説明

赤外線センサ

【課題】検知エリアに設定された複数の検知ゾーンのうち、侵入物体を検知しない検知ゾーンが正しく設定されているか否かを適切に確認できる赤外線センサを提供する。
【解決手段】赤外線センサ10は、複数の検知ゾーンから放射される赤外線を各検知ゾーンにそれぞれ対応して設けた複数の集光素子により集光する集光部材と、集光した赤外線を受光する受光素子と、赤外線を遮蔽する材料で形成され、複数の集光素子の何れかにより集光される赤外線を遮蔽する位置に配置可能な遮光部材と、遮光部材により赤外線を遮蔽すべき対象集光素子を記憶する記憶部40と、遮光部材により赤外線が遮蔽された遮蔽集光素子を検出する検出部20と、検出部により検出された遮蔽集光素子と記憶部に記憶された対象集光素子とが一致するか否かを判定する判定手段82と、判定した結果を表示部に表示させる出力手段83とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知エリアに設定された複数の検知ゾーンの熱変化を検出する焦電型の赤外線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、監視領域に侵入する侵入物体を検出するために、焦電型の赤外線センサ(PIRセンサ;Passive InfraRed Sensor)が広く開発されている。このようなPIRセンサが侵入物体を検出する検知エリアは、一般に各々離間した複数の検知ゾーンによって構成される。PIRセンサは、例えば集光レンズを用いて、各検知ゾーンからの赤外線(熱線)を集光する。PIRセンサに用いられる集光レンズは、例えば複数のレンズを2次元に配列したレンズアレイからなり、各レンズは、それぞれ対応する検知ゾーンから放射された赤外線を焦電素子で受光するようにアライメント調整されている。そしてPIRセンサは、焦電素子で受光した各検知ゾーンからの赤外線の熱エネルギーの時間的な変化を検出することにより、侵入物体を検出する。
【0003】
このようなPIRセンサで侵入物体を監視するとき、正規の利用者が通行するための道路、侵入物体を監視すべきでない領域が写る窓、第三者のプライバシーを侵害するおそれのあるドア等、検知エリアの一部では侵入物体を検出しないようにしたい(検知エリアの範囲を限定したい)場合がある。その場合、PIRセンサは、対応する検知ゾーンからの赤外線が焦電素子へ入射しないように遮光部材を用いて赤外線を遮光する必要がある。そのために従来のPIRセンサは、例えば侵入物体を検出すべきでない検知ゾーンからの赤外線を集光するレンズのレンズ面に遮光シールを貼ることにより、その検知ゾーンからの赤外線を遮光していた。しかしながら、レンズアレイの各レンズ面は非常に小さいため、遮光シールを貼る作業は困難であり、PIRセンサを設置する作業者は遮光シールを貼る作業に多大な時間を要していた。
【0004】
これに対して、特許文献1には、検知エリアの範囲を限定することが可能な人体検知装置が提案されている。この人体検知装置では、天井面に固定されたケース内に熱線センサが収容され、熱線センサの、レンズアレイからなる受光レンズを伸縮自在に覆うように、一端部がケース(天井側)に固定された円筒形の蛇腹状の遮光フードが設けられている。そしてその遮光フードを伸張させることにより、人体検知装置は、レンズアレイの一部のレンズからの熱線を遮断して、そのレンズに対応する検知ゾーンを検知エリアから外すことが可能となる。
さらに、特許文献1に開示された他の実施形態では、人体検知装置において、レンズアレイの各レンズに対応する区画に分割された透光性のシェードを有するプレートが受光レンズを覆うように設けられている。この実施形態では、人体検知装置内にシェードの各区画の形状及び大きさに合わせた遮光チップが用意されている。そしてその遮光チップをシェードの、遮光するレンズに対応する区画に取り付けることにより、人体検知装置は、そのレンズからの熱線を遮断して、そのレンズに対応する検知ゾーンを検知エリアから外すことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−132755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
検知エリアの一部では侵入物体の検出をしないようにする場合、検知エリアを設定する作業者が侵入物体を検知しない検知ゾーンをまちがえないように設定できることが重要である。作業者が誤って侵入物体を検知すべき検知ゾーンまで検知エリアから外してしまうと、その検知ゾーンに侵入者が存在してもその侵入者を検出できなくなる。
特許文献1に記載された人体検知装置によれば、円筒形の蛇腹状の遮光フードを用いて受光レンズを遮光する場合、作業者は検知エリアから検知ゾーンを外す作業を容易にすることができる。また、遮光チップを用いて受光レンズを遮光する場合、作業者は検知エリアから外す検知ゾーンを細かく設定することができる。しかしながら、作業者は、作業が正しく行われたか否かを、遮光フード又は遮光チップの状態を目視確認することでしか判断できず、侵入物体を検出しない検知ゾーンを正しく設定できたか否かを十分に確認することができなかった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、検知エリアに設定された複数の検知ゾーンのうち、侵入物体を検知しないように設定した検知ゾーンが正しく設定されているか否かを適切に確認することができる赤外線センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するための本発明は、複数の検知ゾーンから放射される赤外線に応じて侵入物体を検出する赤外線センサを提供する。係る赤外線センサは、複数の検知ゾーンから放射される赤外線を各検知ゾーンにそれぞれ対応して設けた複数の集光素子により集光する集光部材と、集光部材により集光した赤外線を受光する受光素子と、赤外線を遮蔽する材料で形成され、複数の集光素子の何れかにより集光される赤外線を遮蔽する位置に配置可能な遮光部材と、複数の集光素子のうち遮光部材により赤外線を遮蔽すべき対象集光素子を記憶する記憶部と、複数の集光素子のうち遮光部材により赤外線が遮蔽された遮蔽集光素子を検出する検出部と、検出部により検出された遮蔽集光素子と記憶部に記憶された対象集光素子とが一致するか否かを判定する判定手段と、判定した結果を表示部に表示させる出力手段と、を有する。
【0009】
また、本発明に係る赤外線センサにおいて、集光部材は、第1の方向において複数の集光素子を備え、遮光部材は、短冊状に形成され、集光部材の一面に沿って第1の方向にスライド移動可能に配置され、複数の集光素子のうち、遮光部材の先端から集光部材の第1の方向における一端までの間に位置する集光素子を遮蔽し、検出部は、スライド移動された遮光部材の位置を検出して遮蔽集光素子を判別することが好ましい。
【0010】
さらに、本発明に係る赤外線センサにおいて、検出部は、遮光部材に付された判定用識別情報を取得して遮蔽集光素子を判別し、遮光部材には、集光部材の一面に、スライド移動された状態で検出部と対向する位置に遮蔽している集光素子を示す判定用識別情報が面するように、判定用識別情報が設けられることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係る赤外線センサにおいて、遮光部材は、判定用識別情報として複数の集光素子のそれぞれに対応した異なる反射率をもつ複数の反射板を有し、検出部は、対向する位置にある反射板に向けて光を放射するとともに反射光を受光し、受光した反射光量に基づいて遮光部材の位置を検出して遮蔽集光素子を判別することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る赤外線センサは、検知エリアに設定された複数の検知ゾーンのうち、侵入物体を検知しないように設定した検知ゾーンが正しく設定されているか否かを適切に確認することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した侵入物体検出装置の概略構成図である。
【図2】本発明を適用した赤外線センサの外観を示す概略斜視図である。
【図3】赤外線センサの概略断面図である。
【図4】赤外線センサの外側から見た、筐体から取り外された本体部分の概略斜視図である。
【図5】赤外線センサの内側からみた、筐体から取り外された本体部分の概略斜視図である。
【図6】赤外線センサが検知エリアを向く方向に対して左側から見た本体部分の概略側面図である。
【図7】赤外線センサが検知エリアを向く方向に対して右側から見た本体部分の概略側面図である。
【図8】前面支持部の概略斜視図である。
【図9】集光レンズの概略斜視図である。
【図10】(a)は集光レンズを赤外線センサの内側から見た模式図であり、(b)は集光レンズを赤外線センサが検知エリアを向く方向に対して左側から見た模式図であり、(c)は集光レンズを赤外線センサが検知エリアを向く方向に対して右側から見た模式図である。
【図11】検知ゾーンと集光レンズと焦電素子の関係を表す模式図である。
【図12】背面支持部の概略斜視図である。
【図13】(a)は延長部分を上側から見た概略断面図であり、(b)は延長部分を赤外線センサの外側から見た模式図であり、(c)は延長部分を赤外線センサの内側から見た模式図である。
【図14】遮蔽ガイドに配置された遮光シートを赤外線センサの外側から見た模式図である。
【図15】遮蔽ガイド及び遮蔽ガイドに配置された遮光シートを赤外線センサの内側から見た模式図である。
【図16】無監視エリアの設定画面の例を示す図である。
【図17】監視画像に検知ゾーンの投影像をオーバーレイさせた画像の例を示す図である。
【図18】無監視検知ゾーンを表す画面の例を示す図である。
【図19】(a)、(b)は、遮光シートをスライド移動させた場合の例を示す模式図である。
【図20】侵入物体検出装置によって制御されるメンテナンスモード時の処理の動作を示すフローチャートである。
【図21】侵入物体検出装置によって制御される警備モード時の処理の動作を示すフローチャートである。
【図22】遮蔽ガイドの係止手段と遮光シートの切り欠き部の係合状態により赤外線が遮蔽されたレンズを検出する例を説明するための模式図である。
【図23】反射型のPIRセンサの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態である赤外線センサについて図を参照しつつ説明する。
この赤外線センサは、検知エリアに設定された複数の検知ゾーンのそれぞれから放射された赤外線を、集光レンズアレイのうちのその検知ゾーンに対応するレンズにより集光して焦電素子で受光する。この赤外線センサは赤外線を遮蔽する遮光シートと遮光シートを支持する遮蔽ガイドを備えており、作業者は遮光シートを遮蔽ガイドに沿って、集光レンズアレイのレンズ面に沿ってスライド移動させることにより各レンズにより集光する赤外線を遮蔽することができる。また、この赤外線センサでは、遮光シートにより赤外線が遮蔽されたレンズを特定するための情報をもつ部材がその遮光シート上に貼り付けられる。赤外線センサは、その情報を取得して赤外線が遮蔽されたレンズを検出し、赤外線を遮蔽すべきレンズが正しく遮蔽されているか否かを判定する。これにより赤外線センサは、検知ゾーンが正しく設定されているか否かを適切に確認できるようにすることを図る。
【0015】
図1は、本発明を適用した侵入物体検出装置の概略構成を示す図である。侵入物体検出装置1は、例えば屋外等に設置され、屋外の空間をその空間から放射される熱線とその空間を撮影した画像により監視する。そのために、侵入物体検出装置1は、赤外線センサ10と、検出部20と、撮像部30と、記憶部40と、操作部50と、表示部60と、通信部70と、監視処理部80とを有する。以下、侵入物体検出装置1の各部について詳細に説明する。
【0016】
赤外線センサ10は、検知エリアに侵入する侵入物体を検出する、焦電素子および集光レンズを用いた焦電型赤外線センサ(PIRセンサ;Passive InfraRed Sensor)である。図2に赤外線センサ10の外観の概略斜視図を示す。図2に示すように、赤外線センサ10は、センサ本体11及び筐体12を有する。センサ本体11は、侵入物体を検出する機能を実現する部分であり、前面支持部100と、前面支持部100に取り付けられた集光レンズ101を備える。この前面支持部100が筐体12に取り付けられることにより、センサ本体11は筐体12に固定される。筐体12は、例えば射出成形された樹脂などからなり、略直方体の形状を有する。筐体12は、集光レンズ101が検知エリア(すなわち、撮像部30と同じ方向)を向くように、撮像部30と共に侵入物体検出装置1の筐体内に取り付けられる。
なお、以下では、便宜上、赤外線センサ10が水平に設置された場合に、水平面に平行で、かつ赤外線センサ10が検知エリアを向く方向と直交する方向をx軸、水平面と直交する方向(鉛直方向)をy軸、水平面に平行で、かつ赤外線センサ10が検知エリアを向く方向をz軸とする座標系を設定する。また、以下では、y軸の上方向を上側とし、y軸の下方向を下側として説明する。
【0017】
図3に、図2の矢視A−A’における赤外線センサ10の概略断面図を示す。図3に示すように、センサ本体11は、前面支持部100及び集光レンズ101に加えて、背面支持部102、焦電素子103、信号処理部104及び遮光シート161〜163を備える。背面支持部102、焦電素子103、信号処理部104及び遮光シート161〜163は筐体12内に備えられる。
集光レンズ101は、前面支持部100と背面支持部102にはさまれて固定される。赤外線センサ10が侵入物体を検知する検知エリアは、一又は複数の検知ゾーンによって構成される。赤外線センサ10は集光レンズ101を用いて、各検知ゾーンからの赤外線(熱線)を焦電素子103に集光する。焦電素子103は、集光レンズ101により集光された赤外線を受光する方向を向くように、背面支持部102に取り付けられる。各検知ゾーンは一対のゾーンからなり、それぞれ侵入物体を検知すべき領域内に定められる。焦電素子103は、例えば逆極性で接続された一対の焦電素子で構成され、各検知ゾーンの一対のゾーンのうち、一方のゾーンからの赤外線を受光して正電圧に変換し、他方のゾーンからの赤外線を受光して負電圧に変換して信号処理部104に出力する。この信号処理部104は、例えば焦電素子103から出力された電圧を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換する電気回路、又はCPU、ROM、RAM等により回路基板上に構成される。そして回路基板は、焦電素子103が受光する赤外線を遮らないように、センサ本体11の、焦電素子103の背面側に取り付けられる。
一対のゾーンを横切る方向に侵入物体が通過すると、焦電素子103が出力する電圧は正電圧から負電圧(または負電圧から正電圧)に変化する。そこで信号処理部104は、焦電素子103から出力された電圧変化の大きさに基づいて検知エリアに侵入物体が存在する確かさの度合いを表す検知レベルを求め、その検知レベルを示す検知レベル情報を監視処理部80に出力する。
また、検知エリア側から見て背面支持部102の右側のサイドには、集光レンズ101の一部により集光される赤外線を遮蔽するための遮光シート161〜163が配置される。この遮光シート161〜163は、センサ本体11が筐体12に取り付けられたときは、筐体12内に備えられる。
【0018】
図4に、筐体12から取り外されたセンサ本体11を赤外線センサ10の外側(検知エリア側)から見た概略斜視図を示し、図5に、筐体12から取り外されたセンサ本体11を赤外線センサ10の内側(検知エリアと反対側)から見た概略斜視図を示す。また、図6に、赤外線センサ10が検知エリアを向く方向に対して左側からセンサ本体11を見た概略側面図を示し、図7に、赤外線センサ10が検知エリアを向く方向に対して右側からセンサ本体11を見た概略側面図を示す。図7に示すように、検知エリア側から見て背面支持部102の左側のサイドには、集光レンズ101の一部により集光される赤外線を遮蔽するための遮光シート164〜166が配置される。
【0019】
まず前面支持部100について説明する。図8に前面支持部100を検知エリア側から見た模式図を示す。前面支持部100は、例えば射出成型された樹脂などからなる。前面支持部100は、略矩形の板状の形状を持つ矩形部106を有し、矩形部106の上側の二つの角は略直角であり、下側の二つの角は丸みを帯びている。矩形部106の上側の縁には、矩形部106と直角をなすように検知エリア側に突出する半円板状の突出部108が形成される。また矩形部106には、下側に凸な半円状に切り欠かれた窓107が、半円の直線部分が矩形部106と突出部108の接合部分と接するように形成される。
【0020】
次に集光レンズ101について説明する。図9に集光レンズ101の概略斜視図を示す。集光レンズ101は、透明樹脂からなり、球面を、その中心を通り互いに直交する二つの面で切断した4分の1球面の形状を有する。集光レンズ101は、二つの切断面のうちの一方に沿って広がるフランジ111と、二つの切断面のうちの他方において球面に沿って広がるフランジ112を備える。集光レンズ101は、球面の外側が検知エリア側を向くように赤外線センサ10の内側から前面支持部100の半円状の窓107にはめられる。
集光レンズ101の球面における、フランジ111側を底面としたときの頂部を中心とする中央凸状部には複数のレンズを2次元に配列した集光レンズアレイ113が配置される。図10(a)に集光レンズ101を赤外線センサ10の内側(検知エリアと反対側)から見た模式図を示し、図10(b)に集光レンズ101を赤外線センサ10が検知エリアを向く方向に対して左側から見た模式図を示し、図10(c)に集光レンズ101を赤外線センサ10が検知エリアを向く方向に対して右側から見た模式図を示す。図10(a)〜(c)に示すように、集光レンズ101には、鉛直方向(y軸方向)に3段(上段部分、中段部分、下段部分)にそれぞれ複数のレンズが形成される。集光レンズ101には、上段部分に七つのレンズ(A1〜A7)が形成され、中段部分に七つのレンズ(B1〜B7)が形成され、下段部分に三つのレンズ(C1〜C3)が形成される。各レンズは、対応する検知ゾーンから放射された赤外線を焦電素子に集光するようにアライメント調整される。なお、集光レンズアレイの各レンズはどのようなものでもよいが、本実施形態では、フレネルレンズを用いるものとして説明する。本実施形態では、集光レンズ101の複数のレンズ夫々が集光素子を形成している。
【0021】
図11に、検知ゾーンと集光レンズと焦電素子の関係を表す模式図を示す。図11は、検知エリア1100及び赤外線センサ10の集光レンズ101を上側から鉛直方向に見た模式図を示す。図11には、簡略化のため、集光レンズ101の下段部分のレンズC1、C2、C3(1101、1102、1103)と、レンズC1、C2、C3が赤外線を集光する検知ゾーンC1’、C2’、C3 ’(1111、1112、1113)のみを示す。図11に示すように、各レンズ1101、1102、1103は、それぞれ対応する検知ゾーン1111、1112、1113から放射された赤外線を焦電素子103に集光するようにアライメント調整される。
【0022】
次に背面支持部102について説明する。図12に背面支持部102の概略斜視図を示す。背面支持部102は、前面支持部100と同様に、例えば射出成形された樹脂などからなる。背面支持部102の前面部(検知エリア側の面)114は、集光レンズ101の球面及びフランジ111に略一致する形状に形成される。前面部114のうち、集光レンズ101の球面に一致する形状に形成された突出部115において、集光レンズアレイと対向する領域には穴116が設けられ、その穴116の奥には焦電素子103が集光レンズ101を向くように配置される。また、集光レンズ101と背面支持部102の間に遮光シートを通すために、突出部115上には、集光レンズアレイの各段が形成される方向(x軸方向)に遮光シートと略同一の厚さのくぼみ117が設けられる。また、突出部115を上側から見た面は、集光レンズ101のフランジ112に沿って形成される半円状の開口を覆うように半円板118で形成される。
【0023】
また、前面部114の、集光レンズ101のフランジ111と対向する領域の背面には、突出部115に沿った面の延長部分120が形成される。図13(a)に図12の矢視B−B’における延長部分120の概略断面図を示す。図13(a)に示すように、延長部分120には、突出部115に沿うように、貫通溝121が設けられる。この貫通溝121は遮光シートを通すための溝であり、集光レンズアレイの段数と同数(三つ)の貫通溝が、それぞれ集光レンズアレイの各段とy軸方向に同じ位置に同じ高さをもつように設けられる。
一方、図13(b)に延長部分120を赤外線センサの外側(赤外線センサが検知エリアを向く方向に対して左側)から見た模式図を示す。図13(b)に示すように、延長部分120は、赤外線センサの外側から見ると略矩形の形状を有し、この延長部分120の外側(赤外線センサが検知エリアを向く方向に対して左側)には各貫通溝121に連通する窓(以下、外側窓と称する)122〜124が設けられる。この外側窓122〜124は、延長部分に配置された遮光シート161〜163の表面を露出させて作業者が後述する遮光シートに記載されたレンズの識別情報を目視するための窓である。
また、各外側窓のy軸方向の境界を形成する、各貫通溝121の内壁面の少なくとも一方には、外側窓の内側に向けて突起した突起部131〜135が形成される。突起部131〜135は、それぞれz軸方向の位置が一致するように形成される。これらの突起部131〜135は、遮光シートを係止させるための係止手段として機能するとともに、作業者に遮光シートの表面に印刷された情報を指し示すための指示手段として機能する。
【0024】
また、図13(c)に延長部分120を赤外線センサの内側(赤外線センサが検知エリアを向く方向に対して右側)から見た模式図を示す。図13(c)に示すように、延長部分120は、赤外線センサの内側から見ると略矩形の形状を有し、この延長部分120の内側(赤外線センサが検知エリアを向く方向に対して右側)には各貫通溝121に連通する窓(以下、内側窓と称する)125〜127が設けられる。この内側窓125〜127は、遮光シート161〜163の裏面の一部を露出させるための窓であり、それぞれ外側窓122〜124の各段に対向する位置に設けられる。
なお、赤外線センサが検知エリアを向く方向に対して右側にも延長部分が形成されるが、延長部分120と同様の構造をもつため、説明を省略する。以降、この延長部分を遮蔽ガイドと称する。
【0025】
次に遮光シート161〜166について説明する。遮光シート161〜166は、赤外線を遮光する材料(例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)材に黒色インクを塗ったもの)により短冊状に形成された、弾性遮光部材である。遮光シート161はレンズA1〜A4の何れかを通過する赤外線を遮光し、遮光シート162はレンズB1〜B4の何れかを通過する赤外線を遮光し、遮光シート163はレンズC1〜C2の何れかを通過する赤外線を遮光するための遮光部材である。また遮光シート164はレンズA4〜A7の何れかを通過する赤外線を遮光し、遮光シート165はレンズB4〜B7の何れかを通過する赤外線を遮光し、遮光シート166はレンズC2〜C3の何れかを通過する赤外線を遮光するための遮光部材である。そのため、各遮光シートの幅は、それぞれ赤外線を遮光するレンズのy軸方向の長さと略同一である。各遮光シートは、集光レンズ101側の先端から各遮光シートが配置される遮蔽ガイド側に位置する全てのレンズにより集光される赤外線を遮蔽する。遮光シート161〜166は、概略、同様の形状を有するので、以下では代表して遮光シート161について説明する。
【0026】
図14に、遮蔽ガイド120に配置された遮光シート161を赤外線センサ10の外側から見た模式図を示す。遮光シート161は、貫通溝121を通って遮蔽ガイド120に配置される。遮光シート161は、貫通溝121を通って集光レンズ101側にスライド移動され、さらに集光レンズ101と背面支持部102のくぼみ117の間を通って、その表面が集光レンズ101の内側の面に沿うようにスライド移動される。図14においては、集光レンズ101のうちレンズA1のみが遮光シート161により遮蔽され(実線で図示)、レンズA2〜A4は遮蔽されていない(破線で図示)。
なお、遮光シートは、集光レンズ101の外側の面に沿うようにスライド移動するようにしてもよい。
【0027】
遮光シート161の表面には、遮光シート161の集光レンズ101側の先端が各レンズの境界に位置するときに、遮蔽ガイド120の集光レンズ101側の端部151と対抗する側の端部152に合う位置に境界線171〜174がシルク印刷される。遮光シート161は集光レンズ101のレンズ面上に沿ってスライド移動する。そのため、あるレンズについて赤外線が遮蔽された状態からその隣に位置する赤外線が遮蔽されていないレンズについても赤外線を遮蔽するために遮光シート161をスライド移動させた場合、遮蔽ガイド120上においてスライド移動した距離は、そのスライド移動により遮蔽されたレンズのレンズ幅と略同一である。そこで、境界線171と境界線172の間の長さはレンズA2のレンズ幅と略同一にし、境界線172と境界線173の間の長さはレンズA3のレンズ幅と略同一にし、境界線173と境界線174の間の長さはレンズA4のレンズ幅と略同一にする。
【0028】
これにより、作業者は、遮光シート161に印刷された境界線を端部152に合わせて、遮光シートをスライド移動させる位置を容易に調整することができる。また、遮光シート162〜165についても同様に境界線が印刷される。
【0029】
また、遮光シート161は、遮光シート161の集光レンズ101側の先端がレンズA1とレンズA2の境界に位置するときに、遮蔽ガイド120の突起部131、132と合う位置に切り欠き部181、185を備える。同様に、遮光シート161は、遮光シート161の集光レンズ101側の先端が、それぞれレンズA2とレンズA3の境界、レンズA3とレンズA4の境界、レンズA4とレンズA5の境界に位置するときに、突起部131、132と合う位置に切り欠き部182〜184、186〜188を備える。これらの切り欠き部181〜184、185〜188は、突起部131、132と略同一の形状、大きさをもつ。
また、遮光シート161において各切り欠き部が設けられる長手方向の間隔は、各境界線が印刷される間隔と同様に、各レンズにおける遮光シート161がスライド移動する方向のレンズ幅に応じて定められる。つまり、切り欠き部181、185と切り欠き部182、186の間の長さはレンズA2のレンズ幅と略同一にし、切り欠き部182、186と切り欠き部183、187の間の長さはレンズA3のレンズ幅と略同一にし、切り欠き部183、187と切り欠き部184、188の間の長さはレンズA4のレンズ幅と略同一にする。
【0030】
作業者は、これらの切り欠き部181〜184、185〜188を遮蔽ガイド120の突起部131、132にはめることにより、遮光シート161を所望のレンズにより集光される赤外線を遮蔽する位置で固定させることができる。また、遮光シート162〜165も同様に切り欠き部を備える。
なお、上述した通り、遮光シートは弾性をもち、緩ませながら遮蔽ガイド120内をスライド移動することができる。そのため、遮光シートは緩ませることにより突起部に引っかからないようにスライド移動させ、切り欠き部を突起部にはめた状態で張り詰めることにより係止させることができる。
【0031】
また、遮光シート161の表面には、集光レンズアレイの各レンズを示す識別情報(以下、目視用識別情報と称する)が表示される。例えば図14に示すように、遮光シート161の集光レンズ101側の先端がレンズA1とレンズA2の境界に位置するときに、遮蔽ガイド120の突起部131の近傍となる位置に、赤外線が遮蔽されたレンズのうち、遮光シート161の集光レンズ101側の先端に最も近い位置にあるレンズの番号であるA1が目視用識別情報としてシルク印刷される。
さらに遮光シート161の表面には各境界線で囲まれた領域ごとに、レンズの番号A2、A3、A4が目視用識別情報として印刷される。したがって、各目視用識別情報が印刷される長手方向の間隔は、各切り欠き部が設けられる間隔または各境界線が印刷される間隔とおよそ一致する。
【0032】
上述した通り、作業者は、遮蔽ガイド120の突起部131を目印として遮光シートに印刷された番号を目視することにより、どのレンズが遮光シートにより赤外線を遮光している状態であるかを確認できる。
【0033】
また、遮光シート161の裏面には、各遮光シートで遮蔽されたレンズを検出部202で特定するための識別情報(以下、判定用識別情報と称する)が付されている。図15に赤外線センサ10において遮蔽ガイド120及び遮蔽ガイド120に配置された遮光シート161を赤外線センサ10の内側から見た模式図を示す。本実施形態では、図15に示すように、遮光シート161の裏面にそれぞれ反射率が異なる反射板175〜178が貼り付けられる。反射板175は、遮光シート161の集光レンズ101側の先端がレンズA1とレンズA2の境界に位置するときに、反射面が遮蔽ガイド120の内側窓125を介して露出するように貼り付けられる。同様に、反射板176、177、178は、遮光シート161の集光レンズ101側の先端が、それぞれレンズA2とレンズA3の境界、レンズA3とレンズA4の境界、レンズA4とレンズA5の境界に位置するときに、反射面が内側窓125を介して露出するように貼り付けられる。各反射板が貼り付けられる長手方向の間隔は、各切り欠き部が設けられる間隔または各境界線が印刷される間隔と同様に、各レンズにおける遮光シート161がスライド移動する方向のレンズ幅に応じて定められる。つまり、反射板175の位置と反射板176の位置の間の長さは、レンズA2のレンズ幅と略同一にし、反射板176の位置と反射板177の位置の間の長さは、レンズA3のレンズ幅と略同一にし、反射板175の位置と反射板176の位置の間の長さは、レンズA4のレンズ幅と略同一にする。つまり、互いに隣接する二つの反射板は、その二つの反射板にそれぞれ対応する二つのレンズの相互の位置関係と同一の位置関係をもつように印刷される。反射板175〜178は、例えばガラス基材上にその基材と屈折率の異なる透明な薄膜を蒸着することにより形成され、各反射板は、後述する光源が放射する光の波長に対して異なる反射率を有するように薄膜の膜圧が変えられている。この反射板毎に異なる反射率が、遮光されたレンズを特定するための判定用識別情報として用いられる。
【0034】
図1に戻って、検出部20は、遮光シートに付された判定用識別情報を取得して遮光シートがスライド移動されている位置を検出することにより、赤外線センサ10において遮光シートにより赤外線が遮光されたレンズを特定する。そのために、検出部20は、遮光シートに付された判定用識別情報を取得して、赤外線が遮蔽されたレンズをその判定用識別情報から検出する。そのために検出部20は、シート情報取得部21と、遮蔽レンズ検出部22とを有する。
【0035】
シート情報取得部21は、各遮光シートに対応して複数備えられ、それぞれ、各遮蔽ガイドの各内側窓に対向する位置に備えられ、各遮光シートに付された判定用識別情報を取得する。各シート情報取得部21は同様の機能を有するので、以下では、代表して遮蔽ガイド120の内側窓125に対向する位置に備えられたシート情報取得部21について説明する。
図15に示すように、本実施形態のシート情報取得部21は、光源141と、レンズ142と、受光素子143とを有する。光源141は、例えばLEDなどの光源であり、内側窓125に向けて光を放射するようにセンサ本体11に取り付けられる。光源141から放射された光は、反射板175〜178の何れかが内側窓125に位置するときに、内側窓125に位置する反射板により反射される。レンズ142及び受光素子143は、内側窓125に位置する反射板により、光源141から放射された光が入射する入射角1501と同じ反射角1502で反射された光を集光及び受光する位置に配置される。受光素子143は、例えばフォトダイオードなどを有し、受光した光をその強度に応じた電気信号に変換し、遮蔽レンズ検出部22に出力する。
【0036】
遮蔽レンズ検出部22は、監視処理部80からの要求にしたがって、遮光シートにより赤外線が遮蔽されたレンズを検出する。この遮蔽レンズ検出部22は、組み込み型のマイクロプロセッサユニットとその周辺回路を有し、例えば、マイクロプロセッサユニット上で動作するプログラムの機能モジュールとして実装される。
記憶部40には、予め、判定用識別情報と遮蔽されたレンズとの対応関係を示す識別情報テーブルが記憶されている。具体的には、光源141から放射された光を内側窓125に各反射板が位置する状態で反射させたときに受光素子143が受光した光の強度に応じて出力する電気信号の信号レベルの範囲が、各反射板が特定するレンズの番号、あるいは、そのとき遮光シートによって遮蔽されているレンズの番号と対応付けられたテーブルとして記憶される。遮蔽レンズ検出部22は、監視処理部80から遮光シートにより赤外線が遮蔽されたレンズの検出要求を受けると、受光素子143から出力された電気信号を取得する。そして遮蔽レンズ検出部22は、記憶部40に記憶されたテーブルを用いて受光素子143が出力した電気信号の信号レベルが含まれる範囲を特定し、対応するレンズ番号を判別する。そして遮蔽レンズ検出部22は、判定したレンズの番号を遮蔽レンズ情報として監視処理部80に出力する。
【0037】
図1に戻って、撮像部30は、侵入物体を検出する監視領域を撮影した監視画像を取得する。そのために、撮像部30は、CCD、C−MOSセンサなどの光電変換器で構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に監視領域の像を結像する結像光学系と、2次元検出器から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換する電気回路などで構成される。また撮像部30は、NTSCタイプのカメラでもよく、あるいはハイビジョン対応などの高解像度タイプのデジタルカメラでもよい。撮像部30は、一定の時間間隔(例えば1/5秒)ごとに撮影を行って監視画像を取得し、その監視画像を監視処理部80へ送信する。
監視画像は、例えば、横340画素×縦240画素を持ち、各画素が0〜255の画素値を有するデジタル画像データとして表現される。なお、撮像部30は、監視画像をカラー画像として作成してもよい。
本実施形態の侵入物体検出装置1では、撮像部30が撮像する監視領域には赤外線センサ10が侵入物体を検知する検知エリアが含まれるような位置関係で、赤外線センサ10と撮像部30は配置される。
【0038】
記憶部40は、フラッシュメモリ(登録商標)などの不揮発性半導体メモリ、揮発性半導体メモリ、磁気ディスク(HDD)、またはCD−ROM、DVD−RAMなどの光ディスクドライブおよびその記録媒体で構成される。そして記憶部40は、監視処理部80上で実行されるプログラム、そのプログラムにより使用される各種設定パラメータ、各種処理の結果あるいは途中結果として得られた計算値または画像などを記憶する。そして記憶部40は、監視処理部80からの制御信号にしたがって、上記の計算値または画像などを記憶し、あるいは記憶している各種の情報を監視処理部80へ出力する。また、記憶部40には、無監視検知ゾーンとして設定すべき検知ゾーンに対応する、赤外線を遮蔽すべきレンズの番号が記憶される。また記憶部40には、前述したように、各反射板による反射光の強度と遮蔽しているレンズ番号とを対応付けた識別情報テーブルが記憶される。さらに記憶部40には、撮像部30による撮像画像と赤外線センサ10の検知エリアとの位置関係が記憶される。具体的には、撮影画像上への各検知ゾーンの投影像の位置を記憶する。
【0039】
操作部50は、キーボード、マウス等の入力デバイスで構成され、操作者からの各種操作を受け付け、それらの操作に対応する信号を監視処理部80へ出力する。
【0040】
表示部60は、液晶ディスプレイなどの表示デバイスで構成され、監視処理部80から受け取った各種情報などを表示して、操作者へ報知する。
【0041】
なお各種操作の入力及び各種情報の表示は、PDA(Personal Digital Assistants)等の侵入物体検出装置1とは別の端末により実現してもよい。その場合、操作部50及び表示部60はPDA等の端末に備えられる。そして侵入物体検出装置1は、ユニバーサル・シリアル・バス等のインタフェース回路を備えておき、そのインタフェース回路を介してPDA等の端末と通信することにより、各種操作の入力及び各種情報の表示が可能となる。
【0042】
通信部70は、侵入物体検出装置1と外部の警備装置等との間でローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークを介して各種の設定信号及び制御信号などを送受信する入出力インタフェースであり、イーサネット(登録商標)などの各種の通信インタフェース回路及びそれらを駆動するドライバソフトウェアなどで構成される。
【0043】
監視処理部80は、組み込み型のマイクロプロセッサユニットとその周辺回路を有し、侵入物体検出装置1全体を制御する。侵入物体検出装置1は、監視領域、検知ゾーン等を設定するメンテナンスモードと、侵入者を監視する警備モードの二つの動作モードの何れかにより動作する。動作モードの切替は、操作部50を介して行われる。監視処理部80は、メンテナンスモードでは、監視領域のうち撮像部30の監視画像により侵入物体を検出しない領域(以下、無監視エリアと称する)と、赤外線センサ10の検知エリアにおいて侵入物体を検出しない検知ゾーン(以下、無監視検知ゾーンと称する)とを設定する。また、監視処理部80は、警備モードでは、撮像部30から受け取った監視画像と赤外線センサ10から受け取った検知レベル情報に基づいて監視領域内の侵入物体を検出して警報を発する。そのために、監視処理部80は、設定手段81と、判定手段82と、出力手段83と、異常監視手段84とを有する。このうち、設定手段81と、判定手段82と、出力手段83とは、メンテナンスモードにおいて使用され、一方、異常監視手段84は、警備モードにおいて使用される。監視処理部80が有するこれらの各部は、例えば、マイクロプロセッサユニット上で動作するプログラムの機能モジュールとして実装される。
【0044】
設定手段81は、メンテナンスモードにおいて、監視領域のうち撮像部30の監視画像により侵入物体を検出しない無監視エリアと、赤外線センサ10の検知エリアにおける無監視検知ゾーンとを設定する。
設定手段81は、作業者に無監視エリアを設定させるために、撮像部30から受け取った監視画像を表示部60に表示させる。図16に表示部60に表示される無監視エリアの設定画面の例を示す。図16において、画面1600は無監視エリアの設定画面であり、画面1600内の画像1601は、撮像部30が撮像した監視画像である。作業者は、例えば操作部50を用いて監視画像上の侵入物体を検出しない領域(以下、マスク領域と称する)の各頂点1602を指定する。設定手段81は、操作部50を介して監視画像上で指定された頂点の情報を受け取ると、その頂点で囲まれた領域をマスク領域1603として設定し、記憶部40に記録する。このマスク領域1603に対応する監視領域内の領域が無監視エリアとして定められる。
【0045】
そして設定手段81は、設定されたマスク領域に基づいて無監視検知ゾーンとする検知ゾーンを抽出する。侵入物体検出装置1は、検知エリア内の熱変化と、監視領域を撮影した監視画像から総合的に判断して侵入物体を検出する。そのため、赤外線センサ10の検知ゾーンのうち監視画像における投影像がマスク領域に含まれる検知ゾーンは、無監視検知ゾーンにすることが好ましい。そこで例えば設定手段81は、記憶部40を参照し、監視画像における検知ゾーンの投影像において、所定の割合以上(例えば、20〜100%)の領域がマスク領域に含まれる検知ゾーンを無監視検知ゾーンとして抽出する。図17に、監視画像に検知ゾーンの投影像をオーバーレイさせた画像の例を示す。例えば所定の割合を50%とした場合、図17に示した監視画像1700においては、各検知ゾーンの投影像のうち50%以上の領域がマスク領域1701に含まれる検知ゾーンA1’、A2’、A3’、B1’が無監視検知ゾーンとして抽出される。あるいは、設定手段81は、監視画像における投影像の中心位置(すなわち最も検知感度の高い位置)がマスク領域内にある検知ゾーンを無監視検知ゾーンとして抽出してもよい。
【0046】
設定手段81は、作業者に無監視検知ゾーンを設定させる(検知エリアから外させる)ために、抽出した無監視検知ゾーンを表す画面を表示部60に表示させる。図18に無監視検知ゾーンを表す画面の例を示す。図18において、表示画面1800に示されるように、設定手段81は、各検知ゾーンA1’〜A7 ’、B1’〜B7 ’、C1’〜C3 ’のうち、無監視検知ゾーンとして抽出したA1’、A2’、A3’、B1’にハッチングをすることにより、検知エリアから外すべき検知ゾーンを作業者に指し示す。さらに設定手段81は、無監視検知ゾーンとして抽出した検知ゾーンに対応する、赤外線を遮蔽すべきレンズの番号(以下、対象レンズ情報と称す)を記憶部40に記憶する。
【0047】
作業者は、遮光シートを操作してレンズ面へスライド移動させ、所望の検知ゾーンを無監視設定する。そして、作業者は、無監視検知ゾーンの設定が完了すると、無監視検知ゾーンの設定完了を操作部50を用いて侵入物体検出装置1に通知する。設定手段81は、操作部50を介して無監視検知ゾーンの設定完了の通知を受け取ると、遮光シートにより赤外線が遮蔽されたレンズの検出要求を遮蔽レンズ検出部22に送る。
【0048】
判定手段82は、遮蔽レンズ検出部22から遮蔽レンズ情報を受け取ると、受け取った遮蔽レンズ情報と、記憶部40に記憶された対象レンズ情報とが一致するか否かを判定する。そして判定手段82は、その判定した結果を、すなわち遮蔽レンズ検出部22から取得した遮蔽レンズ情報と、記憶部40に記憶された対象レンズ情報とが一致するか否かを、結果情報として出力手段83に出力する。また、判定手段82は、遮蔽レンズ検出部22から取得した遮蔽レンズ情報で特定される遮蔽されたレンズ番号と、記憶部40に記憶された遮蔽すべきレンズの番号とが一致していない場合、その一致していないレンズの番号も結果情報に含めてもよい。
【0049】
出力手段83は、判定手段82から結果情報を取得すると、取得した結果情報を表示部60に表示させ、作業者に報知する。あるいは、結果情報をPDA等の侵入物体検出装置1とは別の端末に表示する場合は、出力手段83は、ユニバーサル・シリアル・バス等のインタフェース回路を介してPDA等の端末に結果情報を送信する。
【0050】
図19(a)、(b)に、赤外線センサ10の遮光シート161をスライド移動させてレンズA1とA2について赤外線を遮蔽する場合の例を示す。図19(a)は、遮蔽ガイド120及び遮蔽ガイド120に配置された遮光シート161を赤外線センサ10の外側から見た模式図であり、図19(b)は、遮蔽ガイド120及び遮蔽ガイド120に配置された遮光シート161を赤外線センサ10の内側から見た模式図である。図19(a)に示すように、作業者は、境界線172を遮蔽ガイド120の端部152に合わせるように遮光シート161をスライド移動させることにより、遮光シート161の先端をレンズA2とレンズA3の境界まで移動させることができる。このとき、図19(a)に示すように、突起部131の近傍には番号A2が表示される。作業者は、突起部131を目印として番号A2を目視することにより、レンズA2と、レンズA2より遮蔽ガイド120側にあるレンズA1が遮光シートにより赤外線を遮光している状態であることを確認できる。一方、図19(b)に示すように、内側窓125の位置にはレンズA2に対応する反射板176が配置される。光源141から放射された光は、内側窓125に位置する反射板176により反射され、レンズ142で集光されて受光素子143で受光される。受光素子143は、反射板176による反射光の強度に応じた電気信号を生成し、遮蔽レンズ検出部22に出力する。遮蔽レンズ検出部22は、受光素子143が出力した電気信号の信号レベルが反射板175〜178のうちのどの反射板の反射率に相当する範囲に入っているかを判別する。これにより、遮蔽レンズ検出部22は、受光素子143が受光した光を反射させた反射板、すなわち内側窓125に位置する反射板が反射板176であると判定することができる。そして遮蔽レンズ検出部22は、反射板176に対応するレンズA2とレンズA2より遮蔽ガイド側にあるレンズA1の番号を遮蔽レンズ情報として判定手段82に出力する。これにより判定手段82は、レンズA1とレンズA2について赤外線が遮蔽され、レンズA1とレンズA2に対応する検知ゾーンが無監視検知ゾーンに設定されたことを認識できる。
同様に、遮光シート161の集光レンズ101側の先端がレンズA3とレンズA4の境界に位置するとき、遮蔽レンズ検出部22は、内側窓125に反射板177が位置すると判定して、レンズA1〜レンズA3の番号を遮蔽レンズ情報として判定手段82に出力する。また、遮光シート161の集光レンズ101側の先端がレンズA4とレンズA5の境界に位置するとき、遮蔽レンズ検出部22は、内側窓125に反射板178が位置すると判定して、レンズA1〜レンズA4の番号を遮蔽レンズ情報として判定手段82に出力する。
【0051】
以下に図20に示したフローチャートを参照しつつ、侵入物体検出装置1によって制御されるメンテナンスモード時の処理について説明する。なお、以下に説明する処理は、作業者が操作部50を用いて、警備モードからメンテナンスモードへの切換操作を行い、設定手段81がそれらの操作に対応する信号を操作部50から受け取ったタイミングで実行される。
【0052】
設定手段81は、まず、作業者に無監視エリアを設定させるために、撮像部30から受け取った監視画像を表示部60に表示させる。監視画像が表示部60に表示されると、操作部50はマスク領域の各頂点の指定を受け付ける(ステップS2001)。作業者によって監視画像上のマスク領域の各頂点が指定され、操作部50を介してその情報を取得すると、設定手段81は、取得した情報からマスク領域を設定する。そして設定手段81は、設定したマスク領域に基づいて無監視検知ゾーンを抽出する(ステップS2002)。そして、無監視検知ゾーンに対応するレンズの番号を遮蔽すべき対象レンズ情報として記憶する(ステップS2003)。設定手段81は、無監視検知ゾーンを抽出すると、抽出した無監視検知ゾーンを表す画面を表示部60に表示させる(ステップS2004)。
【0053】
無監視検知ゾーンを表す画面が表示部60に表示されると、操作部50は、無監視検知ゾーンの設定完了の通知を受け付ける(ステップS2005)。作業者は、表示部60に表示された無監視検知ゾーンを表す画面に基づいて遮光シート161〜166をスライド移動させて無監視検知ゾーンに対応するレンズについて赤外線を遮蔽し、無監視検知ゾーンの設定完了を操作部50を用いて侵入物体検出装置1に通知する。設定手段81は、操作部50を介して無監視検知ゾーンの設定完了の通知を受け取ると、遮光シートにより赤外線が遮蔽されたレンズの検出要求を遮蔽レンズ検出部22に送る。遮蔽レンズ検出部22は、遮光シートにより赤外線が遮蔽されたレンズの検出要求を受け取ると、各受光素子から出力された電気信号を取得して記憶されたテーブルに照らし遮蔽されたレンズ番号を特定し、遮蔽レンズ情報として判定手段82に出力する(ステップS2006)。
【0054】
判定手段82は、遮蔽レンズ検出部22から遮蔽レンズ情報を取得すると、遮蔽レンズ検出部22から取得した遮蔽レンズ情報と、記憶部40に記憶された赤外線を遮蔽すべき対象レンズ情報とが一致するか否かを判定する(ステップS2007)。そして判定手段82は、その判定した結果を結果情報として出力手段83に出力する。出力手段83は、判定手段82から取得した結果情報を表示部60に表示させる(ステップS2008)。
【0055】
図1に戻って、異常監視手段84は、警備モードにおいて、撮像部30から受け取った監視画像と赤外線センサ10から受け取った検知レベル情報に基づいて監視領域内に侵入した侵入物体を検出する。そして異常監視手段84は、侵入物体を検出すると侵入物体検出信号を通信部70を介して外部の警備装置等へ送信する。
【0056】
以下に図21に示したフローチャートを参照しつつ、侵入物体検出装置1によって制御される警備モード時の処理について説明する。なお、以下に説明する処理は、異常監視手段84が撮像部30から監視画像を受け取ったタイミングで実行される。また警備モード時、赤外線センサ10は、検知レベル情報を定期的に異常監視手段84へ送信しているものとする。また以下では、異常監視手段84が侵入物体として侵入者(人物)を検出する場合を例に説明する。
【0057】
異常監視手段84は、撮像部30によって時間的に連続して取得された複数の監視画像から、フレーム間差分処理または背景差分処理を利用して、輝度値変化のある変化領域を抽出する。そして異常監視手段84は、変化領域を抽出すると、所定の大きさ以上の変化領域が抽出されたか否かを判定する(ステップS2101)。なお、例えば、この所定の大きさは、人と、虫などの小動物や画像ノイズとを区別できるように、監視領域内の人を実際に撮像する実験により定められた、人が写っている変化領域の最小の大きさに設定される。
【0058】
異常監視手段84は、所定の大きさ以上の変化領域が抽出されると、その変化領域が無監視エリア内に存在するか否かを判定する(ステップS2102)。そして異常監視手段84は、変化領域が無監視エリア外に存在すると判定した場合、その変化領域について人である確かさの度合いを示す評価値Eを算出する(ステップS2103)。本実施形態では、評価値Eは、変化領域の大きさを表す特徴量f1及び変化領域の縦横比を表す特徴量f2に基づいて算出される。特徴量f1は、変化領域に含まれる画素数であり、特徴量f2は、変化領域の外接矩形の幅と高さの比率である。異常監視手段84は、特徴量f1及びf2を算出すると、各特徴量が人の身長及び体格に基づいて定められる値に近いほど1に近くなり、その値から離れるほど0に近くなるように各特徴量を正規化した正規化値F1及びF2を求める。そして異常監視手段84は、正規化値F1及びF2を乗算した値を評価値Eとする。なお、この例に限らず、異常監視手段84は、画像上の所定の領域について人である確かさの度合いを示す評価値を算出するための様々な公知の方法で算出した評価値を評価値Eとして利用してもよい。
【0059】
異常監視手段84は、変化領域について評価値Eを算出すると、評価値Eが基準値E0以上であるか否かを判定する(ステップS2104)。基準値E0は、変化領域が侵入者によるものであることを監視画像のみから判別するための閾値であり、例えば、監視画像に基づいて実際に侵入者を検知する実験により定められた、変化領域が侵入者によるものであることを示す値の下限値に設定される。
そして異常監視手段84は、評価値Eが基準値E0以上である場合、変化領域は侵入者によるものである、すなわち侵入異常が発生したと判定し(ステップS2107)、侵入物体検出信号を通信部70を介して外部の警備装置等へ送信する(ステップS2108)。
【0060】
一方、異常監視手段84は、評価値Eが基準値E0未満である場合、評価値Eが基準値E1以上であるか否かを判定する(ステップS2105)。基準値E1は、変化領域が侵入者によるものでないことを監視画像のみから判別するための閾値であり、例えば、監視画像に基づいて実際に侵入者を検知する実験により定められた、変化領域が侵入者によるものでないことを示す値の上限値に設定される。この基準値E1は、基準値E0より低い値に設定される。異常監視手段84は、評価値Eが基準値E1未満である場合、変化領域が侵入者によるものでないと判定し、制御をステップS2101へ戻す。
【0061】
一方、評価値Eが基準値E1以上である場合、変化領域が侵入者によるものであるか否かを監視画像のみからでは判断できないため、異常監視手段84は、検知エリア内の熱変化に基づいて変化領域が侵入者によるものであるか否かを判定する。無監視エリアに含まれる検知ゾーンは無監視検知ゾーンに設定されるため、異常監視手段84は、無監視エリア(無監視検知ゾーン)に存在する人物、物体等の影響を受けることなく、変化領域が侵入者によるものであるか否かを判定できる。
従って、評価値Eが基準値E1以上である場合、赤外線センサ10から最も新しく送信された検知レベルPが所定の閾値Th以上であるか否かを判定する(ステップS2106)。なお、閾値Thは、実験または経験的に、検知レベルPが検知エリアに侵入物体が存在することを示す値に設定される。つまり検知レベルPが閾値Th以上である場合、検知エリアから放射される熱線に基づいて検知エリア内に侵入者が存在する可能性が高いと判断できる。異常監視手段84は、検知レベルPが所定の閾値Th未満である場合、変化領域が侵入者によるものでないと判定し、制御をステップS2101へ戻す。
【0062】
一方、異常監視手段84は、検知レベルPが所定の閾値Th以上である場合、変化領域は侵入者によるものである、すなわち侵入異常が発生したと判定し(ステップS2107)、侵入物体検出信号を通信部70を介して外部の警備装置等へ送信する(ステップS2108)。
【0063】
以上説明してきたように、本発明の一実施形態による赤外線センサは、各検知ゾーンから放射された赤外線を集光レンズアレイの、その検知ゾーンに対応するレンズにより集光して焦電素子で受光する。この赤外線センサは、集光レンズアレイの何れかのレンズにより集光される赤外線を遮蔽する位置に配置することが可能な、赤外線を遮蔽する遮光シートを備え、作業者は遮光シートにより特定のレンズについて赤外線を遮蔽することができる。そして赤外線センサは、遮光シートにより赤外線が遮蔽されたレンズを検出し、検出したレンズの番号が予め記憶部に記憶された赤外線を遮蔽すべきレンズの番号と一致するか否かを判定して、判定した結果を表示装置に表示させる。これにより作業者は、無監視検知ゾーンが正しく設定されているか否かを適切に確認することができる。
【0064】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば本実施形態では、遮光シートに反射率の異なる反射板を複数貼り付けて、その反射板による反射光の強度で赤外線が遮蔽されたレンズを検出する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、赤外線センサは、遮光シートに反射板を貼り付ける代わりに、一次元または二次元のバーコードを表示し、そのバーコードにより赤外線が遮蔽されたレンズを検出してもよい。その場合、遮光シートの裏面には、遮光シートの集光レンズ側の先端が各レンズの境界に位置するときに、遮蔽ガイドの窓と合う位置に、その先端の位置より遮光シートが配置される遮蔽ガイド側にある全てのレンズを示すバーコードが印刷又は貼り付けられる。そして赤外線センサは、遮蔽ガイドの内側窓に対向する位置に、遮光シートに表示されたバーコードを読み取るためのバーコードリーダを備える。このバーコードリーダは、読み取ったバーコードに示されるレンズの番号を遮蔽レンズ情報として監視処理部の判定手段に出力する。つまりこの場合、判定用識別情報は各バーコードとなり、検出部はバーコードリーダとなる。
【0065】
または、判定用識別情報として文字、記号、パターン等の表示を用いてもよい。この場合、検出部としてOCR装置を用いる。
そのほか、判定用識別情報としてRFIDタグ(Radio Frequency IDentification Tag)を、検出部としてRFIDタグリーダ装置を適用することも可能である。
【0066】
また、赤外線センサは、遮蔽ガイドの係止手段と、遮光シートの切り欠き部の係合状態により赤外線が遮蔽されたレンズを検出してもよい。図22に、遮蔽ガイドの係止手段と遮光シートの切り欠き部の係合状態により赤外線が遮蔽されたレンズを検出する例を説明するための模式図を示す。図22に示すように、遮光シート2210の各切り欠き部2211〜2214は、それぞれ溝の深さが異なるように設けられる。一方、遮蔽ガイド2200には、一端が遮蔽ガイドの上端に取り付けられて遮光シートのスライド方向と直交する方向(鉛直方向)に伸縮するコイルばね2202が取り付けられる。コイルばね2202の他端には、射出成形された樹脂などからなり、略直方体の形状を有する係止部材2201が取り付けられる。この係止部材2201は、コイルばね2202によって付勢され、遮光シート2210の係止手段として機能する。一方、係止部材2201の近傍には、係止部材2201のコイルばね2202側の端部の鉛直方向の位置を検出する、接触式、光学式又は超音波式の公知の位置検出センサ2203が備えられる。この係止部材2201をコイルばね2202側に付勢させることにより遮光シート2210をスライド移動させることができ、各切り欠き部2211〜2214に係合させることにより、遮光シート2210を係止させることが可能となる。そのときの係止部材2201の鉛直方向の位置は、係合する切り欠き部2211〜2214によって変わる。そのため、位置検出センサ2203は、係止部材2201の鉛直方向の位置を示す情報を遮蔽レンズ検出部に出力する。記憶部には、予め、各切り欠き部2211〜2214に係合させたときの係止部材2201の鉛直方向の位置の情報が、各切り欠き部ごとに記憶される。そして遮蔽レンズ検出部は、位置検出センサ2203が出力した情報に示される位置がどの切り欠き部に係合している係止部材2201の位置に対応するかを判別することにより、係止部材2201に係合されている切り欠き部を判定する。そして遮蔽レンズ検出部は、その切り欠き部に対応するレンズより遮蔽ガイド側にある全てのレンズの番号を遮蔽レンズ情報として判定手段に出力する。つまりこの場合、各切り欠き部の溝の深さが判定用識別情報となり、係止部材及び位置検出センサがシート情報取得部を構成する。
【0067】
または、赤外線センサは、遮光シートの移動量に基づいて赤外線が遮蔽されたレンズを検出してもよい。その場合、検出部は、平歯車とその平歯車の回転量を測定するための、磁気式又は光学式の公知の回転検出センサを備える。この平歯車は、遮蔽ガイドの内側(赤外線センサの内側)に、回転軸が鉛直方向を向き、円筒面が遮蔽ガイドに接するように配置される。一方、遮光シートの裏面は平歯車の歯面と係合するようにラック形状に形成される。回転検出センサは、遮光シートがスライド移動されたときに測定した平歯車の回転量を遮蔽レンズ検出部に出力する。記憶部には、予め、遮光シートの集光レンズ側の先端が各レンズの境界に位置するときの平歯車の回転量が記憶される。そして遮蔽レンズ検出部は、回転検出センサが出力した回転量から遮光シートがどれだけスライド移動したかを判別することにより、遮光シートの集光レンズ側の先端の位置を判定する。そして遮蔽レンズ検出部は、その先端の位置より遮蔽ガイド側にある全てのレンズの番号を遮蔽レンズ情報として判定手段に出力する。つまりこの場合、平歯車の回転量が判定用識別情報となり、ラック、平歯車及び回転検出センサがシート情報取得部を構成する。
【0068】
なお、上記実施形態において遮蔽レンズ検出部22は、監視処理部80上で動作するプログラムの機能モジュールとして実装されてもよい。その場合、遮蔽レンズ検出部22は、マイクロプロセッサユニットとその周辺回路を有さず、監視処理部80が有するマイクロプロセッサユニットにより実行される。
また、検出部20、記憶部40、操作部50、表示部60、通信部70並びに監視処理部80の設定手段81、判定手段82及び出力手段83は、赤外線センサ10内に備えるようにしてもよい。これにより、赤外線センサ10を単体で使用する場合でも、本発明を適用することができる。
【0069】
また、本実施形態では、集光レンズを用いたPIRセンサの例を示したが、本発明は、例えば反射型のPIRセンサにも適用できる。
図24に反射型の赤外線センサの模式図を示す。反射型の赤外線センサ2400は、集光ミラー2401、焦電素子2402及び透過カバー2403を有する。反射型の赤外線センサを用いる場合も、検知エリアは、各々離間した複数の検知ゾーンによって構成される。集光ミラー2401は、複数のミラーからなる集光ミラーアレイであり、各ミラーは、対応する検知ゾーンから放射された赤外線を焦電素子2402に集光するようにアライメント調整される。一方、カバー2403は、赤外線を透過する樹脂等の材料で形成され、赤外線センサ2400は、カバー2403を透過してきた各検知ゾーンからの赤外線2410、2411を、その検知ゾーンに対応するミラーにより集光して焦電素子2402で受光する。これにより、赤外線センサ2400は、各検知ゾーンにおける熱エネルギーの時間的な変化を検出する。
【0070】
赤外線センサ2400では、検知ゾーンから放射された赤外線を適宜遮光するために、カバー2403について各ミラーに対応する複数の面領域を定めておく。各面領域は、対応するミラーで集光する赤外線の光束が透過する領域であり、赤外線センサ2400の正面(検知エリア側)からみて水平方向及び垂直方向に区分して定められる。例えば、遮光すべきミラーで集光する赤外線が透過するカバー2403上の領域が、隣接するミラーで集光する赤外線が透過するカバー2403上の領域と一部が重なる場合でも、その遮光すべきミラーで集光する赤外線の光束が通る部分全体を遮蔽するように面領域は定められる。
【0071】
そして集光レンズを用いた赤外線センサで用いられる遮光シート、遮蔽ガイド及び検出部は、集光レンズをカバー2403に置き換え、集光レンズアレイの各レンズをカバー2403の各面領域に置き換えることにより、反射型の赤外線センサ2400に適用することができる。なお、遮光シートの裏面には、各ミラーを特定するための判定用識別情報が付される。各判定用識別情報は、遮光シートのカバー2403側の先端が特定の面領域を通る赤外線を遮光する位置にあるときに、その特定の面領域に対応する判定用識別情報が内側窓に合うように付される。そのために、互いに隣接する二つの判定用識別情報は、それぞれ対応する二つのミラーに対応する二つの面領域の位置関係に対応した位置関係をもつように配置される。一方、検出部は、遮光シートにより赤外線が遮蔽されている面領域のうち、その遮光シートのカバー2403側の先端に最も近い面領域に対応する判定用識別情報を取得するように配置される。そして検出部は、取得した判定用識別情報で特定されるミラーに対応する面領域から遮蔽ガイド側にある面領域にそれぞれ対応するミラーを、赤外線が遮蔽されたミラーとして検出する。これにより、反射型のPIRセンサに本発明を適用することができ、集光レンズを用いたPIRセンサの場合と同様の効果を得ることができる。
【0072】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0073】
1 侵入物体検出装置
10 赤外線センサ
20 検出部
21 シート情報取得部
22 遮蔽レンズ検出部
30 撮像部
40 記憶部
50 操作部
60 表示部
70 通信部
80 監視処理部
81 設定手段
82 判定手段
83 出力手段
84 異常監視手段
101 集光レンズ
103 焦電素子
104 信号処理部
120 延長部分、遮蔽ガイド
141 光源
142 レンズ
143 受光素子
161〜166 遮光シート
2300 赤外線センサ
2301 焦電素子
2302 集光ミラー
2303 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検知ゾーンから放射される赤外線に応じて侵入物体を検出する赤外線センサであって、
前記複数の検知ゾーンから放射される赤外線を各検知ゾーンにそれぞれ対応して設けた複数の集光素子により集光する集光部材と、
前記集光部材により集光した赤外線を受光する受光素子と、
赤外線を遮蔽する材料で形成され、前記複数の集光素子の何れかにより集光される赤外線を遮蔽する位置に配置可能な遮光部材と、
前記複数の集光素子のうち前記遮光部材により赤外線を遮蔽すべき対象集光素子を記憶する記憶部と、
前記複数の集光素子のうち前記遮光部材により赤外線が遮蔽された遮蔽集光素子を検出する検出部と、
前記検出部により検出された遮蔽集光素子と前記記憶部に記憶された対象集光素子とが一致するか否かを判定する判定手段と、
前記判定した結果を表示部に表示させる出力手段と、
を有することを特徴とする赤外線センサ。
【請求項2】
前記集光部材は、第1の方向において複数の集光素子を備え、
前記遮光部材は、短冊状に形成され、前記集光部材の一面に沿って前記第1の方向にスライド移動可能に配置され、前記複数の集光素子のうち、前記遮光部材の先端から前記集光部材の前記第1の方向における一端までの間に位置する集光素子を遮蔽し、
前記検出部は、前記スライド移動された前記遮光部材の位置を検出して前記遮蔽集光素子を判別する、請求項1に記載の赤外線センサ。
【請求項3】
前記検出部は、前記遮光部材に付された判定用識別情報を取得して前記遮蔽集光素子を判別し、
前記遮光部材には、前記集光部材の一面に、スライド移動された状態で前記検出部と対向する位置に遮蔽している集光素子を示す判定用識別情報が面するように、前記判定用識別情報が設けられる、請求項2に記載の赤外線センサ。
【請求項4】
前記遮光部材は、前記判定用識別情報として前記複数の集光素子のそれぞれに対応した異なる反射率をもつ複数の反射板を有し、
前記検出部は、前記対向する位置にある前記反射板に向けて光を放射するとともに反射光を受光し、受光した反射光量に基づいて前記遮光部材の位置を検出して前記遮蔽集光素子を判別する、請求項3に記載の赤外線センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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