150℃で10分間加熱し、乾燥、固化し、バック層を形成した。
次いで、上記で形成したバック層付PETフィルムのバック層が塗布されていない側の表面上に、下塗り層用塗布液(S)を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜厚が0.25μmになるように塗布した。その後、150℃で10分間加熱し、乾燥、固化し、下塗り層を形成した。
次いで、形成した下塗り層の上に、配向層用塗布液(H)を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜厚が1.0μmになるように塗布した。その後、100℃で2分間加熱し、乾燥、固化し、配向層を形成した。配向層に対し、ラビング処理(レーヨン布、圧力:0.1kgf、回転数:1000rpm、搬送速度:10m/min、回数:1往復)を施した。
【0095】
次いで、形成した配向層の上に、液晶組成物塗布液(R11)、(R12)、(L11)、(L12)を用い、下記の手順にて赤外光反射層を形成した。
(1)各塗布液を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜の厚みが5μmになるように、室温にて塗布した。
(2)室温にて30秒間乾燥させて溶剤を除去した後、125℃で2分間加熱し、その後95℃でコレステリック液晶相とした。次いで、フージョンUVシステムズ(株)製無電極ランプ「Dバルブ」(90mW/cm)にて、出力60%で6〜12秒間UV照射し、コレステリック液晶相を固定して、赤外光反射層を形成した。
(3)室温まで冷却した後、上記工程(1)及び(2)を繰り返し、4層積層されたコレステリック液晶相の赤外光反射層を形成した。
なお、塗布液は、(R11)、(L11)、(R12)、(L12)の順番に塗布を行なった。
塗布液(R11)、(L11)による赤外光反射層の選択反射波長は、中心波長1040nm、反射幅100nmであった。また、塗布液(R12)、(L12)による赤外光反射層の選択反射波長は、中心波長1240nm、反射幅120nmであった。
【0096】
次いで、形成した赤外光反射層の上に、易接着層用塗布液(I)を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜厚が1.0μmになるように塗布した。その後、150℃で10分間加熱し、乾燥、固化し、易接着層を形成し、赤外光反射板を作製した。
【0097】
[比較例1]
液晶組成物塗布液(R11)、(R12)、(L11)、(L12)それぞれから多官能重合性化合物(重合性化合物(1))の処方量を0とし、棒状液晶性化合物RM−257の処方量を10.000質量部に変更した以外は同様にして塗布液(R1)、(R2)、(L1)、(L2)を調整した。それぞれの塗布液の23℃における粘度は、2.3mPa・s、2.3mPa・s、2.6mPa・s、2.5mPa・sであった。
液晶組成物塗布液として(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の代わりに(R1)、(R2)、(L1)、(L2)を用いた以外は実施例1と同様の手順にて比較例1の赤外光反射板を作製した。
【0098】
[ハジキ欠陥観察]
面積1mの範囲について、塗布層のハジキ欠陥の有無を目視で観察する。ハジキ欠陥が有った場合には、そのハジキ欠陥について光学顕微鏡にてサイズを計測し、長径が5μm以上かどうかを確認し、5μm以上の大きさの欠陥について数をカウントする。
【0099】
[接触角(対純水)測定]
赤外光反射層の表面について、JIS R 3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠して接触角(対純水)測定を行う。
面積1mの範囲について、4隅(縦方向,横方向それぞれ幅の10%分内側に入った地点)と中央の計5箇所にて測定を行ない、その平均値を採用する。
【0100】
[表面エネルギー値算出(平均値とバラツキの標準偏差)]
赤外光反射層の表面について、JIS R 3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠して接触角(対ヨウ化メチレン)測定を行う。純水接触角測定同様、5箇所にて測定を行う。
各測定地点について、純水接触角、ヨウ化メチレン接触角の値を用い、Owens
and Wendt法により、表面エネルギーの値を算出する。5箇所の表面エネルギー値の平均値とバラツキの標準偏差とを算出する。
【0101】
[表面粗さ(算術平均粗さ)Ra計測]
塗布層の表面について、JIS B 0601「製品の幾何特性仕様(GPS)−
表面形状:輪郭曲線方式− 用語,定義及び表面性状パラメータ」に準拠して表面粗さ計測を行う。
【0102】
[膜強度(破断伸度,破断応力)計測]
作製した各赤外光反射板について、JIS K 7162「プラスチック−
引張特性の試験方法 第2部:型成型,押出成型及び注型プラスチックの試験条件」に準拠して破断伸度,破断応力の計測を行う。
【0103】
[膜脆性評価]
作製した各赤外光反射板について、JIS K 5600-5-1「塗料一般試験方法 第5部:塗膜の機械的性質 第1部:耐屈曲性(円筒形マンドレル法)」に準拠して脆性の評価を行う。赤外光反射層を設けた側が外側になるように屈曲させる。円筒径の大きいサイズから試験を開始し、徐々に円筒径のサイズを小さくしていく。判定が『不良』となるまで行う。評価欄には、判定が『不良』となった円筒径サイズの1つ前のサイズを記載する。耐屈曲性(円筒形マンドレル法)の評価は、9以下であることが実用上好ましく、7以下であることがより好ましい。
[遮熱性能評価]
作製した各赤外光反射板について、日本分光(株)製分光光度計「V−670」にて反射スペクトルを測定し、780〜1400nmの波長範囲の日射スペクトルに対する遮熱性能(反射率)を算出する。遮熱性能は、以下の基準に基づいて判定を行う(反射率は高い方が望ましい。)
○:反射率30%以上
△:反射率25%以上30%未満
×:反射率25%未満
【0104】
以上の評価結果を、下表4に示す。
【0105】
【表3】

【表4】

【0106】
上記表に示す通り、重合性化合物(1)を含む実施例1では、各赤外光反射層の上に機能層用組成物(赤外光反射層用塗布液,易接着層用塗布液)を塗布した場合のハジキ欠陥の発生が抑制されていた。また、各赤外光反射層の表面エネルギーの値は40mN/m以下であり、塗布層表面の表面粗さも小さく抑えられている。また、赤外光反射板としても、遮熱性能は比較例1とほぼ同等の性能を維持しながら、膜強度の向上、膜脆性の改良がなされている。
重合性化合物(1)を含まない比較例1では、各赤外光反射層の上に機能層用組成物(赤外光反射層用塗布液,易接着層用塗布液)を塗布した場合のハジキ欠陥の発生の問題が生じた。また、各赤外光反射層の表面エネルギーの値は40mN/mを超え、また、その値のバラツキも大きかった。積層を重ねる程、ハジキ欠陥の発生数は増大した。塗布層表面の表面粗さも、積層を重ねる程、Raの値は大きくなった。赤外光反射板としての膜強度,膜脆性は低いままであった。
【0107】
多官能重合性化合物の分子量依存性について、実施例2〜実施例5で検証した。
【0108】
[実施例2]
液晶組成物塗布液(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の多官能重合性化合物を、重合性化合物(1)(分子量:513)から重合性化合物(2)(分子量:336)へ変更した以外は同様にして塗布液(R21)、(R22)、(L21)、(L22)を調整した。それぞれの塗布液の23℃における粘度は、2.9mPa・s、2.9mPa・s、3.2mPa・s、3.1mPa・sであった。
【0109】
【化10】

【0110】
液晶組成物塗布液として(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の代わりに(R21)、(R22)、(L21)、(L22)を用いた以外は実施例1と同様の手順にて実施例2の赤外光反射板を作製した。
【0111】
[実施例3]
液晶組成物塗布液(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の多官能重合性化合物を、重合性化合物(1)から重合性化合物(3)(分子量:424)へ変更した以外は同様にして塗布液(R31)、(R32)、(L31)、(L32)を調整した。それぞれの塗布液の23℃における粘度は、3.6mPa・s、3.5mPa・s、3.9mPa・s、3.8mPa・sであった。
【0112】
【化11】

【0113】
液晶組成物塗布液として(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の代わりに(R31)、(R32)、(L31)、(L32)を用いた以外は実施例1と同様の手順にて実施例3の赤外光反射板を作製した。
【0114】
[実施例4]
液晶組成物塗布液(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の多官能重合性化合物を、重合性化合物(1)から重合性化合物(4)(分子量:1656)へ変更した以外は同様にして塗布液(R41)、(R42)、(L41)、(L42)を調整した。それぞれの塗布液の23℃における粘度は5.8mPa・s、5.7mPa・s、6.9mPa・s、6.6mPa・sであった。
【0115】
【化12】

【0116】
液晶組成物塗布液として(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の代わりに(R41)、(R42)、(L41)、(L42)を用いた以外は実施例1と同様の手順にて実施例4の赤外光反射板を作製した。
【0117】
[実施例5]
液晶組成物塗布液(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の多官能重合性化合物を、重合性化合物(1)から重合性化合物(5)(分子量:2106)へ変更した以外は同様にして塗布液(R51)、(R52)、(L51)、(L52)を調整した。それぞれの塗布液の23℃における粘度は9.1mPa・s、8.9mPa・s、10.5mPa・s、10.1mPa・sであった。
【0118】
【化13】

【0119】
液晶組成物塗布液として(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の代わりに(R51)、(R52)、(L51)、(L52)を用いた以外は実施例1と同様の手順にて実施例5の赤外光反射板を作製した。
【0120】
結果を、下表6に示す。
【0121】
【表5】

【表6】

【0122】
上記表より、多官能重合性化合物を、重合性化合物(3)と重合性化合物(4)に変更した実施例3および実施例4は、実施例1同等の表面エネルギー低下効果があり、結果、ハジキ欠陥の発生が抑制され、塗布層表面の表面粗さも小さく抑えられていた。また、膜強度の向上、膜脆性の改良効果も認められるが、分子量のより大きい重合性化合物(4)を用いた実施例4の方が、より、効果も大きかった。
分子量の小さい重合性化合物(2)を用いた実施例2は、重合性化合物(2)が赤外光反射層表面により偏在しやすくなっていると考えられるが、化合物自体の表面エネルギー低下効果が小さいためか、ハジキ欠陥発生や表面粗さは実施例3よりもやや劣る。また、分子量が小さい(重合性基の連結鎖が短い)ためか、膜強度、膜脆性に対する改良効果も小さい。ただし、分子量が小さく、コレステリック液晶層の配向に影響を与えにくいためか、遮熱性能は比較例1同等の性能を示している。
分子量の大きい重合性化合物(5)を用いた実施例5は、重合性化合物(5)自体の表面エネルギー低下効果は大きいものと考えられるが、分子量が大きいために赤外光反射層表面に偏在しにくくなったため、ハジキ欠陥発生や表面粗さは実施例4よりもやや劣る結果となった。膜強度,膜脆性に対する改良効果は大きい。コレステリック液晶層の配向に影響を与えるためか、遮熱性能は若干低下していた。
【0123】
フッ素系配向制御剤の添加量と、塗布ハジキ欠陥の関係について、参考例1および2で検討した。あわせて、多官能重合性化合物と配向制御剤の添加量比依存性について、実施例6〜8で配向制御剤量をふって検証した。
【0124】
[参考例1]
液晶組成物塗布液(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の配向制御剤の処方量を0.003質量部から0.0005質量部に変更した以外は同様にして塗布液(R11A)、(R12A)、(L11A)、(L12A)を調整した。それぞれの塗布液の23℃における粘度は、3.8mPa・s、3.8mPa・s、4.1mPa・s、4.1mPa・sであった。
液晶組成物塗布液として(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の代わりに(R11A)、(R12A)、(L11A)、(L12A)を用いた以外は実施例1と同様の手順にて参考例1の赤外光反射板を作製した。
【0125】
[参考例2]
液晶組成物塗布液(R11A)、(R12A)、(L11A)、(L12A)それぞれから多官能重合性化合物(重合性化合物(1))の処方量を0とし、棒状液晶性化合物RM−257の処方量を10.000質量部に変更した以外は同様にして塗布液(R1A)、(R2A)、(L1A)、(L2A)を調整した。それぞれの塗布液の23℃における粘度は、2.5mPa・s、2.4mPa・s、2.8mPa・s、2.6mPa・sであった。
液晶組成物塗布液として(R11A)、(R12A)、(L11A)、(L12A)の代わりに(R1A)、(R2A)、(L1A)、(L2A)を用いた以外は参考例1と同様の手順にて参考例2の赤外光反射板を作製した。
【0126】
[実施例6]
液晶組成物塗布液(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の配向制御剤の処方量を0.003質量部から0.001質量部に変更した以外は同様にして塗布液(R11B)、(R12B)、(L11B)、(L12B)を調整した。それぞれの塗布液の23℃における粘度は、3.8mPa・s、3.7mPa・s、4.1mPa・s、4.0mPa・sであった。
液晶組成物塗布液として(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の代わりに(R11B)、(R12B)、(L11B)、(L12B)を用いた以外は実施例1と同様の手順にて実施例6の赤外光反射板を作製した。
【0127】
[比較例2]
液晶組成物塗布液(R11B)、(R12B)、(L11B)、(L12B)それぞれから多官能重合性化合物(重合性化合物(1))の処方量を0とし、棒状液晶性化合物RM−257の処方量を10.000質量部に変更した以外は同様にして塗布液(R1B)、(R2B)、(L1B)、(L2B)を調整した。それぞれの塗布液の23℃における粘度は、2.4mPa・s、2.4mPa・s、2.7mPa・s、2.6mPa・sであった。
液晶組成物塗布液として(R11B)、(R12B)、(L11B)、(L12B)の代わりに(R1B)、(R2B)、(L1B)、(L2B)を用いた以外は実施例6と同様の手順にて比較例2の赤外光反射板を作製した。
【0128】
[実施例7]
液晶組成物塗布液(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の配向制御剤の処方量を0.003質量部から0.005質量部に変更した以外は同様にして塗布液(R11C)、(R12C)、(L11C)、(L12C)を調整した。それぞれの塗布液の23℃における粘度は、3.7mPa・s、3.8mPa・s、4.0mPa・s、4.0mPa・sであった。
液晶組成物塗布液として(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の代わりに(R11C)、(R12C)、(L11C)、(L12C)を用いた以外は実施例1と同様の手順にて実施例7の赤外光反射板を作製した。
【0129】
[比較例3]
液晶組成物塗布液(R11C)、(R12C)、(L11C)、(L12C)それぞれから多官能重合性化合物(重合性化合物(1))の処方量を0とし、棒状液晶性化合物RM−257の処方量を10.000質量部に変更した以外は同様にして塗布液(R1C)、(R2C)、(L1C)、(L2C)を調整した。それぞれの塗布液の23℃における粘度は、2.3mPa・s、2.3mPa・s、2.5mPa・s、2.5mPa・sであった。
液晶組成物塗布液として(R11C)、(R12C)、(L11C)、(L12C)の代わりに((R1C)、(R2C)、(L1C)、(L2C)を用いた以外は実施例7と同様の手順にて比較例3の赤外光反射板を作製した。
【0130】
[実施例8]
液晶組成物塗布液(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の配向制御剤の処方量を0.003質量部から0.010質量部に変更した以外は同様にして塗布液(R11D)、(R12D)、(L11D)、(L12D)を調整した。それぞれの塗布液の23℃における粘度は、3.7mPa・s、3.7mPa・s、4.0mPa・s、4.0mPa・sであった。
液晶組成物塗布液として(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の代わりに(R11D)、(R12D)、(L11D)、(L12D)を用いた以外は実施例1と同様の手順にて実施例8の赤外光反射板を作製した。
【0131】
[比較例4]
液晶組成物塗布液(R11D)、(R12D)、(L11D)、(L12D)それぞれから多官能重合性化合物(重合性化合物(1))の処方量を0とし、棒状液晶性化合物RM−257の処方量を10.000質量部に変更した以外は同様にして塗布液(R1D)、(R2D)、(L1D)、(L2D)を調整した。それぞれの塗布液の23℃における粘度は、2.1mPa・s、2.1mPa・s、2.3mPa・s、2.2mPa・sであった。
液晶組成物塗布液として(R11D)、(R12D)、(L11D)、(L12D)の代わりに((R1D)、(R2D)、(L1D)、(L2D)を用いた以外は実施例8と同様の手順にて比較例4の赤外光反射板を作製した。
【0132】
結果を、下表に示す。
【0133】
【表7】

【表8】

【0134】
上記表より、配向制御剤の添加量が少ないと、もともと赤外光反射層の上に機能層用組成物を塗布してもハジキ欠陥の発生は少ないが、重合性化合物(1)を添加することによりハジキ欠陥の発生が抑制されることは確認された。また、膜強度の向上、膜脆性の改良もなされている。参考例1および参考例2では配向制御剤の添加量が少ないため、コレステリック液晶層の配向が悪く、遮熱性能がともに低下してしまっていた。重合性化合物(1)添加効果は、上に塗布される層の面状を改良する効果はあるものの、コレステリック液晶層の配向そのものを向上させる効果は無いことが確認された。
【0135】
【表9】

【表10】

【0136】
上記表より、実施例1同様、実施例6では赤外光反射層の上に機能層用組成物を塗布した場合のハジキ欠陥の発生が抑制されており、塗布層表面の表面粗さも小さく抑えられていた。また、赤外光反射板としても、遮熱性能は比較例2とほぼ同等の性能を維持しながら、膜強度の向上、膜脆性の改良がなされていた。
【0137】
【表11】

【表12】

【0138】
上記表より、実施例1同様、実施例7では赤外光反射層の上に機能層用組成物を塗布した場合のハジキ欠陥の発生が抑制されており、塗布層表面の表面粗さも小さく抑えられていた。また、赤外光反射板としても、遮熱性能は比較例3とほぼ同等の性能を維持しながら、膜強度の向上、膜脆性の改良がなされていた。
【0139】
【表13】

【表14】

【0140】
上記表より、実施例8では、赤外光反射層の上に機能層用組成物を塗布した場合のハジキ欠陥発生の抑制効果、塗布層表面の表面粗さ抑制効果が認められた。ただし、もともとのハジキ欠陥発生数が多く、表面粗さも大きいため、重合性化合物(1)を添加しても、ハジキ欠陥の発生や表面粗さのレベルは実施例1や実施例7に比較してやや劣っていた。また、赤外光反射板としての遮熱性能も、比較例4とほぼ同等ではあるが、表面粗さが大きい分、実施例1や実施例7に比較するとやや劣っていた。膜強度の向上、膜脆性の改良の効果は高く、実施例1や実施例7と同等であった。
【0141】
多官能重合性化合物の添加量依存性について(併せて、配向制御剤との添加量比依存性についても)、実施例9〜12で多官能重合性化合物量をふって検証した。
【0142】
[実施例9]
液晶組成物塗布液(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の多官能重合性化合物(重合性化合物(1))の処方量を0.500質量部から1.500質量部に変更し、それぞれの選択反射中心波長が1040nm、1240nmになるようにキラル剤LC−756,キラル剤化合物2の処方量をそれぞれ変更した以外は同様にして塗布液(R11E)、(R12E)、(L11E)、(L12E)を調整した。それぞれの塗布液の23℃における粘度は、4.7mPa・s、4.6mPa・s、5.4mPa・s、5.4mPa・sであった。
液晶組成物塗布液として(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の代わりに(R11E)、(R12E)、(L11E)、(L12E)を用いた以外は実施例1と同様の手順にて実施例9の赤外光反射板を作製した。
【0143】
[実施例10]
液晶組成物塗布液(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の多官能重合性化合物(重合性化合物(1))の処方量を0.500質量部から1.000質量部に変更し、それぞれの選択反射中心波長が1040nm、1240nmになるようにキラル剤LC−756,キラル剤化合物2の処方量をそれぞれ変更した以外は同様にして塗布液(R11F)、(R12F)、(L11F)、(L12F)を調整した。それぞれの塗布液の23℃における粘度は、4.3mPa・s、4.3mPa・s、4.8mPa・s、4.8mPa・sであった。
液晶組成物塗布液として(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の代わりに(R11F)、(R12F)、(L11F)、(L12F)を用いた以外は実施例1と同様の手順にて実施例10の赤外光反射板を作製した。
【0144】
[実施例11]
液晶組成物塗布液(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の多官能重合性化合物(重合性化合物(1))の処方量を0.500質量部から0.150質量部に変更し、それぞれの選択反射中心波長が1040nm、1240nmになるようにキラル剤LC−756とキラル剤化合物2の処方量をそれぞれ変更した以外は同様にして塗布液(R11G)、(R12G)、(L11G)、(L12G)を調整した。それぞれの塗布液の23℃における粘度は、3.0mPa・s、3.0mPa・s、3.3mPa・s、3.2mPa・sであった。
液晶組成物塗布液として(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の代わりに(R11G)、(R12G)、(L11G)、(L12G)を用いた以外は実施例1と同様の手順にて実施例11の赤外光反射板を作製した。
【0145】
[実施例12]
液晶組成物塗布液(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の多官能重合性化合物(重合性化合物(1))の処方量を0.500質量部から0.050質量部に変更し、それぞれの選択反射中心波長が1040nm、1240nmになるようにキラル剤LC−756,キラル剤化合物2の処方量をそれぞれ変更した以外は同様にして塗布液(R11H)、(R12H)、(L11H)、(L12H)を調整した。それぞれの塗布液の23℃における粘度は、2.5mPa・s、2.5mPa・s、2.8mPa・s、2.8mPa・sであった。
液晶組成物塗布液として(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の代わりに(R11H)、(R12H)、(L11H)、(L12H)を用いた以外は実施例1と同様の手順にて実施例12の赤外光反射板を作製した。
【0146】
結果を、下表に示す。
【0147】
【表15】

【表16】

【0148】
上記表より、実施例10は、実施例1に比較して、赤外光反射層の上に機能層用組成物を塗布した場合のハジキ欠陥の発生がより抑制されており、塗布層表面の表面粗さもより小さく抑えられていた。また、赤外光反射板としても、膜強度はより向上しており、膜脆性もより改良されている。ただし、コレステリック液晶層の配向性が低下するため、遮熱性能が低くなってしまっていた。
実施例9は、実施例10での傾向がより強く示されているが、重合性化合物(1)の添加量の増量分を考えると、効果は飽和状態に近いと考えられる。
実施例11は、実施例1に比較して、赤外光反射層の上に機能層用組成物を塗布した場合のハジキ欠陥発生の抑制効果がやや低下しており、塗布層表面の表面粗さもやや大きくなってしまっていた。また、赤外線反射板としても、膜強度向上効果がやや低くなっている。ただし、コレステリック液晶層の配向性はやや良化するので、結果、遮熱性能はやや高くなっていた。
実施例12は、実施例1に比較して、赤外光反射層の上に機能層用組成物を塗布した場合のハジキ欠陥発生の抑制効果がさらに低下しており、塗布層表面の表面粗さも大きくなってしまっていた。また、赤外線反射板としても、膜強度向上効果が低くなっており、膜脆性改良効果も低くなっていた。コレステリック液晶層の配向性は良化するハズであるが、表面粗さが大きくなったためか、遮熱性能は実施例1同等で留まっていた。
【0149】
ハジキ欠陥発生抑制、表面粗さ抑制、膜強度向上効果、膜脆性改良効果と遮熱性能とを両立しうる赤外光反射板として、以下の実施例13〜15の構成を検証した。
【0150】
[実施例13]
液晶組成物塗布液として(R11)、(R12)、(L11)、(L12)の代わりに(R11G)、(R12F)、(L11G)、(L12F)を用いた以外は実施例1と同様の手順にて実施例13の赤外光反射板を作製した。
【0151】
結果を、下表に示す。
【0152】
【表17】

【表18】

【0153】
上記表より、実施例13は、実施例1に比較して、赤外光反射層の上に機能層用組成物を塗布した場合のハジキ欠陥の発生がより抑制されており、塗布層表面の表面粗さもより小さく抑えられていた。また、赤外光反射板としても、膜強度はより向上しており、膜脆性もより改良されており、実施例10と同等の性能が出ていた。また、コレステリック液晶層の配向性はやや低下し、遮熱性能は実施例1よりは低くなるが、実施例11よりは高い性能を示していた。赤外光反射層の下半分((R11G),(L11G))でコレステリック液晶層の配向性を上げ、赤外光反射層の上半分((R12F),(L12F))で赤外光反射板としての膜強度改良効果、膜脆性改良効果を発現させているものと考えられる。
【0154】
[実施例14]
液晶組成物塗布液(R11G)、(L11G)の配向制御剤の処方量を0.003質量部から0.010質量部に変更した以外は同様にして塗布液(R11I)、(L11I)を調整した。それぞれの塗布液の23℃における粘度は、3.0mPa・s、3.2mPa・sであった。
液晶組成物塗布液として(R11G)、(L11G)の代わりに(R11I)、(L11I)を用いた以外は実施例13と同様の手順にて実施例14の赤外光反射板を作製した。
【0155】
結果を、下表に示す。
【0156】
【表19】

【表20】

【0157】
実施例14は、実施例13に対して、赤外光反射層の下半分((R11I),(L11I))の層中の配向制御剤の量を少し減量したものである。
上記表より、コレステリック液晶層の配向性は維持したまま表面粗さを小さくすることにより、赤外光反射板としての遮熱性能を上げることができることがわかった。
【0158】
[実施例15]
液晶組成物塗布液として(R11G)、(R12F)、(L11G)、(L12F)の代わりに(R11F)、(R12G)、(L11F)、(L12G)を用いた以外は実施例14と同様の手順にて実施例15の赤外光反射板を作製した。
【0159】
結果を、下表に示す。
【0160】
【表21】

【表22】

【0161】
実施例15は、実施例13に対して、赤外光反射層の下半分((R11F),(L11F))と上半分((R12G),(L12G))の多官能重合性化合物(重合性化合物(1))の添加量を逆転させた構成にしたものである。
上記表より、赤外光反射板としては、表面側(空気界面側)の多官能重合性化合物の添加量が、基板側の多官能重合性化合の添加量よりも少なくなっているため、実施例13に比較して、膜強度向上効果はやや低くなっていた。膜脆性は、基板側に対して表面側の脆性が低いため、赤外光反射板としてはかえって悪化してしまっていた。遮熱性能も、基板側のコレステリック液晶層の配向性が低いことの影響が残り、実施例13よりもやや劣っていた。
【0162】
[実施例16]
上記で作製した実施例1の赤外光反射板と合わせガラス用ポリビニルブチラール中間膜シート(厚み:380μm)とを、ラミネーター(大成ラミネーター(株)製)を用いてラミネート処理(加熱温度:80℃、加圧力:1.5kg/cm、搬送速度:0.1m/min)することにより、合わせガラス用積層中間膜シートを作製した。
次いで、上記で作製した合わせガラス用積層中間膜シートを2枚の透明ガラス(厚さ:2mm)で挟み、ゴムバッグに入れ、真空ポンプで減圧した。その後、減圧下で90℃まで昇温し、30分間保持後、いったん常温状圧まで戻した。その後、オートクレーブ内にて圧力1.3MPa、温度130℃の条件で20分間保持した。これを常温常圧まで戻し、実施例16の赤外光反射機能付き合わせガラスを作製した。
合わせガラス内の赤外光反射板の面状について目視観察を行なったところ、割れやヒビ、シワなどの故障は認められず、合わせガラス化工程において赤外光反射板の面状が劣化することがないことが確認された。
また、赤外光反射機能付き合わせガラスの遮熱性能を測定したところ、実施例1(フィルム状の赤外光反射板)と同等の反射率34.1%を示し、合わせガラス化工程において赤外光反射板の性能が劣化することがないことが確認された。
【0163】
上記の結果より、本発明によれば、コレステリック液晶相を固定した赤外線反射層を含み、赤外線反射層表面の塗布ハジキ欠陥の発生が抑制された赤外光反射板を得られることが示された。
特には、赤外光反射層の表面上に機能層用組成物を塗布していく場合に、表面粗さの増大等の面状不良を起こすことなく、コレステリック液晶層の配向性の良好な、遮熱性能に優れる赤外光反射板を得られることが示された。
さらには、膜強度(破断応力,破断伸度)が向上し、膜脆性が改良された赤外光反射板を得られることが示された。
【符号の説明】
【0164】
1 赤外線反射板
11 樹脂基板
12 赤外光反射層(CL層)
14a コレステリック液晶相を固定してなる光反射層
14b コレステリック液晶相を固定してなる光反射層
16a コレステリック液晶相を固定してなる光反射層
16b コレステリック液晶相を固定してなる光反射層
22 易接着層
24 下塗り層
26 配向層
28 バック層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能重合性化合物、コレステリック液晶性化合物および該液晶性化合物に対して60ppm以上のフッ素系配向制御剤を含む赤外光反射層用組成物を重合して形成された赤外光反射層を有し、
該赤外光反射層の少なくとも一方の表面上に、機能層用組成物を塗布した場合の直径5μm以上の大きさの塗布液ハジキ欠陥の個数が10個/m以下であることを特徴とする赤外光反射板。
【請求項2】
前記機能層用組成物の塗布厚みが硬化後において1〜10μmであることを特徴とする請求項1に記載の赤外光反射板。
【請求項3】
前記機能層用組成物が多官能重合性化合物を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の赤外光反射板。
【請求項4】
前記赤外光反射層の表面の接触角(対純水)が85〜100度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
【請求項5】
前記赤外光反射層の少なくとも一方の表面における表面エネルギーの平均値が40mN/m以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
【請求項6】
前記赤外光反射層の少なくとも一方の表面における表面エネルギーのバラツキの標準偏差σが0.5mN/m以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
【請求項7】
前記赤外光反射層の少なくとも一方の表面における表面粗さRaが50nm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
【請求項8】
前記多官能重合性化合物の分子量が350〜2000であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
【請求項9】
前記多官能重合性化合物が、少なくとも1つの2価の炭素数6〜30の芳香環基を含み、非液晶性であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
【請求項10】
前記多官能重合性化合物が、2以上の(メタ)アクリロイル基を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
【請求項11】
前記多官能重合性化合物が、下記一般式(1)で表される構造であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
【化1】

(一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、MおよびMはそれぞれ独立に−(CH−CH−O)−、−(O−CH−CH−、−(CH−CH−CH−O)−、−(O−CH−CH−CH−、−(CH−およびこれらの組合せを表す。n、mおよびpはそれぞれ独立に1〜50の整数を表す。)
【請求項12】
前記赤外光反射層用組成物中における、前記多官能重合性化合物と前記フッ素系配向制御剤の添加量比(質量比)が50:1〜1000:1であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
【請求項13】
前記赤外光反射層用組成物中における、前記多官能重合性化合物と前記フッ素系配向制御剤の添加量比(質量比)が60:1〜900:1であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
【請求項14】
前記赤外光反射層用組成物の粘度が0.1〜10mPa・sであることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
【請求項15】
前記赤外光反射層の合計膜厚が10〜60μmであることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
【請求項16】
前記赤外光反射層が2〜12層のコレステリック液晶層を含むことを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
【請求項17】
前記2〜12層のコレステリック液晶層を含む前記赤外光反射層が、基板上に積層されており、
前記各コレステリック液晶層がそれぞれコレステリック液晶層用組成物を重合して形成され、
前記各コレステリック液晶層用組成物中に含まれる前記多官能重合性化合物の添加量が、基板側コレステリック液晶層用組成物から順に多くなることを特徴とする請求項16に記載の赤外光反射板。
【請求項18】
前記各コレステリック液晶層用組成物がさらにフッ素系配向制御剤を含み、
前記各コレステリック液晶層用組成物中に含まれる前記フッ素系配向制御剤の添加量が、基板側コレステリック液晶層用組成物から順に多くなり、
全ての前記各コレステリック液晶層用組成物中に含まれる前記多官能重合性化合物と前記フッ素系配向制御剤の添加量比(質量比)が50:1〜1000:1であることを特徴とする請求項17に記載の赤外光反射板。
【請求項19】
前記赤外光反射層が右円偏光の光を反射するコレステリック液晶層及び左円偏光の光を反射するコレステリック液晶層を少なくとも一層ずつ含むことを特徴とする請求項16〜18のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
【請求項20】
前記赤外光反射層の破断伸度が5%以上であることを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載の赤外光反射板。
【請求項21】
前記赤外光反射層の破断応力が20MPa以上であることを特徴とする請求項1〜20のいずれか一項に記載の赤外光反射板。


【図1】
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【公開番号】特開2012−47812(P2012−47812A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187305(P2010−187305)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】