説明

赤外線体温計

【課題】 人体の体温を赤外線センサを用いて、距離に左右されない正確な体温を測定できる赤外線体温計を提供する。
【解決手段】 グラウンド電極5と電極S7からなる近接センサが人体に近接するときの静電容量を測定し、予め記憶されている近接センサの人体接触時の所定の静電容量と前記近接センサで測定した静電容量を比較し、この測定した静電容量が前記所定の静電容量になったとき、センサ本体が人体に接触したときであると判定し、このときにおける赤外線センサ3からの赤外線量を測定し、この測定した赤外線量に基づく体温を算出し、液晶表示器に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサを用いて体温を測定する赤外線体温計に関する。
【背景技術】
【0002】
体温を測定する体温計として赤外線センサを用いたものは、体温を迅速に測定できるため、泣き易かったり、寝ていたり、じっとしていないような幼児や乳児などの体温を測定するのに非常に有効である。
【0003】
赤外線センサは、人体の皮膚などの測定対象部から放射される赤外線の量を測定して、測定対象部の温度、すなわち体温を測定するものであるが、赤外線は、距離の二乗に反比例して減衰するので、赤外線センサと測定対象部との間の距離を正確に測ったり、または測定対象部との間の距離を一定にして、赤外線の量を測定することが要求される。
【0004】
そこで、従来、赤外線センサと測定対象部との間の距離の設定または測定は、測定者が「だいたい何センチに合わせる」とか、「光のマークを合わせる」などで行うため、測定者の技量に頼るところが大であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−342376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来は、赤外線センサと測定対象部との間の距離の設定または測定は、測定者が「だいたい何センチに合わせる」とか、「光のマークを合わせる」などとして行うものであったため、赤外線センサと測定対象部との間の距離に誤差が多く発生し、正確な体温を測定することが困難であった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、測定対象部との間の距離に左右されること無く、かつ正確な体温を測定できる赤外線体温計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、請求項1記載の赤外線体温計は、赤外線センサを用いて、体温を測定する赤外線体温計であって、赤外線センサを内蔵するセンサ本体が人体に接触したと判定する接触判定手段と、この接触判定手段によってセンサ本体が人体に接触したと判定したときにおける赤外線センサからの赤外線の量を測定する赤外線量測定手段と、この赤外線量測定手段で測定した赤外線の量に基づく体温を算出する体温算出手段とを有することを要旨とする。
【0009】
請求項1記載の赤外線体温計では、赤外線センサを内蔵するセンサ本体が人体に接触したと判定したときにおける赤外線センサからの赤外線の量を測定し、この測定した赤外線の量に基づく体温を算出するため、体温測定で例えば顔を背けて嫌がったり、体温計などの物が触れると、反射的に顔を動かしたり、泣き易かったり、じっとしていないような幼児や乳児などの体温を測定するのに非常に有効であり、確実かつ簡単に失敗することなく幼児などの体温を測定することができる。
【0010】
請求項2記載の赤外線体温計は、前記接触判定手段が、前記センサ本体が人体に近接するときの静電容量を測定し、この静電容量に基づきセンサ本体と人体との間の距離を測定する近接センサと、前記センサ本体が人体に接触したときの所定の静電容量を予め記憶する記憶手段と、前記近接センサで測定した静電容量を前記所定の静電容量と比較し、この測定した静電容量が前記所定の静電容量になったとき、センサ本体が人体に接触したと判定する手段とを有することを要旨とする。
【0011】
請求項2記載の赤外線体温計では、センサ本体が人体に近接するときの静電容量を測定し、この測定した静電容量を予め記憶した所定の静電容量と比較し、この測定した静電容量が所定の静電容量になったとき、センサ本体が人体に接触したと判定するため、人体に接触したことを確実に検出して、体温を測定でき、例えば顔を背けて嫌がったり、泣き易かったり、じっとしていないような幼児や乳児などの体温を測定するのに非常に有効である。
【0012】
請求項3記載の赤外線体温計は、前記接触判定手段が、前記センサ本体が人体に近接する近接距離を測定する近接センサと、この近接センサで測定された近接距離が人体に比較的近づいた所定の距離以下になったとき、前記体温算出手段で算出された温度を監視する温度監視手段と、この温度監視手段で監視する温度が所定の温度付近になったときをセンサ本体が人体に接触したと判定する手段とを有することを要旨とする。
【0013】
請求項3記載の赤外線体温計では、近接距離が所定の距離以下になったとき、赤外線センサからの赤外線の量に基づいて算出された温度を監視し、この監視温度が所定の温度付近になったときをセンサ本体が人体に接触したと判定するため、人体に接触したときを確実に検出して、体温を測定でき、例えば顔を背けて嫌がったり、泣き易かったり、じっとしていないような幼児や乳児などの体温を測定するのに非常に有効である。
【0014】
請求項4記載の赤外線体温計は、前記所定の温度付近が、体温と考えられる温度であることを要旨とする。
【0015】
請求項4記載の赤外線体温計では、前記所定の温度付近が体温と考えられる温度であり、この所定の温度になったときをセンサ本体が人体に接触したと判定するため、極端な低体温や外気温であるような場合を除外すれば、検知温度が体温であると考えられたときが人体の皮膚に接触したときであると判定することは有効であり、これにより人体に接触したことを確実に検出して、体温を測定でき、例えば顔を背けて嫌がったり、泣き易かったり、じっとしていないような幼児や乳児などの体温を測定するのに非常に有効である。
【0016】
請求項5記載の赤外線体温計は、前記所定の距離が、5ミリメートル〜5センチメートルであることを要旨とする。
【0017】
請求項5記載の赤外線体温計では、前記所定の距離が5ミリメートル〜5センチメートルであるため、この所定の距離になったときから、温度を監視することは、体温測定の効率化のためにも有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、赤外線センサを内蔵するセンサ本体が人体に接触したと判定したときにおける赤外線センサからの赤外線の量を測定し、この測定した赤外線の量に基づく体温を算出するので、体温測定で例えば顔を背けて嫌がったり、体温計などの物が触れると、反射的に顔を動かしたり、泣き易かったり、じっとしていないような幼児や乳児などの体温を測定するのに非常に有効であり、確実かつ簡単に失敗することなく幼児などの体温を測定することができる。
【0019】
また、本発明によれば、センサ本体が人体に近接するときの静電容量を測定し、この測定した静電容量を予め記憶した所定の静電容量と比較し、この測定した静電容量が所定の静電容量になったとき、人体に接触したと判定するので、人体に接触したことを確実に検出して、体温を測定でき、例えば顔を背けて嫌がったり、泣き易かったり、じっとしていないような幼児や乳児などの体温を測定するのに非常に有効である。
【0020】
更に、本発明によれば、近接距離が所定の距離以下になったとき、赤外線センサからの赤外線の量に基づいて算出された温度を監視し、この監視温度が所定の温度付近になったときを人体に接触したと判定するので、人体に接触したときを確実に検出して、体温を測定でき、例えば顔を背けて嫌がったり、泣き易かったり、じっとしていないような幼児や乳児などの体温を測定するのに非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係わる赤外線体温計を示す斜視図である。
【図2】図1に示した赤外線体温計のカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示した赤外線体温計の後面、側面および前面をそれぞれ示す後面図、側面図および前面図である。
【図4】図1に示す赤外線体温計の回路の一部を示す回路図である。
【図5】図1に示した赤外線体温計に使用されている近接センサと測定対象部との間の距離に対する静電容量との関係を示すグラフである。
【図6】図1に示した赤外線体温計に使用されている発光ダイオード(LED)に流れる電流と調光状態を示す図である。
【図7】図1に示した赤外線体温計の全体の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための形態(以下、実施形態と称する)を説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係わる赤外線体温計を示す斜視図である。同図に示す赤外線体温計1は、若干縦型の樽状の形状に構成されることから、その中央の少し凹んだ部分などを指でつまみ易くなっている。そして、この凹部分をつまんで体温の測定対象部である例えば額の中央部などに接触させ、この接触したときの体温を測定するものであるが、このように接触したときの体温を測定するものであるので、従来のように人体との間の距離に左右されることなく、正確に体温を測定できるものである。
【0024】
図1に示す赤外線体温計1は、体温を測定するための赤外線センサ、および人体の測定対象部と当該赤外線体温計1の先端部分との間の距離を測定するための近接センサを有しているが、図1に示す赤外線体温計1のセンサ本体の前面側のほぼ中央部分、すなわち図1において右下方を向いた先端部分のほぼ中央部分は、すり鉢状に凹んで構成され、このすり鉢状部分の中心に赤外線センサ3が取り付けられている。そして、この赤外線センサ3の周囲に近接センサを構成するグラウンド電極5と電極S7(図2参照、図1及び図3(c)では電極S7の保護部である電極外装7aが示されている)が設けられ、人体などの測定対象部への赤外線センサ3の近接を適確に感知し得るようになっている。
【0025】
図2は、図1に示す赤外線体温計1のカバーを取り外した状態を示す斜視図であるが、図1に加えて、図2からも分かるように、赤外線センサ3の周囲のすり鉢状部分は、近接センサのグラウンド電極5を構成し、このグラウンド電極5の周囲のリング状の部分が近接センサの電極S7を構成している。従って、図1および図2に示す赤外線体温計1の赤外線センサ3や近接センサのグラウンド電極5と電極S7のある先端部分を人体に近づけると、この先端部分に設けられている近接センサで人体の測定対象部との間の距離を測定しながら、赤外線センサ3で人体からの赤外線を検出し、この検出した赤外線の量から体温を測定できるようになっている。
【0026】
なお、グラウンド電極5は、赤外線センサ3の周囲に設けられて、赤外線センサ3の温度安定と側面からの放射を反射するためのセンサーフレームを構成しているが、このセンサーフレームがグラウンド電極5の代わりとして用いられ、グラウンド電極5として十分な面積を確保している。
【0027】
図3(a)、(b)および(c)は、図1に示した赤外線体温計1の後面、側面および前面をそれぞれ示す後面図、側面図および前面図である。同図から分かるように、図3(a)に示す赤外線体温計1の後面には、体温を表示する液晶(LCD)からなる液晶表示器11が設けられ、この液晶表示器11の上側には、押圧面の広い電源スイッチ13が設けられている。この電源スイッチ13をオンに操作すれば、赤外線体温計1は作動して、体温を測定し、この測定した体温を液晶表示器11に表示するようになっている。
【0028】
また、図3(b)に示す赤外線体温計1の側面には、電池収納部15が設けられ、この電池収納部15に例えば1.5〜3ボルトのボタン電池等の電池を入れ蓋をビス留め等することにより、赤外線体温計1の電源として機能し作動可能になる。
【0029】
図4は、図1に示す赤外線体温計1の回路の一部を示す回路図である。同図に示す回路は、前記近接センサで検知された静電容量に基づき人体の測定対象部と近接センサのある赤外線体温計1の先端部分との間の距離を測定する測定回路の一部と赤外線体温計1での体温測定完了を示す告知機能および前記液晶表示器11の液晶用のバックライト用の回路の一部とを含んでいる。
【0030】
すなわち、近接センサを構成する電極S7とグラウンド電極5との間の静電容量は、近接センサが接近する人体の測定対象部と近接センサとの間の距離によって影響されて変化するが、この変化する電極S7とグラウンド電極5との間の静電容量を図4に示すように入力が抵抗R1に接続されたシュミットトリガCMOSインバータU1の入力に供給すると、このシュミットトリガCMOSインバータU1は、次式に示す発振周波数Fで発振する。
【0031】

F=1/(0.8×Cf×R1)

この式で、Cfは、近接センサを構成する電極S7とグラウンド電極5との間の静電容量と配線の浮遊容量を含んだ静電容量であって、上述したように近接センサが接近する人体の測定対象部と近接センサとの間の距離によって影響されて変化する静電容量であり、R1は、図4の抵抗R1の抵抗値である。
【0032】
このように発振周波数Fで発振するシュミットトリガCMOSインバータU1の出力信号Aは、後述するマイクロプロセッサを用いたマイクロコントローラ(以下、MCUと略称する)に供給され、このMCUで発振周波数Fが計数され、この計数値に基づき人体と赤外線体温計1の先端部分の近接センサとの間の距離が算出される。
【0033】
なお、近接センサが測定対象部である人体の皮膚、例えば額などに近くなったとき、例えば約5mm以内に近づいたときにおける前記静電容量Cは、近接センサの電極S7の面積に比例し、測定対象部である人体の皮膚などとの間の距離に反比例し、次式に近い値となる。
【0034】

C=εS/2t (F)

この式で、Sは、近接センサの電極の面積であり、tは、測定対象部である人体の皮膚などと近接センサとの間の距離であり、ε0は、比誘電率であり、空気中では1である。
【0035】
なお、近接センサが測定対象部である人体の皮膚などから離れると、近接センサの面としての働きは期待できず、静電容量は、極端に低下する。このときの近接センサの静電容量は、単に近接センサの電極の面積に比例するだけとなり、静電容量は、配線の浮遊容量と近接センサの電極の表面積の和となり、測定対象部である人体の皮膚などとの間の距離が変化しても静電容量は変化しない。
【0036】
図5は、上述した近接センサと測定対象部との間の距離に対する静電容量との関係を示す静電容量変化曲線のグラフである。同図に示すように、近接センサと測定対象部との間の距離が5mm以下になったとき、上式で示すように、静電容量は、近接センサの電極の面積に比例し、測定対象部との間の距離に反比例するが、近接センサが測定対象部から離れると、近接センサの面としての働きは期待できず、静電容量は極端に低下する。
【0037】
図4に戻って、上記発振周波数Fで発振するシュミットトリガCMOSインバータU1の出力信号Aは、上述したように、MCUに供給されて、測定対象部と近接センサとの間の距離が算出されることに加えて、電池収納部15に収納される電池の電圧である3ボルトを後述する体温測定完了の告知用の例えば青色の発光ダイオード(LED)を点灯させるための6ボルトの電圧に高めるための昇圧回路に供給される。
【0038】
すなわち、図4において、上記シュミットトリガCMOSインバータU1の出力信号Aは、MCU以外に、CMOSインバータU2に供給されて反転増幅され、電池の3ボルトの電圧Eの振幅と0ボルトとの間を交互に繰り返す矩形波信号となり、コンデンサC1に供給される。このコンデンサC1は、後段のショットキーダイオードD1を経由して、電池21の電圧Eのほぼ3ボルトに充電される。
【0039】
すなわち、CMOSインバータU2の出力が0ボルトであるとき、コンデンサC1の2側の端子が+の極性となり、コンデンサC1の1側の端子はーの極性となって、電圧Eの3ボルトがコンデンサC1に充電される。また、CMOSインバータU2の出力が電圧Eの3ボルトであるときには、コンデンサC1に充電された電圧がCMOSインバータU2の出力と直列に接続されるため、コンデンサC1の2側の端子には、3ボルトの電圧Eの2倍である6ボルトの電圧2E(電圧E×2=2E)が発生し、この6ボルトの電圧2EがショットキーダイオードD1を経由して、コンデンサC2に充電される。
【0040】
このようにコンデンサC2に充電された電圧2Eの6ボルトは、上述した体温測定完了の告知用の例えば青色の発光ダイオード(LED)D2に供給される。この発光ダイオードD2には、抵抗R2と調光用トランジスタQ1が直列に接続されていて、この抵抗R2で発光ダイオードD2に流れる電流が決められる。また、調光用トランジスタQ1のベースに供給されるMCUからの調光コントロール信号Bにより調光用トランジスタQ1は、オンーオフ制御され、オンのとき最大の明るさに制御される。
【0041】
すなわち、MCUからの調光コントロール信号Bによる調光用トランジスタQ1のオンーオフ制御により、発光ダイオードD2に流れる電流は、図6に示すように、制御され、同図に示すように、発光ダイオードD2に連続的に電流が流れたときの調光が最大となり、オンーオフ制御されたときの調光は1/3となり、電流が遮断されたときには、発光ダイオードD2は消灯し、調光は0となる。上記調光が1/3となるオンーオフ制御の繰り返し周期は、人間の目にちらつきを感じさせない例えば1.6mS以下に設定されている。なお、発光ダイオードD2は、液晶表示器11の液晶用のバックライトとしても使用されている。このバックライトとの併用のため、発光ダイオードD2は、上述したように、多段階に調光し得るようになっている。
【0042】
図7は、本実施形態の赤外線体温計1の全体の回路図であり、詳しくは、上述した近接センサで検知された静電容量に基づき人体の測定対象部と近接センサのある赤外線体温計1の先端部分との間の距離を測定する測定回路の一部と、赤外線体温計1での体温測定完了を示す告知機能および前記液晶表示器11の液晶用のバックライト用の回路の一部と、上述したMCUを含む本実施形態の赤外線体温計1の全体の回路図である。
【0043】
なお、図7において、近接センサで検知された静電容量に基づき人体の測定対象部と近接センサのある赤外線体温計1の先端部分との間の距離を測定する測定回路の一部は、近接センサ回路71として示され、赤外線体温計1での体温測定完了を示す告知機能および前記液晶表示器11の液晶用のバックライト用の回路の一部のための昇圧回路がバックライト/イルミネーション昇圧回路73として示されている。
【0044】
近接センサ回路71からの前記シュミットトリガCMOSインバータU1の出力信号Aは、MCU83に供給され、このMCU83で上述したように人体の測定対象部と近接センサのある赤外線体温計1の先端部分との間の距離が算出される。また、このMCU83からは、前記調光コントロール信号Bが出力されて、前記調光用トランジスタQ1に供給され、この調光用トランジスタQ1により抵抗R2を介して発光ダイオードD2を制御し、上述した調光制御および液晶表示器11を構成する液晶のバックライト制御を行うようになっている。なお、この発光ダイオードD2には、前記バックライト/イルミネーション昇圧回路73からの6ボルトに昇圧された電圧が供給されている。また、MCU83には、前記電源スイッチ13および3ボルトの電池21が接続されている。
【0045】
更に、前記赤外線センサ3は、複数の熱電対を直列接続して構成されるサーモパイル式のものが使用されているが、このサーモパイル式赤外線センサ3で測定された赤外線量は、アナログスイッチ77を介してOPアンプ79で増幅されてから、AD変換回路81でデジタル信号に変換されて、MCU83に供給されている。MCU83は、上述したように、この赤外線センサ3からのデジタル信号に基づき体温、すなわち人体の測定対象部の体温を算出し、この算出した体温を液晶表示器11に表示するようになっている。
【0046】
また、MCU83には、体温測定完了を示す告知機能として、前記青色の発光ダイオードD2以外に、ブザー87を有するが、このブザー87が抵抗89を介したMCU83に接続され、MCU83の制御により鳴動して体温測定完了を知らせるようになっている。
【0047】
次に、以上のように構成される赤外線体温計の作用について説明する。
【0048】
まず、赤外線体温計1の電源スイッチ13をオンに操作し、電池収納部15内の3ボルトの電池21から動作電圧を赤外線体温計1に供給すると、赤外線体温計1の赤外線センサ3およびグラウンド電極5と電極S7からなる近接センサが作動開始するが、このとき、図1に示すように、樽状の赤外線体温計1の電池収納部15のある凹んだ胴体部分を指などでつまんで、この赤外線体温計1の先端部分を人体の例えば額などである測定対象部に向けて近づけていくと、この先端部分にある近接センサのグラウンド電極5と電極S7との間の静電容量に基づきMCU83が測定対象部と近接センサとの間の距離を監視する。
【0049】
更に具体的には、近接センサは、測定対象部と近接センサとの間の距離で変化する電極S7とグラウンド電極5との間の静電容量に従って近接センサ回路71内のシュミットトリガCMOSインバータU1の発振周波数Fが変化するので、この発振周波数の変化するシュミットトリガCMOSインバータU1の出力信号AをMCU83に供給して計数し、この計数結果に基づいてMCU83は、測定対象部と赤外線体温計1の先端部分との間の距離を算出しながら監視を続け、この距離が所定の距離、例えば5cm以下になったか否かを監視する。
【0050】
そして、MCU83は、測定対象部と赤外線体温計1の先端部分との間の距離が所定の距離である例えば5cm以下になったことを検知すると、この時点から赤外線センサ3による赤外線の測定を開始し、この赤外線センサ3で測定した赤外線の量に基づいて測定対象部の温度を検知する。すなわち、赤外線センサ3で測定された赤外線量は、アナログスイッチ77、OPアンプ79、AD変換回路81を介してデジタル信号としてMCU83に供給されるので、MCU83は、このデジタル信号に基づき測定対象部の温度を算出する。
【0051】
なお、ここで所定の距離を5cm以下を近接センサの検知能力によっては、例えば5mm以下としても良い。
【0052】
また、MCU83は、近接センサからの静電容量に基づき測定対象部と近接センサとの間の距離を上述したように監視しながら、すなわち近接センサ回路71からの静電容量に基づき発振周波数が変化する近接センサ回路71のシュミットトリガCMOSインバータU1の出力信号Aに基づき測定対象部と近接センサとの間の距離を監視しながら、近接センサからの静電容量を所定の静電容量と比較し、この所定の静電容量になったか否かを検知するようになっている。この所定の静電容量は、近接センサが測定対象部である人体の皮膚に接触したときの静電容量であり、この所定の静電容量は、MCU83においてメモリなどに予め記憶されているものである。
【0053】
このようにMCU83は、近接センサからの静電容量を前記所定の静電容量と比較し、近接センサからの静電容量が前記所定の静電容量になったことを検知したとき、近接センサが測定対象部である人体の皮膚に接触したときであると判定し、この接触したときにおける赤外線センサ3による温度を測定対象部である体温と考え、このときに赤外線センサ3を用いて測定した温度を体温として液晶表示器11で表示する。この体温測定および表示とともに、前記青色の発光ダイオードD2を点灯し、更に前記ブザー87を鳴動して、体温測定が完了したことを使用者に告知する。
【0054】
なお、この場合の赤外線センサ3を用いて測定した温度では、この温度が28度以上である場合、この温度を人体の測定対象部の体温と考えるが、この28度以下の場合には、人体以外の、例えば衣服や髪に触れている、あるいは机上に載置されている等であると考えて無視する。
【0055】
さらに、上記実施形態では、MCU83は、測定対象部と赤外線体温計1の先端部分との間の距離が所定の距離以下になったことを検知すると、この時点から赤外線センサ3による赤外線量の測定を開始し、この赤外線の量に基づいて測定対象部の温度を検知することに加えて、近接センサからの静電容量を所定の静電容量と比較し、この所定の静電容量になったときに近接センサが測定対象部である人体の皮膚に接触したときであると判定しているが、このように所定の静電容量に基づくものに限定されるものでなく、例えば、赤外線センサ3で検知した測定対象部の温度が体温であると考えられるとき、赤外線体温計1の先端部分が測定対象部である例えば人体の皮膚に接触したときであると判定して、体温測定処理を行うことも可能である。
【0056】
すなわち、具体的には、MCU83は、上述したように検知した温度が体温であると考えられると、赤外線体温計1の先端部分が測定対象部である例えば人体の皮膚に接触したときであると判定し、この接触したときにおける赤外線センサによる温度を測定対象部である体温と考え、この体温を液晶表示器11で表示する。この体温測定および表示とともに、前記青色の発光ダイオードD2を点灯し、更に前記ブザー87を鳴動して、体温測定が完了したことを使用者に告知する。
【0057】
なお、体温は、この体温測定を例えば診察室などの通常の測定環境で行うと考える場合、例えば雪山などで遭難したり、海や川で長い時間漂流したり、その他の要因などで極端な低体温になるような場合を除いて、例えば32度乃至43度程度であると考えられるが、上述したように、検知温度が体温になったと考えられた場合に、人体の皮膚に接触したときであると判定することは有効である。なお、検知温度が体温であるとの判定においては、この判定のための閾値を外気温によって最適化している。すなわち、MCU83は、上述したように検知した温度が例えば28度のように通常の体温よりも低い場合には、体温でないと判定し、この温度は無視する。具体的には、赤外線体温計1の先端部分の赤外線センサ3がまだ人体の皮膚などに接触していない場合には、赤外線センサ3は、周囲の外気温を計測していることとなるが、この外気温は、例えば10度乃至28度である場合には、明らかに体温でないと考えられる。また、外気温が高く30度前後あるような場合には、外気温を測定するような機能を設けて、補正することも可能である。
【0058】
また、赤外線センサ3は、導電性の物質に反応するが、木や樹脂などの机などには反応しない。更に、金属製の机などには反応するが、室温が高くない場合には、体温程度まで高くならないので、このときの温度は無視される。
【0059】
また、上述したように、MCU83は、測定対象部と赤外線体温計1の先端部分との間の距離が所定の距離である例えば5cm以下になったことを検知すると、この時点から赤外線センサによる赤外線量の測定を開始し、この測定した赤外線量に基づいて測定対象部の温度を検知開始するが、このときから赤外線体温計1の先端部分、すなわち赤外線センサ3を人体の皮膚に接触させることなく、人体の皮膚の表面を走査しながら、最適な位置、すなわち体温に近い位置であって、具体的には額の中央位置などを探し、この位置で赤外線センサを人体に接触させて、その体温を測定することができる。なお、人体の額の特定位置である中央部分の近傍にある動脈は、人間の脳へ至る血管が存在し、この部分は体温調整に影響されずに常に一定の血流があり、人体の深部温度を表しているものである。
【0060】
上述したように、本実施形態では、赤外線体温計1の赤外線センサ3が人体の皮膚に接触したときの体温を測定して液晶表示器11で表示するので、体温測定で例えば顔を背けて嫌がったり、じっとしていないような幼児や乳児などの体温を測定するのに非常に有効である。すなわち、幼児や乳児などは物が触れると、反射的に顔を動かすので、本実施形態の赤外線体温計1のように接触と同時に体温を測定できることは、非常に有効なことであり、確実かつ簡単に失敗することなく幼児などの体温を測定することができる。
【0061】
また、赤外線体温計1は、額表面の温度から腋の下の温度に換算して表示する機能も備えているが、上述したように、このとき、額の中央部などの特定の位置で測定する必要がある。これはこの部位近傍にある動脈に由来する温度を測るためである。
【0062】
更に、上述した接触時の温度測定以外に、接触前、すなわち接触ぎりぎりの位置で測定した温度を用いることもできるが、この接触前の温度、接触時の温度および赤外線体温計1本体の温度の関係から接触による影響を知ることができるし、また補正することもできる。
【0063】
すなわち、接触前の温度、接触時の温度から、ここまでが接触前のデータで、ここからが接触後のデータと分けて捕らえられることから、その差異によって赤外線体温計1本体が接触したことによって額に与える影響(赤外線体温計1本体の温度による影響)を推定することができる。
【0064】
さららには、接触前で、赤外線体温計1本体がより離れていれば、測定範囲が広く、近づくにつれて狭い範囲を計測することとなるので(サーモパイルの視野角約100度)、この変化する測定値の状況から外気温度の影響であったり、個体差を推測する手がかりとすることね可能となる。これにより額全体が均一の温度なのか、分布があるのかが分かれば、これと外気温度との関係で補正がより正確になる。
【0065】
例えば、外気温度によって異なるが一般的に額には温度分布があるので、このとき分布が少なければ、発熱、個体差、厚着であるなどの通常状態ではないと判断でき、この内容を加味した補正が可能となる。
【0066】
以上、一例を示したが、本発明は如何様にも変形が可能であることは言うまでもないことである。
【符号の説明】
【0067】
1 赤外線体温計
3 赤外線センサ
5 グラウンド電極
7 近接センサの電極S
7a 電極外装
11 液晶表示器
13 電源スイッチ
15 電池収納部
21 電池
71 近接センサ回路
73 バックライト/イルミネーション昇圧回路
77 アナログスイッチ
79 OPアンプ
81 AD変換回路
83 MCU
87 ブザー
C1、C2 コンデンサ
D1 ショットキーダイオード
D2 発光ダイオード
R1、R2 抵抗
Q1 調光用トランジスタ
U1 シュミットトリガCMOSインバータ
U2 CMOSインバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線センサを用いて、体温を測定する赤外線体温計であって、
赤外線センサを内蔵するセンサ本体が人体に接触したと判定する接触判定手段と、
この接触判定手段によってセンサ本体が人体に接触したと判定したときにおける赤外線センサからの赤外線の量を測定する赤外線量測定手段と、
この赤外線量測定手段で測定した赤外線の量に基づく体温を算出する体温算出手段と
を有することを特徴とする赤外線体温計。
【請求項2】
前記接触判定手段は、
前記センサ本体が人体に接近するときの静電容量を測定し、この静電容量に基づきセンサ本体と人体との間の距離を測定する近接センサと、
前記センサ本体が人体に接触したときの所定の静電容量を予め記憶する記憶手段と、
前記近接センサで測定した静電容量を前記所定の静電容量と比較し、この測定した静電容量が前記所定の静電容量になったとき、センサ本体が人体に接触したと判定する手段と
を有することを特徴とする請求項1記載の赤外線体温計。
【請求項3】
前記接触判定手段は、
前記センサ本体が人体に近接する近接距離を測定する近接センサと、
この近接センサで測定された近接距離が人体に比較的近づいた所定の距離以下になったとき、前記体温算出手段で算出された温度を監視する温度監視手段と、
この温度監視手段で監視する温度が所定の温度付近になったときをセンサ本体が人体に接触したと判定する手段と
を有することを特徴とする請求項1記載の赤外線体温計。
【請求項4】
前記所定の温度付近は、体温と考えられる温度であることを特徴とする請求項3記載の赤外線体温計。
【請求項5】
前記所定の距離は、5ミリメートル〜5センチメートルであることを特徴とする請求項2記載の赤外線体温計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−217563(P2012−217563A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85073(P2011−85073)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(500374294)株式会社バイオエコーネット (8)
【Fターム(参考)】